特許第6951303号(P6951303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6951303プレスプリッティングによる発破掘削工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6951303
(24)【登録日】2021年9月28日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】プレスプリッティングによる発破掘削工法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/00 20060101AFI20211011BHJP
【FI】
   E21D9/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-143565(P2018-143565)
(22)【出願日】2018年7月31日
(65)【公開番号】特開2020-20139(P2020-20139A)
(43)【公開日】2020年2月6日
【審査請求日】2020年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 光
(72)【発明者】
【氏名】横山 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】浜田 元
【審査官】 小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−167596(JP,A)
【文献】 特開昭57−098800(JP,A)
【文献】 特開昭63−014992(JP,A)
【文献】 特開平06−073974(JP,A)
【文献】 特表2010−522289(JP,A)
【文献】 特開昭55−026373(JP,A)
【文献】 特開昭53−138901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発破掘削の対象となる地盤面における掘削領域の周縁部に沿って、プレスプリッティング発破による亀裂を生じさせた後に、引き続いて周縁部の内側の掘削領域の発破掘削を行なうプレスプリッティングによる発破掘削工法において、
前記プレスプリッティング発破は、前記掘削領域の周縁部に沿って所定の間隔をおいて形成された複数の装薬孔の各隣接する一対の装薬孔の間の部分に、空孔を形成した状態で行なわれるようになっており、
前記空孔は、各隣接する一対の装薬孔の間の部分において、一方の装薬孔の側に片寄せて配置されて形成されることにより、プレスプリッティング発破の際に、前記空孔と前記一方の装薬孔との間に亀裂が連続した状態で形成され、前記空孔と他方の装薬孔との間に亀裂が分断した状態で形成されるようになっているプレスプリッティングによる発破掘削工法。
【請求項2】
前記装薬孔は、前記掘削領域の周縁部に沿って、600〜900mmの所定の中心間間隔をおいて複数形成されており、各隣接する一対の装薬孔の間の部分において、各々の前記空孔は、前記一方の装薬孔から、150〜250mmの中心間間隔となる領域に納まるように、前記一方の装薬孔側に片寄せて配置されて形成される請求項1記載のプレスプリッティングによる発破掘削工法。
【請求項3】
前記装薬孔に装薬が、体積デカップリング法によって装填される請求項1又は2記載のプレスプリッティングによる発破掘削工法。
【請求項4】
前記装薬孔は、1.0〜3.0mの穿孔深さを有するように形成され、前記空孔は、前記装薬孔よりも0.15〜0.25m長い穿孔深さを有するように形成される請求項1〜3のいずれか1項記載のプレスプリッティングによる発破掘削工法。
【請求項5】
前記発破掘削の対象となる地盤面は、山岳トンネル工法によって形成されるトンネルの切羽面である請求項1〜4のいずれか1項記載のプレスプリッティングによる発破掘削工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスプリッティングによる発破掘削工法に関し、特に、プレスプリッティング発破によって亀裂を生じさせた後に、掘削領域の発破掘削を行なうプレスプリッティングによる発破掘削工法に関する。
【背景技術】
【0002】
