(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2光学系の少なくとも1枚のレンズは、前記鏡筒の取り付け部との間に、所定厚さのスペーサーを挿入することにより光軸方向に変位可能となっている請求項1〜4のいずれか一項に記載のルーペの調整方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態に係るルーペを取り付けた眼鏡型保持具の外観斜視図である。ルーペ100の手前側が対象物(被写体)側、奥側が接眼側となる。
【0010】
図1に示す様に、2つのルーペ100が、眼鏡型保持具GLの透明板LSの孔LSaに、それぞれ接着により取り付けられている。手術の際に、医師等が、眼鏡型保持具GLを自分の顔に装着したときに、ルーペ100が瞳の前方に位置するようになり、これにより患部を拡大して観察することが可能になる。尚、2つのルーペ100は同一の構成であるので、以下、1つのルーペ100についてのみ説明を行う。
【0011】
図2は、本実施の形態にかかるルーペ100を分解した状態で示す斜視図である。
図2に示すように、ルーペ100は、回転筒110と、固定ユニット120とを有している。回転筒110には、調節部材140が取り付けられるようになっている。回転筒110と固定ユニット120とで鏡筒を構成する。
【0012】
図3、4は、本実施の形態にかかるルーペ100の光軸方向断面図であるが、断面は互いに直交している。
図3,4において、薄肉金属製の回転筒110は、大円筒部110aと、これに内包される小円筒部110bと、大円筒部110aと小円筒部110bの端部同士を連結するテーパー部110cとから一体的に形成されている。小円筒部110b内には、第1レンズ群G1を構成するレンズL1,L2が配置され、環状の固定部材111により小円筒部110bに対して固定されている。尚、最も被写体側のレンズL1の周囲にはO−リングORが配置され、小円筒部110bとの間を防塵・防水可能に密封している。
【0013】
図4に示すように、大円筒部110aには、対向する2カ所に貫通孔110dが形成されている。貫通孔110dは内周に雌ねじを有している。調節部材140は、外周に雄ねじを有し、両ねじを螺合させることで、調節部材140が回転筒110に取り付けられる。
【0014】
固定ユニット120は、主固定筒121と、主固定筒121の被写体側に連結されたプリズム保持筒122と、主固定筒121の内側に配置されたカム筒123と、主固定筒121の外側に配置された操作環124とを有する。
【0015】
略円筒状のプリズム保持筒122は、正立像を確保する為のケプラータイプのプリズムPRと、レンズL3とを保持する保持枠125を,ボルトBT(
図3)により内側に固定している。プリズムPRとレンズL3とで、第2レンズ群G2を構成する。プリズム保持筒122の外周には、螺旋溝122aが形成されており、調節部材140の先端が当接している。図示していないが、調節部材140の頂面には、ドライバーなどの工具を係合できる凹部が形成されている。調節部材140と螺旋溝122aとの関係については、後述する。
【0016】
カム筒123の内側には、第3レンズ群G3であるレンズL4を保持した保持枠126と、第4レンズ群G4であるレンズL5を保持した保持枠127とが光軸方向に変位可能に配置されている。又、カム筒123は、周方向に延在する2つのカム溝123a、123bを有すると共に、カム溝123aに沿って所定間隔で円形開口123cを有している。レンズL4,L5が変倍用レンズを構成する。
【0017】
保持枠126の外周に形成された3つ(1つのみ図示)のねじ孔126aに、フランジ付きの円筒軸128aを持つねじ128の端部がそれぞれねじ込まれており、円筒軸128aに回転可能に嵌合したローラー130が、カム筒123のカム溝123aに嵌め込まれ、カム溝123aに沿って転動可能となっている。
【0018】
更に、保持枠126の1つのねじ孔126aに隣接して、袋孔126bが設けられており、袋孔126b内にはコイルバネCS及びボールBLが配置され、コイルバネCSの付勢力によりボールBLを半径方向外方に向かって付勢している。円形開口123cの位置は、相対回動するボールBLの位置に対応している。
【0019】
又、保持枠127の外周に形成された3つ(1つのみ図示)のねじ孔127aに、フランジ付きの円筒軸129aを持つねじ129の端部がねじ込まれており、円筒軸129aに回転可能に嵌合したローラー131が、カム筒123のカム溝123bに嵌め込まれ、カム溝123bに沿って転動可能となっている。
