【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 上記特許出願の出願人であるリョービ株式会社は、従業者である宮勇二が発明した衣服への着脱を容易にした衣服用ファンを平成29年3月17日に株式会社バートルへ卸した。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態にかかる衣服用ファン1について
図1〜
図11を参酌しつつ説明する。本実施形態における衣服用ファン1は、衣服100に形成された取り付け孔101に取り付けられる。
図11に取付状態の一例を示している。冷却ファン装置は、衣服用ファン1と、バッテリ2と、バッテリ2と衣服用ファン1とを電気的につないでバッテリ2の電力を衣服用ファン1に供給するための給電ケーブル3とを備えている。衣服100に取り付ける衣服用ファン1の個数や配置等については任意であるが、本実施形態では、衣服用ファン1を二つ左右に並べる構成を例示している。取り付け孔101は衣服100の後ろ身頃の下部に左右一対対称配置で形成されており、その左右の取り付け孔101にそれぞれ衣服用ファン1が取り付けられる。バッテリ2は前身頃の裏面(内面)に取り付けられる。例えば、左側の前身頃の下部にバッテリ2が取り付けられて、バッテリ2から左右一対の衣服用ファン1との間が一つの給電ケーブル3によって接続される。給電ケーブル3は、バッテリ2から水平方向に延びて左右の衣服用ファン1に達する。給電ケーブル3は、途中で二股に分岐していて、分岐した各端部にはL型のオス側コネクタ4(
図9、
図10参照)が備えられており、オス側コネクタ4が衣服用ファン1に接続される。
【0014】
図8のように、衣服用ファン1は、モータ11によって駆動されて回転するモータファン10を備えていて、モータファン10が回転することによって、衣服用ファン1の内側を背面側から正面側へと流れる空気流が発生し、取り付け孔101を介して衣服100の表側と裏側とを通気する。通常は、モータファン10が回転することによって衣服100の表側から空気を取り込んで裏側へ空気を排出する。即ち、衣服100と体との間の隙間に外部の空気を送り込んで、体を冷却する。衣服100の裏側に送り込まれた空気は、例えば衣服100の袖口や首元から外部に排出される。
【0015】
モータファン10はモータ11の主軸12に一体的に取り付けられている。説明の都合上、モータファン10の回転中心線の方向を上下方向とし、衣服100への取付状態において衣服100の裏側となる方を上側(正面側)、衣服100の表側となる方を下側(背面側)として説明する。衣服100の取り付け孔101は丸形であり、衣服用ファン1は、取り付け孔101の形状に対応して
図3のように正面視円形状であって、その中心線上にモータファン10の回転中心が位置している。衣服用ファン1は、上下方向の寸法(高さ)に対して直径が大きい扁平の円柱状である。
【0016】
衣服用ファン1は、モータファン10及び該モータファン10の駆動源であるモータ11を内蔵する本体13と、該本体13に着脱自在に取り付けられる保持リング14とを備えている。本体13は、本体ハウジング15を備えており、該本体ハウジング15の内側にモータファン10とモータ11が収容されている。本体ハウジング15は、扁平の筒状であって、底面部16と、天面部17と、底面部16の周縁部と天面部17の周縁部とを上下に連結する筒状の周壁部18とを備えており、周壁部18の一端部である下端部には径方向外側に向けて本体フランジ部19が周設されている。尚、本体ハウジング15と保持リング14は軽量化のために何れも合成樹脂製とすることが好ましい。
【0017】
<底面部16>
底面部16は、平坦状であってもよいが、
図8のように下側に向けて若干膨出した凸面状とされている。底面部16には、多数の通気孔20が形成されている。モータファン10が回転することで底面部16の通気孔20から空気が本体ハウジング15の内部に流入する。従って、底面部16の通気孔20は吸気側の通気孔20である。
