(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
距離測定装置の一つとして、光を走査して光を反射した物体との距離を検出するライダー装置が知られている。なお、ライダーは、LIDARとも表記され、Light Detection and Rangingの略語である。
ライダー装置では、受光信号をアナログ−デジタル(以下、AD)変換したAD変換データを用いて、波形のピークを検出する処理等を実行する。なお、AD変換のサンプリングレートが高いほど、AD変換データは、受光信号の波形を忠実に再現できる。その結果、波形のピーク位置の検出精度、延いては、物体までの距離の検出精度が向上する。
【0003】
しかし、高速なAD変換器は、高価、大型、大消費電力、高発熱、及び大ノイズ等の問題を有する。そこで、比較的低速なAD変換器を用い、AD変換データにゼロ値を挿入して、ローパスフィルタ(以下、LPF)を用いて平滑化することでデータを補間する、いわゆるアップサンプリングを用いて、サンプリングレートを向上させる技術が知られている。アップサンプリング後のデータ系列による受光信号の波形の再現性をよくするためには、LPFは、高次のFIRフィルタ等のように急峻な遮断特性を有していることが望ましい。
【0004】
ところで、ライダー装置では、入力光量のダイナミックレンジが広いため、受光信号をアナログ処理する回路が飽和する場合がある。この場合、受光信号の波形は、波形の上側がクリップされた飽和波形となる。このような飽和波形に対して、アップサンプリングを行うと、LPF後の波形にリンギングによる波形歪が発生する。なお、リンギングには、波形の立ち上がり自時に発生するオーバーシュート、波形の立下り時に発生するアンダーシュートが含まれる。このリンギングによって生じる極大点は、物体からの反射波に基づくピークと区別することが困難であり、後段の測距処理での誤検出の原因となる。
【0005】
下記特許文献1には、アップサンプリング後の波形に生じるリンギングを抑制する技術として、急峻な遮断特性を有する第1のLPFと、緩やかな遮断特性を有する第2のLPFとを用い、それぞれで平滑化された信号を混合する際の混合比を、信号の立ち上がりの変化具合に応じて変化させる技術が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
図1に示す距離測定装置1は、車両に搭載して使用され、レーザ光を用いて車両の周囲に存在する様々な物体の検出等を行う、いわゆるライダー装置である。ライダーは、LIDARとも表記される。LIDARは、Light Detection and Rangingの略語である。
【0015】
距離測定装置1は、発光部2と、走査部3と、受光部4と、AD変換部5と、補間処理部6と、距離演算部7と、を備える。
発光部2は、予め設定された周期で、単一のパルス波形を有するレーザ光を出力する。
【0016】
走査部3は、回転する偏向ミラー等で構成され、発光部2から入射する光を偏向ミラーで反射させ、偏向ミラーの回転角度に応じた方向に出射する。これにより、予め設定された走査範囲内を光で走査する。また、走査部3は、走査範囲内の光を出射した方向から到来する光を偏向ミラーで反射して、受光部4に導く。
【0017】
受光部4は、走査部3からの光を受光し、受光強度に応じた受光信号を出力する。受光部4は、受光素子、トランスインピーダンスアンプ(以下、TIA)、増幅回路、ローパスフィルタ(以下、LPF)等を備える。受光素子は、例えば、アバランシェフォトダイオード(以下、APD)を有し、受光した光の強度に応じた電流信号を出力する。TIAは、受光素子からの電流信号を電圧信号に変換する。増幅回路はTIAにて変換された電圧信号を増幅する。なお、増幅回路は固定ゲインおよび可変ゲインのいずれであってもよい。そして、距離測定装置1では、ダイナミックレンジの広い光信号を受光する必要がある。強度の弱い光信号の検出を可能とするため、増幅回路のゲインはある程度高い値に設定する必要がある。その結果、一定以上の強度を有する光信号を受光した場合、増幅回路は飽和する場合がある。LPFは、増幅回路にて増幅された電圧信号から、AD変換部5におけるサンプリングレートの2倍の周波数より大きい周波数成分を遮断する。
