特許第6951372号(P6951372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6951372
(24)【登録日】2021年9月28日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】鉄道車両用制振装置
(51)【国際特許分類】
   B61F 5/24 20060101AFI20211011BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20211011BHJP
   F16F 15/027 20060101ALI20211011BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
   B61F5/24 F
   F16F15/02 B
   F16F15/027
   F15B11/00 E
【請求項の数】2
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-9497(P2019-9497)
(22)【出願日】2019年1月23日
(65)【公開番号】特開2020-117055(P2020-117055A)
(43)【公開日】2020年8月6日
【審査請求日】2021年6月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 裕泰
(72)【発明者】
【氏名】小川 貴之
【審査官】 金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−037849(JP,A)
【文献】 特開2011−157981(JP,A)
【文献】 特開2015−230079(JP,A)
【文献】 特開2015−040578(JP,A)
【文献】 特開2010−065797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 5/02− 5/24
F16F 15/02,15/027
F15B 11/00−11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の車体と台車との間に介装されて作動液体の供給により伸縮可能なシリンダ本体と、正回転すると供給通路を介して前記作動液体を前記シリンダ本体へ供給するポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、前記供給通路の途中であって前記ポンプよりも前記シリンダ本体側に設けられて前記ポンプから前記シリンダ本体へ向かう前記作動液体の流れのみを許容する逆止弁とを備えたアクチュエータと、
前記ポンプの逆回転を検知する検知装置と、
前記ポンプの停止中に前記検知装置が前記ポンプの逆回転を検知すると前記ポンプの逆回転を抑制する逆回転抑制装置とを備え
前記逆回転抑制装置は、前記モータを制御するコントローラを有し、
前記コントローラは、前記検知装置が前記ポンプの逆回転を検知すると、前記モータの速度を0とするように速度フィードバック制御を実行する
ことを特徴とする鉄道車両用制振装置。
【請求項2】
鉄道車両の車体と台車との間に介装されて作動液体の供給により伸縮可能なシリンダ本体と、正回転すると供給通路を介して前記作動液体を前記シリンダ本体へ供給するポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、前記供給通路の途中であって前記ポンプよりも前記シリンダ本体側に設けられて前記ポンプから前記シリンダ本体へ向かう前記作動液体の流れのみを許容する逆止弁とを備えたアクチュエータと、
前記ポンプの逆回転を検知する検知装置と、
前記ポンプの停止中に前記検知装置が前記ポンプの逆回転を検知すると前記ポンプの逆回転を抑制する逆回転抑制装置とを備え、
前記逆回転抑制装置は、前記モータを制御するコントローラを有し、
前記コントローラは、前記検知装置が前記ポンプの逆回転を検知すると、前記モータの回転変位を0とするように変位フィードバック制御を実行する
