【文献】
Case Study 福岡市 ビッグデータ分析で医療・介護などの行政施策の立案を支援する地域包括ケア情報プラットフォームを構築,Hitachi Social Innovation Forum 2017,2017年11月01日,2017年10月号,pp.13-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自立支援・介護重度化防止事業を含む介護事業、介護予防・日常生活支援事業を含む総合事業、及び医療・介護連携推進事業の各事業を実行する地域包括ケア事業システムであって、
住民住所データ及び地域特性データを含む高齢者基本データ、要介護認定データ及び介護レセプトデータを含む介護保険データ、高齢者特定健診データ及び医療レセプトデータを含む医療保険データ、コミュニティ施設や介護予防施設及び生活支援サポータに関する地域施策データを有するデータベースと、
前記各事業について、医療・介護のデータから事業所及び小地域を含む事業単位別に、高齢者情報やサービス利用状況についての量的分析レポート、及び心身状態項目の状態変化を表す指標に基づく質的レポートを出力する地域マネジメント支援機能部と、
前記事業単位ごとに、サービスの量や質に係る活動評価結果を個票形式で出力する地域情報管理機能部と、
高齢者の基本情報、心身状態利用サービス状況、及び医療状況を一元管理し、これらに関する過去の履歴を参照することでケアプランの効果確認、及び次期プランの見直し方針検討を支援する高齢者情報管理機能部と、
を有し、前記地域マネジメント支援機能部は、
自保険者と自保険者以外とについて、介護事業における受給者1人当たりの受給額を含む互いに対応するデータを比較し、前記自保険者と自保険者以外との比較位置を目視可能に出力し、要検討の指標を見出す位置付け把握部と、
前記事業単位別に、かつ心身状態別に、サービス受給率を含む量的問題を分析し、その分析結果に基づく前記量的分析レポートを出力する第1の要因分析部と、
前記事業単位別に、かつ心身状態別に、心身状態の変化に関する質的問題を分析し、前記質的レポートを出力する第2の要因分析部と、
を備え、これら地域マネジメント支援機能部、地域情報管理機能部、及び高齢者情報管理機能部は、前記データベースが有するデータをデータドリブンするコンピュータシステムにより実現されることを特徴とする地域包括ケア事業システム。
前記地域情報管理機能部は、前記データベースのデータから抽出した前記事業単位の課題分析用のデータを用い、複数の事業単位別に、複数種の身体心身状態別の受給者一人当たりの給付額の目標値に対する実績値の履歴変化、及び自事業単位地域と他事業単位地域とを比較した位置づけを表す量的評価シートと、複数種の心身状態別の改善率や変化までの平均維持期間の目標値に対する実績値の履歴変化、及び自事業単位と他事業単位とを比較した位置づけを表す質的評価シートとを作成する機能を備えたことを特徴とする請求項1に記載の地域包括ケア事業システム。
前記位置付け把握部は、互いに交差するx軸とy軸により第1象限、第2象限、第3象限、第4象限の4つの領域に区分される座標平面を有し、前記x軸とy軸のいずれか一方を在宅サービス受給者1人当たり給付月額の数値軸とし、他方を施設・居住系サービス受給者1人当たり給付月額の数値軸とし、前記x軸とy軸の交点を全国平均の受給者1人当たり給付月額の座標とした場合、自自治体の受給者1人当たり給付月額の座標と、比較対象となる他の自治体の受給者1人当たり給付月額の座標が、それぞれどの象限に位置するかを表す画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の地域包括ケア事業システム。
前記位置付け把握部は、放射状に延びる複数の数値軸を有し、自己と比較対象との、互いに異なる複数種の施設・居住系サービスにおけるそれぞれの受給者1人当たり給付月額を、前記複数種の施設・居住系サービス別に前記複数の数値軸別に割り付け、それらの値を対応する数値軸の中心点からの長さで表し、これら数値軸の先端を前記自治体、及び比較対象別に結んで形成される多角形のグラフをそれぞれ生成することを特徴とする請求項1に記載の地域包括ケア事業システム。
前記第1の要因分析部は、互いに交差するx軸とy軸により第1象限、第2象限、第3象限、第4象限の4つの領域に区分される座標平面を有し、前記x軸とy軸のいずれか一方を心身状態軽度者の受給者1人当たりの給付月額の数値軸とし、他方を心身状態重度者の受給者1人当たり給付月額の数値軸とし、前記x軸とy軸の交点を、保険者における平均の受給者1人当たり給付月額の座標とした場合、前記保険者に所属する複数の事業単位における各受給者1人当たり給付月額の座標が、どの象限に位置するかを表す画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の地域包括ケア事業システム。
前記第1の要因分析部は、心身状態別に、自保険者の複数の事業単位で夫々行われている居宅サービス、グループホームサービス、グループホーム以外の施設・居住系サービスを含む各種サービスについて、これらサービス別の利用者比率をそれぞれ求め、これらサービス別の利用者比率を各事業単位別にグラフ表示するとともに、前記サービス別の各事業単位の比率の平均値を自保険者平均値としてグラフ表示する画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の地域包括ケア事業システム。
前記第1の要因分析部は、自保険者の複数の小地域に所属するに居住する利用者が、この利用者の居住する当該小地域、この当該小地域以外の他の各地域に存在する事業所のいずれを利用するか、前記利用者が居住する小地域別に、事業所が存在する前記各地域別の利用率をグラフ表示する画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の地域包括ケア事業システム。
前記第1の要因分析部は、自保険者の複数の小地域に存在する事業所を、この事業所が存在する当該小地域、自自治体内の他の小地域、及び自自治体外、の各地域の居住する利用者のいずれかが利用するか、事業所が存在する各地域別に、前記事業所を利用する利用者の居住地域別の利用率をグラフ表示する画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の地域包括ケア事業システム。
前記第2の要因分析部は、互いに交差するx軸とy軸により第1象限、第2象限、第3象限、第4象限の4つの領域に区分される座標平面を有し、前記x軸とy軸のいずれか一方を心身状態軽度者の心身状態の変化まで平均継続期間の数値軸とし、他方を心身状態重度者の心身状態の変化まで平均継続期間の数値軸とし、前記x軸とy軸の交点を自保険者地域における心身状態の変化まで平均継続期間の平均値の座標とした場合、前記複数の小地域の心身状態の変化まで平均継続期間の座標が、夫々どの象限に位置するかを表す画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の地域包括ケア事業システム。
前記第2の要因分析部は、互いに交差するx軸とy軸により第1象限、第2象限、第3象限、第4象限の4つの領域に区分される座標平面を有し、前記x軸とy軸のいずれか一方を心身状態軽度者の心身状態の変化まで平均継続期間の数値軸とし、他方を心身状態重度者の心身状態の変化まで平均継続期間の数値軸とし、前記x軸とy軸の交点を、複数の施設・居住系サービスのうち、特定の施設・居住系サービスを実施している自自治体における複数の事業所の心身状態の変化まで平均継続期間の平均値の座標とした場合、前記複数の事業所の心身状態の変化まで平均継続期間の座標が、夫々どの象限に位置するかを表す画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の地域包括ケア事業システム。
前記第2の要因分析部は、サービス種類別に、複数の事業単位の、複数の集約心身状態項目の心身状態変化までの平均継続時間を、前記複数の事業単位間で結んで前記複数の集約心身状態項目別の折れ線グラフとして表示する画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の地域包括ケア事業システム。
前記第2の要因分析部は、サービス種類別に、複数の詳細心身状態項目の心身状態変化までの平均継続時間を、複数の事業単位別にそれぞれ求め、前記複数の事業単位別の複数の集約心身状態項目の前記平均継続時間の値を、前記複数の詳細心身状態項目間で結んで複数の事業所別の折れ線グラフとして表示する画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の地域包括ケア事業システム。
前記第2の要因分析部は、サービス種類別に、複数の事業単位の、複数の集約心身状態項目の心身状態改善率を、前記複数の事業単位間で結んで前記複数の集約心身状態項目別の折れ線グラフとして表示する画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の地域包括ケア事業システム。
前記第2の要因分析部は、サービス種類別に、複数の詳細集約心身状態項目の心身状態の改善率を複数の事業単位別にそれぞれ求め、前記複数の事業単位別の複数の集約心身状態項目の前記改善率の値を、前記複数の詳細集約心身状態項目間で結んで複数の事業単位別の折れ線グラフとして表示する画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の地域包括ケア事業システム。
前記第2の要因分析部は、心身状態項目段階別の維持期間について、利用者個人がサービスを受ける事業単位が所属する上位機関の、前記心身状態項目段階別の全利用者の維持期間を短い方から並べて利用者全体をN等分し(N分位に分け)、第1N分値から第(N−1)N分位値までのN分位値により、利用者個人の心身状態項目段階別の維持期間が、Nグループのどれに属するかで利用者を個人評価し、この個人評価に基づき、この利用者がサービスを受ける前記事業単位のポイントを決定することを特徴とする請求項1に記載の地域包括ケア事業システム。
前記第2の要因分析部は、予め設定した期間中に心身状態の改善があった件数と悪化があった件数とを事業単位別に、心身状態項目の段階別に集計し、改善件数及び悪化件数に対する改善件数の割合を事業単位別の改善率として前記段階別に求め、前記段階から予め設定される軽度/重度別の改善率として集約することを特徴とする請求項1に記載の地域包括ケア事業システム。
前記第2の要因分析部は、複数の事業単位の質的分析を行うため、これら事業単位の改善率を二次元グラフの横軸又は縦軸のいずれか一方に、前記事業単位の悪化までの平均維持期間をいずれか他方に採り、前記複数の事業単位別にそれらの前記改善率及び前記悪化までの平均維持期間の数値に対応する前記横軸と縦軸の交点をプロットして散布図を作成し、このプロットされた前記交点の位置が、予め定められた領域に入る前記事業単位により、複数のグループを形成し、グループ別に分析することを特徴とする請求項1に記載の地域包括ケア事業システム。
前記第1の要因分析部は、複数の小地域のサービス需給分析を行うため、これら小地域のサービス利用率を二次元グラフの横軸又は縦軸のいずれか一方に、前記小地域のサービス提供率をいずれか他方に採り、前記複数の小地域別にそれらの前記サービス利用率及び前記サービス提供率の数値に対応する前記横軸と縦軸の交点をプロットして散布図を作成し、このプロットされた前記交点の位置が、予め定められた領域に入る前記小地域により、複数のグループを形成し、グループ別に分析することを特徴とする請求項1に記載の地域包括ケア事業システム。
前記小地域が複数階層で構成されている場合、前記複数階層についてそれぞれサービス需給分析を行い、これらの分析結果からサービス需給分析に最適な階層を特定可能としたことを特徴とする請求項19に記載の地域包括ケア事業システム。
前記第1の要因分析部は、複数の小地域の地域特性分析を行うため、これら小地域の総合事業サービスへの参加率を二次元グラフの横軸又は縦軸のいずれか一方に、前記小地域の新規認定率をいずれか他方に採り、前記複数の小地域別にそれらの前記参加率及び前記新規認定率の数値に対応する前記横軸と縦軸の交点をプロットして散布図を作成し、このプロットされた前記交点の位置が、予め定められた領域に入る前記小地域により、複数のグループを形成し、グループ別に分析することを特徴とする請求項1に記載の地域包括ケア事業システム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1は、この実施の形態における地域包括ケア事業システムの概略機能を示す図である。
図1において、自治体等の保険者が推進する高齢者福祉事業では、介護給付・予防給付事業(以下、介護事業と略称する)11、介護予防・日常生活支援事業を含む総合事業12、及び医療・介護連携推進事業(以下、医介連携と略称する)13の各事業を推進している。これら各事業は、地域包括ケア事業システム15により、A(地域課題の分析)、P(事業計画への反映)、D(計画の実行)、C(実績評価)から成るPDCAサイクルにしたがって実行される。
【0011】
なお、
図1では高齢者福祉事業の一つとして、認知症施策14が示されているが、認知症施策は上述した各事業11,12,13の何れにも含まれるものであり、地域包括ケア事業システム15は、上述した事業11,12,13を対象とするものとする。
【0012】
地域包括ケア事業システム15は、自治体などの保険者がデータベース16に独自に保有する各種データや、前述した国の「見える化」システム17から入手したデータを、量的分析及び質的分析し、各事業11,12,13について前述したPDCAサイクルを実現すべく支援する。この地域包括ケア事業システム15は、コンピュータシステムにより構築されており、上述した自治体などの保険者がデータベース16に独自に保有する各種データや、国の「見える化」システム17から入手したデータを、データドリブンすることにより、量的分析及び質的分析を伴う後述する各種機能を実現する。
【0013】
図2は、コンピュータシステムにより構築される地域包括ケア事業システム15の後述する各機能を実現する地域マネジメント支援機能部21、地域情報管理機能部22、及び高齢者情報管理機能部23と、データベース16のデータ構成とを示している。
【0014】
データベース16は、
図1で示した各種データを分野別に集約して示している。すなわち、データベース16は、住民住所データ及び地域特性データを含む高齢者基本データ160、要介護認定データ及び介護レセプトデータを含む介護保険データ161、高齢者特定健診データ及び医療レセプトデータを含む医療保険データ162、コミュニティ施設や介護予防施設及び生活支援サポータに関する地域施策データ163を有する。
【0015】
地域マネジメント支援機能部21は、前述した介護事業11、総合事業12、及び医介連携13の各事業について、医療・介護のデータから事業単位別(小地域別或いは事業所別など)に、高齢者情報やサービス利用状況についての量的分析レポート、及び心身状態項目の状態変化を表す質的レポートを作成し、出力する。
【0016】
すなわち、介護事業11については、量的分析として介護サービスの需給分析等を行い、質的分析としては心身状態の変化を表す改善率や悪化までの維持期間等を用いた分析を行い、それらの結果を出力する。
【0017】
また、総合事業12については、量的分析として地域予防施策需給分析等を行い、質的分析としては心身状態別平均自立期間等を用いた分析を行い、それらの結果を出力する。
【0018】
医介連携13については、量的分析として医療介護連携分析等を行い、質的分析としては入院前後心身状態、在宅滞在期間等を用いた分析を行い、それらの結果を出力する。
【0019】
地域情報管理機能部22は、事業単位の担当者(小地域担当や介護事業者)ごとに、サービスの量や質に係る活動評価結果、自身の履歴を個票形式で出力する。
【0020】
すなわち、介護事業11については、介護事業所(居宅系、施設系等)の心身状態別平均維持期間等を用いた分析を行い、それらの結果を出力する。
【0021】
また、総合事業12については、総合事業者(住民主導組織等)の疾病別心身状態別自立期間等を用いた分析を行い、それらの結果を出力する。
【0022】
医介連携13については、多職種チーム(居宅介護支援事業所等)の疾病別再入院率等を用いた分析を行い、それらの結果を出力する。
【0023】
高齢者情報管理機能部23は、高齢者の基本情報、心身状態利用サービス状況、及び医療状況を一元管理し、これらに関する過去の履歴などを提供する。これを参照することでケアプランの効果確認、及び次期プランの見直し方針検討を支援することが可能となる。
【0024】
すなわち、介護事業11については、要介護度、心身状態の維持期間、介護力、経済力等の分析を行い、それらの結果を出力する。
【0025】
また、総合事業12については、訪問介護・通所介護の利用状況、インフォーマルサービスの回数等について分析を行い、それらの結果を出力する。
【0026】
医介連携13については、在宅医療情報、入退院、疾病名、服用薬等についての分析を行い、それらの結果を出力する。
【0027】
これら地域マネジメント支援機能部21、地域情報管理機能部22、及び高齢者情報管理機能部23による各機能は、データベース16のデータ、及び国の「見える化」システム17(
図2では図示を省略)から入手したデータを、データドリブンすることにより実現する。
【0028】
ここで、データベース16の介護保険データ161を構成する要介護認定データと介護給付実績データとについてみると、要介護認定データは、2年に1回の周期で、その時点で更新認定された要介護度や障害自立度などを含む心身状態項目が、利用者個人単位で出力される。これに対し介護給付実績データは、毎月の請求に伴って月毎のデータとして要介護度や提供されたサービス種類、及びそれらの単位数が利用者個人単位で出力される。
【0029】
これらデータはその出力タイミングや出力項目が異なるため、個々に管理していると後の分析処理に対して使いにくいものとなる。そこで、これらデータを互いに突合して一体化しておく必要がある。以下、その突合方法を説明する。
【0030】
すなわち、自立支援・介護重度化防止に資するアウトカム指標(サービスの質を評価する指標)を集計するためには、心身情報である要介護認定データと、サービス利用情報である給付実績データとを、利用者個人単位で突合させる必要がある。要介護認定データと介護給付実績データは、
図3で示すように、被保険者番号をハッシュ変換したシステム管理番号と年月の情報を保持する。要介護認定データが保持している年月の情報は、認定期間(開始月から終了月までの期間データ)内の心身状態の情報であり、介護給付実績データはサービス提供月毎のサービス利用情報を保持する。
【0031】
そこで、月単位の集計・分析が実施できるように、要介護認定データの認定期間を月単位に分解した突合関係表を作成し、突合関係表にシステム管理番号とサービス提供年月が一致する介護給付実績データを突合する。
【0032】
図3は、要介護認定データ161aと介護給付実績データ161bとを結びつける突合関係表161cの例を示す。
図3では、認定有効期間が2015年4月から2016年3月である要介護2の利用者の要介護認定データ161aと、その間の各月で発生するサービス実績を有する介護給付実績データ161bとを、月単位で突合して、突合関係表161cを作成する例を示している。
【0033】
突合関係表161cでは、システム管理番号とサービス提供年月が一致し、要介護認定データ161aと介護給付実績データ161bとに個別にあった、要介護度や障害自立度などを含む心身状態項目と、提供されたサービス及びその単位数とが、月単位で一体化されており、前述した自立支援・介護重度化防止に資するアウトカム指標を、月単位で集計・分析することができる。
【0034】
なお、医療保険データ162の高齢者特定健診データと医療レセプトデータとの突合も同様の方法で可能である。
【0035】
次に、区分変更申請のある要介護認定データの突合方法を
図4により説明する。要介護認定データの区分変更申請により、認定期間途中に被保険者の要介護認定結果が変更になった場合、認定期間の重複した要介護認定データが存在する。重複した要介護認定データを月単位に分解すると、システム管理番号と年月の情報の一致するデータが複数存在した突合関係表が生成されることとなり、その後の取り扱いが困難になる。そこで、突合関係表の重複箇所を削除して変更後の要介護認定データに更新する。
【0036】
図4は、要介護2の認定期間途中に、要介護3へ区分変更申請が発生した場合の突合関係表更新の例を示す。
図4では、要介護2の認定期間途中の2015年7月中に要介護3へ区分変更申請が発生したことにより、
図4(a)で示す要介護2の更新申請の要介護認定データ161a1と、
図4(b)で示す要介護3の変更申請の要介護認定データ161a2とが生じる。このため、
図4(c)で示すように2015年7月から2016年3月まで重複する。これら要介護認定データ161a1,161a2を、
図3で説明したように要介護給付実績データと突合すると、
図4(d)で示すように重複した突合関係表161c1が生じる。そこで、区分変更後を優先するクリーニング処理を行うことで、
図4(e)で示す重複のない突合関係表161c2が作成される。
【0037】
次に、国の「見える化」システムから自治体等の地域包括ケア事業システム15へデータを取り込む場合を
図5により説明する。
【0038】
「見える化」システムのデータとしては、モデル自治体における介護保険資格データ(利用者の住所コード等を含む)、要介護認定データ及び介護給付実績データを対象とすることとする。これらのデータを匿名化するために、不可逆性を持つハッシュ関数を用いて被保険者番号を変換する。
【0039】
しかし、標準化されたハッシュ関数は公開されており、「10桁の数値」(被保険者番号)に対して網羅的な変換表を作成することで、変換前のデータ推測が可能となる。この推測を不可能にするために、被保険者番号にモデル自治体独自の非公開の値を加えハッシュ変換をし、変換表の作成を不可能にすることで、匿名性を担保する。さらに利用者の生年月日については生年月に変換し、月単位の給付実績データ等との紐付けのための必要最小限の情報としている。
【0040】
このようにして暗号化したデータを、例えば、携帯型のPC(パーソナルコンピュータ)に取込み、このPCを持ち帰って複合化し、この複合化したデータを対応するデータベースに格納する。
【0041】
このように、「見える化」システム17から、オフラインで自治体等の地域包括ケア事業システム15へ、任意のデータを自由に取り込む事ができる。
【0042】
なお、データの暗号化及びハードディスクの暗号化により、モデル自治体から外部の集計・分析環境にデータを移動する経路も含めて、情報漏えいのリスクを大幅に低減している。
【0043】
ここで、
図2で示した地域マネジメント支援機能部21、地域情報管理機能部22、及び高齢者情報管理機能部23による各機能を、前述したPDCAサイクルに対応させてみる。
【0044】
地域マネジメント支援機能部21は、後述するように、各種分析を行い、事業単位(小地域や事業所)の課題抽出を行い、問題解決の優先順位の見極め等を行うことからA(地域課題の分析)に対応する。また、取組内容と目標の設定、すなわち、小地域将来推計(量的計画)や費用対効果シミュレーション(質的計画)、「見える化システム」を使用した自自治体の将来推計を行うことからP(事業計画への反映)にも対応する。さらには、前述した各事業を実績評価し、その結果により事業者指導、小地域担当者指導、高齢者支援などを行うことからC(実績評価)にも対応する。
【0045】
地域情報管理機能部22におる機能は、実施中の事業について、小地域/事業者指導、指導対象課題分析、指導対象計画策定、指導対象計画実行、指導対象実績評価を行うものであるからD(計画の実行)に対応する。
【0046】
また、高齢者情報管理機能部23による各機能についても、個人情報検索(高齢者情報検索)、個人情報の確認(高齢者履歴情報表示)、個人情報一括出力(高齢者履歴情報一括出力)、地域ケア会議資料の一括出力を行うものであるから、やはりD(計画の実行)に対応する。
【0047】
このように、地域マネジメント支援機能部21による各機能はA,P,Cに対応し、地域情報管理機能部22、及び高齢者情報管理機能部23による各機能はDに対応することから、これら各機能部によりPDCAサイクルが実行される。
【0048】
地域マネジメント支援機能部21は、前述のように、介護事業11、総合事業12、及び医介連携13の各事業について、医療・介護のデータから事業単位別(小地域別或いは事業所別など)に、高齢者情報やサービス利用状況についての量的分析レポート、及び心身状態項目の状態変化を表す質的レポートを作成するものであり、
図6で示すように、位置付け把握部51、第1の要因分析部52、及び第2の要因分析部53を有する。