【0018】
AD変換部5は、受光部4から出力される受光信号を発振源のサンプリングレートでサンプリングし、デジタルデータの系列(以下、変換データ系列)を生成する。
補間処理部6は、変換データ系列に対してアップサンプリングと呼ばれる補間処理を実行する。アップサンプリングとは、変換データ系列に属する各データの間に、それぞれN−1個のデータを補間することでN倍のサンプリングレートを有するデータ系列に変換する処理である。以下、補間処理部6によりアップサンプリングされたデータ系列をアップデータ系列という。また、補間処理部6は、AD変換部5で使用される動作クロック、即ち、サンプリングレートと同じクロックレートを有する動作クロックに従って動作する。
【0019】
距離演算部7は、発光部2での発光タイミングと、補間処理部6から出力されるアップデータ系列が示す信号波形から受光タイミングを特定し、発光部2での発光タイミングから受光タイミングまでの時間に基づいて、光を反射した物体までの距離を算出する。
【0020】
具体的には、
図2に示すように、まず、アップデータ系列に基づいて、ピーク波形を抽出する。以下の処理は、抽出されたピーク波形毎に実行する。そして、ピーク波形におけるデータの最大値Pmaxをα倍した閾値THを設定する。
図2では、データP5が最大値Pmaxである。また、αは、0<α<1を満たす実数であり、例えば、α=0.625等に設定される。
【0021】
次に、ピークの立ち上り波形および立ち下り波形のそれぞれについて、閾値THを挟む各一対のデータを抽出する。
図2では、立ち上り波形からは、データP3,P4が抽出され、立ち下り波形からは、データP6,P7が抽出される。
【0022】
次に、抽出された各一対のデータに基づいて、立ち上り波形において閾値THを跨ぐタイミング、立ち下り波形において閾値THを跨ぐタイミングを推定する。この推定は、例えば、抽出された一対のデータ間の波形が直線的に変化すると仮定して行う。そして、発光タイミングから立ち上り波形において推定されたタイミングまでの時間T1、及び発光タイミングから立ち下り波形において推定されたタイミングまでの時間T2を算出する。
【0023】
この時間T1及びT2を用い、(1)式に従ってパルス幅Wを算出し、(2)に従って発光タイミングから受光タイミングまでの時間Tを算出する。
W=T2−T1 (1)
T=(T1+T2)/2 (2)
最後に、算出された時間Tが、光を反射した物体との間を、光が往復するのに要した時間として、物体までの距離を算出する。
【0024】
[1−2.補間処理部]
補間処理部6は、
図3に示すように、第1処理部6aと、第2処理部6bとを備える。
第1処理部6a及び第2処理部6bは、いずれもアップサンプリングを実行する。これは、同じ性能を実現するのであれば、1回のアップサンプリングで実現するよりも、複数段に分けて実現した方が、回路規模が抑制されることによる。
【0025】
第1処理部6aおよび第2処理部6bは、いずれも挿入部61と、平滑部62と、を備える。
[1−2−1.挿入部]
挿入部61は、
図4の上段及び中段に示すように、入力データ系列に補間データを挿入する。サンプリングレートをN倍にする場合には、各データの間に、補間データをN−1個ずつ挿入する。
図4では、N=2の場合を示す。以下、アップサンプリングの対象となる入力データ系列の長さをMとする。
【0026】
挿入部61は、例えば、
図5に示すように、遅延部611と、補間値レジスタ612と、セレクタ613とを備える。遅延部611は、直列接続されたM−1個の遅延素子を備える。各遅延素子は、動作クロックに従って、入力データを1クロック分ずつ遅延させる。以下では、初段の遅延素子の入力をDL1、m段目の遅延素子の出力をDLmとする。なお、mは2〜Mの整数である。
【0027】
補間値レジスタ612は、補間データの値である補間値が設定されるレジスタである。補間値は、どのような値でもかまわないが、ここではゼロを用いる。
セレクタ613は、動作クロックに従って、入力されたデータの数をカウントしたカウント値Cに従って、補間値レジスタ612の出力R、遅延部611からの出力DL1〜DLMのいずれかを選択して順次出力する。
【0028】
挿入部61の具体的な動作を、
