(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記アンテナの指向性をターゲットに向けるパラメータとして受け付けたプラットフォームを基準とした前記ターゲットの成す角に従って、プラットフォームの位置姿勢情報を参照して得た姿勢角と、前記アンテナを前記プラットフォームに組み付けた取付角と、を参照して、前記制御角度と前記補正角を算出することを特徴とする請求項1に記載のポラリメトリックSARシステム。
前記ポラリメトリックSAR部は、前記アンテナを3軸機構を用いずに指向性を変更可能に構成されて成ることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のポラリメトリックSARシステム。
前記ポラリメトリックSAR部は、前記アンテナを2軸機構を用いて指向性を変更可能に構成されて成ることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のポラリメトリックSARシステム。
前記ポラリメトリックSAR部は、前記アンテナをフェーズドアレイアンテナと1軸機構を用いて指向性を変更可能に構成されて成ることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のポラリメトリックSARシステム。
前記ポラリメトリックSAR部は、前記アンテナをアジマス方向とエレベーション方向に走査可能なフェーズドアレイアンテナを用いて指向性を変更可能に構成されて成ることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のポラリメトリックSARシステム。
指向性を変更可能に構成されたアンテナを具備して、導出された制御角度に合わせて前記アンテナの指向性をターゲットに向けるポラリメトリックSARシステムに含まれる制御部を、
少なくとも、前記アンテナの指向性をターゲットに向けるパラメータとして受け付けたプラットフォームを基準とした前記ターゲットの成す角と、プラットフォームの位置姿勢情報を参照して得た姿勢角と、を参照して、前記アンテナの指向性をターゲットに向ける制御角度を算出すると共に、前記制御角度に合わせて観測された観測データの偏波回転処理用の補正パラメータとして、前記観測データの偏波の傾きを示す補正角を算出する
制御手段として動作させることを特徴とするプログラム。
指向性を変更可能に構成されたアンテナを具備して、導出された制御角度に合わせて前記アンテナの指向性をターゲットに向けるポラリメトリックSARシステムを用いて、
少なくとも、前記アンテナの指向性をターゲットに向けるパラメータとして受け付けたプラットフォームを基準とした前記ターゲットの成す角と、プラットフォームの位置姿勢情報を参照して得た姿勢角と、を参照して、前記アンテナの指向性をターゲットに向ける制御角度を算出すると共に、偏波の傾きの補正角を算出し、
前記制御角度に合わせて前記アンテナの指向性を調整し、
指向性を調整した前記アンテナでポラリメトリックSAR部によって前記ターゲットを観測し、
前記制御角度に合わせて観測された観測データをSAR観測データ処理部で前記補正角に従って偏波回転処理する
ことを特徴とするポラリメトリックSARデータ補正方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0026】
[第1の実施形態]
図1は、本実施形態のポラリメトリックSARシステム1を示すブロック図である。
【0027】
図1に示すように、ポラリメトリックSARシステム1は、ポラリメトリックSAR部10と、SAR観測データ処理部20と、アンテナ制御部30と、制御部40を含む。
【0028】
ポラリメトリックSAR部10は、指向性を変更可能に構成されたアンテナを具備する。また、ポラリメトリックSAR部10は、アンテナ制御部30から通知されるアンテナの制御角度によってアンテナの指向性を調整する。
【0029】
