(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6951362
(24)【登録日】2021年9月28日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】ガスタービン燃焼室用の改良された噴射器
(51)【国際特許分類】
F23R 3/28 20060101AFI20211011BHJP
F02C 7/232 20060101ALI20211011BHJP
F23D 11/00 20060101ALI20211011BHJP
F23D 11/38 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
F23R3/28 B
F02C7/232 B
F23D11/00 A
F23D11/38 H
【請求項の数】7
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-554074(P2018-554074)
(86)(22)【出願日】2017年4月6日
(65)【公表番号】特表2019-516937(P2019-516937A)
(43)【公表日】2019年6月20日
(86)【国際出願番号】FR2017050830
(87)【国際公開番号】WO2017178736
(87)【国際公開日】20171019
【審査請求日】2020年3月23日
(31)【優先権主張番号】1653260
(32)【優先日】2016年4月13日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515246328
【氏名又は名称】サフラン ヘリコプター エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム タリエルシオ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ サバリー
(72)【発明者】
【氏名】オリビエ ラメゾン
【審査官】
高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−250395(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0126176(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第101660472(CN,A)
【文献】
特表2014−504696(JP,A)
【文献】
特開2012−202226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/232
F02C 9/28
F23D 11/00
F23D 11/38
F23R 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン燃焼室用の噴射器(1)であって、前記噴射器が、
流体供給システム(5)と、
長手方向軸線(Z−Z)に沿って延びる噴射器本体(4)と、
前記噴射器本体(4)上に配置されていて且つ前記長手方向軸線(Z−Z)に対して傾斜する方向(X−X)において、流体を噴霧するように構成された噴射ヘッド(6)と、
流体が噴霧される方向(X−X)を変化させるように、前記長手方向軸線(Z−Z)の回りで選択的に前記噴射器(1)を回転させるように構成されたアクチュエータ(7)と、を具備する噴射器(1)において、
前記アクチュエータ(7)は、90度以下の振幅に亘って前記長手方向軸線(Z−Z)の回りで回転することにより、前記噴射器(1)の向きを変えることを可能にするように構成される、ことを特徴とする噴射器(1)。
【請求項2】
前記流体供給システム(5)が、前記噴射器(1)に流体供給システム(5)を接続する、可撓性供給ライン、又は漏れなしのヒンジを有する剛性供給ラインを具備する、ことを特徴とする請求項1に記載の噴射器(1)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の噴射器(1)を少なくとも1つ具備する、ことを特徴とする燃焼室(3)。
【請求項4】
前記燃焼室(3)が、旋回技術燃焼室であり、更に、前記少なくとも1つの噴射器(1)が、前記燃焼室の外側のスリーブ内に配置される、ことを特徴とする請求項3に記載の燃焼室(3)。
【請求項5】
前記アクチュエータ(7)は、前記燃焼室を迂回する圧力及び/又は燃料圧力の関数として、前記噴射器(1)の向きを変えるように構成された、制御システムを具備する、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の燃焼室(3)。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項に記載の燃焼室(3)を具備する、タービンエンジン。
