(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6951360
(24)【登録日】2021年9月28日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】プラスチックハウジング
(51)【国際特許分類】
H04Q 9/00 20060101AFI20211011BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20211011BHJP
B29C 45/37 20060101ALI20211011BHJP
H05K 5/00 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
H04Q9/00 371A
H05K5/02 J
B29C45/37
H05K5/02 T
H05K5/00 A
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-552125(P2018-552125)
(86)(22)【出願日】2016年12月20日
(65)【公表番号】特表2019-511886(P2019-511886A)
(43)【公表日】2019年4月25日
(86)【国際出願番号】EP2016082031
(87)【国際公開番号】WO2017108862
(87)【国際公開日】20170629
【審査請求日】2019年12月18日
(31)【優先権主張番号】102015016784.7
(32)【優先日】2015年12月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518226097
【氏名又は名称】エフエム マーケティング ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】マイアー フェルディナンド
【審査官】
今川 悟
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0229095(US,A1)
【文献】
特表平09−510930(JP,A)
【文献】
特開2006−326974(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0255875(US,A1)
【文献】
米国特許第07008240(US,B1)
【文献】
中国実用新案第205596480(CN,U)
【文献】
特開2000−079626(JP,A)
【文献】
特開昭62−152823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
H05K 5/02
B29C 45/37
H05K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側ハウジング部(3)と下側ハウジング部(4)とを有する、具体的には遠隔制御装置(リモコン)である電子装置(1)のためのプラスチックハウジング(2)であって、
前記上側ハウジング部(3)は、前記下側ハウジング部(4)に向けられた接合面(36)を有し
前記下側ハウジング部(4)は、前記上側ハウジング部(3)に向けられた接合面(36)を有し、
二つのハウジング部(3),(4)の接合面(36)は互いに当接して配置され、前記接合面(36)が留継面(36)で構成され、
エジェクタピン(27)を支持するための接触面(55)が、前記留継面(36)又はその上に形成されている
プラスチックハウジング(2)。
【請求項2】
前記ハウジング部(3),(4)における前記留継面(36)が、
前記電子装置(1)の電子構成部品を収容するように構成されている内部空間(53)の周りにおける、少なくとも円周方向の一部分に形成された
請求項1に記載のプラスチックハウジング(2)。
【請求項3】
前記留継面(36)は、内部空間(53)に導かれるように形成された
請求項1または2に記載のプラスチックハウジング(2)。
【請求項4】
前記接触面(55)は、前記ハウジング部(3),(4)の周方向に沿って延びる長辺を有する長方形状に形成された
請求項1乃至請求項3のうちのいずれかに記載のプラスチックハウジング(2)。
【請求項5】
前記ハウジング部(3),(4)は、前記接触面(55)に凹部を有する
請求項1乃至請求項4のうちのいずれかに記載のプラスチックハウジング(2)。
【請求項6】
前記接触面(55)が、内部空間(53)に面する前記留継面(36)における縁部(56)に形成された
