(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の中和処理器においても、さらなる小型化が求められる。ここで、中和処理器は、通常、処理槽からの中和剤の流出を抑制したり、必要な中和速度を得るために所定の表面積を確保したりする観点から、処理槽内に、10〜25mm程度の比較的粒径の大きな中和剤が収容されることが要求される。このため、一般的な中和処理器において、中和剤の嵩密度が一義的に定まるので、中和処理器の小型化を図ることが困難であると考えられていた。
【0007】
これに対し、本発明者らは、大きな級に属する粒状中和剤と、小さな級に属する粒状中和剤とを組み合わせ、各粒状中和剤をバインダで結合させて得られる固定化中和剤は、中和剤全体の嵩密度を大きくでき、かつ粒状中和剤全体の空隙率を小さくできるため、粒状中和剤の中和効率が向上し、中和処理器の小型化を実現できること、さらには小さな級に属する粒状中和剤の外部への流出を抑制でき、目詰まりの発生を抑制できることを見出した。
【0008】
そして、本発明者らは、固定化中和剤(中和剤ブロック)を収容する容器として、中和剤を収容する作業の簡易化及び中和処理器の構造単純化の観点から、ベルトラップ方式を用いた中和処理器(容器)に着目した。
【0009】
しかし、ベルトラップ方式を用いた中和処理器は、通常、粒状中和剤と未処理液(例えば、酸性液)が接触する処理槽が一つしかなく、この中和処理器に固定化中和剤を収容すると未処理液が局所的に流れた場合、一部の粒状中和剤としか接触せず、中和反応に寄与しない粒状中和剤が生じるという問題が判明した。従来の粒状中和剤からなる非固定化中和剤を用いた場合には、未処理液が局所的に流れても、未処理液と接触した粒状中和剤が消費に伴い、流出し、周囲の粒状中和剤が消費された粒状中和剤を補填するように崩れるため、未処理液が粒状中和剤全体と接触できる傾向にある。これに対し、固定化中和剤は、粒状中和剤がバインダを介して結合しているため、消費された粒状中和剤が流出しにくく、周囲の粒状中和剤が崩れにくい。このため、このような問題は、固定化中和剤特有の課題といえる。
【0010】
そこで、本発明は、粒状中和剤に起因する中和処理器の目詰まりを抑制できる固定化中和剤を用いながら、未処理液を固定化中和剤と全体的に接触させることにより、粒状中和剤の中和効率のさらなる向上を達成できる中和処理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、処理槽内を、2つの隔壁により仕切られた中和室において、この中和室に、粒状中和剤がバインダを介して一体化してなる固定化中和剤を収容し、一方の隔壁の下端を、他方の隔壁の上端よりも低い位置に形成すると、未処理液が処理槽の下面側から上面側に向かって流通し、未処理液が固定化中和剤と全体的に接触して反応しやすくなるため、粒状中和剤の中和効率がさらに向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の中和処理器は、未処理液の導入口と、前記未処理液を中和処理して処理済み液とする処理槽と、前記処理済み液の排出口と、を有し、前記処理槽が、該処理槽の上面から該処理槽内を横断するように鉛直方向下向きに延出した少なくとも1つの第1の隔壁と、前記処理槽の下面から該処理槽内を横断するように鉛直方向上向きに延出した少なくとも1つの第2の隔壁と、により仕切られ、前記第1の隔壁の下端が、前記第2の隔壁の上端よりも低い位置に形成されることにより、前記処理槽の下面側から上面側に向けて前記未処理液が流通可能に形成された中和室と、該中和室に少なくとも収容され、粒状中和剤がバインダを介して一体化されてなる固定化中和剤と、
固定化されていない粒状中和剤からなる非固定化中和剤と、を含
み、中和室において、非固定化中和剤が、固定化中和剤上に収容されており、固定化中和剤と非固定化中和剤とが、中和室の下面と、第2の隔壁の上端の高さ位置と同じ、又は低い水平面と、に囲まれる空間に収容されている。
【0013】