SAR観測データ処理部20は、ポラリメトリックSAR部10により観測された観測データについて、制御部40によって算出された補正角を用いて偏波回転処理する。なお、偏波回転処理する観測データは、制御部40によって算出された制御角度に合わせてポラリメトリック観測された観測データである。
【0030】
アンテナ制御部30は、制御角度に合わせてアンテナの指向性を調整する。
【0031】
制御部40は、アンテナの指向性をターゲットに向ける制御角度を算出すると共に、偏波の傾きの補正角を算出する。
【0032】
アンテナの指向性をターゲットに向けるパラメータとしては、オペレータ若しくは他の情報処理システムからターゲット方向を受け付けることとすればよい。制御部40は、このアンテナの指向性をターゲットに向けるパラメータと、他の既知のパラメータ(例えば、プラットフォームの姿勢角、アンテナの取付角)とを参照して、アンテナの制御角度(向き)を導出すればよい。アンテナの指向性をターゲットに向けるパラメータは、プラットフォームを基準としたターゲットのオフナディア角が例示できる。また、制御部40は、同パラメータを用いて導出されたアンテナの制御角度で観測された観測データから得られるSAR画像を偏波回転させる補正値である補正角を算出する。この補正角は、ターゲットに向けられたアンテナの指向性を補正(回転させる)する値であり、補正パラメータであり、指向性調整の1軸分を受け持つ。既知のパラメータとして挙げたプラットフォームの姿勢角は、例えば、GPS(Global Positioning System)レシーバと位置姿勢センサとを用いて、衛星測位信号を元にプラットフォームの位置姿勢情報を生成して用いることができる。このように、制御部40は、プラットフォームの位置姿勢情報を、衛星測位信号から取得するように構成してもよい。
【0033】
次に、ポラリメトリックSARシステム1で行われるポラリメトリックSARデータ補正方法を説明する。
【0034】
図2は、本実施形態のポラリメトリックSARシステム1のポラリメトリックSARデータ補正方法の流れを示すフローチャートである。
【0035】
ポラリメトリックSARシステム1(制御部40)は、観測を開始する際に、アンテナの指向性をターゲットに向ける角度(制御角度)を算出すると共に、偏波の傾きの補正角を算出する(S101)。この制御角度は、偏波の傾きを除く、プラットフォームからターゲットに向かうアンテナ指向性の2軸分の調整角を含む。
【0036】
次に、ポラリメトリックSARシステム1(アンテナ制御部30)は、制御角度に合わせてアンテナの指向性を調整する(S102)。
【0037】
次に、ポラリメトリックSARシステム1(ポラリメトリックSAR部10)は、制御角度でターゲットに向けたアンテナを用いてターゲット(ターゲットを含む観測エリア)を観測する(S103)。
【0038】
その後、ポラリメトリックSARシステム1(SAR観測データ処理部20)は、制御角度に合わせて観測された観測データを補正角に従って偏波回転処理する(S104)。補正された観測データは、適宜保存されオペレータに提供される。
【0039】
このように、ポラリメトリックSARシステム1は、指向性調整機能を有したポラリメトリックSAR観測に対して、電波をターゲットに指向する場合に偏波の傾きを正確に補正できる。
【0040】
[他の実施形態]
次に、ポラリメトリックSARシステム1におけるアンテナの指向性調整機能を区分けした幾つかの実施形態を説明して本発明を説明する。また、区分けした指向性調整機能に合わせた演算方法を説明する。以下の実施形態は説明済みの実施形態との差分について説明することとし、共通の部分に関しては説明を簡略化もしくは省略する。
【0041】
[第2の実施形態]
図3は、第2の実施形態のポラリメトリックSARシステム1を示した模式図である。
【0042】
本実施形態は、プラットフォームに固定されたフェーズドアレイアンテナによりアジマス方向およびエレベーション方向に電波を走査することによって、電波を観測ターゲットに指向する場合である。
【0043】