ことを特徴とする鉄道車両用制振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用制振装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の鉄道車両用制振装置にあっては、たとえば、鉄道車両に車体の進行方向に対して左右方向の振動を抑制すべく、車体と台車との間に介装されて使用されるものが知られている。
【0003】
より詳しくは、鉄道車両用制振装置は、シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されてシリンダ内をロッド側室とピストン側室とに区画するピストンと、シリンダ内に挿入されてピストンに連結されるロッドとを備えたシリンダ本体と、タンクと、ロッド側室とピストン側室とを連通する第一通路の途中に設けた第一開閉弁と、ピストン側室とタンクとを連通する第二通路の途中に設けた第二開閉弁と、タンクとロッド側室とを連通する供給通路に設けられてロッド側室へ作動油を供給するポンプと、ポンプを駆動するモータと、供給通路の途中であってポンプよりもロッド側室側に設けられてタンクからロッド側室へ向かう作動油の流れのみを許容する逆止弁と、ロッド側室をタンクへ接続する排出通路と、当該排出通路の途中に設けられ開弁圧を変更可能な可変リリーフ弁と、タンクからピストン側室へ向かう液体の流れのみを許容する吸込通路と、ピストン側室からロッド側室へ向かう液体の流れのみを許容する整流通路とを備えている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
このように構成された鉄道車両用制振装置にあっては、ポンプから作動油をシリンダへ供給しつつ第一開閉弁と第二開閉弁とを開閉制御してシリンダ本体を伸縮させてアクチュエータとして機能させて車両の振動をアクティブに抑制できる。また、鉄道車両用制振装置は、供給通路に逆止弁を設けてシリンダ内からポンプへの作動油の逆流を阻止できるので、ポンプを停止し、第一開閉弁および第二開閉弁を閉弁させた状態ではシリンダ本体をパッシブなダンパとして機能させ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−65797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、従来の鉄道車両用制振装置は、供給通路に逆止弁を設けているので、パッシブダンパとしても機能できる。しかしながら、作動油中のごみを逆止弁が噛み込んだり、弁体が固着したりして、逆止弁が閉じなくなると、シリンダ内の作動油が可変リリーフ弁を通らずに供給通路を介してタンクへ流れるようになる。
【0007】
そうなると、シリンダ本体をパッシブダンパとして機能させようとしても、作動油が然程の抵抗を受けずにポンプと逆止弁を通過してしまうので、鉄道車両用制振装置はパッシブダンパモードにおいて狙い通りの減衰力を発揮できず、車体の振動を十分に制振できなくなる。
【0008】
そこで、本発明は、逆止弁に異常が生じても鉄道車両における乗心地を向上できる鉄道車両用制振装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の鉄道車両用制振装置は、鉄道車両の車体と台車との間に介装されて作動液体の供給により伸縮可能なシリンダ本体と、正回転すると供給通路を介して作動液体をシリンダ本体へ供給するポンプと、ポンプを駆動するモータと、供給通路の途中であってポンプよりもシリンダ本体側に設けられてポンプからシリンダ本体へ向かう作動液体の流れをのみを許容する逆止弁とを備えたアクチュエータと、ポンプの逆回転を検知する検知装置と、ポンプの停止中に検知装置がポンプの逆回転を検知するとポンプの逆回転を抑制する逆回転抑制装置とを備える。このように構成された鉄道車両用制振装置は、ポンプの逆回転を検知して逆止弁の異常を認識すると、ポンプの逆回転を抑制し、シリンダ本体側から逆止弁を通過してポンプを通過しようとする作動液体の流れに抵抗を与えて作動液体のポンプの通過を妨げる。
【0010】