【0018】
<周壁部18>
周壁部18は、上部18aと下部18bに区画され、上部18aには多数の通気孔24が形成されている一方、下部18bには通気孔24は形成されていない。周壁部18の下部18bの外周面は上下方向に沿って径一定で延びている。周壁部18の上部18aは周壁部18の下部18bに対して一段小径となっていて天面部17となだらかにつながっている。
【0019】
周壁部18の下部18bの外周面には雄ネジ部21が形成されている。
図8に示しているように、雄ネジ部21のネジ山の先端部は先鋭に尖った形状や角張った形状ではなく断面視円弧状に丸味を帯びている。尚、図示しないが、周壁部18等の本体ハウジング15には、雄ネジ部21の上側の始点である端部の位置を示す目印を設けておくことが好ましい。
【0020】
<本体フランジ部19>
本体フランジ部19は周壁部18の軸線方向に対して直交する方向である径方向外側に向けて延びている。本体フランジ部19の上面即ち正面は、衣服100の表面に当接する狭持面19aとなっていて、該狭持面19aは上下方向に対して直交する面であって所定幅を有する環状である。また、本体フランジ部19の狭持面19aに対して周壁部18の下部18bの外周面は直交している。
【0021】
本体フランジ部19の狭持面19aには、衣服100の表面に押し付けられる押圧突起23が形成されている。該押圧突起23の形状、配置、個数等は任意であるが、
図3のように、周方向に等間隔で配置されることが好ましく、例えば90度間隔で合計四箇所に形成される。但し、押圧突起23を180度間隔で二箇所形成したり120度間隔で三箇所形成したりしてもよい。押圧突起23は、例えば径方向に沿って筋状に延びる形状としてよい。また、押圧突起23は下端よりも上端の方が幅狭となる形状であることが好ましい。
【0022】
本体フランジ部19の外周面19cには凹凸が形成されている。本体フランジ部19の外周面19cの凹凸を構成している外周凸部70と外周凹部71は、それぞれ径方向外側に突出した部分と径方向内側に凹んだ部分である。外周凸部70と外周凹部71は、周方向に交互に並んで配置されていて全周に亘って形成されている。詳細には、外周凸部70は周方向に一定間隔毎に配置され、外周凹部71も同様に周方向に一定間隔毎に配置されている。外周凸部70と外周凹部71の個数は任意であるが、本実施形態ではそれぞれ10個ずつ形成されている。また、本実施形態においては外周凹部71の周方向の長さは外周凸部70の周方向の長さよりも長いが、同じであってよいし、逆に外周凸部70の方が長くてもよい。但し、外周凹部71の周方向の長さは、手の指の幅、例えば通常の大人の人差し指等の指が入る程度の長さであることが好ましい。外周凹部71は、本体フランジ部19の外周面19cを部分的に径方向内側に矩形状に切り欠くことによって形成されており、切り欠かれずに残った外周面の部分が相対的に径方向外側に突出して外周凸部70を構成している。複数の外周凸部70は全て同じ形状、大きさであり、複数の外周凹部71もまた全て同じ形状、大きさであるが、互いに異なる形状や大きさであってもよい。外周凹部71の深さは全て同じであり、従って、外周凹部71に対する外周凸部70の径方向外側への突出量も全て同じであるが、異なっていてもよい。外周凸部70の頂面と周方向の両側面との間の角度は略90度となっており、外周凸部70の周方向の両側面と外周凹部71の底面との間の角度も略90度となっている。外周凸部70と外周凹部71の境界部分は直線状であって上下方向即ち本体フランジ部19の厚さ方向に延びている。
【0023】