図6のタイミング図を用いて説明する。
セレクタ613は、カウント値Cが奇数(即ち、C=1,3,5,…)のときには、m=(C+1)/2として、遅延部611からの出力DLmを選択する。カウント値Cが偶数(即ち、C=2,4,6,…)のときには、補間値レジスタ612の出力Rを選択する。
【0029】
これにより、M個のデータを有する入力データ系列DATAに、1つおきに値がゼロの補間データが挿入された2M個のデータを有する出力データ系列OUTが生成される。
[1−2−2.平滑部]
平滑部62は、挿入部61の出力データ系列、即ち、ゼロ挿入されたデータ系列に対してLPF処理を実行することにより、
図4の下段に示すように、データ系列によって表される信号波形を平滑化する。ここで使用するLPFは、リンギングによる波形歪みが全く発生しない特性を有するローパスフィルタである移動平均フィルタである。なお、リンギングには、波形の立ち上がり自時に発生するオーバーシュート、波形の立下り時に発生するアンダーシュートが含まれる。また、平滑部61では、移動平均フィルタに限らず、CICフィルタ及び1−2−1フィルタ等を用いてもよい。CICは、Cascaded Integrator Combの略語である。1−2−1フィルタは、フィルタ係数の比率が1:2:1となるFIRフィルタである。
移動平均フィルタとして、
図7に示すように、連続するQ個のデータの移動平均を算出する単位ブロック621を、直列にP段接続した、P段のQ回平均フィルタを用いる。
図7では、単位ブロック621が、Q=2個のデータの移動平均を算出する場合を例示する。各単位ブロック621は、乗算器を用いることなく加算器及び遅延素子によって構成される。
【0030】
最終段の単位ブロック621の出力には、ゲイン調整回路622が設けられている。ゲイン調整回路622は、ゼロ挿入前のデータ系列の平均値とゼロ挿入後のデータ系列の平均値とが等しくなるようにゲインを調整する。ここでは、1対1の割合でゼロ挿入が行われており、そのまま移動平均を計算するとゲインが1/2になる。このため、ゲイン調整回路622では、通常の移動平均の算出時に用いるゲイン1/2
Pの2倍である1/2
P−1に設定する。ゲイン調整回路622は、除算を実行するが、単位ブロック621が2回平均を行う場合は、2の累乗の除算となるため、複雑な除算器は不要であり、レジスタのシフト動作で実現される。
【0031】
補間処理部6全体としてのアップサンプリングの倍率Nが、N=N1+N2で表されるものとして、第1処理部6aには倍率N1を振り分け、第2処理部6bには倍率N2を振り分ける。回路構成を簡略化するため、N1,N2は、いずれも2の累乗であることが望ましい。また、平滑部62を構成する移動平均フィルタのパラメータP,Qは、第1処理部6aと第2処理部6bとで、同じ値に設定してもよいし、違う値に設定してもよい。
【0032】
[1−2−3.補間処理部の動作]
N1=N2=2である場合の補間処理部6の動作を、
図8を用いて説明する。
第1処理部6aの挿入部61では、ゼロ挿入は遅延なく行われる。但し、補間処理部6ではAD変換部5と同じ動作クロックを使用するため、処理に要する時間が、サンプリングに要した時間M×Tckの2倍になる。Tckは、動作クロックの周期である。また、平滑部62では、最初のデータが入力されてから出力が開始されるまでに要するP×(Q−1)クロック分、処理が遅延する。
【0033】
同様に、第2処理部6bの挿入部61では、第1処理部6aが出力するデータ系列に対して、ゼロ挿入は遅延なく行われるが、処理に要する時間が、サンプリングに要した時間の4倍となる。また、平滑部62では、最初のデータが入力されてから出力が開始されるまでに要するP×(Q−1)クロック分、更に、処理が遅延する。
【0034】
[1−2−4.設計]
次に、第1処理部6aの平滑部62における単位ブロックの段数をP1、第2処理部6bの平滑部62における単位ブロックの段数をP2として、P1,P2の設定について説明する。なお、段数P1、P2は、大きくするほど距離の検出精度は向上するが、回路規模および処理遅延が大きくなる。
【0035】
図9は、変換データ系列、及びアップデータ系列から抽出される受光タイミングに従って算出される物体までの距離と、実際の物体との距離と誤差(以下、距離誤差)を、物体までの距離を変化させながらシミュレーションによって求めた結果である。