請求項1乃至請求項5のうちのいずれかに記載のプラスチックハウジング(2)。
【請求項7】
前記ハウジング部(3),(4)を形成する鋳造材料を鋳型空間(16)に注入するとともに、
前記鋳型空間(16)に形成される前記ハウジング部(3),(4)における前記留継面(36)又はその近傍に位置する脱気部(26)から前記鋳型空間(16)の空気を排出する方法で製造された
請求項1乃至請求項6のうちのいずれかに記載のプラスチックハウジング(2)。
【請求項8】
前記鋳型空間(16)から、前記鋳型空間(16)内の空気を排出するために用いられるエジェクタピン(27)が挿入されている
請求項7に記載のプラスチックハウジング(2)。
【請求項9】
鋳造材料は、前記鋳型空間(16)における前記脱気部(26)を有する側とは反対側に配置された、ライナー(34)により前記鋳型空間(16)に注入される
請求項7又は請求項8に記載のプラスチックハウジング(2)。
【請求項10】
前記ライナー(34)が、前記鋳型空間(16)における中心軸(51)上に配置された
請求項9に記載のプラスチックハウジング(2)。
【請求項11】
前記鋳型空間(16)は金型インサート(21)で形成され、
鋳造材料の注入前の前記鋳型空間(16)において、分割面(38)が機密密封された
請求項7乃至請求項10のうちのいずれかに記載のプラスチックハウジング(2)。
【請求項12】
製造される前記ハウジング部(3),(4)における前記留継面(36)が、前記分割面(38)と続いている
請求項11に記載のプラスチックハウジング(2)。
【請求項13】
前記留継面(36)に対応するエジェクタピン(27)が、前記分割面(38)と対向する
請求項12に記載のプラスチックハウジング(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置用のプラスチックハウジング、特に遠隔制御装置に関する。
【0002】
例えば、DE102010045944A1にプラスチックハウジングが開示されている。
プラスチックハウジングは、第1ハウジング部と第2ハウジング部とを備え、前記第1ハウジング部は、前記第2ハウジング部に向けられた接合面と有し、前記第2ハウジング部は、前記第1ハウジング部に向けられた接合面と有し、これらの2つのハウジング部は、互いに接合面を接合させて組み付けられている。
【0003】
本発明は、上側ハウジング部と下側ハウジング部とを有する、具体的には遠隔制御装置である電子装置のためのプラスチックハウジングであって、前記上側ハウジング部は、前記下側ハウジング部に向けられた接合面を有し、前記下側ハウジング部は、前記上側ハウジング部に向けられた接合面を有し、二つのハウジング部の接合面は互いに当接して配置され、前記接合面が留継面で構成されたことを特徴とする。
【0004】
導入部で述べたプラスチックハウジングは、係止固定手段を有しており、これにより接合面が拡大され、2つのハウジング部に互いにより大きな攻撃面が形成される。しかしながら、係止固定手段は、相互に正確に合致しなければならず、そうでなければプラスチックハウジングが組み立てられた状態において2つのハウジング部の間に隙間が残ることとなり、これは美的要求が高い領域において特に気になる。この隙間を避けて、2つのハウジング部の間で高い接合面を実現するために、上述のプラスチックハウジングにおける接合面を留継面とすることが提案されている。
【0005】
上述のプラスチックハウジングの別の実施形態として、前記ハウジング部における前記留継面が、前記電子装置の電子構成部品を収容するように構成されている内部空間の周りにおける、少なくとも円周方向の一部分に形成されている。これにより、留継面はV字型となり、2つのハウジング部の中心を互いに合わせることとなる。したがって、留継面が上述の係止固定手段としての機能も同時に果たす。
【0006】
上述のプラスチックハウジングの別の実施形態として、前記内部空間に導かれるように前記留継面が形成されている。これにより、前記留継面によって形成される、ハウジング部上の尖っていないすべての角部が、プラスチックハウジングの内部に形成される。このような、尖っていない角部では、エジェクタピンや脱気口などの工具を、ハウジング部品の製造において内側面に特に好ましく配置することができるため、残りのバリなどがもはや視認できない。
【0007】
