特許第6951176号(P6951176)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6951176-密封構造及び密封部品 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6951176
(24)【登録日】2021年9月28日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】密封構造及び密封部品
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/00 20060101AFI20211011BHJP
   H05K 5/06 20060101ALI20211011BHJP
   F16J 15/06 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
   F16J15/00 C
   H05K5/06 D
   F16J15/06 H
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-185635(P2017-185635)
(22)【出願日】2017年9月27日
(65)【公開番号】特開2019-60411(P2019-60411A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 康祐
【審査官】 羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−032594(JP,A)
【文献】 特開2008−192750(JP,A)
【文献】 特開2009−257552(JP,A)
【文献】 特開2007−024173(JP,A)
【文献】 特開2002−031241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00−15/32
F16J 15/324−15/3296
F16J 15/46−15/53
H05K 5/00−5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着対象となる本体、
前記本体の所定の位置に装着され、前記本体を密封して気密性を維持するための密封部品であって、前記本体に対する密封部品の装着順序を指示する装着順序表示が形成されている密封部品、
を備えた密封構造であって、
前記本体には、本体側嵌合部が形成されており、
前記密封部品には、前記本体側嵌合部に嵌合する密封部品側嵌合部が形成されており、
当該密封部品側嵌合部に前記装着順序表示が形成されている、
ことを特徴とする密封構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る密封構造及び密封部品は、機器を密封するためのシールの装着等についての技術に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の機器には、使用目的に応じて、内部の気密性を保つために密封部品(シール)が設けられているものがある。シールを互いに接する構成部材の間に装着することによって、構成部材の間からの流体漏れの防止や、外部からの異物侵入の防止等を図る。シールには、運動部分・可動部分に使用されるパッキンと、固定部分に使用されるパッキンとがある。
【0003】
ところで、信頼性の高い気密性を得るためには、機器の筐体等に対し、正確な位置・状態でシールを取り付けて装着する必要がある。これを実現するための先行技術として後記特許文献1に開示されている技術がある。
【0004】
この特許文献1に係る技術は、パッキン部材に弾性係止部を設け、この弾性係止部を機器筐体側に設けたパッキン取付け具の係止孔に弾性係止させて位置決めを行う。そして、蓋体が機器筐体に被されると、蓋体がパッキン取付け具により位置規制された状態で、パッキン部材に圧接され、機器筐体に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-192750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前述の特許文献1に開示された技術は、機器筐体に対するパッキン部材の位置決めを正確に行うのみであり、パッキン等のシールを機器筐体に装着する工程で発生するシールの歪みや弛み等の変形といった課題を解決するものではない。
【0007】
すなわち、パッキンの装着工程において、筐体に対しシールを正確に位置決めして載せたとしても、シールの各部を押圧して圧着させる作業を経る際、不適切な加圧によってシールに歪みや弛み等の変形が生じることがある。図4は、このような課題を示すための平面図である。
【0008】
