(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記周期情報取得部は、呼吸測定器、心拍測定器、被検者が発生する音を収集する集音装置、又は呼吸指示の発生装置から取得した前記被写体の動態の時間変化を示す情報に基づいて、前記周期情報を取得する請求項2に記載の動態撮影システム。
前記放射線撮影装置により取得された複数周期の動態画像における同一位相のフレーム画像の各画素の濃度値の平均値、加算値、最大値、最小値、又は中央値を算出して1周期に集約した動態画像を作成する動態画像作成部、
を備える請求項1〜3のいずれか一項に記載の動態撮影システム。
前記比較部は、前記複数周期の同一位相のフレーム画像における前記被写体の領域の各画素の濃度値又は前記被写体の領域を分割した各小領域の濃度値の平均値、加算値、最大値、最小値、又は中央値を比較する請求項1〜4のいずれか一項に記載の動態撮影システム。
前記制御部は、前記周期情報取得部により取得された周期情報の1周期の時間と予め定められた1周期当たりの撮影回数に基づいて、前記所定時間間隔を算出する請求項1〜6のいずれか一項に記載の動態撮影システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の動態撮影では、被写体の動態の周期を意識せず、撮影開始から常に一定の時間間隔で撮影を行っている。そのため、
図6に示すように、動態撮影により取得されるフレーム画像の周期毎の位相が基本的に一致せず、複数周期の動態画像を有効に活用することができなかった。
【0005】
本発明の課題は、周期毎の位相が揃った複数周期の動態画像を取得することにより、複数周期の動態画像を有効に活用できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の動態撮影システムは、
周期性を持つ被写体の動態の周期に関する周期情報を取得する周期情報取得部と、
前記周期情報に基づいて、前記被写体の動態の周期毎に同一の位相を撮影開始タイミングとして割り当て、周期毎に前記撮影開始タイミングから所定時間間隔で
同一方向から撮影を行って複数周期の動態画像を取得するように放射線撮影装置を制御する制御部と、
前記放射線撮影装置により取得された前記複数周期の動態画像の各フレーム画像から前記被写体の領域を抽出する抽出部と、
前記複数周期の動態画像の同一位相のフレーム画像から抽出された前記被写体の領域を比較する比較部と、
を備える。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記被写体は、肺又は心臓である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、
前記周期情報取得部は、呼吸測定器、心拍測定器、被検者が発生する音を収集する集音装置、又は呼吸指示の発生装置から取得した前記被写体の動態の時間変化を示す情報に基づいて、前記周期情報を取得する。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、
前記放射線撮影装置により取得された複数周期の動態画像における同一位相のフレーム画像の各画素の濃度値の平均値、加算値、最大値、最小値、又は中央値を算出して1周期に集約した動態画像を作成する動態画像作成部を備える。
【0011】
請求項
5に記載の発明は、請求項
1〜4のいずれか一項に記載の発明において、
前記比較部は、前記複数周期の同一位相のフレーム画像における前記被写体の領域の各画素の濃度値又は前記被写体の領域を分割した各小領域の濃度値の平均値、加算値、最大値、最小値、又は中央値を比較する。
【0012】
請求項
6に記載の発明は、請求項
1〜5のいずれか一項に記載の発明において、
前記比較部は、前記複数周期の同一位相のフレーム画像における前記被写体の領域の形状を比較する。
【0013】
請求項
7に記載の発明は、請求項1〜
6のいずれか一項に記載の発明において、
前記制御部は、前記周期情報取得部により取得された周期情報の1周期の時間と予め定められた1周期当たりの撮影回数に基づいて、前記所定時間間隔を算出する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、周期毎の位相が揃った複数周期の動態画像を取得できるので、複数周期の動態画像を有効に活用することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0017】
〔動態撮影システム100の構成〕
まず、本実施形態の構成を説明する。
図1に、本実施形態における動態撮影システム100の全体構成例を示す。