【0020】
主固定筒121は、大円筒部121aと小円筒部121bとを直接に連結した形状を有する。プリズム保持筒122に端部を連結した大円筒部121aの内側には、軸線方向に延在する直進溝121c(
図3)が形成されており、ここにねじ128,129の頭部及びローラー130,131が相対移動可能に係合している。これにより、保持枠126,127は直進溝121cに沿ってのみ変位可能(すなわち回動不能)となる。
【0021】
大円筒部121aの内側にカム筒123が相対回転可能に配置されており、大円筒部121aの外側に操作環124が相対回転可能に配置されている。
図4において、操作環124の中央には、開口124aが形成されており、開口124aに挿通された段付きねじ137が、大円筒部121aに形成された周方向溝121dを貫通して、カム筒123の外周に螺合すると同時に太軸部を当接させている。これにより操作環124とカム筒123は、所定間隔を維持しつつ一体的に回転するようになっている。但し、カム筒123の端部において半径方向外方に向いた環状部123dが、大円筒部121aの端部に形成された環状凹部121eと、プリズム保持筒122の端部間に形成された環状空間に収容されることで、カム筒123及び操作環124は、主固定筒121に対して光軸方向に変位不能となっている。大円筒部121a及び操作環124の端部外周は、回転筒110の大円筒部110aの端部により包囲されている。
【0022】
尚、段付きねじ137と開口124aとの間にはO−リングORが配置され、また回転筒110と大円筒部121aとの間、並びに大円筒部121aと操作環124の両端同士の間には、O−リングORが配置され、これらの間を防塵・防水可能に密封している。更に
図2に示すように、操作環124の外周には、操作時の滑り止めとして周期的凹凸形状の平目ローレット124bが形成されている。
【0023】
主固定筒121の小円筒部121b内には、第5レンズ群G5を構成するレンズL6,L7が間隔環132を挟んで固定され、レンズL8が環状の固定部材133を介して固定されている。又、小円筒部121b内には、第5レンズ群G5に隣接して接眼レンズ(ここでは平行平板)OCが、環状の固定部材134により固定されている。尚、小円筒部121bと接眼レンズOCとの間にはO−リングORが配置され、防塵・防水可能に密封している。尚、被写体側のレンズ群G1〜G4を第1光学系とし、接眼側の第5のレンズ群G5を第2光学系とする。
【0024】
図5A、
図5B、
図5Cは、回転筒110及びプリズム保持筒122における貫通孔110d近傍の断面図であり、調節部材140と共に示している。分解した状態で示す
図5Aにおいて、調節部材140は、第1円筒部140aと、それより小径の第2円筒部140bとを直列に連結した構成を有する。第1円筒部140aの外周には、雄ねじ140cが形成されている。一方、先端側である第2円筒部140bの端部は、先端に行くにつれて縮径する外側テーパー面140dと、先端に行くにつれて拡径する内側テーパー面140eとを形成している。すなわち、第2円筒部140bの端部は尖った環状部140fを有する。一方、貫通孔110dの内周には雌ねじ110eが形成されている。
【0025】
プリズム保持筒122の螺旋溝122aは、底面122bと、一対の側面122c、122dとを有する。底面122bに対して側面122c、122dは直交している。第2円筒部140bの外径は、側面122c、122dの間隔とほぼ等しくなっている。
【0026】
次に、第1レンズ群G1を光軸方向に変位させて行う、ルーペ100のワーキングディスタンス調整について説明する。
図2において、回転筒110の大円筒部110aを固定ユニット120内に光軸方向に沿って(例えば直線的に)挿入すると、大円筒部110aの内側に盛り出るように形成された肉厚部110f(
図4)の円筒状内周面がプリズム保持筒122の螺旋溝122aの外周面にガタなく嵌合し、これにより回転筒110の軸線と固定ユニット120の軸線とが一致する。固定ユニット120に対して所定位置まで回転筒110を挿入した後、回転筒110の貫通孔110dの2つの雌ねじ110eに、調節部材140の雄ねじ140cをそれぞれ螺合させて組み付ける。但し、ワーキングディスタンス調整前の状態では、組付け位置は