本体フランジ部19の背面19bは、狭持面19aと同様に環状であって、底面部16の径方向外側に位置している。本体フランジ部19の背面19bと狭持面19aは互いに平行である。本体フランジ部19の背面19bにも手の指の引っ掛かりとなる凹凸が形成されている。本体フランジ部19の背面19bの凹凸を構成している背面凸部72と背面凹部73は、それぞれ背面側に向かって突出した部分と正面側に向かって凹んだ部分である。背面凸部72は、本体フランジ部19の厚さが相対的に背面側に厚くなった部分であり、背面凹部73は、本体フランジ部19の厚さが相対的に薄くなった部分である。背面凸部72と背面凹部73は、それぞれ本体フランジ部19の背面19bの径方向の略全幅に亘って形成されていて、従って、本体フランジ部19の背面19bは、複数の背面凸部72と複数の背面凹部73に区分される。背面凸部72と背面凹部73の境界部分は直線状であって径方向に延びている。背面凹部73の深さは全て同じであり、従って、背面凹部73に対する背面凸部72の背面側への突出量も全て同じであるが、異なっていてもよい。背面凸部72の頂面と背面凹部73の底面は何れも背面側を向いている平面である。背面凸部72の頂面と周方向の両側面との間の角度は略90度となっており、背面凸部72の周方向の両側面と背面凹部73の底面との間の角度も略90度となっている。
【0024】
背面凸部72と背面凹部73は、本体フランジ部19の背面19bの全周に亘って周方向に交互に並んで配置されている。背面凸部72と背面凹部73の個数は任意であるが、本実施形態ではそれぞれ8個ずつ形成されている。複数の背面凸部72は全て同じ形状、大きさであるが、異なっていてもよい。複数の背面凹部73は二箇所を除いて全て同じ形状、大きさである。二箇所の背面凹部73は他の背面凹部73よりも周方向の長さが長く、2個の背面凹部73と1個の背面凸部72とを合わせた長さ分となっている。
【0025】
背面凸部72は、周方向において外周凸部70と同じ位置に形成されていて、外周凸部70と背面凸部72は本体フランジ部19の外周面19cから背面19bにかけて連続してつながっている。但し、合計10個の外周凸部70のうち2個の外周凸部70に対応した位置には背面凸部72が存在していない。また、背面凹部73も、周方向において外周凹部71と同じ位置に形成されていて、外周凹部71と背面凹部73は本体フランジ部19の外周面19cから背面19bにかけて連続してつながっている。従って、外周凸部70の周方向の両側面と背面凸部72の周方向の両側面は連続していて本体フランジ部19の外周面19cから背面19bにかけて直線状に延びている。
【0026】
<天面部17>
天面部17は、全体として上側に膨出するドーム状である。天面部17は、円形の頂上部17aにおいて略平坦となっていて、その頂上部17aの周縁部から径方向外側に向けて徐々に下降して周壁部18とつながっている。即ち、天面部17は、中央部に位置する頂上部17aと、該頂上部17aの径方向外側に環状に周設されて頂上部17aから周壁部18にかけて徐々に下降するテーパ状の肩部17bとを備えている。天面部17の肩部17bには、多数の通気孔24が形成されている。尚、周壁部18の上部18aの通気孔24と天面部17の周縁部の通気孔24は連続した孔形状となっている。このように天面部17の肩部17bから周壁部18の上部18aにかけて多数形成された通気孔24は、排気側の通気孔24であって、モータファン10が回転することで空気が通気孔24を通って本体ハウジング15の内部から外部に排出される。
【0027】
天面部17の頂上部17aと肩部17bの境界部近傍に差し込み口25が形成されており、その差し込み口25の内側(内部)には受電コネクタ26が配置されている。受電コネクタ26は天面部17の頂上部17aの下側に位置している。給電ケーブル3のL型のオス側コネクタ4が差し込み口25を介して受電コネクタ26に接続され、受電コネクタ26からモータ11へと電力が供給される。差し込み口25は、本体ハウジング15の上部18aに位置していて、径方向外側に向けて開口している。従って、オス側コネクタ4は受電コネクタ26に径方向に接続される。
【0028】
差し込み口25の周囲には、オス側コネクタ4との干渉を回避するための逃げ部27が凹設されている。該逃げ部27は、天面部17の肩部17bの全周のうち所定箇所に一箇所形成されている。逃げ部27は、天面部17の肩部17bから周壁部18の上部18aにかけて形成されていて、その周方向の左右両側に対して一段下側に凹んだ凹部として形成されている。逃げ部27は、正面視において扇状であってその中心角は例えば40〜60度程度とされている。