図1に示すように、動態撮影システム100は、撮影装置1と、撮影用コンソール2とが通信ケーブル等により接続され、撮影用コンソール2と、診断用コンソール3とがLAN(Local Area Network)等の通信ネットワークNTを介して接続されて構成されている。動態撮影システム100を構成する各装置は、DICOM(Digital Image and Communications in Medicine)規格に準じており、各装置間の通信は、DICOMに則って行われる。
【0018】
〔撮影装置1の構成〕
撮影装置1は、例えば、呼吸運動に伴う肺の膨張及び収縮の形態変化、心臓の拍動等の、周期性を持つ被写体の動態を撮影する放射線撮影装置である。動態撮影とは、被写体に対し、X線等の放射線をパルス状にして所定時間間隔で繰り返し照射するか(パルス照射)、もしくは、低線量率にして途切れなく継続して照射して(連続照射して)所定時間間隔で放射線画像を読み取ることで、被写体の動態を示す複数の画像を取得することをいう。動態撮影により得られた一連の画像を動態画像と呼ぶ。また、動態画像を構成する複数の画像のそれぞれをフレーム画像と呼ぶ。なお、以下の実施形態では、パルス照射により胸部の動態撮影を行う場合を例にとり説明する。
【0019】
放射線源11は、被写体Mを挟んで放射線検出部13と対向する位置に配置され、放射線照射制御装置12の制御に従って、被写体Mに対し放射線(X線)を照射する。
放射線照射制御装置12は、撮影用コンソール2に接続されており、撮影用コンソール2から入力された放射線照射条件に基づいて放射線源11を制御して放射線撮影を行う。撮影用コンソール2から入力される放射線照射条件は、例えば、パルスレート、パルス幅、パルス間隔、1動態撮影あたりの撮影周期数、1周期当たりの撮影フレーム数(撮影回数)、X線管電流の値、X線管電圧の値、付加フィルター種等である。パルスレートは、1秒あたりの放射線照射回数であり、後述するフレームレートと一致している。パルス幅は、放射線照射1回当たりの放射線照射時間である。パルス間隔は、1回の放射線照射開始から次の放射線照射開始までの時間であり、後述するフレーム間隔と一致している。
【0020】
放射線検出部13は、FPD(Flat Panel Detector)等の半導体イメージセンサーにより構成される。FPDは、例えば、ガラス基板等を有しており、基板上の所定位置に、放射線源11から照射されて少なくとも被写体Mを透過した放射線をその強度に応じて検出し、検出した放射線を電気信号に変換して蓄積する複数の検出素子(画素)がマトリックス状に配列されている。各画素は、例えばTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング部を備えて構成されている。FPDにはX線をシンチレーターを介して光電変換素子により電気信号に変換する間接変換型、X線を直接的に電気信号に変換する直接変換型があるが、何れを用いてもよい。
放射線検出部13は、被写体Mを挟んで放射線源11と対向するように設けられている。
【0021】
読取制御装置14は、撮影用コンソール2に接続されている。読取制御装置14は、撮影用コンソール2から入力された画像読取条件に基づいて放射線検出部13の各画素のスイッチング部を制御して、当該各画素に蓄積された電気信号の読み取りをスイッチングしていき、放射線検出部13に蓄積された電気信号を読み取ることにより、画像データを取得する。この画像データがフレーム画像である。フレーム画像の画素信号値は濃度値を表す。そして、読取制御装置14は、取得したフレーム画像を撮影用コンソール2に出力する。画像読取条件は、例えば、フレームレート、フレーム間隔、画素サイズ、画像サイズ(マトリックスサイズ)等である。フレームレートは、1秒あたりに取得するフレーム画像数であり、パルスレートと一致している。フレーム間隔は、1回のフレーム画像の取得動作開始から次のフレーム画像の取得動作開始までの時間であり、パルス間隔と一致している。
【0022】
ここで、放射線照射制御装置12と読取制御装置14は互いに接続され、互いに同期信号をやりとりして放射線照射動作と画像の読み取りの動作を同調させるようになっている。
【0023】
〔撮影用コンソール2の構成〕
撮影用コンソール2は、放射線照射条件や画像読取条件を撮影装置1に出力して撮影装置1による放射線撮影及び放射線画像の読み取り動作を制御するとともに、撮影装置1により取得された動態画像を撮影技師等の撮影実施者によるポジショニングの確認や診断に適した画像であるか否かの確認用に表示する。
撮影用コンソール2は、
図1に示すように、制御部21、記憶部22、操作部23、表示部24、通信部25を備えて構成され、各部はバス26により接続されている。
【0024】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory
)等により構成される。制御部21のCPUは、操作部23の操作に応じて、記憶部22に記憶されているシステムプログラムや各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って後述する撮影制御処理を始めとする各種処理を実行し、撮影用コンソール2各部の動作や、撮影装置1の放射線照射動作及び読み取り動作を集中制御する。制御部21は、周期情報取得部、制御部として機能する。
【0025】
記憶部22は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成される。記憶部22は、制御部21で実行される各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメーター、或いは処理結果等のデータを記憶する。例えば、記憶部22は、
図2に示す撮影制御処理を実行するためのプログラムを記憶している。また、記憶部22は、放射線照射条件及び画像読取条件のうち、予め定められている条件を記憶している。各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部21は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0026】
操作部23は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部21に出力する。また、操作部23は、表示部24の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部21に出力する。
【0027】
表示部24は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニターにより構成され、制御部21から入力される表示信号の指示に従って、操作部23からの入力指示やデータ等を表示する。
【0028】
通信部25は、LANアダプターやモデムやTA(Terminal Adapter)等を備え、通信ネットワークNTに接続された各装置との間のデータ送受信を制御する。
【0029】
動態検出部27は、被写体Mの動態を表す情報を検出してその情報(動態検出情報)の時間変化を制御部21に出力する。被写体Mが肺野である場合、肺野は呼吸運動に伴って動くため、動態検出部27として、例えば、呼吸センサー、スパイロメーター、呼吸モニターベルト等の呼吸計測器や、被検者の発生する音(例えば、呼吸音)を収集するマイク等の集音装置を用いることができる。被検者の発生する音としては、被検者に呼吸をしながら発してもらった声としてもよい。声が出ている期間は呼気(肺野の収縮期)、声が出ていない期間は吸気(肺野の膨張期)とみなすことができる。また、被写体Mが心臓である場合は、動態検出部27としては、例えば、心電計等の心拍計測器を用いることができる。なお、動態検出部27は、動態撮影時に肺野に重ならないような位置に取り付けることが好ましい。例えば、心電計の場合は、腕などに取り付けることが好ましい。
【0030】
〔診断用コンソール3の構成〕
診断用コンソール3は、撮影用コンソール2から動態画像を取得し、取得した動態画像に画像処理を施して表示する動態画像処理装置である。
診断用コンソール3は、
図1に示すように、制御部31、記憶部32、操作部33、表示部34、通信部35を備えて構成され、各部はバス36により接続されている。
【0031】
制御部31は、CPU、RAM等により構成される。制御部31のCPUは、操作部33の操作に応じて、記憶部32に記憶されているシステムプログラムや、各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って、診断用コンソール3の各部の動作を集中制御する。制御部31は、抽出部、動態画像作成部、比較部として機能する。
【0032】
記憶部32は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成される。記憶部32は、制御部31で実行される各種プログラムやプログラムによる処理の実行に必要なパラメーター、或いは処理結果等のデータを記憶する。これらの各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部31は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0033】
また、記憶部32には、過去に撮影された動態画像が識別ID、患者情報(被検者情報。例えば、患者ID、患者(被検者)の氏名、身長、体重、年齢、性別等)、検査情報(例えば、検査ID、検査日、被写体部位(被写体M;肺又は心臓)等に対応付けて記憶されている。
【0034】