図5Bに示すように、調節部材140の頂面が回転筒110の外周面と面一になるようにする。かかる状態では、調節部材140の第2円筒部140bの突出量が比較的小さくなる。この位置をゆるみ位置とする。調節部材140がゆるみ位置にあるときに、その第2円筒部140bの外周が、プリズム保持筒122の螺旋溝122a内に進入し、側面122c、122dと相対摺動可能に当接するようになるが、調節部材140の先端は底面122bに当接しない。よって、調節部材140は側面122c、122dに沿って案内されることとなる。
【0027】
調節部材140をゆるみ位置に保持した状態で、固定ユニット120に対して回転筒110を相対螺動回転させることより、固定ユニット120に対する回転筒110の繰り出し量を調整することができ、これにより第1レンズ群G1と、レンズ群G2〜G5との軸間距離が変化するため所望のワーキングディスタンスを設定できる。所望のワーキングディスタンスが設定されたときは、不図示の工具を外部から貫通孔110dに差し入れて調節部材140に係合させ、
図5Cに示すように、調節部材140を更に追い込むようにねじ込む。これにより、調節部材140の先端の尖った環状部140fが、螺旋溝122aの底面122bに当接して食い込むこととなる。この位置を締め付け位置とする。ゆるみ位置における調節部材140と螺旋溝122aとの間に作用する押圧力(摩擦力)よりも、締め付け位置における調節部材140と螺旋溝122aとの間に作用する押圧力(摩擦力)の方が大きくなるので、回転筒110を、固定ユニット120に対して確実に固定できる。尚、調節部材140の先端中央を尖らせることもできるが、かかる構成では、締め付け位置での食い込み量が小さい場合に固定力が不足し、回転筒110の回転を許容してしまう恐れがあり、又その際に尖った先端を引きずることで螺旋溝122aの底面122bにキズをつける恐れがある。これに対し、環状部140fによれば、そのような恐れがないので好ましい。調節部材140の先端形状は任意に変更できる。
【0028】
ワーキングディスタンスを再設定する場合、不図示の工具を用いて調節部材140を逆方向に回転させ、ゆるみ位置に戻すことで、固定ユニット120に対して回転筒110を相対螺旋回動させることができる。
【0029】
図6は、ルーペ100における接眼側のレンズを分解して示す断面図であり、主固定筒121の小円筒部121bの一部とともに示している。小円筒部121bは、内周から半径方向内側に環状的に突出した取付部121fを有している。取付部121fの被写体側には、レンズL6とL7が間隔環132を挟んで固定されている。
【0030】
図6の状態から最も接眼側(被写体から遠い)のレンズL8を組み付ける工程について説明する。まず、小円筒部121bの取付部121fの接眼側に、所定厚さの環状のスペーサー135を突き当てる。スペーサー135は、異なる厚さのものを予め準備しており、後述する調整時に適切な厚さのスペーサー135を選定して用いることとする。
【0031】
更に、レンズL8を保持した環状の保持部材136を小円筒部121b内に挿入し、スペーサー135に突き当てた状態で、環状の固定部材133を用いて保持部材136を取付部121f側に向かって押圧する。固定部材133は、その外周に雄ねじ部133aを有している。雄ねじ部133aを小円筒部121bの第1雌ねじ部121gに係合させ、不図示の工具を用いてねじ込むことで、保持部材136に対して固定部材133を所定の面圧で押圧させることができる。
【0032】
更に、固定部材133の接眼側にO−リングORを配置し、これに接眼レンズOCを当接させて、環状の固定部材134を用いて固定部材133側に向かって押圧する。固定部材134は、その外周に雄ねじ部134aを有し、また接眼側に複数の凹部134bを有している。雄ねじ部134aを小円筒部121bの第2雌ねじ部121hに係合させ、不図示の工具を凹部134bに係合させてねじ込むことで、接眼レンズOCを所定の面圧で押圧して、O−リングORを密閉可能な程度に変形させることができる。スペーサー135を異なる厚さのものに変更したい場合、上述とは逆の手順でスペーサー135を取り外し、別のスペーサー135に交換して再度、同様な手順で組み付ければ良い。尚、後述するワーキングディスタンスの調整には、一般的には平行平板ガラスである接眼レンズOCは不要であり、またスペーサー135を交換する際に接眼レンズOCの取り付け/取り外しに手間取ることから、接眼レンズOCを含む
図6で点線で囲む部品全てを取り外した状態で調整を行い、その後に上述した手順で組み付けを行えば良い。
【0033】