【0029】
また、逃げ部27は、差し込み口25を正面に見た場合において、差し込み口25を中心として左右対称形状とされている。オス側コネクタ4は、受電コネクタ26に接続した状態において、その接続方向の軸線回りに回転させることができる。オス側コネクタ4を受電コネクタ26に接続した状態において、
図9のようにオス側コネクタ4を右側に水平に倒した状態から
図10のようにオス側コネクタ4を左側に水平に倒した状態まで、オス側コネクタ4を180度回転させることができる。
図9のようにオス側コネクタ4を右側に水平に倒した状態を0度位置とし、
図10のようにオス側コネクタ4を左側に水平に倒した状態を180度位置としたとき、オス側コネクタ4を0度位置から180度位置まで180度の角度範囲で自由に回転させることができる。
【0030】
図1のように、逃げ部27の外周縁部にはコネクタ抑え28が上方に向けて突設されている。該コネクタ抑え28は、逃げ部27の左右両端部にそれぞれ形成されている。コネクタ抑え28は、差し込み口25に接続されたオス側コネクタ4の径方向外側に位置して、オス側コネクタ4が差し込み口25から径方向外側に抜け外れることを阻止する。
図9(b)のように、差し込み口25に差し込んだオス側コネクタ4を0度位置としたとき、そのオス側コネクタ4の径方向外側に右側のコネクタ抑え28が位置する。
図10(b)のように、オス側コネクタ4を180度位置としたとき、そのオス側コネクタ4の径方向外側に左側のコネクタ抑え28が位置する。このように、オス側コネクタ4は、0度位置と180度位置の両方においてそれぞれコネクタ抑え28によって径方向外側から規制されて差し込み口25からの抜け落ちが阻止される。オス側コネクタ4の差し込み口25への接続や差し込み口25からの取り外しは、オス側コネクタ4を0度位置と180度位置の間の中間位置に位置させたときに可能である。
【0031】
尚、逃げ部27の形成領域は、種々の形状であってよい。逃げ部27の形成領域を所定の中心角を有する正面視扇状とするのではなく、正面視において本体13の中心から所定距離離間した位置に径方向と直交する方向に引いた直線によって区画されるDカット状としてもよい。
【0032】
<本体ハウジング15の部材構成>
本体ハウジング15は複数の部材から構成されている。即ち、本体ハウジング15は、下側に位置するベース30と、該ベース30の上側に連結されるメッシュ状のカバー31と、カバー31に連結されるキャップ32とから構成されている。ベース30は、本体ハウジング15の底面部16と本体フランジ部19と周壁部18の下部18bを構成しており、従って、本体ハウジング15の底面部16と本体フランジ部19と周壁部18の下部18bは一つの部材として一体的に形成されている。カバー31は、本体ハウジング15の周壁部18の上部18aと天面部17の肩部17bの大部分を構成しており、カバー31に逃げ部27が形成されている。カバー31の下端部がベース30の上端部の径方向内側に連結されている。カバー31の上部中央部には円形の開口部35が形成されていて、その開口部35をキャップ32が覆うように、キャップ32がカバー31に装着されている。キャップ32は、本体ハウジング15の天面部17の頂上部17aと肩部17bの上端部を構成している。また、カバー31は、開口部35から内側且つ下側に延びるモータ保持部36を備えており、該モータ保持部36にモータ11が下側から取り付けられている。従って、モータ11は、カバー31の内側に吊り下げ保持された状態にある。カバー31のモータ保持部36とキャップ32との間に受電コネクタ26が配置されている。
【0033】
<保持リング14>
保持リング14は、本体ハウジング15の周壁部18の下部18bの外周面に装着される。上述のように本体ハウジング15の周壁部18の下部18bの外周面には雄ネジ部21が形成されているが、それに対応して保持リング14の内周面には