【0049】
位置付け把握部51は、保険者を自治体とした場合、「見える化」システムのデータを用いて、自自治体と自自治体以外、例えば、全国平均、或いは他自治体グループ平均との対応するデータを比較し、自自治体の位置づけを明確化して要検討の指標を見出すものである。
【0050】
第1の要因分析部52は、小地域又は事業所などの事業単位別に、かつ心身状態別に、サービス受給率を含む量的問題を分析し、その分析結果に基づく問題解決策を見極め可能とするものである。
【0051】
第2の要因分析部53は、小地域又は事業所などの事業単位別に、かつ心身状態別に、心身状態の変化に関する質的問題を分析し、その分析結果に基づく問題解決策を見極め可能とするものである。
【0052】
位置付け把握部51は、前述のように保険者を自治体(ここでは市とする)とした場合、「見える化」システムのデータから、例えば、
図7で示すように、介護事業における受給者1人当たり給付月額(在宅/施設・居住系)を、自市と、自市以外の、全国平均、及び他市等とを比較した画像を生成し、自市の位置づけを明確化して要検討の指標を見出している。
【0053】
図7では、互いに交差するx軸とy軸により第1象限、第2象限、第3象限、第4象限の4つの領域に区分される座標平面を用いている。このx軸とy軸のいずれか一方(ここではy軸とする)を在宅サービス受給者1人当たり給付月額の数値軸とし、他方(ここではx軸とする)を施設・居住系サービス受給者1人当たり給付月額の数値軸としている。そして、x軸とy軸の交点(中心)を全国平均の受給者1人当たり給付月額の座標70とした場合、自市の、受給者1人当たり給付月額の座標72と、所属都道府県平均の受給者1人当たり給付月額の座標73とが、それぞれどの象限に位置するかを画像で示している。
【0054】
図7によれば、自市の座標71は第1象限に位置し、中心に位置する全国平均の座標70、第2象限に位置する比較対象他市グループの座標72、第3象限に位置する所属都道府県平均の座標73と比べると平均受給者1人当たりの給付月額が、在宅サービス(x軸)、施設・居住系サービス(y軸)の双方において高い値であることが判明する。このため、目指すべき目標値が明確になる。
【0055】
例えば、目標値を、全国平均の座標70又は第3象限に位置する所属都道府県平均の座標73とした場合、在宅サービス(x軸)、施設・居住系サービス(y軸)の双方における受給者1人当たり給付月額を低減させる施策を採らなければない。また、第2象限に位置する比較対象他市グループの座標72を目標値とした場合は、在宅サービス(x軸)受給者1人当たり給付月額を低減させる施策を採らなければない等、目標とする値、及びそれを達成するための施策を見出すことができる。
【0056】
図8で示す実施例は、位置付け把握部51が、介護事業における受給者1人当たり給付月額(在宅/施設・居住系)を、自市と、自市以外の、全国平均とを比較した画像(レーダチャート)を生成し、自市の位置づけを明確化して要検討の指標を見出している。
【0057】
すなわち、
図8では、放射状に延びる複数の数値軸を有し、自市、及び比較対象の全国平均について、互いに異なる複数種の施設・居住系サービスにおけるそれぞれの受給者1人当たり給付月額を、前記複数種の施設・居住系サービス別に前記複数の数値軸別に割り付けている。互いに異なる複数種の施設・居住系サービスとは、
図8の例では、「特養」「老健」「療養病床」「特定施設」「グループホーム」「小規模多機能」であり、それらにおける受給者1人当たり給付月額の値を、対応する数値軸の中心点からの長さに設定する。そして、これら設定された長さの先端を、自市、及び比較対象の全国平均別に結んで形成される多角形のグラフを形成し、レーダチャートの画像を生成する
【0058】
図8によれば、各施設・居住系サービスにおける受給者1人当たり給付月額の値は、グループホーム以外では、全国平均に比べそれほど大きな違いはないが、グループホームについては、全国平均に比べ突出して高額であることがわかる。したがって、目指すべき値を全国平均とすれば、特に、グループホームについて受給者1人当たり給付月額を低減させる施策採る必要があることが判明する。
【0059】
次に、量的問題分析を行う第1の要因分析部52の機能を説明する。第1の要因分析部52は、介護事業11、総合事業12、医介連携13について、量的分析を行うものであるが、先ず、介護事業11での量的分析に行う実施例を説明する。
【0060】
量的分析では、前述のように、小地域又は事業所等の事業単位別に、かつ心身状態別に、サービス受給率を含む量的問題を分析し、その分析結果に基づく問題解決策を見極め可能とするものであり、以下、そのための各種実施例を説明する。
【0061】
図9は、第1の要因分析部52による要因分析により作成された画像を示している。この実施例では、保険者を自治体(ここでは市とする)とし、介護事業の在宅サービスにおける受給者1人当たり給付月額を、自市平均と、事業単位である在宅サービスを実施している自市内の複数の小地域(小地域1〜小地域8)とを比較している。すなわち、各小地域1〜8の、自市平均値に対する給付額差を求め、これらの関係を示す画像を生成し、自市の各小地域1〜8の位置づけを明確化して要検討の指標を見出している。
【0062】
図9では、互いに交差するx軸とy軸により第1象限、第2象限、第3象限、第4象限の4つの領域に区分される座標平面を用いる。このx軸とy軸のいずれか一方(ここではy軸とする)を心身状態軽度者(例えば、要介護度2以下とする)の受給者1人当たりの給付月額の数値軸とする。また、他方(ここではx軸とする)を心身状態重度者(例えば、要介護度3以上とする)の受給者1人当たり給付月額の数値軸とする。
【0063】
そして、x軸とy軸の交点(中心)を自市平均の受給者1人当たり給付月額の座標90とした場合、在宅サービスを実施している複数の小地域1〜7の、各受給者1人当たり給付月額の座標91〜98を数値に対応した象限に配置することにより、これら座標91〜98が、どの象限に位置するかで、自市平均値に対する給付額差が明らかとなる。
【0064】
図9によると、小地域1の座標91と小地域7の座標97が第1象限に位置しており、要介護度軽度者と重度者ともに、自市平均より1人当たり給付月額が高いことが明らかとなる。このように、小地域毎の、要介護度の重度者と軽度者別の給付額差が明確になる。したがって、この分析結果に基づく施策を採ることが可能となる。
【0065】
図10の実施例は、保険者を自治体(ここでは市とする)とし、介護事業の施設・居住系サービス(ここではグループホームとする)における受給者1人当たり給付月額を、自市平均と、事業単位であるグループホーム(以下、GHと略称する)を実施している自市内の複数の事業所(事業所1〜事業所8)とで比較している。すなわち、各事業所1〜8の、自市平均値に対する給付額差を求め、これらの関係を示す画像を生成し、自市の事業所1〜8の位置づけを明確化して要検討の指標を見出している。
【0066】
図10では、互いに交差するx軸とy軸により第1象限、第2象限、第3象限、第4象限の4つの領域に区分される座標平面を用いる。このx軸とy軸のいずれか一方(ここではy軸とする)を心身状態軽度者(例えば、認知症自立度II以下とする)の受給者1人当たりの給付月額の数値軸とする。また、他方(ここではx軸とする)を心身状態重度者(例えば、認知症自立度III以上とする)の受給者1人当たり給付月額の数値軸とする。
【0067】
そして、x軸とy軸の交点(中心)を自市GH平均の受給者1人当たり給付月額の座標100とした場合、在宅サービスを実施している複数の事業所1〜8の、各受給者1人当たり給付月額の座標101〜108を、数値に対応する象限に配置する。このことにより、これら座標101〜108が、どの象限に位置するかで、自市GH平均値に対する給付額差が明らかとなる。
【0068】
図10によると、事業所2の座標102と事業所6の座標106が第1象限に位置しており、認知症自立度の軽度者及び重度者ともに、自市GH平均より1人当たり給付月額が高いことが明らかとなる。このように、事業所毎の、認知症自立度の重度者及び軽度者別の給付額差が明確になる。したがって、この分析結果に基づく施策を採ることが可能となる。
【0069】
上記実施例は分析する量を受給者1人当たり給付月額としたが、このデータは、
図2で示した介護保険データ162に蓄積されているデータを用いる。また、この受給者1人当たり給付月額以外についても後述するように各種の量について分析することができる。
【0070】
図11の実施例は、介護事業における、心身状態別 × 小地域別 × サービス種類別 × 利用者比率を分析した結果を(a)の帯グラフ、及び(b)の表で表している。なお、上記×印は乗算を表すのではなく、組合せを意味している(以下、同じ)。
【0071】
この実施例では、心身状態別に(ここでは認知症自立度IIIa以上を対象としている)、自自治体の複数の小地域で夫々行われている在宅系サービス11a、グループホームサービス11b、グループホーム以外の他施設・居住系サービス11cについて、これらサービス別の利用者比率を、各小地域別にグラフ表示する。また、前記サービス別の各小地域の利用者比率の平均値を自自治体平均値としてグラフ表示しており、
図6で示した第1の要因分析部52は上述したグラフの画像を生成する。
【0072】
このように、この実施例の目的は、心身状態別に各サービスの利用者数を集計し、各小地域におけるサービス利用者比率を可視化することにある。
【0073】
そのために、各小地域内で心身状態別にサービス種類(在宅サービス、グループホーム、他施設・居住系サービス)の利用者比率を集計し、帯グラフにする。
【0074】
その結果、認知症自立度がIIIa以上の高齢者に限定した場合の、小地域1から小地域4の中における比較として、小地域1と小地域3はグループホームの利用率が低く、小地域2と小地域4はグループホームの利用率が高いことがわかる。
【0075】
小地域1と小地域3のグループホームの利用率が低い理由として以下が考えられる。
・グループホームのサービスを提供する事業所が少ない。
・.該当地区は家族介護志向が強い。
・.該当地区はサービスを受ける経済的ゆとりがない世帯が多い。
【0076】
これらの理由を受けて、小地域1と小地域3のグループホームのサービス提供量を確認し、サービス問題点を把握して今後の施策に活かすことができる。
【0077】
図12で示す実施例は、介護事業における、サービス種類別 × 利用者居住地域別 ×事業所所在地域別 × 利用者比率をグラフ表示している。すなわち、
図13で示すように、市内のある小地域に居住するサービス利用者が、どの地域に存在する事業所を利用しているかを捉えるものである。
【0078】
この実施例では、目的として、サービス種類別に(ここでは通所介護サービスとする)、サービス提供をしている事業所所在地域別の利用者数を集計し、利用者住居地域別のサービス利用者比率を可視化している。
【0079】
そのために、
図12で示すように、各小地域内のサービス利用者に対し、当該小地域の 所在事業所12a、他小地域(市内等)の所在事業所12b、市外の所在事業所12cの利用者数を集計して利用者比率を求め、(a)の帯グラフ、及び(b)の表にまとめる。
【0080】
その結果、通所介護のサービス利用者は、小地域1から小地域4の中における比較として、小地域1は当該小地域にある事業所の利用が多く、小地域2は当該小地域にある事業所の利用が少ないことがわかる。その理由として、小地域1の通所介護サービス利用者が当該小地域にある事業所のサービス利用率が高いのは、当該小地域のサービス提供量が十分足りていると考えられる。これに対し、小地域2の通所介護サービス利用者が当該小地域にある事業所のサービス利用率が低いのは、当該小地域のサービス提供量が足りていないと考えられる。
【0081】
今後の対応として、小地域1に所在している通所介護サービス事業所の利用者居住地域別利用者比率を調べ、当該小地域の利用者比率が低い場合、サービスの供給量過多となっていることが考えられるため、事業所をこれ以上増やさない等の施策を検討できる。
【0082】
これに対し、小地域2に所在している通所介護サービス事業所の利用者居住地域別利用者比率を調べ、当該小地域の利用者比率が高い場合、サービス供給量が足りていないことが考えられるため、事業所数を増やす等の施策を検討できる。
【0083】
図14で示す実施例は、介護事業における、サービス種類別 × 事業所所在地域別 × 利用者居住地域別 × 利用者比率をグラフ表示している。すなわち、
図15で示すように、市外を含む複数の小地域に居住するサービス利用者が、市内のどの小地域に存在する事業所を、どの程度利用しているかを捉えるものである。
【0084】
この実施例では、目的として、サービス種類別に(ここでは通所介護サービスとする)、サービス提供をしているサービス利用者居住地域の利用者数を集計し、事業所所在別のサービス利用者比率可視化している。
【0085】
そのために、
図14で示すように、各小地域内のサービス利用者に対し、当該小地域居住の利用者14a、他小地域(市内等)の居住の利用者14b、市外居住の利用者14cを集計して利用者比率を求め、(a)の帯グラフ、及び(b)の表にまとめる。
【0086】
その結果、通所介護のサービス利用者は、小地域1から小地域4の中における比較として、小地域1の事業所は当該小地域に居住している利用者の比率が低く、小地域2の事業所は当該小地域に居住している利用者の比率が高いことがわかる。その理由として、小地域1の事業所が当該小地域に居住している利用者比率が低いのは、当該小地域のサービス需要が少ないと考えられる。これに対し、小地域2の事業所が当該小地域に居住している利用者比率が高いのは、当該小地域のサービス需要が多いと考えられる。
【0087】
今後の対応として、小地域1に住居している通所介護サービス利用者の事業所所在別利用者比率を調べ、当該小地域の利用者比率が高い場合、サービスの供給量過多となっていることが考えられるため、事業所をこれ以上増やさない等の施策を検討する。
【0088】
これに対し、小地域2に居住している通所介護サービス利用者の事業所所在別利用者比率を調べ、当該小地域の利用者比率が低い場合、サービス供給量が足りていないことが考えられるため、事業所数を増やす等の施策を検討する。
【0089】
これまでの説明は、
図6で示した地域マネジメント支援機能部21の第1の要因分析部52による、介護事業11での量的分析に関する実施例の説明であったが、次に、同じ第1の要因分析部52による、介護予防、日常生活支援を含む総合事業12での量的分析に関する実施例を説明する。
【0090】
図16の実施例は、その目的が、総合事業12において、各小地域の総合事業等サービスの利用率を可視化し、自治体平均値と比較することで、各小地域における施策実施状況を把握することにある。
図16では、総合事業12における、例えば、高齢者性別・年齢階層別 × 小地域別 × 総合事業等サービス別 × 利用率等を分析した結果を(a)折れ線グラフ、及び(b)の表で示している。
【0091】
ここでは、総合事業12における施策例として、各小地域の健康診断受診率16a 、元気づくりステーション参加率16b、見守りサービスの利用率16c、配食サービスの利用率16dを集計し、折れ線グラフにする。各利用率等は、小地域内の性別年齢階層別の高齢者数を使用して算出する。
【0092】
図16の例では、女性、後期高齢者を対象としており、元気づくりステーション16bの参加率として、小地域1は自治体平均より高く、小地域4は自治体平均より低いことが示されている。
【0093】
小地域4での元気づくりステーションの参加率16bが低い理由として以下が考えられる。
・.施策の地域サービスを供給する場所が少ない。
・.該当地区はサービスが周知されていない。
・.該当地区はサービスを受ける時間的ゆとりがない世帯多い。
・.該当地区は元気づくりステーション以外の他サービス種類へ流れる。
【0094】
これらの理由から、今後の対応として、小地域1における元気づくりステーションの参加状況を確認し、施策をベストプラクティスとして、他の地域に紹介する。また、小地域4等の地域サービス利用者の状況を確認し、問題点を把握して施策に生かすこと、等を活動目標として設定することができる。
【0095】
図17で示す実施例は、総合事業における、高齢者性別・年齢階層別 × 利用者居住地域別 × 総合事業サービス所在地域別 × 利用者比率をグラフ表示している。すなわち、
図13で説明したように、市内のある小地域に居住するサービス利用者(対象は女性の後期高齢者とする)が、どの地域に存在する事業所(総合サービス事業)を利用しているかを捉えるものである。
【0096】
この実施例では、目的として、総合事業サービス所在地域の利用者数を集計し、利用者住居地域別のサービス利用者比率を可視化することにある。
【0097】
そのために、
図17で示すように、各小地域内のサービス利用者に対し、当該小地域の 所在事業所17a、他小地域(市内等)の所在事業所17b、市外の所在事業所17cの利用者数を集計し、利用者比率を求め、(a)の帯グラフ、及び(b)の表にまとめる。
【0098】
その結果、総合事業サービス利用者は、小地域1から小地域4の中における比較として、小地域1は当該小地域にある事業所の利用が多く、小地域2は当該小地域にある事業所の利用が少ないことがわかる。その理由として、小地域1の総合事業サービス利用者が当該小地域にある総合事業サービス所在地域の利用率が高いのは、当該小地域のサービス提供量が十分足りていると考えられる。これに対し、小地域2の総合事業サービス利用者が当該小地域にある総合事業サービス所在地域の利用率が低いのは、当該小地域のサービス提供量が足りていないと考えられる。
【0099】
今後の対応として、小地域1に所在している総合事業サービス事業所の利用者居住地域別利用者比率を調べ、当該小地域の利用者比率が低い場合、サービスの供給量過多となっていることが考えられるため、事業所をこれ以上増やさない等の施策を検討できる。これに対し、小地域2に所在している総合事業サービス事業所の利用者居住地域別利用者比率を調べ、当該小地域の利用者比率が高い場合、サービス供給量が足りていないことが考えられるため、事業所数を増やす等の施策を検討できる。
【0100】
図18で示す実施例は、総合事業における、高齢者性別・年齢階層別 × 総合事業サービス所在地域別 × 利用者居住地域別 × 利用者比率をグラフ表示している。すなわち、
図15で説明したように、市外を含む複数の小地域に居住する総合事業サービス利用者(対象は女性の後期高齢者とする)が、どの小地域に存在する総合事業サービスの事業所を、どの程度利用しているかを捉えるものである。
【0101】
この実施例では、目的として、総合事業のサービス種類別にサービス利用者居住地域の利用者数を集計し、事業所所在別のサービス利用者比率を可視化することにある。
【0102】
そのために、
図18で示すように、各小地域内のサービス利用者に対し、当該小地域居住の利用者18a、他小地域(市内等)居住の利用者18b、及び市外居住の利用者18cを集計し、利用者比率を求め、(a)の帯グラフ、及び(b)の表にまとめる。
【0103】
その結果、
図18の例では、総合事業サービス利用者は、小地域1から小地域4の中における比較として、小地域1の事業所は当該小地域に居住している利用者の比率が低く、小地域2の事業所は当該小地域に居住している利用者の比率が高いことがわかる。その理由として、小地域1の事業所が当該小地域に居住している利用者比率が低いのは、当該小地域のサービス需要が少ないと考えられる。これに対し、小地域2の事業所が当該小地域に居住している利用者比率が高いのは、当該小地域のサービス需要が多いと考えられる。
【0104】
今後の対応として、小地域1に居住している総合事業サービス利用者の事業所所在別利用者比率を調べ、当該小地域の利用者比率が高い場合、サービスの供給量過多となっていることが考えられるため、事業所をこれ以上増やさない等の施策を検討できる。これに対し、小地域2に居住している総合事業サービス利用者の事業所所在別利用者比率を調べ、当該小地域の利用者比率が低い場合、サービス供給量が足りていないことが考えられるため、事業所数を増やす等の施策を検討できる。
【0105】
次に、第1の要因分析部52による、医介連携13での量的分析に関する実施例を説明する。
【0106】
図19の実施例は、その目的が、医介連携13において、疾病分類別または要介護度別に各小地域における在宅医療サービスの利用者を集計し、小地域別に利用者比率を可視化することにある。
図19では、医介連携13における、例えば、疾病分類別・要介護度別 × 小地域別 × 在宅医療サービス別 × 利用者比率を分析した結果を(a)折れ線グラフ、及び(b)の表で示している。
【0107】
ここでは、脳卒中を患っている高齢者の在宅医療サービス例として、訪問診療19a、訪問看護19b、訪問往診19c、その他19dの利用者数を集計し、利用者比率を折れ線グラフにしている。
【0108】
図19の例では、脳卒中を患っている高齢者を対象としており、小地域1から小地域4の中における比較として、訪問診療19aのサービス利用率が小地域2では高く、小地域1では低いことがわかる。また、訪問往診19bのサービス利用率は訪問看護19cの利用率に比例しているが、小地域2だけ訪問往診19c等のサービス利用率が低いことがわかる。
【0109】
このように、小地域2で訪問診療サービスの利用率が高く、訪問往診サービスの利用率は低いことから、小地域2では在宅医療サービスが行き届き、在宅医療サービスの供給も足りていると考えられる。このことから、小地域2の在宅医療利用者をヒアリングし、ベストプラクティスとして広く情報を展開することが推奨される。
【0110】
図20で示す実施例は、医介連携における、在宅医療サービス別 × 利用者居住地域別 × 在宅医療機関所在地域別 × 利用者比率をグラフ表示している。すなわち、
図21で示すように、市内のある小地域に在宅医療サービス利用者(対象は女性の後期高齢者とする)が、市外を含むどの小地域に存在する事業所(在宅医療機関)を利用するかを捉えるものである。
【0111】
この実施例では、目的として、在宅医療機関の利用者数を集計し、利用者住居地域別のサービス利用者比率を可視化することにある。
【0112】
そのために、
図20で示すように、各小地域内のサービス利用者に対し、当該小地域20aの 所在事業所、他小地域(市内等)20bの所在事業所、市外20cの所在事業所の利用者数を集計し、利用者比率を求め、(a)の帯グラフ、及び(b)の表にまとめる。
【0113】
その結果、
図20の例では、小地域1から小地域4の中における比較として、小地域1の利用者は当該小地域にある在宅医療サービスの利用が多く、小地域2の利用者は当該小地域にある在宅医療サービスの利用が少ないことがわかる。その理由として、小地域1の在宅医療サービス利用者が当該小地域にある在宅医療機関所在地域の利用率が高いのは、当該小地域のサービス提供量が十分足りていると考えられる。これに対し、小地域2の在宅医療サービス利用者が当該小地域にある在宅医療機関所在地域の利用率が低いのは、当該小地域のサービス提供量が足りていないと考えられる。
【0114】
今後の対応として、小地域2に所在している在宅医療サービス事業所の利用者居住地域別利用者比率を調べ、当該小地域の利用者比率が高い場合、サービス供給量が足りていないことが考えられるため、在宅医療機関を増やす等の施策を検討することができる。
【0115】
図22で示す実施例は、医介連携における在宅医療サービス別 × 在宅医療機関所在地域別 × 利用者居住地域別 × 利用者比率をグラフ表示している。すなわち、
図23で示すように、市外を含む複数の小地域に居住する在宅医療サービス利用者(対象は女性の後期高齢者とする)が、市内のどの小地域に存在する在宅医療サービスの事業所(在宅医療機関)を、どの程度利用しているかを捉えるものである。
【0116】
この実施例では、目的として、在宅医療サービス種類別にサービス利用者居住地域の利用者数を集計し、在宅医療機関所在地域別のサービス利用者比率を可視化する。
【0117】
そのために、
図22で示すように、各小地域内のサービス利用者に対し、当該小地域居住の利用者22a、他小地域(市内等)居住の利用者22b、及び市外居住の利用者22cを集計し、利用者比率を求め、(a)の帯グラフ、及び(b)の表にまとめる。
【0118】
その結果、
図22の例では、在宅医療サービス利用者は、小地域1から小地域4の中における比較として、小地域1の事業所は当該小地域に居住している利用者の比率が低く、小地域2の事業所は当該小地域に居住している利用者の比率が高いことがわかる。ここで、小地域1の事業所が当該小地域に居住している利用者比率が低いのは、当該小地域のサービス需要が少ないと考えられる。これに対し、小地域2の事業所が当該小地域に居住している利用者比率が高いのは、当該小地域のサービス需要が多いと考えられる。
【0119】