図4に示す筐体10にはパッキン50を嵌め込むための溝が形成されており、作業者はまずこの溝に対しパッキン50を取り付けて位置決めを行う。その後、作業者はパッキン50の各部位を数回、押圧してパッキン50を溝に嵌め入れるが、その際、偏った部位の押圧を行うとパッキン50に引っ張り・縮みが生じ、これらに起因してパッキン50に歪み91や弛み92等の変形が生じる。特にゴム等の弾性部材で構成されているパッキン50については、このような歪み91や弛み92等の変形が生じる易い。
【0009】
歪み91や弛み92が生じた状態で筐体10に蓋を固定しても、信頼性の高い気密性を得ることはできない。歪み91や弛み92を生じさせないようにパッキン50を押圧するためには、作業者にパッキン50の装着作業の熟練が必要であり、迅速かつ正確な装着作業を容易に行うことは難しい場合がある。
【0010】
そこで本願に係る密封構造及び密封部品は、これらの問題を解決するため、迅速かつ正確な装着作業を容易に行うことによって信頼性の高い気密性を得ることができる密封構造及び密封部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願に係る密封構造は、
装着対象となる本体、
本体の所定の位置に装着され、本体を密封して気密性を維持するための密封部品であって、本体に対する適正な装着作業を指示する作業情報表示が形成されている密封部品、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本願に係る密封部品は、
装着対象となる本体の所定の位置に装着され、本体を密封して気密性を維持するための密封部品であって、
本体に対する適正な装着作業を指示する作業情報表示が形成されている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本願に係る密封構造及び密封部品においては、本体に対する適正な装着作業を指示する作業情報表示が密封部品に形成されている。このため、迅速かつ正確な装着作業を容易に行うことが可能になり、これにより、本体において信頼性の高い気密性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本願に係る密封構造及び密封部品の第1の実施形態である筐体10及びパッキン20を示す平面図である。
図2図1に示すパッキン20を筐体10に取り付けた状態を示す平面図である。
図3】本願に係る密封構造及び密封部品の第2の実施形態であるパッキン30を示す平面図である。
図4】従来の密封構造及び密封部品が有する課題を示すための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態における用語説明]
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係る密封構造及び密封部品の下記の要素に対応している。
筐体10・・・本体
タブ用凹部11、12、13、14、15、16・・・本体側嵌合部
パッキン20、30・・・密封部品
タブ21、22、23、24、25、26、31、32、33、34、35、36・・・密封部品側嵌合部
タブ21、22、23、24、25、26、31、32、33、34、35、36に形成された数字・・・作業情報表示、装着順序表示
押圧力の強弱や押圧の方向等・・・作業情報表示
【0016】
[第1の実施形態]
本願に係る密封構造及び密封部品の第1の実施形態を説明する。本実施形態では、産業プラント等で用いられるリピータ(中継器)の筐体の内部に装着されるパッキンを例に掲げる。
【0017】
産業プラントに設置されている配管系統には、内部に滞留したドレンを自動的に排出するためのスチームトラップが随所に設けられている。そして、各スチームトラップの動作状態を管理するために、それぞれのスチームトラップには温度や振動を検出するセンサが取り付けられることがあり、各センサは定期的に温度データや振動データを無線で発信している。これらの温度データや振動データを一定の場所的範囲を対象に集約して受信し、中継してホストコンピュータに送信するためにリピータが設置されている。
【0018】
このリピータは屋外に設置されることもあることから、密封による防水構造が必要である。また、屋内に設置される場合であっても湿気や異物の混入を防止するために密封構造が求められる。
【0019】
図1は、リピータの筐体10と、筐体10に装着されるパッキン20を示している。パッキン20は略矩形を備えており、例えば、リピータの密封を実現可能な程度の弾性を有するゴム材料で構成されている。そして、周形状のパッキン本体29と、ここから内側に向けて突出する6つのタブ21、22、23、24、25、26とを有している。
【0020】
タブ21、22、23、24、25、26は、周方向にわたって適度に平均的な間隔をもって配置されるよう形成されており、各タブ21、22、23、24、25、26の表面部分にはそれぞれ「1」、「2」、「3」、「4」、「5」、「6」の番号が表示されている。