前記処理槽は、該処理槽の上面から該処理槽内を横断するように鉛直方向下向きに延出した第1の隔壁と、前記処理槽の壁面と、により仕切られることにより、前記処理槽の上面側から下面側に向けて前記未処理液が流通可能に形成された導入室をさらに含むことが好ましく、前記導入室を通過した前記未処理液が前記中和室を通過するように、前記導入室と前記中和室とは、前記第1の隔壁を共有していることが好ましい。これにより、導入室に、導入口と中和室とを連通する流路を形成できるため、未処理液を外部から中和室に導入する手段(例えば、微細チューブなど)を必要とせず、中和処理器の構成を単純化できる。
【0014】
前記処理槽は、前記処理槽の下面から該処理槽内を横断するように鉛直方向上向きに延出した第2の隔壁と、前記処理槽の壁面と、により仕切られることにより、前記処理槽の上面側から下面側に向けて前記未処理液が流通可能に形成された排出前室をさらに含むことが好ましく、前記中和室を通過した前記未処理液が前記排出前室を通過するように、前記中和室と前記排出前室とが、前記第2の隔壁を共有していることが好ましい。
【0015】
前記処理槽の容積全体に対する前記中和室の容積の割合が、50体積%以上(好ましくは70体積%以上80体積%以下)であることが好ましい。前記中和室の容積の割合が50体積%以上であることにより、中和室の固定化中和剤の収容量を十分大きく確保できるため、固定化中和剤の中和効率がさらに向上し、中和処理器のさらなる小型化が可能となる。
【0016】
前記固定化中和剤が、前記中和室において、前記中和室の下面と、前記第2の隔壁の上端の高さ位置と同じ、又は低い水平面と、に囲まれる空間に収容されていることが好ましい。これにより、未処理液が固定化中和剤全体に接触してから、第2の隔壁の上端と処理槽の上面との間を通過できるため、中和効率をさらに一層向上できる。
【0017】
前記処理槽は、さらに粒状中和剤からなる非固定化中和剤を含み、前記粒状中和剤は、前記固定化中和剤上に収容されていることが好ましい。未処理液との中和反応により、固定化中和剤中の粒状中和剤が消費され、固定化中和剤に隙間が形成される。固定化中和剤上に非固定化中和剤を収容すると、形成された隙間を、非固定化中和剤の粒状中和剤が埋めるようにして崩落するため、さらに未処理液と非固定化中和剤とが反応し、非固定化中和剤を効率よく消費できる。これにより、中和処理器に充填(収容)する中和剤(粒状中和剤)の必要量を小さくできるため、中和処理器のさらなる小型化が可能となる。
【0018】
前記バインダは、抗菌剤及び/又は防カビ剤を含有することが好ましい。バインダが、抗菌剤・防カビ剤を含有することにより、中和処理器内におけるバイオフィルム及び/又はゲル状粘性物の生成を抑制でき、耐目詰まり性がより一層向上する。
【0019】
前記バインダ全体に対する、抗菌剤及び/又は防カビ剤の割合は、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。抗菌剤・防カビ剤の割合が上記範囲内にあることにより、中和処理器の使用期間中、抗菌・防カビ効果を有効に持続できる。
【0020】
前記粒状中和剤は、異なる級に分類された2種類以上の粒状中和剤であることが好ましい。粒子径の異なる粒状中和剤をバインダにより結合させると、粒子径の差異による分離が抑制され、粒状中和剤を均一に分散できる。また、異なる級に分類された2種類以上の粒状中和剤を用いると、大きな級に属する粒状中和剤間に、小さな級に属する粒状中和剤が配置されやすくなる。そのため、固定化中和剤における粒状中和剤全体の嵩密度及び総表面積を大きくできる。これにより、未処理液の中和処理速度及び粒状中和剤全体の中和効率が向上し、さらなる小型化を実現できる。なお、本明細書にいう「級」とは、例えば、篩により分級されたときのオンメッシュのクラス(分級クラス)をいう。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、粒状中和剤の耐目詰まり性及び中和効率を向上可能な中和処理器を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について図面を参照して説明する。本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されるものではない。すなわち、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0024】
