特許第6951208号(P6951208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6951208
(24)【登録日】2021年9月28日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20211011BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
   C08L77/00
   C08K5/20
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-223500(P2017-223500)
(22)【出願日】2017年11月21日
(65)【公開番号】特開2019-94403(P2019-94403A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2020年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000189659
【氏名又は名称】上野製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】本岡 良太
(72)【発明者】
【氏名】大塚 良一
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−113509(JP,A)
【文献】 特開2001−002915(JP,A)
【文献】 特開2006−181858(JP,A)
【文献】 特開2006−068993(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0148728(US,A1)
【文献】 米国特許第09555291(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/00
C08K 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂100質量部、および式(1)
【化1】
(Arは2価の芳香族基を示し、nは12〜20の整数を示す)
ここで、式(1)において、Arは、式(A)
【化2】
または、式(B)
【化3】
で表される2価の芳香族基を示す、
で表されるヒドロキシ芳香族アミド化合物1〜70質量部を含むポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
式(1)において、nは14〜18の整数を示す、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
ポリアミド樹脂が、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド6T、ポリアミド6Iおよびポリアミド9Tからなる群から選択される、請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
ポリアミド樹脂がポリアミド12である、請求項1〜のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性に優れたポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、エンジニアリングプラスチックとして機械的および化学的に優れた特性を有し、自動車や電気電子機器の部品、食品用フィルム、衣料品、建材など各種の工業分野において広く使用されている。
【0003】
ポリアミド樹脂を自動車の燃料ホースや油圧、空圧チューブ、あるいは柔軟性が求められる建材などの用途に用いる場合、可塑剤を加えて柔軟性を付与したものが使用されている。
【0004】
一般にポリアミド樹脂の可塑剤として、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等が知られている。しかし、この可塑剤は、可塑化効率を高めるために添加量を増すと、成形物の表面にブリードしてベタついたり、これらの可塑剤がホースあるいはチューブから滲み出し、柔軟性が失われるとともに、耐熱性が悪いため成形時に可塑剤が揮散し作業環境を悪化させたりするという問題があった。
【0005】
また、ポリアミド樹脂の可塑剤として、p−ヒドロキシ安息香酸の2−ヘキシルデカノールエステル等といったp−ヒドロキシ安息香酸と分岐鎖を有する炭素数12〜22の脂肪族アルコールのエステルが提案されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、分岐鎖構造を有する化合物は揮発性が高く、可塑剤としてポリアミド樹脂に配合した場合、やはり成形加工時に表面へブリードしてベタつくという問題があった。また、時間の経過と共に成形品から可塑剤が揮発し、成形品の物性が損なわれたり、揮発成分が人体や環境に悪影響を及ぼしたりするという問題があった。さらに、成形品において経時的に反りが発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−160728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、柔軟性に優れるとともに、可塑剤の表面ブリードや揮発が抑制されたポリアミド樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ポリアミド樹脂の可塑剤について鋭意検討した結果、直鎖構造を有する特定のヒドロキシ芳香族アミド化合物が、表面ブリードや揮発の抑制効果に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、ポリアミド樹脂100質量部、および式(1)