ポラリメトリックSARシステム1は、ポラリメトリックSAR部10、SAR観測データ処理部20、アンテナ制御部30、制御部40に加え、位置姿勢センサ50を具備する。位置姿勢センサ50は、GPSを用いてプラットフォームの位置姿勢情報を出力する。
【0044】
ポラリメトリックSAR部10は、アジマス方向およびエレベーション方向に電波を走査可能なプラットフォームに固定されたフェーズドアレイアンテナ11を備える。このフェーズドアレイアンテナ11は、アンテナ制御部30から制御角度を受け付け、その角度に合わせてアンテナの指向性を調整する。
【0045】
SAR観測データ処理部20は、偏波回転処理部21を備える。この偏波回転処理部21は、制御部40から指定された補正角に従って観測データを偏波回転処理して補正する。
【0046】
なお、
図3に示したポラリメトリックSAR部10では、無線観測系回路網として、垂直偏波用受信部、水平偏波用受信部、送信部、送信波切替スイッチ、垂直偏波用サーキュレータ、水平偏波用サーキュレータを図示しているが必要に応じて回路構成を変更してもよい。
【0047】
同様に、
図3に示したSAR観測データ処理部20では、垂直偏波分離処理部、水平偏波分離処理部、垂直‐垂直偏波画像再生処理部、垂直‐水平偏波画像再生処理部、水平‐垂直偏波画像再生処理部、水平‐水平偏波画像再生処理部、偏波回転処理部、記憶部を図示しているが必要に応じて回路構成を変更してもよい。
【0048】
例えば、図示したSAR観測データ処理部20では、ポラリメトリックSAR観測によって観測された観測データを取得し、各画像再生処理部にて画像に再生処理した全偏波観測データ(垂直‐垂直データ、垂直‐水平データ、水平‐垂直データ、水平‐水平データ)に対し、通知された補正角を用いてそれぞれ偏波回転処理により正確な傾きの全偏波観測データを算出しそれぞれ記憶部に記録する。この構成では、補正した観測データにあたる偏波回転処理した観測データをそれぞれ垂直‐垂直データ、垂直‐水平データ、水平‐垂直データ、水平‐水平データに分けて記憶部に保存するように描いているが、偏波回転処理する前の観測データを合わせて保存する構成としたり、補正した観測データを1枚の画像に合成して保存する構成としたり、各分離処理部が出力する画像化前の観測データに偏波回転処理を加える構成としてもよい。
【0049】
次に、第3の実施形態のポラリメトリックSARシステム1(制御部40)におけるアンテナの指向性をターゲットに向ける制御角度と偏波の傾きの補正角を算出する演算方法を説明する。
【0050】
図4は、本実施形態で用いる角度に関連するパラメータである。図示したように、入力項目は、α、β、γ、θ、β
0、θ
0である。また出力項目は、φ
Az、θ
El、ΔH、ΔVである。また変数として、R
x(xi)、 R
y(xi)、 R
z(xi)、R(α,β,γ)を以下のように定義する。
【数1】
【数2】
【0051】
このR(α,β,γ)の定義は、位置姿勢センサ50が一般的なTate-Bryantシーケンスに従ってα、β、γを算出(γ、β、αの順に算出)していることを前提としている。仮に、異なる順に算出する位置姿勢センサを使用する場合は、算出順と逆にR(α)、R(β)、R(γ)を並べればよい。
【0052】
上記のように各パラメータを定めた場合、入力されるα、β、γ、θ、β
0、θ
0に対して、フェーズドアレイアンテナ11のアジマス指向角度φ
Az、エレベーション指向角度θ
El、および補正角ΔH、ΔVを次のように算出することができる。
【数3】
【0053】
このように、ポラリメトリックSARシステム1は、指向性調整機能としてアジマス方向およびエレベーション方向の2軸に電波を走査可能なフェーズドアレイアンテナ11を用いたポラリメトリックSAR観測に対して、電波をターゲットに指向した後に偏波の傾きを正確に補正可能にできるφ
Az、θ
El、ΔH、ΔVを演算で求めることができる。
【0054】
今日のポラリメトリックSARシステムは、衛星や航空機に搭載されることが多い。例えば航空機などの成層圏内を飛行するプラットフォームであって、飛行時のピッチ角が0度でないことが予めわかっているプラットフォームの場合に、フェーズドアレイアンテナのアジマス方向のピッチ角を飛行時に0度にすべく、β