[中和処理器]
図1は、本施形態の中和処理器の一例を示す断面正面斜視図である。
図1に示す中和処理器1は、未処理液(例えば、酸性液)を中和処理して処理済み液とする処理槽2と、この処理槽2の上面から鉛直方向の上下方向に延出する管状の未処理液の導入口3と、処理槽2の下面から鉛直方向の下向きに延出する管状の処理済み液の排出口4と、処理槽2の上面側に取り付けられ、処理槽2内に導入された未処理液の水位を検知する検知センサ5と、処理槽2の下面から鉛直方向の下向きに延出し、処理槽2内の未処理液の水位が異常である場合、未処理液を外部に排水(排出)する管状の緊急排出口6とを含み、処理槽2内には、粒状中和剤がバインダを介して一体化されてなる固定化中和剤7と、粒状中和剤からなる非固定化中和剤8とが収容されている。
【0025】
[処理槽]
図1に示す処理槽2は、処理槽2の上面から処理槽2を横断するように鉛直方向下向きに延出した第1の隔壁11と、処理槽2の下面から処理槽2内を横断するように鉛直方向上向きに延出した第2の隔壁12とを備えており、第1の隔壁11の下端は、処理槽2の下面と所定の距離をおいて位置していることにより、第1の隔壁11の下端と処理槽2の下面との間が開口し、第2の隔壁12の上端は、処理槽2の上面と所定の距離をおいて位置していることにより、第2の隔壁12の上端と処理槽2の上面との間が開口している。
【0026】
処理槽2は、処理槽2の壁面(導入口3側の側壁面)と、第1の隔壁11とにより仕切られた導入室15;第1の隔壁11と第2の隔壁12とにより仕切られた中和室16;第2の隔壁12と処理槽2の壁面(排出口4側の側壁面)とにより仕切られた排出前室17の3つの区画室(単位槽)で構成され、導入室15と中和室16とは、第1の隔壁11を共有し、中和室16と排出前室17とは、第2の隔壁12を共有している。
【0027】
処理槽2では、導入口3と中和室16とを連通するように導入室15が形成されており、排出口4と中和室16とを連通するように排出前室17が形成されている。導入室15と中和室16とは、処理槽2の下面と第1の隔壁11の下端との間で連通し、中和室16と排出前室17とは、処理槽2の上面と第2の隔壁12の上端との間で連通する。
【0028】
(固定化中和剤)
図1に示す固定化中和剤7は、導入室15及び中和室16に収容されており、中和室16では、中和室16の下面と、第2の隔壁12の上端の高さ位置よりも低い水平面と、に囲まれる空間に収容されている。
【0029】
図2は、
図1中の点線領域Pにおける固定化中和剤7の模式断面図を示す。
図2に示すように、固定化中和剤7は、大きい級に属する粒状中和剤21A及び小さい級に属する粒状中和剤21Bの2種類で構成された粒状中和剤21と、抗菌剤及び/又は防カビ剤を含有する樹脂(バインダ)22とを有し、樹脂(バインダ)22を介して粒状中和剤21が点接触して結合したブロック状の形態である。
【0030】
固定化中和剤7は、各粒状中和剤21A,21Bを樹脂(バインダ)22で結合していることにより、中和処理器1内で粒状中和剤21(特に小さい級に属する粒状中和剤21B)が流出することによる目詰まりの発生を抑制できるため、製品の信頼性が向上する。
【0031】
また、大きな級に属する粒状中和剤21Aと小さな級に属する粒状中和剤21Bとを樹脂(バインダ)22で結合すると、粒状中和剤21全体の嵩密度及び総表面積を大きくできる。さらに、粒状中和剤21と樹脂(バインダ)22とが点接触して結合しているため、樹脂(バインダ)22による粒状中和剤21表面の被覆率を低減できるとともに、粒状中和剤21間に未処理液を流れやすくするための空隙を十分に確保できる。このため、固定化中和剤7内を移動する未処理液が粒状中和剤21と接触する頻度が向上するため、短時間で効率よく中和処理できる。また、粒状中和剤21間に十分な空隙を確保すると、固定化中和剤7の耐靱性を向上できる。
【0032】
