(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハウジングと、前記ハウジング内に回転可能に支持される第1ピストン部材と、前記ハウジング内に回転可能に支持される第2ピストン部材と、を含み、前記ハウジングの内周面と前記第1ピストン部材と前記第2ピストン部材とによって燃料を燃焼させるための燃焼室が形成される回転ピストン型エンジンの冷却装置であって、前記第1ピストン部材は、予め定められた第1方向に開口した第1凹部が設けられることによって内部が中空になっているピストン片を有し、前記第2ピストン部材は、予め定められた第2方向に開口した第2凹部が設けられることによって内部が中空になっているピストン片を有し、前記エンジンは、前記第1ピストン部材および前記第2ピストン部材の一方を前記燃焼室内で燃料が燃焼するときに停止状態とする停止装置を有しており、
前記冷却装置は、
前記ハウジングに冷却媒体を供給する供給部と、
前記ハウジングに設けられ、前記ハウジングに供給される前記冷却媒体を前記第1凹部および前記第2凹部のうちの少なくともいずれかに吐出する吐出部とを備え、
前記吐出部は、前記第1凹部と前記第2凹部とのうち前記燃焼室内で燃料が燃焼するときに停止状態となる一方の凹部の開口部に対向する位置に設けられる、回転ピストン型エンジンの冷却装置。
前記吐出部は、前記一方の凹部内に形成される壁面のうち少なくとも燃料が燃焼する燃焼室に近い方の壁面部分に向いている、請求項1に記載の回転ピストン型エンジンの冷却装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0017】
<発電システム1の概略構成について>
以下に、本実施の形態に係る回転ピストン型エンジンを用いた発電システム1の構成および動作について説明する。
図1は、本実施の形態における発電システム1の概略構成の一例を示す図である。
図2は、発電システム1の構成の一部を示す斜視図である。
図1および
図2に示すように、発電システム1は、回転ピストン型エンジン(以下、単にエンジンと記載する)2と、冷却装置50と、第1MG(Motor Generator)61と、第2MG(Motor Generator)62と、第1インバータ71と、第2インバータ72と、バッテリ80と、負荷90と、第1レゾルバ101と、第2レゾルバ102と、制御装置200とを含む。
【0018】
<エンジン2の構成について>
本実施の形態において、エンジン2は、回転ピストン型の内燃機関である。エンジン2の燃料には、たとえば、ガスやガソリンや軽油等が用いられる。エンジン2は、ハウジング4と、吸気管6と、排気管8と、インジェクタ10と、スロットルバルブ12と、スロットルモータ14と、第1出力軸16と、第2出力軸18とを含む。
【0019】
吸気管6の一方端は、ハウジング4の吸気ポート(図示せず)に接続される。吸気管6の他方端には、たとえば、エアクリーナ(図示せず)が接続される。エアクリーナは、エンジン2の外部から吸入される空気から異物を除去する。エンジン2の作動中において、吸気管6には、エアクリーナから吸入された空気が流通する。吸気管6を流通する空気は、ハウジング4の吸気ポートに流通する。
【0020】
スロットルバルブ12は、吸気管6に設けられ、吸気管6を流通する空気の流量を制限する。スロットルバルブ12の開度(スロットル開度)は、制御装置200からの制御信号THに応じて動作するスロットルモータ14によって調整される。
【0021】
インジェクタ10は、吸気管6のスロットルバルブ12よりも上流側に設けられ、制御装置200からの制御信号INJに応じて燃料(たとえば、ガス)を吸気管6内に噴射する。噴射された燃料は、吸気管6内で空気と混合されてハウジング4の吸気ポートに流通する。
【0022】
ハウジング4の外周部分は、
図2に示すように円筒形状によって形成されており、その内周部分も円筒形状に形成されている。ハウジング4は、その内部に、第1出力軸16に接続される第1ピストン部材と、第2出力軸18に接続される第2ピストン部材とを収納する。
【0023】
排気管8の一方端は、ハウジング4の排気ポート(図示せず)に接続される。排気管8の他方端には、たとえば、排気処理装置(図示せず)が接続される。エンジン2の作動中において、ハウジング4内での燃焼により生じた排気は、ハウジング4の排気ポートから排気管8に流通する。排気管に流通する排気は、排気処理装置によって浄化されて、エンジン2の外部に排出される。
【0024】
<エンジン2の内部構造について>
以下、エンジン2の内部構造の一例について
図3を参照しつつ説明する。
図3は、エンジン内部に設けられるピストン部材の構成の一例を示す図である。
【0025】
図3に示すように、ハウジング4内には、第1ピストン部材24と、第2ピストン部材28とが組み合わされて収納される。第1ピストン部材24は、第1回転体24aと、第1壁面部材24bとを含む。第2ピストン部材28は、第2回転体28aと、第2壁面部材28bとを含む。なお、第1壁面部材24bは、第1ピストン部材24のピストン片に相当する。第2壁面部材28bは、第2ピストン部材28のピストン片に相当する。
【0026】
第1回転体24aと、第2回転体28aとは、回転中心が一致するようにハウジング4によって回転自在に支持され、第1回転体24aの一方の端面と、第2回転体28aの一方の端面とが対向するように設けられる。
【0027】
第1回転体24aおよび第2回転体28aは、その回転中心を含む断面に斜面部分を有するように形成される。これにより、第1回転体24aと第2回転体28aとが組み合わされた状態において、第1回転体24aと第2回転体28aとの間には、V字形状の断面を有する凹部が周方向に形成される。
【0028】
第1回転体24aには、回転中心からハウジング4の内周面に向けて延在するように設けられ、端部がハウジング4の内周面に当接する第1壁面部材24bが設けられる。第1壁面部材24bは、2つの三角形の板状部材によって構成される。第1壁面部材24bの2つの三角形の板状部材は、回転中心について互いに対称となるに位置関係になるように第1回転体24aに設けられる。
【0029】
第2回転体28aには、回転中心からハウジング4の内周面に向けて延在するように設けられ、端部がハウジング4の内周面に当接する第2壁面部材28bが設けられる。第2壁面部材28bは、上述の第1壁面部材24bを構成する板状部材と同形状となる、2つの三角形の板状部材によって構成される。第2壁面部材28bの2つの三角形の板状部材は、回転中心について互いに対称となる位置関係になるように第2回転体28aに設けられる。
【0030】
