(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
小流量動作と、前記小流量動作よりも流量の大きい大流量動作と、の少なくとも2段階に切換えて射出成形機のアクチュエータに作動油を供給する油圧供給システムであって、
前記作動油を前記アクチュエータに向けて吐出するときに正回転し、圧力制御において配管内の圧力を降下させるときに逆回転する主油圧ポンプおよび副油圧ポンプと、
前記小流量動作のときに、前記主油圧ポンプから吐出される前記作動油だけを前記アクチュエータに向けて流し、かつ、前記大流量動作のときに前記主油圧ポンプおよび前記副油圧ポンプの双方から吐出される前記作動油を前記アクチュエータに向けて流す主作動油回路と、
前記小流量動作のときに、前記副油圧ポンプから吐出される前記作動油を前記主作動油回路から迂回して貯油タンクに戻すバイパス回路と、
前記大流量動作のときに、前記副油圧ポンプが吐出する前記作動油が前記バイパス回路に流れるのを阻止し、かつ、
前記圧力制御において前記副油圧ポンプが逆回転するときには、前記バイパス回路を介して前記貯油タンクから吸い上げられる前記作動油が前記副油圧ポンプに流れるのを許容するロジック弁と、を備える、
ことを特徴とする油圧供給システム。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について、射出成形機の型締装置1を例にして説明する。
本実施形態の型締装置1は、例えば充填工程から保圧工程に移行する過程で、流量制御から圧力制御に移行する際に、可変速可能な駆動モータとしてのサーボモータ45の回転を正回転から逆回転に速やかに切り替えることのできる油圧供給システム30を備える。以下、型締装置1の構成および動作の順に説明する。
【0022】
[型締装置1の構成]
図1に示すように、本実施形態の型締装置1は、所望の形状の成形品を得るための一対の固定金型14および可動金型15と、固定金型14と可動金型15との間に形成されるキャビティに射出材料である溶融樹脂を射出する射出シリンダ19と、型締めのための駆動力を発生させる型締シリンダ18と、型締シリンダ18に作動油を供給する油圧供給システム30と、各種構成を制御するコントローラ80と、を備える。
【0023】
型締装置1は、
図1に示すように、ベースフレーム11の一端側の上面に、固定金型14を保持する固定ダイプレート12が固設されている。
ベースフレーム11の他端側の上面には、固定ダイプレート12に対向して、可動金型15を保持する移動ダイプレート13が進退移動可能に設けられる。ベースフレーム11の上には、ガイドレール26が敷設されており、このガイドレール26にガイドされたリニアベアリング27が、スライド台28を介して移動ダイプレート13を支持している。なお、リニアベアリング27の代わりに摺動板を使用して、スライド台28を介して移動ダイプレート13を支持してもよい。
【0024】
固定ダイプレート12にはストロークが小さくかつ断面積の大きな油圧アクチュエータである型締シリンダ18が、その四隅に設けられている。なお、型締シリンダ18は、移動ダイプレート13に設けることもできる。型締シリンダ18の中を摺動するラム16はその一側面にそれぞれタイバー17の一端が接続され、このタイバー17は対向する移動ダイプレート13が型閉のため近づくと、移動ダイプレート13に開けられた4個の挿通孔を貫通する。
型締シリンダ18には、後述する主配管51が接続されており、この主配管51は、型締シリンダ18の型締側室181、型開側室182へ油を供給する。
【0025】
移動ダイプレート13の移動方向に平行に設置されるボールねじ軸25により移動ダイプレート13の移動手段が構成される。ボールねじ軸25は、固定ダイプレート12に保持された軸受箱20とベースフレーム11に保持された軸受箱21とによって回転可能に、かつ軸方向を拘束して支えられ、サーボモータ22により動力伝達ギア23、24を介して駆動される。ボールねじ軸25は、回転数、回転速度がコントローラ80によりサーボモータ22を介して制御される。
各タイバー17の他端は、それぞれ等ピッチの複数のリング状の平行溝(または螺旋状のねじ溝)が形成されている。移動ダイプレート13の背面には、各タイバー17のリング状の平行溝と噛合するハーフナット29が設けられている。
【0026】
以上の型締装置1は、固定金型14と可動金型15とが開いた状態から、
図1に示すように、固定金型14と可動金型15が閉じた状態となるまで、サーボモータ22で駆動されるボールねじ軸25の回転によって移動ダイプレート13が移動する。移動ダイプレート13は固定金型14と可動金型15の互いの対向面が当接すると停止するようになっている。