操作部33は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、ユーザーによるキーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部31に出力する。また、操作部33は、表示部34の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部31に出力する。
【0035】
表示部34は、LCDやCRT等のモニターにより構成され、制御部31から入力される表示信号の指示に従って、各種表示を行う。
【0036】
通信部35は、LANアダプターやモデムやTA等を備え、通信ネットワークNTに接続された各装置との間のデータ送受信を制御する。
【0037】
〔動態撮影システム100の動作〕
次に、本実施形態における上記動態撮影システム100の動作について説明する。
【0038】
(撮影装置1、撮影用コンソール2の動作)
まず、撮影装置1、撮影用コンソール2による撮影動作について説明する。
撮影実施者は、まず、撮影用コンソール2の操作部23を操作して、被検者の患者情報、検査情報の入力を行う。次いで、被写体部位(被写体M)を放射線源11と放射線検出部13の間に配置してポジショニングを行う。また、被検者に対し、呼吸状態(例えば、安静呼吸)を指示する。撮影準備が整った時点で、操作部23を操作して放射線照射指示を入力する。
【0039】
操作部23により放射線照射指示が入力されると、撮影用コンソール2においては、撮影制御処理が実行される。以下、撮影制御処理について説明する。
【0040】
図2に、撮影用コンソール2の制御部21において実行される撮影制御処理を示す。撮影制御処理は、制御部21と記憶部22に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0041】
まず、制御部21は、動態検出部27から出力される動態検出情報に基づいて、被写体Mの動態の周期情報を取得する(ステップS1)。
例えば、動態検出部27から出力される被写体Mの動態検出情報の時間変化を示す情報(波形)に基づいて、例えば、動態の所定の特徴点(例えば、被写体Mが肺野である場合、吸気から呼気の変換点、呼気と吸気の中間点、呼気から吸気の変換点等)のタイミングを動態1周期の基点とし、次にこの特徴点が検出されるタイミングまでの間の時間を1周期にかかる時間(すなわち、周期)として取得する。
【0042】
次いで、制御部21は、各周期の同一の位相を撮影開始タイミングに割り当てるとともに、周期を1周期当たりの撮影フレーム数(撮影回数)Nで除算して、フレーム画像の撮影時間間隔(パルス間隔、フレーム間隔)を決定し(ステップS2)、決定したフレーム画像の撮影時間間隔をはじめとする放射線照射条件及び画像読取条件を放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に設定する(ステップS3)。放射線照射条件及び画像読取条件には、動態1周期当たりの撮影フレーム数N、撮影する周期の数、フレーム画像の撮影時間間隔、撮影開始タイミングに割り当てる動態の位相(例えば、被写体Mが肺野であれば最大呼気位、最大吸気位等)が含まれる。
【0043】
次いで、制御部21は、動態検出部27から出力される動態検出情報及び周期情報に基づいて、被写体Mの動態が撮影開始タイミングの位相となるのを待機する(ステップS4)。
被写体Mの動態が撮影開始タイミングの位相となったと判断した場合(ステップS4;YES)、制御部21は、撮影装置1の放射線照射制御装置12及び読取制御装置14を制御して、ステップS2で決定した時間間隔でN回のフレーム画像の撮影を行わせる(ステップ5)。
撮影装置1においては、放射線照射制御装置12に設定されたパルス間隔で放射線源11によりN回の放射線照射が行われ、放射線検出部13により画像データ(フレーム画像)が取得される。取得されたフレーム画像は撮影用コンソール2に送信され、記憶部22に順次記憶される。
【0044】
次いで、制御部21は、所定周期分(複数周期分)の撮影が終了したか否かを判断する(ステップS6)。所定周期分の撮影が終了していないと判断した場合(ステップS6;NO)、制御部21は、ステップS4に戻る。
【0045】
所定周期分の撮影が終了したと判断した場合(ステップS6;YES)、制御部21は、放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に動態撮影終了の指示を出力し、動態撮影を終了する(ステップS7)。
【0046】
