特許第6950764号(P6950764)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6950764リチウムイオン二次電池の負極添加剤及びそれを含むリチウムイオン二次電池の負極スラリー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6950764
(24)【登録日】2021年9月28日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池の負極添加剤及びそれを含むリチウムイオン二次電池の負極スラリー
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20210930BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20210930BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20210930BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20210930BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20210930BHJP
   C08L 97/00 20060101ALI20210930BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   H01M4/62 Z
   H01M4/587
   H01M4/1393
   H01M4/1395
   H01M4/139
   C08L97/00
   C08L101/00
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-18744(P2020-18744)
(22)【出願日】2020年2月6日
(65)【公開番号】特開2020-136266(P2020-136266A)
(43)【公開日】2020年8月31日
【審査請求日】2020年2月6日
(31)【優先権主張番号】201910118861.2
(32)【優先日】2019年2月15日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】周 燕
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲麗▼
(72)【発明者】
【氏名】李 于利
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ 化雨
【審査官】 結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−149416(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/225539(WO,A1)
【文献】 特開平10−064546(JP,A)
【文献】 特開平07−201364(JP,A)
【文献】 特開2020−129479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/62
H01M 4/587
H01M 4/1393
H01M 4/1395
H01M 4/139
C08L 97/00
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグニン類物質及び腐植酸類物質をみ、
前記腐植酸類物質の重量に対する前記リグニン類物質の重量の比は、30:70乃至80:20の範囲内である、
リチウムイオン二次電池の負極添加剤。
【請求項2】
前記リグニン類物質は、Na+ 、K+ 、Ca+ 、NH4+、Mg2+のうちの1種類又は複数種類を含み、且つカルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、スルホン酸基のうちの1種類又は複数種類を含む、
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の負極添加剤。
【請求項3】
前記リグニン類物質は、リグニンスルホン酸ナトリウムである、
請求項2に記載のリチウムイオン二次電池の負極添加剤。
【請求項4】
前記腐植酸類物質は、フミン酸、ウルミン酸、フルボ酸を含む、
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の負極添加剤。
【請求項5】
負極活物質の総重量に対する前記負極添加剤の添加量は、0.05wt%乃至5wt%である、
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の負極添加剤。
【請求項6】
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池の負極添加剤と、負極活物質と、バインダーと、増ちょう剤と、導電剤とを含む、
リチウムイオン二次電池の負極スラリー。
【請求項7】
85重量部乃至95重量部の前記負極活物質と、1重量部乃至5重量部の前記バインダーと、1重量部乃至5重量部の前記増ちょう剤と、1重量部乃至5重量部の前記導電剤とを含み、
且つ前記リチウムイオン二次電池の負極添加剤の量は、前記負極活物質の総重量に対して0.05wt%乃至5wt%である、