また、鉄道車両用制振装置は、逆回転抑制装置がモータを制御するコントローラを有しており、検知装置がポンプの逆回転を検知するとコントローラがモータの速度を0とするように速度フィードバック制御を実行しするか、或いは、逆回転抑制装置がモータを制御するコントローラを有しており、検知装置がポンプの逆回転を検知すると、コントローラがモータの回転変位を0とするように変位フィードバック制御を実行する。このように構成された鉄道車両用制振装置は、ポンプを正回転させることなくポンプの逆回転を抑制でき、アクチュエータをセミアクティブダンパあるいはパッシブダンパとして機能させる際の制御が簡単となるとともに、逆止弁が正常な状態で発生する減衰力とほぼ等しい減衰力をアクチュエータに発生させられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の鉄道車両用制振装置によれば、逆止弁に異常が生じても鉄道車両における乗心地を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施の形態における鉄道車両用制振装置を搭載した鉄道車両の断面図である。
図2】一実施の形態の鉄道車両用制振装置におけるアクチュエータの回路図である。
図3】一実施の形態の鉄道車両用制振装置における制御部の制御ブロック図である。
図4】モータの電流値を決定する手順の一例を示したフローチャートである。
図5】逆回転抑制装置の第一変形例を示した図である。
図6】逆回転抑制装置の第二変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態における鉄道車両用制振装置1は、本実施の形態では、鉄道車両の車体Bの制振装置として使用され、図1に示すように、台車Tと車体Bとの間に設置されたアクチュエータAと、コントローラCとを備えて構成されている。そして、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1は、アクチュエータAが発揮する推力で車体Bの車両進行方向に対して水平横方向の振動を抑制するようになっている。
【0014】
アクチュエータAは、本実施の形態では、図2に示すように、鉄道車両の車体Bと台車Tとの間に介装されて作動液体の供給により伸縮可能なシリンダ本体Cyと、正回転すると供給通路16を介して作動液体をシリンダ本体Cyへ供給するポンプ12と、ポンプ12を駆動するモータ15と、供給通路16の途中であってポンプ12よりもシリンダ本体Cy側に設けられてポンプ12からシリンダ本体Cyへ向かう作動液体の流れのみを許容する逆止弁17と、液圧回路HCとを備えている。
【0015】
シリンダ本体Cyは、鉄道車両の台車Tと車体Bの一方に連結されるシリンダ2と、シリンダ2内に摺動自在に挿入されるピストン3と、シリンダ2内に挿入されて一端がピストン3に連結されるとともに他端が台車Tと車体Bの他方に連結されるロッド4と、シリンダ2内をピストン3で区画したロッド側室5とピストン側室6と、作動液体を貯留するタンク7とを備えている。よって、アクチュエータAは、本実施の形態では、片ロッド型のアクチュエータとして構成されている。
【0016】
なお、ロッド側室5とピストン側室6には、本実施の形態では、作動液体として作動油が充填されるとともに、タンク7には、作動油の他に気体が充填されている。なお、タンク7内は、特に、気体を圧縮して充填して加圧状態とする必要は無い。また、作動液体は、作動油以外にも他の液体を利用してもよい。
【0017】
供給通路16は、シリンダ本体Cyにおけるロッド側室5とタンク7とを接続している。ポンプ12は、供給通路16に設けられており、モータ15によって駆動され、一方向のみに作動油を吐出するポンプとされている。そして、ポンプ12の吐出口12bは供給通路16によってロッド側室5へ連通されるとともに吸込口12aはタンク7に通じていて、ポンプ12は、モータ15によって駆動されるとタンク7から作動油を吸込んでロッド側室5へ作動油を供給する。
【0018】
前述のようにポンプ12は、一方向のみに作動油を吐出するのみで回転方向の切換動作がないので、回転切換時に吐出量が変化するといった問題は皆無であり、安価なギアポンプ等を使用できるが、ピストンポンプを使用してもよい。さらに、ポンプ12の回転方向が常に同一方向であるので、ポンプ12を駆動する駆動源であるモータ15にあっても回転切換に対する高い応答性が要求されず、その分、モータ15も安価なものを使用できる。なお、供給通路16の途中であって、ポンプ12よりもシリンダ本体Cy側には、逆止弁17が設けられている。逆止弁17は、ポンプ12からロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容し、ロッド側室5からポンプ12への作動油の逆流を阻止する。