0≠0度で取付けることがある。このような場合でも、β
0を設定することで、φ
Az、θ
El、ΔH、ΔVを正確に算出できる。
【0055】
[第3の実施形態]
図5は、第3の実施形態のポラリメトリックSARシステム1を示した模式図である。上述した説明と共通の部分に関しては説明を簡略化もしくは省略する。
【0056】
本実施形態は、プラットフォームに固定された2軸駆動機構を具備したアンテナによって、ヨー方向およびロール方向にアンテナを機械的に稼働して電波を観測ターゲットに指向する場合である。
【0057】
ポラリメトリックSARシステム1は、ポラリメトリックSAR部10、SAR観測データ処理部20、アンテナ制御部30、制御部40に加え、位置姿勢センサ50を具備する。位置姿勢センサ50は、GPSを用いてプラットフォームの位置姿勢情報を出力する。
【0058】
ポラリメトリックSAR部10は、ヨー方向およびロール方向に駆動する2軸駆動機構により機械的にアンテナを稼働可能なプラットフォームに固定されたアンテナ12を備える。このアンテナ12の2軸駆動機構は、アンテナ制御部30から制御角度を受け付け、その角度に合わせてアンテナ角度を調整する。
【0059】
SAR観測データ処理部20は、偏波回転処理部21を備える。この偏波回転処理部21は、制御部40から指定された補正角に従って観測データを偏波回転処理して補正する。
【0060】
次に、第3の実施形態のポラリメトリックSARシステム1(制御部40)におけるアンテナの指向性をターゲットに向ける制御角度と偏波の傾きの補正角を算出する演算方法である。
【0061】
図6は、本実施形態で用いる角度に関連するパラメータである。図示したように、入力項目は、α、β、γ、θ、β
0である。また出力項目は、φ
yaw、θ
roll、ΔH、ΔVである。また変数として、R
x(xi)、 R
y(xi)、 R
z(xi)、R(α,β,γ)を以下のように定義する。なお、変数の定義は第2の実施形態と同一である。以降の実施形態も同一である変数を用いるため、以降の実施形態では説明を省略する。
【数4】
【数5】
【0062】
上記のように各パラメータを定めた場合、入力されるα、β、γ、θ、β
0に対して、アンテナ12の駆動機構のヨー角度φ
yaw、ロール角度θ
roll、および補正角ΔH、ΔVを次のように算出することができる。
【数6】
【0063】
このように、ポラリメトリックSARシステム1は、指向性調整機能としてヨー方向およびロール方向の2軸に回転可能な2軸機構を具備したアンテナ12を用いたポラリメトリックSAR観測に対して、電波をターゲットに指向した後に偏波の傾きを正確に補正可能にできるφ
yaw、θ
roll、ΔH、ΔVを演算で求めることができる。
【0064】
また、先の実施形態と同様に、航空機などの成層圏内を飛行するプラットフォームであって、飛行時のピッチ角が0度でないことが予めわかっているプラットフォームの場合に、アンテナのアジマス方向のピッチ角を飛行時に0度にすべく、β
0≠0度で取付けることがある。このような場合でも、β
0を正しく設定することで、φ
yaw、θ
roll、ΔH、ΔVを正確に算出できる。
【0065】
[第4の実施形態]
図7は、第4の実施形態のポラリメトリックSARシステム1を示した模式図である。上述した説明と共通の部分に関しては説明を簡略化もしくは省略する。
【0066】
本実施形態は、プラットフォームに固定された1軸駆動機構を具備したフェーズドアレイアンテナによって、ロール方向にフェーズドアレイアンテナを機械的に稼働しつつフェーズドアレイアンテナによりアジマス方向に電波を走査することによって、電波を観測ターゲットに指向する場合である。
【0067】
ポラリメトリックSARシステム1は、ポラリメトリックSAR部10、SAR観測データ処理部20、アンテナ制御部30、制御部40に加え、位置姿勢センサ50を具備する。位置姿勢センサ50は、GPSを用いてプラットフォームの位置姿勢情報を出力する。
【0068】