図5のように雌ネジ部40が形成されており、保持リング14は本体13に上側から螺着される。雌ネジ部40は、保持リング14の内周面の全周に亘って連続して形成されていてもよいが、本実施形態では、保持リング14の内周面の全周のうち所定角度範囲のみに形成されている。即ち、保持リング14の内周面の全周は、雌ネジ部40が形成された角度範囲と、雌ネジ部40が形成されていない角度範囲41とから構成されている。雌ネジ部40が形成されていない角度範囲41は180度対向して二箇所設けられており、従って、雌ネジ部40が形成された角度範囲も周方向に間隔をあけて二箇所設けられている。但し、雌ネジ部40が形成された角度範囲や雌ネジ部40が形成されていない角度範囲41の数や配置は任意であって種々変更してよい。
【0034】
保持リング14は、軸線方向の寸法に対して径方向の寸法が小さい薄肉の筒状である。保持リング14の下端部には径方向外側に向けてリングフランジ部43が周設されている。リングフランジ部43の直径は、本体フランジ部19の直径よりも小さい。具体的には、
図6に示しているように、本体フランジ部19の外周面19cには上述のように外周凸部70と外周凹部71が形成されていて、外周凸部70においては相対的に直径が大きく、外周凹部71においては相対的に直径が小さいが、その外周凹部71における本体フランジ部19の直径よりもリングフランジ部43の直径の方が小さい。
【0035】
尚、リングフランジ部43の外周面の全周のうち一箇所には切欠部46が形成されている。該切欠部46は、雌ネジ部40の下側の始点である端部の位置を示すための目印である。上述のように本体13側にも目印を設けておけば、本体13側の目印の位置に保持リング14側の目印である切欠部46の位置を合わせることで、保持リング14の無駄な空転をなくして本体13の雄ネジ部21に保持リング14の雌ネジ部40を直ちに螺合開始させることができる。本実施形態では切欠部46を目印として設けたが、切欠部46ではなく凸部であってもよいし、リングフランジ部43の外周面ではなく、リングフランジ部43の狭持面43aとは反対側の上面(正面)に溝や筋等を設けたりしてもよい。また、リングフランジ部43ではなく保持リング14の外周面等に目印を設けてもよい。
【0036】
保持リング14の下端面即ちリングフランジ部43の下面が保持リング14の狭持面43aである。リングフランジ部43は略水平に延びており、保持リング14の狭持面43aは保持リング14の軸線方向と直交する面であり且つ水平面であって、凹凸のない平滑面となっている。保持リング14の狭持面43aと本体13の狭持面19aとの間に衣服100を挟み込む。
図8に取り付け孔101の開口縁部における衣服100を二点鎖線で示している。このように保持リング14の狭持面43aと本体13の狭持面19aは互いに平行に対向して衣服100を狭持する。上述のように本体13の狭持面19aには押圧突起23が形成されているので、衣服100を開口縁部の全周に亘って均等に狭持するのではなく、本体13の狭持面19aの押圧突起23と保持リング14の狭持面43aとで衣服100を局所的に強く挟み込むことになる。尚、衣服100を挟み込まない状態においては、押圧突起23に保持リング14の狭持面43aが当接する。押圧突起23に保持リング14の狭持面43aが当接した状態においては、本体13の狭持面19aのうち押圧突起23が形成されていない部分と保持リング14の狭持面43aとの間には、押圧突起23の高さに相当する隙間が形成される。
【0037】
保持リング14の外周面には、保持リング14を回転操作する際の滑り止めとなる凹凸が形成されている。凹凸形状は任意であるが、本実施形態では、凸部44と凹部45とが周方向に交互に形成されている。凸部44と凹部45は全周に亘って交互に形成されている。尚、凸部44において保持リング14の肉厚は相対的に厚くなっていて、凹部45において保持リング14の肉厚は相対的に薄くなっている。
【0038】