撮影により取得されたフレーム画像は順次撮影用コンソール2に入力され、制御部21は、入力されたフレーム画像を撮影順を示す番号(フレーム番号)と対応付けて記憶部22に記憶するとともに(ステップS8)、表示部24に表示させる(ステップS9)。撮影実施者は、表示された動態画像によりポジショニング等を確認し、撮影により診断に適した画像が取得された(撮影OK)か、再撮影が必要(撮影NG)か、を判断する。そして、操作部23を操作して、判断結果を入力する。
【0047】
操作部23の所定の操作により撮影OKを示す判断結果が入力されると(ステップS10;YES)、動態撮影で取得された一連のフレーム画像のそれぞれに、動態画像を識別するための識別IDや、患者情報、検査情報、放射線照射条件、画像読取条件、撮影順を示す番号(フレーム番号)等の情報が付帯され(例えば、DICOM形式で画像データのヘッダ領域に書き込まれ)、通信部25を介して診断用コンソール3に送信される(ステップS11)。そして、本処理は終了する。一方、操作部23の所定の操作により撮影NGを示す判断結果が入力されると(ステップS10;NO)、記憶部22に記憶された一連のフレーム画像が削除され(ステップS12)、本処理は終了する。この場合、再撮影が必要となる。
【0048】
図3は、被写体Mの動態検出情報の時間変化及びフレーム画像が撮影されたタイミングを示すグラフである。
図3に示すように、撮影制御処理では、被写体Mの動態の各周期が同一位相のタイミングで撮影される。例えば、各周期毎に、所定の位相から所定時間間隔で撮影が行われる。したがって、周期毎の位相が揃った複数周期の動態画像を取得することが可能となる。
【0049】
(診断用コンソール3の動作)
次に、診断用コンソール3における動作について説明する。
診断用コンソール3の制御部31は、通信部35を介して撮影用コンソール2から被写体Mの動態を複数周期撮影した動態画像の一連のフレーム画像が受信されると、
図4に示すように、複数周期の同一位相のフレーム画像毎に、下記の(1)〜(3)の少なくとも一つの処理を行う。
【0050】
(1)複数周期のフレーム画像を1周期に集約
同一位相のフレーム画像の対応する(同じ位置の)画素同士の画素値(濃度値)の代表値(平均値、加算値、最大値、最小値、又は中央値等)を算出して1周期分の動態画像を作成する。
動態画像は、複数のフレーム画像を撮影するために、複数回の放射線照射を行う。そのため、被検者の被爆を抑えるため各フレーム画像は低線量で撮影されるため、ノイズの多い画像となってしまう。そこで、上述のように、複数周期の同じ位相のフレーム画像の各画素の濃度値を集約して1周期分の動態画像とすることで、ノイズが低減された動態画像を取得することが可能となる。
上記作業を繰り返し行うことで1周期分の動態画像を複数作成し、ノイズが低減された複数周期の動態画像を取得することも可能である。
【0051】
(2)同一位相のフレーム画像間の被写体領域の濃度値を比較
各フレーム画像から被写体領域(被写体Mの領域)を抽出し、被写体領域全体又は被写体領域を複数の小領域に分割した小領域毎に、濃度値の代表値(平均値、加算値、最大値、最小値、又は中央値等)を算出して、複数周期の同一位相のフレーム画像間で、算出した代表値の比較を行う。或いは、複数周期の同一位相のフレーム画像間で、各画素の濃度値の比較を行う。
ここで、被写体Mに異常があると、動態周期的に同一位相であっても被写体Mの状態は一致しなくなる。例えば、同一位相のフレーム画像間における被写体Mの濃度値の差が大きくなる場合がある。正常であれば、同一位相での被写体Mの状態はほぼ一致し、同一位相のフレーム画像間における濃度値の差は小さい。そこで、濃度値の比較方法としては、例えば、比較するフレーム画像の領域毎(画素毎)に差分値を算出し、差分値が所定の閾値以上となった(差が大となった)位相のフレーム画像群を並べて表示する。或いは、フレーム画像の各領域(各画素)に差分値に応じた色(例えば、所定の閾値以上は赤、閾値未満は青)を付した画像を表示部34に表示させることとしてもよい。
これにより、医師が被写体Mの正常/異常を判断するための判断材料を提供することが可能となる。
【0052】
(3)同一位相のフレーム画像間の被写体領域の形状を比較
各フレーム画像の被写体領域の面積、長さ(例えば、肺尖と横隔膜との距離(心臓の幅))、輪郭の曲率、又は輪郭形状の一致率等の、被写体Mの形状を表す指標値を算出し、複数周期の同一位相のフレーム画像間で、算出した指標値の比較を行う。
上述のように、被写体Mに異常があると、動態周期的に同一位相であっても被写体Mの状態は一致しなくなる。例えば、その形状の差が大きくなる場合がある。正常であれば、同一位相での被写体Mの状態はほぼ一致し、その形状の差は小さい。そこで、形状の比較方法としては、例えば、比較するフレーム画像の上記指標値の差分値を算出し、差分値が所定の閾値以上となった(差が大となった)位相のフレーム画像群を並べて表示する。