【0019】
液圧回路HCは、ロッド側室5とピストン側室6とを連通する第一通路8の途中に設けた第一開閉弁9と、ピストン側室6とタンク7とを連通する第二通路10の途中に設けた第二開閉弁11と、ロッド側室5とタンク7とを接続する排出通路21と、排出通路21の途中に設けた開弁圧を変更可能な可変リリーフ弁22と、ピストン側室6からロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容する整流通路18と、タンク7からピストン側室6へ向かう作動油の流れのみを許容する吸込通路19を備えている。
【0020】
そして、基本的には、第一開閉弁9で第一通路8を連通状態とし、第二開閉弁11を閉じてポンプ12を駆動すると、シリンダ本体Cyが伸長し、第二開閉弁11で第二通路10を連通状態とし、第一開閉弁9を閉じてポンプ12を駆動すると、シリンダ本体Cyが収縮する。このように、アクチュエータAは、ポンプ12を駆動して作動油をシリンダ本体Cyに供給する状態では、第一開閉弁9と第二開閉弁11の開閉状態に応じて伸縮してアクチュエータとして機能する(アクチュエータモード)。
【0021】
以下、アクチュエータAの各部について詳細に説明する。シリンダ2は筒状であって、その図2中右端は蓋13によって閉塞され、図2中左端には環状のロッドガイド14が取り付けられている。また、ロッドガイド14内には、シリンダ2内に移動自在に挿入されるロッド4が摺動自在に挿入されている。このロッド4は、一端をシリンダ2外へ突出させており、シリンダ2内の他端をシリンダ2内に摺動自在に挿入されるピストン3に連結している。
【0022】
なお、ロッドガイド14の外周とシリンダ2との間は図示を省略したシール部材によってシールされており、これによりシリンダ2内は密閉状態に維持されている。そして、シリンダ2内をピストン3によって区画して形成されるロッド側室5とピストン側室6には、前述のように作動油が充填されている。
【0023】
また、このシリンダ本体Cyの場合、ロッド4の断面積をピストン3の断面積の二分の一にして、ピストン3のロッド側室5側の受圧面積がピストン側室6側の受圧面積の二分の一となるようになっている。よって、伸長作動時と収縮作動時とでロッド側室5の圧力を同じくすると、伸縮の双方で発生される推力が等しくなり、シリンダ本体Cyの変位量に対する作動油量も伸縮両側で同じとなる。
【0024】
詳しくは、シリンダ本体Cyを伸長作動させる場合、ロッド側室5とピストン側室6を連通させた状態とする。すると、ロッド側室5内とピストン側室6内の圧力が等しくなり、アクチュエータAは、ピストン3におけるロッド側室5側とピストン側室6側の受圧面積差に前記圧力を乗じた推力を発生する。反対に、シリンダ本体Cyを収縮作動させる場合、ロッド側室5とピストン側室6との連通を断ちピストン側室6をタンク7に連通させた状態とする。すると、アクチュエータAは、ロッド側室5内の圧力とピストン3におけるロッド側室5側の受圧面積を乗じた推力を発生する。
【0025】
要するに、アクチュエータAの発生推力は伸縮の双方でピストン3の断面積の二分の一にロッド側室5の圧力を乗じた値となるのである。したがって、このアクチュエータAの推力を制御する場合、伸長作動、収縮作動共に、ロッド側室5の圧力を制御すればよい。また、本例のアクチュエータAでは、ピストン3のロッド側室5側の受圧面積をピストン側室6側の受圧面積の二分の一に設定しているので、伸縮両側で同じ推力を発生する場合に伸長側と収縮側でロッド側室5の圧力が同じとなるので制御が簡素となる。加えて、変位量に対する作動油量も同じとなるので伸縮両側で応答性が同じとなる利点がある。なお、ピストン3のロッド側室5側の受圧面積をピストン側室6側の受圧面積の二分の一に設定しない場合にあっても、ロッド側室5の圧力でアクチュエータAの伸縮両側の推力を制御できる点は変わらない。
【0026】
戻って、ロッド4の図2中左端とシリンダ2の右端を閉塞する蓋13とには、図示しない取付部が設けられており、このアクチュエータAを鉄道車両における台車Tと車体Bとの間に介装できるようになっている。
【0027】