請求項に記載のリチウムイオン二次電池の負極スラリー。
【請求項8】
前記負極活物質は、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素、コークス、ガラス状炭素、有機ポリマ焼成体、炭素繊維、活性炭、シリコンベース材料を含有する黒鉛、シリコンベース材料を含む、
請求項に記載のリチウムイオン二次電池の負極スラリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池の分野に関し、特に、リチウムイオン二次電池の負極添加剤及びそれを含むリチウムイオン二次電池の負極スラリーに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電子技術が絶えずに更新されることによって、電子機器のエネルギー供給をサポートする電池装置についてのニーズも絶えずに高まっている。現在、多くの電気量を蓄積可能であると共に高出力可能である電池が望まれている。従来の鉛蓄電池及びニッケル・水素充電池等では、すでに新規の電子製品の需要を満たすことができなくなった。よって、リチウム電池が広く注目されている。リチウム電池の開発中において、そのリチウム電池の容量及び性能は、すでにより有効に向上した。
【0003】
既存技術中のリチウム電池は、リチウム金属電池とリチウムイオン電池との2種類に分けられている。リチウム金属電池は、リチウム金属又はリチウム合金を負極として用いているが、危険性が大きいので、日常生活における電子製品への応用は少ない。リチウムイオン電池は、金属状態のリチウムを含有せず、通常、リチウム合金の金属酸化物を正極材料として使用すると共に、通常、黒鉛を負極材料として使用する。しかし、通常のリチウムイオン二次電池は、依然として多くの問題点を有している。既存のリチウムイオン二次電池では、室温(常温)及び低温での電気性能が依然として不十分であり、使用中に依然として負極の剥離強度が低すぎることに起因して電気性能が低下する等の問題が発生する。
【0004】
既存技術のリチウムイオン二次電池を製造する工程では、通常、リチウムイオン二次電池の電気性能を改善するために、負極スラリーに炭酸プロピレンを添加している。しかし、このような方法によると、依然として制限を有するため、リチウムイオン二次電池において電気性能と剥離強度とを両立させることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な目的は、既存技術のリチウムイオン二次電池において室温(常温)及び低温での電気性能が不足であると共に剥離強度が低い問題を解決できるリチウムイオン二次電池の負極添加剤及びそれを含むリチウムイオン二次電池の負極スラリーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を実現するために、本発明の一態様によるリチウムイオン二次電池の負極添加剤は、リグニン類物質及び腐植酸類物質をみ、その腐植酸類物質の重量に対するリグニン類物質の重量の比が30:70乃至80:20の範囲内であるものである。
【0007】
さらに、上記したリチウムイオン二次電池の負極添加剤では、リグニン類物質がNa+ 、K+ 、Ca+ 、NH4+、Mg2+のうちの1種類又は複種類を含み、且つカルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、スルホン酸基のうちの1種類又は複数種類を含んでもよい。
【0008】
さらに、上記したリチウムイオン二次電池の負極添加剤では、リグニン類物質がリグニンスルホン酸ナトリウムであってもよい。
【0009】
さらに、上記したリチウムイオン二次電池の負極添加剤では、腐植酸類物質がフミン酸、ウルミン酸、フルボ酸を含んでいてもよい。
【0010】
さらに、上記したリチウムイオン二次電池の負極添加剤では、負極活物質の総重量に対する負極添加剤の添加量が0.05wt%乃至5wt%であってもよい。
【0013】
本発明の一態様によるリチウムイオン二次電池の負極スラリーは、上記したリチウムイオン二次電池の負極添加剤と、負極活物質と、バインダーと、増ちょう剤と、導電剤とを含むものである。
【0014】
さらに、上記したリチウムイオン二次電池の負極スラリーでは、85重量部乃至95重量部の負極活物質と、1重量部乃至5重量部のバインダーと、1重量部乃至5重量部の増ちょう剤と、1重量部乃至5重量部の導電剤とを含み、且つリチウムイオン二次電池の負極添加剤の量が負極活物質の総重量に対して0.05wt%乃至5wt%であってもよい。
【0015】
さらに、上記したリチウムイオン二次電池の負極スラリーでは、負極活物質が難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素、コークス、ガラス状炭素、有機ポリマ焼成体、炭素繊維、活性炭、シリコンベース材料を含有する黒鉛、シリコンベース材料を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によるリチウムイオン二次電池の負極添加剤及びリチウムイオン二次電池の負極スラリーによると、リチウムイオン二次電池の常温及び低温での電気性能を改善し、そのリチウムイオン二次電池の剥離強度を向上させることができるという効果が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】リグニンスルホン酸ナトリウム及び腐植酸による電極活物質の分散効果の実験結果を示した図である。