発破掘削の対象となる岩盤等からなる地盤面として、例えば山岳トンネル工法において形成されるトンネルの切羽面は、爆薬を用いた発破工法によって掘削する方法が、効率性及び経済性の点で優れていることから、一般に採用されている。また発破工法では、余堀を減らすと共に、発破掘削の対象となる地盤面の周囲の地盤を損傷しないようにする必要があり、このための工法として、例えばスムースブラスティング工法が知られている(例えば、特許文献1参照)。スムースブラスティング工法は、芯抜き発破により掘削領域の中央部分に自由面を形成してから、払い発破により自由面を順次周囲に拡大した後に、最後に最外周部分の地盤面を発破掘削する際に、最外周部の装薬孔を通常よりも密に配置して、小孔径の爆薬を装填することで、岩盤等に作用する衝撃や圧力を緩和し、爆発による岩盤等への圧縮破壊を抑制することによって、周囲の岩盤等を傷めないようにすることができるようになっている。
【0003】
また、芯抜き発破により掘削領域の中央部分に自由面を形成してから、払い発破により自由面を順次周囲に拡大した後に、最後に発破掘削の対象となる地盤面の最外周部分の岩盤等を掘削する際に、最外周部分の発破は、周方向に沿って所定の間隔で装薬孔を穿孔すると共に、これらの各装薬孔の中間位置に装薬を行わない空孔を穿孔して、空孔の両側の装薬孔に装填された爆薬によって発破を行なうことで、余掘の低減と周囲の岩盤等の損傷防止を図りながら、爆薬量の削減による火薬コストの低減を図れるようにした発破工法も開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−280094号公報
【特許文献2】特開2003−262096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、発破掘削の対象となる地盤面の周囲の地盤を損傷しないようにする他の発破工法として、プレスプリッティング工法が知られている。プレスプリッティング工法は、最初に掘削領域の中央部分に芯抜き発破を行った後に最後に最外周部分の地盤を発破するスムースブラスティング工法とは異なり、最初に、掘削領域の最外周部である周縁部に沿って配置された装薬孔を発破させて、周縁部に沿って亀裂を生じさせることで周囲の地盤から掘削領域を隔離した後に、周縁部の内側の掘削領域の全体を、通常の発破工法と同様の方法によって、装薬孔を順次発破させながら発破掘削してゆく工法である。また、プレスプリッティング工法では、先に掘削領域の周縁部に亀裂を作り、引き続いて行われる芯抜き発破や払い発破によって、最外周部分の地盤を掘削領域の外側の地盤から切り離すようになっており、芯抜き発破を先行して行なわないことで発破する際の自由面が少なくなる分、プレスプリッティング発破を行う際の装薬孔の間隔を狭くとることによって、装薬孔の列に沿って亀裂を入り易くすると共に、亀裂の方向が定まり易くなるようにしている。
【0006】
しかしながら、従来のプレスプリッティング工法では、最初に掘削領域の周縁部に沿って亀裂を生じさせて周囲の地盤から掘削領域を隔離することで、余堀りを少なくし、また周囲の地盤を損傷しないようにすることが可能になるが、その一方で、プレスプリッティング発破を行う際の装薬孔の間隔を狭くする分、装薬孔の数が多くなって、装薬孔を穿孔する作業や爆薬を装填する作業に多くの手間を要することになる。
【0007】
これに対して、プレスプリッティング発破を行う際の作業の手間を低減するには、掘削領域の周縁部に沿って配置される装薬孔の間隔を広げると共に、間隔を広げた隣接する装薬孔の中間部分に空孔を設けて自由面を形成することが考えられるが、装薬孔の間隔を増大したことで、これらの装薬孔や空孔の間の部分に確実に亀裂を生じさせるためには、各々の装薬孔による爆ごう圧力(爆薬の装填量)を大きくする必要を生じて、亀裂の進展方向を制御し難くなり、掘削領域の外側の余分なところまで掘削することになって、余堀が増大すると共に、周囲の地盤を損傷し易くなる。
【0008】
このようなことから、プレスプリッティング発破を行なう際に、掘削領域の周縁部に沿って配置される装薬孔の間隔を広げた場合でも、より少ない爆薬の装薬量で亀裂の指向性を高めることを可能にして、余堀が増大したり、周囲の地盤が損傷したりするのを抑制しつつ、掘削領域の最外周部分の地盤を、掘削領域の外側の地盤から容易に切り離すことができるようにする技術の開発が望まれている。
【0009】