ポラリメトリックSAR部10は、ロール方向に駆動する1軸駆動機構により機械的にアンテナを稼働可能なプラットフォームに固定されたフェーズドアレイアンテナ13を備える。このフェーズドアレイアンテナ13の1軸駆動機構は、アンテナ制御部30から制御角度を受け付け、その角度に合わせてアンテナ角度を調整する。また、このフェーズドアレイアンテナ13は、アンテナ制御部30から制御角度を受け付け、その角度に合わせてアンテナの指向性を調整する。
【0069】
SAR観測データ処理部20は、偏波回転処理部21を備える。この偏波回転処理部21は、制御部40から指定された補正角に従って観測データを偏波回転処理して補正する。
【0070】
次に、第4の実施形態のポラリメトリックSARシステム1(制御部40)におけるアンテナの指向性をターゲットに向ける制御角度と偏波の傾きの補正角を算出する演算方法である。
【0071】
図8は、本実施形態で用いる角度に関連するパラメータである。図示したように、入力項目は、α、β、γ、θ、β
0、θ
0である。また出力項目は、φ
Az、θ
roll、ΔH、ΔVである。なお、変数の定義は上述の実施形態と同一である。
【0072】
上記のように各パラメータを定めた場合、入力されるα、β、γ、θ、β
0、θ
0に対して、フェーズドアレイアンテナ13のアジマス指向角度φ
Az、駆動機構のロール角度θ
rollおよび補正角ΔH、ΔVを次のように算出することができる。
【数7】
【0073】
このように、ポラリメトリックSARシステム1は、指向性調整機能としてロール方向
に回転可能な1軸機構を具備してアジマス方向に電波を走査可能なフェーズドアレイアンテナ13を用いたポラリメトリックSAR観測に対して、電波をターゲットに指向した後に偏波の傾きを正確に補正可能にできるφ
Az、θ
roll、ΔH、ΔVを演算で求めることができる。
【0074】
また、先の実施形態と同様に、航空機などの成層圏内を飛行するプラットフォームであって、飛行時のピッチ角が0度でないことが予めわかっているプラットフォームの場合に、アンテナのアジマス方向のピッチ角を飛行時に0度にすべく、β
0≠0度で取付けることがある。このような場合でも、β
0を正しく設定することで、φ
Az、θ
roll、ΔH、ΔVを正確に算出できる。
【0075】
[第5の実施形態]
図9は、第5の実施形態のポラリメトリックSARシステム1を示した模式図である。上述した説明と共通の部分に関しては説明を簡略化もしくは省略する。
【0076】
本実施形態は、プラットフォームに固定された1軸駆動機構を具備したフェーズドアレイアンテナによって、ヨー方向にフェーズドアレイアンテナを機械的に稼働しつつフェーズドアレイアンテナによりエレベーション方向に電波を走査することによって、電波を観測ターゲットに指向する場合である。
【0077】
ポラリメトリックSARシステム1は、ポラリメトリックSAR部10、SAR観測データ処理部20、アンテナ制御部30、制御部40に加え、位置姿勢センサ50を具備する。位置姿勢センサ50は、GPSを用いてプラットフォームの位置姿勢情報を出力する。
【0078】
ポラリメトリックSAR部10は、ロール方向に駆動する1軸駆動機構により機械的にアンテナを稼働可能なプラットフォームに固定されたフェーズドアレイアンテナ14を備える。このフェーズドアレイアンテナ14の1軸駆動機構は、アンテナ制御部30から制御角度を受け付け、その角度に合わせてアンテナ角度を調整する。また、このフェーズドアレイアンテナ14は、アンテナ制御部30から制御角度を受け付け、その角度に合わせてアンテナの指向性を調整する。
【0079】
SAR観測データ処理部20は、偏波回転処理部21を備える。この偏波回転処理部21は、制御部40から指定された補正角に従って観測データを偏波回転処理して補正する。
【0080】
次に、第5の実施形態のポラリメトリックSARシステム1(制御部40)におけるアンテナの指向性をターゲットに向ける制御角度と偏波の傾きの補正角を算出する演算方法である。
【0081】