このように、小地域2に居住している在宅医療サービス利用者の事業所所在別利用者比率を調べ、当該小地域の利用者比率が低い場合、サービス供給量が足りていないことが考えられるため、在宅医療機関を増やす等の施策を検討することができる。
【0120】
次に、
図2及び
図6で示した地域マネジメント支援機能部21において、介護事業11、総合事業12、医介連携13のそれぞれについて、質的問題分析を行う第2の要因分析部53の機能を説明する。第2の要因分析部53は、前述のように、小地域又は事業所等の事業単位別に、かつ心身状態別に、心身状態の変化に関する質的問題を分析し、その分析結果に基づく問題解決策を見極め可能とするものである。
【0121】
ここで、介護事業11において、質的分析を行う際の重要な指標として、心身状態の変化(悪化又は改善)までの維持期間が用いられる。この維持期間について
図24により説明する。
【0122】
心身状態は、その程度に段階が定められており、段階が上昇することを心身状態が悪化したと言い、段階が下がることを心身状態が改善したという。
図24では、心身状態として要介護度を用いており、その変化(悪化又は改善)する状態を4つのパターンに分けて示している。
【0123】
パターン1は、要介護3から要介護4に悪化するまでの維持期間が、悪化までの平均維持期間より短い、すなわち、悪化が早い場合を示している。
【0124】
パターン2は、要介護3から要介護4に悪化するまでの維持期間が、悪化までの平均維持期間より長い、すなわち、悪化が遅い場合を示している。
【0125】
パターン3は、要介護3から要介護2に改善するまでの維持期間が、改善までの平均維持期間より短い、すなわち、改善が早い場合を示している。
【0126】
パターン4は、要介護3から要介護2に改善するまでの維持期間が、改善までの平均維持期間より長い、すなわち、改善が遅い場合を示している。
【0127】
これらの維持期間は、上述した要介護度の段階変化のみに適用されるものではなく、認知症自立度をはじめ、各種の心身状態の変化にも適用される。また、上述した変化までの維持期間は、
図2で示した介護保険データ161の突合関係表161cを用いれば容易に算出することができる。以下、介護事業11についての質的分析を行う各実施例を説明する。
【0128】
図25の実施例では、第2の要因分析部53は、保険者を自治体(ここでは市とする)とし、介護事業の在宅サービスにおける心身状態別 悪化までの平均維持期間を、自市平均と、事業単位である在宅サービスを実施している自市内の複数の小地域(小地域1〜小地域8)とを比較している。すなわち、各小地域1〜8の、自市平均値に対する悪化までの平均維持期間の差を求め、これらの関係を示す画像を生成し、自市の各小地域1〜8の位置づけを明確化して要検討の指標を見出している。
【0129】
図25では、互いに交差するx軸とy軸により第1象限、第2象限、第3象限、第4象限の4つの領域に区分される座標平面を用いる。このx軸とy軸のいずれか一方(ここではy軸とする)を、心身状態軽度者(例えば、要介護度2以下とする)の悪化までの平均維持期間の数値軸とする。また、他方(ここではx軸とする)を、心身状態重度者(例えば、要介護度3以上とする)の悪化までの平均維持期間の数値軸とする。
【0130】
そして、x軸とy軸の交点(中心)を自市平均の悪化までの平均維持期間の座標250とした場合、在宅サービスを実施している複数の小地域1〜8の、各悪化までの平均維持期間の座標251〜258を、数値に対応した象限に配置する。このことにより、これら座標251〜258が、どの象限に位置するかで、自市平均値に対する悪化までの平均維持期間の差が明らかとなる。
【0131】
図25によると、小地域3の座標253と小地域5の座標255が第1象限に位置しており、要介護度軽度者と重度者ともに、自市平均より悪化までの平均維持期間が長い(質的に好ましい)ことが明らかとなる。これに対し、小地域1の座標251と小地域7の座標257が第3象限に位置しており、要介護度軽度者と重度者ともに、自市平均より悪化までの平均維持期間が短い(質的に好ましくない)ことが明らかとなる。
【0132】
このように、小地域毎の、要介護度の重度者と軽度者別の悪化までの平均維持期間の差が明確になるので、この分析結果に基づく施策を採ることが可能となる。
【0133】
図26の実施例は、保険者を自治体(ここでは市とする)とし、介護事業の施設・居住系サービス(ここではグルプホームとする)における悪化までの平均維持期間を、自市平均と、事業単位であるグループホーム(以下、GHと略称することがある)を実施している自市内の複数の事業所(事業所1〜事業所8)とで比較している。すなわち、各事業所1〜8の、自市平均値に対する悪化までの平均維持期間の差を求め、これらの関係を示す画像を生成し、自市の事業所1〜8の位置づけを明確化して要検討の指標を見出している。
【0134】
図26では、互いに交差するx軸とy軸により第1象限、第2象限、第3象限、第4象限の4つの領域に区分される座標平面を用いる。このx軸とy軸のいずれか一方(ここではy軸とする)を心身状態軽度者(例えば、認知症自立度II以下とする)の悪化までの平均維持期間の数値軸とする。また、他方(ここではx軸とする)を心身状態重度者(例えば、認知症自立度III以上とする)の悪化までの平均維持期間の数値軸とする。
【0135】
そして、x軸とy軸の交点(中心)を自市GH平均の悪化までの平均維持期間の座標260とした場合、GHサービスを実施している複数の事業所1〜8の、各GHの座標261〜268を、数値に対応する象限に配置する。このことにより、これら座標261〜268が、どの象限に位置するかで、自市GH平均値に対する悪化までの平均維持期間の差が明らかとなる。
【0136】
図26によると、事業所3の座標263と小地域7の座標267が第1象限に位置しており、認知症自立度の軽度者及び重度者ともに、自市GH平均より悪化までの平均維持期間が長いこと(質的に好ましい)が明らかとなる。これに対し、小地域2の座標252と小地域6の座標256が第3象限に位置しており、認知症自立度の軽度者及び重度者ともに、自市平均より悪化までの平均維持期間が短い(質的に好ましくない)ことが明らかとなる。
【0137】
このように、小地域毎の、認知症自立度の重度者と軽度者別の悪化までの平均維持期間の差が明確になるので、この分析結果に基づく施策を採ることが可能となる。
【0138】
図27の実施例は、その目的が、介護事業11において、各事業所における集約した各心身状態の維持期間の平均値を可視化し、各事業所における利用者の心身状態が悪化する速さを可視化することにある。すなわち、
図27では、介護事業11における、例えば、サービス種類別 × 事業所別 × 集約心身状態項目別 × 悪化までの平均維持期間(事業計画単位)を分析した結果を(a)折れ線グラフ、及び(b)の表で示している。
【0139】
ここでは、事業所は各GHとし、集約心身状態項目は、要介護度27a、認知症自立度27b、障害自立度27c、身体機能・起居動作(1群:身体機能・起居動作から選定した項目、ただし、介護サービスにより心身状態の改善・維持に繋がらないと想定される麻痺・拘縮、視力・聴力の項目を除く)27d、生活機能(2群:生活機能から選定した項目)27e、認知機能・社会生活適応(3群:認知機能、5群:社会生活適応から選定した項目)27f、精神・行動障害(4群:精神・行動障害から選定した項目)27g、の7項目とし、各事業所におけるこれら心身状態項目の維持期間の平均値を集計し、折れ線グラフにしている。
【0140】
図27の例では、グループホームの事業所1から事業所6の中における比較として、事業所4と事業所6は、精神・行動障害27gと認知機能・社会生活適応27fを含めた平均維持期間が全体的に長く、事業所2と事業所5の身体機能・起居動作27dと生活機能の平均維持期間27eを含めた平均維持期間が全体的に短いことがわかる。
【0141】
これらのことから、事業所4と事業所6は、介護サービスの質が高く、事業所2と事業所5の介護サービスが低いと考えられる。そこで、今後のアクションとして、事業所4と事業所6をヒアリングし、良い点をベストプラクティスとして、他の事業所に紹介する。また、事業所2と事業所5をヒアリングし、それぞれの問題点を把握して、指導する。
【0142】
図28の実施例は、介護事業11における、各事業所(GHとする)における心身状態(詳細項目:以下、詳細心身状態項目と呼ぶ))の維持期間の平均値を集計し、各事業所における利用者の心身状態が悪化する速さを可視化する。すなわち、サービス種類別 × 詳細心身状態項目別 × 事業所別 × 悪化までの平均維持期間(事業計画単位)を分析し、折れ線グラフで表示している。
【0143】
詳細心身状態項目としては、要介護度、認知症自立度、障害自立度と認定調査項目62項目との合計65項目とし、各事業所における心身状態項目の維持期間の平均値を集計し、折れ線グラフにする。
【0144】
ここで、上述した詳細認定調査項目と、分野別にまとめた集約心身状態項目との関係を以下に示す。
【0145】
身体機能・起居動作:1群から選定した項目
生活機能 :2群から選定した項目
認知機能 :3群から選定した項目
精神・行動障害 :4群から選定した項目
社会生活適応 :5群から選定した項目
上記から除いた項目:介護サービスにより心身状態の改善・維持に繋がらないと想定される麻痺・拘縮、視力・聴力の項目
【0146】
図28の例では、全事業所平均(折れ線28d)と比較して、事業所1(折れ線28a)は、全体的に平均維持期間は長く、事業所2(折れ線28b)は身体系(身体機能・起居動作、生活機能)の平均維持期間が短く、事業所3(折れ線28c)は精神系(認知機能、精神・行動障害、社会生活適応)の平均維持期間が短いことがわかる。
【0147】
これらのことから、事業所1の介護サービスの質は高く、事業所2の身体系の介護サービスの質は低く、事業所3の精神系の介護サービスの質は低いと考えられる。このため、今後のアクションとして、身体系は事業所1と事業所3をヒアリングし、精神系は事業所1と事業所2をヒアリングし、それぞれの良い点をベストプラクティスとして、他の事業所に紹介することが推奨される。また、問題点については、身体系は事業所2をヒアリングし、精神系は事業所3をヒアリングし、それぞれの問題点を把握して指導する。
【0148】
図29の実施例は、その目的が、介護事業11において、各事業所における集約した各心身状態の改善率を可視化する。すなわち、
図29では、介護事業11における、例えば、サービス種類別 × 事業所別 × 集約心身状態項目別 × 改善率(事業計画単位)を分析した結果を(a)の折れ線グラフ、及び(b)の表で示している。
【0149】
なお、事業所の改善率は、当該事業所の利用者のうち、
図24で説明した改善が生じた利用者の割合を指す。
【0150】
図29は、サービス種類をGHとし、集約心身状態項目は、要介護度29a、認知症自立度29b、障害自立度29c、身体機能・起居動作(1群:身体機能・起居動作から選定した項目、ただし、介護サービスにより心身状態の改善・維持に繋がらないと想定される麻痺・拘縮、視力・聴力の項目を除く)29d、生活機能(2群:生活機能から選定した項目)29e、認知機能・社会生活適応(3群:認知機能、5群:社会生活適応から選定した項目)29f、精神・行動障害(4群:精神・行動障害から選定した項目)29g、の7項目とし、各事業所(GH)におけるこれら心身状態項目の改善率を集計し、折れ線グラフにしている。
【0151】
図29の例では、グループホームの事業所1から事業所6の中における比較として、事業所4と事業所6は、精神・行動障害27gと認知機能・社会生活適応27fを含めた改善率が全体的に高く、事業所2と事業所5の身体機能・起居動作27dと生活機能の平均維持期間27eを含めた改善率が全体的に低いことがわかる。
【0152】
これらのことから、事業所4と事業所6における介護サービスは利用者の心身状態に合っており、逆に事業所2と事業所5における介護サービスは利用者の心身状態に合っていないと考えられる。このため、今後のアクションとして、事業所2と事業所5のケアマネージャーをヒアリングし、問題点を把握して、指導する。
【0153】
図30の実施例は、介護事業11における、各事業所(GHとする)での詳細心身状態の改善率を集計し、可視化する。すなわち、サービス種類別 × 詳細心身状態項目別× 事業所別× 改善率(事業計画単位)を分析し、折れ線グラフで表示している。
【0154】
詳細心身状態項目としては、要介護度、認知症自立度、障害自立度と認定調査項目62項目との合計65項目とし、各事業所における心身状態項目の維持期間の平均値を集計し、折れ線グラフにする。
【0155】
ここで、詳細認定調査項目と、分野別にまとめた集約心身状態項目との関係を以下に示す。
【0156】
身体機能・起居動作:1群から選定した項目
生活機能 :2群から選定した項目
認知機能 :3群から選定した項目
精神・行動障害 :4群から選定した項目
社会生活適応 :5群から選定した項目
上記から除いた項目:介護サービスにより心身状態の改善・維持に繋がらないと想定される麻痺・拘縮、視力・聴力の項目
【0157】
図30の例では、全事業所平均(折れ線30d)と比較して、事業所1(折れ線30a)は全体的に改善率が高く、事業所2(折れ線30b)は身体系(身体機能・起居動作、生活機能)の改善率が低く、事業所3(折れ線30c)は精神系(認知機能、精神・行動障害、社会生活適応)の改善率が低いことがわかる。
【0158】
これらのことから、事業所1の介護サービスの質は高く、事業所2の身体系の介護サービスの質は低く、事業所3の精神系の介護サービスの質は低いと考えられる。このため、今後のアクションとして、身体系は事業所1と事業所3をヒアリングし、精神系は事業所1と事業所2をヒアリングし、それぞれの良い点をベストプラクティスとして、他の事業所に紹介することが推奨される。また、問題点については、身体系は事業所2をヒアリングし、精神系は事業所3をヒアリングし、それぞれの問題点を把握して指導する。
【0159】
図31の実施例は、その目的が、介護事業11において、各事業所における集約した各心身状態について、
図24で説明した、平均より悪化が遅い利用者(
図24のパターン2の利用者)比率を可視化する。すなわち、
図31では、介護事業11における、例えば、サービス種類別 × 事業所別 × 集約心身状態項目 × 平均より悪化が遅い利用者比率(事業計画単位)を分析した結果を(a)の折れ線グラフ、及び(b)の表で示している。
【0160】
なお、事業所の、平均より悪化が遅い利用者比率は、当該事業所の利用者のうち、
図24のパターン2の利用者の割合を指す。
【0161】
図31は、サービス種類をGHとし、集約心身状態項目は、要介護度31a、認知症自立度31b、障害自立度31c、身体機能・起居動作31d、生活機能(31e、認知機能・社会生活適応31f、精神・行動障害31g、の7項目とし、各事業所(GH)におけるこれら心身状態項目の、平均より悪化が遅い利用者比率を集計し、折れ線グラフにしている。
【0162】
図31の例では、グループホームの事業所1から事業所6の中における比較として、事業所4と事業所6は、精神・行動障害31gと認知機能・社会生活適応31fの、平均より悪化が遅い利用者比率が高く、事業所2と事業所5の身体機能・起居動作31dと生活機能の、平均より悪化が遅い利用者比率が低いことがわかる。
【0163】
これらのことから、事業所4と事業所6における介護サービスは利用者の心身状態に合っており、逆に事業所2と事業所5における介護サービスは利用者の心身状態に合っていないと考えられる。このため、今後のアクションとして、事業所2と事業所5のケアマネージャーをヒアリングし、問題点を把握して、指導する。
【0164】
図32の実施例は、介護事業11における、各事業所(GHとする)での詳細心身状態の、平均より悪化が遅い利用者比率を集計し、可視化する。すなわち、サービス種類別 × 詳細心身状態項目別 × 事業所別 × 平均より悪化が遅い利用者比率(事業計画単位)を分析し、折れ線グラフで表示している。
【0165】
詳細心身状態項目としては、要介護度、認知症自立度、障害自立度と認定調査項目62項目との合計65項目とし、各事業所における心身状態項目の維持期間の平均値を集計し、折れ線グラフにする。詳細認定調査項目と、分野別にまとめた集約心身状態項目との関係は前述と同じであり、説明は省略する。
【0166】
図32の例では、全事業所平均(折れ線32d)と比較して、事業所1(折れ線32a)は全体的に、平均より悪化が遅い利用者比率が高く、事業所2(折れ線32b)は身体系(身体機能・起居動作、生活機能)の、平均より悪化が遅い利用者比率が低く、事業所3(折れ線32c)は精神系(認知機能、精神・行動障害、社会生活適応)の平均より悪化が遅い利用者比率が低いことがわかる。
【0167】
これらのことから、事業所1の介護サービスの質は高く、事業所2の身体系の介護サービスの質は低く、事業所3の精神系の介護サービスの質は低いと考えられる。このため、今後のアクションとして、身体系は事業所1と事業所3をヒアリングし、精神系は事業所1と事業所2をヒアリングし、それぞれの良い点をベストプラクティスとして、他の事業所に紹介することが推奨される。また、問題点については、身体系は事業所2をヒアリングし、精神系は事業所3をヒアリングし、それぞれの問題点を把握して指導する。
【0168】
図33の実施例は、その目的が、介護事業11において、居宅サービスを実施している各小地域における集約された各心身状態の悪化までの平均維持期間を可視化し、各小地域における利用者の心身状態が悪化する速さを可視化することにある。すなわち、
図33では、介護事業11における、例えば、サービス種類別 × 小地域別 × 集約心身状態項目別 × 悪化までの平均維持期間(事業計画単位)を分析した結果を(a)折れ線グラフ、及び(b)の表で示している。
【0169】
ここでは、サービス種類は居宅サービスとし、集約心身状態項目は、要介護度33a、認知症自立度33b、障害自立度33c、身体機能・起居動作33d、生活機能33e、認知機能・社会生活適応33f、精神・行動障害33g、の7項目とし、各事業所におけるこれら心身状態項目の維持期間の平均値の集計し、折れ線グラフにしている。
【0170】
図33の例では、小地域1から小地域6の中における比較として、小地域3と小地域5が、精神・行動障害33gと認知機能・社会生活適応33fを含めた平均維持期間が全体的に長く、小地域1と小地域4の身体機能・起居動作33dと生活機能の平均維持期間33eを含めた平均維持期間が全体的に短いことがわかる。
【0171】
これらのことから、小地域3と小地域5における居宅介護支援事業者(ケアマネージャー)のケアプランは利用者のニーズを把握しており、小地域1と小地域4のケアマネージャーのケアプランは利用者のニーズに合っていないと考えられる。そこで、今後のアクションとして、小地域3と小地域5のケアマネージャーをヒアリングし、良い点をベストプラクティスとして、他の事業所に紹介する。また、小地域1と小地域4のケアマネージャーをヒアリングし、それぞれの問題点を把握して、指導する。
【0172】
図34の実施例は、介護事業11における、居宅サービスを実施している各小地域における心身状態(詳細項目:以下、詳細心身状態項目と呼ぶ))の維持期間の平均値を集計し、各小地域における利用者の心身状態が悪化する速さを可視化する。すなわち、サービス種類別 × 詳細心身状態項目別 ×小地域別 × 悪化までの平均維持期間(事業計画単位)を分析し、折れ線グラフで表示している。
【0173】
詳細心身状態項目としては、要介護度、認知症自立度、障害自立度と認定調査項目62項目との合計65項目とし、各小地域における心身状態項目の維持期間の平均値を集計し、折れ線グラフにする。なお、上述した詳細認定調査項目と、分野別にまとめた集約心身状態項目との関係は前述と同じであり説明は省略する。
【0174】
図34の例では、自治体平均(折れ線34d)と比較して、小地域1(折れ線34a)は全体的に平均維持期間が長く、小地域2(折れ線34b)は身体系(身体機能・起居動作、生活機能)の平均維持期間が短く、小地域3(折れ線34c)は精神系(認知機能、精神・行動障害、社会生活適応)の平均維持期間が短いことがわかる。
【0175】
これらのことから、小地域1における居宅介護支援事業者(ケアマネージャー)のケアプランは利用者のニーズを把握しており、小地域2におけるケアマネージャーの身体系のケアプランは利用者のニーズの合っておらず、小地域3におけるケアマネージャーの精神系のケアプランは利用者のニーズの合っていないと考えられる。このため、今後のアクションとして、身体系は小地域1と小地域3におけるケアマネージャーをヒアリングし、精神系は小地域1と小地域2におけるケアマネージャーをヒアリングし、それぞれの良い点をベストプラクティスとして、他の小地域に紹介することが推奨される。また、問題点については、身体系は小地域2におけるケアマネージャーをヒアリングし、精神系は小地域3におけるケアマネージャーをヒアリングし、それぞれの問題点を把握して指導する。
【0176】
図35の実施例は、その目的が、介護事業11において、居宅サービスを実施している各小地域における集約した各心身状態の改善率を可視化する。すなわち、
図35では、介護事業11における、例えば、サービス種類別 × 小地域別 × 集約心身状態項目別 × 改善率(事業計画単位)を分析した結果を(a)の折れ線グラフ、及び(b)の表で示している。
【0177】
なお、小地域の改善率は、当該小地域の利用者のうち、
図24で説明した改善が生じた利用者の割合を指す。
【0178】
図35は、サービス種類を居宅サービスとし、集約心身状態項目は、要介護度35a、認知症自立度35b、障害自立度35c、身体機能・起居動作35d、生活機能35e、認知機能・社会生活適応35f、精神・行動障害35g、の7項目とし、各小地域におけるこれら心身状態項目の改善率を集計し、折れ線グラフにしている。
【0179】
図35の例では、小地域1から小地域6の中における比較として、小地域4と小地域6は、精神・行動障害35gと認知機能・社会生活適応35fを含めた改善率が全体的に高く、小地域2と小地域5の身体機能・起居動作35dと生活機能の平均維持期間35eを含めた改善率が全体的に短いことがわかる。
【0180】
これらのことから、小地域4と小地域6における居宅介護支援事業者(ケアマネージャー)のケアプランは利用者のニーズを把握しており、逆に小地域2と小地域5におけるケアマネージャーの精神系のケアプランは利用者のニーズに合っていないと考えられる。このため、今後のアクションとして、小地域2と小地域5におけるケアマネージャーをヒアリングし、問題点を把握して、指導する。
【0181】
図36の実施例は、介護事業11における、居宅サービスを実施している各小地域での詳細心身状態の改善率を集計し、可視化する。すなわち、サービス種類別 × 詳細心身状態項目別× 小地域別× 改善率(事業計画単位)を分析し、折れ線グラフで表示している。
【0182】
詳細心身状態項目としては、要介護度、認知症自立度、障害自立度と認定調査項目62項目との合計65項目とし、各小地域における心身状態項目の維持期間の平均値を集計し、折れ線グラフにする。なお、詳細認定調査項目と、分野別にまとめた集約心身状態項目との関係は前述と同じであり説明は省略する。
【0183】
図36の例では、全事業所平均(折れ線36d)と比較して、小地域1(折れ線36a)は全体的に改善率が高く、小地域2(折れ線36b)は身体系(身体機能・起居動作、生活機能)の改善率が低く、小地域3(折れ線36c)は精神系(認知機能、精神・行動障害、社会生活適応)の改善率が低いことがわかる。
【0184】
これらのことから、小地域1における居宅介護支援事業者(ケアマネージャー)のケアプランは利用者のニーズを把握しており、小地域2におけるケアマネージャーの身体系のケアプランは利用者のニーズの合っておらず、小地域3におけるケアマネージャーの精神系のケアプランは利用者のニーズの合っていないと考えられる。このため、今後のアクションとして、身体系は小地域1と小地域3におけるケアマネージャーをヒアリングし、精神系は小地域1と小地域2におけるケアマネージャーをヒアリングし、それぞれの良い点をベストプラクティスとして、他の小地域に紹介することが推奨される。また、問題点については、身体系は小地域2におけるケアマネージャーをヒアリングし、精神系は小地域3におけるケアマネージャーをヒアリングし、それぞれの問題点を把握して指導する。
【0185】
図37の実施例は、その目的が、介護事業11において、居宅サービスを実施している各小地域における集約した各心身状態について、
図24で説明した、平均より悪化が遅い利用者(
図24のパターン2の利用者)比率を可視化する。すなわち、
図37では、介護事業11における、例えば、サービス種類別 × 小地域別 × 集約心身状態項目 × 平均より悪化が遅い利用者比率(事業計画単位)を分析した結果を(a)の折れ線グラフ、及び(b)の表で示している。