本発明は、このような従来の技術的課題を鑑みてなされたものであり、プレスプリッティング発破を行なう際に、掘削領域の周縁部に沿って配置される装薬孔の間隔を広げた場合でも、より少ない爆薬の装薬量で亀裂の指向性を高めることを可能にして、余堀が増大したり、周囲の地盤が損傷したりするのを抑制しつつ、掘削領域の最外周部分の地盤を、掘削領域の外側の地盤から容易に切り離すことのできるプレスプリッティングによる発破掘削工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、発破掘削の対象となる地盤面における掘削領域の周縁部に沿って、プレスプリッティング発破による亀裂を生じさせた後に、引き続いて周縁部の内側の掘削領域の発破掘削を行なうプレスプリッティングによる発破掘削工法において、前記プレスプリッティング発破は、前記掘削領域の周縁部に沿って所定の間隔をおいて形成された複数の装薬孔の各隣接する一対の装薬孔の間の部分に、空孔を形成した状態で行なわれるようになっており、前記空孔は、各隣接する一対の装薬孔の間の部分において、一方の装薬孔の側に片寄せて配置されて形成されることにより、プレスプリッティング発破の際に、前記空孔と前記一方の装薬孔との間に亀裂が連続した状態で形成され、前記空孔と他方の装薬孔との間に亀裂が分断した状態で形成されるようになっているプレスプリッティングによる発破掘削工法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0011】
そして、本発明のプレスプリッティングによる発破掘削工法は、前記装薬孔が、前記掘削領域の周縁部に沿って、600〜900mmの所定の中心間間隔をおいて複数形成されており、各隣接する一対の装薬孔の間の部分において、各々の前記空孔は、前記一方の装薬孔から、150〜250mmの中心間間隔となる領域に納まるように、前記一方の装薬孔側に片寄せて配置されて形成されることが好ましい。
【0012】
また、本発明のプレスプリッティングによる発破掘削工法は、前記装薬孔に爆薬が、デカップリング法によって装填されることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明のプレスプリッティングによる発破掘削工法は、前記装薬孔が、1.0〜3.0mの穿孔深さを有するように形成され、前記空孔は、前記装薬孔よりも0.15〜0.25m長い穿孔深さを有するように形成されることが好ましい。
【0014】
さらにまた、本発明のプレスプリッティングによる発破掘削工法は、前記発破掘削の対象となる地盤面は、山岳トンネル工法によって形成されるトンネルの切羽面であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のプレスプリッティングによる発破掘削工法によれば、プレスプリッティング発破を行なう際に、掘削領域の周縁部に沿って配置される装薬孔の間隔を広げた場合でも、より少ない爆薬の装薬量で亀裂の指向性を高めることを可能にして、余堀が増大したり、周囲の地盤が損傷したりするのを抑制しつつ、掘削領域の最外周部分の地盤を、掘削領域の周囲の外側の地盤から容易に切り離すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の好ましい一実施形態に係る発破掘削工法によって発破掘削される、対象となる地盤面である山岳トンネルの切羽面に、複数の装薬孔及び空孔を形成した状態を説明する略示正面図である。
図2】(a)は、切羽面の周縁部に沿って形成された装薬孔及び空孔の配置状態を説明する、図1のA部拡大図、(b)は、発破によって装薬孔及び空孔の間に亀裂が生じた状態を説明する、図1のA部拡大図である。
図3図2(a)のB−Bに沿った略示断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい一実施形態に係るプレスプリッティングによる発破掘削工法は、図1に示すように、発破掘削の対象となる地盤面として、例えば山岳トンネル21の切羽面20を、爆薬を用いて効率良く掘削してゆくための工法として採用されたのである。すなわち、山岳トンネル21の掘削領域となる切羽面20は、主に岩盤等による硬い地盤によって形成されており、自由断面掘削機やトンネルボーリングマシーン等の切削機械では、効率良く迅速に掘削してゆくことが困難であることから、所定の配置で切羽面20に多数の装薬孔10a,10b・・,10jを形成すると共に、これらの装薬孔10a,10b・・,10jに装填された爆薬12a、12b(図3参照)を、同時に、又はデシセコンド(DS)〜ミリセコンド(MS)程度の予め設定された所定の時間差及び所定の順序で、連続して爆発させる発破掘削工法によって、掘削してゆくようになっている。