【0036】
図9に示すように、距離誤差は、周期性を有し、アップサンプリングを行うことで、誤差が小さくなる。
この距離誤差の最大値を、(P1,P2)の様々な組み合わせについて算出した結果が
図10である。受光信号が非飽和波形である場合と飽和波形である場合とを比較すると、距離誤差は、非飽和波形より飽和波形のときの方が大きい。合計段数P1+P2が同じであっても、その分配の仕方によって距離誤差は変化する。距離誤差は小さいほうがよいが、合計段数P1+P2も可能な限り小さくするほうが望ましい。
【0037】
これに加えて、アップサンプリングの前後でのパルス幅およびS/N等も合計段数P1+P2と相関がある。合計段数P1+P2が増加するほど、パルス幅の増加は大きくなる傾向があり、S/Nは小さくなる傾向がある。また合計段数P1+P2が同じであれば、P1の段数が大きいほど、距離誤差が大きくなる傾向にある。
【0038】
これらのシミュレーション結果に基づき、距離誤差、パルス幅の増加、S/Nが、要求される性能を満たし、且つ、合計段数ができるだけ小さくなるように、段数P1,P2を設定する。
【0039】
[1−3.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1a)補間処理部6の平滑部62では、ステップ応答においてリンギングを全く発生しない特性を有したLPFが用いられる。このため、受光信号が飽和波形であったとしても、アンプサンプリング後の波形にリンギングが生じることがなく、アップサンプリング後の波形に起因する距離検出精度の低下を抑制することができる。
【0040】
(1b)補間処理部6は、アップサンプリング後のサンプリングレートで動作するのではなく、AD変換部5と同じ動作クロックに従って動作するため、消費電力及び発熱を低減することができる。
【0041】
[2.第2実施形態]
[2−1.第1実施形態との相違点]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0042】
前述した第1実施形態では、補間処理部6は、補間対象のデータ系列に対する処理をシリアルに実行している。これに対し、第2実施形態では、補間対象のデータ系列に対する処理をパラレルに実行する点で、第1実施形態と相違する。
【0043】
[2−2.補間処理部]
次に、第2実施形態の補間処理部8は、
図11に示すように、第1処理部8aと第2処理部8bとを有する。
【0044】
第1処理部8aは、補間値レジスタ81と、K個の単位ブロックA
1〜A
Kと、セレクタ82とを備える。
補間値レジスタ81は、補間値Rが設定される。ここでは、R=0である。
【0045】
単位ブロックA
1〜A
Kは、2入力2出力の回路ブロックあり、直列接続される。
図12に示すように、初段の単位ブロックA
1は、補間値レジスタ81に記憶された補間値R、及び変換データ系列D
1〜D
Mが入力される。単位ブロックA
1は、2つの加算器と遅延素子とで構成される。単位ブロックA
1は、変換データ系列D
1〜D
Mへの補間値Rを有する補間データの挿入と、補間データが挿入されたデータ系列において連続する2つのデータに対する移動平均の算出とを、2並列で実行し、ゲインを2倍にしたデータX
11,X
12を出力する。ゲインを2倍にする理由は、第1実施形態において、平滑部62の出力のゲインを2倍にする理由と同じである。
【0046】
2段目以降の単位ブロックA
iは、いずれも同様の構成を有する。但し、i=2,3,…Kである。単位ブロックA
iは、前段の単位ブロックA
i-1の出力X
i-1,1,X
i-1,2が入力される。単位ブロックA
iは、単位ブロックA
1の構成に加え、2つの出力値をそれぞれ1/2倍する2つの除算器を備える。単位ブロックA
iは、前段の出力によって表されるデータ系列において連続する2つのデータに対する移動平均を2並列で実行した結果であるデータX
i1,X
i2を出力する。
【0047】
セレクタ82は、第1処理部8aで使用する移動平均フィルタの段数がP1である場合に、データX
P1,1,X
P1,2を選択して、第2処理部8bへの入力データE
1,E