さらに、バインダ22が、抗菌剤及び/又は防カビ剤を含有することにより、中和処理器1内におけるバイオフィルム及び/又はゲル状粘性物の生成を抑制でき、耐目詰まり性がより一層向上する。
【0033】
(非固定化中和剤)
非固定化中和剤8は、中和室16に収容されており、中和室16内では、固定化中和剤7上に収容されている。
【0034】
[検知センサ]
検知センサ5は、処理槽2上面の導入口3側に取り付けられ、一端(下端)が処理槽2内にある電極棒31と、電極棒31の他端(上端)に接続され、電極棒31の導通状態を検知する検知器32とを備えている。未処理液が処理槽2内で所定の水位を超える高さに達する(オーバーフローする)と、電極棒31の一端が未処理液中に浸漬されて導通するため、電極棒31の導通状態を検知器32で検出する。これにより、未処理液のオーバーフローを検知できる。
【0035】
[緊急排出管]
緊急排出管6は、導入室15の下面にバルブ機構(図示せず)を介して接続されている。検知センサ5から、例えば、中和処理器1内の目詰まりや雨水の入水などに起因して、処理槽2内の未処理液の水位が異常であることを検知センサ5が検知すると、検知センサ5から異常シグナルがバルブ機構(図示せず)に出力され、バルブ機構により、緊急排出口6への流路が開き、処理槽2内の未処理液を排水できる。
【0036】
次に、
図1に示す中和処理器1に未処理液を導入し、中和処理された処理済み液を外部に排出するまでの作用機構について説明する。
【0037】
未処理液は、導入口3により導入室15に導入される。導入室15は、処理槽2壁面と第1の隔壁11とにより仕切られていることにより、未処理液は、導入室15で処理槽2上面側から下面側に向かって流通する。導入室15内には固定化中和剤7が収容されているため、流通過程で未処理液は固定化中和剤7中の粒状中和剤と反応する。導入室15を通過した未処理液は、第1の隔壁11の下端と処理槽2の下面との間を通過し、中和室16を処理槽2下面側から上面側に向かって流通する。中和室16には固定化中和剤7が収容されているため、流通過程で未処理液は固定化中和剤7中の粒状中和剤とまず反応し、第2の隔壁12の上端まで上昇すると、さらに固定化中和剤7上に収容された非固定化中和剤8とも反応する。中和室16を通過した未処理液は、第2の隔壁12の上端と処理槽2の上面との間を通過して排出前室17内に流通する。排出前室17では、処理槽2壁面と第2の隔壁12とにより仕切られていることにより、未処理液は、処理槽2上面側から下面側に向かって流通し、排出口4を通過して処理済み液として外部に排出される。
【0038】
中和室16内において、未処理液は、中和室16に下面側から滞留していき、滞留した未処理液の水位が上昇するようにして、処理槽2の下面側から上面側に向かって、第2の隔壁12の上端まで流通するため、未処理液を固定化中和剤7と全体的に接触して中和反応する。これにより、固定化中和剤7中の粒状中和剤21の中和効率が向上する。また、固定化中和剤7中の粒状中和剤21の消費に伴い、固定化中和剤7に形成される隙間を、非固定化中和剤8の粒状中和剤が埋めるようにして崩落する。これにより、未処理液はさらに非固定化中和剤8の粒状中和剤と接触して反応(中和反応)するため、非固定化中和剤8中の粒状中和剤の中和効率も向上する。
【0039】
また、処理槽2内で導入室15を形成することにより、処理槽2外部から中和室16に未処理液を導入するための手段を備える必要がなく、処理槽2内に第1の隔壁11を設けるという単純な構成で、中和室16に未処理液を導入できるため、中和処理器1の構成を単純化できる。
【0040】
以上より、粒状中和剤の中和効率を向上できるとともに、中和処理器1の構成をより一層単純化できるため、中和処理器1のさらなる小型化が可能となる。
【0041】
なお、本実施形態の中和処理器は、未処理液の導入口と、前記未処理液を中和処理して処理済み液とする処理槽と、前記処理済み液の排出口と、を有し、前記処理槽が、該処理槽の上面から該処理槽内を横断するように鉛直方向下向きに延出した少なくとも1つの第1の隔壁と、前記処理槽の下面から該処理槽内を横断するように鉛直方向上向きに延出した少なくとも1つの第2の隔壁と、により仕切られ、前記第1の隔壁の下端が、前記第2の隔壁の上端よりも低い位置に形成されることにより、前記処理槽の下面側から上面側に向けて前記未処理液が流通可能に形成された中和室と、該中和室に少なくとも収容され、粒状中和剤がバインダを介して一体化されてなる固定化中和剤と、を含んでいればよい。