ルーペ100の動作を説明すると、ユーザーが眼鏡型保持具GLを頭部に装着することで、ルーペ100内のレンズ群G1〜G5を介して被写体を拡大して観察できる。ここで、ユーザーが被写体の倍率を変えたいときは、操作環124を回転させることで、カム筒123が回転する。これにより、ねじ128,129はカム溝123a、123bより同方向に回転するトルクを受けるが、それぞれ直進溝121cに回転を阻止されているので、カム溝123b、123cに沿って相対移動しながら、保持枠126を光軸方向一方向に変位させ、且つ保持枠127を光軸方向他方向に変位させることとなり、これにより第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔を変化させて倍率変更を行うことができる。このとき、ボールBLが、カム筒123の円形開口123cのいずれかに係合する度に、操作環124を操作するユーザーの指に抵抗が付与され、いわゆるクリック感を与えることで、倍率変化の度合いを感覚的に認識できる。
【0034】
次に、ルーペ100の調整方法について説明する。
図7は、ルーペ100の調整を行う際に用いる調整機MDの斜視図であり、
図8は、調整機MDの上面図であり、
図9は、調整機MDの一方の側から見た側面図であり、
図10は、他方の側から見た側面図である。
【0035】
図において、水平なベースBS上に、フレームFRを介してライトボックスLBが鉛直方向に立設されている。内側の光源から光を照射するライトボックスLBの照射面LBa中央には、所定のパターン(不図示)を形成したチャートCTが設置されている。ここで、鉛直方向をZ方向とし、チャートCTの法線方向をX方向とし、Z方向とX方向とに直交する方向をY方向とする。
【0036】
ベースBS上でライトボックスLBよりX方向に離間して、第1の台座PD1と第2の台座PD2とが設置されている。第1の台座PD1上には、
図10に示すダイヤルDIAによってX方向への移動が可能なX方向ステージSTXが取り付けられ、X方向ステージSTXの上にはベースプレートBPが固定されている。ベースプレートBP上には、XY方向に移動可能なXY方向ステージSTXYが取り付けられており、XY方向ステージSTXY上にはカメラプレートCAPが取り付けられている。
【0037】
カメラプレートCAP上には、光軸をX方向に向けるようにしてカメラCA及びレンズLNが取りつけられており、XY方向ステージSTXYによってXY方向に位置が調整できるようになっている。又、カメラCAはケーブル(不図示)を介してモニター(不図示)に接続され、作業者がモニターを介してチャート画像を確認できるようになっている。
【0038】
ベースプレートBP上にはチルトステージCHが取り付けられている。チルトステージCHには、
図8のようにルーペ100の接眼側(主固定筒121)を保持できるようにしてホルダーHLDが取り付けられている。チルトステージCHの調整ダイヤルDIを回すことで、チルトステージCHが傾動し、ルーペ100の軸線とチャートCTの中心を合わせることが可能になっている。尚、ルーペ100は保持された状態で、操作環124及び回転筒110は回転可能である。
【0039】
一方、第2の台座PD2上には、チャートCTとルーペ100のX方向の距離の移動量を測定するダイヤルゲージDGが載置されており、ベースプレートBPに固定されているプレートPLにその測定子DGaを接触させることで、ベースプレートBPの移動量の測定を行えるようになっている。ダイヤルDIAによってX方向にX方向ステージSTXを移動させたとき、ベースプレートBP上に載置されたルーペ100がX方向に移動する。このとき、固定されたチャートCTとルーペ100のX方向相対移動量をダイヤルゲージDGで測定できるようになっている。
【0040】
図7〜10の調整機MDの動作を説明する。図に示すようにホルダーHLDにルーペ100を取り付けて、その端部をカメラCAに対してセットする。このときカメラCAの光軸は、チャートCTの中心を通過するようにチルトステージCHによって調整される。カメラCAによりルーペ100及びレンズLNを介して、チャートCTのパターンを撮像した際に、カメラCAから送信された画像信号は不図示のケーブルを通してモニターに出力され、作業者はモニターにてチャート画像を視認できる。
【0041】
図11は、本実施の形態にかかるルーペ100の調整方法を示すフローチャートである。ここで、前準備として、カメラCA及びレンズLNは、所望の視度に調整されている。以下はルーペ100がテレ端及びワイド端でワーキングディスタンス450mmの時に視度−1dptになるよう調整されるものとして説明するが、ワーキングディスタンス及び視度の値は任意に設定できる。尚、「ルーペの基準点」とは、ルーペ100の接眼側端部よりX方向に距離α(例えば10mm)だけ離れた位置とする。これは、ルーペ100と、これを使用するユーザーの目との間の距離に相当する。又、チャートCTとルーペ100の基準点との距離を、ワーキングディスタンスと呼び、実際使用する際は目から対象物までの距離に相当する。