2とする。
第2処理部8bは、2出力の補間値レジスタ83と、K個の単位ブロックB
1〜B
Kと、セレクタ84とを備える。
【0048】
補間値レジスタ83は、補間値レジスタ81と同様に、補間データの値である補間値Rが設定される。ここでは、R=0である。
単位ブロックB
1〜B
Kは、4入力4出力の回路ブロックあり、直列接続される。
図13に示すように、初段の単位ブロックB
1は、補間値レジスタ83に記憶された補間値R、及び第1処理部8aから供給されるデータE
1,E
2が入力される。単位ブロックB
1は、4つの加算器と1つの遅延素子とで構成される。単位ブロックB
1は、データE1,E2によって表される、P1倍にアップサンプリングされたデータ系列への補間値Rを有する補間データの挿入と、補間データが挿入されたデータ系列において連続する2つのデータに対する移動平均の算出とを4並列で実行し、ゲインを2倍にしたデータY
11,Y
12,Y
13,Y
14を出力する。ゲインを2倍にする理由は、第1実施形態において、平滑部62の出力のゲインを2倍にする理由と同じである。
【0049】
2段目以降の単位ブロックB
iは、いずれも同様の構成を有する。但し、i=2,3,…Kである。単位ブロックB
iは、前段の単位ブロックB
i-1の出力Y
i-1,1,Y
i-1,2,Y
i-1,3,Y
i-1,4が入力される。単位ブロックB
iは、単位ブロックB
1の構成に加え、4つの出力値をそれぞれ1/2倍する4つの除算器を備える。単位ブロックB
iは、前段の出力によって表されるデータ系列において連続する2つのデータに対する移動平均を4並列で実行した結果であるデータX
i1,X
i2,Y
i3,Y
i4を出力する。
【0050】
セレクタ84は、第2処理部8bで使用する移動平均フィルタの段数がP2である場合に、データY
P2,1,Y
P2,2,Y
P2,3,Y
P2,4を選択してデータF1,F2,F3,F4として出力する。この4並列のデータを直列に並び変えたものが距離演算部7に供給されるアップデータ系列となる。
【0051】
[2−3.補間処理部の動作]
補間処理部8の動作を、
図14を用いて説明する。
第1処理部8aでは、ゼロ挿入と平滑化とが一括して行われ、しかも2並列で行われるため、AD変換部5と同じ動作クロックで動作しているにも関わらず、出力E1,E2の出力が開始されてから終了までに要する時間が、サンプリングに要した時間M×Tckと同じ長さになる。但し、第1処理部8aにデータが入力されてから出力E1,E2が出力されるまでに、使用する段数P1に応じた遅延が発生する。
【0052】
同様に、第2処理部8bでは、ゼロ挿入と平滑化とが一括して行われ、しかも4並列で行われるため、出力F1〜F4の出力が開始されてから終了までに要する時間が、サンプリングに要した時間M×Tckと同じ長さになる。但し、第2処理部8bにデータが入力されてから出力F1〜F4が出力されるまでに、使用する段数P2に応じた遅延が発生する。
【0053】
[2−3.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1a)(1b)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0054】
(2a)補間処理部8は、並列処理を行っているため、AD変換部5と同じ動作クロックを使用しているにも関わらず、変換データ系列から、そのN倍のデータ数を有するアップデータ系列を生成する演算を、サンプリング時間に、単位ブロックA,Bでの遅延時間を加えた程度の処理時間で実現でき、処理時間を削減できる。
【0055】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0056】
(3a)上記実施形態では、補間処理部6は、補間処理を2段階に分けて実行しているが、3段階以上に分けて実行してもよい。また補間処理を複数段にわけることなく、1段階で実行してもよい。
【0057】
(3b)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0058】
(3c)上述した距離測定装置の他、当該距離測定装置を構成要素とするシステムなど、種々の形態で本開示を実現することもできる。