【請求項7】
請求項6に記載のタービンエンジンを具備する航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機用の燃焼室の分野、より詳細には該燃焼室用の噴射器に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機燃焼室内で使用される噴射器は、一般的に、様々な異なる動作速度の関数として最適化された、性能を提供するように構成される。
【0003】
それにも係わらず、これらの異なる燃焼速度は、非常に異なる特性を有しており、場合によっては矛盾する制約を伴い、そのことは、異なる条件間における室の性能の妥協を見出すことを必要とする。
【0004】
結果として、現在の噴射器は、最適化の点でかなりの余地を残す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、この問題を少なくとも部分的に満たす、システムを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明は、ガスタービン燃焼室用の噴射器を提供しており、この噴射器は、流体供給システムと、長手方向軸線に沿って延びる噴射器本体と、噴射器本体上に配置されていて且つ長手方向軸線に対して傾斜する方向において、該流体を噴霧するように構成された噴射ヘッドと、具備しており、該噴射器は、流体が噴霧される方向を変化させるように長手方向軸線の回りで選択的に噴射器を回転させるように構成された、アクチュエータを更に具備しており、アクチュエータは、90度以下の振幅に亘って長手方向軸線の周りで回転することにより、噴射器の向きを変えることを可能にするように構成される。
【0007】
流体供給システムは、一般的には、可撓性供給ライン(系統)、又は噴射器において漏れなしのヒンジを有する、剛性供給ラインを具備する。
【0008】
本発明は、また、上記で定義したような少なくとも1つの噴射器を具備する、燃焼室を提供する。
【0009】
一例として、燃焼室は、旋回技術燃焼室であり、更に、該少なくとも1つの噴射器は、燃焼室の外側のスリーブ内に配置される。
【0010】
一般的には、アクチュエータは、燃焼室を迂回する圧力及び/又は燃料圧力の関数として、噴射器の向きを変えるように構成された制御システムを具備する。
【0011】
本発明はまた、上記で定義したような燃焼室を具備する、タービンエンジンを提供する。
【0012】
本発明はまた、タービンエンジンを具備する航空機を提供する。
【0013】
本発明の別の特徴、目的及び利点は、明らかに例示的で且つ非限定的であり、更に添付の図面を参照して読まれるべきである、以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一形態における噴射器の図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の一形態における噴射器の動作を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の一形態における噴射器の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面全体を通じて、共通の要素は同一の参照番号により識別される。
【0016】
図1は、本発明の一形態における噴射器の図であり、
図2A及びBは、その動作を示す図である。
【0017】
図1は、一般的には、例えば、航空機タービンエンジンに組み込まれるのに適した、旋回技術燃焼室である、燃焼室3の壁2に取り付けられた噴射器1の図である。
【0018】
燃焼室3が旋回技術である場合に、噴射器1はその場合、例として、燃焼室3の外側のスリーブ内に配置される。
【0019】
図示のように、噴射器1は、燃焼室3の内部容積内に突出する、端部41を有する本体4を具備する。噴射器1の本体4は、長手方向軸線Z−Zを画定する長手方向において延びる。
【0020】
流体供給システム5は、本体4の端部41に配置された噴射ヘッド(頭部)6に供給するように噴射器1の本体4に組み込まれる。噴射ヘッド6は一般的に、噴射ノズルにより形成される。
【0021】
図示の例において、流体供給システム5は、本体4の内部の長手方向軸線Z−Zに実質的に沿って延びる、ダクト(導管)である。
【0022】
流体供給システム5は、例えば、可撓性部分を提示する、供給ライン(系統)、又は噴射器において漏れなしのヒンジ(蝶番)を有する剛性の供給ラインを具備してもよい。
【0023】