【0186】
なお、小地域の、平均より悪化が遅い利用者比率は、当該小地域の利用者のうち、
図24のパターン2の利用者の割合を指す。
【0187】
図37は、サービス種類を居宅サービスとし、集約心身状態項目は、要介護度37a、認知症自立度37b、障害自立度37c、身体機能・起居動作37d、生活機能37e、認知機能・社会生活適応37f、精神・行動障害37g、の7項目とし、各小地域におけるこれら心身状態項目の、平均より悪化が遅い利用者比率を集計し、折れ線グラフにしている。
【0188】
図37の例では、小地域1から小地域6の中における比較として、小地域4と小地域6は、精神・行動障害37gと認知機能・社会生活適応37fの、平均より悪化が遅い利用者比率が高く、小地域2と小地域5の身体機能・起居動作37dと生活機能37eの、平均より悪化が遅い利用者比率が低いことがわかる。
【0189】
これらのことから、小地域4と小地域6における居宅介護支援事業者(ケアマネージャー)のケアプランは利用者のニーズを把握しており、逆に小地域2と小地域5におけるケアマネージャーのケアプランは利用者のニーズに合っていないと考えられる。このため、今後のアクションとして、小地域2と小地域5のケアマネージャーをヒアリングし、問題点を把握して、指導する。
【0190】
図38の実施例は、介護事業11における、居宅サービスを実施している各小地域での詳細心身状態の、平均より悪化が遅い利用者比率を集計し、可視化する。すなわち、サービス種類別 × 詳細心身状態項目別 × 小地域別 × 平均より悪化が遅い利用者比率(事業計画単位)を分析し、折れ線グラフで表示している。
【0191】
詳細心身状態項目としては、要介護度、認知症自立度、障害自立度と認定調査項目62項目との合計65項目とし、各小地域における心身状態項目の維持期間の平均値を集計し、折れ線グラフにする。詳細認定調査項目と、分野別にまとめた集約心身状態項目との関係は前述と同じであり、説明は省略する。
【0192】
図38の例では、自治体平均(折れ線38d)と比較して、小地域1(折れ線38a)は全体的に、平均より悪化が遅い利用者比率が高く、小地域2(折れ線38b)は身体系(身体機能・起居動作、生活機能)の、平均より悪化が遅い利用者比率が低く、小地域3(折れ線38c)は精神系(認知機能、精神・行動障害、社会生活適応)の改善率が低いことがわかる。
【0193】
これらのことから、小地域1おける居宅介護支援事業者(ケアマネージャー)のケアプランは利用者のニーズを把握しており、小地域2におけるケアマネージャーの身体系のケアプランは利用者のニーズに合っておらず、小地域3におけるケアマネージャーの精神系のケアプランは利用者のニーズに合っていないと考えられる。このため、今後のアクションとして、身体系は小地域1と小地域3におけるケアマネージャーをヒアリングし、精神系は小地域1と小地域2におけるケアマネージャーをヒアリングし、それぞれの良い点をベストプラクティスとして、他の小地域に紹介することが推奨される。また、問題点については、身体系は小地域2におけるケアマネージャーをヒアリングし、精神系は小地域3におけるケアマネージャーをヒアリングし、問題点を把握して指導する。
【0194】
図39の実施例は、サービス開始時の利用者(初期利用者)の心身状態と世帯等の住民情報に介護の手間の選択閾値を設定して介護の手間の大小別に集計することで、事業所別に初期利用者の介護の手間の多寡を可視化することを目的としている。すなわち、サービス種類別 × 事業所別 × 初期利用者選定条件別 × 利用者比率を分析した結果を(a)の折れ線グラフ、及び(b)の表で示している。
【0195】
ここで、初期利用者選定割合を分析する理由は、各事業所に対する評価の公平化を図るためである。すなわち、介護サービスを提供する事業所が、介護サービスを初めて利用する利用者(初期利用者)を受け入れる場合、この初期利用者の受け入れ(選定)に偏りがあると、評価尺度の一つである心身状態の平均継続期間の長短が事業所のサービスの質を正しく表していない可能性がある。
【0196】
そこで、
図39で示すように、初期利用者選定条件項目として、要介護度介護2以下39a、障害自立度A1以下39b、認知症自立度IIa以下39c、独居でない39d、家計収入39e、及び事業所からの距離39fを設定し、各事業所における利用者数の割合を集計し、折れ線グラフにすることで、介護の手間の多寡を可視化する。
【0197】
図39の例では、事業所1から事業所7の中における比較として、事業所1が認知症自立度IIa以下の割合が高いことがわかる。このことから、事業所1は認知症自立度が低い高齢者を意図的に選定してサービスを提供している可能性が高いと考えられる。今後のアクションとしては、事業所1をヒアリングし、問題点を把握して、指導することが可能となる。
【0198】
図40で示す実施例は、 全サービス利用者の要介護度・障害自立度・認知症自立度別悪化までの維持期間及び平均寿命までの平均介護給付費月額を集計し、全サービス利用者の心身状態が悪化する速さと介護給付費を可視化することを目的としている。すなわち、全サービス利用者 × 障害自立度・認知症自立度の悪化までの維持期間・平均寿命までの平均介護給付費月額 × 利用者分布を分析し、可視化している。
【0199】
そのために、心身状態項目を要介護度、障害自立度、認知症自立度の3項目とし、横軸に障害自立度の悪化までの維持期間、縦軸に認知症自立度の悪化までの維持期間、バブルのサイズに平均寿命までの平均介護給付費月額をプロットし、バブルチャートとした。ここで、バブルチャート用の平均寿命までの平均介護給付費月額の値(=Z2)は、その元の値(=Z1)、最小値(=MIN)及びバブルサイズの強調冪指数nと強調係数aを使って、Z2=Z1+(Z1−MIN)
n×a
と変換することで、バブルのサイズの差を強調して表示した。
【0200】
その結果、
図40の例では、障害自立度の悪化までの維持期間と認知症自立度の悪化までの維持期間が共に長い利用者群(領域1)、共に短い利用者群(領域3)、いずれか一方のみが長い利用者群(領域2及び4)がいる。また、平均寿命までの平均介護給付費月額は、悪化までの維持期間が長いほど少ない傾向があることがわかる。
【0201】
これらから、障害自立度の悪化までの維持期間と認知症自立度の悪化までの維持期間との間には中程度の正の相関(相関係数=0.651)があり、いずれか一方のみが長い利用者群(領域2と4)は全体の傾向と異なっており、個別の原因があると考えられる。
【0202】
今後のアクションとして、障害自立度の悪化までの維持期間と認知症自立度の悪化までの維持期間が共に長い利用者群(領域1)の利用者それらの利用者に介護サービスを提供する事業所をヒアリングし、ベストプラクティスとして広く情報を展開する。特に、障害自立度の悪化までの維持期間と認知症自立度の悪化までの維持期間が共に短い利用者群(領域3)の利用者とそれらの利用者に介護サービスを提供する事業所の指導に利用する。
【0203】
また、いずれか一方のみが長い利用者群(領域2及び4)の利用者とそれらの利用者に介護サービスを提供する事業所をヒアリングし、それぞれの原因や問題点を把握して、アドバイスし、必要により指導をするなどの施策を提供できる。
【0204】
図41で示す実施例は、在宅系サービス利用者の要介護度・障害自立度・認知症自立度別悪化までの維持期間及び平均寿命までの平均介護給付費月額を小地域別に集計し、小地域別に心身状態が悪化する速さと介護給付費を可視化することを目的としている。すなわち、在宅サービス × 障害自立度・認知症自立度の悪化までの平均維持期間・平均寿命までの平均介護給付費月額 × 小地域分布を分析し可視化している。
【0205】
そのために、心身状態項目を要介護度、障害自立度、認知症自立度の3項目とし、横軸に障害自立度の悪化までの平均維持期間、縦軸に認知症自立度の悪化までの平均維持期間、バブルのサイズに平均寿命までの平均介護給付費月額をプロットし、バブルチャートとした。ここで、バブルチャート用の平均寿命までの平均介護給付費月額の値(=Z2)は、その元の値(=Z1)、最小値(=MIN)及びバブルサイズの強調冪指数nと強調係数aを使って、Z2=Z1+(Z1−MIN)
n×a
と変換することで、バブルのサイズの差を強調して表示した。
【0206】
その結果、
図41の例では、障害自立度の悪化までの維持期間と認知症自立度の悪化までの維持期間が共に長い利用者群(領域1)、共に短い利用者群(領域3)、いずれか一方のみが長い利用者群(領域2及び4)がある。また、平均寿命までの平均介護給付費月額は、悪化までの維持期間が長いほど少ない傾向があることがわかる。
【0207】
全利用者の障害自立度の悪化までの維持期間と認知症自立度の悪化までの維持期間との相関(中程度の正の相関)と傾向の異なっている、いずれか一方のみが長い小地域群(領域2及び)の小地域に、個別の原因があると考えられる。
【0208】
今後のアクションとして、障害自立度及び認知症自立度の悪化までの維持期間が共に長い小地域群(領域1)の小地域をヒアリングし、ベストプラクティスとして広く情報を展開する。特に、障害自立度及び認知症自立度の悪化までの維持期間が共に短い小地域群(領域3)の小地域の指導に利用する。
【0209】
また、いずれか一方のみが長い小地域群(領域2及び4)の小地域をヒアリングし、それぞれの原因や問題点を把握して、アドバイスし、必要により指導をするなどの施策を提供できる。
【0210】
図42で示す実施例は、施設・居住系サービス利用者の要介護度・障害自立度・認知症自立度別悪化までの維持期間及び平均寿命までの平均介護給付費月額を事業所別に集計し、事業所別に心身状態が悪化する速さと介護給付費を可視化することを目的としている。すなわち、施設サービス × 障害自立度・認知症自立度の悪化までの平均維持期間・平均寿命までの平均介護給付費月額 × 事業所分布を分析し可視化している。
【0211】
そのために、心身状態項目を要介護度、障害自立度、認知症自立度の3項目とし、横軸に障害自立度の悪化までの平均維持期間、縦軸に認知症自立度の悪化までの平均維持期間、バブルのサイズに平均寿命までの平均介護給付費月額をプロットし、バブルチャートにする。バブルチャート用の平均寿命までの平均介護給付費月額の値(=Z2)は、その元の値(=Z1)、最小値(=MIN)及びバブルサイズの強調冪指数nと強調係数aを使って、Z2=Z1+(Z1−MIN)
n×a
と変換することで、バブルのサイズの差を強調して表示した。
【0212】
その結果、
図42の例では、障害自立度及び認知症自立度の悪化までの平均維持期間が共に長い事業所群(領域1)、共に短い事業所群(領域3)、いずれか一方のみが長い事業所群(領域2及び4)がある。また、平均寿命までの平均介護給付費月額が悪化までの維持期間が長いほど少ない傾向があることがわかる。
【0213】
全利用者の障害自立度の悪化までの維持期間と認知症自立度の悪化までの維持期間との相関(中程度の正の相関)と傾向の異なっている、いずれか一方のみが長い事業所群(領域2及び)の事業所に、個別の原因があると考えられる。
【0214】
今後のアクションとして、障害自立度及び認知症自立度の悪化までの維持期間が共に長い事業所群(領域1)の事業所をヒアリングし、ベストプラクティスとして広く情報を展開する。特に、障害自立度及び認知症自立度の悪化までの維持期間が共に短い事業所群(領域3)の事業所の指導に利用する。
【0215】
いずれか一方のみが長い事業所群(領域2及び4)の事業所をヒアリングし、それぞれの原因や問題点を把握して、アドバイスし、必要により指導をするなどの施策を提供できる。
【0216】
図43で示す実施例は、在宅系サービス利用者の要介護度の悪化までの維持期間、要介護度の改善率及び一人当たり介護給付費を小地域別に集計し、小地域別に心身状態が状態変化の様子と介護給付費の関係を可視化することを目的としている。すなわち、在宅サービス × 要介護度の悪化までの平均維持期間・改善率・一人当たり介護給付費 × 小地域分布を分析し可視化している。
【0217】
そのために、在宅系サービス利用者の要介護度の悪化までの維持期間、要介護度の改善率、一人当たり介護給付費を小地域別に集計し、横軸に要介護度の悪化までの平均維持期間、縦軸に要介護度の改善率、バブルのサイズに一人当たり介護給付費をプロットし、バブルチャートにする。ここで、バブルチャート用の一人当たり介護給付費の値(=Z2)は、その元の値(=Z1)、最小値(=MIN)及びバブルサイズの強調冪指数nと強調係数aを使って、Z2=Z1+(Z1−MIN)
n×aと変換することで、バブルのサイズの差を強調して表示した。
【0218】
その結果、
図43の例では、要介護度の悪化までの平均維持期間と要介護度の改善率が共に自治体平均値以上の小地域群(図のの領域)、同じく要介護度の悪化までの平均維持期間と要介護度の改善率が共に自治体平均値未満の小地域群(図の領域3)、いずれか一方のみが自治体平均値以上の小地域群(図の領域2及び4)がある。
【0219】
要介護度の改善率が自治体平均値以上の小地域群(図の領域1及び2)の小地域の一人当たり介護給付費は、要介護度の改善率が自治体平均値未満の小地域群(図の領域3及び4)の小地域の一人当たり介護給付費より全体的に大きく、要介護度の改善率と一人当たり介護給付費との間に相関があると推測される。
【0220】
今後のアクションとして、要介護度の悪化までの平均維持期間と要介護度の改善率が共に自治体平均値以上の小地域群(図の領域1)の小地域をヒアリングし、ベストプラクティスとして広く情報を展開する。特に、要介護度の悪化までの平均維持期間と要介護度の改善率が共に自治体平均値未満の小地域群(図の領域3)の小地域の指導に利用する。また、要介護度の改善率と一人当たり介護給付費との間の相関の有無を検証する。
【0221】
図44で示す実施例は、グループホーム利用者の要介護度の悪化までの維持期間、要介護度の改善率及び一人当たり介護給付費を事業所別に集計し、事業所別に心身状態が状態変化の様子と介護給付費の関係を可視化することを目的としている。すなわち、施設サービス × 要介護度の悪化までの平均維持期間・要介護度の改善率・一人当たり介護給付費 × 事業所分布を分析し可視化している。
【0222】
そのために、グループホーム利用者の要介護度の悪化までの維持期間、要介護度の改善率、一人当たり介護給付費を事業所別に集計し、横軸に要介護度の悪化までの平均維持期間、縦軸に要介護度の改善率、バブルのサイズに一人当たり介護給付費をプロットし、バブルチャートにする。バブルチャート用の一人当たり介護給付費の値(=Z2)は、その元の値(=Z1)、最小値(=MIN)及びバブルサイズの強調冪指数nと強調係数aを使って、Z2=Z1+(Z1−MIN)
n×a
と変換することで、バブルのサイズの差を強調して表示した。
【0223】
その結果、
図44のグループホームの例では、要介護度の悪化までの平均維持期間と要介護度の改善率が共に自治体平均値以上の事業所群(領域1)、同じく要介護度の悪化までの平均維持期間と要介護度の改善率が共に自治体平均値未満の事業所群(領域3)、いずれか一方のみが自治体平均値以上の事業所群(領域2と4)がある。
【0224】
要介護度の改善率が自治体平均値以上の事業所群(領域1と2)の事業所の一人当たり介護給付費は、要介護度の改善率が自治体平均値未満の事業所群(領域3と4)の事業所の一人当たり介護給付費より全体的に大きく、要介護度の改善率と一人当たり介護給付費との間に相関があると推測される
【0225】
今後のアクションとして、要介護度の悪化までの平均維持期間と要介護度の改善率が共に自治体平均値以上の事業所群(領域1)の事業所をヒアリングし、ベストプラクティスとして広く情報を展開する。特に、要介護度の悪化までの平均維持期間と要介護度の改善率が共に自治体平均値未満の事業所群(領域3)の事業所の指導に利用する。また要介護度の改善率と一人当たり介護給付費との間の相関の有無を検証するなどの施策を提供できる。
【0226】
これまでの実施例は、介護事業11における、質的分析に関するものであるが、次に、
図1で説明した総合事業12における質的分析の実施例を説明する。
【0227】
図45は、
図6で示した第2の要因分析部53により作成された画像を示している。この実施例は、総合事業12における、高齢者性別・年齢階層別 × 小地域別× 要介護状態区分別新規認定率をグラフ表示している。すなわち、高齢者が、どの要介護度で新規認定されるか、その新規認定率を、小地域別に、かつ要介護度別に集計して分析し、可視化するものである。
【0228】
そのために、
図45で示すように、女性の後期高齢者を対象として、要支援1〜要介護5まで、7段階の要介護度を設定し、要介護度別の新規認定率を小地域別に求め、(a)の帯グラフ、及び(b)の表にまとめている。
【0229】
その結果、小地域1から小地域7の中における比較として、小地域5の新規認定率が高く、小地域1の新規認定率は低い。また、新規認定の要介護状態区分は、全体的に要介護度の程度が低いほど新規認定率が高いことがわかる。
【0230】
これらのことから、小地域1は、自立支援の施策または総合事業等サービスの効果があると考えられる。また、小地域5は、自立支援の施策または総合事業等サービスの効果がないと考えられる。このため、小地域1における総合事業等サービスの事業をヒアリングし、施策をベストプラクティスとして他の事業に紹介する。また、小地域5の総合事業等サービスの事業をヒアリングし、問題点を把握して、指導するなどの施策を提供できる。
【0231】
図46の実施例は、その目的が、総合事業12において、各小地域における自立期間の平均値を可視化し、各小地域における高齢者が要支援状態や要介護度状態に悪化する速さを可視化することにある。すなわち、
図46では、総合事業12における、例えば、高齢者性別・年齢階層別 × 小地域別 × 集約心身状態項目別 × 平均自立期間(事業計画単位)を分析した結果を(a)折れ線グラフ、及び(b)の表で示している。
【0232】
図46では、分析対象を女性の後期高齢者とし、集約心身状態項目は、要介護度46a、認知症自立度46b、障害自立度46c、身体機能・起居動作46d、生活機能46e、認知機能・社会生活適応46f、精神・行動障害46g、の7項目とし、各小地域における高齢者(65歳以上)が、自立から要支援状態や要介護度状態に悪化するまでの期間(65歳誕生月から)の平均値を集計し、折れ線グラフにする。折れ線グラフにしている。
【0233】
図46の例では、小地域1から小地域8の中における比較として、小地域4と小地域6の平均自立期間は長く、小地域2と小地域5の平均自立期間は短い。 これらのことから、小地域4と小地域6における総合事業の施策は地域の高齢者に有効であり、逆に小地域2と小地域5における総合事業の施策は地域の高齢者に有効でない、又は有効な施策が行われていないと考えられる。そこで、今後のアクションとして、小地域2と小地域5における施策とその利用状況や効果を調査し、問題点を把握して、施策を再検討する。
【0234】
図47の実施例は、総合事業12における、各小地域における心身状態別自立期間の平均値を集計化し、各小地域における高齢者が要支援状態や要介護度状態に悪化する速さを可視化する。すなわち、高齢者性別・年齢階層別× 詳細心身状態項目別 × 小地域別 × 平均自立期間(事業計画単位)を分析し、折れ線グラフで表示している。
【0235】
詳細心身状態項目としては、要介護度、認知症自立度、障害自立度と認定調査項目62項目との合計65項目とし、各小地域における高齢者(65歳以上)の心身状態項目の自立期間(65歳誕生月から)の平均値を集計し、折れ線グラフにする。詳細認定調査項目と、分野別にまとめた集約心身状態項目との関係は前述と同じであり、説明は省略する。
【0236】
図47の例では、女性の後期高齢者を分析他対象としており、自治体平均(折れ線47d)と比較して、小地域1(折れ線47a)は全体的に平均自立期間が長く、小地域2(折れ線47b)は身体系(身体機能・起居動作、生活機能)の平均自立期間が短く、小地域3(折れ線47c)は精神系(認知機能、精神・行動障害、社会生活適応)の平均自立期間が短いことがわかる。
【0237】
これらのことから、小地域1の総合事業の施策は地域の高齢者に有効である。小地域2の総合事業の施策は地域の高齢者の身体系に有効ではなく、又は身体系に有効な施策が行われていない。小地域3の総合事業の施策は地域の高齢者の精神系に有効ではなく、又は精神系に有効な施策が行われていない、とそれぞれとえられる。
【0238】
このため、今後のアクションとして、身体系は小地域1と小地域3における施策とその利用状況や効果を調査し、精神系は小地域1と小地域2における施策とその利用状況や効果を調査し、それぞれの良い施策をベストプラクティスとして、他の地域に紹介する。また、身体系は小地域2の施策とその利用状況や効果を調査し、精神系は小地域3の施策とその利用状況や効果を調査し、問題点を把握して、それらの施策を再検討することができる。
【0239】
図48は、
図6で示した第2の要因分析部53でつくられた画像例を示しており、この実施例は、総合事業12での、各小地域における心身状態項目自立期間での施策利用状況を集計して可視化している。すなわち、高齢者性別・年齢階層別 × 小地域別 × 心身状態別・平均自立期間 / 総合事業地域施策別・同期間内平均利用率を分析し、表形式で表示している。
【0240】
ここでは、施策の内容及びその実施状況を含むストラクチャ指標(以下、S指標)、及び利用者の心身状態の程度を表すアウトカム指標(以下、O指標)を用いている。
【0241】
施策としては、S指標1の健康診断受診率、S指標2の元気づくりステーション参加率、S指標3の見守りサービスの利用率、S指標4の配食サービスの利用率の4項目とする。心身状態項目として、O指標1の要介護度、O指標2の認知症自立度、O指標3の障害自立度、O指標4の身体機能・起居動作(1群:身体機能・起居動作から選定した項目)、O指標5の生活機能(2群:生活機能から選定した項目)、O指標6の認知機能・社会生活適応(3群:認知機能、5群:社会生活適応から選定した項目)、O指標7の精神・行動障害(4群:精神・行動障害から選定した項目)(介護サービスにより心身状態の改善・維持に繋がらないと想定される麻痺・拘縮、視力・聴力の項目を除く)の7項目とし、各小地域ごとに心身状態項目平均自立期間における前述した4施策の実施状況を調査し、表にする。
【0242】
図48の例では、女性の後期高齢者を分析他対象としており、認知症自立度の平均自立期間が長い小地域1は、健康診断受診率と元気づくりステーション参加率が高いことがわかる。これらのことから、健康診断受診と元気づくりステーション参加が認知症自立度の平均自立期間の延伸に有効であり、小地域1は積極的に施策を利用していることが考えられる。したがって、今後のアクションとしては、健康診断受診率と元気づくりステーション参加率の低い地域に対して、受診と参加を呼び掛けることが推奨される。
【0243】
図49は、
図6で示した第2の要因分析部53でつくられた画像例を示しており、この実施例では、その目的が、総合事業12において、各小地域における施策実施状況と心身状態項目の自立期間との相関分析を行い、心身状態の自立期間の延伸に効果のある施策を抽出することにある。すなわち、高齢者性別・年齢階層別 × 総合事業地域施策別 × 心身状態別平均自立期間 × 相関係数を分析した結果を、(a)の折れ線グラフ、及び(b)の表で示している。
【0244】
ここで、分析対象を女性の後期高齢者とし、施策としては、S指標1の健康診断受診率、S指標2の元気づくりステーション参加率、S指標3の見守りサービスの利用率、S指標4の配食サービスの利用率の4項目とする。心身状態項目として、O指標1の要介護度、O指標2の認知症自立度、O指標3の障害自立度、O指標4の身体機能・起居動作(1群:身体機能・起居動作から選定した項目)、O指標5の生活機能(2群:生活機能から選定した項目)、O指標6の認知機能・社会生活適応(3群:認知機能、5群:社会生活適応から選定した項目)、O指標7の精神・行動障害(4群:精神・行動障害から選定した項目)(介護サービスにより心身状態の改善・維持に繋がらないと想定される麻痺・拘縮、視力・聴力の項目を除く)の7項目とし、各小地域における前述した4項目の施策の実施状況と心身状態7項目の高齢者の平均自立期間の全11項目間の相関係数を算出し、折れ線グラフにする。
【0245】
図49では、認知症自立度と強い正の相関がある施策は、折れ線49aから、健康診断受診率と元気づくりステーション参加率であることがわかる。また、障害自立度と強い正の相関がある施策は、折れ線49bから、健康診断受診率と見守りサービス利用率であることがわかる。
【0246】
これらのことから、健康診断受診による健康管理と元気づくりステーション参加による人との交流により、認知症自立度の延伸に効果があると考えられる。また、健康診断受診による健康管理と見守りサービス利用による安全管理や転倒によるリスク低減により、障害自立度の延伸に効果があると考えられる。