別の実施形態では、上述のプラスチックハウジングは、前記ハウジング部を形成する鋳造材料を鋳型空間に注入するとともに、前記鋳型空間で形成される前記ハウジング部における前記留継面又はその近傍に位置する脱気部から前記鋳型空間の空気を排出する方法で製造される。この実施形態では、鋳造材料が前記鋳型空間に注入されたときに、そこに存在する空気を移動させて、前記鋳型空間から空気を除去しなければならないという考察に基づいている。通常、前記鋳型空間を形成する工具部品の間である分割面から鋳型空間の空気が除去される。
リモコンの外側に向けられた側の留継面及び成形部品ができるだけ正確に形成されるように、パーティング面をできるだけ高密度にしなければならず、このため鋳造材料がパーティング面に入り込まず、バリなどが形成されることもない。
パーティング面の綿密な設計により、パーティング面での鋳型空間の通気は事実上不可能である。
したがって、前記脱気部は前記留継面又は前記留継面の近傍に、好ましくは形成されるプラスチックハウジングの内部に配置され、形成される前記留継面のできるだけ近傍に前記脱気部が形成されることにより、熱傷のような表面欠陥や介在物などの煩わしいものが生じることがなく、また製造されるべきプラスチックハウジングの内部に製造過程のバリなどが形成させることができる。
【0008】
他の実施形態において、前記鋳型空間から、前記鋳型空間内の空気を排出するために用いられる前記脱気部に、エジェクタピンが挿入されている。これにより、一方では、空気の排泄口が小さく保たれ、これを通して空気が前記鋳型空間から排出させることができ、前記鋳型空間を完全に脱気した後に、それに応じて前記脱気部への鋳造材料の侵入を少なくできる。他方で、前記脱気部は、製造されたハウジング部を取り外す場合に、前記エジェクタピンによって自動的に清掃されることとなる。
【0009】
他の実施形態において、鋳造材料は、前記鋳型空間における前記脱気部を有する側とは反対側に配置された、ライナーにより前記鋳型空間に注入される。
【0010】
上述のプラスチックハウジングの他の実施形態において、鋳造材料を注入する前記ライナーは、前記鋳型空間における中心軸上に配置されている。これにより、鋳造材料が鋳型空間の全方向に均等に分配されることが保証される。しかし、それだけでなく、鋳造材料が前記鋳型空間の尖った領域に最後に浸透し、そこで早期に硬化しないため、前記鋳型空間を満たすことができる。
【0011】
上述のプラスチックハウジングの他の実施形態において、前記鋳型空間は、鋳造材料の注入前の前記鋳型空間において、前記分割面に機密密封された金型インサートで形成されている。これにより、前記鋳型空間内のパーティング面において上述のバリが形成されることを回避できる。
【0012】
上述のプラスチックハウジングの他の実施形態において、製造される前記ハウジング部における前記留継面が、前記分割面と続いている。上述のプラスチックハウジングにおいて特に好ましいのは、前記脱気部が前記分割面における前記留継面に対向配置されていることである。これにより、通気に起因して形成されたバリなどがプラスチックハウジングの内部に配置され、外部から見えないことを保証することができる。
【0013】
本発明の別の態様によれば、特定のプラスチックハウジングの1つに対して、鋳造材料がハウジング部を形成する鋳型空間に注入され、ハウジング部の留継面が形成される鋳型空間内またはその隣に配置された脱気部において鋳型空間から空気が除去するハウジング部の製造方法としてもよい。
【0014】
また本発明の別の態様方法によれば、鋳型空間に通じる脱気部を使用して、鋳型空間から空気を排出するとともに、その中にエジェクタピンを挿通させてもよい。
【0015】
また本発明の別の態様方法によれば、鋳造材料は鋳型空間における脱気部を有する側とは反対側に配置されライナーから注入されてもよい。
【0016】
また本発明の別の態様方法によれば、前記ライナーは鋳型空間の中心軸上に配置されてもよい。
【0017】
本発明のさらに別の態様方法によれば、鋳型空間は2つの金型インサートで形成され、鋳造材料を鋳型空間内に注入する前にパーティング平面を気密封止してもよい。
【0018】
本発明のさらに別の態様方法によれば、形成されるハウジング部の留継面が、分割面に開口してもよい。また好ましくは、前記脱気部は、前記分割面の留継面に対向して配置されている。
【0019】
別の態様によれば、本発明は、上述の方法のうちの一つによって製造されたプラスチックハウジングであってもよい。
【0020】
本発明の上述した特性、特徴及び利点、これらが達せされる方法は、図面と併せて以下の実施形態の説明を読むことにより、より詳細に説明することにより、より明確に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】