【0027】
この移動ダイプレート13の停止位置でハーフナット29が作動してハーフナット29の内側のリング状の平行溝がタイバー17の先端部のリング状の平行溝と係合してタイバー17とハーフナット29とが結合する。その後、型締シリンダ18の型締側室181を昇圧して型締めする。このようにして型締めを行った後に、射出シリンダ19から固定金型14と可動金型15とで形成されるキャビティ内に溶融樹脂を射出して成形品を成形する。
【0028】
[油圧供給システム30]
油圧供給システム30は、
図2に示すように、型締シリンダ18に向けて作動油を吐出する油圧源40と、油圧源40に連なり、油圧源40から吐出される作動油を型締シリンダ18に届ける作動油回路50と、を備える。
油圧供給システム30における油圧源40および作動油回路50の動作は、コントローラ80により制御される。
【0029】
[油圧源40]
油圧源40は、サーボモータ45と、サーボモータ45の回転速度および回転方向を検出するエンコーダ47と、サーボモータ45の回転駆動により動作して作動油を吐出する主油圧ポンプ41および副油圧ポンプ43と、を備える。
油圧供給システム30は、主油圧ポンプ41と副油圧ポンプ43の双方から吐出される作動油を型締シリンダ18に供給する大流量動作と、主油圧ポンプ41から吐出される作動油だけを型締シリンダ18に供給する小流量動作の、2段階に切り替えて運転できる。
【0030】
サーボモータ45は、回転角度をエンコーダ47が検出しており、検出された回転角度をコントローラ80に出力する。コントローラ80は、サーボモータ45の回転数Nの指令値に対応するパルス信号を生成しサーボモータ45に出力してサーボモータ45を回転数Nで回転駆動させる。コントローラ80には、サーボモータ45のエンコーダで検出された回転角度が継続して入力されており、コントローラ80は、当該回転角度に基づいてフィードバック補正をしながら回転数Nが得られるようにサーボモータ45を制御する。
【0031】
ここで、サーボモータ45は、サーボ機構において位置、速度等を制御する用途に使用可能なモータであるかぎり、その種類は任意である。例えば、ACサーボモータ、DCサーボモータ、ステッピングモータなどを適用できる。また構造についても、例えば、ステータ構造は分布巻き型でも集中巻き型でもどちらでもよいし、ロータ構造は表面磁石貼付型(SPM)モータでも、内部磁石埋込型(IPM)モータのどちらでもよい。
【0032】
主油圧ポンプ41と副油圧ポンプ43は、いずれも固定容量型のポンプであり、例えば双方の容量が同じであれば、大流量動作は小流量動作の2倍の流量の作動油を型締シリンダ18に供給できる。ただし、主油圧ポンプ41と副油圧ポンプ43の容量は異なっていてもよい。
【0033】
[作動油回路50]
作動油回路50は、油圧源40から吐出される作動油を流量制御による型締シリンダ18に供給する給油動作を担う。この基本的な動作は、主油圧ポンプ41からの作動油だけを型締シリンダ18に供給する小流量動作と、主油圧ポンプ41と副油圧ポンプ43双方からの作動油を型締シリンダ18に供給する大流量動作と、を含んでいる。
作動油回路50は、流量制御による給油動作のほかに、圧力制御動作を備える。この圧力制御動作は、作動油回路50が備える圧力センサ55の検出値が目標圧力に達すると、サーボモータ45をそれまでの正回転から逆回転に切り替えて運転して圧力を下げる動作である。この動作は、圧抜動作と称される。
作動油回路50は、以上の給油動作と圧抜動作を実現するために、以下の構成を備える。
【0034】
作動油回路50は、
図2に示すように、主油圧ポンプ41から吐出される作動油を型締シリンダ18に向けて流す主配管51と、副油圧ポンプ43から吐出される作動油を型締シリンダ18に向けて流す副配管53と、を備える。副配管53はその下流端である合流点JPにおいて主配管51に合流し、副配管53を流れる作動油は、主配管51との合流点JPよりも下流においては主配管51を通って型締シリンダ18に向けて供給される。なお、作動油回路50において、上流および下流は、主油圧ポンプ41および副油圧ポンプ43を正回転させたときに作動油が流れる向きを基準にしており、主油圧ポンプ41および副油圧ポンプ43が最も上流に位置することになる。また、主配管51と副配管53を含む回路が、本発明の主作動油回路を構成する。
【0035】
作動油回路50は、主配管51を流れる作動油の圧力を検出する圧力センサ55を備える。主配管51は主油圧ポンプ41と圧力センサ55の間に流路抵抗となる弁、その他の機器類を有していないので、圧力センサ55は主油圧ポンプ41から吐出される作動油の圧力を高い精度で検出できる。