【0247】
したがって、今後のアクションとしては、認知症自立度の自立期間が短い地域に対して、健康診断受診と見守りサービスの利用を呼び掛けるとともに、障害自立度の自立期間が短い地域に対して、健康診断受診と元気づくりステーションの利用を呼び掛ける、ことがそれぞれ推奨される。
【0248】
図50は、
図6で示した第2の要因分析部53でつくられた画像例を示しており、この実施例では、新規自立終了者(事業計画単位)の要介護度・障害自立度・認知症自立度別自立期間(65歳誕生月からの非認定期間)を集計し、新規認定者(事業計画単位)の心身状態が悪化する速さを可視化することを目的としている。すなわち、新規自立終了者(事業計画単位) × 障害自立度・認知症自立度・要介護度の自立期間 × 利用者分布を分析し、可視化している。
【0249】
そのために、心身状態項目を要介護度、障害自立度、認知症自立度の3項目とし、新規自立終了者(事業計画単位)の心身状態の自立期間を集計し、横軸に障害自立度の自立期間、縦軸に認知症自立度の自立期間、バブルのサイズに要介護度の自立期間をプロットし、バブルチャートにする。ここで、バブルチャート用の要介護度の自立期間の値(=Z2)は、その元の値(=Z1)、最小値(=MIN)及びバブルサイズの強調冪指数nと強調係数aを使って、Z2=Z1+(Z1−MIN)
n×a
と変換することで、バブルのサイズの差を強調して表示した。
【0250】
その結果、
図50の例では、障害自立度の自立期間と認知症自立度の自立期間が共に長い認定者群(領域1)、共に短い認定者群(領域3)、いずれか一方のみが長い認定者群(領域2及び4)がある。
【0251】
これらから、障害自立度の自立期間と認知症自立度の自立期間との間には中程度の正の相関(相関係数=0.651)があり、いずれか一方のみが長い認定者群(領域2及び4)は全体の傾向と異なっており、個別の原因があると考えられる。
【0252】
今後のアクションとして、障害自立度の自立期間と認知症自立度の自立期間が共に長い認定者群(領域1)の認定者をヒアリングし、ベストプラクティスとして広く情報を展開する。特に、障害自立度の自立期間と認知症自立度の自立期間が共に短い認定者群(領域3)の認定者の指導に利用する。
【0253】
また、いずれか一方のみが長い認定者群(領域2及び4)の認定者をヒアリングし、それぞれの原因や問題点を把握して、アドバイスし、必要により指導をする。
【0254】
図51は、
図6で示した第2の要因分析部53でつくられた画像例を示している。この実施例は、新規自立終了者(事業計画単位)の要介護度・障害自立度・認知症自立度別自立期間を小地域で集計し、小地域の心身状態が悪化する速さを可視化することを目的としている。すなわち、新規自立終了者(事業計画単位) × 障害自立度・認知症自立度・要介護度の平均自立期間 × 小地域分布を分析し可視化している。
【0255】
そのために、心身状態項目を要介護度、障害自立度、認知症自立度の3項目とし、小地域の心身状態の平均自立期間を集計し、横軸に障害自立度の平均自立期間、縦軸に認知症自立度の平均自立期間、バブルのサイズに要介護度の平均自立期間をプロットし、バブルチャートにする。ここで、バブルチャート用の要介護度の平均自立期間の値(=Z2)は、その元の値(=Z1)、最小値(=MIN)及びバブルサイズの強調冪指数nと強調係数aを使って、Z2=Z1+(Z1−MIN)
n×a
と変換することで、バブルのサイズの差を強調して表示した。
【0256】
その結果、
図51の例では、障害自立度の平均自立期間と認知症自立度の平均自立期間が共に長い小地域群(領域1)、共に短い小地域群(領域1)、いずれか一方のみが長い小地域群(領域2及び4)がある。
【0257】
これらから、新規自立終了者(事業計画単位)の障害自立度の自立期間と認知症自立度の自立期間との相関(中程度の正の相関)と傾向の異なっている、いずれか一方のみが長い小地域群(領域2及び4)の小地域に、個別の原因があると考えられる。
【0258】
今後のアクションとして、障害自立度の平均自立期間と認知症自立度の平均自立期間が共に長い小地域群(領域1)の小地域をヒアリングし、ベストプラクティスとして広く情報を展開する。特に、障害自立度の平均自立期間と認知症自立度の平均自立期間が共に短い小地域群(領域3)の小地域の指導に利用する。
【0259】
また、いずれか一方のみが長い小地域群(領域2及び4)の小地域をヒアリングし、それぞれの原因や問題点を把握して、アドバイスし、必要により指導をするなどの施策を提供できる。
【0260】
これまでの実施例は、総合事業12における、質的分析に関するものであるが、次に、
図1で説明した医介連携13における質的分析の実施例を説明する。
【0261】
図52は、
図6で示した第2の要因分析部53により作成された画像を示している。この実施例は、全在宅医療患者の在宅滞在期間比率、在宅看取り比率、一人当たり医療・介護給付費を小地域で集計し、小地域別の在宅医療の利用状況、在宅看取り状況と医療・介護給付費の関係を可視化することを目的としている。すなわち、在宅医療患者 × 在宅滞在期間比率・在宅看取り比率・一人当たり医療・介護給付費 × 小地域分布を分析し可視化している。
【0262】
そのために、全在宅医療患者の在宅滞在期間比率、在宅看取り比率、一人当たり医療・介護給付費を小地域別に集計し、横軸に平均在宅滞在期間比率、縦軸に平均在宅看取り比率、バブルのサイズに一人当たり医療・介護給付費をプロットし、バブルチャートにする。ここで、バブルチャート用の一人当たり医療・介護給付費の値(=Z2)は、その元の値(=Z1)、最小値(=MIN)及びバブルサイズの強調冪指数nと強調係数aを使って、Z2=Z1+(Z1−MIN)
n×a
と変換することで、バブルのサイズの差を強調して表示した。
【0263】
その結果、
図52の例では、平均在宅滞在期間比率と平均在宅看取り比率が共に高い小地域群(領域1)、共に短い小地域群(領域3)、いずれか一方のみが高い小地域群(領域2及び4)がある。平均在宅滞在期間比率が高い小地域群(領域1と4)の小地域は一人当たり医療・介護給付費が小さく、入院医療給費費が小さいと考えられる。
【0264】
今後のアクションとして、平均在宅滞在期間比率と平均在宅看取り比率が共に高い小地域群(領域1)の小地域をヒアリングし、ベストプラクティスとして広く情報を展開する。特に、平均在宅滞在期間比率と平均在宅看取り比率が共に低い小地域群(領域3)の小地域の指導に利用する。また、いずれか一方のみが高い小地域群(領域2と4)の小地域をヒアリングし、それぞれの原因や問題点を把握して、アドバイスし、必要により指導をする。
【0265】
図53は、
図6で示した第2の要因分析部53でつくられた画像例を示している。この実施例では、医介連携13において、各事業所における入退院時の入院時情報連携加算及び退院・退所加算を集計し、各事業所における医介連携加算請求比率を可視化することを目的とする。すなわち、疾病分類別・要介護度別 × 居宅介護支援事業所別 × 入退院時医療介護連携加算 × 請求比率を分析した結果を、(a)の折れ線グラフ、及び(b)の表で示している。
【0266】
ここでは、分析対象を大腿部骨折による入院とし、入退院時の医介連携加算請求である「入院時情報連携加算(I)」、「入院時情報連携加算(II)」及び「退院・退所加算」の比率をだし、折れ線グラフにする。
【0267】
図53では、事業所1から事業所4の中における医介連携加算請求比率を比較しており、事業所1は自治体平均より「入院時情報連携加算(I)」(折れ線53a)と「退院・退所加算」(折れ線53b)の比率が高い。また、事業所2は自治体平均より「入院時情報連携加算(I)」折れ線53a)と「退院・退所加算」(折れ線53b)の比率が低いことがわかる。
【0268】
これらのことから、事業所1は、急性期病院に入院及び退院する際に、病院側の医療スタッフと事業所のケアマネージャーの連携の質が良く、心身状態(特に認知症自立度)の悪化の程度が低いと推測される。また、事業所2は、病院側の医療スタッフと事業所のケアマネージャーの連携の質が悪く、心身状態(特に認知症自立度)の悪化の程度が高いと推測される。
【0269】
したがって、今後のアクションとしては、事業所1のケアマネージャーに対応状況をヒアリングし、ベストプラクティスとして広く情報を展開する。一方、事業所2のケアマネージャーに対応状況をヒアリングし、問題点を把握して指導することができる。
【0270】
図54は、
図6で示した第2の要因分析部53でつくられた画像例を示しており、この実施例では、医介連携13において、各急性期病院における入退院前後の心身状態を集計し、入退院前後の心身状態の変化の比率を可視化することを目的とする。すなわち、疾病分類別・要介護度別 × 急性期病院別 × 入退院前後の心身状態変化 × 利用者比率を分析した結果を、(a)の折れ線グラフ、及び(b)の表で示している。
【0271】
ここでは、分析対象を大腿部骨折による入院とし、入退院前後で心身状態(要介護状態区分、障害自立度、認知症自立度)が2段階以上悪化した比率を出し、折れ線グラフにする。
【0272】
図54では、急性期病院1から急性期病院4の中における認知症自立度 が2段階以上悪化した比率を比較しており、急性期病院1は要介護状態区分(折れ線54a)、障害自立度(折れ線54b)、認知症自立度(折れ線54c)がそれぞれ自治体平均(病院平均)より高く、急性期病院2は、それぞれ自治体平均より低いことがわかる。
【0273】
これらのことから、急性期病院1は、急性期病院に入院及び退院する際に、事業所のケアマネージャーと病院側の医療スタッフとの連携の質が悪く、心身状態(特に認知症自立度)の悪化した率が高いと推測される。また、急性期病院2は、事業所のケアマネージャーと病院側の医療スタッフとの連携の質が良く、心身状態(特に認知症自立度)の悪化した率が低いと推測される。
【0274】
したがって、今後のアクションとしては、急性期病院2の医療スタッフにヒアリングし、ベストプラクティスとして広く情報を展開する。また、急性期病院1の医療スタッフにヒアリングし、問題点を把握して、指導することもできる。
【0275】
図55は、
図6で示した第2の要因分析部53により作成された画像を示している。この実施例は、医介連携13において、急性期病院を入退院した利用者の入退院前後の心身状態を集計し、入退院前後の心身状態の段階変化を可視化することを目的としている。すなわち、疾病分類別 × 障害自立度・認知症自立度・要介護度の入院前後の変化 × 利用者分布を分析し可視化している。
【0276】
そのために、心身状態項目を要介護度、障害自立度、認知症自立度の3項目とし、入退院前後で心身状態項目の段階変化を集計し、横軸に要介護度の段階変化、縦軸に認知症自立度の段階変化、バブルのサイズに各データの人数をプロットし、バブルチャートにする(要介護度の段階変化は障害自立度、認知症自立度の段階変化と入れ替えてバブルチャートにする)。
【0277】
その結果、
図55の大腿部骨折による入退院の例では、障害自立度と認知症自立度とが共に悪化した利用者群(領域1)、認知症自立度のみ悪化(障害自立度は維持・改善)した利用者群(領域2)、障害自立度と認知症自立度を共に維持・改善した利用者群(領域3)、障害自立度のみが悪化(認知症自立度は維持・改善)した利用者群(領域4)がある。
【0278】
図55から、障害自立度又は認知症自立度が悪化した利用者群(領域1,2と4)の利用者は、入院及び退院する際に、事業所のケアマネージャーと病院側の医療スタッフの連携が悪く、心身状態が悪化したと考えられる。
【0279】
今後のアクションとして、 障害自立度又は認知症自立度が悪化した利用者群(領域1,2と4)の利用者とそれらの利用者に介護サービスを提供する事業所のケアマネージャーと入院した急性期病院のスタッフをヒアリングし、それぞれの問題点を把握して、指導をする。
【0280】
図56は、
図6で示した第2の要因分析部53により作成された画像を示している。この実施例は、医介連携13において、急性期病院を入退院した利用者の入退院前後の心身状態と入院による介護給付費増(入院により維持期間が短縮したことによる介護給付費増加額)を居宅介護支援事業所別に集計し、入退院前後の心身状態の変化と入院による介護給付費増との関係を可視化することを目的としている。すなわち、疾病分類別 × 障害自立度・認知症自立度の変化・一人当たり入院による介護給付費増 × 居宅介護支援事業所分布を分析し可視化している。
【0281】
そのために、心身状態項目を要介護度、障害自立度、認知症自立度の3項目とし、入退院前後で心身状態項目が2段階以上悪化した利用者を居宅介護支援事業所別に集計し、横軸に障害自立度の2段階以上悪化率、縦軸に認知症自立度の2段階以上悪化率、バブルのサイズに一人当たり入院による介護給付費増(月額)(入退院した全利用者)をプロットし、バブルチャートにする。
【0282】
その結果、
図56の大腿部骨折による入退院の例では、障害自立度の2段階以上悪化率と認知症自立度の2段階以上悪化率が共に高い居宅介護支援事業所群(領域1)、共に低い居宅介護支援事業所群(領域3)、いずれか一方のみが高い居宅介護支援事業所群(領域2と4)がある。
【0283】
図56から、障害自立度の2段階以上悪化率と認知症自立度の2段階以上悪化率が共に低い居宅介護支援事業所群(領域3)の居宅介護支援事業所は、入院による介護給付費増が大きく、事業所のケアマネージャーと病院側の医療スタッフとの連携が良く、心身状態の悪化した率が低いと考えられる
【0284】
今後のアクションとして、障害自立度の2段階以上悪化率又は認知症自立度の2段階以上悪化率が高い居宅介護支援事業所群(領域1,2と4)の居宅介護支援事業所のケアマネージャーをヒアリングし、問題点を把握して、指導する。
【0285】
図57は、
図6で示した第2の要因分析部53により作成された画像を示している。この実施例は、医介連携13において急性期病院を入退院した利用者の入退院前後の心身状態と入院による介護給付費(入院により維持期間が短縮したことによる介護給付費増加額)を急性期病院別に集計し、入退院前後の心身状態の変化と入院による介護給付費との関係を可視化することを目的としている。すなわち、疾病分類別 × 障害自立度・認知症自立度の変化・一人当たり入院による介護給付費増 × 急性期病院分布を分析し可視化している。
【0286】
そのために、心身状態項目を要介護度、障害自立度、認知症自立度の3項目とし、入退院前後で心身状態項目が2段階以上悪化した利用者を急性期病院別に集計し、横軸に障害自立度の2段階以上悪化率、縦軸に認知症自立度の2段階以上悪化率、バブルのサイズに一人当たり入院による介護給付費(月額)(入退院した全利用者)をプロットし、バブルチャートにする。
【0287】
その結果、
図57の大腿部骨折による入退院の例では、障害自立度の2段階以上悪化率と認知症自立度の2段階以上悪化率が共に高い急性期病院群(領域1)、共に低い急性期病院群(領域3)、いづれか一方のみが高い急性期病院群(領域2と4)がある。
【0288】
図57から、障害自立度の2段階以上悪化率と認知症自立度の2段階以上悪化率が共に低い急性期病院群(領域3)の急性期病院は、入院による介護給付費増が大きく、事業所のケアマネージャーと病院側の医療スタッフの連携が良く、心身状態の悪化した率が低いと考えられる。
【0289】
これに対し、障害自立度の2段階以上悪化率又は認知症自立度の2段階以上悪化率が低い急性期病院群(領域1,2及び4)の急性期病院は、入院による介護給付費増が小さく、事業所のケアマネージャーと病院側の医療スタッフとの連携が悪く、心身状態の悪化した率が高いと考えられる。
【0290】
今後のアクションとして、障害自立度の2段階以上悪化率又は認知症自立度の2段階以上悪化率が高い急性期病院群(領域1,2及び4)の急性期病院の医療スタッフをヒアリングし、問題点を把握して、指導する。
【0291】
これまでの説明は、
図2で示した地域マネジメント支援機能部21についてであったが、次に地域情報管理機能部22について説明する。
【0292】
この地域情報管理機能部22は、前述のように、事業単位の担当者(小地域担当や介護事業者)ごとに、サービスの量や質に係る活動評価結果、自身の履歴を個票形式で出力するものである。
【0293】
図58及び
図59は、地域情報管理機能部22が作成した画像を示している。これらの画像は、例えば、介護事業11の在宅サービスに関し、自治体内の小地域の活動を評価する画像(活動評価シートと呼ぶ)である。
図58及び
図59は、サービス利用者の心身状態の変化の程度を活動成果として評価している。ここで、心身状態としては要介護度、生涯自立度、認知症自立を用いている。そして、これら心身状態を、放射状に延びる複数の評価軸に割り付け、中心部の起点からの長さにより変化の程度を表し、それらの先端間を接続して多角形を形成する、いわゆるレーダチャートとして表現している。
【0294】
図58及び
図59とも、上下に分割されており、心身状態の変化を表す値として、上半分は心身状態の改善率を用い、下半分は悪化までの平均維持期間を用いている。
【0295】
図58は、成果履歴を表すものであり、前年度実績値58a、目標値58b、今年度実績値58cの表示形状から各年ごとの成果の推移がわかる。このように、実績値を確認することで、目標設定の妥当性がわかる。図では、今年度の値は目標値に未達であるが、前年度と比較して減少しており、目標値に近づいていることを確認できる。
【0296】
図59は位置づけを表すものであり、市平均59a、区/支部平均59b、自小地域59cの表示形状から、自小地域の、他地域に対する位置づけがわかる。このように表示されると、目指すべき目標値が明確になる。図では、区/支部平均と比較して、自地域の値は低いが、市平均値より高く、目標設定に市平均値を参考にすべきであることが確認される。
【0297】
図60、
図61は、上述したレーダチャートを、事業者(グループホームとする)の活動評価シートとして用いた場合を示している。このように用いても、各グループホーム(GH)の活動履歴や、他GHに対する位置づけを明確にとらえることができる。
【0298】
次に、
図2で示した高齢者情報管理機能23について説明する。この高齢者情報管理機能23は、前述のように、高齢者の基本情報、心身状態利用サービス状況、及び医療状況を一元管理し、これらに関する過去の履歴などを提供するものである。
【0299】
図62及び
図63は、高齢者情報管理機能23が作成する画像であり、
図62の画像では、高齢者個人に関する情報が、多数の項目にわたって設定され、それらの状態が時系列にどのように推移しているのかを、明確に示している。
【0300】
このようなデータは、前述のようにデータベース16により、医療介護に関する各種のデータが一元管理されていることにより作成可能となった。このような高齢者情報履歴画面は、高齢者のケアプランを作成するケアマネージャーなどに提供されることで、適切なケアプランを作成でき、適切な介護を行うことが可能になる。
【0301】
なお、
図63は、
図62で示した各項目の意味合いや、評価の基準を示しており、ケアプランを作成する際の参考資料として用いることができる。
【0302】
図64は、高齢者情報管理機能23が作成する画像であり、各利用者の認定更新時における心身状態項目の変化に加え、変化するまでの維持期間を平均値と比較し、各利用者の認定更新時における心身状態項目毎の評価ポイントを算出するものである。
【0303】
ここで、心身状態項目として、要介護度、認知症自立度、障害自立度と、認定調査項目の74項目とを合わせた77項目とし、各利用者の認定更新時における心身状態項目の変化と変化するまでの維持期間と平均値と比較し、早い改善>遅い改善>維持>遅い悪化> 早い悪化、を評価ポイントの基準に基づいて各利用者に評価ポイントをつける。ただし、維持が必ずしも、遅い悪化より良い、遅い改善より悪いとは限らない。
【0304】
具体的には、
図65で示すように、心身状態項目77項目の評価ポイントを棒グラフにする。
図65の例では、身体系は維持又は遅い悪化をしており、精神系は早い改善又は遅い改善をしていることが一目瞭然となる。
【0305】
このように、各利用者の認定更新時における心身状態項目の変化と変化のスピードを可視化することができる。このため、利用者の認定更新時における評価ポイントをケアプランに反映することも可能となる。
【0306】
ここまで説明した実施形態は、自治体などが保険者となって実施運用する地域包括ケア事業システムを説明した。ここで保険者とは介護保険者の場合は自治体、医療保険者の場合は、職域医療保険が組合健保や共済健保等、地域医療保険が協会けんぽや国保(自治体)や後期高齢者医療連合などである。
【0307】
このような自治体レベルでの地域包括ケア事業システムの手法を、より上位の都道府県や国レベルでの地域包括ケア事業のシステムに適用することが可能である。以下、この上位レベルの地域包括事業システムについて説明する。
【0308】
前述した自治体レベルの地域包括システムでは、介護や医療の各保険者が、小地域や事業所などの事業単位毎に実施していた。これに対し、上位レベルの地域包括システムでは、都道府県や、国等が保険者となり、各自治体が、自治体レベルでの小地域や事業所などの事業体に相当する位置づけとなり、上位の都道府県や国等が、自治体を事業単位とみなしてPDCAサイクルを進め、地域包括ケア事業を実施することとなる。
【0309】
このような上位レベルの地域包括事業であっても、前述した各実施例に基づく自治体レベルの地域包括ケアシステムと基本的に同じ機能となる。すなわち、本願の実施の形態は、都道府県や国等が実施する地域包括ケア事業を含むものである。
【0310】
これまでの実施形態で説明した小地域や事業所等を含む事業単位の評価に用いる、事業単位別のアウトカム指標は、各心身状態項目の段階別の個人単位の悪化までの維持期間を算出し、この悪化までの維持期間を、そのまま各心身状態項目別に集約(加重平均)して、事業単位別の平均値を出し、それで事業単位の評価を行うものであった。しかし、上述した各心身状態項目別での単純集約したアウトカム指標を用いると、事業単位の正しい評価が出来ない場合が考えられる。
【0311】
そこで、利用者個人について、各心身状態項目の段階別に、利用者全体(例えば、利用者が所属する自治体の利用者全体)に対する位置づけを表す個人評価指標(例えば、偏差値又はN分位値)を求める。そして、利用者が所属する事業単位別に、これら偏差値の平均値又はN分位値の平均値を求め、これら偏差値の平均値又はN分位値の平均値により事業単位を評価することを提案する。
【0312】
ここで、これまでの実施形態で説明した小地域や事業所等を含む事業単位の評価方式を方式1及び方式2とし、新たに提案する個人評価指標を用いた事業単位の評価方式を方式3として説明する。
【0313】
方式1の概要:事業所別・心身状態65項目別に、悪化/改善別に平均維持期間を集計して事業単位の評価に用いる。
【0314】
方式2の概要:事業所別・心身状態集約9指標別・軽重度別・悪化/改善別に平均維持期間及び改善率を集計して事業単位の評価に用いる。
【0315】
方式3の概要:事業所別・心身状態集約9指標別・軽重度別・悪化/改善別に個人評価指標及び改善率を集計して事業単位の評価に用いる。
【0316】
ここで、各心身状態の段階は211あり、この心身状態211段階別の集計は・評価は、単位が細かく取り扱いにくいため、前述の実施の形態で説明したように、これを詳細心身状態項目として、要介護度、認知症自立度、障害自立度と認定調査項目62項目との合計65項目として集約した。さらに、これを、集約心身状態項目として、要介護度、認知症自立度、障害自立度、身体機能・起居動作、生活機能、認知機能・社会生活適応、精神・行動障害、の7項目に集約したと説明した。
【0317】
集約心身状態項目のグルーピングの仕方として、
図66で示すように、身体機能・起居動作(身体系1)と生活機能、(身体系2)とをまとめた身体系1+2のグループと、認知機能・社会生活適応(精神系1)と精神・行動障害(精神系2)とをまとめた精神系1+2のグループを加えた集約9指標としてグルーピングし、以下の説明は集約心身状態項目9指標として説明する。
【0318】
図67は、方式1、方式2、及び方式3の処理フローの概要を比較して示している。
図67において、方式1,2,3共に、第1段階ではデータの収集、匿名化及び突合を行う。第2段階ではサービス種類別・利用者別・心身状態65項目の211段階別に、悪化/改善までの維持期間を集計する。
【0319】
方式1、及び方式2では、集計されたデータをそのまま用いる。方式1では、第3段階で、事業所別心身状態項目65指標について、サービス種類別・事業所別・心身状態65項目別に、悪化/改善別に平均維持期間を集計し、第4段階で事業所評価を行う。すなわち、心身状態65項目悪化までの事業所平均維持期間が長い/短い指標数を集計し、評価する。
【0320】