【0042】
まず、
図11のステップS101で、ワーキングディスタンス450mm時にダイヤルゲージDGが0になるように設定された調整機MDにて、作業者はホルダーHLDに保持されたルーペ100の操作環124(
図3参照)を回転させて、拡大率が最も高いテレ端の状態(第1の変倍位置)にする。ワーキングディスタンスはダイヤルDIAによってルーペをX方向に移動することで変更でき、450mmからの変位量がダイヤルゲージDGに表示されるようになっている。なお、ルーペ100の調節部材140(
図4参照)は緩み位置の状態である。またレンズL8を保持した環状の保持部材136と取付部121fの間に配置されるスペーサー135は設計値の厚みのものを予め組み込んで調整を行う。その後、作業者はルーペ100の回転筒110を回転することで光軸方向に第1レンズ群G1を移動させチャートCTにピントを合わせる。ピントが合えば、テレ端ではワーキングディスタンス450mmの時に視度−1dptの状態にある。
【0043】
次に、ステップS102で作業者は、拡大率が最も低いワイド端の状態(第2の変倍位置)に切り替え、チャートCTのピントを確認し、ステップS103でワイド端とテレ端とでピント位置が合致しているかを判断する。もし、ワイド端に切り替えてもピントが合っていれば(ステップS103の判断OK)、テレ端、ワイド端ともワーキングディスタンスが450mmの時に視度−1dptになっており以降の調整は必要ない。その場合はステップS113へと進み、作業者は調節部材140を締め付け位置にし、回転筒110を固定して調整作業を完了させる。
【0044】
一方、ステップS103でワイド端とテレ端とでピント位置が合致しない場合(ダイヤルゲージDGが0以外の数値となり、ステップS103の判断NGとなる)、ステップS104で作業者は調整機MDのダイヤルDIAを回し、ルーペ100をX方向に移動させることでワーキングディスタンスを変化させ、チャートCTにピントを合わせる。
【0045】
この時、ステップS105において作業者は、ピントがあった時のダイヤルゲージの値Aを読み取る。値Aは視度−1dptでのテレ端とワイド端のワーキングディスタンスの差であり、ワーキングディスタンス450mm時の視度が、テレ端では−1dptだがワイド端では視度−1dptからずれている(例えば−0.8dptである)ともいえる。
【0046】
次に、ステップS106で作業者は、現状から第1レンズ群G1を光軸方向にどれだけ変位させれば、テレ端とワイド端のワーキングディスタンス差がゼロとなるかを計算で求める。具体的には、テレ端での第1レンズ群G1の変位量に対するワーキングディスタンスの変化量と、ワイド端での第1レンズ群G1の変位量に対するワーキングディスタンスの変化量が異なるという、第1レンズ群G1の特性(誤差感度という)を利用する。予め設計又は実測により求められた第1レンズ群G1の誤差感度から、最適な第1レンズ群G1の変位量XL(負値もあり得る)を求める。
【0047】
次に、ステップS107で作業者はルーペ100をホルダーHLDより取り外し、まずルーペの全長Lを測定する。その後、第1レンズ群G1の変位量XLを加えた長さ(L+XL)が全長となるように(つまり、回転筒110の回転によるX方向変位量がXLとなるように)回転筒110を回転させる。
【0048】
次に、第1レンズ群G1を計算分変位させた後、ステップS108で作業者は再度ルーペ100をホルダーHLDに取り付け、ダイヤルDIAを回してテレ端とワイド端のワーキングディスタンスが狙い通り略合致したか否かを判断する。この時、テレ端でのダイヤルゲージDGの値をB(0ではない)、ワイド端でのダイヤルゲージDGの値をC(0ではない)とするが、テレ端とワイド端のワーキングディスタンスはB=Cである場合のみならず、例えば0.99B≦C≦1.01B、或いは│B−C│=0.5(mm)が成立する場合なども略合致しているとみなす。但しこれに限られない。この時、B=C=−20mmとすればテレ端とワイド端のワーキングディスタンスは430mmで略合致している。またこれは、ワーキングディスタンスが450mm時の視度が−1dptからずれて合致している(例えばテレ端、ワイド端とも視度−0.9dptで略合致している)ともいえる。もし、距離B、Cが略合致していなければ、ステップS109で作業者は、上述した作業と同様に回転筒110を回転させ第1レンズ群G1の光軸方向位置を微調整し、更にステップS107に戻って同様な工程を実行する。
