(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6951344
(24)【登録日】2021年9月28日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】房付きの曲面のための型板
(51)【国際特許分類】
A61C 17/34 20060101AFI20211011BHJP
A46B 9/04 20060101ALI20211011BHJP
A46B 5/00 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
A61C17/34 B
A46B9/04
A46B5/00 A
【請求項の数】15
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-538573(P2018-538573)
(86)(22)【出願日】2017年1月23日
(65)【公表番号】特表2019-502495(P2019-502495A)
(43)【公表日】2019年1月31日
(86)【国際出願番号】EP2017051330
(87)【国際公開番号】WO2017129524
(87)【国際公開日】20170803
【審査請求日】2020年1月22日
(31)【優先権主張番号】S2016/0033
(32)【優先日】2016年1月25日
(33)【優先権主張国】IE
(73)【特許権者】
【識別番号】315010950
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン コンシューマー ヘルスケア(ユーケー) アイピー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダイアモンド,デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ダイアモンド,ジャン
【審査官】
田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−034997(JP,A)
【文献】
特開昭60−111666(JP,A)
【文献】
実開平02−128175(JP,U)
【文献】
実開昭56−044036(JP,U)
【文献】
米国特許第04291431(US,A)
【文献】
特開2010−104548(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3061617(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 17/34
A46B 5/00,9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面(20)から上向きに突出する一つ以上の毛(18)の房(16)を担持するように適合された前記上面(20)を有する基材(14)を備える、房付きの曲面(12)のための型板(10)であって、前記基材(14)は、前記上面(20)が実質的に平坦となる展開された状態と前記上面が湾曲する窄められた状態との間で変形可能であるように成形されており、
前記基材(14)が、径方向に延在する複数の突出部(22)を備え、前記突出部(22)のうちの少なくとも幾つかが、一つ以上の前記毛(18)の房(16)を担持するように適合され、前記基材(14)が、前記各突出部(22)の自由端が、前記基材(14)が前記展開された状態にあるときには隣接する各自由端から隔離され、前記窄められた状態にあるときには隣接する各自由端に当接するように成形される、型板(10)。
【請求項2】
前記基材(14)が、前記窄められた状態に変形されたときに半球状の上面を画定するような形状及び寸法とされる、請求項1に記載の型板(10)。
【請求項3】
前記基材(14)が複数の開口(24)を備え、毛(18)の房(16)が、前記上面(20)から前記開口(24)のそれぞれを通って突出する、請求項1または2に記載の型板(10)。
【請求項4】
前記開口(24)が、前記基材(14)が前記窄められた状態にあるときに前記毛(18)の房(16)が同心状の輪として配列されるように、配置される、請求項3に記載の型板(10)。
【請求項5】
前記基材(14)が、前記展開された状態にあるときには実質的に星形である、請求項1から4のいずれか一項に記載の型板(10)。
【請求項6】
各突出部(22)が、前記自由端から内に向かうにつれて先細りとなるような形状である、請求項1から5のいずれか一項に記載の型板(10)。
【請求項7】
前記基材(14)の下面(26)に設けられた裏当てを備え、前記裏当ては、前記基材(14)が前記窄められた状態にあるときに前記基材(14)が担持される支持体(28)を画定するように適合される、請求項1から6のいずれか一項に記載の型板(10)。