これにより、医師が被写体Mの正常/異常を判断するための判断材料を提供することが可能となる。
【0053】
以上説明したように、動態撮影システム100によれば、撮影用コンソール2の制御部21は、周期性を持つ被写体Mの動態の周期に関する周期情報を取得し、取得した周期情報に基づいて、被写体Mの動態の周期毎に同一の位相を撮影開始タイミングとして割り当て、周期毎に撮影開始タイミングから所定時間間隔で撮影を行って複数周期の動態画像を取得するように撮影装置1を制御する。
したがって、周期毎の位相が揃った複数周期の動態画像を取得することができ、複数周期の動態画像を有効に活用することが可能となる。
【0054】
例えば、制御部21は、被写体Mの動態の1周期の時間を予め定められた1周期当たりの撮影回数で除算することにより、動態撮影の時間間隔を算出することで、各周期の撮影を行う位相を揃えることが可能となる。
【0055】
また、診断用コンソール3の制御部31は、撮影装置1により取得された複数周期の動態画像における同一位相のフレーム画像の各画素の濃度値の平均値、加算値、最大値、最小値、又は中央値を算出して1周期に集約した動態画像を作成する。したがって、ノイズの低減された動態画像を取得することが可能となる。
【0056】
また、診断用コンソール3の制御部31は、撮影装置1により取得された複数周期の動態画像の各フレーム画像から被写体Mの領域を抽出し、複数周期の動態画像の同一位相のフレーム画像から抽出された被写体Mの領域を比較する。例えば、制御部31は、複数周期の同一位相のフレーム画像における被写体Mの領域の各画素の濃度値又は被写体Mの領域を分割した各小領域の濃度値の平均値、加算値、最大値、最小値、又は中央値を比較する。或いは、制御部31は、複数周期の同一位相のフレーム画像における被写体Mの領域の形状を比較する。したがって、被写体Mの動態の正常/異常を判断するための判断材料となる情報を医師に提供することが可能となる。
【0057】
なお、上記実施形態における記述内容は、本発明の好適な一例であり、これに限定されるものではない。
【0058】
例えば、上記実施形態においては、撮影用コンソール2の制御部21は複数周期において同一位相のフレーム画像を撮影するように撮影装置1を制御することとして説明したが、
図5に示すように、周期毎に撮影する位相を所定間隔ずつずらして撮影するように撮影装置1を制御することとしてもよい。例えば、被写体Mが心臓である場合、1周期目は拡張末期から15fpsで撮影、2周期目は拡張末期の0.02秒後から15fpsで撮影、3周期目は拡張末期の0.04秒後から15fps、・・・で撮影する。そして、撮影タイミングをずらして撮影した動態画像のフレーム画像を位相に基づいて並び替える。これにより、仮想的に高フレームレートの動態画像を取得することができる。なお、撮影する周期数は、並び替えたときにフレーム画像間の撮影時間間隔が一定となるように決定する。
【0059】
また、上記実施形態においては、被写体Mの動態の周期情報を取得する周期情報取得部及び撮影装置1を制御する制御部が撮影装置1とは別体の撮影用コンソール2に備えられている場合を例にとり説明したが、撮影装置1に備えられている構成としてもよい。また、動態画像作成部、抽出部、比較部は、診断用コンソール3に備えられていることとして説明したが、撮影用コンソール2と一体型の撮影装置1や撮影用コンソール2に備えられていることとしてもよい。すなわち、本願発明の動態撮影システムは、単体の装置により構成されていてもよいし、複数の装置により構成されていてもよい。
【0060】
また、上記実施形態においては、被写体Mが肺野又は心臓である場合を例にとり説明したが、被写体Mは、例えば、手足の関節等であってもよく、実施形態に限定されるものではない。
【0061】
また、上記実施形態においては、制御部21が呼吸測定器、心拍測定器、又は被検者が発生する音を収集する集音装置から取得した被写体Mの動態の時間変化を示す情報に基づいて周期情報を取得する場合を例として説明したが、「息を吸って、吐いて・・・」のような呼吸指示に基づいて被検者に呼吸を行わせて撮影を行う場合は、被検者の肺は呼吸指示に従って動くため、呼吸指示の情報を被写体Mの動態の時間変化を示す情報として呼吸指示の発生装置から取得して、呼吸指示の情報に基づいて周期情報を取得することとしてもよい。
【0062】
また、例えば、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、CD−ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0063】
その他、動態撮影システムを構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。