そして、ロッド側室5とピストン側室6とは、第一通路8によって連通されており、この第一通路8の途中には、第一開閉弁9が設けられている。この第一通路8は、シリンダ2外でロッド側室5とピストン側室6とを連通しているが、ピストン3に設けられてもよい。
【0028】
第一開閉弁9は、電磁開閉弁とされており、第一通路8を開放してロッド側室5とピストン側室6とを連通する連通ポジションと、第一通路8を遮断してロッド側室5とピストン側室6との連通を断つ遮断ポジションとを備えている。そして、この第一開閉弁9は、通電時に連通ポジションを採り、非通電時に遮断ポジションを採るようになっている。
【0029】
つづいて、ピストン側室6とタンク7とは、第二通路10によって連通されており、この第二通路10の途中には、第二開閉弁11が設けられている。第二開閉弁11は、電磁開閉弁とされており、第二通路10を開放してピストン側室6とタンク7とを連通する連通ポジションと、第二通路10を遮断してピストン側室6とタンク7との連通を断つ遮断ポジションとを備えている。そして、この第二開閉弁11は、通電時に連通ポジションを採り、非通電時に遮断ポジションを採るようになっている。
【0030】
さらに、ロッド側室5とタンク7とを接続する排出通路21に設けた可変リリーフ弁22は、比例電磁リリーフ弁とされており、供給する電流量に応じて開弁圧を調節でき、電流量を最大とすると開弁圧を最小とし、電流を供給しないと開弁圧を最大とする。
【0031】
このように、排出通路21と可変リリーフ弁22とを設けると、シリンダ本体Cyを伸縮作動させる際に、ロッド側室5内の圧力を可変リリーフ弁22の開弁圧に調節でき、アクチュエータAの推力を可変リリーフ弁22へ供給する電流量で制御できる。排出通路21と可変リリーフ弁22とを設けると、アクチュエータAの推力を調節するために必要なセンサ類が不要となり、ポンプ12の吐出流量の調節のためにモータ15を高度に制御する必要もなくなる。よって、鉄道車両用制振装置1が安価となり、ハードウェア的にもソフトウェア的にも堅牢なシステムを構築できる。
【0032】
なお、第一開閉弁9を連通ポジションとし第二開閉弁11を遮断ポジションとする場合或いは第一開閉弁9を遮断ポジションとし第二開閉弁11を連通ポジションとする場合、ポンプ12の駆動状況に関わらず、伸長或いは収縮のいずれか一方に対してのみアクチュエータAが減衰力を発揮できる。よって、たとえば、減衰力を発揮する方向が鉄道車両の台車Tの振動により車体Bを加振する方向である場合、そのような方向には減衰力を出さないようにアクチュエータAを片効きのダンパとすることができる。よって、このアクチュエータAは、カルノップ理論に基づくセミアクティブ制御を容易に実現できるため、セミアクティブダンパとしても機能できる。なお、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1は、アクチュエータAをセミアクティブダンパとして機能させる場合、ポンプ12を停止してシリンダ本体Cyへの作動油の供給を行わず、減衰力を発生したい伸縮方向に応じて第一開閉弁9と第二開閉弁11との一方のみを開弁させる(セミアクティブモード)。
【0033】
なお、可変リリーフ弁22に与える電流量で開弁圧を比例的に変化させる比例電磁リリーフ弁を用いると開弁圧の制御が簡単となるが、開弁圧を調節できる可変リリーフ弁であれば比例電磁リリーフ弁に限定されない。また、排出通路21には、可変リリーフ弁22の代わりに圧力制御弁を設けてもよい。
【0034】
そして、可変リリーフ弁22は、第一開閉弁9および第二開閉弁11の開閉状態に関わらず、シリンダ本体Cyに伸縮方向の過大な入力があって、ロッド側室5の圧力が開弁圧を超える状態となると、排出通路21を開放する。このように、可変リリーフ弁22は、ロッド側室5の圧力が開弁圧以上となると、ロッド側室5内の圧力をタンク7へ排出するので、シリンダ2内の圧力が過大となるのを防止してアクチュエータAのシステム全体を保護する。よって、排出通路21と可変リリーフ弁22とを設けると、システムの保護も可能となる。
【0035】