第1壁面部材24bおよび第2壁面部材28bの三角形の板状部材は、いずれも、第1ピストン部材24と第2ピストン部材28がハウジング4に収納されている状態において第1回転体24aと第2回転体28aとの間の凹部とハウジング4の内周面とによって形成される三角形の断面形状に合致するように形成される。また、第1壁面部材24bおよび第2壁面部材28bの三角形の板状部材の外周部分は、ハウジング4の内周面と摺動可能に構成される。
【0031】
各部材間の当接部分や摺動部分には、シール等が適宜設けられる。第1回転体24aには、回転中心が一致するように第1出力軸16が接続される。第2回転体28aには、回転中心が一致するように第2出力軸18が接続される。さらに、第1回転体24aおよび第2回転体28aの各々とハウジング4との間には、たとえば、ワンウェイクラッチ22,26が設けられる。ワンウェイクラッチ22は、第1回転体24aのハウジング4内における予め定められた回転方向へのみ回転を許容し、予め定められた回転方向とは逆方向への回転を抑制する。同様に、ワンウェイクラッチ26は、第2回転体28aのハウジング4内における予め定められた回転方向へのみ回転を許容し、予め定められた回転方向とは逆方向への回転を抑制する。
【0032】
<エンジン2以外の構成について>
図1および
図2に戻って、以下に発電システム1のエンジン2以外の構成について説明する。
【0033】
第1出力軸16および第2出力軸18は、いずれもハウジング4内での燃料の燃焼によって回転する。第1出力軸16は、第1MG61の回転軸に接続される。第2出力軸18は、第2MG62の回転軸に接続される。
【0034】
第1MG61および第2MG62は、たとえば、いずれも三相交流回転電機である。第1インバータ71および第2インバータ72は、いずれも直流電力と交流電力との間で電力変換が可能に構成される電力変換装置である。
【0035】
第1MG61は、第1インバータ71と電気的に接続される。第1インバータ71は、制御装置200からの制御信号INV1によって制御される。すなわち、第1MG61と第1インバータ71との間で授受される電力は、制御装置200からの制御信号INV1によって制御される。
【0036】
制御装置200は、たとえば、第1MG61において回生トルクが発生するように第1インバータ71を制御する。このとき、第1MG61において発生する回生電力は、第1インバータ71において交流電力から直流電力に変換され、バッテリ80に供給される。バッテリ80は、第1インバータ71から供給される直流電力によって充電される。あるいは、制御装置200は、第1MG61において駆動トルクが発生するように第1インバータ71を制御する。このとき、バッテリ80の電力は、第1インバータ71において直流電力から交流電力に変換され第1MG61に供給される。
【0037】
第2MG62は、第2インバータ72と電気的に接続される。第2インバータ72は、制御装置200からの制御信号INV2によって制御される。すなわち、第2MG62と第2インバータ72との間で授受される電力は、制御装置200からの制御信号INV2によって制御される。
【0038】
制御装置200は、たとえば、第2MG62において回生トルクが発生するように第2インバータ72を制御する。このとき、第2MG62において発生する回生電力は、第2インバータ72において交流電力から直流電力に変換され、バッテリ80に供給される。バッテリ80は、第2インバータ72から供給される直流電力によって充電される。あるいは、制御装置200は、第2MG62において駆動トルクが発生するように第2インバータ72を制御する。このとき、バッテリ80の電力は、第2インバータ72において直流電力から交流電力に変換され第2MG62に供給される。
【0039】
バッテリ80は、たとえば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池によって構成される直流電源である。なお、バッテリ80は、第1インバータ71あるいは第2インバータ72から供給される直流電力の貯蔵が可能な蓄電装置であればよく、たとえば、バッテリ80に代えて、キャパシタ等が用いられてもよい。
【0040】
冷却装置50は、冷却媒体をエンジン2のハウジング4内に供給してエンジン2を冷却する。本実施の形態においては、冷却に加えて潤滑の機能を有する作動油を冷却媒体として用いるものとして説明する。冷却装置50は、オイルポンプ38と、第1ピストン部材に作動油を供給するための第1配管30と、第2ピストン部材に作動油を供給する第2配管32と、第1配管30と第4配管36とを接続する第3配管34と、第2配管32に一方端が接続され、他方端がオイルポンプ38に接続される第4配管36とを含む。
【0041】
オイルポンプ38は、たとえば、電動オイルポンプであって、制御装置200からの制御信号POに応じて動作する。オイルポンプ38は、図示しないオイルパン(オイル貯留部)からオイルを吸引して第4配管36に作動油を供給する供給源である。なお、ハウジング4に供給された作動油は、オイルパンに戻されるものとする。
【0042】
発電システム1の動作は、制御装置200によって制御される。制御装置200は、各種処理を行なうCPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよびデータを記憶するROM(Read Only Memory)およびCPUの処理結果等を記憶するRAM(Random Access Memory)等を含むメモリと、外部との情報のやり取りを行なうための入・出力ポート(いずれも図示せず)とを含む。入力ポートには、上述したセンサ類(たとえば、第1レゾルバ101および第2レゾルバ102)が接続される。出力ポートには、制御対象となる機器(たとえば、エンジン2、オイルポンプ38、第1インバータ71、第2インバータ72等)が接続される。
【0043】
制御装置200は、各センサおよび機器からの信号、ならびにメモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、発電システム1が所望の作動状態となるように各種機器を制御する。なお、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)により処理することも可能である。
【0044】
第1レゾルバ101は、第1MG61の回転軸(第1出力軸16)の回転角度(以下、回転角度CA1と記載する)を検出する。第1レゾルバ101は、検出した回転角度CA1を示す信号を制御装置200に送信する。
【0045】
第2レゾルバ102は、第2MG62の回転軸(第2出力軸18)の回転角度(以下、回転角度CA2と記載する)を検出する。第2レゾルバ102は、検出した回転角度CA2を示す信号を制御装置200に送信する。
【0046】
<発電システム1の動作について>
以上のような構成を有する発電システム1の動作について