以上のように構成された衣服用ファン1は例えば以下のようにして衣服100の取り付け孔101に取り付けられる。即ち、衣服100の表側から本体13の周壁部18を取り付け孔101に挿入する。周壁部18は取り付け孔101を通って衣服100の裏側に突出する一方、本体フランジ部19は取り付け孔101を通過することができずに衣服100の取り付け孔101の開口縁部の表面に当接する。衣服100の裏側に突出した本体13の周壁部18に保持リング14を螺着させる。そして、保持リング14を時計回りに強く締め込むことで、衣服100の取り付け孔101の開口縁部をリングフランジ部43と本体フランジ部19とで狭持する。このように保持リング14を本体13に螺着させることで衣服100に衣服用ファン1を取り付けることができる。逆に、衣服100から衣服用ファン1を取り外す際には、保持リング14を反時計回りに回転させて本体13から保持リング14を取り外すことで衣服100の狭持状態を解除して、本体13を衣服100の取り付け孔101から表側に取り外す。
【0039】
このように保持リング14の回転操作という簡単な操作で本体13と保持リング14との間に衣服100を狭持できるので、衣服用ファン1を衣服100に容易に取り付けることができ、また、衣服100からの取り外しも容易である。また、保持リング14を回転させて本体13と共に衣服100を狭持するので、従来のようなゴムベルトは不要であり、耐久性にも優れている。
【0040】
このように保持リング14を回転させて衣服用ファン1を衣服100に取り付けたり衣服100から取り外したりする際、本体フランジ部19の外周面19cと背面19bにそれぞれ凹凸が形成されているので、それらの凹凸に手を引っ掛けることで本体13をしっかりと固定することができる。そのため、保持リング14を回転させる際に、本体13と保持リング14が共回りすることがなく、保持リング14のみを確実に回転させて強く締め込んだり逆に保持リング14を緩めたりすることができる。例えば、本体フランジ部19の外周面19cの凹凸に手の指を引っ掛けて本体フランジ部19を指先で固定したり、本体フランジ部19の背面19bに手の指や手の平を押し当てるようにしてその凹凸に手を引っ掛けて本体フランジ部19を固定したりすることができる。また、本体フランジ部19の外周面19cの凹凸と背面19bの凹凸の両方に手を引っ掛けて固定することもできる。特に、衣服100の服地が厚い場合には、衣服100を介して指先を本体フランジ部19の外周面19cから狭持面19a側に越えるようにすることが困難となるが、そのような場合であっても本体フランジ部19の背面19bに凹凸が形成されているので、その背面19bの凹凸に手を引っ掛けることで本体13の回転を阻止することができる。衣服100の取り付け孔101の開口縁部に補強材が取り付けられているような場合も同様であって、本体フランジ部19の背面19bの凹凸を利用して本体フランジ部19の回転を容易に阻止することができる。
【0041】
更に、本体フランジ部19の外周面19cから背面19bにかけて凹凸が連続して延びていて、外周凸部70と背面凸部72の境界部分が突出した角部となっている。そのため、その角部に指先を容易に引っ掛けることができ、本体13をより一層しっかりと固定することができる。
【0042】
また、本体フランジ部19の外周凹部71を把持する指先が本体フランジ部19の外周面19cを狭持面19a側に越えて保持リング14側にはみ出すような場合でも、本体フランジ部19の外周凹部71における直径がリングフランジ部43の直径よりも大きいので、指先が服地を介してリングフランジ部43の外周面に当たりにくくなる。即ち、服地を介して本体フランジ部19とリングフランジ部43を指先で一緒に把持するということが抑制される。そのため、保持リング14のみをスムーズに回転させることができる。
【0043】
また、本体13にはオス側コネクタ4が接続されるが、本体フランジ部19の凹凸によって衣服用ファン1を衣服100にしっかりと取り付けることができるので、取り付けた衣服用ファン1が衣服100に対して回転してしまうことがない。従って、オス側コネクタ4に負荷がかかりにくくその破損を防止することができる。