【0036】
作動油回路50は、副配管53に逆止弁57を備える。逆止弁57は、逆止弁57を基準にして上流から下流に向けて流れる作動油を通過させるが、その逆の作動油の通過を阻止する。逆止弁57は、小流量動作のときに、主油圧ポンプ41から吐出される高圧の作動油が副配管53を通って上流の副油圧ポンプ43に負荷されるのを阻止する。逆止弁57は、副配管53と主配管51の合流点JPと後述するロジック弁70に連なる副給油管58Aが接続される位置との間に設けられる。
【0037】
作動油回路50は、副配管53から分岐するバイパス回路58を備える。
バイパス回路58は、小流量動作のときに副油圧ポンプ43から吐出され副配管53に流れている作動油を、主作動油回路を迂回して、貯油タンク100Bに流すのに用いられる。
バイパス回路58は、ロジック弁70が途中に接続されており、副配管53とロジック弁70を接続する副給油管58Aと、ロジック弁70の第一弁室77と貯油タンク100Bを接続する吸排管58Bと、を備える。また、バイパス回路58は、ロジック弁70を動作するための作動油をロジック弁70の第二弁室78に流す流路を切り替える切換弁60を備える。なお、
図2において、貯油タンク100A、100Bを区別しているが、実際にはそれぞれが連通しており、相互に作動油が流通する。
【0038】
ロジック弁70は、小流量動作のときに、副油圧ポンプ43から吐出される作動油をバイパス回路58に向けて流す。また、ロジック弁70は、大流量動作のときには、副油圧ポンプ43から吐出され副配管53を流れてきた作動油をそのまま副配管53の下流に向けて流すためにバイパス回路58への流路を閉じる。なお、
図2は、小流量動作におけるロジック弁70を示している。
【0039】
切換弁60は、弁体61と、弁体61を移動させる電磁ソレノイド67と、を備える。
弁体61は、第一弁体63と、第二弁体64と、を備える。
【0040】
切換弁60は、小流量動作および主油圧ポンプ41および副油圧ポンプ43が逆回転するときに以下のように動作する。切換弁60は、
図4に示すように、第一弁体63により主配管51の作動油をロジック弁の動作用の油室である第二弁室78に供給する流路を閉じる。また、切換弁60は、第一弁体63により第二弁室78と貯油タンク100Bを連通する流路を開く。
また、切換弁60は、大流量動作のときには、
図5に示すように、第二弁体64により主配管51とロジック弁70の第二弁室78とを連通する流路を開くとともに、第二弁室78と貯油タンク100Bを連通する流路を閉じる。
【0041】
弁体61は、例えば、電磁ソレノイド67に通電されないオフの状態において、
図2および
図4に示すように、第一弁体63が吸排管58Bと接続される。これにより、第二弁室78は第一弁体63を介して吸排管58Bと接続される。このとき、弁体61は小流量動作または逆回転動作に対応する。
また、弁体61は、例えば、電磁ソレノイド67に通電されるオンの状態において、
図5に示すように、第二弁体64が主配管51と接続されることで、第二弁室78は第二弁体64を介して主配管51に連通される。このとき、弁体61は大流量動作に対応する。
【0042】
電磁ソレノイド67は、コントローラ80からの指示に応じて、弁体61を小流量動作に対応する位置と大流量動作に対応する位置を選択的に移動させる。
【0043】
ロジック弁70は、弁箱74と、弁箱74の内部に設けられる弁体75と、弁体75に図中の下向きに弾性力を付与する弾性体76と、を備える。弁箱74は、弁体75を境にして、弾性体76の側に設けられ大口径の流入流出口を備えた第一弁室77と、第一弁室77と反対側に設けられ弁体75を駆動するためのパイロットポート(Pポート)を備えた第二弁室78と、を有している。ロジック弁70は、小流量の作動油でパイロット圧を第二弁室78に供給して弁体75を駆動して第一弁室77の大口径流路を開閉することができる。
【0044】
副給油管58Aは副配管53と弁箱74の第一弁室77とを接続し、主給油管71は切換弁60と主配管51とを接続する。接続管79は切換弁60と弁箱74の第二弁室78のPポートとを接続する。
【0045】
ロジック弁70は、弾性体76に上向きの外力が加わって縮み、
図5に示すように弁体75が副給油管58Aを閉じる位置まで変位すると、作動油が流れない閉の状態をなす。
一方、ロジック弁70は、第二弁室78に油圧を作用させて弾性体76に上向きの外力が加わらなければ、
図4、