図4〜
図6を用いて説明する。
【0047】
図4は、燃焼室Aで燃料が燃焼する場合における各構成部材の動作の一例を説明するための図である。
図5は、燃焼室Dで燃料が燃焼する場合における各構成部材の動作の一例を説明するための図である。
【0048】
図4には、ハウジング4の中央部分(たとえば、第1回転体24aと第2回転体28aとの当接部分)の断面が示される。
図4に示すように、ハウジング4内には、ハウジング4の内周面と、第1ピストン部材24と、第2ピストン部材28とによって、4つの燃焼室A〜Dが形成される。
【0049】
なお、ワンウェイクラッチ22,26は、
図4において、第1ピストン部材24と第2ピストン部材28の反時計回りの回転を抑制し、時計回りの回転を許容する。
図5、
図10、
図11および
図17においても同様である。
【0050】
図4に示される燃焼室Aでは、圧縮された空気と燃料との混合気が自着火によって着火する膨張行程となる。すなわち、燃焼室Aで燃料が燃焼すると、第1ピストン部材24の反時計回りの移動がワンウェイクラッチ22によって抑制されるため、第1ピストン部材24の回転位置が維持されつつ、第2ピストン部材28のみが破線矢印の方向に回転し、燃焼室A内の気体の膨張とともに燃焼室Aの容積が増加する。
【0051】
図4に示される燃焼室Bでは、膨張した排気が排気管8から排出される排気行程となる。すなわち、燃焼室Aでの燃料の燃焼によって、第2ピストン部材28が破線矢印の方向に回転すると、第1ピストン部材24の回転位置が維持されるため、燃焼室Bの容積が減少する。このとき、燃焼室Bは、排気管8と連通している。そのため、燃焼室B内の排気は、燃焼室Bの容積の減少とともに、排気管8に排出されていく。
【0052】
図4に示される燃焼室Cでは、吸気管6から空気と燃料との混合気が吸入される吸気行程となる。すなわち、燃焼室Aでの燃料の燃焼によって、第2ピストン部材28が破線矢印の方向に回転すると、第1ピストン部材24の回転位置が維持されるため、燃焼室Cの容積が増加する。このとき、燃焼室Cは、第2ピストン部材28が破線矢印の方向に回転する途中で、吸気管6と連通する。そのため、燃焼室Cの容積の増加とともに、吸気管6から混合気が燃焼室C内に吸入される。
【0053】
図4に示される燃焼室Dでは、吸気管6から吸入された混合気が圧縮される圧縮行程となる。すなわち、燃焼室Aでの燃料の燃焼によって、第2ピストン部材28が破線矢印の方向に回転すると、第1ピストン部材24の回転位置が維持されるため、燃焼室Dの容積が減少する。このとき、燃焼室Dは、吸気管6および排気管8のいずれにも連通していないため、燃焼室Dの容積の減少によって燃焼室D内の混合気が圧縮される。
【0054】
そして、燃焼室D内の圧力が上昇することによって第1ピストン部材24に時計回りの力が作用すると、第1ピストン部材24が回転し、第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との位置関係が
図5に示す位置関係となる。
【0055】
図5には、
図4と同様にハウジング4の中央部分の断面が示される。
図5に示されるエンジン2の構成は、
図4に示されるエンジン2の構成と比較して、第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との位置関係および燃焼室A〜Dの位置および容積が異なる点以外は同様である。
【0056】
図5に示される燃焼室Dでは、圧縮行程の後の膨張行程となる。すなわち、燃焼室Dでは、圧縮された空気と燃料との混合気が自着火によって着火する。燃焼室Dで燃料が燃焼すると、第2ピストン部材28の反時計回りの移動がワンウェイクラッチ26によって抑制されるため、第2ピストン部材28の回転位置が維持されつつ、第1ピストン部材24のみが時計回りに回転し、燃焼室D内の気体の膨張とともに燃焼室Dの容積が増加する。
【0057】
図5に示される燃焼室Aでは、膨張行程の後の排気行程となる。すなわち、燃焼室Dでの燃料の燃焼によって、第1ピストン部材24が時計回りに回転すると、第2ピストン部材28の回転位置が維持されるため、燃焼室Aの容積が減少する。このとき、燃焼室Aは、排気管8と連通している。そのため、燃焼室A内の排気は、燃焼室Aの容積の減少とともに、排気管8に排出されていく。
【0058】
図5に示される燃焼室Bでは、排気行程の後の吸気行程となる。すなわち、燃焼室Dでの燃料の燃焼によって、第1ピストン部材24が時計回りに回転すると、第2ピストン部材28の回転位置が維持されるため、燃焼室Bの容積が増加する。このとき、燃焼室Bは、第1ピストン部材24が回転する途中で、吸気管6と連通する。そのため、燃焼室Bの容積の増加とともに、吸気管6から混合気が燃焼室B内に吸入される。
【0059】
図5に示される燃焼室Cでは、吸気行程の後の圧縮行程となる。すなわち、燃焼室Dでの燃料の燃焼によって、第1ピストン部材24が時計回りに回転すると、第2ピストン部材28の回転位置が維持されるため、燃焼室Cの容積が減少する。このとき、燃焼室Cは、吸気管6および排気管8のいずれにも連通していないため、燃焼室Cの容積の減少によって燃焼室C内の混合気が圧縮される。
【0060】
そして、燃焼室C内の圧力が上昇することによって第2ピストン部材28に時計回りの力が作用すると、第2ピストン部材28が回転し、第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との位置関係が
図4に示す位置関係となる。
【0061】
このようにして、燃焼室A〜Dのうちのいずれかで燃焼する毎に、第1ピストン部材24と第2ピストン部材28とが交互に回転することによってエンジン2が動作する。この場合において、
図4に示すように、燃焼室Aあるいは燃焼室Cにおいて燃料が燃焼する場合には、第2ピストン部材28が所定の回転位置まで回転する間に、第2ピストン部材28の回転を制動する回生トルクを第2MG62において発生させることによって発電する。同様に、
図5に示すように、燃焼室Bあるいは燃焼室Dにおいて燃料が燃焼する場合には、第1ピストン部材24が所定の回転位置まで回転する間に、第1ピストン部材24の回転を制動する回生トルクを第1MG61において発生させることによって発電する。
【0062】
すなわち、第1ピストン部材24と第2ピストン部材28とが交互に回転することによって、第1MG61および第2MG62において発電され、発電された交流電力が第1インバータ71および第2インバータ72において直流電力に変換され、バッテリ80に供給される。なお、本実施の形態において、ワンウェイクラッチ22,26が第1ピストン部材24および第2ピストン部材28の一方を燃焼室内で燃料が燃焼するときに停止状態とする「停止装置」に相当する。
【0063】