また、方式2では、第3段階で、事業所別心身状態項目9指標について、サービス種類別・事業所別・心身状態9項目別軽重度別に、悪化/改善別の平均維持期間と改善率を集計し、第4段階で事業所評価を行う。すなわち、心身状態集約9指標別軽重度別に、悪化までの事業所平均維持期間と改善率とを可視化し、評価する。
【0321】
これらに対し、方式3では、前述した第2段階の処理として集計した心身状態65項目の211段階別の悪化/改善までの維持期間に対して、さらに、心身状態65項目の211段階別に個人評価指標に変換する。個人評価指標としては偏差値を求める(方式3−1とする)、又はN分位化、例えば、五分位化する(方式3−2とする)。この偏差値及び五分位化については詳細を後述する。
【0322】
そして、第3段階では、事業所別心身状態項目9指標について、サービス種類別・事業所別・心身状態9項目別軽重度別に、悪化/改善別の個人評価指標と改善率を集計する。さらに、第4段階で、心身状態集約9指標別軽重度別に、悪化の個人評価指標の事業所平均と改善率とを可視化し、評価する。
【0323】
以下、方式1,2,3の詳細を比較説明する。
【0324】
図68は、方式1及び方式2での集計方法を説明している。テーブル681は、前述した段階1で収集、匿名化及び突合したデータを、段階2の処理により「サービス種類別・利用者別・段階別・悪化/改善別の維持期間」に集計した結果を示している。すなわち、「利用者」A−P、その「男女」別、これらの利用者が、所定のサービスを受ける「事業所(事業単位)」、「心身状態項目」としては要介護度を用い、「心身状態項目の段階」としては要介護度の段階(図の例では要介護度1から要介護度4までとする)、「悪化/改善」の区別、「維持期間」の各項目について集計している。
【0325】
テーブル682は、上述の「サービス種類別・利用者別・段階別・悪化/改善別の維持期間」に集計したテーブル671のデータから、前述した第3段階の処理により「事業所別平均心身状態別指標」を集計した結果を示している。すなわち、事業所ごとに、心身状態の各段階(要介護1−要介護4)別、及び要介護度軽度(要介護2以下)要介護度重度(要介護3以上)の各維持期間の平均値を求め、さらに、これらの平均値を、事業所における心身状態(要介護度)別の指標(悪化までの平均維持期間)として算出し、これを基に段階4における事業所の評価を行う。
【0326】
図68の例では、要介護度(集約指標)の平均維持期間(悪化)は、事業所1が26.5ヶ月、事業所2が25.5ヶ月で、事業所1の方が1ヶ月長くなり、事業所1の要介護度に関する活動の評価が高いこととなる。
【0327】
次に、新たに提案する方式3を説明する。方式3では、以下の2パターンで個人評価指標を集計する。
・(方式3−1)偏差値による個人評価指標の集計
・(方式3−2)五分位のグループによる個人評価指標の集計
【0328】
先ず、方式3−1の偏差値による個人評価指標の集計の概要を説明する。
【0329】
偏差値自体は周知であり、
図69(a)(b)で示すように、平均値と標準偏差を使用して、規格化した値である。利用者の偏差値は、心身状態65項目の211段階別に平均値と標準偏差を集計し、心身状態65項目の211段階別に算出する。
<偏差値の計算式>
偏差値=50+(数値−平均値)/標準偏差×10
<偏差値のメリット>
利用者の維持期間と平均維持期間が同じでも、標準偏差が小さい場合、分布の広がりは
図69(a)で示すように小さく、平均値を超えてより長く維持するために、より労力やケアがかかる(より難しい)ことを、偏差値で表すことが可能と考えられる。
【0330】
次に、方式3−2の五分位のグループによる個人評価指標の集計の概要を説明する。
【0331】
図70で示すように、利用者の維持期間を短い方から並べて利用者全体の数を5等分し、それぞれ利用者の人数が約20%(第1五分位数)、約40%(第2五分位数)、約60%(第3五分位数)、約80%(第4五分位数)になるようにし、5グループ(維持期間が短い/平均より短い/平均的/平均より長い/長い)で個人評価する。
【0332】
次に、具体例により偏差値を用いる方式3−1の集計方法を説明する。
図71は偏差値の算出方法を説明している。
図71において、テーブル711は、「サービス種類別・利用者別・段階別・悪化/改善別の維持期間」に集計した結果のテーブル681と同じものである。テーブル712は、テーブル711のデータから、「サービス種類別・心身状態項目(要介護)・段階(要介護1−4)別・性別・悪化/改善別維持期間の平均値と標準偏差」を求めた結果を示している。テーブル713は、これらの値を用いて各利用者の「維持期間」から、「偏差値」を算出した結果を示す。
【0333】
図71の例では、利用者Aは男・要介護1で維持期間が23ヶ月であり、平均値が21.0ヶ月、標準偏差が4.0ヶ月のため、偏差値は55.0になる。
【0334】
図72は、上述のように求められる「偏差値」を、各利用者A−Pごとに算出した結果を示す。
【0335】
」
図73は、
図72で示した利用者A−Pごとに算出した「偏差値」のデータ731から、「事業所別心身状態指標の平均偏差値」723を集計する過程を説明している。すなわち、事業所ごとに、心身状態の各段階(要介護1−要介護4)別、及び要介護度軽度(要介護2以下)要介護度重度(要介護3以上)の各偏差値の平均値を求める。そして、これらの平均偏差値を、事業所別平均心身状態別指標として集計し、これを基に事業所の評価を行う。
【0336】
図73では、要介護度(集約指標)の平均偏差値(悪化)は、事業所1が55.0、事業所2が56.25で事業所2の方が1.25高くなる。
図68で説明した平均維持期間を評価指標とした場合は、事業所1の方が1ヶ月長く、評価が逆転する。
【0337】
図74は、上述のようにして求められる偏差値を、予め設定した5段階評価表741を用い、事業所別211段階別平均偏差値を5段階評価した結果742を示している。
図74では、事業所1・要介護1の平均偏差が53.75のため、偏差値を使った5段階評価表731の「45以上55未満」に該当し、5段階評価の3になる。
【0338】
このように、事業所別211段階別平均偏差値を、それぞれ5段階評価することもできる。
【0339】
次に、方式3−2の集計方法、すなわち、N分位(例えば、五分位)によるNグループ(5グループ)分けによる集計方法を説明する。
【0340】
五分位による5グループ分けとは、前述のように、利用者の維持期間を短い方から並べて利用者全体の数を5等分し、それぞれ利用者の人数が約20%(第1五分位値未満)、約40% (第2五分位値未満) 、約60%(第3五分位値未満)、約80% (第4五分位値未満)になるようにし、5グループ(維持期間が短い/平均より短い/平均的/平均より長い/長い)で個人評価する。
【0341】
図75は五分位による5グループ分け手法を説明しており、テーブル751は、「サービス種類別・性別・心身状態段階別・悪化/改善別の維持期間」の集計結果であり、前述したテーブル681,711と同じものである。この集計結果である維持期間を、テーブル752で示すように、サービス種類別「利用者の性別・心身状態段階別・悪化/改善別の維持期間の五分位値(第1五分位値から第4五分位値)」を設定する。さらに、予め設定した「五分位値による5グループ化」のテーブル753により、各利用者をグループ分け(テーブル754)する。
【0342】
このように、利用者個人を五分位値(第1五分位値から第4五分位値)による5グループにグループ分けした結果を
図76に示す。すなわち、
図75のテーブル751に集計された各利用者を、五分位値による5グループにグループ分けして「グループ」を設定した例を示している。
【0343】
図77は、
図76で説明した利用者個人を五分位値(第1五分位値から第4五分位値)による5グループにグループ分けした結果、すなわち、利用者別・心身状態65項目の211段階別グループのテーブル771を用いて事業所別平均心身状態別指標(テーブル772)のポイントを集計する処理を説明している。すなわち、利用者個人の心身状態項目(要介護度)の段階(要介護1−4)別データ(グループ)を用い、各利用者サービスを受ける事業所別に、要介護度別のポイント、要介護度の軽度/重度別のポイント、要介護度全体のポイントをそれぞれ算出し、事業所相互の評価に用いる。
【0344】
図78は、事業所別悪化/改善別グループ比率の集計結果を表している。すなわち、各利用者の、サービス種類別・性別・心身状態段階別・悪化/改善別の維持期間を、5グループ別に集計した結果から、各グループ5〜1について事業所別に人数(要介護1についてはW5〜W1)を集計し、それらの比率(要介護1についてはa〜e)を求めている。比率(要介護1についてはa〜e)の求め方は以下のとおりである。
【0345】
a=W5/(W5+W4+W3+W2+W1)
b=W4/(W5+W4+W3+W2+W1)
c=W3/(W5+W4+W3+W2+W1)
d=W2/(W5+W4+W3+W2+W1)
e=W1/(W5+W4+W3+W2+W1)
(a+b+c+d+e=100%)
【0346】
このように、ある事業所における要介護1の、五分位による5グループにグループ分けされた人数の比率が算出される。すなわち、心身状態指標単位(上述の場合は要介護度別)の人数比率が算出される。この場合、グループ5の比率やグループ5とグループ4の比率の和の高さは、その指標の維持期間が長いことを表している。
【0347】
図79は、指標・集約指標(要介護1〜4、要介護度軽度、要介護度重度、要介護度)別に、方式1・方式2により事業所別の平均維持期間を集計した場合と、方式3により事業所別の平均偏差値を集計した場合とを比較して示している。
【0348】
図79において、(ア)で示すように、方式1・方式2、方式3の全てにおいて、事業所1より事業所2は要介護度軽度の維持期間(悪化)が長くその偏差値が高いことがわかる。また、(イ)で示すように、方式3における事業所2の要介護度軽度の維持期間(悪化)の平均偏差値が65.0であることから、事業所2、は全事業所の中で維持期間(悪化)が長く、評価指標である偏差値高いことがわかる。また、(ウ)で示すように、方式3における事業所2の介護度軽度と重度で維持期間(悪化)の評価指標(平均偏差値)は、同程度であることがわかる。さらに。(エ)では、要介護度の維持期間(悪化)は、方式1・方式2では、事業所2より事業所1が長いが、方式3の平均偏差値は、事業所1より事業所2が高くなり、方式1・方式2とは評価が逆転している。
【0349】
ここで、方式1・方式2は、各心身状態項目の段階別の個人単位の悪化までの維持期間を算出し、この悪化までの維持期間を、そのまま各心身状態項目別に集約(加重平均)して、事業所別の平均値を出し、それで事業所の評価を行うものであった。このように、各心身状態項目別での集約(加重平均)した指標を用いるため、事業所の正しい評価が出来ない場合がある。
【0350】
方式3は、利用者個人について、各心身状態項目の段階別に、利用者全体(例えば、利用者が所属する自治体の利用者全体)に対する位置づけを表す個人評価指標(例えば、偏差値又はN分位(グループ))を求める。そして、利用者が所属する事業所別に、これら偏差値の平均値又はN分位(グループ)の平均値を求め、これら偏差値の平均値又はN分位(グループ)の平均値により事業所を評価することから、より正確な評価が可能となると思われる。さらに、事業所の評価に、利用者個人の評価結果を反映できると共に、事業所に対して、事業所評価に加え、利用者個人の評価をフィードバックすることもできる。
【0351】
ただし、方式3を採用するためにはある程度以上のデータ数が必要であり、データ数が多く採れない場合などは、方式1・方式2における加重平均による集約を算術平均による集約に置き換える方法が考えられる。
【0352】
これまでの説明では、小地域や事業所等を含む事業単位の評価に用いる、事業単位別のアウトカム指標として、各心身状態項目の段階別の個人単位の悪化/改善までの維持期間を算出し、この維持期間を基に、方式1,2,3として説明した指標をそれぞれ用いる場合の説明であった。
【0353】
この他に、事業単位別のアウトカム指標として、
図29や、
図35等で示すように、事業単位(以下、事業所として説明する)別に、心身状態7項目(以下の説明は前述したように9項目とする)別の改善率を算出し、その改善率により事業所を評価している。
【0354】
事業所の改善率は、前述のように、当該事業所の利用者のうち、
図24で説明した改善が生じた利用者の割合を指す。この割合は上述のように心身状態9項目別に算出する。例えば、心身状態項目を要介護度とした場合、当該事業所において、認定更新チェック期間中に、要介護度の改善があった利用者数の、要介護度に変化があった全利用者数に対する割合を、前記当該事業所の要介護度の改善率としていた。
【0355】
すなわち、どの段階(この場合は要介護度)の利用者が改善されたのかに関わらず、対象とする心身状態項目(この場合は要介護度)全体の改善率を算出していた。このため、心身状態項目のどの段階が改善されたのかはわからない。心身状態項目を要介護度とした場合、一般に、要介護度が軽度(要介護度2以下)での改善と、重度(要介護度3以上)での改善とでは、事業所では重度の改善に大きな労力を要する。すなわち、重度の改善には介護の手間が多くかかると言え、これらの事情を勘案して、事業所を評価すべきである。しかし、上述した手法では、ある事業所における心身状態項目全体の改善率は把握できるものの、どの段階が改善されたかは把握できなかった。
【0356】
そこで、新たに提案する手法は、事業所毎に心身状態65項目の211段階別に改善率を算出する。ただし、このままではデータ数が多すぎ、取り扱いが不便であるので、前述した集約9項目別に、それらの各段階の改善率から、重度と軽度の改善率をそれぞれ求める。すなわち、各事業所別に、集約9項目ごとの軽度/重度別の改善率を算出しこれを事業所評価に用いる。
【0357】
図80は、ある事業所Aにおける利用者ア、イ、ウ、エ、オの、要介護度の悪化改善状況を示している。
図79の認定更新チェック期間中において、利用者アは、要介護度2における悪化が1回、要介護度3における悪化が1回である。利用者イは、要介護度2における悪化が1回である。利用者ウは、要介護度2における悪化が1回、要介護度3における改善が1回である。利用者エは、要介護度2を維持している。利用者オは、要介護度2における改善が1回である。
【0358】
これらの結果から、利用者アについてみると、要介護2の悪化が1件、要介護3の
悪化が1件、利用者イについてみると、要介護2の悪化が1件、利用者ウについてみると、要介護2の悪化が1件、要介護3の改善が1件、利用者エは段階変化件数無し、利用者オについてみると、要介護2の改善が1件となる。これらを要介護2についてみると改善1件悪化3件となり、改善率は25%(=1/(1+3))となる。同様に、要介護3の改善率は50%(=1/(1+1))となる。
【0359】
このように、事業所ごとに、心身状態項目の段階別に改善率を算出する。
【0360】
図81はサービス種類別心身状態段階別改善率を示している。この場合、サービス種類として「特養」と「居宅介護支援」とを例示し、対比して示している。心身状態としては「要介護度」「障害自立度」「認知症自立度」について各段階の悪化、改善件数を集計しているので、これらから軽度/重度別の改善率をそれぞれ算出することができる。
「特養」の「要介護度」軽度の改善率は、「特養」の「要介護度」要支援1から要介護2までのそれぞれ改善率の算術平均により算出し、「特養」の「要介護度」重度の改善率は、「特養」の「要介護度」要介護3と要介護4のそれぞれ改善率の算術平均により算出する。「要介護度」軽度の改善率に非該当を含めないのは、非該当の段階から改善することはないからであり、「要介護度」重度の改善率に要介護5を含めないのは、要介護5から悪化することはなく改善率が100%になるからである。
「居宅介護支援」の「要介護度」軽度の改善率、「要介護度」重度の改善率も同様に算出する。「障害自立度」及び「認知症自立度」についても、
図81の軽重度の区分に従い、軽度/重度別の改善率を算出することができる。
【0361】
なお、
図81は心身状態としては「要介護度」「障害自立度」「認知症自立度」を示したが、勿論、
図66で示した9項目について軽度/重度別の改善率をそれぞれ算出する。このようにして改善率を求めることにより、各事業所を的確に評価することができる。
【0362】
次に、悪化の維持期間の平均偏差値と改善率とを用いてサービス種類別、心身状態別に各事業体(この実施例では各事業所として説明を行う)の評価を行う別の実施例を説明する。この実施例は、
図82で示すように、複数の指標を散布図にプロットすることで、分析対象の事業所全体の分布を捉え、ばらつき具合や強い正の相関がある等の「有意差」や大きな偏りがある「特殊的な傾向」や各指標の平均値との位置関係等を可視化する。
【0363】
図82は、サービス種類を「特養」とし、心身状態は、「要介護度(重度)」「障害自立度(重度)」「認知症自立度(重度)についてそれぞれ事業所を評価した例を示している。勿論、心身状態は上述の例のみでなく他の心身状態についても同様に評価するものとする。
【0364】
図82では、横軸を事業所別の要介護度の改善率、縦軸を事業所別の要介護度の悪化までの維持期間の平均偏差値とした二次元グラフであり、評価対象の各事業所の、改善率及び悪化までの維持期間の平均偏差値をそれぞれ横軸及び縦軸から求まる座標点にプロットした散布図である。そして、破線で示すように、改善率と悪化までの維持期間の平均偏差値とをそれぞれ事業所全体の三分位に分け、事業所をG1からG9の9グループに分類している。それぞれの指標の三分位値は上述した破線で表示している。
【0365】
図82の例では、右上の領域にある事業所のグループG1は改善率が高く、かつ悪化までに維持期間が長く、2つの指標が共に良い事業所に該当する。逆に、左下の領域にある事業所のグループG9は改善率が低く、かつ悪化までの維持期間が短く、2つの指標が共に悪い事業所に該当する。
【0366】
このように、2つの指標を多角的に分析することで、上述のグループG1、G9のほかに、改善率は低いが悪化までの平均維持期間の平均偏差値が長い事業所のグループG7、悪化までの平均維持期間の平均偏差値は短いが改善率が高いが事業所のグループG3、悪化までの平均維持期間の平均偏差値及び改善率が共に中間的な値の事業所のグループG5、悪化までの平均維持期間の平均偏差値が長いが改善率は中間値の事業所のグループG4、悪化までの平均維持期間の平均偏差値が中間値であり改善率の高い事業所のグループG2、悪化までの平均維持期間の平均偏差値が短いが改善率が中間的な値の事業所のグループG6、悪化までの平均維持期間の平均偏差値が中間値であり改善率改善率が低い事業所のグループG8、がそれぞれ存在することがわかる。
【0367】
ここで、心身状態の指標は前述のように集約9指標あるので、先ず、軽重度別の要介護度、障害自立度及び認知症自立度を、グループの組み合わせにより総合的に分析する(
図82は、心身状態重度の場合を示している)。そして、要介護度、障害自立度及び認知症自立度のグループの組み合わせで、後述する要調査対象となった場合、残りの集約6指標(身体系1、身体系2、身体系1+2、精神系1、精神系2、精神系1+2)で調べ分析する。
【0368】
心身状態を、要介護度、障害自立度及び認知症自立度として、グループの組み合わせで事業所を総合的に分類するには、
図82のようにG1からG9の9つのグループに分析したままでは、組み合わせ数が9×9×9の729通りになり、グループの組み合わせで分析するにはパターンが多すぎる。このため、心身状態別に9つのグループを以下のようにA・B・Cの3つのグループに分類し、3×3×3の27通りのグループ分類の組み合わせで事業所を分類する。
【0369】
すなわち、グループG1、G2、G4をAグループとしてまとめる。また、グループG3、G5、G7をBグループとしてまとめる。さらに、グループG6、G8、G9をCグループとしてまとめる。A・B・Cの3つのグループに分類した結果を
図82の分布図に対応させると
図83で示すようになる。
【0370】
上述したグループA・B・Cの組み合わせによる事業所タイプについてみると、例えば、、事業所1の要介護度、障害自立度及び認知症自立度のグループ分類の組み合わせが、AAAの場合、事業所1は身体系、精神系ともにケアの質が高く、要介護度の改善・維持も高いので、ベストプラクティス候補となる。また、事業所2の要介護度、障害自立度及び認知症自立度のグループ分類の組み合わせが、BABの場合、事業所2は精神系のケア及び要介護度の改善、維持は平均的だが、身体系ケアの質が高いと分析される。事業所3の要介護度、障害自立度及び認知症自立度のグループ分類の組み合わせが、CCCの場合、身体系、精神系ともにケアの質が低く、要介護度の改善、維持も低いので事業所3は重点指導先候補となる。さらに、事業所4の要介護度、障害自立度及び認知症自立度のグループ分類の組み合わせが、ACCの場合、要介護度の改善、維持は高いが、身体系、精神系ともにケアの質が低いので、事業所4は何故このような心身状態の組み合わせとなるかケアプランなどについて要調査対象の事業所となる。
【0371】
上述したA・B・Cの3つのグループは、前述のように3×3×3の27通りのグループ分類の組み合わせとなる。
【0372】
図84は、主要な心身状態項目の要介護度、障害自立度、認知症自立度のグループ分類の組み合わせに該当する事業所数を集計した例を示している。
図84では、ベストプラクティス候補と考えられるAAAと分類された事業所数は、心身状態が(軽度)の組み合わせで31事業所、心身状態が(重度)の組み合わせで16事業所が該当している。
【0373】
また、グループ分類組み合わせがACCの場合、介護全般のケアの質が高いのに、身体系及び精神系のケアの質が低い事業所のため、要調査対象とする。このACCと分類された事業所数は、心身状態が(軽度)の組み合わせに該当する事業所はなく、心身状態が(重度)の組み合わせで4事業所が該当している。
【0374】
同様に要調査となるグループ組み合わせはCAAの場合で、介護全般のケアの質が低いのに、身体系及び精神系のケアの質が高い事業所となる。このCAAと分類された事業所数は、心身状態が(軽度)の組み合わせで12事業所、心身状態が(重度)の組み合わせで5事業所が該当している。
【0375】
グループ組み合わせがCCCの場合、介護全般、身体系及び精神系のケアの質が低く、重点指導先の候補として考えられる。このCCCと分類された事業所数は、心身状態が(軽度)の組み合わせはなく、心身状態が(重度)の組み合わせで19事業所が該当している。
【0376】
上記以外に障害自立度のグループ分類がAの場合は、身体系に特化してケアの質が高い事業所と診ることができる。また、認知症自立度のグループ分類がAの場合は、精神系に特化してケアの質が高い事業所と診ることができる。
【0377】
ここで、事業単位(事業所や小地域等)の介護サービスの質を正確で公正に評価する個人評価指標として、前述の各実施例では、悪化までの維持期間(実数値)、偏差値、分位数を用いた場合を説明したが、これらの他に順位や、維持期間(実数値)の算術平均による集約などが考えられる。以下、これらの特徴について説明する。
・維持期間(実数値)
【0378】
維持期間(実数値)は、利用者の維持期間と自治体のサービス種類別平均維持期間との差から、その利用者は自治体平均からどれだけ長く維持しているか、そのまま理解することができる。
【0379】
また、サービス種類別段階別事業所別平均維持期間は段階ごとの事業所の介護サービスの質を評価することができ、自治体のサービス種類別平均維持期間との差から、その事業所(加重平均値)は自治体平均からどれだけ長く維持しているか、そのまま理解することができる。
【0380】
更に、維持期間(実数値)を使用して、自治体のサービス種類別平均維持期間との差から介護給付費の抑制額を算出することができる。これらのことから維持期間に係る個人指標には適しているが、以下のような問題点を有する。
【0381】
すなわち、指標を集約する場合、集約する指標内の段階別平均維持期間に差があり、更に事業所により段階別比率が異なる場合、段階ごとの事業所の分析結果と集約後の事業所の分析結果が異なる場合がある。
・順位
【0382】
段階別の利用者の維持期間による順位は、その段階における各利用者の相対的な位置である。悪化までの維持期間は長い方が良いと考えられる指標であり、長い方から1、2、3、・・・と順位を付ける。順位は段階別平均維持期間の差に影響を受けない利点がある。また、サービス種類別段階別に事業所ごとの利用者の段階の平均値により、段階別に事業所を分析することができる。
【0383】
しかし、順位の前後の差は全て1であることに対して、その維持期間の差はそれぞれの順位間で一定ではない。例えば、1位と2位の差が5ヶ月、2位と3位の差は1ヶ月ということがあり、サービス種類別段階別に事業所ごとの利用者の順位の平均値による評価結果とサービス種類別段階別事業所別平均維持期間による評価結果が異なることが考えられ、維持期間に係る個人指標には適さないことがわかる。