【0018】
また、本実施形態では、特にトンネル21の上部のアーチ形状部分21aに、凹凸の少ないより平滑な円弧形状の掘削断面が得られるようにするために、切羽面20のアーチ形状部分20aの最外周部である周縁部に沿って配置された装薬孔10aを、先行して発破させて、切羽面20のアーチ形状部分20aの周縁部に沿って亀裂13(図2(b)参照)を生じさせることで周囲の外側の地盤22から切羽面20を隔離させる、プレスプリッティング発破が行われるようになっている。本実施形態の発破掘削工法は、このようなプレスプリッティング発破を行なう際に、より少ない爆薬12a、12bの装薬量で亀裂13の指向性を高めることを可能にして、余堀が増大したり、周囲の地盤が損傷したりするのを抑制しつつ、切羽面20のアーチ形状部分20aの最外周部分の地盤を、切羽面20の周囲の外側の地盤22から容易に切り離すことができるようにする機能を備えている。
【0019】
そして、本実施形態のプレスプリッティングによる発破掘削工法は、発破掘削の対象となる地盤面である山岳トンネルの切羽面20の全体を掘削領域として、切羽面20の上部のアーチ形状部分20aの周縁部に沿って、プレスプリッティング発破による亀裂を生じさせた後に、引き続いて周縁部の内側の切羽面20の発破掘削を行なう発破掘削工法において、図1及び図2(a)に示すように、プレスプリッティング発破は、切羽面20の上部のアーチ形状部分20aの周縁部に沿って所定の間隔をおいて形成された複数の装薬孔10aの各隣接する一対の装薬孔10aの間の部分に、空孔11を形成した状態で行なわれるようになっている。空孔11は、各隣接する一対の装薬孔10aの間の部分において、一方の装薬孔10aの側に片寄せて配置されて形成されることにより、プレスプリッティング発破の際に、図2(b)に示すように、空孔11と一方の装薬孔10aとの間に亀裂13が連続した状態で形成され、空孔11と他方の装薬孔10aとの間に亀裂13が分断した状態で形成されるようになっている。これによって亀裂13は、切羽面20の上部のアーチ形状部分20aの周縁部に沿って、断続するミシン目状の切り取り線として機能するようになっている。
【0020】
本実施形態では、山岳トンネル21は、スプリングライン(SL)よりも下方の略横長矩形形状の下半部21bと、スプリングライン(SL)よりも上方の略半円形状の上半部21cとを含む、横幅が12m程度、縦幅(高さ)が7.6m程度の大きさの、中空の断面形状を備えている。これよって、掘削領域となる切羽面20は、略横長矩形形状の下半部20bと、略半円形状の上半部20cとを含む正面形状を備えることになる。
【0021】
また、本実施形態では、山岳トンネル21の切羽面20には、図1の丸数字で示す、後述するプレスプリッティング発破を行うための第0段の複数の装薬孔10a、及び第1段から第9段の複数の装薬孔10b,10c・・,10jが、所定の位置に配置されて形成されている。プレスプリッティング発破により、切羽面20の上部のアーチ形状部分20aの周縁部に沿って配置された第0段の19カ所の装薬孔10aによって、アーチ形状部分20aの周縁部に沿って亀裂13を生じさせた後に、第0段の装薬孔10aを除く第1段〜第9段の各段の装薬孔10b・・,10jを、DS雷管やMS雷管を用いて、芯抜き発破や払い発破を含む公知の発破パターンで順次発破させるによって、周縁部の内側の切羽面20の地盤を、効率良く掘削できるようになっている。
【0022】
そして、本実施形態では、切羽面20の上部のアーチ形状部分20aの周縁部に沿って配置される第0段の装薬孔10aは、当該周縁部の内側の切羽面20の発破掘削を行なうのに先立って、切羽面20の上部のアーチ形状部分20aの周縁部に沿って亀裂を生じさせる、プレスプリッティング発破を行うための装薬孔であって、アーチ形状部分20aに周縁部に沿って、切羽面20の中央線(CL)の両側に対称に配置されて、19カ所に形成されている。これらの19カ所の装薬孔10aの各隣接する一対の装薬孔10aの間の部分には、空孔11が、一方の装薬孔10aの側に片寄せた状態で、18カ所に配置されて形成されている。