図6は、各燃焼室における行程の変化の一例を説明するための図である。
図6に示すように、たとえば、行程(1)では、燃焼室Aが膨張行程となり、燃焼室Bが排気行程となり、燃焼室Cが吸気行程となり、燃焼室Dが圧縮行程となる。第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との位置関係は、
図4に示す位置関係となる。そのため、行程(1)においては、燃焼室Aでの燃焼により第2ピストン部材28が回転し、第2MG62において回生トルクが発生させられる。
【0064】
行程(2)では、燃焼室Aが排気行程となり、燃焼室Bが吸気行程となり、燃焼室Cが圧縮行程となり、燃焼室Dが膨張行程となる。第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との位置関係は、
図5に示す位置関係となる。そのため、行程(2)においては、燃焼室Dでの燃焼により第1ピストン部材24が回転し、第1MG61において回生トルクが発生させられる。
【0065】
行程(3)では、燃焼室Aが吸気行程となり、燃焼室Bが圧縮行程となり、燃焼室Cが膨張行程となり、燃焼室Dが排気行程となる。第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との位置関係は、
図4に示す位置関係となる。そのため、行程(3)においては、燃焼室Cでの燃焼により第2ピストン部材28が回転し、第2MG62において回生トルクが発生させられる。
【0066】
行程(4)では、燃焼室Aが圧縮行程となり、燃焼室Bが膨張行程となり、燃焼室Cが排気行程となり、燃焼室Dが吸気行程となる。第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との位置関係は、
図5に示す位置関係となる。そのため、行程(4)においては、燃焼室Bでの燃焼により第1ピストン部材24が回転し、第1MG61において回生トルクが発生させられる。
【0067】
以降、エンジン2の動作が継続する限り、行程(1)〜行程(4)の動作が繰り返し行なわれることになる。
【0068】
このような構成を有する発電システム1に含まれるエンジン2においては、その内部を適切に冷却することが求められる。冷却装置50を用いて、エンジン2の内部に作動油を供給する場合、第1ピストン部材24および第2ピストン部材28が軸回りを回転するため、エンジン2の内部に供給された作動油は、遠心力によって外側に移動する場合がある。そのため、適切にエンジン2を冷却できない場合がある。
【0069】
そこで、本実施の形態においては、エンジン2および冷却装置50が以下のような特徴を有するものとする。すなわち、第1ピストン部材24は、予め定められた第1方向に開口した第1凹部が設けられることによって内部が中空になっている第1壁面部材24bを有する。第2ピストン部材28は、予め定められた第2方向に開口した第2凹部が設けられることによって内部が中空になっている第2壁面部材28bを有する。冷却装置50は、ハウジング4に設けられ、供給源であるオイルポンプ38からハウジング4に供給される冷却媒体を第1凹部および第2凹部のうちの少なくともいずれかに吐出する吐出部を備える。吐出部は、第1凹部と第2凹部とのうち燃焼室内で燃料が燃焼するときに停止状態となる一方の凹部に対向する位置に設けられる。なお、本実施の形態において、予め定められた第1方向および第2方向とは、いずれも回転軸と平行な方向である。
【0070】
このようにすると、停止状態となる一方の凹部に吐出部から作動油が供給されるため、第1ピストン部材24および第2ピストン部材28のうちの停止状態となる一方のピストン部材の温度上昇を抑制することができる。また、ピストン部材が停止状態である場合は、ピストン部材が回転状態である場合よりもピストン部材と作動油との接触期間が長くなり、エンジン2を効率よく冷却することができる。
【0071】
以下に、
図7および
図8を参照して、第1ピストン部材24および第2ピストン部材28のそれぞれに設けられる第1凹部および第2凹部の詳細な構造について説明する。
【0072】
図7は、第1ピストン部材24の斜視図である。
図7に示すように、第1ピストン部材24には、第2ピストン部材28と対向する方向とは逆方向に開口した4つの凹部24c,24d,24e,24fとが設けられる。凹部24cと凹部24dとは、回転軸について対称に設けられ、開口形状および内部形状も対称に形成される。凹部24eと凹部24fとは、回転軸について対称に設けられ、開口形状および内部形状も対称に形成される。凹部24c,24d,24e,24fのうちの凹部24e,24fは、いずれも底部が第1壁面部材24b内に達するように形成される。すなわち、本実施の形態において、凹部24e,24fは、「第1凹部」に相当する。
【0073】
図8は、第2ピストン部材28の斜視図である。
図8に示すように、第2ピストン部材28には、第1ピストン部材24と対向する方向とは逆方向に開口した4つの凹部28c,28d,28e,28fとが設けられる。凹部28cと凹部28dとは、回転軸について対称に設けられ、開口形状および内部形状も対称に形成される。凹部28eと凹部28fとは、回転軸について対称に設けられ、開口形状および内部形状も対称に形成される。凹部28c,28d,28e,28fのうちの凹部28e,28fは、いずれも底部が第2壁面部材28b内に達するように形成される。すなわち、本実施の形態において、凹部28e,28fは、「第2凹部」に相当する。
【0074】
次に、冷却装置50に含まれる配管の構成の一例について説明する。
図9は、冷却装置50に含まれる配管の構成の一例を説明するための図である。
【0075】
図9に示すように、第1配管30は、第3配管34から第1出力軸16の上側に分岐する配管30aと、第3配管34から第1出力軸16の下側に分岐する配管30bとを含む。配管30aの一方端は、第3配管34との分岐点に接続され、配管30aの他方端は、ハウジング4の第1MG61と対向する面における第1出力軸16よりも上方の位置に設けられる開口部に接続される。配管30bの一方端は、第3配管34との分岐点に接続され、配管30bの他方端は、ハウジング4の第1MG61と対向する面における第1出力軸16よりも下方の位置に設けられる開口部に接続される。ハウジング4の第1MG61と対向する面に設けられる2つの開口部は、第1出力軸16の軸中心について対称となる位置にそれぞれ設けられる。
【0076】