さらに、本例のアクチュエータAにおける液圧回路HCは、ピストン側室6からロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容する整流通路18と、タンク7からピストン側室6へ向かう作動油の流れのみを許容する吸込通路19を備えている。よって、本例のアクチュエータAでは、第一開閉弁9および第二開閉弁11が閉弁する状態でシリンダ本体Cyが伸縮すると、シリンダ2内から作動油が押し出される。シリンダ2内から排出された作動油の流れに対して可変リリーフ弁22が抵抗を与えるので、第一開閉弁9および第二開閉弁11が閉弁する状態では、本例のアクチュエータAはユニフロー型のダンパとして機能する。
【0036】
より詳細には、整流通路18は、ピストン側室6とロッド側室5とを連通しており、途中に逆止弁18aが設けられ、ピストン側室6からロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。さらに、吸込通路19は、タンク7とピストン側室6とを連通しており、途中に逆止弁19aが設けられ、タンク7からピストン側室6へ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。なお、整流通路18は、第一開閉弁9の遮断ポジションを逆止弁とすると第一通路8に集約でき、吸込通路19についても、第二開閉弁11の遮断ポジションを逆止弁とすると第二通路10に集約できる。
【0037】
このように構成されたアクチュエータAでは、第一開閉弁9と第二開閉弁11がともに遮断ポジションを採っても、整流通路18、吸込通路19および排出通路21で、ロッド側室5、ピストン側室6およびタンク7を数珠繋ぎに連通させる。また、整流通路18、吸込通路19および排出通路21は、一方通行の通路に設定されている。よって、シリンダ本体Cyが外力によって伸縮すると、シリンダ2から必ず作動油が排出されて排出通路21を介してタンク7へ戻され、シリンダ2で足りなくなる作動油は吸込通路19を介してタンク7からシリンダ2内へ供給される。この作動油の流れに対して可変リリーフ弁22が抵抗となってシリンダ2内の圧力を開弁圧に調節するので、アクチュエータAは、パッシブなユニフロー型のダンパとして機能する。
【0038】
また、アクチュエータAの各機器への通電が不能となるようなフェール時には、第一開閉弁9と第二開閉弁11のそれぞれが遮断ポジションを採り、可変リリーフ弁22は、開弁圧が最大に固定された圧力制御弁として機能する。よって、このようなフェール時には、アクチュエータAは、自動的に、パッシブダンパとして機能する。また、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1は、アクチュエータAをパッシブダンパとして機能させる場合、ポンプ12を停止して作動油の供給を停止し、第一開閉弁9および第二開閉弁11への通電を停止する(パッシブダンパモード)。
【0039】
つづいて、アクチュエータAに所望の伸長方向の推力を発揮させる場合、コントローラCは、基本的には、モータ15を回転させてポンプ12からシリンダ2内へ作動油を供給しつつ、第一開閉弁9を連通ポジションとし、第二開閉弁11を遮断ポジションとする。このようにすると、ロッド側室5とピストン側室6とが連通状態におかれて両者にポンプ12から作動油が供給され、ピストン3が図2中左方へ押されアクチュエータAは伸長方向の推力を発揮する。ロッド側室5内およびピストン側室6内の圧力が可変リリーフ弁22の開弁圧を上回ると、可変リリーフ弁22が開弁して作動油が排出通路21を介してタンク7へ排出される。よって、ロッド側室5内およびピストン側室6内の圧力は、可変リリーフ弁22に与える電流量で決まる可変リリーフ弁22の開弁圧となるようにコントロールされる。そして、アクチュエータAは、ピストン3におけるピストン側室6側とロッド側室5側の受圧面積差に可変リリーフ弁22によってコントロールされるロッド側室5内およびピストン側室6内の圧力を乗じた値の伸長方向の推力を発揮する。
【0040】
これに対して、アクチュエータAに所望の収縮方向の推力を発揮させる場合、コントローラCは、モータ15を回転させてポンプ12からロッド側室5内へ作動油を供給しつつ、第一開閉弁9を遮断ポジションとし、第二開閉弁11を連通ポジションとする。このようにすると、ピストン側室6とタンク7が連通状態におかれるとともにロッド側室5にポンプ12から作動油が供給されるので、ピストン3が図2中右方へ押されアクチュエータAは収縮方向の推力を発揮する。そして、前述と同様に、可変リリーフ弁22の電流量を調節すると、アクチュエータAは、ピストン3におけるロッド側室5側の受圧面積と可変リリーフ弁22によってコントロールされるロッド側室5内の圧力を乗じた収縮方向の推力を発揮する。