【請求項8】
前記裏当てが、前記基材(14)が前記窄められた状態にあるときに半球状の支持体(28)を画定するように適合される、請求項7に記載の型板(10)。
【請求項9】
前記裏当てが、前記展開された状態から前記窄められた状態への前記基材(14)の変形を可能にするためにセグメント化される、請求項7又は8に記載の型板(10)。
【請求項10】
房付きの曲面を形成する方法であって、そこから一つ以上の毛(18)の房(16)が突出する上面を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載された基材(10)を備えた型板(10)を用意するステップと、前記上面が実質的に平坦となる展開された状態から前記上面が湾曲する窄められた状態に前記基材(14)を変形させるステップと、を含む方法。
【請求項11】
前記基材(14)を前記窄められた状態に変形させて半球状の上面を画定するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
支持体(28)を覆うように前記基材(14)を変形させるステップを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
半球状の支持体(28)を覆うように前記基材(14)を変形させるステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記支持体を前記基材(14)の下面(26)と一体に形成するステップを含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から9のいずれか一項に記載の型板(10)を備えた房付きのブラシヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、房付きの曲面、例えば房付きの半球体を形成するための型板に関し、詳細には、半球状のブラシヘッド、最も好ましくは歯ブラシのためのヘッドに形成されるように適合された、複数の突出部のある型板に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシ及びブラシヘッドは、ほとんど無数と言ってもよい用途に使用され、そのサイズ、形状、材料は、毛のサイズ、形状、及び配列と同様に様々である。ブラシヘッドの製造及び使用で生じる一つの課題は、毛をブラシヘッドに配置し且つ固定する方法であり、毛は通常、房として配列される。毛の房を埋め込む多数の方法が存在するが、それらの方法は、ブラシヘッド自体によって課せられるサイズ及び/又は形状の制約に加えて、毛が作られる材料のタイプや、特定水準の毛の保持率を必要とすることもあるブラシが用いられる用途によって、異なり得る。
【0003】
ブラシヘッドのサイズが小さくなるにつれて、毛がそこから突出し得るヘッド上の利用可能な表面積の量が減少することに加え、ヘッドを形成し、毛を固定するために使用され得る全体的な材料が減少することに起因して、毛の配置及び保持がますます難しくなる。最後に、ヘッドの形状は、毛の挿入及び保持にさらなる制限又は困難を課し得る。このことは、そこから毛の房が突出するブラシヘッドの表面が曲線状、例えば球状又は半球状であるブラシヘッドを作り出そうとするときに、特に関係する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、上記の問題のうちの幾つかに対処する、半球体などの房付きの曲面のための型板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、上面から上向きに突出する一つ以上の毛の房を担持するように適合された上面を有する基材を備える、房付きの曲面のための型板であって、基材が、上面が実質的に平坦となる展開された状態(expanded state)と上面が湾曲する窄められた状態(collapsed state)との間で変形可能であるように成形されることを特徴とする、型板が提供される。
【0006】
基材は、窄められた状態に変形されたときに半球状の上面を画定するような形状及び寸法とされることが好ましい。
【0007】
基材は、径方向に延在する複数の突出部を備え、突出部のうちの少なくとも幾つかは、一つ以上の毛の房を担持するように適合されることが好ましい。
【0008】
基材は、複数の開口を備え、毛の房が、上面から開口のそれぞれを通って突出することが好ましい。
【0009】
開口は、基材が窄められた状態にあるときに毛の房が同心状の輪として配列されるように配置されることが好ましい。
【0010】