【0049】
一方、ダイヤルゲージDGの値B,Cが略合致していれば、ステップS110へと進む。ここで作業者は、測定されたB、Cの数値とレンズの誤差感度から所望のワーキングディスタンス(ここでは450mm)に調整するのに必要なレンズL8の光軸方向変位量を計算する。
【0050】
次に、作業者は計算したレンズL8の光軸方向変位量の変位を実現できる厚みのスペーサー135を選定し、ステップS111で、
図6に示すようにルーペ100を分解した上(但し、上述したように接眼レンズOCは調整が終了するまで組み込まない)で、最初に組みこまれていた設計値のスペーサー135と選定したスペーサー135を交換する。この作業は、ルーペ100をホルダーHLDに取り付けたまま行えると好ましいが、ホルダーHLDからルーペ100を取り外し、交換後に再度組み付けるようにしても良い。
【0051】
最後に、ステップS112で作業者は、ルーペ100の操作環124(
図3参照)を回転しテレ端にした後、ダイヤルDIAを回してチャートCTにピントが合うワーキングディスタンスを測定する。この時のダイヤルゲージの値をDとする。次に作業者は、ワイド端に切り替えた後、ワーキングディスタンスを測定しこの時のダイヤルゲージの値をEとする。テレ端、ワイド端とも所望のワーキングディスタンス450mmの時に視度−1dptになるように調整できていればD=E=0であるが、例えば−2(mm)≦D、E≦2(mm)且つ│D−E│=1.0(mm)が成立する場合なども略合致しているとみなす。但しこれに限られない。このようにワーキングディスタンスが略合致している場合は,作業者が調節部材140を締め付け位置にし、回転筒110を固定し調整作業終了となる。その後、接眼レンズOC等を組み付けることができる。一方、値DとEが所望の値より離れている場合はステップS110に戻り,作業者が再度レンズL8の光軸方向変位量を計算し、同様な工程を実行する。
【0052】
次に、ルーペ100の調整を制御装置が自動的に行う例について説明する。
図12は、ルーペ100の自動調整を行う調整機MDの概略側面図である。図に示す調整機MDは、レンズLNを備えたカメラCAと、操作環124を回転させる第1アクチュエーターAC1と、回転筒110を回転する第2アクチュエーターAC2と、レンズL8を光軸方向に変位させる第3アクチュエーターAC3と、駆動装置DRと、これらを制御する制御装置CONTとを有する。駆動装置DRは、ルーペ100の固定ユニット120を保持するホルダーHLDを取り付けたX方向ステージSTXを、水平なベースBSに対してX方向に駆動可能となっており、その駆動量も検出可能となっている。なお、上述と同じくルーペ100がテレ端及びワイド端でワーキングディスタンス450mmの時に視度−1dptになるよう調整されるものとして説明する。
【0053】
カメラCAの光軸は、ベースBS上に鉛直方向に延在するよう固定されたチャートCTの中央に向かうように予め調整されている。かかる状態で、カメラCAによりルーペ100及びレンズLNを介して、チャートCTのパターンを撮像できる。カメラCAから送信された画像信号は制御装置CONTに送信され、制御装置CONTは、かかる画像信号に基づいてチャート画像のコントラストを求める。求めたコントラストがピントの状態によって変化することを利用し、制御装置CONTは、駆動装置DRを駆動して、カメラCA及びルーペ100をX方向に微量ずつ移動させながら、その都度コントラストを求め、コントラストが最大となった位置をピント位置として決定すると共に、その時点でのX方向ステージSTXの移動量を測定することができる。すなわち、制御装置CONTは、カメラCAと駆動装置DRとを連携させてピント位置を求めることができる。
【0054】
尚、本例で用いるルーペ100は上述の実施の形態とは異なり、レンズL8を保持する保持部材136の外周に雄ねじが形成され、それに係合する雌ねじが小円筒部121bに形成されている。第3アクチュエーターAC3は、小円筒部121bに形成された開口を介して挿入したピンPNなどを用いて、保持部材136を回転させることができるようになっている。第3アクチュエーターAC3が、保持部材136を回転させることで、レンズL8が小円筒部121bに対して光軸方向に変位することとなる。それ以外の構成は、上述した実施の形態と同様である。