図6に示すように弁体75は副給油管58Aから下向きに離れて、バイパス回路58と副給油管58Aが連通して作動油が流れる開の状態をなす。このロジック弁70は、所謂、ノーマルオープン型のロジック弁である。
【0046】
次に、小流量動作(
図4)、逆回転動作(
図6)および大流量動作(
図5)における切換弁60およびロジック弁70の動作を説明する。
小流量動作のときには、電磁ソレノイド67に通電しないオフの状態とし、第二弁室78と吸排管58Bを連通させる。これにより、切換弁60と吸排管58Bを介して、第二弁室78が貯油タンク100Bと連通する。このため第二弁室78内の油圧がほぼゼロ(貯油タンク100Bと同圧)となるので、ロジック弁70には弾性体76に抗してロジック弁70の弁体75を上向きに変位させる力がなくなる。このとき弁体75は弾性体76により、
図4に示すようにバイパス回路58から下向きに離れるので、副配管53からバイパス回路58に作動油が流れることが可能な開の状態となり、副配管53の作動油がロジック弁70、バイパス回路58、吸排管58Bをこの順に通って貯油タンク100Bに排出される。
【0047】
同様に、主油圧ポンプ41および副油圧ポンプ43が逆回転するときには、電磁ソレノイド67に通電しないオフの状態とし、第二弁室78と吸排管58Bを連通させる。これにより、第二弁室78が切換弁60と吸排管58Bを介して貯油タンク100Bを連通する。このため、第二弁室78内の油圧がほぼゼロ(貯油タンク100Bと同圧)となるので、ロジック弁70には弾性体76に抗して弁体を75上向きに変位させる力がなくなる。このとき弁体75は弾性体76により、
図6に示すようにバイパス回路58から下向きに離れるので、バイパス回路58から副配管53に作動油が流れることが可能な開の状態となり貯油タンク100Bの作動油が吸排管58B、バイパス回路58、ロジック弁70をこの順に通って副配管53に流入する。
【0048】
大流量動作のときには、電磁ソレノイド67に通電されるオンの状態とし、第二弁室78と主配管51を連通させる。これにより、第二弁室78が切換弁60と主給油管71を介して主油圧ポンプ41と連通する。このため、主油圧ポンプ41から吐出した作動油が第二弁室78に流入すると、第二弁室78に到った作動油が瞬時に弁体75を弾性体76に対抗して上向きに押すので、
図5に示すように、ロジック弁70は閉じられる。したがって、副油圧ポンプ43から吐出される作動油は、バイパス回路58に流入することなく、副配管53を下流に向けて流れる。
【0049】
[コントローラ80]
次に、コントローラ80について
図3を参照して説明する。
コントローラ80は、制御設定値を入力する入力部81と、サーボモータ45、切換弁60などへの制御指令を生成する制御部83と、制御部83により生成された制御指令を出力する指令出力部85と、制御指令を生成するのに必要な各種データが記憶されている記憶部87と、を備える。
【0050】
制御部83は、サーボモータ45の正回転または逆回転の指令、正回転または逆回転における回転速度の指令を生成する。制御部83が圧力センサ55の検出圧力を継続的に取得する。
また、制御部83は、切換弁60の動作指令を生成する。つまり、制御部83は、電磁ソレノイド67に通電されないオフの状態の指令または電磁ソレノイド67に通電するオンの状態の指令を選択的に生成する。
以上の制御指令は、指令出力部85から各機器に向けて送られる。
【0051】
記憶部87は、流量制御と圧力制御のいずれで運転されるかを選択する閾値である目標圧力に関するデータ、この目標圧力よりも低い減速制御圧力に関するデータなどを記憶する。
制御部83は、圧力センサ55の検出圧力と目標圧力に関するデータの比較、圧力センサ55の検出圧力と減速制御圧力に関するデータの比較を継続的に行う。
【0052】
[油圧供給システム30の動作]
次に、
図4〜
図6を参照して油圧供給システム30の動作を説明する。なお、
図4は小流量動作を行っている油圧供給システム30を示し、
図5は大流量動作を行っている油圧供給システム30を示す。小流量動作および大流量動作はいずれも流量制御に該当する。一方、
図6は圧力制御を行っている油圧供給システム30を示す。
図4〜
図6において、太線で示される配管は、作動油が流れていることを示し、白抜きの矢印は作動油の流れる向きを示している。以下、小流量動作、大流量動作および圧力制御の順に説明する。
【0053】
[小流量動作(
図4,流量制御)]
油圧供給システム30は、コントローラ80からの小流量動作を行うことの指示を受けると、切換弁60の第一弁体63が第二弁室78と吸排管58Bとを接続するように電磁ソレノイド67が駆動する。