【0042】
本明細書にいう「隔壁」とは、例えば、処理槽内を2つの槽に区分けするとともに、区分けされた一方の槽から他方の槽へ、水平方向において未処理液が流通することを遮断するように形成された壁(遮断壁)をいう。ここで、隔壁は、処理槽内を横断するように鉛直方向に延出しているため、一方の槽から他方の槽への水平方向への流通を遮断できる。第1の隔壁の下端は、鉛直方向において処理槽の下面と所定距離をおいて位置しており、第2の隔壁の上端は、鉛直方向において処理槽の上面と所定距離をおいて位置している。
【0043】
本実施形態の中和処理器では、処理槽の上面(下面)から処理槽内を横断するように鉛直方向下向き(上向き)に処理槽下面(上面)まで延出した延出壁を形成し、前記延出壁にスリットなどの開口部を形成し、開口部を介して区分けされた互いの槽を連通させてもよい。この場合、第1の隔壁は、延出壁のうち、鉛直方向において、延出壁の上端から、延出壁に形成された開口部の最上点(最も高い点)の高さ位置と同じ水平線までの部分をいい、第2の隔壁は、延出壁のうち、鉛直方向において、延出壁の下端から、延出壁に形成された開口部の最下点(最も低い点)の高さ位置と同じ水平線までの部分をいう。
【0044】
より具体的には、
図3に示す中和処理器1Aのように、
図1に示す中和処理器1において、第2の隔壁12に代えて、処理槽2の下面から処理槽2内を横断するように鉛直方向上向きに延出した延出壁18を形成し、延出壁18の上部にスリット状開口部19を形成してもよい。この例では、スリット状開口部19を介して、中和室16及び排出前室17が連通する。また、この例では、第2の隔壁は、延出壁18のうち、鉛直方向において、延出壁18の下端から、スリット状開口部19の下端の高さ位置と同じ水平線(
図3に示す点線部分)までの部分に相当する。
【0045】
本実施形態の固定化中和剤は、必ずしも
図1に示す固定化中和剤7のように、中和室16の下面と、第2の隔壁12の上端の高さ位置よりも低い水平面とに囲まれる空間に収容される必要はなく、中和室16の下面と、第2の隔壁12の上端の高さ位置と同じ水平面とに囲まれる空間に収容されていてもよい。
【0046】
本実施形態の中和処理器では、固定化中和剤は、中和室に少なくとも収容されていればよく、必ずしも、
図1に示す中和処理器1のように、導入室15に固定化中和剤7を収容しなくてもよいが、導入室15に固定化中和剤7を収容すると、処理槽2内に収容する固定化中和剤7の収容量を大きくできるため、中和効率をより一層向上できる。また、本実施形態の中和処理器では、固定化中和剤は、前述のように、中和室に少なくとも収容されていればよいが、処理槽内の各区画室(単位槽)に固定化中和剤を収容してもよく、固定化中和剤を各区画室(単位槽)全体に又は部分的に収容してもよい。例えば、
図1に示す中和処理器1の排出前室17にも固定化中和剤7及び非固定化中和剤8(又は固定化中和剤7のみ)をさらに収容してもよい。また、排出前室17をさらに仕切り壁で仕切り、仕切られた一方の槽に固定化中和剤7及び非固定化中和剤8(又は固定化中和剤7のみ)を収容し、他方の槽に、固定化中和剤7及び非固定化中和剤8を収容せず、前記一方の槽と排出口4とを連通する槽を形成してもよい。
【0047】
また、本実施形態の固定化中和剤は、必ずしも
図1に示す固定化中和剤7のように、異なる区画室(単位槽)に連通するように一体的に収容される必要はなく、分離されて収容されてもよい。
【0048】
本実施形態の中和処理器は、第1の隔壁及び第2の隔壁を複数有し、中和室をさらに区分けしてもよい。
図4に中和室が区分けされた形態の一例を示す。
【0049】