【0055】
図13は、この例にかかるルーペ100の調整方法を示すフローチャートである。事前準備は、上述の実施の形態と同様であるが、調節部材140は緩められ、それにより回転筒110は回転自在となっている。
図13のステップS201で、制御装置CONTは、第1アクチュエーターAC1を介して操作環124を回転させてテレ端の状態とし、更にカメラCAと駆動装置DRとを連携させてピント位置を決定し、かかる相対位置をテレ基準値0(原点)とする。この時、テレ端では規定のワーキングディスタンスH=450mmの時に視度−1dptの状態にある。次いで、制御装置CONTは、第1アクチュエーターAC1を介して操作環124を回転させてワイド端の状態とし、更にカメラCAと駆動装置DRとを連携させてピント位置を決定し、テレ基準値0からのチャートCTとルーペ100の相対移動量Fを求める。
【0056】
次に、ステップS202で,制御装置CONTは相対移動量Fをテレ基準値0と比較し、F=0であるか判断する。もし、ワイド端に切り替えてもピントが合っていれば(判断YES)、テレ端、ワイド端ともワーキングディスタンスが450mmの時に視度−1dptになっており、以降の調整は必要ないので、続くステップS204でも判断YESとなって、各部を固定した後に調整作業を終了する。一方、F=0でないと判断したときは、更にステップS203において、制御装置CONTは第2アクチュエーターAC2を介して回転筒110を微量回転する。
【0057】
その後、再びステップS201に戻って,制御装置CONTは第1アクチュエーターAC1を介して操作環124を回転させてテレ端の状態とし、更にカメラCAと駆動装置DRとを連携させてピント位置を決定し、新たな相対位置をテレ基準値0とする。次に、制御装置CONTは、第1アクチュエーターAC1を介して操作環124を回転させてワイド端の状態とし、更にカメラCAと駆動装置DRとを連携させてピント位置を決定し、テレ基準値0からのチャートCTとルーペ100の相対移動量Fを求める。以上の動作は、相対移動量Fが0に略合致するまで繰り返される。「略合致」については、上述の実施の形態と同様に判断する。両者が略合致した時点で、作業者が調節部材140を締め込んで、回転筒110を固定しても良い。
【0058】
相対移動量Fが0に略合致していると判断したときは、ステップS204で、制御装置CONTは、原点からの相対移動量に基づき現在のテレ端(又はワイド端)のワーキングディスタンスGを測定し、これが、規定のワーキングディスタンスH(=450mm)と合致しているか否かを判断する。通常は、ワーキングディスタンスG≠Hである(ステップS204の判断NO)から、ステップS205へと進み、制御装置CONTは第3アクチュエーターAC3を介してレンズL8を光軸方向に微量変位させる。これによりテレ端とワイド端のワーキングディスタンスの値が一緒に変化する。
【0059】
次に、ステップS206で、制御装置CONTは、カメラCAと駆動装置DRとを連携させてピント位置を決定し、テレ端(又はワイド端)でのワーキングディスタンスGを求める。その後、再度ステップS204に戻り、制御装置CONTは、レンズL8を変位させて求めたワーキングディスタンスGが、規定のワーキングディスタンスHと合致しているか否かを判断する。この動作は、ワーキングディスタンスG、Hが合致するまで繰り返され、両者が合致した時点で調整は終了する。その後、作業者が小円筒部121bの開口から接着剤を付与して、保持部材136と小円筒部121bとを接着することで、レンズL8の光軸方向位置が固定される。本実施の形態によれば、レンズL1,L8の変位量を作業者が逐一計算する必要がなく、機械的な動作を繰り返すのみで効率的に調整を行える。尚、ステップS201〜S203,ステップS204〜S206のいずれか一方を作業者が手動で行うようにしても良い。
【0060】
本発明は、明細書に記載の実施例に限定されるものではなく、他の実施例・変形例を含むことは、本明細書に記載された実施例や思想から本分野の当業者にとって明らかである。明細書の記載及び実施例は、あくまでも例証を目的としており、本発明の範囲は請求項によって示されている。例えば、調整時に第1光学系で光軸方向に変位させるレンズは対象物に最も近いレンズL1に限られず、それ以外のレンズでも良く、また第2光学系で光軸方向に変位させるレンズは対象物から最も遠いレンズL8に限られず、それ以外のレンズでも良い。更に第1の変倍位置はテレ端に限られず、また第2の変倍位置はワイド端に限られず、決められた中間位置でも良い。