図2a〜
図2cは、
図1に示すリモコンのプラスチックハウジングの第1ハウジング部を製造するための鋳造工具の詳細な断面図。
【
図3】
図3a〜
図3cは、
図1に示すリモコンのプラスチックハウジングの第2ハウジング部を製造するための鋳造工具の詳細な断面図。
【
図4】
図1のリモコンのプラスチックハウジングを製造するための鋳造工具の一部の斜視図。
【
図5】
図4に示す鋳造工具を異なる視点から見た部分図の斜視図。
【
図6】
図1に示すリモコンのプラスチックハウジングを製造するための鋳造工具における異なる部分の斜視図。
【
図7】
図7a及び
図7bは、
図1に示すリモコンのプラスチックハウジングの断面図。
【
図8】
図8a及び
図8bは、
図1に示すリモコンのプラスチックハウジングにおけるアッパケースおよびローケースに対応する内部図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図において、同じ技術的要素には同じ参照符号を付し、一度だけ説明する。
図は概略図を示し、特に、実際の幾何学的な比率を反映していないものとする。
【0023】
図1は、マルチメディア装置のような電子装置(詳細には図示せず)を制御するリモコン1の斜視図を示す。
【0024】
リモコン1は、上側ハウジング部3と下側ハウジング部4とで構成されたプラスチックハウジング部2と、複数のキー要素6を有する2つのキーパッド5とで構成されている。
明瞭化のため、
図1におけるキーパッド5におけるすべてのキー要素6に参照符号が付されているわけではない。
【0025】
2つのキーパッド5の間には、キー要素9、キー要素10、キー要素11、キー要素12で構成された十字キー8が配置されている。4つのキー要素9〜12は、確定キー13の周方向に90度間隔で配置されている。また、4つのキー要素9〜12を有する十字キー8は円板状に設計されている。さらに、リモコン1には、リモコン1上のボタンに応答して点灯することができる小さなライトの形で配列されたフィードバック要素14が備えられている。
【0026】
このために、ユーザはリモコン1における上側ハウジング部3のキーパッド5によりリモコン1に制御コマンドとして情報を入力し、次に、図示しない送信機によって、制御されるべき電子デバイスに送信される。このようなコマンド30は、例えば、4つの可能な移動方向のうちの1つで例示的なマルチメディア装置の制御の動きを制御するキー要素9〜12を介して方向コマンドとして入力されてもよい。
【0027】
図示されているリモコン1は、以下の技術的説明をより良く理解するための単なる例示であり、任意の電子装置、特に、任意の遠隔制御装置に実装することができる。
【0028】
プラスチックハウジング2は、以下の技術的な実施形態において説明される射出成形のより製造された試作である。
図2a〜
図2cは、プラスチックハウジング2における上側ハウジング部3を射出成形するための鋳型空間16を形成するアッパーシェル15の断面図を示す。これに対して、
図3a〜
図3cは、プラスチックハウジング2における下側ハウジング部4を射出成形するための鋳型空間16を形成するロアシェル17の断面図を示す。
【0029】
アッパーシェル15は、いわゆるノズル側18である、圧迫面側18を有する。
圧迫面側18の反対側において、アッパーシェル15は、いわゆるエジェクタ側19である閉鎖面側19を有する。アッパーシェル15は、圧迫面側18と閉鎖面側19との間で、アッパーシェル15の残りの構成を備えた2つの取付板20によって囲まれている。
【0030】
圧迫面側18は、
図4に示すように、鋳型プレート41が取付板20を支持しており、その中にインサートモールド21が挿入されている。インサートモールド21には、プラスチックハウジング2における上側ハウジング部3の凸状外面を形成する印刷マトリックス22が形成されている。
【0031】
閉鎖面側19は、インジェクタハウジング23が取付板20に支持されており、圧力板24を介して反対側の取付板20とで閉鎖されている。圧力板24は、
図5に示すように、インサートモールド21が挿入された鋳型プレート41に支持されている。インサートモールド21には、プラスチックハウジング2を構成する上側ハウジング部3の凹状の内面を形成するプラスチックハウジング25が形成されている。
【0032】