【0023】
切羽面20の上部のアーチ形状部分20aの周縁部に沿って配置されるプレスプリッティング発破のための第0段の装薬孔10aは、例えばφ45mm程度の孔径の円形断面を有する孔であって、例えばジャンボドリル機を用いて、岩盤等からなる切羽面20における、好ましくはアーチ形状部分20aの周縁部のラインに沿った位置に、容易に穿孔形成することができる。装薬孔10aは、好ましくは1.0〜3.0m程度の穿孔深さL1(図3参照)有するように形成されると共に、例えばアーチ形状部分の周縁部に沿って、600〜900mmの中心間ピッチ(本実施形態では700mm程度の中心間ピッチ)Pとなるように、所定の間隔をおいて連設配置されて複数形成されている。また装薬孔10aは、山岳トンネル21のトンネル断面をその設計断面の大きさに保つことができるように、いわゆるルックアウト(差し角)を備えるように外向きに角度を与えた状態で削孔することが好ましい。
【0024】
本実施形態では、各々の装薬孔10aには、図3に示すように、爆薬12a、12bが、好ましくはデカップリング法のうち、特に体積デカップリング法によって装填される。体積デカップリング法は、機械充填によって装薬孔10aの孔底側に爆薬12a、12bを密に充填すると共に、装薬孔10aの孔元のみに閉塞栓14を取り付け、閉塞栓14と爆薬12a、12bとの間にスペーサ15を配置することによって空隙を確保した状態で、制御発破を行えるようにしたものであり、爆轟の際、衝撃波を空隙内の空気で減衰させ、ガス圧を装薬孔10内で均一に作用させることで、爆破の際のエネルギーを抑制することができるようになっている。また体積デカップリング法では、装薬孔2aに装薬される爆薬12a、12bを機械充填することが可能となり、作業員が人力で爆薬12a、12bを装填する必要がなくなる。爆薬12a、12bは、各々の装薬孔10aに、孔径デカップリング法等の、公知のその他の種々の装填方法によって装填することもできる。
【0025】
本実施形態では、装薬孔10aに装填される爆薬12a、12bとして、発破掘削に通常使用されているダイナマイト、AN−FO、スラリー爆薬(含水爆薬)等を好ましく用いることができる。爆薬12a、12bは、例えば雷管付きのダイナマイトである親ダイ12aと、親ダイ12aの爆轟により爆発する雷管のついていないダイナマイトである増ダイ12bとを、重ねて装填することができる。装薬孔10aの孔元に取り付けられる閉塞栓14は、通常は粘土を使用して設けることができる。閉塞栓14は、ゴムや軟質プラスチック等の弾性材料を用いて設けることもできる。閉塞栓14は、装薬孔10aの孔元に押し込まれた状態で、爆轟時のガス圧に耐えることができるように粘土や弾性材料の剛性や外径を適宜設定することが可能である。閉塞栓14と爆薬12a、12bとの間に空隙を確保するために配置されるスペーサ15は、装薬孔10aに挿入することが可能な、例えば厚紙製や合成樹脂製の円筒形状のスペーサ部材を用いることができる。
【0026】
そして、本実施形態では、図1及び図2(a)に示すように、切羽面20の上部のアーチ形状部分20aの周縁部に沿って配置される、プレスプリッティング発破のための第0段の19カ所の装薬孔10aの、18カ所の各隣接する一対の装薬孔10aの間の部分に、空孔11が各々形成されている。空孔11は、装薬孔10aと同様に、例えばφ45mm程度の孔径の円形断面を有する孔であって、例えばジャンボドリル機を用いて、岩盤等からなる切羽面20における、好ましくはアーチ形状部分20aの周縁部のラインに沿った位置に、容易に穿孔形成することができる。空孔11は、図3に示すように、好ましくは装薬孔10aよりもL2=0.15〜0.25m(本実施形態では、0.2m)長い穿孔深さを有するように形成されると共に、装薬孔10aと同様に、例えばアーチ形状部分の周縁部に沿って、600〜900mmの中心間ピッチ(本実施形態では700mm程度の中心間ピッチ)となるように、所定の間隔をおいて連設配置されて複数形成されている。空孔11が、装薬孔10aよりもL2=0.15〜0.25m長い穿孔深さを有していることにより、装薬孔10aの長さに対応した1工程の発破掘削による切羽面20の掘削長さを、確実に確保することが可能になる。
【0027】