図10は、本実施形態で用いる角度に関連するパラメータである。図示したように、入力項目は、α、β、γ、θ、β
0、θ
0である。また出力項目は、φ
Az、θ
roll、ΔH、ΔVである。なお、変数の定義は上述の実施形態と同一である。
【0082】
上記のように各パラメータを定めた場合、入力されるα、β、γ、θ、β
0、θ
0に対して、フェーズドアレイアンテナ14のエレベーション指向角度φ
El、駆動機構のヨー角度θ
ryawおよび補正角ΔH、ΔVを次のように算出することができる。
【数8】
【0083】
このように、ポラリメトリックSARシステム1は、指向性調整機能としてヨー方向に回転可能な1軸機構を具備してエレベーション方向に電波を走査可能なフェーズドアレイアンテナ14を用いたポラリメトリックSAR観測に対して、電波をターゲットに指向した後に偏波の傾きを正確に補正可能にできるφ
yow、θ
El、ΔH、ΔVを演算で求めることができる。
【0084】
また、先の実施形態と同様に、航空機などの成層圏内を飛行するプラットフォームであって、飛行時のピッチ角が0度でないことが予めわかっているプラットフォームの場合に、アンテナのアジマス方向のピッチ角を飛行時に0度にすべく、β
0≠0度で取付けることがある。このような場合でも、β
0を正しく設定することで、φ
yow、θ
El、ΔH、ΔVを正確に算出できる。
【0085】
以上説明したように、本発明によれば、指向性調整機能を有したポラリメトリックSAR観測に対して、電波をターゲットに指向する場合に偏波の傾きを正確に補正するポラリメトリックSARシステム、およびポラリメトリックSARデータ補正方法を提供できる。
【0086】
なお、実施形態を例示して本発明を説明した。しかし、本発明の具体的な構成は前述の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があってもこの発明に含まれる。例えば、上述した実施形態の特徴の分離併合、スイッチの位置の変更、フローチャートの手順の入れ替えなどの変更は本発明の趣旨および説明される機能を満たせば自由であり、上記説明が本発明を限定するものではない。また、上記説明では指向性可変アンテナ部について1軸若しくは2軸に走査可能なフェーズドアレイアンテナと1軸若しくは2軸に可動可能な駆動機構を用いて説明したが3軸の駆動機構を具備した指向性可変アンテナ部を有するポラリメトリックSARシステムで3軸機構の2軸分の駆動機構を用いた観測に本発明を使用するようにしてもよい。
【0087】
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載されうる。尚、以下の付記は本発明をなんら限定するものではない。
[付記1]
指向性を変更可能に構成されたアンテナを具備するポラリメトリックSAR部と、
少なくとも、前記アンテナの指向性をターゲットに向けるパラメータとして受け付けたプラットフォームを基準とした前記ターゲットの成す角と、プラットフォームの位置姿勢情報を参照して得た姿勢角と、を参照して、前記アンテナの指向性をターゲットに向ける制御角度を算出すると共に、偏波の傾きの補正角を算出する制御部と、
前記制御角度に合わせて前記アンテナの指向性を調整するアンテナ制御部と、
前記制御角度に合わせて前記ポラリメトリックSAR部により観測した観測データについて、算出した補正角を用いて偏波回転処理するSAR観測データ処理部と、
を備えることを特徴とするポラリメトリックSARシステム。
【0088】
[付記2]
前記制御部は、前記アンテナの指向性をターゲットに向けるパラメータとして受け付けたプラットフォームを基準とした前記ターゲットの成す角に従って、プラットフォームの位置姿勢情報を参照して得た姿勢角と、前記アンテナを前記プラットフォームに組み付けた取付角と、を参照して、前記制御角度と前記補正角を算出することを特徴とする付記1に記載のポラリメトリックSARシステム。
【0089】
[付記3]
前記制御部は、プラットフォームの位置姿勢情報を、衛星測位信号より取得することを特徴とする付記1又は2に記載のポラリメトリックSARシステム。