印刷マトリックス22とプラスチックハウジング25は、共に鋳型空間16を形成する。鋳型空間16には、圧力板24及びインサートモールド21を通って、エジェクタピン27が案内される案内チャンネル26が通じている。この案内チャンネル26には、エジェクタピン27に設けられた肩部29と衝突する肩部28が設けられている。なお、明瞭にするために、
図2aおよび
図2bには、すべての肩部28および肩部29に符号が付されているわけではない。これらの肩部28,29は、エジェクタピン27の上端が平らなエジェクタとして設計され、エジェクタピン27の下端が座屈荷重能力を増大させるといった安定性及び製造上の理由から設計されていることから、設計によるものである。エジェクタピン27の平らなピンは案内チャンネル26に沿って案内され、肩部29の下方部分であるエジェクタピン27の円形部分は、図示されないフリーホールに案内される。
【0033】
エジェクタピン27は、エジェクタベースプレート30に支持されるとともに、エジェクタ保持プレート31によって所定の位置で位置決めされている。2枚のプレートであるエジェクタベースプレート30、エジェクタ保持プレート31は、インジェクタハウジング23の内部に移動可能に構成され、エジェクタピン27を上方に移動させることができる。
【0034】
圧迫面側18及び閉鎖面側19のインサートモールド21には、加熱冷却チャンネル32が貫通して延びており、例えば、温度制御された水などの案内が可能であり、冷却や加熱により鋳型空間16の周囲を焼き戻しできる。なお、加熱冷却チャンネル32の全てに参照番号が付されているわけではない。加熱冷却チャンネル32は、鋳型空間16からの最小距離となるように形成され、プラスチックハウジング2における上側ハウジング部3の幅よりも10〜20倍小さい。本実施形態での最小距離は2mmである。加熱冷却チャンネル32の直径は、上述の最小距離の4〜5倍となるように形成されている。本実施形態では、8〜10mmである。加熱冷却チャンネル32が大きいほど、急速に焼き戻しできる。
【0035】
ロアシェル17は、アッパーシェル15と同様に構成されている。したがって、
図3a〜3cは、
図2a〜
図2cと同じ参照番号が使用されている。アッパーシェル15に関する上述の説明は、ロアシェル17でも同様に適用される。したがって、簡潔にするため、説明を省略する。
【0036】
アッパーシェル15との唯一の相違点は、図示しないモールドプレート内において、ロアシェル17における圧迫面側18に2つのインサートモールド21が挿入され、対応する複数の加熱冷却チャンネル32がロアシェル17に設けられていることである。
【0037】
アッパーシェル15及びロアシェル17は、
図4及び
図5に示すように、電池カバーを製造するための電池カバー金型35が一緒に配置されているが、これについては後述する。
【0038】
上側ハウジング部3及び/又は下側ハウジング部4を製造するために、熱変動型射出成形方法が使用される。
一般に、射出成形では、特に温度制御下におけるプラスチックの冷却は、溶融した元の材料の熱エネルギーを消散させるためと解されるが、熱変動型射出成形方法では、鋳型材料が注入される前に鋳型空間16を先に加熱し、その後に冷却される。本実施形態では、圧迫面側18と閉鎖面側19でインサートモールド21が等しい温度となるように、最初に加熱される。このようにすることで、特に高光沢のハウジング部3、4を射出成形する場合に、最終製品にウェルドラインが生じないようにすることができる。
【0039】
加熱工程とは独立して、対応する鋳型空間16は閉じられている。このためには、閉鎖面側19の取付板20が圧迫面側18の取付板20に向かって移動し、2つのインサートモールド21同士が当接して取付板20及びプラスチックハウジング25が形成される。
【0040】
鋳型空間16が閉じられ、それに応じて加熱されると、加熱された鋳造材料が、
図5および
図6に示すランナー34を介して鋳型空間16に注入される。高光沢のプラスチックハウジング2を構成する上側ハウジング部3及び下側ハウジング部4を製造するための鋳造材料として、略語M−ABSとして知られているメチルメタクリレートアクリロニトリルブタジエンスチレンを使用することができる。この鋳造材料は、鋳型空間16に射出される前に114℃まで加熱されていることが望ましい。
【0041】
鋳型空間16に注入された鋳造材料は、そこで広がるとともに、そこに存在する空気が押しのける。これにより、消散されるが、これについては後述する。
【0042】