【化1】
(Arは2価の芳香族基を示し、nは12〜20の整数を示す)
で表されるヒドロキシ芳香族アミド化合物1〜70質量部を含む、ポリアミド樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、柔軟性に優れるとともに、可塑剤の表面ブリードや揮発が抑制されたポリアミド樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、成形品の物性が損なわれることなく、人体や環境に悪影響を及ぼすことのないポリアミド樹脂組成物を提供することができる。さらに、本発明によれば、成形品の反りを抑制し得るポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において使用されるポリアミド樹脂は、分子中にアミド基を有するポリマーであり、α−ピロリドン、α−ピペリドン、ε−カプロラクタム、6−アミノカプロン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、ω−ラウロラクタム等を重合して得られる重合体;ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどのジアミンと、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸とを縮重合して得られる重合体等が挙げられる。
【0013】
本発明において使用されるポリアミド樹脂の具体例としては、ε−カプロラクタムを重合して得られるポリアミド6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸とを縮重合して得られるポリアミド66、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸とを縮重合して得られるポリアミド610、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸とを縮重合して得られるポリアミド6T、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸とを縮重合して得られるポリアミド6I、ジアミノブタンとアジピン酸とを縮重合して得られるポリアミド46、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とを縮重合して得られるポリアミドMXD6、ノナンジアミンとテレフタル酸とを縮重合して得られるポリアミド9T、11−アミノウンデカン酸を重合して得られるポリアミド11、12−アミノドデカン酸あるいはω−ラウロラクタムを重合して得られるポリアミド12等が挙げられる。これらのうち、吸湿による物性変化や寸法変化が少なく、可塑剤との相溶性に優れることから、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド6T、ポリアミド6Iおよびポリアミド9Tが好ましく、ポリアミド12がより好ましい。これらポリアミド樹脂は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0014】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、可塑剤として、式(1)で表されるヒドロキシ芳香族アミド化合物を含有する。式(1)で表されるヒドロキシ芳香族アミド化合物をポリアミド樹脂に配合することにより、成形品における可塑剤の表面ブリードや揮発を抑制することができる。また、本発明のポリアミド樹脂組成物は、成形時の作業性を改善するとともに、成形品の物性を長期間保持し、さらに、揮発物による人体や環境への悪影響を防止することができる。
【0015】
このような式(1)で表されるヒドロキシ芳香族アミド化合物の具体例としては、N−(n−ドデシル)−4−ヒドロキシベンズアミド、N−(n−トリデシル)−4−ヒドロキシベンズアミド、N−(n−テトラデシル)−4−ヒドロキシベンズアミド、N−(n−ペンタデシル)−4−ヒドロキシベンズアミド、N−(n−ヘキサデシル)−4−ヒドロキシベンズアミド、N−(n−ヘプタデシル)−4−ヒドロキシベンズアミド、N−(n−オクタデシル)−4−ヒドロキシベンズアミド、N−(n−ノナデシル)−4−ヒドロキシベンズアミド、およびN−(n−イコシル)−4−ヒドロキシベンズアミド、ならびに、N−(n−トリデシル)−6−ヒドロキシナフトアミド、N−(n−テトラデシル)−6−ヒドロキシナフトアミド、N−(n−ペンタデシル)−6−ヒドロキシナフトアミド、N−(n−ヘキサデシル)−6−ヒドロキシナフトアミド、N−(n−ヘプタデシル)−6−ヒドロキシナフトアミド、N−(n−オクタデシル)−6−ヒドロキシナフトアミド、N−(n−ノナデシル)−6−ヒドロキシナフトアミド、およびN−(n−イコシル)−6−ヒドロキシナフトアミドが挙げられる。
【0016】
なかでも、本発明の好ましい態様において、式(1)で表されるヒドロキシ芳香族アミド化合物としては、可塑剤の表面ブリードや揮発の抑制効果および成形品の物性や反りの改善効果に優れる点で、式(1)においてnが14〜18の整数を示す化合物が好ましく、nが15〜17の整数を示す化合物がより好ましい。
【0017】
また、本発明の好ましい態様において、式(1)で表されるヒドロキシ芳香族アミド化合物としては、可塑剤の表面ブリードや揮発の抑制効果および成形品の物性や反りの改善効果に優れる点で、式(1)において、Arは、式(A)
【化2】
または、式(B)
【化3】
で表される2価の芳香族基を示す化合物が好ましい。
【0018】