【0041】
また、アクチュエータAにあっては、アクチュエータとして機能するのみならず、モータ15の駆動状況に関わらず、第一開閉弁9と第二開閉弁11の開閉のみでダンパとしても機能できる。また、アクチュエータAをアクチュエータからダンパへ切換る際に、面倒かつ急峻な第一開閉弁9と第二開閉弁11の切換動作を伴わないので、応答性および信頼性が高いシステムを提供できる。
【0042】
なお、本例のアクチュエータAにあっては、片ロッド型に設定されているので、両ロッド型のアクチュエータと比較してストローク長を確保しやすく、アクチュエータの全長が短くなって、鉄道車両への搭載性が向上する。
【0043】
また、本例のアクチュエータAにおけるポンプ12からの作動油供給および伸縮作動による作動油の流れは、ロッド側室5、ピストン側室6を順に通過して最終的にタンク7へ還流するようになっている。そのため、ロッド側室5或いはピストン側室6内に気体が混入しても、シリンダ本体Cyの伸縮作動によって自立的にタンク7へ排出されるので、推力発生の応答性の悪化を阻止できる。したがって、アクチュエータAの製造にあたって、面倒な油中での組立や真空環境下での組立を強いられず、作動油の高度な脱気も不要となるので、生産性が向上するとともに製造コストを低減できる。さらに、ロッド側室5或いはピストン側室6内に気体が混入しても、気体は、シリンダ本体Cyの伸縮作動によって自立的にタンク7へ排出されるので、性能回復のためのメンテナンスを頻繁に行う必要もなくなり、保守面における労力とコスト負担を軽減できる。
【0044】
つづいて、コントローラCについて説明する。コントローラCは、図3に示すように、車体Bの車両進行方向に対して水平横方向の横方向加速度aを検出する加速度センサ40と、横方向加速度aに含まれる曲線走行時の定常加速度、ドリフト成分やノイズを除去するバンドパスフィルタ41と、バンドパスフィルタ41で濾波した横方向加速度aを処理して、アクチュエータAのモータ15、第一開閉弁9、第二開閉弁11、可変リリーフ弁22へ制御指令を出力する制御処理部42とを備えて構成され、アクチュエータAの推力を制御する。なお、バンドパスフィルタ41で横方向加速度aに含まれる曲線走行時の定常加速度が除去されるので、乗心地を悪化させる振動のみを抑制できる。
【0045】
制御処理部42は、図3に示すように、アクチュエータAをアクチュエータモード、セミアクティブモードおよびパッシブダンパモードのいずれとして機能させるかを選択するモード選択部421と、加速度センサ40で検知した横方向加速度aに基づいてアクチュエータAで発生すべき推力である制御力Fを求める制御力演算部422と、モータ15の回転速度を監視してモータ15を制御するためにモータ15に与える電流を指示する電流指令Iを求めるモータ制御部423と、制御力Fに基づいて可変リリーフ弁22へ与えるリリーフ弁電流値IRを求めるリリーフ弁電流値演算部424と、制御力Fの入力を受けて第一開閉弁9および第二開閉弁11を切換駆動する開閉弁駆動部425と、リリーフ弁電流値IRの入力を受けて可変リリーフ弁22へ供給する電流量を制御するリリーフ弁駆動部426と、電流指令Iの入力を受けてモータ15へ電流指令I通りに電流を供給してモータ15を駆動する駆動部としてのモータドライバ427と、異常信号送信部428とを備えて構成されている。
【0046】
モード選択部421は、アクチュエータAをアクチュエータモード、セミアクティブモードおよびパッシブダンパモードのいずれとして機能させるかを選択する。モード選択部421は、図示しない鉄道車両を管理するモニタ装置から鉄道車両の走行地点情報を得て、アクチュエータAのモードを選択する。モード選択部421は、本実施の形態では、たとえば、車体Bの振動が激しくなるトンネル区間でアクチュエータモードを選択し、曲線区間でセミアクティブモードを選択し、明り区間(トンネル外)かつ直線区間でパッシブダンパモードを選択する。モード選択部421は、前述のように走行区間にモードを紐づけしてモードを選択してもよいし、走行区間以外にも走行速度にモードを紐づけしてもよいし、走行区間と走行速度の双方にモードを紐づけしてもよい。また、前述した走行区間への各モードの紐づけは、一例であって、これに限定されるものではない。走行区間と走行速度の双方にモードを紐づける場合、たとえば、走行速度が50km/h以下では、区間に限らずパッシブダンパモードとし、走行速度が50km/hを超えると、走行区間がトンネル区間および曲線区間でアクチュエータモードとし、それ以外の区間ではセミアクティブモードとする等とされる。この走行区間と走行速度との双方にモードを紐づけする場合も、前述した例は一例であって、これに限定されるものではない。