図2】本発明の負極スラリーによって製造されるリチウムイオン二次電池の負極の剥離強度のテスト結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
なお、互いに衝突しない限り、本発明の実施例及び実施例中の特徴は、互いに組み合わせ可能である。以下、実施例を結合して、本発明を詳しく説明する。以下の実施例は、例示的なものに過ぎないため、本発明の保護範囲を限定するものではない。
【0019】
背景技術の部分で説明したように、既存技術中のリチウムイオン二次電池の負極添加剤では、リチウムイオン二次電池の電気性能を改善するために、通常、炭酸プロピレンが添加されている。しかし、このようなリチウムイオン二次電池の電気性能及び負極の剥離強度が依然として理想的ではないため、更なる改善を行う必要がある。既存技術における問題について、本発明の一実施形態では、リグニン類物質及び腐植酸類物質のうちの1種類又はそれらの任意の組み合わせを含むリチウムイオン二次電池の負極添加剤を提供する。
【0020】
既存技術中のリチウムイオン二次電池の負極添加剤とは異なって、本発明の負極添加剤では、リグニン類物質及び腐植酸類物質のうちのいずれか1種類又はそれらの任意の組み合わせが添加されている。
【0021】
リグニン類物質は、ポリマ材料であり、通常、アニオン型界面活性剤として用いられると共に、良好な分散性能を有するので、固体物質を水性媒体に均一に分散させることができる。
【0022】
腐植酸類物質は、複雑な天然有機高分子化合物の混合物であり、通常、黒色又はダークブラウンのアモルファス粉末であり、水にわずかに溶けると共に酸性を示す。本発明の腐植酸類物質は、芳香族コア、架橋基又は結合、活性基から構成される。芳香族コアは、5個〜6個のベンゼン環又はヘテロ環構造からなり、主に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、キノン、フラン、ピリジン等の環状構造を含む。芳香族コアに接続される架橋基又は結合は、主に、シングル架橋結合及びダブル架橋結合を含み、例えば、−O−、−CH2 −、−S−、−N−等を含む。活性基は、主に、フェノール性ヒドロキシル基、カルボキシル基、メトキシ基、アルコール性ヒドロキシル基、エノール基、カルボニル基等を含む。上記した構造を具備するので、腐植酸類物質は、本発明において同時に界面活性剤としての役割も果たすことができる。
【0023】
本発明の一実施形態において、リチウムイオン二次電池の負極添加剤は、リグニン類物質又は腐植酸類物質のみを含むことができ、又は腐植酸類物質とリグニン類物質との任意の組み合わせを含むこともできる。
【0024】
以下の方法によって、負極添加剤を含む負極を製造する。最初に、水性媒体中において負極活物質と導電剤とを均一に混合させる。続いて、水性媒体に増ちょう剤を添加した後、その水性媒体を攪拌する。続いて、本発明のリチウムイオン二次電池の負極添加剤を含む脱イオン水溶液を水性媒体に添加しながら、その水性媒体を攪拌する。最後に、水性媒体にバインダーを添加した後、その水性媒体を均一に攪拌して、負極スラリーを得る。得られた負極スラリーを一定の時間まで置いてから金属箔上に塗布した後、その負極スラリーを80℃で乾燥して、負極極片を得る。
【0025】
負極極片を製造する工程において、本発明の負極添加剤を水性媒体に添加したので、負極活物質が水性媒体中において均一に分散されて、良好な分散性を有する負極スラリーを得ることができる。そして、金属箔上に負極スラリーを塗布した後、その負極スラリーが均一な分散性を有しているので、その負極スラリー中のバインダーにより負極活物質、増ちょう剤及び導電剤が金属箔上に良好に結合され、これにより最終的に形成された負極極片の剥離強度を増加させることができる。よって、負極極片を製造する工程において本発明の負極添加剤を水性媒体に添加した後、優れた電気性能と優れた剥離強度とを同時に実現できる。
【0026】
本発明の一実施形態によると、本発明の負極添加剤がリグニン類物質を含む場合に、そのリグニン類物質がNa+ 、K+ 、Ca+ 、NH4+、Mg2+のうちの1種類又は複数種類のイオンを含むことができると共に、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、スルホン酸基のうちの1種類又は複数種類を含むことができる。
【0027】
異なる一実施形態において、本発明のリチウムイオン二次電池の負極添加剤は、リグニンカルボン酸ナトリウム、リグニンカルボン酸カリウム、リグニンカルボン酸カルシウム、リグニンカルボン酸アンモニウム、リグニンカルボン酸マグネシウム、リグニンヒドロキシルナトリウム、リグニンヒドロキシルカリウム、リグニンヒドロキシルカルシウム、リグニンヒドロキシルアンモニウム、リグニンヒドロキシルマグネシウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カリウム、リグニンスルホン酸カルシウム、リグニンスルホン酸アンモニウム、リグニンスルホン酸マグネシウムのうちの1種類又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0028】