サーボモータ45は、コントローラ80からの指示に基づいて所定の回転数Nで回転し、サーボモータ45に接続される主油圧ポンプ41と副油圧ポンプ43が正回転する。主油圧ポンプ41と副油圧ポンプ43は、機械的に連結されており、相互に連動して回転する。
【0054】
主油圧ポンプ41の正回転により貯油タンク100Aから吸い上げられた作動油は主油圧ポンプ41から吐出された後に、主配管51を型締シリンダ18に向けて流れる。
【0055】
副油圧ポンプ43の正回転により、貯油タンク100Aから吸い上げられた作動油は副油圧ポンプ43から吐出された後に副配管53を流れてロジック弁70に到る。したがって、作動油は、ロジック弁70を通ってバイパス回路58に流れ、吸排管58Bを通って貯油タンク100Bに排出される。
【0056】
以上の通りであり、小流量動作においては、主油圧ポンプ41と副油圧ポンプ43はともに運転されるが、切換弁60を制御することにより、主油圧ポンプ41から吐出される作動油だけが型締シリンダ18に供給される。
【0057】
小流量動作において、副油圧ポンプ43から吐出される作動油がロジック弁70を通って流路抵抗の小さい貯油タンク100Bに戻り、主油圧ポンプ41から吐出される作動油だけを主配管51に流す。これにより、小流量動作を行う過程で高圧となる対象を主油圧ポンプ41だけに限定できるので、小流量動作時のサーボモータ45の負荷トルクを低減させ、サーボモータ45のサイズを小さくできる利点がある。
【0058】
[大流量動作(
図5,流量制御)]
油圧供給システム30は、コントローラ80からの大流量動作を行うことの指示を受けると、切換弁60の第二弁体64が第二弁室78と主配管51とを接続するように電磁ソレノイド67が駆動する。
サーボモータ45は、コントローラ80からの指示に基づいて所定の回転数Nで回転し、サーボモータ45に接続される二連の主油圧ポンプ41と副油圧ポンプ43が正回転する。
【0059】
主油圧ポンプ41の正回転により、貯油タンク100Aから吸い上げられた作動油は主油圧ポンプ41から吐出された後に、主配管51を型締シリンダ18に向けて流れる。また、この作動油は、切換弁60を介して第二弁室78に流れこみ上述の通りロジック弁70を閉じる。
【0060】
副油圧ポンプ43の正回転により、貯油タンク100Aから吸い上げられた作動油は主油圧ポンプ41から吐出された後に副配管53を流れ、ロジック弁70に到る。ロジック弁70は切換弁60により第二弁室78に主油圧ポンプ41から吐出された作動油によりバイパス回路58への流路が閉じられている。これにより、ロジック弁70に至った作動油は、バイパス回路58に流入することなくそのまま副配管53を下流に向けて流れる。
【0061】
以上の通りであり、大流量動作においては、主油圧ポンプ41と副油圧ポンプ43はともに運転されるとともに、主油圧ポンプ41から吐出される作動油と副油圧ポンプ43から吐出される作動油が型締シリンダ18に供給される。
【0062】
[圧力制御(
図6,圧抜制御)]
油圧供給システム30は、コントローラ80からの圧力制御動作を行うことの指示を受ける。このときに切換弁60の第二弁体64により第二弁室78と主配管51とを連通する流路を開いていたとする。そうだとすれば、第一弁体63により第二弁室78と吸排管58Bとを連通する流路を開くように電磁ソレノイド67を駆動させる。ロジック弁70はノーマルオープン型のロジック弁70である。したがって、第一弁体63による第二弁室78と吸排管58Bを介して貯油タンク100Bと連通して第二弁室78内の油圧が低下するのに遅延無く、速やかに弁体75を開動作させることができる。このように、油圧供給システム30は、大流量動作から小流量動作、圧力制御へ高応答で切り替えることができるので、目標圧力に対するオーバーシュートを小さく抑えることができる。
ただし、油圧供給システム30は、圧力制御動作を行うことの指示を受けたときに切換弁60の第二弁体64により第二弁室78と主配管51とを連通する流路を開いていたとしても、第二弁体64によって第二弁室78と主配管51とを連通する流路を開いた状態をそのまま維持することもできる。
サーボモータ45は、コントローラ80からの指示に基づいて所定の回転数Nで逆回転し、サーボモータ45に接続される二連の主油圧ポンプ41と副油圧ポンプ43が逆回転する。
【0063】
主油圧ポンプ41が逆回転すると主配管51に存在する作動油が抜き取られ、主油圧ポンプ41から貯油タンク100Aに向けて吐出される。
【0064】
副油圧ポンプ43が逆回転すると、副配管53に存在する作動油が抜き取られる。