基材は、各突出部の自由端が、基材が展開された状態にあるときには隣接する各自由端から隔離され、窄められた状態にあるときには隣接する各自由端に当接するように成形されることが好ましい。
【0011】
基材は、展開された状態にあるときには実質的に星形であることが好ましい。
【0012】
各突出部は、自由端に向かって外向きに先細りになることが好ましい。
【0013】
型板は、基材の下面に設けられた裏当てを備え、裏当ては、基材が窄められた状態にあるときに基材が担持される支持体を画定するように適合されることが好ましい。
【0014】
裏当ては、基材が窄められた状態にあるときに半球状の支持体を画定するように適合されることが好ましい。
【0015】
裏当ては、展開された状態から窄められた状態への基材の変形を可能にするためにセグメント化されることが好ましい。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、房付きの曲面を形成する方法が提供され、この方法は、そこから一つ以上の毛の房が突出する上面を有する基材を備えた型板を用意するステップと、上面が実質的に平坦となる展開された状態から上面が湾曲する窄められた状態に基材を変形させるステップと、を含む。
【0017】
方法は、基材を窄められた状態に変形させて半球状の上面を画定するステップを含むことが好ましい。
【0018】
方法は、支持体を覆うように基材を変形させるステップを含むことが好ましい。
【0019】
方法は、半球状の支持体を覆うように基材を変形させるステップを含むことが好ましい。
【0020】
方法は、支持体を基材の下面と一体に形成するステップを含むことが好ましい。
【0021】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第1の態様による型板から形成された房付きのブラシヘッドが提供される。
【0022】
本明細書において、「房付きの(tufted)」という用語は、毛などの一つ以上の房がそこから外向きに突出している表面又は物体を意味することを意図し、ブラシヘッドは、そのような房付きの表面を画定する物体の一例である。
【0023】
次に、好ましい実施形態に関する添付の図面を参照しながら、本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態によるブラシヘッドなどの房付きの曲面のための型板の平面図であり、明瞭さのために毛の房が省略され、型板が展開された状態で示されている図である。
【
図2】
図1に示された型板の側面図であって、展開された状態であり、また、毛の房が示されている図である。
【
図3】それを覆うように型板が変形されて実質的に半球の形状を有する窄められた状態になる雛型上に位置決めされた、
図1の型板の図である。
【
図4】
図1及び
図2に示された型板から形成された半球状の房付きブラシヘッドの図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ここで添付の図面を参照すると、房付きの半球体、具体的には半球状のブラシヘッド(12)などの房付きの曲面を形成するための型板(10)が示されており、これは、多くの用途において、具体的には、例えば電動歯ブラシなどでおけるようにブラッシング運動を生じさせるためにブラシヘッド(12)がヘッド(12)の一つ以上の軸の周りで機械的に又は他の方法で回転される用途において、使用法を見いだし得る。しかし、本発明の型板(10)及び付随的な方法は、円筒面又は同様のものなどの房付きの曲面を形成するように適合されてもよく、半球状のブラシヘッド(120)は本発明の例示的な一実施形態であることが理解されるであろう。
【0026】
型板(10)は、以下で説明されるように変形可能な任意の適切な材料、好ましくはポリマー又は同様のものなどから形成され得る基材(14)を備え、この基材(14)は、個別の毛(18)の房(16)のアレイを担持するように適合されている。房(16)のアレイは、型板(10)が例えば
図1及び
図2に示されたような平坦な又は展開された状態にあるときに、房(16)が固定されている基材(14)の様々な場所において基材(14)の上面(20)から実質的に垂直に突出するように配置される。
【0027】
基材(14)は、セグメント又は突出部(22)の円形アレイに分割され、このセグメント又は突出部(22)は、基材(14)の中心からその自由端又は外端に向かって幅を増しながら外向きに放射状に広がる。
図1及び
図2に示された平坦な又は展開された状態では、基材(14)は、実質的に円形の形状であり、複数のセグメント(22)に分割されている。示された好ましい実施形態では、各セグメント(22)は、以下で説明されるように、完成したブラシヘッド(12)における房(16)の均一な分散を実現するために、互いに径方向に隣接して配置されまた好ましくはセグメント(22)のそれぞれの中心線に沿って位置決めされる、開口(24)の直線アレイを備える。しかし、房(16)及び対応する開口(24)は任意の所望の配置及び/又は密度で設けられ得ることが、理解されるであろう。