【0044】
また、本体13の本体フランジ部19の狭持面19aに押圧突起23が形成されているので、押圧突起23を衣服100に強く押し付けることができて、衣服用ファン1を衣服100に確実に取り付けることができる。また、保持リング14にリングフランジ部43を設けているので、保持リング14の狭持面43aの径方向の寸法(幅)を拡大することでき、安定した取付状態が得られる。
【0045】
また、本体13の周壁部18の下部18bを衣服100の取り付け孔101に挿入したり取り付け孔101から取り外したりする際に、雄ネジ部21が衣服100の取り付け孔101の開口縁部と摺動する可能性があるが、雄ネジ部21のネジ山の先端部が丸味を帯びているので、雄ネジ部21が衣服100に引っ掛かりにくく、スムーズに本体13を取り付け孔101に抜き差しすることができる。
【0046】
尚、本実施形態では、本体フランジ部19の外周面19cと背面19bの両方に凹凸が形成されていたが、何れか一方のみに凹凸が形成されていてもよい。例えば、
図12のように本体フランジ部19の外周面19cに外周凸部70と外周凹部71が形成されている一方、本体フランジ部19の背面19bには凹凸が形成されていなくてもよい。
【0047】
また、上記施形態では、保持リング14を本体ハウジング15の周壁部18に螺着する構成であったが、ネジ以外の構成によって保持リング14を本体ハウジング15の周壁部18に回転させつつ装着するようにしてもよい。例えば、
図13〜
図16には、ネジではなく係合溝50による構成を示している。
図15のように本体ハウジング15の周壁部18の下部18bの外周面には係合溝50が形成されている。該係合溝50は、斜め下方に向かう傾斜溝51と、傾斜溝51の上端部から周壁部18の下部18bの上端部まで上下方向(軸線方向)に延びる縦溝52とから構成されている。傾斜溝51の周方向に対する傾斜角度は45度未満であることが好ましい。傾斜溝51の下端部は周壁部18の下部18bの外周面の上下方向中途部に位置していて本体フランジ部19から上方に離れて位置している。このような係合溝50は、本体ハウジング15の周壁部18の下部18bの外周面に180度対向して一対形成されている。但し、係合溝50の個数、配置は任意である。
【0048】
一方、保持リング14の内周面には、本体13の係合溝50に係合する係合突起60が形成されている。係合突起60は、本体13の係合溝50の個数と配置に対応して形成されていて、本実施形態では180度対向した二箇所の位置にそれぞれ径方向内側に向けて突設されている。係合突起60の形状は任意であるが、例えば円柱状としてよい。尚、保持リング14の外周面には係合突起60に対応した位置に突条61が形成されており、該突条61が目印となり、突条61の位置によってその径方向内側に位置する係合突起60の位置を把握できる。
【0049】
図13及び
図14のように保持リング14を本体13に装着する際、保持リング14の係合突起60を係合溝50の縦溝52の上側に位置させて、そこから保持リング14を下降させて係合突起60を縦溝52に係合させる。そして、保持リング14を正面視において時計回りに回転させることで、係合突起60が傾斜溝51の下端部に向けて移動する。このように係合突起60が係合溝50の傾斜溝51に案内されることで、保持リング14は傾斜溝51に沿って徐々に下降して本体フランジ部19に接近していく。従って、リングフランジ部43と本体フランジ部19との間に衣服100を狭持することができる。
【0050】
このような係合溝50による構成の場合も本体フランジ部19の外周面19cや背面19bに凹凸を形成してよい。例えば、
図13や
図14のように本体フランジ部19の外周面19cに外周凸部70と外周凹部71を形成してよい。
【0051】