一方で、油圧供給システム30は、バイパス回路58を介して貯油タンク100Bの作動油を吸い上げる。ロジック弁70はノーマルオープン型のロジック弁70であるので、このときに副配管53内の油圧が低下するのにともなって第一弁室77内の油圧が低下しても、弁体75を開位置に維持できる。つまり、
図6に示すように、副配管53は、ロジック弁70を介して貯油タンク100Bに通じている。したがって、副油圧ポンプ43が逆回転すると、バイパス回路58のロジック弁70を介して貯油タンク100Bの作動油が吸い上げられる。
【0065】
弾性体76の図中下向きの復元力とともに、貯油タンク100Bから吸い上げられた作動油が、
図6に示すように、第一弁室77に到って弁体75を弾性体76に対抗してあるいは共動して下向きに押し下げるので、ロジック弁70は開く。したがって、貯油タンク100Bの作動油は、バイパス回路58を通過した後に副油圧ポンプ43から貯油タンク100Aに吐出される。
【0066】
ここで、バイパス回路58に備えた流路開閉弁が、流路断面積が大きなロジック弁70ではなく例えば切換弁のような流路断面積が小さいものとすると、副油圧ポンプ43の逆回転に伴って、流路断面積が小さく流動抵抗の大きな流路を介して貯油タンク100Bの作動油が吸い上げられることになる。しかし、この場合、副配管53と副油圧ポンプ43内にキャビテーションが発生し、これらが破損するおそれがある。
【0067】
また、第二弁室78に負荷するロジック弁70を閉じる油圧はロジック弁70を開こうとする第一弁室77に連通する主配管51および副配管53の油圧とほぼ同じになる。したがって、油圧アクチュエータの動作負荷が大きく作動油圧が高くなり、ロジック弁70を開こうとする力が大きくなったとしても、ほぼ同じ高い油圧を第二弁室78に負荷することができる。逆に油圧アクチュエータの動作負荷が小さく作動油圧が低くなり、ロジック弁70を開こうとする力が小さくなったとしても、ほぼ同じ低い油圧を第二弁室78に負荷することができる。これにより、ロジック弁70を閉じる際に、ロジック弁70を閉じようとする油圧に見合った油圧を加えることができる。このように、本実施形態によれば、ロジック弁70を閉じるために常に高い油圧を第二弁室78に供給する必要がないので、油圧供給システム30は省エネルギ化された運転をすることができる。
なお、バイパス回路58にロジック弁70を設けていない油圧供給システムを、以下、比較システムということがある。
【0068】
以上の通りであり、圧力制御動作において、主油圧ポンプ41の逆回転により主配管51から作動油を抜き取ることで、主配管51における作動油の圧力を制御する。また、圧力制御動作において、副油圧ポンプ43が逆回転すると、副油圧ポンプ43とバイパス回路58と貯油タンク100A,貯油タンク100Bの間を循環する。
【0069】
[油圧供給システム30の動作例]
次に、油圧供給システム30の動作について、射出成形機が充填工程から保圧工程に移行する過程を例にして説明する。なお、
図7は本実施形態の油圧供給システム30による移行過程を示し、
図8は比較システムによる移行過程を示している。
【0070】
射出成形機が充填工程を行うときには、コントローラ80からの指示により、切換弁60は第二弁体64が第二弁室78と主配管51とを連通させて、ロジック弁70を閉じるので副油圧ポンプ43から吐出される作動油は、副配管53をそのまま通って、主配管51に合流する。主油圧ポンプ41からも作動油が主配管51に吐出されるので、
図7(b)に示すように、主油圧ポンプ41と副油圧ポンプ43を合わせた大供給流量により充填工程が行われる。このとき、サーボモータ45の回転速度を制御して、充填工程時において、主油圧ポンプ41と副油圧ポンプ43のそれぞれの吐出流量が、
図7の(d)に示すように、大流量とされる。
【0071】
溶融樹脂の充填が終了して保圧工程に移行すると、圧力センサ55の検出圧力は、
図7(a)に示すように、徐々に、上昇する。
【0072】
次に、
図7(a)に示すように、圧力センサ55の検出圧力が、圧力制御時の目標圧力(保圧工程での目標圧力)よりも低い減速制御圧力を超えると、コントローラ80は、
図7(c)、(d)に示すように、サーボモータ45の回転速度を徐々に低下させて、主油圧ポンプ41と副油圧ポンプ43からの作動油の吐出流量を徐々に減少させる。
【0073】
また、圧力センサ55が目標圧力を検知した後は、
図7(b)、(c)に示すように、コントローラ80は、主油圧ポンプ41と副油圧ポンプ43の動作を大流量動作から小流量動作に移行させる。コントローラ80は、これに加えて、サーボモータ45の回転速度を下げていき、それまでの正回転から逆回転に回転の向きを変えて圧抜動作をする。