鋳型空間16に鋳造材料が完全に充填されると、インサートモールド21は加熱冷却チャンネル32を介して再び冷却され、鋳造材料が固められる。これに関しては、例えば冷水が加熱冷却チャンネル32を流れる。
【0043】
次に、鋳型空間16が開放され、こうして製造されたエジェクタベースプレート30が、エジェクタピン27により工具から押し出される。これを達成するために、エジェクタベースプレート30が鋳型空間16で製造された成形品にエジェクタピン27を押しつけて、すなわち上側ハウジング部3や下側ハウジング部4をはがし、工具から落とすことができる。エジェクタピン27がエジェクタ保持プレート31から引き抜かれて、工具全体を初期状態に戻し、射出成型方法を再開することができる。
【0044】
本実施形態では、リモコン1を構成するプラスチックハウジング2は可能な限りモノシリックな外観とするように求められている。
上側ハウジング部3及び下側ハウジング部4の留継面36で組み立てる場合、ハウジング部3、4との突き合わせ継手が一方の端部に向けて落下するため、ハウジング部3、4との間の隙間が目に見えはないこととなる。これにより、観察者はリモコン1のプラスチックハウジング2が単一部品であるか複数部品であるかを見分けることは困難となる。特に、上側ハウジング部3の下側ハウジング部4に対して色彩的に対象的に設計されている場合、リモコン1は非常に薄い外観とすることができる。
【0045】
これを達成するため、2つのハウジング3,4の接合面36が、2つのハウジング3,4が留め継ぎによって接合できるように形成されている。以下、接合面36は、留継面36と称する。
しかし、この留継面36を形成する場合において、ハウジング3,4の厚壁37に亀裂が生じ、生産されたハウジング3,4の表面に誤差が生じる可能性があることに注意を払うべきである。一方で、可能な限りモノシリック効果を達成するためには、ハウジング3,4における留継面36は可能な限り先細りにしなければならない。これには、厚壁37が、例えば通常の壁厚である2mmから0.2mm未満まで薄くする必要である。そのため、上述した射出成形プロセスを使用する場合には注意が必要となり、厚壁37に生じた大きな亀裂に起因して、ハウジング3,4に熱傷のような表面欠陥が形成されることは好ましくない。
【0046】
原理的には、モールドインサート間の分離面38は、鋳型空間16における上述の脱気のために使用することができる。しかし、このためには空気が鋳型空間16から外部に逃げることができる隙間がパーティング平面に残っていなければならない。鋳型空間16を完全に脱気されると、鋳造材料がそこに浸透することとなり、バリが形成される。これらのバリは、プラスチックハウジング2が所望のモノリシックな外観を形成することに反することとなる。このことが分離面38を用いた脱気が排除される理由である。
【0047】
本実施形態では、留継面36のうち、製造されるプラスチックハウジング2の内側の領域に、エジェクタピン27が配置されている。案内チャンネル26とエジェクタピン27の間には、十分な隙間が残るように設計され、鋳型空間16の空気を通気させることができる。
【0048】
この解決策の利点は、完成した成形部品、すなわち上側ハウジング部3及び下側ハウジング部4の一方を押し出すときに、エジェクタピン27の移動によって案内チャンネル26が同時に清掃されることである。また、製造された成形部品が押し出される際の空気を、再び案内チャンネル26から逃がすことができる。
【0049】
さらに、鋳型空間16を形成するそれぞれのインサートモールド21は、正確に延びる留継面36を確実に形成するため、常に正確に配置されなければならない。この位置決めをより詳細に後述する
図4〜
図6は、アッパーシェル15、ロアシェル17及び電池カバー金型35が一緒に形成されている加圧側半体部39及び閉鎖側半体部40の斜視図を示す。対応するシェル15,17及び電池カバー金型35のインサートモールド21は、鋳型プレート41に支持されている。
【0050】
閉鎖側半体部40に支持されているインサートモールド21のコア22には、ハウジング3,4の製造に役立つ更なる詳細が見て取れる。例えば、
図5に示すように、DE102010045944A1に記載されているようなピン及びスリーブで形成された、プラスチックハウジング2を閉じることができるピン成形要素42及びスリーブ部材43が、ハウジング3,4に形成されている。
図5では、すべてのピン成形要素42およびスリーブ部材43に、それらの参照番号が付いているわけではない。
【0051】
さらに、