・分位数によるグループ化
【0384】
段階別の利用者の維持期間を分位数によりグループ化する場合、段階別に利用者の維持期間の全ての値から、第1五分位数、第2五分位数、第3五分位数、第4五分位数を算出し、それらの4数を境界として、下表のように、段階別に利用者を5グループにわける。悪化までの維持期間は長い方が良いと考えられる指標であるので、長い期間のグループから5、4、3、2、1と付ける。
【表1】
【0385】
各段階における、各利用者が属するグループは相対的な位置であり、段階別維持期間の差に影響を受けない利点がある。また、分位数によるグループ化は、各グループに属する利用者数はおおよそ同じであり、例えば、五分位による5グループに属する利用者の比率は上述のように全て約20%であり、理解がし易いという特長がある。
【0386】
しかし、サービス種類別段階別に事業所ごとの利用者のグループ番号の平均値により、段階別に事業所を評価することができるが、利用者の維持期間(ヶ月)という情報量を減らしており、精度の高い事業所比較ができない。
【0387】
また、段階別の利用者数が少ない場合、各グループに属する利用者数のばらつきが大きくなり、分位数によりグループ化を均等に行うことができない。従って、分位数によりグループ化を行う場合、ある一定以上の段階別利用者数が必要になる。
【0388】
分位の数(m分位の整数m)を大きくすることで、より精度の高い事業所比較をすることが可能になる。例えば、百分位数(パーセンタイル)によりグループ化することで、100グループに分けることができるが、この場合、より大きな段階別利用者数(異なる数値の個数)が必要になる。
【0389】
このように多少の問題点はあるが、維持期間に係る個人指標には適している。
・偏差値
【0390】
偏差値は、前述したように、平均値と標準偏差を使用して、規格化した値であり、サービス種類別利用者の心身状態211段階別に、維持期間の平均値と標準偏差を集計し、心身状態211段階別に、以下の計算式で利用者の偏差値を算出する。
偏差値=50+(維持期間−平均値)/標準偏差×10
【0391】
この偏差値の計算式は維持期間に対する一次式(一次変換)であり、維持期間の長い方が高い偏差値になる。また、サービス種類別段階別の平均値と標準偏差は共通なので、サービス種類別段階別事業所別の平均偏差値と、その事業所のサービス種類別段階別平均維持期間の関係式は下式となる。
事業所の平均偏差値=50+(当該事業所の平均維持期間−平均値)/標準偏差×10
【0392】
偏差値によるサービス種類別段階別の事業所の評価結果は、サービス種類別段階別事業所別平均維持期間の評価結果と同じになる。
【0393】
また、サービス種類別段階別の利用者の平均維持期間に対する偏差値を50に規格化することで、サービス種類別心身状態65項目、及び9指標に集約した指標により事業所を正しく評価できると考えられる。
【0394】
さらに、利用者の悪化までの維持期間と該当するサービス種類の利用者の平均維持期間が同じでも、標準偏差が小さい場合、前述した
図66(a)で示すように、広がりは小さく、平均維持期間を超えてより長く維持するために、より労力やケアがかかる(より難しい)ことを、偏差値で表すことが可能となる。
【0395】
偏差値の分布は偏差値に変換する前のデータ(維持期間)の分布と同じになるので、維持期間の分布が正規分布でない(正規分布から大きくずれている)場合、偏差値の分布も正規分布でない(正規分布から大きくずれている)分布になる。偏差値の分布が正規分布でない場合、各偏差値のパーセンタイル又はパーセンタイル順位は正規分布の場合の値と異なる。しかし、平均維持期間を超えてより長く維持するためにかかる労力やケアの程度(ケアの難しさ)を偏差値で評価しており、正規分布の場合のパーセンタイル又はパーセンタイル順位との相違は、事業所の評価には影響しないと考えられる。
【0396】
このように、偏差値は維持期間に係る個人指標には最も適している。ただし、ある一定以上の段階別利用者数(異なる数値の個数)を必要とする。
・維持期間(実数値)の算術平均
【0397】
心身状態211段階の指標を心身状態65項目の単位で指標に集約する際、更に心身状態集約9指標に集約する際、段階毎の平均値に差のある指標を集約(加重平均)すると、集計単位(事業所)ごとに段階別のデータ数(利用者数)の比率が異なるため、集約後の平均値(加重平均値)は集計単位(事業所)ごとに段階別のデータ数(利用者数)の比率に左右されることになる。
【0398】
例えば、事業所1の障害自立度B1のデータ数(利用者数)が8件で、各利用者の悪化までの維持期間が21,15,23,19,27,23,13,12ヶ月とすると、その段階別平均維持期間(加重平均値)は19.75ヶ月となる。同じ事業所1の障害自立度B2のデータ数(利用者数)が2名で、各利用者の悪化までの維持期間が30,36ヶ月とすると、その段階別平均維持期間(加重平均値)は33.0ヶ月となる。
【0399】
これに対し、事業所2の障害自立度B1のデータ数(利用者数)が2件で、各利用者の悪化までの維持期間が15,13ヶ月とすると、その段階別平均維持期間(加重平均値)は14.0ヶ月となる。同じ事業所2の障害自立度B2のデータ数(利用者数)が8件で、各利用者の悪化までの維持期間が32,28,30、28、22、28、20,30ヶ月とすると、その段階別平均維持期間(加重平均値)は27.25ヶ月となる。
【0400】
これらの結果、障害自立度B1、障害自立度B2共に事業所1の方が事業所2より長い値である。しかし、障害自立度B1と障害自立度B2とを集約した障害自立度Bの事業所別悪化までの維持期間を集計(加重平均)すると、事業所1は22.4ヶ月、事業所2は24.6ヶ月と、事業所1より事業所2の方が長くなり、段階別の悪化までの維持期間の場合と逆になる所謂逆転現象が生じる。これは、事業所2の障害自立度B2の比率が80%と高く、逆に事業所1のそれは20%と低いことに起因する。
【0401】
そこで、障害自立度B1と障害自立度B2とを集約した障害自立度Bの事業所別悪化までの維持期間を集計する際に算術平均をとると、事業所1では(19.75+33.0)/2=26.38ヶ月、事業所2では(14.0+27.25)/2=20.63ヶ月となり、段階別のデータ数(利用者数)の比率に左右されることはなく、上述した逆転現象は生じない。
【0402】
しかし、算術平均することは、各段階における介護サービスを受けている利用者単位の効果を評価しているとは言えない。
【0403】
このため、データ数(利用者数)が少なく、偏差値や分位によるグループ化が適さない場合に使用するとよい。
・まとめ
【0404】
これらの結果、事業単位(事業所や小地域等)の介護サービスの質を正確で公正に評価する評価指標としては、偏差値が最も適していると判断される。
【0405】
本発明の各実施の形態では、心身状態を表す指標として心身状態の維持期間を用いている。この維持期間指標に対し、従来は、予め設定した期日による2時点間の心身状態の差分の指標化が用いられていた。以下、この2時点間比較指標(以下、従来方式と記載)と維持期間指標(以下、本方式と記載)について、心身状態の改善・維持の定量評価に資するアウトカム指標に必要とされる条件を満たすか否かという観点から、比較する。すなわち、サービス種類別・事業所別にサービスの質の定量的評価を実現し、さらに質向上による介護給付費抑制効果推計までも可能とするためには、以下説明する(1)〜(8)の条件を満たす必要があり、それぞれの条件における、両方式を比較する。
【0406】
結論としては、本方式である維持期間指標が、心身状態の改善・維持に資する正確かつ公正なアウトカム指標としての条件を、満たしている可能性が高いことが理解できる。以下、条件毎に詳述する。
(1) 対象心身状態項目の範囲が広いか?
【0407】
2時点間比較指標(従来方式)、維持期間指標(本方式)ともに、要介護認定データを利用することによって、77個の心身状態項目(要介護度、認知症自立度、障害自立度、認定調査74項目)の各段階や、一次判定ロジック関連の行為区分別基準時間や中間評価項目得点等の連続値を持つ項目まで、集計対象とすることができる。
(2) 心身状態の改善率の精度が高いか?
【0408】
本方式による改善率は、心身状態段階の維持期間の開始月と終了月を特定した上で集計するため、認定更新チェック期間の長短の影響を原理的に受けない。一方、従来方式では、評価期間の長さによって改善率や維持率等が大きく変動する。
(3) 心身状態の悪化までの維持期間の精度が高いか?
【0409】
従来方式は、終了時点を固定した場合でも、評価期間の開始時点の設定の違いで維持期間の算出対象データの値が変わることがあり、評価期間の設定で異なる指標値が算出され、値が一意に特定できないという本質的な問題がある。また評価期間が短い場合、算出対象データの値が変化しない利用者が増え、指標として精度が低くなる。逆にその対策として、評価期間を長くすることで、算出対象データの値が変化する利用者の割合は増えるが、後述する(4)サービス種類の特定、(5)支配的事業所の特定の精度が低下するという問題が生じる。
【0410】
これに対し、本方式は、認定更新チェック期間の設定に関係なく、一意に維持期間が特定される。また、開始月を特定できないデータの場合は算出対象から除外することで、精度を高めることができる。ただし、心身状態項目の段階が認定更新チェック期間内で変化せず維持している間は、指標算出ができないという問題(指標化可能対象者数の減少)はある。
(4) 維持期間中の主たるサービス種類を特定できるか?
【0411】
従来方式でも、評価対象期間内のサービス種類別の総単位数累計値等より、主たるサービス種類を特定することは可能である。しかし、評価期間を長くすると、同期間内に受けるサービスを変更する利用者が増え、主たるサービス種類の特定が困難になる。
【0412】
これに対し、本方式では、同一心身状態段階にある維持期間内の算出対象データを用いることにより、サービス種類の変更が少ないことを期待でき、維持期間中の主たるサービス種類を的確に特定できる。
【0413】
例えば、ある心身状態の維持期間が7ヶ月とし、分析対象のサービス種類(例えば、特養)のサービスを事業所A、事業所B、及び事業所Cから受けている状態とする。この維持期間の7ヶ月について、各月別に分析対象のサービス種類の利用率が、その月の全サービスに占める割合が予め設定した第1の閾値(例えば、50%とする)以上かを判定する。
【0414】
その結果、例えば、4ヶ月目の月の利用率が当該サービス種類の利用率が第1の閾値以下の月は、この4ヶ月目の月を当該サービス種類の影響が強い月から除外する。以上の除外条件を満たさないサービス提供月が、維持期間(前述した7ヶ月)中に1つでも存在する場合、当該サービス種類が、維持期間7ヶ月中の主たるサービス種類と特定する。
(5) 維持期間中の主たる事業所を特定できるか?
【0415】
従来方式でも、評価期間内の事業所が介護サービスを提供した単位数により支配的事業所を特定することが可能である。しかし、評価期間を長くすると、評価期間内に受けるサービスを提供する事業所数が増え、主たる事業所の特定が困難になる。
【0416】
一方、本方式では、維持期間内に各事業所が介護サービスを提供した単位数により主たる事業所を特定することが可能となる。
【0417】
例えば、上述の(4)で説明したある心身状態の維持期間が7ヶ月のうち、第1の閾値に達しない月を除外した残りの6ヶ月の各月について、事業所A,B,Cから受けた介護サービスの単位数を、予め設定した第2の閾値(例えば、事業所A,B,Cの全単位数の50%とする)と比較する。
【0418】
その結果、例えば、6ヶ月目の月における事業所A,B,Cの各単位数が第2の閾値以下であった場合、この月を除外する。そして、この6ヶ月目及び前述した4ヶ月目を除外した残りの月について、1ヶ月目、2ヶ月目、3ヶ月目及び7ヶ月目の月ではA事業所の単位数が第2の閾値以上であり、5ヶ月目の月ではB事業所の単位数が第2の閾値以上であるとする。このとき、心身状態の継続した7ヶ月間中、当該サービスを提供する事業所Aは4ヶ月間の影響を与え、当該サービスを提供する事業所Bは1ヶ月間の影響を与えていると判定する。
【0419】
このように、第2の閾値で判定した結果、心身状態が継続した期間である7ヶ月のうち、事業所Aは4ヶ月間(約57%)、事業所Bは1ヶ月間(約14%)の影響を与えている。そこで、第3の閾値を、例えば50%にした場合、影響期間の割合が約57%の事業所Aが第3の閾値を満たすため、維持期間中の主たる事業所として特定される。
(6) 維持期間中に影響を与えたサービス量を算出できるか?
【0420】
従来方式でも、評価期間内に提供された各サービス項目の単位数により、各サービス項目の2時点間比較指標への影響度合いを算出することは可能であるが、維持期間が特定されていないため、影響を与えるサービス量の算出が正しく行えない。
【0421】
一方、本方式では、維持期間内の提供された各サービス項目の単位数は、各サービス項目の維持期間の指標値への影響度合いと考えることができ、維持期間内の提供された各サービス項目の単位数と維持期間の指標値との関係を評価することも可能になり、影響を与えるサービス量の算出が正しく行える。
(7)心身状態指標の集約はできるか?
【0422】
行政職員や事業所にとって分かりやすく即時把握可能な集約指標を実現する必要があり、両方式ともに、心身状態項目の各段階を集約対象とすることができる。
【0423】
従来方式では、心身状態項目の各段階の改善、維持のデータから集計単位の改善率と維持率が算出され、それらの算術平均値を算出することにより集約が可能である。
【0424】
本方式については、心身状態項目の各段階の維持期間から、集計単位の維持期間の平均値の加重平均を算出することにより集約が可能である。
(8)介護給付費抑制効果推計への適用が容易か?
【0425】
従来方式では、評価期間のどの時点で悪化・改善したかはわかないが、要介護度が悪化・改善する全ての組合せの平均値を計算することで、給付費の差を計算することができる。しかし、精度は高くない。
【0426】
一方、本方式では、要介護度と一人当たりの平均介護給付費、さらに要介護度別維持期間とその間の介護給付費累積額との間に、それぞれ整合性があるため、比較的精度の高い介護給付費抑制効果推計が可能になる。
【0427】
これら(1)〜(8)の条件を考察した結果、前述のように、本方式である維持期間指標が、心身状態の改善・維持に資する正確かつ公正なアウトカム指標としての条件を満たしていることが明らかである。
【0428】
なお、上述した維持期間の指標は、
図2で示したデータベース16の介護保険データ161などを用いて地域包括ケア事業システム15を構成するコンピュータシステムにより、予め設定されたプログラムにより算出することができる。
【0429】
前述の実施例において、
図2で示した地域情報管理機能部22が作成する画像として、
図58乃至
図61で示す活動評価シート(自治体内の小地域他事業所などの事業体の活動を評価する画像)を例示した。これら
図58乃至
図61で示す活動評価シートの画像は、心身状態(要介護度、生涯自立度、認知症自立度)を、いわゆるレーダチャートとして表現している。
【0430】
この活動評価シートは
図85で示すような画像として表現してもよい。
図85は、事業体として、例えば、特養の事業所を対象としており、各事業所A、B、C、・・・別に、年度ごとの事業所活動評価シートを出力し、提供する。
【0431】
この事業活動評価シートは、上段の事業所取組みの実績及び計画と、下段のアウトカム指標の実績及び計画とで構成されている。上段では、心身状態改善に資するであろう取組の例を挙げ、下段はこれらの取り組みの結果を表す心身状態のアウトカム指標の年度ごとの推移を表している。
【0432】
すなわち、上段では、心身状態が良くなる取り組みの事例として「ユニット型個室の比率」と「サービス提供体制強化」と「認知症専門ケア状況」とを挙げており、横軸が時間軸、縦軸は評価軸であり、年度ごとの計画値に対する実績値により取り組み状況を表している。図では、2020年度までの計画値に対して2017年度までの実績値が示されている。
【0433】
ここで、ユニット型個室とは、完全個室ではなく、炊事場などを共用として、個人のプライバシーを尊重しつつ、他人とのコミュニケーションを保てるようにしたものである。このユニット型個室の使用が心身状態の改善に資すると考えられており、事業所においてその比率を高めることを取り組みの一つとしている。
【0434】
サービス提供体制強化における縦軸は、上位に行くほど、手厚い体制(スタッフの配置人数が多い等)であることを意味する。
【0435】
認知症専門ケア状況における縦軸は、上位に行くほど認知症のケアができるレベルのスタッフを有していることを表している。
【0436】
下段はこれらの取り組みの結果を表す心身状態のアウトカム指標の、年度ごとの推移を表しており、心身状態の代表的なアウトカム指標の例として「要介護度」と「障害自立度」と「認知症自立度」とを挙げている。
図85の下段では横軸が改善率、縦軸は悪化までの平均維持期間であり、年度ごとの計画値に対する実績値によりアウトカム指標の年度ごとの推移を表している。なお、符号の隣に記されている数値は年度を表しており(15=2015年、・・・)図では、2020年度までの計画値に対して2017年度までの実績値が示されている。
【0437】
このような事業所活動評価シートを対応する事業所に提供することで、各事業所は活動成果や計画に対する進捗状況をタイムリーに把握でき、適切な経営計画を策定することができる。
【0438】
次に、小地域別サービス需給分析について述べる。地域包括ケア事業における業務の必要性・重要性として、サービス種類及び小地域ごとにサービス需給バランスの最適化が求められる。また、現状の小地域ごとのサービス基盤が、真にサービスの需要を満たしているかの検証も必要となる。
【0439】
このような業務遂行上の問題点として以下に記載の事項があげられる。
・サービス種類別の主たる高齢者状態像に対して、小地域別のサービス需要と サービス供給のギャップやバランスを定量的に把握する方法がわからない。
・サービス種類ごとに、どのような粒度の小地域単位でサービス需給調整を考えれば良いかがわからない。
【0440】
このような問題点を解決する機能として、サービス種類ごとの主たる高齢者状態像(心身状態像×介護力×経済力等)に対応した、小地域別のサービスの需要(利用率)と供給(提供率)のバランスや過不足を可視化することが重要である。
【0441】
このような可視化が行われると、次のような効果が生じる。
・地域のサービス基盤最適化に向けた具体的方針の明確化。
・現在のサービス基盤整備状況において、本当に各小地域居住の利用者のニーズ(利用者状態像ごとに求められるサービス)を満たしているサービスが、過不足なく提供できているか等の具体的検討が可能になる。
【0442】
前述した実施例においても、
図11乃至
図15で説明したように、サービス種類毎に、各小地域の事業所における居住者の利用率を、
図6で示した地域マネジメント支援機能部21の第1の要因分析部52により、介護事業11での量的分析を行い、帯グラフなどにより、可視化することが提案されている。
【0443】
図86で説明する実施例は,上述した
図11乃至
図15で説明した分析結果とは異なる他の分析結果を示しており、第1の要因分析部52による分析に基づき、サービス種類別の主たる高齢者状態像(心身状態像×介護力×経済力等)に対応した、小地域別のサービスの需要(利用率)と供給(提供率)のバランスや過不足を可視化した画像を出力する。
【0444】
すなわち、
図86は小地域別サービス需給分析結果の画像を示しており、サービス種類別・高齢者状態像別にサービス需要供給のバランスやギャップを可視化している。このため、各サービスの小地域ごとの充足状況の検証を通じて、最適な基盤整備につなげることができる。
【0445】
図86では、サービス種類をグループホーム(主として地域密着型サービス)としており、主な高齢者状態像(後で詳述する)は、麻痺無×障害自立度軽度×認知症自立度軽度とする。また、自治体における小地域の階層(後で詳述する)は中階層とする。そして、横軸はサービス利用率(%)、すなわち、利用者が、その居住地域に所在する事業所を利用する割合とし、縦軸はサービス提供率(%)、すなわち、事業所が、その所在地域に居住する利用者にサービス提供する割合とし、各小地域を、自己のサービス利用率、及びサービス提供率に対応した座標上にプロットしている。
【0446】
図86では4つの象限に区分され、それらの中心点を自治体平均とする。また、第1象限の領域86a内の小地域は需給バランスが良いと分析され、今後のアクションとしては、現状維持とする。すなわち、当該地域の需要に対し、地域内の事業所でバランス良く供給できており、このままの状態を維持することとする。
【0447】
第4象限の領域86b内の小地域は供給過多であり、今後のアクションとしては、これ以上事業所を増やさない参入抑制とする。すなわち、当該地域の需要に対し、地域内の事業所で充分供給できている。しかし、当該地域に居住する利用者へのサービス提供率が低いことは、当該地域の事業所が利用者に対して多過ぎ、他地域の利用者にも供給していることを意味し、供給過多の状態と判断される。このため、当該地域に事業所を設置してもこれ以上効果が見込められず、今後のアクションとしては、参入抑制とする。
【0448】
第2象限の領域86c内の小地域は供給不足であり、今後のアクションとしては、当該地域の事業所を増やすなど、サービス基盤充実とする。すなわち、当該地域の事業所が少ないため、当該地域の需要に対し、地域内の事業所だけでは供給が足りておらず、他の地域の事業所から供給を受けている状態を表している。このため、今後のアクションとしては、当該地域への事業所設置の計画を立てることとする。
【0449】
第3象限の領域86d内の小地域は要調査対象であり、個別地域施策を採ることとする。すなわち、当該地域に居住している利用者は、所在している事業所を利用せず、他地域の事業所を利用していることを表している。このため、今後のアクションとしては、他地域の事業所を利用する理由について調査し、地域課題を抽出することとする。
【0450】
このような画像を得るための第1の要因分析部52のシステム構成を
図87に示す。
図87において、受領データ87aは、
図1で示したデータベース16から読み出したもので、図示のように、認定データ、給付実績データ、介護保険資格データ、住基データ、小地域情報、事業所情報である。
【0451】
分析用データ作成部87bは、これら受領データ87aのそれぞれを変換や加工し、その他のデータと組み合わせて小地域分析を行うための分析用データ87cを作成する。分析用データ87cは、図示のように、小地域データ、高齢者状態像データ、介護サービスデータ、事業所データのそれぞれである。分析用データ87cのそれぞれについては後述する。
【0452】
基礎集計部87dは、介護サービス需給分析の基礎となる各種分析用データ87cの実態(1号被保険者数、認定者数、受給者数及びサービス未利用者数等)を把握し、基礎集計結果データ87eを作成する。この集計結果より、分析条件を決める。この基礎集計についても詳細を後述する。
【0453】
介護サービス需給分析部87fは、各サービス種類について、「小地域」、「高齢者状態像」、「介護サービス」及び「事業所」の4つの観点から、介護サービス需給状況の分析(需要と供給のギャップ分析等)を行い、分析結果データ87gを作成し、分析結果87hを出力する。
【0454】
介護サービス需給状況の分析(小地域分析)を行うためには、上述のように分析用データ87cとして、小地域データ、高齢者状態像データ、介護サービスデータ、及び事業所データの4つを用い、これら、「小地域」、「高齢者状態像」、「介護サービス」、及び「事業所」の4つの観点から、介護サービスの需給状況の分析を行う。以下、それぞれの分析の観点について説明する。
【0455】
(1)小地域:自治体内を第1階層「自治体」、第2階層「大地域」、第3階層「中地域」、第4階層「小地域」に分ける。
【0456】
(2)高齢者状態像:高齢者状態像は、高齢者の「要介護度」、「心身状態像」、「介護力」及び「経済力」により定義する。「心身状態像」、「介護力」、及び「経済力」については後述する。
【0457】
(3)介護サービス:サービス種類を、「居宅系」、「施設系」、及び「居住系」に分けて分析する。なお、各サービスにおいて、それらを特徴付ける基本サービスや加算サービスについても考慮する。
【0458】
(4)事業所:「サービス種類」、「事業所番号」、「所在地が含まる小地域コード」、「定員」、「スタッフの資格別人数」、「法人」、及び「提供する基本サ-ビスや加算サービス」等を切り口として分析を行う。
【0459】
次に、前述した基礎集計部87dで行われる基礎集計について詳述する。基礎集計は前述のように、介護サービス需給分析の基礎となる各種分析用データ87cの実態を把握するための集計で、