図7(d)に示すように、主油圧ポンプ41と副油圧ポンプ43のそれぞれの吐出流量は下がり、逆回転に回転の向きが切り替わると、マイナスの吐出流量、つまり吸い上げに移行する。
【0074】
サーボモータ45の逆回転に伴って主油圧ポンプ41が逆回転することにより、主配管51の作動油が主油圧ポンプ41を通って貯油タンク100Aに到る。したがって、主配管51の作動油の圧力が下がる。
副油圧ポンプ43も逆回転するので、バイパス回路58を介して貯油タンク100Bの作動油が吸い上げられ、副油圧ポンプ43を通って貯油タンク100Aに到る。
【0075】
次に、比較システムについて
図8を参照して説明する。
基本的な挙動は、
図7に示した本実施形態と同じであるが、サーボモータ45が逆回転する前に、主油圧ポンプ41と副油圧ポンプ43の動作が大流量動作から小流量動作に移行する。この理由は前述したとおりである。
【0076】
また、大流量動作から小流量動作に切り換えるには、切換弁60を動作させる必要があるので、
図8(b)に破線で示すように、現実には大流量動作から小流量動作への切換えは、圧力センサ55の応答時間、コントローラ80から切換弁60に切換動作を指令する処理時間、および切換弁60の応答時間の分だけ、主配管51内の圧力増大に対して遅れる。さらに、副配管53内が負圧となってキャビテーションが発生しないように、副配管53内の圧力降下速度を緩やかにするために逆回転速度を低速にする必要がある。
【0077】
そして、本実施形態の油圧供給システム30はロジック弁70を介して圧抜動作を行うのに対して、比較システムは流路断面積が小さな切換弁などを介して圧抜動作を行う。
したがって、
図7(c)と
図8(c)を比較すれば判るように、油圧供給システム30は比較システムに比べ、油圧供給システム30はキャビテーション発生を防止できることによりサーボモータ45の逆回転を高速で行うことができるので、圧抜きを迅速に行うことができる。これにより、
図7(a)と
図8(a)に示すように、油圧供給システム30は比較システムに比べて、目標圧力まで戻る、具体的には目標圧力まで圧力が降圧する時間が短い。
【0078】
[効 果]
以下、本実施形態の油圧供給システム30による効果を説明する。
はじめに、油圧供給システム30は、小流量動作のときに副油圧ポンプ43から吐出される作動油を主作動油回路から迂回して貯油タンク100Bに戻すバイパス回路58を介して圧抜動作を行う。しかも油圧供給システム30は、流路断面積の大きく、流路抵抗の小さいロジック弁70を用いる。したがって、サーボモータ45を逆回転に切り換える際のキャビテーションの発生を防止することができる。
【0079】
また、ロジック弁70を閉じるために供給する油圧を、ロジック弁70を閉じようとする油圧に見合った適正な油圧とすることができるので、油圧供給システム30を省エネルギ化することができる。
ここで、比較システムだと、副油圧ポンプ43が逆回転すれば、副配管53、流路断面積の小さい切換弁などを介して貯油タンク100Bから作動油を吸い上げることになる。ところが、切換弁などは流路抵抗が大きいために、副油圧ポンプ43にキャビテーションが生じて、破損するおそれがある。
【0080】
次に、圧抜動作に用いられるロジック弁70は流路抵抗、つまり圧力損失が小さい。これにより、作動油の吸い上げ時に副配管53内の圧力が負圧になるのを防止でき、キャビテーションの発生を危惧することなく逆回転するサーボモータ45の回転速度を高速にできる。したがって、本実施形態によれば、配管内の圧力を速やかに低下させることができる。
これに対して、比較システムだと、流路抵抗が大きいために、吸い上げ時に副配管53内の圧力が負圧になりやすいため、キャビテーションの発生を防止するために逆回転するサーボモータ45の回転速度は低速に留まる。
【0081】
本発明者によるサーボモータ45の回転速度にかかわる試算結果を
図9に示す。
図9は、ポンプサイズが20cc/revでポンプサクション許容吸込抵抗値が0.214kgf/cm
2である油圧ポンプを、回転数3000rpm、1000rpm、800rpmでそれぞれ逆回転させたときに発生する油圧アクチュエータ側から油圧ポンプ側に逆流する作動油流量Qbと、その逆流流量Qbにおける比較システムと本実施形態に該当するロジック弁でのそれぞれ油圧弁における圧力降下値を試算比較したものである。ここで、該油圧弁部で発生する圧力降下値がポンプサクション許容吸込抵抗値を上回ると、該油圧弁と油圧ポンプの間で発生するキャビテーションによって油圧ポンプ破損が発生する。