図示されるように、端部41は、噴射ヘッド6を受容するための中空の部分を有する、概略半球形状である。従って、噴射ヘッド6は、図中の噴射軸線X−Xにより表される、噴射方向を画定する。この噴射軸線X−Xは、0〜90度の範囲の角度で長手方向軸線Z−Zに対して傾斜する。
【0024】
燃焼室3の動作において、噴射器1は従って、噴射ヘッド6の向きにより画定される噴射方向に沿って燃料を噴射するように使用される。
【0025】
燃焼室3の動作モードに関係なく、噴射を最適化することを可能にするために、提案されたシステムはまた、回転駆動手段71、具体的には、はめば歯車を介して、噴射器1の本体4に接続する、アクチュエータ(作動機)7を有する。
【0026】
一例として、アクチュエータ7は、ラック、ロッド、又は任意の別の適切な駆動手段を使用する、駆動手段を有する。
【0027】
噴射器1の本体4は、長手方向軸線Z−Zの回りで回転するための自由度を可能にするように構成された、軸受83及び84を介して燃焼室3の壁2に接続する。
【0028】
図示の例において、第1の軸受83は、本体4の端部41に近接して配置されており、第2の軸受84は、燃焼室3からより遠く離れた本体4の部分に配置されるように後退する。
【0029】
断熱要素85は、一般的には、第1の軸受83を燃焼室3から断熱して保護するように、噴射器1の本体4と燃焼室3の壁2との間に配置される。
【0030】
従って、アクチュエータ7は、噴射器1を、長手方向軸線Z−Zの回りで旋回させることを可能にする。この旋回の振幅は一般的に、例えば、180度の最大角度又は実際には最大90度の角度により制限される。
【0031】
図2A及び
図2Bは、
図1に表される方向Aに沿って見た2つの図である。これらの2つの
図2A及び2Bは、噴射方向が軸線X−Xから、軸線X−Xに対して90度の角度にある、方向X−X‘に向かう状態で、噴射器1の向きを変化させる例を非常に図式的に示す。
【0032】
噴射器1の向き、従って流体が噴射ヘッド6によりそれに沿って噴射される方向、のその様な変化は、燃焼室3の動作速度の関数として噴射を最適化することを可能にする。
【0033】
具体的には、燃焼室用の従来の噴射器は、静止しており、そのことは、燃焼室の動作モードに噴射を適合させることができず、そのことは、特定の動作モードの間に、例えば低速において、燃料の消費を増加させることを意味する。
【0034】
従って、提案された構造は、その動作モードに係わらず、燃焼室3の動作を最適化することを可能にしており、従って、部分的な負荷下での消費を改善しながら、燃焼システムの堅牢性を改善することを可能にする。
【0035】
約90度の振幅に亘って回転させることは、一般的に、その様々な動作モードにおいて燃焼室の動作を最適化することを可能にするために十分である。
【0036】
例えば、複数の噴射器を有する燃焼室3において、燃焼室3の動作を最適化するために、各噴射器はその際、独立して制御されてもよい。
【0037】
噴射器は、例えば、その計算手段をアクチュエータに関連付けることにより、能動的に、あるいは燃焼室3内の空気の圧力及び/又は流体供給システム5内に存在する、圧力からの制御の下で受動的に、操縦されてもよい。
【0038】
受動的タイプの制御の例として、燃焼室3及び/又は流体供給システム5内の圧力は、回転制御手段71を駆動するジャッキ又はピストン等のシステムを制御して、それにより噴射器1を操縦するように取り出されてもよい。
【0039】
従って、制御圧力は、燃焼室3内及び/又は流体供給システム5内から取り出し可能であり、そして、一例として、アクチュエータの不履行な向きを画定する、ばね等の戻し手段により発揮されてもよい、推力に対抗可能である。燃焼室3内及び/又は流体供給システム5内の圧力の変化は、従って、噴射器1の向きを変化させ、それにより噴射を最適化することを可能にすることに導く。圧力を取り出すための手段にアクチュエータ又はピストンを関連付けることは、それにより、受動型のアクチュエータ7を構成するので、従って噴射器1の向きを、連続的に制御することを可能にする。
【0040】
能動型の制御を提供することの一例として、アクチュエータ7は、燃焼室を迂回する空気回路内における燃焼室3内から取り出した圧力の関数として、又は実際には、流体供給システム5内の圧力の関数として、問題の噴射器を操縦するように構成可能であろう。より一般的には、アクチュエータ7は一般的に、燃焼室を具備するエンジンへの負荷の関数として、検討中の噴射器を操縦する。
図1の例において、流体供給システム5内の流体の圧力を測定するように構成された、センサ72が図式的に示されており、アクチュエータ7は従って、この測定の関数として噴射器1を操縦可能である。
【0041】
アクチュエータ7は一般的に、噴射器1を連続的に操縦するように構成されており、従って、特には、燃焼室を損傷してもよいであろう、過渡現象の出現を回避することを可能にする。