【0090】
[付記4]
前記ポラリメトリックSAR部は、前記アンテナを3軸機構を用いずに指向性を変更可能に構成されて成ることを特徴とする付記1から3の何れか一項に記載のポラリメトリックSARシステム。
【0091】
[付記5]
前記ポラリメトリックSAR部は、前記アンテナを2軸機構を用いて指向性を変更可能に構成されて成ることを特徴とする付記1から3の何れか一項に記載のポラリメトリックSARシステム。
【0092】
[付記6]
前記ポラリメトリックSAR部は、前記アンテナをフェーズドアレイアンテナと1軸機構を用いて指向性を変更可能に構成されて成ることを特徴とする付記1から3の何れか一項に記載のポラリメトリックSARシステム。
【0093】
[付記7]
前記ポラリメトリックSAR部は、前記アンテナをアジマス方向とエレベーション方向に走査可能なフェーズドアレイアンテナを用いて指向性を変更可能に構成されて成ることを特徴とする付記1から3の何れか一項に記載のポラリメトリックSARシステム。
【0094】
[付記8]
前記制御部は、
前記アンテナの指向性をターゲットに向けるパラメータとして受け付けたプラットフォームを基準とした前記ターゲットのオフナディア角に従って、衛星測位信号より取得した前記プラットフォームの位置姿勢情報である姿勢角と、前記アンテナを前記プラットフォームに組み付けた取付角と、を参照して、前記制御角度を算出すると共に、
前記制御角度に合わせて前記アンテナの指向性を3軸機構を用いずに前記アンテナ制御部により調整されて前記ポラリメトリックSAR部により観測される観測データの偏波回転処理用の補正パラメータとして、前記オフナディア角と、前記姿勢角と、前記取付角と、に基づいて、前記観測データの偏波の傾きを示す前記補正角を算出する
ことを特徴とする付記1から7の何れか一項に記載のポラリメトリックSARシステム。
【0095】
[付記9]
前記制御部は、
前記アンテナの指向性をターゲットに向けるパラメータとして受け付けたプラットフォームを基準とした前記ターゲットのオフナディア角に従って、衛星測位信号より取得した前記プラットフォームの位置姿勢情報である姿勢角と、前記アンテナを前記プラットフォームに組み付けた取付角と、を参照して、前記制御角度を算出すると共に、
前記制御角度に合わせて前記アンテナの指向性を3軸機構の2軸分を用いて前記アンテナ制御部により調整されて前記ポラリメトリックSAR部により観測される観測データの偏波回転処理用の補正パラメータとして、前記オフナディア角と、前記姿勢角と、前記取付角と、に基づいて、前記観測データの偏波の傾きを示す前記補正角を算出する
ことを特徴とする付記1から3の何れか一項に記載のポラリメトリックSARシステム。
【0096】
[付記10]
指向性を変更可能に構成されたアンテナを具備して、導出された制御角度に合わせて前記アンテナの指向性をターゲットに向けるポラリメトリックSARシステムに含まれる制御部を、
少なくとも、前記アンテナの指向性をターゲットに向けるパラメータとして受け付けたプラットフォームを基準とした前記ターゲットの成す角と、プラットフォームの位置姿勢情報を参照して得た姿勢角と、を参照して、前記アンテナの指向性をターゲットに向ける制御角度を算出すると共に、前記制御角度に合わせて観測された観測データの偏波回転処理用の補正パラメータとして、前記観測データの偏波の傾きを示す補正角を算出する
制御手段として動作させることを特徴とするプログラム。
【0097】
[付記11]
前記制御部を、前記アンテナの指向性をターゲットに向けるパラメータとして受け付けたプラットフォームを基準とした前記ターゲットの成す角に従って、プラットフォームの位置姿勢情報を参照して得た姿勢角と、前記アンテナを前記プラットフォームに組み付けた取付角と、を参照して、前記制御角度と前記補正角を算出する制御手段として動作させることを特徴とする付記10に記載のプログラム。
【0098】
[付記12]
前記制御部を、プラットフォームの位置姿勢情報を、衛星測位信号より取得する制御手段として動作させることを特徴とする付記10又は11に記載のプログラム。