図9のケース1に示すように、ロジック弁70は最大の逆回転速度が3000rpmであっても、圧力降下値が0.071kgf/cm
2であり、ポンプの吸込み許容抵抗値(0.214kgf/cm
2)に対して十分小さいためポンプ破損を防止できる。これに対して、比較システムで本実施形態と同程度の圧力降下値を得ようとすると、800rpm程度の逆回転速度まで逆回転数を低下させなければならない(ケース2、比較システム例2)。また
図9に示す油圧機器の構成の場合、比較システムにおけるポンプ吐出容量を大吐出容量から小吐出容量への切替えから圧力センサ55による圧力検出値が目標圧力値まで低下するための時間T2が約1秒必要であるのに対し、本実施形態のポンプ吐出容量を大吐出容量から小吐出容量への切替えから圧力センサ55による圧力検出値が目標圧力値まで低下するための時間T1は約0.3秒とすることができる。
【0082】
以上に対して、比較システムだと、サーボモータ45を逆回転させると、副油圧ポンプ43が破損するおそれがある。したがって、この場合には、バイパス回路58が大流量動作から小流量動作に確実に切換えられた後に、サーボモータ45を低速で逆回転させる必要がある。
【0083】
次に、油圧供給システム30は、圧力センサ55が主配管51であって主油圧ポンプ41の二次側に設けられており、主油圧ポンプ41と圧力センサ55の間には弁の類が存在しないので、圧力センサ55で検出する圧力と主油圧ポンプ41の吐出圧力はほぼ一致する。したがって、油圧供給システム30は、正常に圧力制御を行うことができる。
【0084】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、本実施形態では、副油圧ポンプ43の逆回転動作は、コントローラ80からの指示に基づいて行ったが、本発明はこれに限定されない。例えば、主配管51内の圧力と貯油タンク100A内の圧力の差圧による、主配管51から貯油タンク100Aに向かう逆流によって、主油圧ポンプ41に引き起こされる逆回転を利用して主油圧ポンプ41に連結された副油圧ポンプ43を逆回転させてもよい。
【0085】
また、本実施形態では、ロジック弁70の第二弁室78を主配管51と連通するように切換弁60を備えるが、本発明は、第二弁室78が主配管51ではなく副配管53と連通するように切換弁60を設けてもよい。
もっとも、小流量動作または逆回転動作から大流量動作に切り替えるためにロジック弁70を閉じる際、ロジック弁70の閉動作を高応答にて行う観点からかると、本実施形態に従って第二弁室78が主配管51と連通するように切換弁60を設けることが好ましい。
【0086】
具体的には、第二弁室78が副配管53と連通するように切換弁60を設けると、ロジック弁70の第一弁室77と第二弁室78の油圧はほぼ同じになる。これにより、弁体75の閉側(
図2,4〜6の上方)への移動させる力は第二弁室78に作用する油圧による閉方向(図中上方向)への力と、第一弁室77に作用する油圧による開方向の力および弾性体76の開方向(図中下方向)の力の和との差とになる。このとき第二弁室78の受圧面積は第一弁室77の受圧面積よりも大きいものの、第二弁室78と第一弁室77に同じ圧力の油圧が作用した場合、弾性体76の力の分、弁体75を閉方向に移動する力は小さい。この状態において、小流量動作への切り替えた瞬間または逆回転動作への切り替えた瞬間は、副配管53の作動油はバイパス回路58を介する貯油タンク100Bとの連通により、副配管53の油圧は急激にほぼゼロ(貯油タンク100Bと同圧)に圧力降下することとなる。これにより、降圧過程中の第二弁室78に作用する油圧による閉方向への力と,第一弁室77に作用する油圧による開方向の力と弾性体76の開方向の力の和との差の絶対値は微小になる。よって、この微小な押力で行われる弁体75の閉側への移動は、低速かつ不安定になり易い。
【0087】
これに対し主配管51の油圧は小流量動作時でも油圧アクチュエータを駆動するために高圧状態となっている。したがって、切換弁60を切り替えると第二弁室78に高圧油圧を瞬時に供給できるので、弁体75を高応答にて閉側に移動できる。
【0088】
また、本実施形態は、大流量動作と小流量動作の切り換えの例として、充填工程と保圧工程を説明したが、本発明は、射出成形に適用される任意の工程における大流量動作と小流量動作の切り換えにも適用できる。
【0089】
また、射出成形機において本発明の油圧供給システムが適用される部位は任意であり、型締装置以外の部分の油圧アクチュエータにも適用できる。
さらに、以上で示した型締装置1の構成はあくまで一例にすぎず、型締装置1が備えていない要素を含んでもよく、また、型締装置1が備える要素を省いてもよい。