第2配管32は、第4配管36から第2出力軸18の上側に分岐する配管32aと、第4配管36から第2出力軸18の下側に分岐する配管32bとを含む。配管32aの一方端は、第4配管36との分岐点に接続され、配管32aの他方端は、ハウジング4の第2MG62と対向する面における第2出力軸18よりも上方の位置に設けられる開口部に接続される。配管32bの一方端は、第4配管36との分岐点に接続され、配管32bの他方端は、ハウジング4の第2MG62と対向する面における第2出力軸18よりも下方の位置に設けられる開口部に接続される。ハウジング4の第2MG62と対向する面に設けられる2つの開口部は、第2出力軸18の軸中心について対称となる位置にそれぞれ設けられる。
【0077】
図10は、第1MG61に対向する面に設けられる2つ開口部の位置について説明するための図である。
【0078】
図10に示すように、ハウジング4の第1MG61に対向する面には、エンジン2の動作中に、第1ピストン部材24が停止状態となる回転位置であるときに、凹部24e,24fの開口部と対向する位置に2つの開口部40a,40bが設けられる。
【0079】
エンジン2の動作中において、
図10に示すような第1ピストン部材24および第2ピストン部材28の位置関係となる場合において、燃焼室A内で着火し、燃焼室A内の燃料が燃焼すると、燃焼圧力が第1ピストン部材24および第2ピストン部材28に作用する。第1ピストン部材24は、ワンウェイクラッチ22によって
図10における反時計回りの回転が抑制されるため、第1ピストン部材24は、停止状態が維持されることになる。このときに、第1ピストン部材24に設けられる凹部24e,24fの開口部に対向する位置に開口部40a,40bがハウジング4の第1MG61に対向する面に設けられることによって、開口部40a,40bから後述する吐出部42a,42bを経由して作動油を直接的に凹部24e,24fに供給することができる。
【0080】
図11は、第2MG62に対向する面に設けられる2つの開口部の位置について説明するための図である。
【0081】
図11に示すように、ハウジング4の第2MG62と対向する面には、エンジン2の動作中に、第2ピストン部材28が停止状態となる回転位置であるときに、凹部28e,28fの開口部と対向する位置に2つの開口部40c,40dが設けられる。
【0082】
エンジン2の動作中において、
図11に示すような第1ピストン部材24および第2ピストン部材28の位置関係となる場合において、燃焼室D内で着火し、燃焼室D内の燃料が燃焼すると、燃焼圧力が第1ピストン部材24および第2ピストン部材28に作用する。第2ピストン部材28は、ワンウェイクラッチ26によって
図11における反時計回りの回転が抑制されるため、第2ピストン部材28は、停止状態が維持されることになる。このときに、第2ピストン部材28に設けられる凹部28e,28fの開口部に対向する位置に開口部40c,40dがハウジング4の第2MG62に対向する面に設けられることによって、開口部40c,40dから後述する吐出部42c,42dを経由して作動油を直接的に凹部28e,28fに供給することができる。
【0083】
図10および
図11に示すように、ハウジング4の内側には、複数の吐出部42a,42b,42c,42dが設定される。開口部40a,40bには、吐出部42a,42bがそれぞれ接続されている。吐出部42a,42bは、回転中または停止中の第1ピストン部材24に設けられる凹部24c,24d,24e,24fに向けて作動油を吐出するように構成される。また、開口部40c,40dには、吐出部42c,42dがそれぞれ接続されている。吐出部42c,42dは、回転中または停止中の第2ピストン部材28に設けられる凹部28c,28d,28e,28fに向けて作動油を吐出するように構成される。
【0084】
次に、吐出部42a,42b,42c,42dの詳細な構造について説明する。以下、吐出部42aの構造を一例として説明するが、吐出部42b,42c、42dは、吐出部42aと同じ構造を有する。そのため、その詳細な説明は繰り返さない。
図12は、ハウジング4に設定された吐出部42aの構造を説明するための図である。
【0085】
図12に示すように、ハウジング4の内側には吐出部42aが形成される。本実施の形態において。吐出部42aは、ハウジング4とは別体の部品であって、ハウジング4の内側の開口部40aと連通するように固定される。開口部40aには、配管30aの一方端が接続されている。
【0086】
吐出部42aは、たとえば、中空のパイプ形状を有しており、途中で予め定められた方向に屈曲した屈曲部を有している。
【0087】
吐出部42aの屈曲部における予め定められた方向としては、たとえば、第1ピストン部材24が停止状態である場合において、凹部24e内に形成される壁面のうちの燃料が燃焼する燃焼室に近い方の壁面部分に向けて作動油を吐出可能な方向に設定される。そのため、吐出部42aは、凹部24eに形成される壁面のうち少なくとも燃料が燃焼する燃焼室に近い方の壁面部分に向いている。
【0088】
本実施の形態において、制御装置200は、エンジン2の動作が開始される場合に、吐出量が予め定められた吐出量となるようにオイルポンプ38の制御を開始し、エンジン2の動作が停止されるまでオイルポンプ38の制御を継続するものとする。
【0089】
以上のような構成に基づく冷却装置50の動作について以下に説明する。エンジン2の動作が開始されると、オイルポンプ38の動作が開始されるため、作動油は、
図1で示したように、オイルポンプ38から第4配管36および第2配管32の配管32a,32bに供給されるとともにオイルポンプ38から第4配管36および第3配管34を経由して第1配管30の配管30a,30bに供給される。
【0090】
配管30aに供給される作動油は、
図12で示したように開口部40aを経由して吐出部42aからハウジング4内に吐出される。同様に、配管30bに供給される作動油は、開口部40bを経由して吐出部42bからハウジング4内に吐出される。
【0091】
そのため、エンジン2の動作中において、第1ピストン部材24の回転中には、吐出部42a,42bから吐出された作動油は、
図7で示した凹部24c,24d,24e,24fのうちの少なくともいずれかに供給される。その結果、第1ピストン部材24の温度上昇が抑制される。
【0092】
また、エンジン2の動作中において、第1ピストン部材24の回転が停止状態になる場合には、
図12で示したように、凹部24e,24fの開口部と、吐出部42a,42bとが対向する位置関係になるため、凹部24e,24fには、第1ピストン部材24が回転中である場合よりも多くの量の作動油が供給される。また、吐出部42a,42bから吐出される作動油は、凹部24e,24f内に形成される壁面のうちの燃料が燃焼する燃焼室に近い方の壁面部分に向けて吐出されるため、より効率よく第1ピストン部材24の温度上昇が抑制される。
【0093】
配管32aに供給される作動油は、開口部40cを経由して吐出部42cからハウジング4内に吐出される。同様に、配管32bに供給される作動油は、開口部40dを経由して吐出部42dからハウジング4内に吐出される。
