【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例において、各評価は以下の方法で行った。
【0028】
〔柔軟性〕
射出成形機(日精樹脂工業株式会社製UH1000−110)を用いて、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの短冊状試験片を成形し、これを用いてISO178に準拠して、溶融粘度、曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。これらの数値が低いほど、柔軟性が高いことを意味する。
【0029】
〔揮発性〕
上記柔軟性の評価と同様に作成した試験片を用いて、恒温乾燥機中で120℃の温度下、3日間乾燥させ、下記式に基づき質量減少率(%)を算出した。
質量減少率(%)={(乾燥前質量−乾燥後質量)/乾燥前質量}×100
質量減少率が小さいほど、揮発性が低いことを意味する。
【0030】
〔反り〕
揮発性評価で得られた乾燥後の試験片を、反り面が下になるように両端部を平面に載置し、平面から試験片の最高部の高さを、ハイトゲージ(株式会社ミツトヨ製HDM−30)を用いて測定した。
【0031】
<ヒドロキシ芳香族アミドの合成>
(合成例1)N−(n−ヘキサデシル)−4−ヒドロキシベンズアミド(BA-16)
撹拌機、温度センサーおよび還流管を備えた3.0Lの4口フラスコに、4−アセトキシ−安息香酸200g(1.11mol)、塩化チオニル145g(1.21mol)、DMF0.8gおよびTHF600gを加えて、窒素気流下、50℃に昇温し2時間撹拌した。撹拌終了後、反応液を室温まで冷却し、60mmHgに減圧することによりTHFを留去した。
【0032】
そこへ、再びTHF2000gを加え、窒素気流下、室温で撹拌しながらトリエチルアミン135g(1.33mol)を滴下した。続けて、ヘキサデシルアミン281gを添加した。60℃まで昇温し、同温度で1時間撹拌した。その後、60℃のまま熱時ろ過を行った。得られた濾液を濃縮し結晶を得た。
【0033】
得られた結晶を3.0Lの4口フラスコに移し、水806g、メタノール806g、48%NaOH水溶液167gを加え、窒素気流下、75℃に昇温し2時間撹拌した。撹拌終了後、反応液を60℃まで冷却し、70%硫酸を1時間かけて溶液のpHが4になるまで加え、結晶を析出させた。その後、室温まで冷却し、濾過することにより結晶を得た。
【0034】
得られた結晶を5.0Lの4口フラスコに移し、メタノール2734gを加え、60℃で撹拌した。その後25℃まで冷却することにより、結晶を析出させた。得られた結晶を濾別し、メタノール600gで洗浄した後、80℃の条件で乾燥させて、N−(n−ヘキサデシル)−4−ヒドロキシベンズアミドの結晶298gを得た(収率74mol%、純度98%)。
【0035】
(合成例2)N−(n−オクタデシル)−6−ヒドロキシナフトアミド(NA-18)
撹拌機、温度センサーおよび還流管を備えた5.0Lの4口フラスコに、6−アセトキシ−2−ナフトエ酸200g(0.87mol)、塩化チオニル113g(0.95mol)、DMF0.8gおよびTHF800gを加えて、窒素気流下、50℃に昇温し2時間撹拌した。撹拌終了後、反応液を室温まで冷却し、60mmHgに減圧することによりTHFを留去した。
【0036】
そこへ、再びTHF2000gを加え、窒素気流下、室温で撹拌しながらトリエチルアミン176g(1.74mol)を滴下した。続けて、オクタデシルアミン246gを100分かけて添加した。60℃まで昇温し、同温度で1時間撹拌した。その後、60℃のまま熱時ろ過を行った。
【0037】
得られたろ液を5.0Lの4口フラスコに移し、48%NaOH水溶液108gおよび水2000gを加え、窒素気流下、50℃に昇温し2時間撹拌した。撹拌終了後、反応液を室温まで冷却し、70%硫酸を溶液のpHが7になるまで加えた。その後、50℃まで昇温し、有機層を抽出した。
【0038】
得られた有機層を3.0Lの4口フラスコに移し、撹拌しながら25℃まで冷却することにより、結晶を析出させた。得られた結晶を濾別し、メタノール600gで洗浄した後、70℃、10Torrの条件で乾燥させて、N−(n−オクタデシル)−6−ヒドロキシナフトアミドの結晶208gを得た(収率53mol%、純度97.4%)。
【0039】
実施例1
ポリアミド12(ナイロン12、ARKEMA社製Rilsamid)100質量部と、N−(n−ヘキサデシル)−4−ヒドロキシベンズアミド(BA−16)5質量部を混合し、これを2軸押出機(株式会社栗本鉄工所製S1 KRCリアクター)を用いて、220℃で溶融混練して樹脂組成物のペレットを得た。
得られたペレットを乾燥後、射出成形機を用いて短冊状試験片を作成し、柔軟性、揮発性および反りの各評価を行った。結果を表1に示す。
【0040】
実施例2
N−(n−ヘキサデシル)−4−ヒドロキシベンズアミド(BA−16)の代わりに、N−(n−オクタデシル)−6−ヒドロキシナフトアミド(NA−18)5質量部を用いた以外は実施例1と同様にして試験片を作成し、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
実施例3
N−(n−ヘキサデシル)−4−ヒドロキシベンズアミド(BA−16)の添加量を20質量部に変更し、ポリアミド12(ナイロン12)をポリアミド11(ナイロン11、ARKEMA社製Rilsan)に変更した以外は実施例1と同様にして試験片を作成し、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0042】
参考例1
N−(n−ヘキサデシル)−4−ヒドロキシベンズアミド(BA−16)を加えないこと以外は実施例1と同様にして試験片を作成し、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0043】
参考例2
N−(n−ヘキサデシル)−4−ヒドロキシベンズアミド(BA−16)を加えないこと以外は実施例3と同様にして試験片を作成し、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0044】
比較例1
N−(n−ヘキサデシル)−4−ヒドロキシベンズアミド(BA−16)の代わりに、4−ヒドロキシ安息香酸2−エチルヘキシル(EHPB)(上野製薬株式会社製)5質量部を用いた以外は実施例1と同様にして試験片を作成し、質量減少率および反りの評価を行った。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
本発明のポリアミド樹脂組成物を用いた実施例1〜3では、柔軟性に優れるとともに、可塑剤の揮発が抑制されたことが理解される。また、反りも少ないため、高温条件や長期的な使用においても、成形品の物性が損なわれないものである。これに対し、可塑剤を用いない参考例1および2では、良好な柔軟性は得られなかった。また、2−エチルヘキシル基を分岐鎖として有する4−ヒドロキシ安息香酸エステルを可塑剤として用いた比較例1では、可塑剤の揮発量が多く、反りも大きいものであった。
本発明の好ましい態様は以下を包含する。
〔1〕ポリアミド樹脂100質量部、および式(1)
[化1]
(Arは2価の芳香族基を示し、nは12〜20の整数を示す)
で表されるヒドロキシ芳香族アミド化合物1〜70質量部を含むポリアミド樹脂組成物。
〔2〕式(1)において、nは14〜18の整数を示す、〔1〕に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔3〕式(1)において、Arは、式(A)
[化2]
または、式(B)
[化3]
で表される2価の芳香族基を示す、請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔4〕ポリアミド樹脂が、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド6T、ポリアミド6Iおよびポリアミド9Tからなる群から選択される、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
〔5〕ポリアミド樹脂がポリアミド12である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
〔6〕〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形品。