【0099】
[付記13]
前記制御部を、
前記アンテナの指向性をターゲットに向けるパラメータとして受け付けたプラットフォームを基準とした前記ターゲットのオフナディア角に従って、衛星測位信号より取得した前記プラットフォームの位置姿勢情報である姿勢角と、前記アンテナを前記プラットフォームに組み付けた取付角と、を参照して、前記制御角度を算出すると共に、
前記制御角度に合わせて前記アンテナの指向性を3軸機構を用いずに前記アンテナ制御部により調整されて前記ポラリメトリックSAR部により観測される観測データの偏波回転処理用の補正パラメータとして、前記オフナディア角と、前記姿勢角と、前記取付角と、に基づいて、前記観測データの偏波の傾きを示す前記補正角を算出する
制御手段として動作させることを特徴とする付記10から12の何れか一項に記載のプログラム。
【0100】
[付記14]
指向性を変更可能に構成されたアンテナを具備して、導出された制御角度に合わせて前記アンテナの指向性をターゲットに向けるポラリメトリックSARシステムを用いて、
少なくとも、前記アンテナの指向性をターゲットに向けるパラメータとして受け付けたプラットフォームを基準とした前記ターゲットの成す角と、プラットフォームの位置姿勢情報を参照して得た姿勢角と、を参照して、前記アンテナの指向性をターゲットに向ける制御角度を算出すると共に、偏波の傾きの補正角を算出し、
前記制御角度に合わせて前記アンテナの指向性を調整し、
指向性を調整した前記アンテナでポラリメトリックSAR部によって前記ターゲットを観測し、
前記制御角度に合わせて観測された観測データをSAR観測データ処理部で前記補正角に従って偏波回転処理する
ことを特徴とするポラリメトリックSARデータ補正方法。
【0101】
[付記15]
指向性を変更可能に構成されたアンテナを具備して、導出された制御角度に合わせて前記アンテナの指向性をターゲットに向けるポラリメトリックSARシステムを用いて、
少なくとも、前記アンテナの指向性をターゲットに向けるパラメータとして受け付けたプラットフォームを基準とした前記ターゲットの成す角と、プラットフォームの位置姿勢情報を参照して得た姿勢角と、を参照して、前記アンテナの指向性をターゲットに向ける制御角度を算出すると共に、偏波の傾きの補正角を算出し、
前記制御角度に合わせて前記アンテナの指向性を調整し、
指向性を調整した前記アンテナでポラリメトリックSAR部によって前記ターゲットを観測し、
前記制御角度に合わせて観測された観測データをSAR観測データ処理部で前記補正角に従って偏波回転処理する
ことを特徴とするポラリメトリックSARデータ補正方法。
【0102】
[付記16]
前記アンテナの指向性をターゲットに向けるパラメータとして受け付けたプラットフォームを基準とした前記ターゲットの成す角に従って、プラットフォームの位置姿勢情報を参照して得た姿勢角と、前記アンテナを前記プラットフォームに組み付けた取付角と、を参照して、前記制御角度と前記補正角を算出することを特徴とする付記15に記載のポラリメトリックSARデータ補正方法。
【0103】
[付記17]
プラットフォームの位置姿勢情報を、衛星測位信号より取得することを特徴とする付記15又は16に記載のポラリメトリックSARデータ補正方法。
【0104】
[付記18]
前記アンテナの指向性をターゲットに向けるパラメータとして受け付けたプラットフォームを基準とした前記ターゲットのオフナディア角に従って、衛星測位信号より取得した前記プラットフォームの位置姿勢情報である姿勢角と、前記アンテナを前記プラットフォームに組み付けた取付角と、を参照して、前記制御角度を算出すると共に、
前記制御角度に合わせて前記アンテナの指向性を3軸機構を用いずに調整して前記ポラリメトリックSAR部により観測される観測データの偏波回転処理用の補正パラメータとして、前記オフナディア角と、前記姿勢角と、前記取付角と、に基づいて、前記観測データの偏波の傾きを示す前記補正角を算出する
ことを特徴とする付記15から17の何れか一項に記載のポラリメトリックSARデータ補正方法。