リグニン類物質は、各種分野に応用可能であるが、本発明の発明者は、上記したリグニン類物質を使用する際に、そのリグニン類物質の作用を最もよく発揮できると共に、製品であるリチウムイオン二次電池において電気性能と剥離強度とに関して最高のバランスがとられることを見出した。
【0029】
上記したリグニン類物質において、最も好適な実施形態は、リグニンスルホン酸ナトリウムである。優れた電離性能を有するので、界面活性剤の作用を良好に発揮することで、負極スラリー中において電極活物質を良好に分散させることができる。
【0030】
本発明の一実施形態によると、本発明の負極添加剤が腐植酸類物質を含む場合に、その腐植酸類物質がフミン酸と、ウルミン酸と、フルボ酸とを含むことができる。
【0031】
フルボ酸(黄色い腐植酸)は、分子量が小さく、通常、黄色であり、水、希酸性溶液、希アルカリ性溶液、アセトンに溶解可能である。ウルミン酸(ブラウン腐植酸)は、分子量が中等で、通常、ブラウン色であり、希苛性アルカリ溶液、アセトン、アルコールに溶解可能であるが、酸性溶液には溶解できない。フミン酸(黒色腐植酸)は、分子量が大きく、通常、黒色であり、希苛性アルカリ溶液に溶解するが、アルコール、アセトンには溶解しない。
【0032】
上記したように、腐植酸類物質の活性基は、主に、フェノール性ヒドロキシル基、カルボキシル基、メトキシ基、アルコール性ヒドロキシル基、エノール基、カルボニル等を含んでおり、それらの基は、腐植酸類物質に良好な親水性、イオン交換性、錯化性、酸化還元性及び付着性能を提供する。よって、分子量が高いと共に活性基が多い腐植酸類物質を利用して親水性を増加させることで、最終的にリチウムイオン二次電池の電気性能を改善することが好ましい。
【0033】
一実施形態において、負極活物質の総重量に対する本発明のリチウムイオン二次電池の負極添加剤の添加量は、0.05wt%乃至5wt%である。リチウムイオン二次電池の負極スラリーは、通常、負極活物質、バインダー、増ちょう剤及び導電剤を含んでおり、本発明のリチウムイオン二次電池の負極添加剤は、負極活物質を有効に分散させるために用いられる。本発明の発明者は、大量の実験を行うことで、上記した添加量の範囲内であれば、負極活物質が負極スラリー中においてに均一に分散することを保証可能であると共に、他の組成(例えば、バインダー、増ちょう剤及び導電剤)の効果には不利な影響を与えないことを見出した。
【0034】
負極添加剤の量が負極活物質の総重量に対して0.05wt%未満であると、負極活物質が負極スラリー中において良好に分散できないため、最終的な製品であるリチウムイオン二次電池の電気性能が悪くなる。一方、負極添加剤の量が負極活物質の総重量に対して5wt%を超えると、バインダー及び増ちょう剤の性能に不利な影響を与えることで、負極スラリーの粘度が不足になると共に、その負極スラリーが良好に金属箔上に付着できないため、負極極片の剥離性能が低下する等の一連の問題が発生する。
【0035】
本発明の一実施形態において、リチウムイオン二次電池の負極添加剤の添加量に関しては、異なる組み合わせに対して、その下限は負極活物質の総重量に対して0.05wt%、0.06wt%、0.07wt%、0.1wt%、0.15wt%、0.2wt%、0.25wt%、0.5wt%、0.75wt%、1wt%、1.25wt%、1.5wt%、1.75wt%、2wt%、2.25wt%、2.5wt%、2.75wt%、3wt%、3.25wt%、3.5wt%、3.75wt%、4wt%、4.25wt%、4.5wt%、4.75wt%のいずれかであることができると共に、その上限は負極活物質の総重量に対して3wt%、3.5wt%、4wt%、4.5wt%、5wt%のいずれかであることができる。
【0036】
具体的に、リチウムイオン二次電池の負極添加剤の添加量は、負極活物質の総重量に対して、0.05wt%乃至3wt%、0.06wt%乃至3wt%、0.07wt%乃至3wt%、0.1wt%乃至3wt%、0.15wt%乃至3wt%、0.2wt%乃至3wt%、0.25wt%乃至3wt%、0.5wt%乃至3wt%、0.75wt%乃至3wt%、1wt%乃至3wt%、1.25wt%乃至3wt%、1.5wt%乃至3wt%、1.75wt%乃至3wt%、2wt%乃至3wt%、2.25wt%乃至3wt%、2.5wt%乃至3wt%、2.75wt%乃至3wt%、3wt%乃至5wt%、3.25wt%乃至5wt%、3.5wt%乃至5wt%、3.75wt%乃至5wt%、4wt%乃至5wt%、4.25wt%乃至5wt%、4.5wt%乃至5wt%、4.75wt%乃至5wt%、0.25wt%乃至4.5wt%、0.5wt%乃至4wt%、0.55wt%乃至3.5wt%のいずれかの範囲内であることができる。
【0037】
本発明の一実施形態において、本発明のリチウムイオン二次電池の負極添加剤は、リグニン類物質と腐植酸類物質とを同時に含んでいてもよい。本実施形態において、負極スラリーを製造する際に、負極活物質と導電剤と増ちょう剤との混合スラリー中に、リグニン類物質と腐植酸類物質とを同時に含有する脱イオン水溶液を添加し、最後にバインダーを添加してから混合スラリーを均一に攪拌することで、負極スラリーを得る。リグニン類物質及び腐植酸類物質がいずれも両性ポリマであるので、負極スラリー中においてリグニン類物質及び腐植酸類物質が互いに促進しあうことで、負極スラリーが優れた分散性を示すことになる。また、リグニン類物質及び腐植酸類物質がいずれも長鎖ポリマであるので、負極スラリーを乾燥させると、負極極片を製造する過程において縺れ現象が発生して、負極スラリーの金属箔への付着効果が増加することで、負極極片の剥離強度が向上する。