図89に示す各集計指標毎に、1号被保険者数、認定者数、利用者数、未利用者数(認定者数−利用者数)、及び1人当り月別給付額を集計する。
【0460】
この基礎集計には単独集計と組合せ集計とがある。単独集計では、小地域の観点により、各階層の小地域別の高齢者の実態を把握する。また、高齢者状態像の観点から、認定・受給者の心身状態(特別な医療・麻痺・認知症自立度・障害自立度)、介護力および経済力の実態を把握する。介護サービスの観点から、受給者の介護サービス(居宅、施設、居住)を把握する。さらに、事業所の観点から、保険者(自治体)内所在事業所一覧や給付実績データを基に、事業所の属性分析を行う。
【0461】
組合せ集計では、小地域×高齢者状態像の観点から、小地域別に高齢者状態像の実態(偏り等)を可視化し、高齢者状態像×介護サービスの観点から、高齢者状態像と介護サービスとの関係を把握する。また、介護サービス×事業所の観点から、事業所別の介護サービスの実態(偏り等)を可視化する。小地域×事業所の観点からは、事業者情報に対して集計を行い、事業所の実態を把握する。さらに、高齢者状態像×事業所の観点から、事業所別の高齢者状態像の実態(偏り等)を可視化する。
【0462】
図89は、これらの集計内容をまとめて示している。
【0463】
次に、
図87で説明したシステムにより
図86で示した画像データを作成する処理の流れ、すなわち、サービス需給分析の流れを
図88により概略説明する。
【0464】
図86で示した小地域別サービス需給分析では、主に地域密着型サービスを対象としている。「サービス利用率(各小地域に居住する高齢者が、同地域に所在する事業所をどの程度利用しているか)」や「サービス提供率(各小地域に所在する事業所が、同地域に居住する高齢者にどの程度サービスを提供しているか)」を可視化している。これにより、サービス種類ごとに、どの階層の小地域で、需要と供給のバランスやギャップがあるかを明らかにする。また、小地域の階層は後述する3階層に分けて分析する。
【0465】
このサービス需給分析は、
図88で示すステップ(1)〜(6)に従って順次処理される。以下、(1)〜(6)の各ステップを詳細に説明する。
【0466】
(1)先ず分析対象となるサービス種類を決める。
図90は介護サービスの全体像を表している。介護サービスは、大別して、「居宅サービス」、「施設サービス」、及び「居住サービス」からなる。「居宅サービス」については、「訪問系福祉サービス」、「訪問系医療サービス」、「通所系福祉サービス」、「通所系医療サービス」、「ショートステイ」及び「福祉用具貸与」があり、これらの組み合わせもある。
【0467】
「施設サービス」には、「特養」、「老健」及び「療養施設(介護医療院)」がある。居住サービス」としては、「グループホーム」、「特定施設入居者生活介護」及び「小規模多機能型居宅介護」がある。これらにより多くのサービス種類が構成される。
図91にその詳細を示す。前述した
図86の例では、サービス種類として「グループホーム」を設定している。
【0468】
(2)
図88に戻って、サービス種類別に高齢者状態像の基礎集計を行う。高齢者状態像とは、
図92で示すように、「要介護度」、「心身状態像」、「介護力」及び「経済力」の組合せにより定義する。さらに、心身状態像は、「特別な医療」、「麻痺」、「骨折」、「認知症自立度」及び「障害自立度」の組み合わせにより定義する。この心身状態像の各構成要素段階の定義を
図93に示す。
【0469】
すなわち、
図92で示した上述の心身状態像の構成要素別に、
図93ではそれぞれの構成要素段階、認定調査項目選択肢、及びそれらに対応する特記事項・備考が組み合わされている。例えば、
図92における構成要素が「特別な医療」で、そのNo.4「介護施設×有」の場合、
図93では、「特別な医療」の欄のNo.4の行の構成要素段階、認定調査項目選択肢、及び特記事項・備考の各定義が対応する。他の「麻痺」、「骨折」、「認知症自立度」及び「障害自立度」についても同様に定義されている。
【0470】
高齢者状態像を構成する「介護力」は、高齢者世帯の構成(高齢者本人に対する続柄)、及び高齢者世帯を構成する各人の要介護度を定義し、その組合せを基に決定する。すなわち、先ず、
図94で示す介護対象の高齢者世帯に関するデータを住基データや認定データなどから作成する。
【0471】
図94では、世帯を構成する高齢者と同居人がA,B,Cであり、住基データの続柄は,Aが世帯主、Bが妻、Cが子である。この住基データの続柄では、誰が介護対象の高齢者か判別出来ないので、介護対象の高齢者を本人とし、この本人に対する続柄に変換する。
図94のように、世帯主が本人の場合、妻は配偶者、子はそのまま子とする。なお、妻が本人の場合は、世帯主が配偶者となる。
【0472】
これら世帯を構成する各人の内、対象者(65歳以上)の要介護度(軽重分類)を定義する。
図94では、本人の要介護度は重度であり、配偶者の要介護度は軽度であるとする。
【0473】
この高齢者世帯のデータに基づき、
図95で示すように、高齢者世帯構成パターンと同居対象者の心身状及びその軽重度との組み合わせから介護力を決定する。
図94で示した世帯では、高齢者世帯構成パターンは「本人+配偶者+子」であり、同居対象者の心身状及びその軽重度は「軽度」であるため、介護力はNo.6の「中」となる。
【0474】
高齢者状態像を構成する「経済力」は、高齢者本人と同一世帯居住者の所得段階を抽出し、その中で本人と配偶者のみに注目して世帯の経済力を決定する。2人だけとする理由は、経済的自立基本単位を本人と配偶者までとしているためである。したがって、高齢者本人の世帯人の経済力情報は、65歳以上の1号被保険者のみとなる。また、経済力は収入を元に算出し、貯蓄は含まない。
【0475】
この「経済力」を求めるにあたっては、先ず、
図96(a)で示す高齢者本人と同一世帯居住者の経済力を表すデータを、住基データや介護事務データ等から作成する。世帯構成は、前述した本人A、配偶者B、子Cとする。これら各人について所得段階を設定する。所得段階は本人が所属する自治体で定められた本自治体の段階と、地方税法により定められた段階とがあり、これら双方の段階を用いている。本自治体で定めた段階は、地方税法による段階より
図97で示すように細かく定められている。
【0476】
次に
図96(b)で示す本人の経済力判定テーブルと同図(c)で示す配偶者の経済力判定テーブルとを用いて、同図(d)で示すように本人と配偶者の経済力を判定する。
【0477】
図96(a)で示す高齢者本人と同一世帯居住者の場合、本人Aの所得は、1500万円以上のため、
図96から本自治体の所得段階は第13段階、地方税法による段階は第9段階となる。配偶者Bの所得は、80万円以下のため、
図97から本自治体の所得段階は第6段階となる。
【0478】
このため本人の経済力は、経済力判定テーブル
図96(b)の一番下の行に該当し経済力「高」と判定される。なお、経済力判定テーブル
図96(b)により、本人の所得段階が地方税法の第4段階以下の場合は、配偶者の経済力も低いことがわかるが、地方税法の第5段階以上の場合は配偶者の経済力が高い可能性がある。本人と配偶者の生計が一であるならば、本人の所得段階が地方税法の第5段階以上の場合は、本人単独の経済力と、経済力判定テーブル
図96(c)で判定された配偶者の経済力を合わせたものを「経済力」とみなす。
【0479】
前述のように、本人の経済力は「高」であり、配偶者の所得は80万円以下のため経済力判定テーブル
図96(c)では、経済力「低」と判定されるので、本人と配偶者の経済力は同図(d)から「高」と判定される。
【0480】
このようにして組み合わせることにより高齢者状態像が得られる。この高齢者状態像の算出は、小地域単位ではなく、高齢者が属する自治体単位で行い、各サービス種類別にそれぞれ求める。
【0481】
(3)サービス種類別に、主たる高齢者状態像を決める。すなわち、(2)で求めた高齢者状態像は要介護度、心身状態像、介護力、及び経済力の組み合わせが多岐にわたり、膨大なデータとなるので、これらの中から、対応するサービス種類別に最も多い高齢者状態像を主たる高齢者状態像と決定する。
【0482】
(4)
図86で示したように、サービス種類別×主たる高齢者状態像別×小地域階層別に、サービス利用率とサービス提供率の集計を行い、対応する座標位置にプロットする。
図86では、前述したように、サービス種類がグループホームであり、このグループホームの利用者の高齢者状態像の中で最も多いものが主たる高齢者状態像別と設定され、さらに小地域階層として中地域が設定されている。
【0483】
ここで、小地域階層とは、自治体内を、例えば第1階層「自治体」、第2階層「大地域」、第3階層「中地域」、第4階層「小地域」に分けることをいう。第4階層の「小地域」は、日常生活圏域等のように、文字通り小さな範囲を指す。第3階層の「中地域」は、小地域を複数集合させた中程度の範囲を指す。第2階層の「大地域」は、中地域を複数集合させた行政区等の大きな範囲を指す。第1階層の「自治体」は文字通り自治体自身を指し、隣接する他の自治体との比較等に用いる。
【0484】
これら各階層のデータには
図98で示すように、演算処理のためにコードがそれぞれ附されており、これらデータを組み合わせた小地域マスタを構成している。
【0485】
(5)需給分析に最適な小地域階層を特定する。サービス需給分析で考慮すべき小地域の階層は、サービス種類別に異なり、上位の階層では分析結果が異なることがある。そのため、1つ上の階層の地域についても、サービス需給分析を行い、総合的にグループホームの小地域別整備方針を検討する。
【0486】
例えば、
図99において、サービス種類が地域密着型サービスのグループホームの場合、まず、日常生活圏域である小地域での需給分析を行い、次に各小地域を包含する上位階層である中地域での分析を行う。ケース1‐2では、小地域A2は、第4階層の「小地域」で需給分析を行ったところ、供給不足となった。次に、他の小地域A2を含む中地域B1として需要分析を行ったところ、需給バランス良となった。このような場合、小地域A1が供給不足であっても,他の小地域A2を包含した中地域B1では需給バランス良であるため、今後の想定アクションは、中地域B1を構成する小地域A1,A2は、共に現状サービス基盤維持となる。
【0487】
ケース1‐3のように、第4階層の「小地域」における需給分析では小地域A1,A2共に供給不足の場合、これら小地域A1,A2を含む中地域B1で需給分析を行っても供給不足となる。このような場合の今後の想定アクションは、当該中地域B1内のサービス基盤維持を充実させることとなる。
【0488】
これらのことから、サービス種類が地域密着型サービスのグループホームの場合は、需給分析に最適な小地域階層は第3階層の中地域である。したがって、グループホームについては、第3階層の需給分析結果に基づいて地域別整備方針を検討する。
【0489】
また、通所介護の場合は、地域密着型サービスではないため、日常生活圏域である小地域の上位階層である中地域と大地域の2階層についてサービス需給分析を行い、通所介護サービスの小地域別整備方針を検討する。通所介護サービスの場合は、図示のように第2段階の大地域の需給分析結果に基づいて地域別整備方針を検討するとよい。
【0490】
(6)需給類似小地域のグルーピングをおこなう。すなわち、
図86で示した4つの領域86a、86b、86c、86dに入る小地域を以下に示すように4つのグループにグルーピングし、夫々にアクションを設定することにより、自治体全体のアクション計画を立てることができる。
・需給バランス良好地域 ⇒ 現状維持
・供給過多地域 ⇒ 参入制限
・供給不足地域 ⇒ サービス基盤充実
・要調査地域 ⇒ 個別地域施策
【0491】
ここで地域包括ケア事業において、自立支援・重度化防止等を実現するため、関係者のサービスの質の向上が必要で、そのためにサービスの質の可視化が重要となる。質が高いサービスとは、心身状態が改善・維持に資するサービスである。
【0492】
しかし、業務遂行上の問題として、サービスの質を公正に評価できるアウトカム指標の定義が困難であり、また、サービス種類別・事業所別にサービスの質を可視化し、課題抽出や事業所のベストプラクティス/ワーストプラクティスの具体的抽出が困難であった。
【0493】
このような問題を解決するために、前述のように高齢者心身状態に基づくアウトカム指標(改善率・悪化までの維持期間)を導入することが提案された。その結果、各事業所のサービスの質が可視化され、成果をあげている事業所や、重点指導すべき事業所等の具体的把握と、きめ細かい指導計画の策定が可能になる。また、従来の事業所による自己点検結果との比較により、サービスの質に係る多くの気づきが得られる可能性がある。さらに、事業所の経営層(管理者)と現場スタッフの間のサービスの質に関する意識のずれ等を是正する材料になる可能性がある。
【0494】
このように、高齢者心身状態に基づくアウトカム指標(改善率・悪化までの維持期間)を用いて、サービスの質を可視化することは、本出願においても、
図82で示す実施例により説明されている。
図100で説明する実施例は、
図82で示す実施例と同様の手段により、サービスの質を可視化すると共に、可視化によりベスト又はワーストプラクティスに分析された事業体(事業所として説明する)がどのような特性を持っているかを可視化するものである。
【0495】
この実施例では、心身状態の軽重度別に事業所の「改善率」と「悪化までの平均維持期間」を散布図にして介護サービスの質の観点で事業所をグループ化する。
図100の実施例では、サービス種類を「特養」とし、サービス利用者の心身状態は、「要介護度(重度)」とした例を示している。すなわち、
図100は、横軸を事業所別の要介護度の改善率、縦軸を事業所別の要介護度の悪化までの平均維持期間とし、各事業所を横軸及び縦軸から求まる座標点にプロットした散布図である。
【0496】
図100の例では、右上の領域100a内にある事業所B1,B2,B3のグループは、改善率が高く、かつ悪化までに平均維持期間が長く、2つの指標が共に良い事業所に該当する。逆に、左下の領域100b内にある事業所W1,W2,W3のグループは改善率が低く、かつ悪化までの平均維持期間が短く、2つの指標が共に悪い事業所に該当する。
【0497】
上述の分析結果を受けてのアクションは次のとおりである。領域100a内の事業所B1,B2,B3は、ベストプラクティス候補事業所であり、 好事例ヒアリングの対象とする。すなわち、好事例をサービスの質が高い事業所からヒアリングし、他事業所に向けて公表等を実施することで、事業所全体のサービスの質を上げることができる。
【0498】
これに対し、領域100b内の事業所W1,W2,W3は、ワーストプラクティス候補事業所であり、重点指導対象とする。すなわち、サービスの質が低い事業所を抽出し、後述する特性分析により実態に合う具体的な改善指導を実施することで、効果的にサービスの質を向上させることができる。
【0499】
次に、上述のようにして抽出したベストプラクティス候補事業所B1,B2,B3のグループ、及びワーストプラクティス候補事業所W1,W2,W3のグループ別に、サービスの質との相関が強いと想定される事業所特性項目に注目し、両事業所グループ間で有意差がある特性項目を可視化する。それらの情報を、事例集等で、各事業所にフィードバックを行い、行動変容を促す。
【0500】
図101は、サービスの質との相関が強いと想定される事業所特性項目を、ベストプラクティス候補事業所B1,B2,B3とワーストプラクティス候補事業所W1,W2,W3とで比較した状態を示している。この実施例では、サービス種類が「特養」であるめ、サービスの質との相関が強いと想定される事業所特性項目として職員1人当たりの利用者数と、ユニット型個室比率を用いた。
【0501】
図101では、職員1人当たりの利用者数についてみると、ワーストプラクティス候補の事業所W1,W2,W3は、職員1人当たりの利用者数がベストプラクティス候補の事業所B1,B2,B3と比べて有意に多い。このため、ワーストプラクティス候補の事業所W1,W2,W3では職員の人数不足による業務負荷が増大し、これがサービスの質の低下につながるためと考えられる。
【0502】
また、ユニット型個室比率についてみると、ベストプラクティス候補の事業所B1,B2,B3は、ワーストプラクティス候補の事業所W1,W2,W3と比べて、ユニット型個室の比率が高い。すなわち、入居者のプライバシーとコミュニケーションのバランスに関して。個室や多床室と比べて、有意にユニット型個室比率が高く、これがサービスの質の向上につながるためと考えられる。
【0503】
前述した分析処理の手順をまとめると以下のようになる。
(1)対象サービス種類の選定。
(2)利用者別・アウトカム指標(改善・悪化までの維持期間)の集計。
(3)事業所別・アウトカム指標(改善率、悪化までの平均維持期間)の集計。
(4)事業所別・アウトカム指標の散布図から、事業所をグルーピング(ベストプラクティス、
ワーストプラクティスの事業所候補等の抽出)。
(5)サービス種類別・事業所特性項目の選定。
(6)サービス種類別・事業所特性項目の集計。
(7)サービス種類別・事業所特性項目別・ベストプラクティス、ワーストプラクティス事業所候補の有意差有無チェック。
(8)有意差が高い事業所特性項目の分析結果を各事業所にフィードバック。
【0504】
次に、同様の手法を用いて、
図2で示した総合事業におけるサービスの質の可視化についての実施例を説明する。すなわち、
図102は総合事業サービスの事業単位の一例として、自治体に設けられた複数の通いの場を対象とし、これら通いの場のプログラムの質の可視化を行っている。
【0505】
図102では、心身状態の軽重別に利用者を分けて、通いの場の「改善率」と「悪化までの平均維持期間」を散布図にして、プログラム(総合事業サービス)の質の観点で、通いの場をグループ化している。 例えば、心身状態の軽重度別として、自立/虚弱/要支援グループなどに分けて、各グループを心身状態段階とみなして、改善と悪化までの維持期間を指標化している。
【0506】
すなわち、横軸を改善率、縦軸を悪化までの平均維持期間とし、通いの場の参加者個人ごとに、心身状態集約段階別(例として、自立段階/虚弱段階/要支援段階)の改善/悪化までの維持期間等を集計し、通いの場ごとに、心身状態集約段階別の改善率と悪化までの平均維持期間を集計し、各通いの場の改善率と平均維持期間とに対応する座標点をプロットし、散布図にして、通いの場をグルーピングする。
【0507】
そして、通いの場グループ別に、対応アクションを検討する。すなわち、
図102の領域(グループ)102aに属する通いの場B1,B2,B3は、ベストプラクティス候補であり、好事例ヒアリングを行う。好事例としてプログラムの質が高い通いの場からヒアリングし、その他の通いの場や、通いの場開設希望者等に向けて事例公表等を実施することで、全ての通いの場のプログラムの質を上げる。
【0508】
一方、
図102の領域(グループ)102bに属する通いの場W1,W2,W3は、ワーストプラクティス候補であり、重点指導を行う。すなわち、プログラムの質が低い通いの場に対して、好事例などを用いて具体的な改善指導を実施することで、プログラムの質を向上させる。
【0509】
次に、
図6で示した第1の要因分析部による総合事業サービスにおける地域特性分析の実施例について
図103により説明する。
図103に示す例では、要支援以下の全高齢者に対して、小地域別の新規認定率と同地域の通いの場参加率を散布図にして、通いの場に係る地域特性を表しており、その結果を受けて、通いの場の拠点増加・参加誘導、プログラムの質向上に係る指導等へつなげる。
【0510】
すなわち、横軸を通いの場参加率(対高齢者数)、縦軸を新規認定率(対高齢者数)とし、小地域別通いの場の参加率(=各小地域の通いの場参加者数/同地域の要支援以下の全高齢者数)と、小地域別新規認定率(=各小地域の新規認定者数/同地域の全高齢者数)とを集計し、各小地域の通いの場参加率と新規認定率とに対応する座標点をプロットし、散布図にして、小地域をグルーピングする。
【0511】
そして、小地域グループ別に、対応アクションを検討する。すなわち、
図103の領域(グループ)103aに属する小地域は、通いの場への参加率が高く、新規認定率が低く、 通いの場に期待するとおりの成果がでているため、現状継続とする。
【0512】
図103の領域(グループ)103bに属する小地域は、通いの場の参加率は高いのに、新規認定率が高いため、プログラムの質が低いと判断され、個別指導となる。すなわち、他の小地域(例えば上記グループ103aに属する小地域)の通いの場との違いを調査して、好事例の紹介を受ける。
【0513】
図103の領域(グループ)103cに属する小地域は、通いの場の参加率は低いが、別の要因により、新規認定率が低いので、別の要因について調査を要する。
【0514】
図103の領域(グループ)103dに属する小地域は、通いの場の参加率が低く、新規認定率が高いため、通いの場の数を増やす、または通いの場に参加を促すような情報を展開する。
【0515】
次に、
図1及び
図2で示した地域包括ケア事業システム15における事業計画策定支援(P)と実績評価(C)とについて
図104により説明する。
【0516】
一般に、サービスの提供を計画するためには、小地域ごとの利用状態像(サービス需要)を把握して計画することが必要であり、サービス種類別にサービスの質の向上の計画を立てる必要がある。これまで小地域ごとの利用状態像(サービス需要)を抽出する仕組みがなく、サービスの質を公正に評価できるアウトカム指標の定義がなかった。
【0517】
本発明の実施の形態では、これらの解決策機能として前述した各機能により、サービス別心身状態改善・維持計画策定を支援でき、小地域別サービス需給分析結果を踏まえたサービス基盤計画策定が可能となり、小地域別サービス基盤計画や、サービス別心身状態改善・維持計画の進捗管理・挽回策策定が可能になった。
【0518】
そのために、小地域別・サービス種類別・サービス提供率(事業所の所在地域に居住する利用者にサービス提供する割合)を集計し、年度ごとに計画を策定し、計画通りに進行しているのか定期的(月次等)に計測する。そして、計画値と実測値とに乖離がある場合は実態把握を行い、要因調査、対策(抑制策、誘導策等)検討及び計画見直しを行う。
【0519】
図104の実施例では、小地域別に、特定の心身状態像の高齢者の利用率(実績値)を集計することで、必要とするサービス供給量が確保されているかを評価している。このため、実態に合った計画を策定することができる。この例では、図示していないが、サービス種類をグループホーム(主として地域密着型)とし、高齢者状態像は、麻痺無×障害自立度軽度×認知症自立度重度とし、小地域階層は中階層とする。そして、自治体平均と、小地域1及び小地域2とを比較して示している。
【0520】
この図から2017年において小地域1は計画よりサービス提供率が高いことがわかる。このため、小地域1に対してのアクションは、サービス提供率を抑制の施策検討及び計画見直しを行う。これに対し、小地域2は計画値よりサービス提供率が低下していることがわかる。このため、小地域2に対してのアクションは、サービス提供率を上げるための施策検討及び計画見直しを行う。
【0521】
このように、小地域別・サービス種類別・サービス提供率(事業所の所在地域に居住する利用者にサービス提供する割合)を集計し、年度ごとに計画通りに進行しているのかを定期的に計測し、計画値と実測値とに乖離がある場合は実態把握を行い、要因調査、対策検討及び計画見直しを行うことができる。
【0522】
以上のように本発明の実施の形態では、ビッグデータ分析に基づいて地域マネジメントを推進するので、極めて先進的な取り組みであり、国の現状や将来の方向性と一致するものとなる。すなわち、データ分析により、小地域や事業所などの事業体でのサービスの質に関する、現状把握や課題抽出が定量的かつ悉皆的に行うことができる。また、アプローチすべき類似事業所グループ(ベストプラクティス候補や重点指導先候補等)の抽出ができ、具体的な実効内容を踏まえた実行計画の策定が可能になる。また、介護事業所に対しては、自事業所の全事業所における位置付けや取組の成果履歴等を、分かりやすく即時把握可能な形で、しかも各事業所の経営計画策定の際の参考になる情報の定期的提供が可能になり、利用者に対しては、認定更新や資格情報等の異動があるたびに高齢者総合データベースを日次更新することで、各事業領域におけるリスク対象者(総合事業対象とすべき一般高齢者等)や地域ケア会議の個別課題検討対象者等の総合的な履歴情報のタイムリーな抽出が可能になる。さらに、類似事業所グループ別や個別利用者別に実施した各施策・対策の計画に対する実績の実行管理や、例えば、3年ごとの実績評価を定量的に行うことができる。これにより計画より遅れている施策のフォローや巻き返し等がタイムリーに行えるようになる等の効果を奏する。
【0523】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。