本発明の特に好ましい態様において、式(1)で表されるヒドロキシ芳香族アミド化合物としては、Arが式(A)で表され、かつ、nが15である化合物、すなわち、下記式(2)で表される化合物であるN−(n−ヘキサデシル)−4−ヒドロキシベンズアミドが挙げられる。
【化4】
【化5】
【0019】
また、本発明の特に好ましい態様において、式(1)で表されるヒドロキシ芳香族アミド化合物としては、Arが式(B)で表され、かつ、nが17である化合物、すなわち、下記式(3)で表される化合物であるN−(n−オクタデシル)−6−ヒドロキシナフトアミドが挙げられる。
【化6】
【化7】
【0020】
これらの式(1)で表されるヒドロキシ芳香族アミド化合物は単独で用いてもよく、上記群から選択される2種以上を組合せて用いてもよい。
【0021】
式(1)で表される化合物の入手方法は特に限定されないが、市販のものを用いてよく、また、芳香族カルボン酸ハライドと、炭素数が12〜20の直鎖アルキルアミン〔NH(CHCH〕とを反応させることによって得られたものを用いてもよい。
【0022】
式(1)で表されるヒドロキシ芳香族アミド化合物は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、1〜70質量部、好ましくは3〜60質量部、より好ましくは5〜50質量部の量で配合されて、所定量の式(1)で表されるヒドロキシ芳香族アミド化合物を含有する本発明のポリアミド樹脂組成物が得られる。
【0023】
ポリアミド樹脂組成物における式(1)で表されるヒドロキシ芳香族アミド化合物の含有量が1質量部を下回ると、柔軟性が十分に付与されず、70質量部を上回ると、成形品の機械的強度が低下するとともに、コスト的にも不利になる。
【0024】
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、ポリアミド樹脂を重合によって製造する時に、上記の可塑剤を添加する方法、重合後のポリアミド樹脂に上記の可塑剤をドライブレンドする方法、ポリアミド樹脂のペレット表面へ上記の可塑剤を付着させる方法、ポリアミド樹脂に対して上記の可塑剤を溶融混練する方法など、任意の方法で製造することができる。溶融混練の方法としては、公知の方法、例えばバンバリーミキサー、ミキシングロール、単軸あるいは2軸の押出機などを使用して溶融混練し、ポリアミド樹脂と可塑剤の混合体のペレットを得る方法が挙げられる。
【0025】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、その成形性、物性を損なわない程度に他の成分、例えば他のポリアミド成分、熱安定剤、耐候剤、無機充填剤、補強剤、酸化防止剤、耐衝撃性改良剤、顔料、滑剤、難燃剤などを添加することができる。
【0026】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、射出成形、圧縮成形、押出成形、ブロー成形等の公知の成形法によって、成形品、フィルム、繊維等に加工される。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例において、各評価は以下の方法で行った。
【0028】
〔柔軟性〕
射出成形機(日精樹脂工業株式会社製UH1000−110)を用いて、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの短冊状試験片を成形し、これを用いてISO178に準拠して、溶融粘度、曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。これらの数値が低いほど、柔軟性が高いことを意味する。
【0029】
〔揮発性〕
上記柔軟性の評価と同様に作成した試験片を用いて、恒温乾燥機中で120℃の温度下、3日間乾燥させ、下記式に基づき質量減少率(%)を算出した。
質量減少率(%)={(乾燥前質量−乾燥後質量)/乾燥前質量}×100
質量減少率が小さいほど、揮発性が低いことを意味する。
【0030】
〔反り〕
揮発性評価で得られた乾燥後の試験片を、反り面が下になるように両端部を平面に載置し、平面から試験片の最高部の高さを、ハイトゲージ(株式会社ミツトヨ製HDM−30)を用いて測定した。
【0031】
<ヒドロキシ芳香族アミドの合成>
(合成例1)N−(n−ヘキサデシル)−4−ヒドロキシベンズアミド(BA-16)
撹拌機、温度センサーおよび還流管を備えた3.0Lの4口フラスコに、4−アセトキシ−安息香酸200g(1.11mol)、塩化チオニル145g(1.21mol)、DMF0.8gおよびTHF600gを加えて、窒素気流下、50℃に昇温し2時間撹拌した。撹拌終了後、反応液を室温まで冷却し、60mmHgに減圧することによりTHFを留去した。
【0032】
そこへ、再びTHF2000gを加え、窒素気流下、室温で撹拌しながらトリエチルアミン135g(1.33mol)を滴下した。続けて、ヘキサデシルアミン281gを添加した。60℃まで昇温し、同温度で1時間撹拌した。その後、60℃のまま熱時ろ過を行った。得られた濾液を濃縮し結晶を得た。
【0033】
得られた結晶を3.0Lの4口フラスコに移し、水806g、メタノール806g、48%NaOH水溶液167gを加え、窒素気流下、75℃に昇温し2時間撹拌した。撹拌終了後、反応液を60℃まで冷却し、70%硫酸を1時間かけて溶液のpHが4になるまで加え、結晶を析出させた。その後、室温まで冷却し、濾過することにより結晶を得た。
【0034】
得られた結晶を5.0Lの4口フラスコに移し、メタノール2734gを加え、60℃で撹拌した。その後25℃まで冷却することにより、結晶を析出させた。得られた結晶を濾別し、メタノール600gで洗浄した後、80℃の条件で乾燥させて、N−(n−ヘキサデシル)−4−ヒドロキシベンズアミドの結晶298gを得た(収率74mol%、純度98%)。