【0038】
上記した実施形態において、さらに、腐植酸類物質の重量に対するリグニン類物質の重量の比は、30:70乃至80:20の範囲内である。上記した範囲内において、本発明のリチウムイオン二次電池の負極添加剤が最適な割合で負極スラリー中に存在できる。本発明の一実施形態において、腐植酸類物質の重量に対するリグニン類物質の重量の比は、30:70乃至80:20、35:65乃至75:25、40:60乃至70:30、45:55乃至65:35、50:50乃至60:40のいずれかの範囲内であることができる。
【0039】
本発明の一実施形態において、上記したリチウムイオン二次電池の負極添加剤と、負極活物質と、バインダーと、増ちょう剤と、導電剤とを含むリチウムイオン二次電池の負極スラリーを提供する。本発明のリチウムイオン二次電池の負極添加剤を含むので、本発明の負極スラリーは、優れた分散性を有すると共に、本発明の負極スラリーによって製造されるリチウムイオン二次電池は、優れた電気性能及び改善された剥離強度を有する。
【0040】
上記した実施形態において、リチウムイオン二次電池の負極スラリーは、85重量部乃至95重量部の負極活物質と、1重量部乃至5重量部のバインダーと、1重量部乃至5重量部の増ちょう剤と、1重量部乃至5重量部の導電剤とを含むと共に、リチウムイオン二次電池の負極添加剤の量は、負極活物質の総重量に対して0.05wt%乃至5wt%であることが好ましい。上記した数値範囲内であれば、本発明の負極スラリーが最適な割合で製造されるため、その負極スラリーも良好な分散性を示すことができる。
【0041】
本発明の一実施形態において、本発明の負極スラリーに含まれる負極活物質は、シリコンベース材料を含有する黒鉛を含んでいてもよい。負極活物質は、リチウムを吸蔵及び放出することが可能である1種類又は複数種類の負極材料を負極活物質として含む。リチウムを吸蔵及び放出することが可能である負極材料の具体例には、各種の炭素材料とシリコンベース材料が含まれ、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素、コークス、ガラス状炭素、有機ポリマ焼成体、炭素繊維、活性炭、ケイ素−酸素材料、シリコンベース材料を含有する黒鉛等であるケイ素−炭素材料、ケイ素合金などである。これらの材料において、コークスの具体例には、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークスが含まれる。有機ポリマ焼成体は、例えば、フェノール樹脂又はフラン樹脂等のポリマ材料を適切な温度で焼成し、そのポリマ材料を炭化することで得られる。一部の有機ポリマ焼成体は、難黒鉛化性炭素又は易黒鉛化性炭素に分類される。ここで、シリコンベース材料を含有する黒鉛が好ましい。
【0042】
以下、具体的な実施例を結合することで本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例が本発明の保護範囲を限定するものと見なしてはいけない。
【0043】
以下の実施例1、実施例2及び比較例1に関して、リグニンスルホン酸ナトリウム及び腐植酸による電極活物質の分散効果を観察した結果を図1に示した。
【0044】
実施例1
活物質である0.5gのシリコンベース材料を含有する黒鉛をビーカーに投入してから、0.05gのリグニンスルホン酸ナトリウムを添加し、均一に混合するまで攪拌した後、50ml(=50cm3 )の脱イオン水を添加して、底部の活物質が掻き回されるまで攪拌した。30分間置いてから、状態を観察した。
【0045】
実施例2
活物質である0.5gのシリコンベース材料を含有する黒鉛をビーカーに投入してから、0.05gのフルボ酸を添加し、均一に混合するまで攪拌した後、50mlの脱イオン水を添加して、底部の活物質が掻き回されるまで攪拌した。30分間置いてから、状態を観察した。
【0046】
比較例1
活物質である0.5gのシリコンベース材料を含有する黒鉛をビーカーに投入してから、50mlの脱イオン水を添加して、底部の活物質が掻き回されるまで攪拌した。30分間置いてから、状態を観察した。
【0047】
実施例1,2及び比較例1の実験結果は、図1に示されている。
【0048】
上記した実施例1,2及び比較例1によると、リグニンスルホン酸ナトリウム及び腐植酸を添加した実施例1,2では、電極活物質が溶媒中において良好に分散されたため、懸濁液が得られた。一方、如何なる添加剤も添加していない比較例1では、電極活物質が溶媒の表面に浮遊していた。従って、本発明の添加剤を使用した場合に、電極活性物又は他の電極へ添加すべき物質の表面張力が有効に低減することで、電極スラリー中での分散に有利であるため、最終的に製造される電極材料において各物質が電極材料中において均一に分散されることが分かった。
【0049】
以下の一連の実施例及び比較例によって、リグニンスルホン酸ナトリウム及び/又は腐植酸を使用した後の電池及び電極性能の改善を示した。
【0050】
実施例3
(1)負極極片の製造:
90gのシリコンベース材料を含有する黒鉛(活物質)と4gの導電剤Super−pとを均一に混合し、3gの増ちょう剤CMC(カルボキシメチルセルロース)を添加してから15分間攪拌し、0.05wt%のリグニンスルホン酸ナトリウム(活物質の総重量に対して0.05wt%である。)を含有する脱イオン水溶液を添加してから30分間攪拌した後、3gのバインダーSBR(ブタジエン−スチレンゴム)を添加してから継続して30分間攪拌して、負極スラリーを得た。得られた負極スラリーを1時間置いてから銅箔上に塗布し、80℃で乾燥させて負極極片を得た後、その負極極片を用いて剥離強度テストを行った。テスト結果を図2に示した。
【0051】
(2)電池の組み立て及びテスト:
得られた負極極片を真空オーブンに入れて乾燥した。乾燥温度は100℃、オーブン真空度は−90kPaとした。負極極片を5時間乾燥させた後、その負極極片を真空オーブンから取り出して冷却してから裁断、ローリング、ダイカット等の後続処理を行った。その後、負極極片と共に正極極片を用いて1Ahの実験電池を組み立て、その実験電池にLiPF6 濃度が1.08mol/kgである電解液を注入した。25℃及び0℃のそれぞれにおいて実験電池を用いて0.5Cの電流で容量テストを行った。実験結果を表1に示した。
【0052】
実施例4
(1)負極極片の製造:
90gのシリコンベース材料を含有する黒鉛(活物質)と4gの導電剤Super−pとを均一に混合し、3gの増ちょう剤CMCを添加してから15分間攪拌し、0.5wt%のリグニンスルホン酸ナトリウム(活物質の総重量に対して0.5wt%である。)を含有する脱イオン水溶液を添加してから30分間攪拌した後、3gのバインダーSBRを添加してから継続して30分間攪拌して、負極スラリーを得た。得られた負極スラリーを1時間置いてから銅箔上に塗布し、80℃で乾燥させて負極極片を得た後、その負極極片を用いて剥離強度テストを行った。テスト結果を図2に示した。
【0053】
(2)電池の組み立て及びテスト:
得られた負極極片を真空オーブンに入れて乾燥した。乾燥温度は100℃、オーブン真空度は−90kPaとした。負極極片を5時間乾燥させた後、その負極極片を真空オーブンから取り出して冷却してから裁断、ローリング、ダイカット等の後続処理を行った。その後、負極極片と共に正極極片を用いて1Ahの実験電池を組み立て、その実験電池にLiPF6 濃度が1.08mol/kgである電解液を注入した。25℃及び0℃のそれぞれにおいて実験電池を用いて0.5Cの電流で容量テストを行った。実験結果を表1に示した。
【0054】
実施例5
(1)負極極片の製造:
90gのシリコンベース材料を含有する黒鉛(活物質)と4gの導電剤Super−pとを均一に混合し、3gの増ちょう剤CMCを添加してから15分間攪拌し、5wt%のリグニンスルホン酸ナトリウム(活物質の総重量に対して5wt%である。)を含有する脱イオン水溶液を添加してから30分間攪拌した後、3gのバインダーSBRを添加してから継続して30分間攪拌して、負極スラリーを得た。得られた負極スラリーを1時間置いてから銅箔上に塗布し、80℃で乾燥させて負極極片を得た後、その負極極片を用いて剥離強度テストを行った。テスト結果を図2に示した。
【0055】
(2)電池の組み立て及びテスト:
得られた負極極片を真空オーブンに入れて乾燥した。乾燥温度は100℃、オーブン真空度は−90kPaとした。負極極片を5時間乾燥させた後、その負極極片を真空オーブンから取り出して冷却してから裁断、ローリング、ダイカット等の後続処理を行った。その後、負極極片と共に正極極片を用いて1Ahの実験電池を組み立て、その実験電池にLiPF6 濃度が1.08mol/kgである電解液を注入した。25℃及び0℃のそれぞれにおいて実験電池を用いて0.5Cの電流で容量テストを行った。実験結果を表1に示した。
【0056】
実施例6
(1)負極極片の製造:
90gのシリコンベース材料を含有する黒鉛(活物質)と4gの導電剤Super−pとを均一に混合し、3gの増ちょう剤CMCを添加してから15分間攪拌し、0.05wt%フルボ酸(活物質の総重量に対して0.05wt%である。)を含有する脱イオン水溶液を添加してから30分間攪拌した後、3gのバインダーSBRを添加してから継続して30分間攪拌して、負極スラリーを得た。得られた負極スラリーを1時間置いてから銅箔上に塗布し、80℃で乾燥させて負極極片を得た後、その負極極片を用いて剥離強度テストを行った。テスト結果を図2に示した。
【0057】
(2)電池の組み立て及びテスト:
得られた負極極片を真空オーブンに入れて乾燥した。乾燥温度は100℃、オーブン真空度は−90kPaとした。負極極片を5時間させた後、その負極極片を真空オーブンから取り出して冷却してから裁断、ローリング、ダイカット等の後続処理を行った。その後、負極極片と共に正極極片を用いて1Ahの実験電池を組み立て、その実験電池にLiPF6 濃度が1.08mol/kgである電解液を注入した。25℃及び0℃のそれぞれにおいて実験電池を用いて0.5Cの電流で容量テストを行った。実験結果を表1に示した。
【0058】
実施例7
(1)負極極片の製造:
90gのシリコンベース材料を含有する黒鉛(活物質)と4gの導電剤Super−pとを均一に混合し、3gの増ちょう剤CMCを添加してから15分間攪拌し、0.5wt%のフルボ酸(活物質の総重量に対して0.5wt%である。)を含有する脱イオン水溶液を添加してから30分間攪拌した後、3gのバインダーSBRを添加してから継続して30分間攪拌して、負極スラリーを得た。得られた負極スラリーを1時間置いてから銅箔上に塗布し、80℃で乾燥させて負極極片を得た後、その負極極片を用いて剥離強度テストを行った。テスト結果を図2に示した。
【0059】
(2)電池の組み立て及びテスト:
得られた負極極片を真空オーブンに入れて乾燥した。乾燥温度は100℃、オーブン真空度は−90kPaとした。負極極片を5時間乾燥させた後、その負極極片を真空オーブンから取り出して冷却してから裁断、ローリング、ダイカット等の後続処理を行った。その後、負極極片と共に正極極片を用いて1Ahの実験電池を組み立て、その実験電池にLiPF6 濃度が1.08mol/kgである電解液を注入した。25℃及び0℃のそれぞれにおいて実験電池を用いて0.5Cの電流で容量テストを行った。実験結果を表1に示した。
【0060】
実施例8
(1)負極極片の製造:
90gのシリコンベース材料を含有する黒鉛(活物質)と4gの導電剤Super−pとを均一に混合し、3gの増ちょう剤CMCを添加してから15分間攪拌し、5wt%フルボ酸(活物質の総重量に対して5wt%である。)を含有する脱イオン水溶液を添加してから30分間攪拌した後、3gのバインダーSBRを添加してから継続して30分間攪拌して、負極スラリーを得た。得られた負極スラリーを1時間置いてから銅箔上に塗布し、80℃で乾燥させて負極極片を得た後、その負極極片を用いて剥離強度テストを行った。テスト結果を図2に示した。
【0061】
(2)電池の組み立て及びテスト:
得られた負極極片を真空オーブンに入れて乾燥した。乾燥温度は100℃、オーブン真空度は−90kPaとした。負極極片を5時間乾燥させた後、その負極極片を真空オーブンから取り出して冷却してから裁断、ローリング、ダイカット等の後続処理を行った。その後、負極極片と共に正極極片を用いて1Ahの実験電池を組み立て、その実験電池にLiPF6 濃度が1.08mol/kgである電解液を注入した。25℃及び0℃のそれぞれにおいて実験電池を用いて0.5Cの電流で容量テストを行った。実験結果を表1に示した。
【0062】
実施例9
(1)負極極片の製造:
90gのシリコンベース材料を含有する黒鉛(活物質)と4gの導電剤Super−pとを均一に混合し、3gの増ちょう剤CMCを添加してから15分間攪拌し、0.05wt%のリグニンスルホン酸ナトリウムとフルボ酸との混合物(活物質の総重量に対して0.05wt%である。)を含有する脱イオン水溶液を添加してから30分間攪拌した。腐植酸の質量に対するリグニンスルホン酸ナトリウムの質量の比は、80:20とした。最後に、3gのバインダーSBRを添加してから継続して30分間攪拌して、負極スラリーを得た。得られた負極スラリーを1時間置いてから銅箔上に塗布し、80℃で乾燥させて負極極片を得た後、その負極極片を用いて剥離強度テストを行った。テスト結果を図2に示した。
【0063】
(2)電池の組み立て及びテスト:
得られた負極極片を真空オーブンに入れて乾燥した。乾燥温度は100℃、オーブン真空度は−90kPaとした。負極極片を5時間乾燥させた後、その負極極片を真空オーブンから取り出して冷却してから裁断、ローリング、ダイカット等の後続処理を行った。その後、負極極片と共に正極極片を用いて1Ahの実験電池を組み立て、その実験電池にLiPF6 濃度が1.08mol/kgである電解液を注入した。25℃及び0℃のそれぞれにおいて実験電池を用いて0.5Cの電流で容量テストを行った。実験結果を表1に示した。
【0064】
実施例10
(1)負極極片の製造:
90gのシリコンベース材料を含有する黒鉛(活物質)と4gの導電剤Super−pとを均一に混合し、3gの増ちょう剤CMCを添加してから15分間攪拌し、0.5wt%のリグニンスルホン酸ナトリウムとフルボ酸との混合物(活物質の総重量に対して0.5wt%である。)を含有する脱イオン水溶液を添加してから30分間攪拌した。腐植酸の質量に対するリグニンスルホン酸ナトリウムの質量の比は、80:20とした。最後に、3gのバインダーSBRを添加してから継続して30分間攪拌して、負極スラリーを得た。得られた負極スラリーを1時間置いてから銅箔上に塗布し、80℃で乾燥させて負極極片を得た後、その負極極片を用いて剥離強度テストを行った。テスト結果を図2に示した。
【0065】
(2)電池の組み立て及びテスト:
得られた負極極片を真空オーブンに入れて乾燥した。乾燥温度は100℃、オーブン真空度は−90kPaとした。負極極片を5時間乾燥させた後、その負極極片を真空オーブンから取り出して冷却してから裁断、ローリング、ダイカット等の後続処理を行った。その後、負極極片と共に正極極片を用いて1Ahの実験電池を組み立て、その実験電池にLiPF6 濃度が1.08mol/kgである電解液を注入した。25℃及び0℃のそれぞれにおいて実験電池を用いて0.5Cの電流で容量テストを行った。実験結果を表1に示した。
【0066】
実施例11
(1)負極極片の製造:
90gのシリコンベース材料を含有する黒鉛(活物質)と4gの導電剤Super−pとを均一に混合し、3gの増ちょう剤CMCを添加してから15分間攪拌し、5wt%のリグニンスルホン酸ナトリウムとフルボ酸との混合物(活物質の総重量に対して5wt%である。)を含有する脱イオン水溶液を添加してから30分間攪拌した。腐植酸の質量に対するリグニンスルホン酸ナトリウムの質量の比は、80:20とした。最後に、3gのバインダーSBRを添加してから継続して30分間攪拌して、負極スラリーを得た。得られた負極スラリーを1時間置いてから銅箔上に塗布し、80℃で乾燥させて負極極片を得た後、その負極極片を用いて剥離強度テストを行った。テスト結果を図2に示したす。
【0067】
(2)電池の組み立て及びテスト:
得られた負極極片を真空オーブンに入れて乾燥した。乾燥温度は100℃、オーブン真空度は−90kPaとした。負極極片を5時間乾燥させた後、その負極極片を真空オーブンから取り出して冷却してから裁断、ローリング、ダイカット等の後続処理を行った。その後、負極極片と共に正極極片を用いて1Ahの実験電池を組み立て、その実験電池にLiPF6 濃度が1.08mol/kgである電解液を注入した。25℃及び0℃のそれぞれにおいて実験電池を用いて0.5Cの電流で容量テストを行った。実験結果を表1に示した。
【0068】
実施例12
(1)負極極片の製造:
90gのシリコンベース材料を含有する黒鉛(活物質)と4gの導電剤Super−pとを均一に混合し、3gの増ちょう剤CMCを添加してから15分間攪拌し、0.05wt%のリグニンスルホン酸ナトリウムとフルボ酸との混合物(活物質の総重量に対して0.05wt%である。)を含有する脱イオン水溶液を添加してから30分間攪拌した。腐植酸の質量に対するリグニンスルホン酸ナトリウムの質量の比は、30:70とした。最後に、3gのバインダーSBRを添加してから継続して30分間攪拌して、負極スラリーを得た。得られた負極スラリーを1時間置いてから銅箔上に塗布し、80℃で乾燥させて負極極片を得た後、その負極極片を用いて剥離強度テストを行った。テスト結果を図2に示した。
【0069】
(2)電池の組み立て及びテスト:
得られた負極極片を真空オーブンに入れて乾燥した。乾燥温度は100℃、オーブン真空度は−90kPaとした。負極極片を5時間乾燥させた後、その負極極片を真空オーブンから取り出して冷却してから裁断、ローリング、ダイカット等の後続処理を行った。その後、負極極片と共に正極極片を用いて1Ahの実験電池を組み立て、その実験電池にLiPF6 濃度が1.08mol/kgである電解液を注入した。25℃及び0℃のそれぞれにおいて実験電池を用いて0.5Cの電流で容量テストを行った。実験結果を表1に示した。
【0070】
比較例2
(1)負極極片の製造:
90gのシリコンベース材料を含有する黒鉛(活物質)と4gの導電剤Super−pとを均一に混合し、3gの増ちょう剤CMCを添加してから15分間攪拌した後、3gのバインダーSBRを添加してから継続して30分間攪拌して、負極スラリーを得た。得られた負極スラリーを1時間置いてから銅箔上に塗布し、80℃で乾燥させて負極極片を得た後、その負極極片を用いて剥離強度テストを行った。テスト結果を図2に示した。
【0071】
(2)電池の組み立て及びテスト:
得られた負極極片を真空オーブンに入れて乾燥した。乾燥温度は100℃、オーブン真空度は−90kPaとした。負極極片を5時間乾燥させた後、その負極極片を真空オーブンから取り出して冷却してから裁断、ローリング、ダイカット等の後続処理を行った。その後、負極極片と共に正極極片を用いて1Ahの実験電池を組み立て、その実験電池にLiPF6 濃度が1.08mol/kgである電解液を注入した。25℃及び0℃のそれぞれにおいて実験電池を用いて0.5Cの電流で容量テストを行った。実験結果を表1に示した。
【0072】
比較例3
(1)負極極片の製造:
90gのシリコンベース材料を含有する黒鉛(活物質)と4gの導電剤Super−pとを均一に混合し、3gの増ちょう剤CMCを添加してから15分間攪拌し、活性物の重量の0.5wt%を占める炭酸プロピレンを添加してから15分間攪拌した後、3gのバインダーSBRを添加してから継続して30分間攪拌して、負極スラリーを得た。得られた負極スラリーを1時間置いてから銅箔上に塗布し、80℃で乾燥させて負極極片を得た後、その負極極片を用いて剥離強度テストを行った。テスト結果を図2に示した。
【0073】
(2)電池の組み立て及びテスト:
得られた負極極片を真空オーブンに入れて乾燥した。乾燥温度は100℃、オーブン真空度は−90kPaとした。負極極片を5時間乾燥させた後、その負極極片を真空オーブンから取り出して冷却してから裁断、ローリング、ダイカット等の後続処理を行った。その後、負極極片と共に正極極片を用いて1Ahの実験電池を組み立て、その実験電池にLiPF6 濃度が1.08mol/kgである電解液を注入した。25℃及び0℃のそれぞれにおいて実験電池を用いて0.5Cの電流で容量テストを行った。実験結果を表1に示した。
【0074】
【表1】
【0075】
以上のテスト結果から、本発明の上記した実施例によると、以下の技術効果を実現できることが分かった。
【0076】
上記した実施例3〜12は、いずれも優れた常温及び低温での放電容量に基づく電気性能を示した。同時に、リチウムイオン電池の負極の剥離強度も、如何なる添加剤も添加していない比較例2及び既存の添加剤である炭酸プロピレンを添加した比較例3より高くなった。組成は同じであるものの含有量が異なる実施例(例えば、実施例3〜5)から、本発明のリチウムイオン二次電池の負極添加剤の含有量が0.5wt%であると、最適な電気性能を示し、同時に最適な剥離強度も実現したことが分かった。
【0077】
以上は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定するものではないため、当業者であれば、本発明の様々な修正及び変形が可能である。本発明の精神及び原則内における全ての修正、同等置換、改良などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれる。
図1
図2