【0094】
そのため、エンジン2の動作中において、第2ピストン部材28の回転中には、吐出部42c,42dから吐出された作動油は、
図8で示した凹部28c,28d,28e,28fのうちの少なくともいずれかに供給される。その結果、第2ピストン部材28の温度上昇が抑制される。
【0095】
また、エンジン2の動作中において、第2ピストン部材28の回転が停止状態になる場合には、凹部28e,28fの開口部と、吐出部42c,42dとが対向する位置関係になるため、凹部28e,28fには、第2ピストン部材28が回転中である場合よりも多くの量の作動油が供給される。また、吐出部42c,42dから吐出される作動油は、凹部28e,28f内に形成される壁面のうちの燃料が燃焼する燃焼室に近い方の壁面部分に向けて吐出されるため、より効率よく第2ピストン部材28の温度上昇が抑制される。
【0096】
以上のようにして、本実施の形態に係る回転ピストン型エンジンの冷却装置50によると、第1ピストン部材24および第2ピストン部材28のうちの停止状態となる一方の凹部に吐出部から作動油が供給されるため、第1ピストン部材24および第2ピストン部材28のうちの停止状態となる一方のピストン部材の温度上昇を抑制することができる。また、ピストン部材が停止状態である場合は、ピストン部材が回転状態である場合よりもピストン部材と冷却媒体との接触期間が長くなり、エンジンを効率よく冷却することができる。したがって、エンジンの動作中にエンジンを効率よく冷却する回転ピストン型エンジンの冷却装置を提供することができる。
【0097】
さらに、停止状態となる凹部内に形成される壁面のうちの少なくとも燃料が燃焼する燃焼室に近い方の壁面部分に向けて吐出部から作動油が供給されるため、当該壁面部分の温度上昇を抑制することができる。そのため、エンジンを効率よく冷却することができる。
【0098】
以下、変形例について説明する。
上述の実施の形態では、ハウジング4内に設けられるピストン部材が2つである場合を一例として説明したが、ハウジング4内に設けられるピストン部材は、3つ以上であってもよい。この場合、ハウジング内に形成される複数の燃焼室のうちのいずれか一つで燃料が燃焼するようにしてもよいし、あるいは、複数の燃焼室で燃料が燃焼するようにしてもよい。
【0099】
さらに上述の実施の形態では、燃焼室内で混合気が自着火することによって燃料が燃焼する場合を一例として説明したが、たとえば、点火プラグを用いて燃焼室以内の混合気を着火させることによって燃料を燃焼させる構成であってもよい。
【0100】
さらに上述の実施の形態では、第1回転体24aと第2回転体28aとの間の凹部の回転断面が三角形状とし、第1ピストン部材24および第2ピストン部材28は、いずれも三角形の板状部材が第1壁面部材24bおよび第2壁面部材28bとして設けられるものとして説明したが、凹部の回転断面の形状および第1壁面部材24bおよび第2壁面部材28bの形状は、三角形に限定されるものではなく、たとえば、四角形であってもよいし、半円形であってもよいし、扇形であってもよい。
【0101】
さらに上述の実施の形態では、インジェクタ10は、吸気管6に燃料を噴射するものとして説明したが、たとえば、ハウジング4内の圧縮行程の燃焼室内に燃料を直接噴射する構成であってもよい。
【0102】
さらに上述の実施の形態では、制御装置200は、第1インバータ71、第2インバータ72、スロットルモータ14およびインジェクタ10を制御するものとして説明したが、複数の制御装置を用いてこれらの電気機器を制御してもよい。たとえば、制御装置200は、第1インバータ71と第2インバータ72とを制御する第1制御装置と、スロットルモータ14とインジェクタ10とを制御する第2制御装置とに分けて、これらの電気機器を制御してもよい。
【0103】
さらに上述の実施の形態では、第1ピストン部材24は、回転軸について対称に配置された1組のピストン片を有するものとし、第1ピストン部材24が停止状態になる場合には、凹部24e,24fの双方に作動油が供給されるように吐出部42a,42bが設けられるものとして説明したが、吐出部は、第1ピストン部材24が複数のピストン片を有する場合に複数のピストン片の凹部のうち少なくとも燃料が燃焼する燃焼室を形成するピストン片の凹部に対向する位置に設けられればよく、たとえば、吐出部42bを省略し、吐出部42aのみがハウジング4内に設定されるようにしてもよい。
【0104】
このようにしても、燃料が燃焼する燃焼室を形成するピストン片に近い方の壁面部分の温度上昇を抑制することができる。そのため、エンジンを効率よく冷却することができる。
【0105】
さらに上述の実施の形態では、吐出部42a,42b,42c,42dは、いずれもハウジング4とは別体の部品として設定されるものとして説明したが、たとえば、ハウジング4に一体的に形成されることによって設定されてもよい。
【0106】
図13は、変形例において、ハウジングに設定された吐出部の構造を説明するための図である。
図13に示すように、開口部40aを形成する貫通穴の長手方向の角度が予め定められた方向に作動油が吐出される角度になるように貫通穴を形成することによって吐出部が設定されてもよい。
【0107】
このようにすると、別途部品を設けることなく、作動油を予め定められた方向に吐出させることができる。
【0108】
さらに上述の実施の形態では、エンジン2の動作中においては、オイルポンプ38を常時動作させるものとして説明したが、たとえば、第1ピストン部材24および第2ピストン部材28のうちの少なくともいずれかの温度に応じた吐出量になるようにオイルポンプ38を制御してもよい。
【0109】
制御装置200は、たとえば、直接的に検出された第1ピストン部材24および第2ピストン部材28のうちの少なくともいずれかの温度に応じた吐出量になるようにオイルポンプ38を制御してもよいし、あるいは、第1ピストン部材24および第2ピストン部材28の温度と相関するエンジン2の運転領域に応じた吐出量になるようにオイルポンプ38を制御してもよい。
【0110】
以下、
図14を参照して、この変形例における制御装置200で実行される制御処理の一例について説明する。
図14は、変形例において制御装置200で実行されるオイルポンプ38の制御処理(その1)の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、所定の制御周期毎にメインルーチン(図示せず)から呼び出されて実行される。