また、本実施形態では、空孔11は、図2(a)に示すように、各隣接する一対の装薬孔10aの間の部分において、一方の装薬孔10の側に片寄せた状態で配置されて形成されている。より具体的には、空孔11は、例えばアーチ形状部分の周縁部に沿って、600〜900mmの中心間間隔(本実施形態では700mm程度の中心間間隔)Pとなるように連設配置された、各隣接する一対の装薬孔10aの間の部分において、各々、好ましくは一方の装薬孔10aから、150〜250mmの中心間間隔となる領域に、当該空孔11の中心位置が納まるように、一方の装薬孔10a側に片寄せて配置されて形成されている。より具体的には、本実施形態では、空孔11は、一方の装薬孔10aとの間の中心間間隔が、例えば250mmとなるように、一方の装薬孔10a側に片寄せて配置されて形成されている。
【0028】
これによって、プレスプリッティング発破の際に、空孔11と片寄せた側の一方の装薬孔10aとの間には、亀裂がより確実に連続した状態で形成され易くなり、空孔11と他方の装薬孔10aとの間には、亀裂がより確実に分断した状態で形成され易くなる。またこれによって、空孔11と、片寄せた側の一方の装薬孔10aとの間隔が狭くなるので、装薬孔10aに装填される爆薬12a、12bの装薬量を低減させても、これらの空孔11と装薬孔10aとの間には、より指向性の高い連続する亀裂13を容易に形成することが可能になると共に、装薬孔10aに装填される爆薬12a、12bの装薬量を低減させた分、余堀が増大したり、周囲の地盤が損傷したりするのを効果的に抑制することが可能になる。
【0029】
ここで、空孔11は、各隣接する一対の装薬孔10aの間の部分において、一方の装薬孔10の側に片寄り過ぎていると、空孔11と他方の装薬孔10aとの間で亀裂13の分断が大きくなり過ぎて、断続するミシン目状の亀裂13による切り取り線としての役割がうまく機能しなくなることで、あたりが発生し易くなるといった不具合が生じることになり、片寄りが少なすぎると、空孔11からの亀裂の進展が不十分となり、空孔11と装薬孔10aとの間に生じた亀裂が繋がらなくなることで、これらの間に指向性の高い連続する亀裂13が形成され難くなるといった不具合が生じることになる。このため、空孔11は、各隣接する一対の装薬孔10aの間の部分において、一方の装薬孔10aから、150〜250mmの中心間間隔となる領域に、当該空孔11の中心位置が納まるように、一方の装薬孔10a側に片寄せて配置されることが好ましい。
【0030】
プレスプリッティング発破によって形成された、空孔11と片寄せた側の一方の装薬孔10aとの間で連続すると共に、空孔11と他方の装薬孔10aとの間で分断した状態となっている亀裂13は、切羽面20の上部のアーチ形状部分20aの周縁部に沿って形成された、断続するミシン目状の切り取り線として機能するので、ミシン目状の切り取り線における空孔11と他方の装薬孔10aとの間の分断された部分は、プレスプリッティング発破の後に、周縁部の内側の切羽面20の地盤を、通常の発破工法と同様の方法によって発破掘削してゆく際に、例えば切羽面20の最外周部分の地盤を発破掘削するのと同時に、容易に掘削領域の外側の地盤から切り離されることになる。
【0031】
したがって、本実施形態のプレスプリッティングによる発破掘削工法によれば、プレスプリッティング発破を行なう際に、掘削領域の周縁部に沿って配置される装薬孔の間隔を広げた場合でも、各隣接する一対の装薬孔10aの間の部分において、空孔11が、一方の装薬孔10aの側に片寄せて配置されて形成されることで、より少ない爆薬の装薬量で亀裂の指向性を高めることを可能にして、余堀が増大したり、周囲の地盤が損傷したりするのを抑制しつつ、掘削領域の最外周部分の地盤を、掘削領域の周囲の外側の地盤から容易に切り離すことが可能になる。
【0032】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、発破掘削の対象となる地盤面は、山岳トンネル工法によって形成されるトンネルの切羽面である必要は必ずしも無く、その他の種々の発破掘削される地盤面であっても良い。
【符号の説明】
【0033】
10a 掘削領域の周縁部に沿って配置された装薬孔
10b〜10j 装薬孔
11 空孔
12a 爆薬(親ダイ)
12b 爆薬(増ダイ)
13 亀裂
14 閉塞栓
15 スペーサ
20 切羽面(発破掘削の対象となる地盤面、掘削領域)
20a アーチ形状部分
21 山岳トンネル
21a アーチ形状部分
22 外側の地盤
図1
図2
図3