また、本体13と保持リング14には緩み止め機構を設けることが好ましい。具体的には、本体ハウジング15の周壁部18の下部18bの外周面には、上下方向に延びる係止溝53が形成されている。係止溝53は、周壁部18の下部18bの外周面の上端から下端まで上下方向の全長に亘って形成されている。係止溝53は一本であってもよいが本実施形態では周方向に等間隔で多数本並設されている。そして、この多数本ワンセットになった係止溝53の群が、180度対向して一対設けられている。
【0052】
一方、保持リング14は、その全周のうちの一箇所に可撓片62を備えている。該可撓片62の左右両側(周方向の両側)には、それぞれスリット63が形成されている。スリット63は、保持リング14の上端から保持リング14の下端近傍まで延びている。従って、可撓片62は、その下端部においてのみ保持リング14の他の部分とつながっていて、その下端部を支点として径方向の内外に弾性変形する。かかる可撓片62の内面に、本体13の係止溝53に係止する係止突条64が形成されている。係止突条64は上下方向即ち保持リング14の軸線方向に沿って延びている。尚、係止突条64の上下方向の長さは係止溝53のそれよりも短い。そして、係止突条64は可撓片62の上部に形成されている。
【0053】
上述したように保持リング14を回転させながら本体13に装着していく際に、保持リング14の係止突条64は本体13の係止溝53に順次係止していく。保持リング14を本体13に装着していく際、保持リング14の係止突条64は、最初に、側面から見て最も右側の係止溝53に係止する。その位置から更に保持リング14を正面視時計回りに回転させると、可撓片62が径方向外側に弾性変形して係止溝53同士の間の突条を乗り越えて、左隣の係止溝53に再び係止する。即ち、係止突条64は右側の係止溝53から左側の係止溝53へと順次ラッチの如く係止していく。そして、
図14のように、保持リング14の係合突起60が本体13の係合溝50の下端部近傍に達すると、一群の多数本の係止溝53のうち側面から見て最も左側に位置する係止溝53に係止突条64が係止する。
【0054】
このように本体13の係止溝53に保持リング14の係止突条64が係止することにより、その位置に保持リング14を係止することができ、保持リング14の緩みが防止される。また、係止溝53が多数本並設されているので、何れの係止溝53に係止突条64が係止してもその位置で保持リング14が係止されることになる。従って、衣服100の厚さが増減しても容易にそれに対応することができ、衣服100が薄い場合には左寄りの係止溝53に係止突条64を係止させればよく、衣服100が厚い場合には右寄りの係止溝53に係止突条64を係止させればよい。
【0055】
尚、可撓片62は、保持リング14の上端よりも上方に所定長さ突出していることが好ましい。保持リング14の上端から上方に突出した可撓片62の上方突出部65を指で径方向外側に押すことで、可撓片62を強制的に径方向外側に弾性変形させて係止突条64を係止溝53から外すことができる。そして、この状態で、保持リング14を装着時とは反対の方向に回転させることで、保持リング14を本体13から取り外すことができる。
【0056】
尚、保持リング14を装着時とは反対の方向に回転させようとする回転操作力が所定値を超えると、係止突条64が係止溝53から受ける反力によって可撓片62が径方向外側に弾性変形させられて、係止突条64が係止溝53を乗り越えていくように構成してもよい。このように構成すると、保持リング14を本体13から取り外すときに、上述した上方突出部65を指で径方向外側に押す操作が不要となるので便利である。
【0057】
尚、係止溝53を一本のみ形成するようにしてもよい。また、本体13に係合突起60を形成し、保持リング14に係合溝50を形成するようにしてもよい。同様に、本体13に係止突条64を形成し、保持リング14に係止溝53を形成してもよい。
【0058】
また、保持リング14にリングフランジ部43を設けたが、リングフランジ部43を設けない構成としてもよい。但し、リングフランジ部43を設けることにより保持リング14の狭持面43aの幅を拡大できる。