【0035】
(合成例2)N−(n−オクタデシル)−6−ヒドロキシナフトアミド(NA-18)
撹拌機、温度センサーおよび還流管を備えた5.0Lの4口フラスコに、6−アセトキシ−2−ナフトエ酸200g(0.87mol)、塩化チオニル113g(0.95mol)、DMF0.8gおよびTHF800gを加えて、窒素気流下、50℃に昇温し2時間撹拌した。撹拌終了後、反応液を室温まで冷却し、60mmHgに減圧することによりTHFを留去した。
【0036】
そこへ、再びTHF2000gを加え、窒素気流下、室温で撹拌しながらトリエチルアミン176g(1.74mol)を滴下した。続けて、オクタデシルアミン246gを100分かけて添加した。60℃まで昇温し、同温度で1時間撹拌した。その後、60℃のまま熱時ろ過を行った。
【0037】
得られたろ液を5.0Lの4口フラスコに移し、48%NaOH水溶液108gおよび水2000gを加え、窒素気流下、50℃に昇温し2時間撹拌した。撹拌終了後、反応液を室温まで冷却し、70%硫酸を溶液のpHが7になるまで加えた。その後、50℃まで昇温し、有機層を抽出した。
【0038】
得られた有機層を3.0Lの4口フラスコに移し、撹拌しながら25℃まで冷却することにより、結晶を析出させた。得られた結晶を濾別し、メタノール600gで洗浄した後、70℃、10Torrの条件で乾燥させて、N−(n−オクタデシル)−6−ヒドロキシナフトアミドの結晶208gを得た(収率53mol%、純度97.4%)。
【0039】
実施例1
ポリアミド12(ナイロン12、ARKEMA社製Rilsamid)100質量部と、N−(n−ヘキサデシル)−4−ヒドロキシベンズアミド(BA−16)5質量部を混合し、これを2軸押出機(株式会社栗本鉄工所製S1 KRCリアクター)を用いて、220℃で溶融混練して樹脂組成物のペレットを得た。
得られたペレットを乾燥後、射出成形機を用いて短冊状試験片を作成し、柔軟性、揮発性および反りの各評価を行った。結果を表1に示す。
【0040】
実施例2
N−(n−ヘキサデシル)−4−ヒドロキシベンズアミド(BA−16)の代わりに、N−(n−オクタデシル)−6−ヒドロキシナフトアミド(NA−18)5質量部を用いた以外は実施例1と同様にして試験片を作成し、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
実施例3
N−(n−ヘキサデシル)−4−ヒドロキシベンズアミド(BA−16)の添加量を20質量部に変更し、ポリアミド12(ナイロン12)をポリアミド11(ナイロン11、ARKEMA社製Rilsan)に変更した以外は実施例1と同様にして試験片を作成し、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0042】
参考例1
N−(n−ヘキサデシル)−4−ヒドロキシベンズアミド(BA−16)を加えないこと以外は実施例1と同様にして試験片を作成し、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0043】
参考例2
N−(n−ヘキサデシル)−4−ヒドロキシベンズアミド(BA−16)を加えないこと以外は実施例3と同様にして試験片を作成し、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0044】
比較例1
N−(n−ヘキサデシル)−4−ヒドロキシベンズアミド(BA−16)の代わりに、4−ヒドロキシ安息香酸2−エチルヘキシル(EHPB)(上野製薬株式会社製)5質量部を用いた以外は実施例1と同様にして試験片を作成し、質量減少率および反りの評価を行った。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
本発明のポリアミド樹脂組成物を用いた実施例1〜3では、柔軟性に優れるとともに、可塑剤の揮発が抑制されたことが理解される。また、反りも少ないため、高温条件や長期的な使用においても、成形品の物性が損なわれないものである。これに対し、可塑剤を用いない参考例1および2では、良好な柔軟性は得られなかった。また、2−エチルヘキシル基を分岐鎖として有する4−ヒドロキシ安息香酸エステルを可塑剤として用いた比較例1では、可塑剤の揮発量が多く、反りも大きいものであった。
本発明の好ましい態様は以下を包含する。
〔1〕ポリアミド樹脂100質量部、および式(1)
[化1]
(Arは2価の芳香族基を示し、nは12〜20の整数を示す)
で表されるヒドロキシ芳香族アミド化合物1〜70質量部を含むポリアミド樹脂組成物。
〔2〕式(1)において、nは14〜18の整数を示す、〔1〕に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔3〕式(1)において、Arは、式(A)
[化2]
または、式(B)
[化3]
で表される2価の芳香族基を示す、請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
〔4〕ポリアミド樹脂が、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド6T、ポリアミド6Iおよびポリアミド9Tからなる群から選択される、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
〔5〕ポリアミド樹脂がポリアミド12である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
〔6〕〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形品。