図5には、鋳型空間16におけるハウジング3,4で製造された成形部品を冷却した後に、半体部39,40を押し放すことができる追加のリセット部44が示されている。この移動において、二つの半体部39、40を互いに案内させるために、加圧側半体部39に案内柱45が固定されており、この案内柱45を閉鎖側半体部40の対応する案内孔46に挿入させることができる。
【0052】
上述のランナー34は、
図4及び
図5に示され、
図5に示す矢視33は、
図4中における矢印で示している。アッパーシェル15におけるランナー34は、閉鎖側半体部40のダストフロア54に注ぎ込む。ダストフロア54では、処理された鋳造材料が収集されて向きが変えられるため、ランナー34から排出された鋳造材料は、上側ハウジング部3が射出方向に対して所定の角度を有するように製造される。このように、ランナー34はトンネルゲートとして設計され、アッパーシェル15は射出成形用鋳型として形成されている。
【0053】
インサートモールド21を正確に配置する、ひいては正確な鋳型空間16の形成を確保するため、半体部39,40にはダブルセンタリング機構が設けられている。第1のセンタリングは、半体部30,40の互いの中心を大まかに合わせている。これに関しては、鋳型空間16が閉じられる際に、加圧側半体部39の加圧側凸部47が対応する閉鎖側半体部40の閉鎖側凹部48に適切にはまり込み、ネジ止めされる。
微細なセンタリングのため、加圧側半体部39のインサートモールド21に設けられたセンタリング用凸部49が、閉鎖側半体部40のインサートモールド21に設けられたセンタリング用凹部50に挿入させることができる。
【0054】
このセンタリング用凸部49は、加圧側凸部47よりも小さく作られており、鋳型空間16を閉じる際における大まかにセンタリングの後の綿密なセンタリングに使用される。
【0055】
プラスチックハウジング2のハウジング3,4における上述の潜在的な表面欠陥をさらに低減するため、ランナー34、すなわち注入点は、鋳型空間16における中心軸51上に配置され、鋳型空間16に侵入した鋳型材料を均一に広がって分布させることができる。さらに、これにより、上述した厚壁37の亀裂を有する端部領域における鋳造材料が、留継面36を形成し、最終的に浸透し、鋳型空間16におけるこれらの領域は均一に充填されることとなる。さらに、あまりに薄いキャビティ領域のために、鋳造材料がランナー34の近くで早期に硬化しないことも保証される。
【0056】
上記の工具および方法によって製造されたハウジング3,4は、
図7aに示すように、工具から取り外した後に、接合方向52に向けてプラスチックハウジングを2組み立てることができる。
図7bに示す内部53には、例えば、図示されていないプリント基板をリモコン1の電子機器として収容することができる。
【0057】
上側ハウジング部3と下側ハウジング部4とを接合方向52に向けて組み立てるとき、2つのハウジング3,4は自動的に留継面36でセンタリングされる。これにより、
図7bが示すように、上側ハウジング部3と下側ハウジング部4との間を外部から確実に閉鎖できるため、プラスチックハウジング2は前述したモノシリックな形状が確保される。
【0058】
製造された上側ハウジング部3及び下側ハウジング部4の内部の一例が、
図8a及び
図8bに示されている。なお、
図8a及び
図8bに示す図は、閉鎖側半体部40で形成されるものに対応する。
【0059】
閉鎖側半体部40の上側ハウジング部3または下側ハウジング部4から押し出させるため、エジェクタピン27と当接する支持面55が見える。エジェクタピン27、すなわち支持面55は、長方形状に形成され、長方形の広い側面が上側ハウジング部3又は下側ハウジング部4の円周方向に延びている。
【0060】
また、エジェクタピン27及び支持面55は、上側ハウジング部3又は下側ハウジング部4における縁部56の内部53側に配置されている。これにより、ハウジング部3、4の外縁が同一平面上にあるため、リモコンのモノシリックな外観が妨げられることがない。
【0061】
エジェクタピン27により、ハウジング3,4の支持面55は窪んでいる。
【0062】
図8a及び
図8bには、ピン成形要素42及びスリーブ部材43と、対応するピン成形要素42´とスリーブ部材43´とが図示されているが、明瞭化のためすべてに参照符号が付されているわけではない。
【0063】
さらに、
図8bでは、下側ハウジング部4におけるランナー34の終点であるランナー34´が示されている。
なお、上側ハウジング部3に対応する点34´は、
図8aでは示されていない。