【0111】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、制御装置200は、第1ピストン部材24の回転位置および第2ピストン部材28の回転位置を取得する。制御装置200は、たとえば、第1MG61の回転位置(回転角度CA1)を用いて第1ピストン部材24の回転位置を取得する。同様に、制御装置200は、たとえば、第2MG62の回転位置(回転角度CA2)を用いて第2ピストン部材28の回転位置を取得する。
【0112】
S102にて、制御装置200は、第1ピストン部材24の回転速度および第2ピストン部材28の回転速度を取得する。制御装置200は、たとえば、直前の所定時間当たりの第1ピストン部材24(あるいは、第1MG61)の回転位置の変化量を用いて第1ピストン部材24の回転速度を取得してもよい。あるいは、制御装置200は、たとえば、直前の所定時間当たりの第2ピストン部材28(あるいは、第2MG62)の回転位置の変化量を用いて第2ピストン部材28の回転速度を取得してもよい。
【0113】
S104にて、制御装置200は、燃料供給量を取得する。制御装置200は、たとえば、エンジン2の運転状態(たとえば、スロットル開度等)に応じて設定される燃料供給量の指令値を燃料供給量として取得してもよい。
【0114】
S106にて、制御装置200は、エンジン2の運転領域が、エンジン2が高温に(エンジン2の温度がしきい値よりも高く)なり得る高温領域内であるか否かを判定する。制御装置200は、たとえば、予め定められたマップを用いてエンジン2の運転領域が高温領域内であるか否かを判定する。
【0115】
図15は、回転速度と燃料供給量とによって設定された高温領域と低温領域とを示す図である。
図15の縦軸は、燃料供給量を示す。
図15の横軸は、ピストン部材の回転速度を示す。
図15の実線は、高温領域と低温領域との境界を示す。
【0116】
図15の実線に示すように、実験等によってエンジン2の運転状態が、エンジン2が冷却装置50を用いた冷却が要求される、高温となり得る高温領域を設定し、高温領域と低温領域との境界線が予め設定される。
【0117】
制御装置200は、S102およびS104の処理にて取得した燃料供給量と、第1ピストン部材24の回転速度と、第2ピストン部材28の回転速度とに基づくエンジン2の動作点が境界線よりも上側であるか下側であるかによって運転領域が高温領域内であるか低温領域内であるかを判定する。
【0118】
より具体的には、制御装置200は、たとえば、取得した燃料供給量と第1ピストン部材24の回転速度とによって特定される
図15に示すグラフ上におけるエンジン2の動作点(以下、第1動作点と記載する)が
図15の実線に示される境界線よりも上側である場合に、エンジン2の運転領域が高温領域内であると判定する。
【0119】
あるいは、制御装置200は、たとえば、取得した燃料供給量と第2ピストン部材28の回転速度とによって特定される
図15に示すグラフ上におけるエンジン2の動作点(以下、第2動作点と記載する)が
図15の実線に示される境界線よりも上側である場合に、エンジン2の運転領域が高温領域内であると判定する。
【0120】
また、制御装置200は、たとえば、第1動作点および第2動作点がいずれも
図15の実線に示される境界線よりも下側である場合に、エンジン2の運転領域が低温領域内であると判定する。
【0121】
エンジン2の運転領域が高温領域内であると判定される場合(S106にてYES)、処理はS108に移される。
【0122】
S108にて、制御装置200は、吐出制御を実行する。具体的には、制御装置200は、オイルポンプ38を動作させることによって吐出部42a,42b,42cおよび42dから作動油を吐出させる。
【0123】
なお、エンジン2の運転領域が低温領域内であると判定される場合(S106にてNO)、処理はS110に移される。
【0124】
S110にて、制御装置200は、吐出制御を非実行とする。具体的には、制御装置200は、オイルポンプ38が動作中である場合には、オイルポンプ38を停止状態とし、オイルポンプ38が停止中である場合には、オイルポンプ38の停止状態を継続する。
【0125】
このようにすると、エンジン2の動作中においては、第1ピストン部材24の回転位置と、第2ピストン部材28の回転位置とが取得され(S100)、取得された回転位置の変化量に基づいて第1ピストン部材24の回転速度と、第2ピストン部材28の回転速度とが取得され(S102)、燃料供給量とが取得される(S104)。
【0126】
そのため、取得された第1ピストン部材24の回転速度と、第2ピストン部材28の回転速度と、燃料供給量とによって、エンジン2の運転領域が高温領域内であると判定される場合には(S106にてYES)、吐出制御が実行される(S108)。一方、エンジン2の運転領域が低温領域内であると判定される場合には(S106にてNO)、吐出制御が非実行とされる(S110)。そのため、第1ピストン部材および第2ピストン部材の温度に応じて適切な冷却が可能な吐出量になるように制御することができるため、エンジン2を効率よく冷却することができる。また、エンジン2の温度が低い運転領域においては、吐出制御が非実行とされるため、不必要にオイルポンプ38を作動させることを抑制することができるため、オイルポンプ38における消費電力の増加を抑制することができる。
【0127】
なお、この変形例では、燃料供給量と、ピストン部材の回転速度とによって高温領域であるか否かを判定するものとして説明したが、たとえば、エンジン2の温度をセンサ等により検出し、検出された温度がしきい値よりも高い場合に吐出制御を実行し、しきい値以下の場合に吐出制御を非実行としてもよい。さらに、同じ高温領域内であってもエンジン2の温度がより高くなり得る動作点になるほど吐出量を増加させ、境界線に近づくほど吐出量を減少させるようにしてもよい。
【0128】
さらに上述の実施の形態では、エンジン2の動作中においては、オイルポンプ38を常時動作させるものとして説明したが、たとえば、第1ピストン部材24の回転位置および第2ピストン部材28の回転位置に応じてオイルポンプ38を間欠的に動作させてもよい。
【0129】
以下、
図16を参照して、この変形例における制御装置200で実行される制御処理について説明する。
図16は、変形例において制御装置200で実行されるオイルポンプの制御処理(その2)の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、所定の制御周期毎にメインルーチン(図示せず)から呼び出されて実行される。
【0130】
S200にて、制御装置200は、第1ピストン部材24の回転位置および第2ピストン部材28の回転位置を取得する。回転位置の取得方法については上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0131】