図4に示す中和処理器1Bでは、処理槽2Bが、第1の隔壁11A,B及び第2の隔壁12A,Bをそれぞれ2つずつ備えており、互いの隔壁が交互になるように、所定間隔をおいて配置している。これにより、処理槽2Bは、処理槽2Bの壁面(導入口3側の側壁面)と、第1の隔壁11Aとにより仕切られた導入室15;第1の隔壁11Aと第2の隔壁12Aとにより仕切られた第1の中和室16A;第2の隔壁12Aと第1の隔壁11Bとにより仕切られた第2の中和室20;第1の隔壁11Bと第2の隔壁12Bとにより仕切られた第1の中和室16B;第2の隔壁12Bと処理槽2Bの壁面(排出口4側の側壁面)とにより仕切られた排出前室17の5つの区画室(単位槽)で構成され、第1の中和室16Aと第2の中和室20とは、第2の隔壁12Aを共有し、第2の中和室20と第1の中和室16Bとは、第1の隔壁11Bを共有している。すなわち、
図4に示す処理槽2Bは、
図1に示す中和室16が、2つの第1の隔壁11A,11Bと2つの第2の隔壁12A,12Bにより3つに区画された形態である。この形態では、第1の中和室16A,16Bは、処理槽の下面側から上面側に向けて未処理液が流通可能であり、第2の中和室20は、処理槽の上面側から下面側に向けて未処理液が流通可能である。このように、本実施形態の中和処理器では、第1の隔壁と第2の隔壁とが処理槽内で交互に配置されていることが好ましい。
【0050】
処理槽2Bでは、第1の中和室16Aと第1の中和室16Bとを連通するように第2の中和室20が形成されている。第1の中和室16Aと第2の中和室20とは、処理槽2Bの上面と第2の隔壁12Aの上端との間で連通し、第2の中和室20と第1の中和室16Bとは、処理槽2Bの下面と第1の隔壁11Bの下端との間で連通する。これにより、第1の中和室16Aを通過した未処理液は、さらに第2の中和室20,第1の中和室16B,排出前室17を前記順序で通過し、処理済み液として外部に排出される。
【0051】
また、本実施形態の中和処理器は、導入口を長尺のパイプ状の形態として、処理槽の下面側まで延出させることにより、処理槽の下面側から上面側に向かって未処理液を流通させてもよい。例えば、
図4に示す中和処理器1Bにおいて、導入室15内に、第2の隔壁12A,12Bと同一の第2の隔壁を形成し、区分けした一方の槽に導入口3(長尺のパイプ状の一端)を、前記第2の隔壁の上端よりも低い位置に形成し、未処理液を処理槽の下面側から上面側に向かって流通させ、さらに一方の槽を通過した未処理液を、他方の槽に上面側から下面側に向かって流通させ、第1の中和室16Aへ流通させてもよい。これにより、下面側から上面側に向かって流通する容積の割合が大きくなるため中和効率がより一層向上する。
【0052】
本実施形態では、処理槽の容積全体に対する前記中和室の容積の割合は、50体積%以上であること好ましく、70体積%以上80体積%以下であることがさらに好ましい。中和室の容積の割合が50体積%以上であることにより、中和室の固定化中和剤の収容量を十分大きく確保できるため、固定化中和剤の中和効率がさらに向上し、中和処理器のさらなる小型化が可能となる。
【0053】
本実施形態の中和処理器において、必ずしも
図1に示す中和処理器1のように非固定化中和剤8を処理槽2に収容する必要はないが、非固定化中和剤を固定化中和剤上に収容することにより、固定化中和剤上に非固定化中和剤を収容すると、形成された隙間を、非固定化中和剤の粒状中和剤が埋めるようにして崩れ落ちるため、さらに未処理液と非固定化中和剤とが反応し、非固定化中和剤を効率よく消費できる。これにより、中和処理器に充填(収容)する中和剤(粒状中和剤)の必要量を小さくできるため、中和処理器のさらなる小型化が可能となる。
【0054】
本実施形態の固定化中和剤は、バインダを介して粒状中和剤が結合した形態を有していれば特に限定されず、例えば、ブロック状の形態などであってもよい。
【0055】
固定化中和剤は、例えば、中和処理器内の容器(例えば、処理槽)内に粒状中和剤及びバインダを収容した状態で、容器を加熱することにより得られる。前記加熱温度は、例えば、60℃以上200℃以下であり、容器の耐久性の観点から、容器の材質は通常オレフィン系樹脂であることが多く、処理槽の耐熱温度との関係から、加熱温度は150℃以下であることが好ましい。
【0056】
(粒状中和剤)