【0028】
使用に際して、各房(16)は、
図2に示されるように、基材(14)の下面(26)から対応する開口(24)に通されて、上面(20)から上向きに突出する。房(16)は、
図2に示されたように、所定の位置に接着されるか又は他の方法で付着され得るが、房(16)を所定の位置に固定する任意の他の適切な手段が用いられてもよく、例えば、各開口(24)の周りで局所的に基材(14)を融解させること、及び/又は、開口(24)内に配置された房(16)の部分を融解させることによってでもよい。各房(16)がそれぞれの開口(24)に挿入されて、加熱する刃等(図示せず)により下面(26)から突出する余分の長さが除去されてもよく、これは、房(16)から余分の長さを刈り込むと同時に、房(16)を所定の位置に付着させるために房(16)を形成する毛(18)を局所的に融解させる又は部分的に融解させるという、二重の目的を果たす。
【0029】
開口(24)のそれぞれに房(16)が固定されると、基材(14)及び房(16)を含む型板(10)は、
図4に示されるようなブラシヘッド(12)に形成される準備が整う。好ましい一実施形態では、型板(10)は、
図1及び
図2に示されるような平坦な又は展開された状態で、
図3に示されるような半球状の雛型又は支持体(28)の上に配置される。次いで、セグメント(22)のそれぞれが、下向きに変形されて半球状の支持体(28)の表面と接触するが、基材(14)の形状、具体的には個別的なセグメント(22)のそれぞれは、支持体(28)を覆うように下向きに変形されたときに基材(14)が支持体(28)を完全に覆って支持体(28)の周囲に半球状の層を形成するようなものとされており、この半球状の層から、房(16)が表面に対して実質的に垂直な向きで突出する。
【0030】
基材(14)は、完成したブラシヘッド(12)を形成するために、支持体(28)上の所定の位置に接着されるか又は他の方法で付着され得る。そのような実施形態では、支持体(28)は、完成したブラシヘッド(12)の一体構成要素になる。支持体(28)はまた、基材(14)の下面(26)と支持体(28)の外面との間に房(16)のそれぞれの内側端部を捕捉し、それにより房(16)を所定の位置にしっかりと保持する働きをする。
【0031】
しかし、一代替形態として、支持体(28)が省かれて、変形可能な裏当て(図示せず)が下面(26)上に設けられるか又は下面(26)と一体に形成されてもよく、この裏当て(図示せず)は、基材(14)が窄められた形状又は半球の形状に変形されたときに裏当て(図示せず)が事実上支持体(28)に相当するブラシヘッド(12)の実質的に固体の半球状基部の形態をとるような形状及び寸法とされる。裏当てはまた、基材(14)が窄められた状態に変形されたときにブラシヘッド(12)の底面上の一つ以上の特徴を画定するように適合されてもよく、この特徴は、例えば、完全な半球状のブラシヘッド(図示せず)を形成するためにブラシヘッド(12)を支持体又は向かい合った半球状のブラシヘッドに取り付けることができる軸を形成するシャフト(図示せず)である。裏当てはまた、使用に際してブラシヘッド(12)を駆動することができる歯車(図示せず)などの他の特徴を画定し得る。
【0032】
セグメント(22)のアレイの下向きの変形を促進するために、基材(14)は、セグメント(22)のそれぞれの自由端から突出する一つ以上のタブ(図示せず)を備えてもよく、このタブ(図示せず)は、それぞれのセグメント(22)を手作業で又は機械的に下向きに引っ張って支持体(28)の外面に接触させるために使用され得る。基材(14)が支持体(28)に接着されるか又は他の方法で固定されたら、タブ(図示せず)は除去されてもよく、したがって、タブ(図示せず)は、それぞれのセグメント(22)への脆弱な接続部を有してもよい。
【0033】
型板(10)が、房付きの外面を有する完全な球体(図示せず)に変形可能であるように設計され得ることも、想定される。そのようなボール様のブラシヘッドは、広範な用途、例えば、所望のブラッシング技法を実現するためにヘッドが複数の方向に駆動され得る電動歯ブラシにおいて、使用され得る。
【0034】
したがって、本発明の型板(10)により、比較的複雑な房付きの曲面を形成することが可能になること、具体的には、半球状の最終形態を形成する前に房(16)のアレイが容易に固定され得る平坦な型板(10)から半球状のヘッド(12)を形成することが可能になることが、理解されるであろう。