S202にて、制御装置200は、第1ピストン部材24への作動油の吐出タイミングであるか否かを判定する。制御装置200は、たとえば、第1ピストン部材24の回転位置が、
図10に示す第1ピストン部材24の回転位置よりも所定の回転角度だけ前(反時計回り方向)に位置する回転位置と、
図10に示す第1ピストン部材24の回転位置よりも所定の回転角度だけ後(時計回り方向)に位置する回転位置との間の区間内の回転位置である場合に、第1ピストン部材24への作動油の吐出タイミングであると判定する。制御装置200は、第1ピストン部材24の回転位置が当該区間外の回転位置である場合に、第1ピストン部材24への作動油の吐出タイミングでないと判定する。なお、当該区間は、たとえば、作動油の吐出動作を開始してから実際に吐出部42aおよび42bから作動油が吐出されるまでの応答遅れ時間を考慮して、少なくとも第1ピストン部材24が停止状態となる期間に吐出部42aおよび42bから作動油が継続して吐出されるように設定されることが望ましい。第1ピストン部材24への作動油の吐出タイミングであると判定される場合(S202にてYES)、処理はS204に移される。
【0132】
S204にて、制御装置200は、吐出制御を実行する。吐出制御については、上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0133】
第1ピストン部材24への作動油の吐出タイミングでないと判定される場合(S202にてNO)、処理はS206に移される。
【0134】
S206にて、制御装置200は、第2ピストン部材28への作動油の吐出タイミングであるか否かを判定する。制御装置200は、たとえば、第2ピストン部材28の回転位置が、
図11に示す第2ピストン部材28の回転位置よりも所定の回転角度だけ前の回転位置と、
図11に示す第2ピストン部材28の回転位置よりも所定の回転角度だけ後の回転位置との間の区間内の回転位置である場合に、第2ピストン部材28への作動油の吐出タイミングであると判定する。制御装置200は、第2ピストン部材28の回転位置が当該区間外の回転位置である場合に、第2ピストン部材28への作動油の吐出タイミングでないと判定する。なお、当該区間は、たとえば、作動油の吐出動作させてから実際に吐出部42cおよび42dから作動油が吐出されるまでの応答遅れ時間を考慮して、少なくとも第2ピストン部材28が停止状態となる期間に吐出部42cおよび42dから作動油が継続して吐出されるように設定されることが望ましい。第2ピストン部材28への作動油の吐出タイミングであると判定される場合(S206にてYES)、処理はS204に移される。
【0135】
なお、第2ピストン部材28への作動油の吐出タイミングでないと判定される場合(S206にてNO)、処理はS208に移される。S208にて、制御装置200は、吐出制御を非実行とする。具体的な動作については上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0136】
上述したフローチャートに基づく制御装置200の動作について
図17を参照しつつ説明する。
図17は、オイルポンプ38を間欠的に動作させる制御を説明するための図である。
【0137】
エンジン2の動作中においては、第1ピストン部材24の回転位置と、第2ピストン部材28の回転位置とが取得される(S200)。取得された第1ピストン部材24の回転位置が
図17(A)に示すように着火時点の第1ピストン部材24の回転位置(破線枠参照)よりも所定の回転角度だけ前の回転位置になるときに(S200にてYES)、吐出制御が実行される(S204)。そして、吐出制御は、
図17(B)に示すように第1ピストン部材24の回転位置が着火時点に対応する回転位置になる場合や
図17(C)に示すように、着火時点に対応する回転位置から所定の回転角度だけ後の回転位置になるときまで継続して実行される。
【0138】
一方、
図17(D)に示すように、第1ピストン部材24への作動油の吐出タイミングでなく(S202にてNO)、第2ピストン部材28への作動油の吐出タイミングでもない場合(S206にてNO)、吐出制御が非実行とされる(S208)。
【0139】
そして、
図17(E)に示すように、第2ピストン部材28の回転位置が着火時点の第2ピストン部材28の回転位置(破線枠参照)よりも所定の回転角度だけ前の回転位置になるときに(S206にてYES)、吐出制御が実行される(S204)。そして、吐出制御は、第2ピストン部材28の回転位置が着火時点に対応する回転位置から所定の回転角度だけ後の回転位置になるときまで継続して実行される。
【0140】
このようにすると、第1ピストン部材24および第2ピストン部材28のうちの停止状態であり、かつ、高温になり得るピストン部材の凹部に対して作動油を供給することができるため、エンジン2の温度上昇を適切に抑制することができる。さらに、第1ピストン部材24への作動油の吐出タイミングでない場合や第2ピストン部材28への作動油の吐出タイミングでない場合には、吐出制御が非実行とされるため、不必要にオイルポンプ38を作動させることを抑制することができるため、オイルポンプ38における消費電力の増加を抑制することができる。
【0141】
なお、この変形例では、オイルポンプ38のオンオフによって吐出動作を行なうものとして説明したが、たとえば、配管30a,30b,32a,32bの各々に制御装置200からの制御信号に応じて開閉する開閉弁を設け、オイルポンプ38を一定動作させた状態で開閉弁をオンオフする構成としてもよい。この場合において、第1ピストン部材24への作動油の吐出タイミングにおいては、配管30a,30bの開閉弁を開弁状態とし、第2ピストン部材28への作動油の吐出タイミングにおいては、配管32a,32bの開閉弁を開弁状態としてもよい。
【0142】
さらに上述の実施の形態では、冷却装置50の冷却媒体として作動油を用いる場合を一例として説明したが、その他の液体冷媒や気体冷媒を用いてもよい。
【0143】
さらに上述の実施の形態では、第1ピストン部材24の凹部および第2ピストン部材28の凹部は、いずれも回転軸に平行な方向に開口するものとして説明したが、予め定められた方向に開口するものであればよく、特に回転軸に平行な方向に開口するものに限定されるものではない。第1ピストン部材24の凹部および第2ピストン部材28の凹部は、たとえば、第1壁面部材24bおよび第2壁面部材28bの各々において径方向(回転軸の中心に向かう方向)の壁面に開口するものであってもよいし、第1壁面部材24bおよび第2壁面部材28bの各々において周方向(回転軸回りの方向)の壁面に開口するものであってもよい。
【0144】
なお、上記した変形例は、その全部または一部を組み合わせて実施してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。