粒状中和剤としては、特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、消石灰、苛性ソーダ、ソーダ灰、生石灰、石灰石、苔土石灰、及び酸化マグネシウムが挙げられる。これらの粒状中和剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、通常、炭酸カルシウムを用いることが多く、炭酸カルシウムは、例えば、白色石灰石(例えば、寒水石)の砕石の形態で用いてもよい。これらの粒状中和剤(例えば、白色石灰石の砕石)は、所定の粒径ごとに分級されている市販品を利用できる。
【0057】
粒状中和剤は、1つの級に分類された粒状中和剤のみで構成してもよいが、異なる級に分類された2種類以上の粒状中和剤であることが好ましい。2種類以上の粒状中和剤で構成することにより、粒状中和剤全体の嵩密度及び総表面積を大きくでき、未処理液の中和処理速度及び粒状中和剤全体の中和効率を向上できるため好ましい。
【0058】
(バインダ)
バインダとしては、特に限定されず、例えば、無機系バインダ(例えば、石膏、セメント、弱アルカリセメント、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)など)、天然系バインダ(例えば、でんぷんのり、ふのり、膠など)、樹脂が挙げられ、粒状中和剤との接着性が向上する観点から、樹脂であることが好ましい。
【0059】
樹脂の加熱前の形態としては、例えば、液状樹脂、顆粒樹脂、粉末樹脂などが挙げられ、粉末樹脂であることが好ましい。バインダが粉末樹脂であることにより、粉末樹脂が溶融すると、粒状の形態となるため、バインダと粒状中和剤とを点接触して結合できる。なお、本実施形態の固定化中和剤は、必ずしもバインダと粒状中和剤とを点接触により結合させる必要はなく、例えば、バインダとして液体樹脂を用いて、粒状中和剤の表面の一部を被覆して結合してもよい。
【0060】
粉末樹脂としては、コーティング用と、焼結材料用として市販されている粉末樹脂、顆粒樹脂(例えば、ペレット状樹脂)の粉砕物などを用いることができる。
【0061】
樹脂の種類としては、例えば、スチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−アクリルニトリル−ブタジエン共重合体(ABS樹脂)など)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ハロゲン化ビニル系樹脂(例えば、ポリ塩化ビニルなど)、ビニルアルコール系樹脂(例えば、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂など)、ビニルエステル系樹脂(例えば、ポリ酢酸ビニルなど)、ポリカーボネート系樹脂(例えば、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネートなど)、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミドなど)、(メタ)アクリル系樹脂(例えば、(ポリ(メタ)アクリル酸エステルなど)、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、変性シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂;エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂などの熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、耐水性及び耐酸性に優れた樹脂であることが好ましく、オレフィン系樹脂であることがより好ましい。オレフィン系樹脂であることにより、粒状中和剤との接着性が向上するとともに、得られる固定化中和剤の耐水性及び耐酸性が優れるため、固定化中和剤の耐久性を向上できる。
【0062】
オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン単独重合体、これらのオレフィンの共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体など)、これらのオレフィンと共重合性単量体との共重合体(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA樹脂)など)などが挙げられる。これらのオレフィン系樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
バインダの添加量は、粒状中和剤100質量%に対し、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上7質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがさらに好ましい。バインダの割合が0.1質量%以上であることにより、バインダと粒状中和剤との結合性を強化でき、バインダの割合が10質量%以下であることにより、バインダが粒状中和剤の表面を被覆することによる粒状中和剤の機能低下を低減(抑制)できる。
【0064】
バインダは、抗菌剤及び/又は防カビ剤を含有することが好ましい。抗菌剤及び/又は防カビ剤を含有することにより、容器内における菌(カビ)の繁殖を有効に抑制でき、菌(カビ)に汚染された処理済み液の排出を抑制できる。また、中和処理器内におけるバイオフィルム及び/又はゲル状粘性物の生成を抑制でき、目詰まりの発生を抑制できる。さらに、加熱工程において、粒状中和剤の表面に付着している菌に対する加熱殺菌作用との相乗作用により、より有効に抗菌(防カビ)作用を発揮できる。
【0065】
抗菌剤及び/又は防カビ剤としては、銀、銅、亜鉛などの金属、金属担持ゼオライト、光触媒活性を有する金属、金属酸化物などの金属化合物などの無機系抗菌剤、ヒノキチオール系、キトサン系、カラシ抽出系、ユーカリ系などの天然有機系の抗菌剤(防カビ剤)、合成有機系の抗菌剤(防カビ剤)、有機複合剤などが挙げられる。これらの抗菌剤(防カビ剤)は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、菌及びカビの双方に有効に作用する観点から、合成有機系の抗菌剤(防カビ剤)であることが好ましい。
【0066】
合成有機系の抗菌剤及び/又は防カビ剤としては、含窒素複素環系、アルデヒド系、フェノール系、ビグアナイド系、ニトリル系、ハロゲン系、アニリド系、ジスルフィド系、チオカーバメート系、有機ケイ素四級アンモニウム塩系、四級アンモニウム塩系、アミノ酸系、有機金属系、アルコール系、カルボン酸系、エステル系、チアゾリン系、カチオン性ポリマーなどの抗菌剤及び/又は防カビ剤が挙げられる。これらの合成有機系の抗菌剤及び/又は防カビ剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
抗菌剤及び/又は防カビ剤は、抗菌(防カビ)効果を長期的に持続する観点から、徐放性を有することが好ましい。
【0068】
抗菌剤及び/又は防カビ剤の添加量は、例えば、バインダ(例えば、樹脂)100質量%に対し、0.1質量%以上30質量%以下である。抗菌剤及び/又は防カビ剤の割合が0.1質量%以上であることにより、中和処理器の使用期間中、抗菌(防カビ)効果を有効に持続できる。
【0069】
なお、本実施形態の固定化中和剤は、バインダと粒状中和剤とが結合すればよいが、
図2に示す固定化中和剤7のように、バインダと粒状中和剤とが点接触して結合すると、中和剤の中和効率が向上するとともに、固定化中和剤の耐靱性が向上するため好ましい。
【0070】
本実施形態の処理槽の材質は、特に限定されず、中和処理器の容器の材質として通常用いられる材質を用いることができるが、耐水性及び耐酸性が優れ、耐久性が向上する観点から、オレフィン系樹脂であることが好ましい。オレフィン系樹脂としては、バインダの項で例示したオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0071】
本実施形態の中和処理器は、必ずしも
図1に示す中和処理器1のように検知センサ5及び緊急排出口6を形成しなくてもよいし、さらに他の構成要素を備えていてもよい。