【0021】
図1に示すように、両長辺にはそれぞれ2つのタブが配置され、連続する番号が付された一対のタブ21、22とタブ23、24は対角線上に配置されている。また、両短辺のほぼ中央部には、それぞれ1つのタブが一対となって向かい合って配置されている。
【0022】
他方、筐体10には、パッキン20の形状に対応する装着用の凹みが平面部に形成されている。すなわち、周方向に凹んだパッキン本体用凹部19が形成されており、さらにパッキン本体用凹部19から内側に向かって6つのタブ用凹部11、12、13、14、15、16が形成されている。
【0023】
リピータの製造工程において、作業者はまずパッキン20を筐体10の平面部に載せる。筐体10の平面部にパッキン20を載せた状態が図2であり、筐体10のパッキン本体用凹部19及びタブ用凹部11、12、13、14、15、16に一致するよう、パッキン本体29及びタブ21、22、23、24、25、26が載せられている。
【0024】
パッキン20の内側に向けて突出して設けられているタブ21、22、23、24、25、26をタブ用凹部11、12、13、14、15、16に一致させることで、筐体10の平面部においてパッキン20を正確に位置決めすることが可能である。これにより、パッキン20の位置ずれに起因する密封の不具合を回避することができる。
【0025】
この状態から作業者はパッキン20の各部位を数回、押圧してパッキン20を凹みに嵌め入れるが、その際、作業者は各タブに表示された数字に従った順序で押圧する。すなわち、作業者はタブ21、タブ22、タブ23、タブ24、タブ25、タブ26の順序でそれぞれのタブの表面を凹みに向けて押圧し、タブ用凹部11、12、13、14、15、16に嵌合させる。これにより、平均的にバランスよくパッキン20の各タブを押圧して嵌合することができ、パッキン20の歪みや弛み等の変形を回避することができる。
【0026】
[第2の実施形態]
本願に係る密封構造及び密封部品の第2の実施形態を図3に基づいて説明する。図3は、本実施形態に係るパッキン30を示す平面図である。このパッキン30には、前記第1の実施形態におけるパッキン20と同様、周形状のパッキン本体39と、6つのタブ31、32、33、34、35、36が設けられている。
【0027】
ここで、本実施形態においては、前記第1の実施形態とは異なり、タブ31、32の双方に同じ数字「1」が表示されており、タブ33、34の双方に同じ数字「2」が表示されており、タブ35、36の双方に同じ数字「3」が表示されている。すなわち、両長辺の対角線上に配置された一対のタブ31、32とタブ33、34にそれぞれ同じ数字「1」、「2」が表示され、両短辺のほぼ中央部に一対となって向かい合って配置されているタブ35、36に同じ数字「3」が表示されている。
【0028】
そして作業者はこれらタブに表示されている数字の順序に従い、例えば両手で同時に同じ数字が表示されている2つのタブ31、32、タブ33、34、タブ35、36を順次押圧する。同じ数字が表示された一対のタブはパッキン本体39の周方向にわたってバランスよく配置されているため、本実施形態においても平均的にバランスよくパッキン30の各タブを押圧して嵌合することができ、パッキン30の歪みや弛み等の変形を回避することができる上、一対のタブを同時に押圧することによって作業効率を高めることができる。その他の構成は前記第1の実施形態において示したものと同様である。
【0029】
[その他の実施形態]
前記各実施形態においてはパッキンに6つのタブが設けられている例を掲げたが、5つ以下又は7つ以上のタブを設けてもよい。また、装着順序表示として数字の表示を例示したが、作業者が押圧順序を認識できる表示であれば、例えば英文字「A」、「B」、「C」・・・を表示することもできる。さらに、前記各実施形態においては、パッキンの各タブの表面に数字が表示された例を示したが、各タブ近傍のパッキン本体部分に数字を表示することもできる。
【0030】
また、前記各実施形態においては、筐体10に形成された凹部にパッキンを嵌合して装着したが、接着剤等を用いて固定し装着することもできる。この場合であっても、パッキンの装着工程において、作業者はパッキンの各部を押圧して圧着・固定する必要があるため、装着順序表示に従った装着を行うことができる。
【0031】
また、前記各実施形態においては、作業情報表示として装着順序表示である数字を例示したが、例えば押圧力の強弱や押圧の方向等、熟練作業者の技能を客観化した情報を作業情報表示として表示してもよい。さらに、前記各実施形態においては、パッキンを例に掲げたが、本願に係る密封構造及び密封部品をガスケット等の他のシール材にも適用することもできる。
【符号の説明】
【0032】
10:筐体
11、12、13、14、15、16:嵌合用凹部
20、30:パッキン
21、22、23、24、25、26、31、32、33、34、35、36:タブ

図1
図2
図3
図4