【0047】
制御力演算部422は、本例では、H∞制御器とされており、横方向加速度aから車体Bの振動を抑制するためにアクチュエータAが出力すべき推力を指示する制御力Fを求める。なお、制御力Fは、方向により正負の符号が付されており、符号はアクチュエータAに出力させるべき推力の方向を示す。開閉弁駆動部425は、制御力Fの入力を受けると、制御力Fの符号に応じて第一開閉弁9と第二開閉弁11に電流供給或いは電流供給を停止して開閉駆動させる。より詳細には、アクチュエータAの伸長方向を正とし、収縮方向を負とする場合、開閉弁駆動部425は、第一開閉弁9と第二開閉弁11を以下のように動作させる。制御力Fの符号が正である場合、アクチュエータAの推力発揮方向が伸長方向であるので、開閉弁駆動部425は、第一開閉弁9を連通ポジションとしつつ第二開閉弁11を遮断ポジションとする。すると、ポンプ12からロッド側室5とピストン側室6の双方に作動油が供給されてアクチュエータAは伸長方向の推力を発揮する。他方、制御力Fの符号が負である場合、アクチュエータAの推力発揮方向が収縮方向であるので、開閉弁駆動部425は、第一開閉弁9を遮断ポジションとしつつ第二開閉弁11を連通ポジションとする。すると、ポンプ12からロッド側室5のみに作動油が供給されてピストン側室6とタンク7とが連通されるので、アクチュエータAは収縮方向の推力を発揮する。
【0048】
なお、制御力演算部422は、本例では、横方向加速度aのみから制御力Fを求めているが、車体Bのスエー加速度とヨー加速度とに基づいて、車体Bのスエー方向の振動を抑制する制御力とヨー方向の振動を抑制する制御力を別々に求め、これらを加算して制御力Fを求めてもよい。また、制御力演算部422は、横方向加速度aから車体Bの速度を求めてスカイフックゲインを乗じて制御力Fを求めるスカイフック制御を行う制御器であってもよい。なお、制御力演算部422は、モード選択部421によって選択されたモードに応じて複数の制御ゲインから適した制御ゲインを選択して使用したり、制御力Fを求めるための制御則を複数保有し前記モードに応じて最適な制御則を選択して使用したりして制御力Fを求めてもよい。その場合、制御力演算部422は、たとえば、モード選択部421から現在選択されているモードの情報を得て制御ゲインや制御則を選択すればよい。
【0049】
モータ制御部423は、アクチュエータAをアクチュエータとして機能させる場合には、ポンプ12を所定の回転速度で駆動し、アクチュエータAをセミアクティブダンパ或いはパッシブダンパとして機能させる場合には、ポンプ12を停止させる。より詳細には、モータ制御部423は、モータ15の図示しないロータの回転位置を検知する検知装置としての回転位置センサ43とモータ15の図示しない巻線に流れる電流量を検知する電流センサ44から前記回転位置と前記電流量の入力を受ける。そして、モータ制御部423は、回転位置を微分してモータ15の回転速度を求め、求めたモータ15の回転速度とモータ15に流れる電流量を監視する。そして、モータ制御部423は、速度ループと電流ループを備えており、アクチュエータAをアクチュエータとして機能させる場合、モータ15の回転速度と電流量をフィードバックしてモータ15を所定の回転速度で駆動させるためにモータ15に与えるべき電流指令Iを求める。
【0050】
他方、モータ制御部423は、アクチュエータAをセミアクティブダンパ或いはパッシブダンパとして機能させる場合には、モータ15への通電を停止すべく電流指令Iを0とするが、回転位置センサ43が検知する回転位置から求めた回転速度がモータ15の逆回転を示すと、モータ15の回転速度を0とするように制御する。モータ15の図示しないロータは、ポンプ12の駆動軸に連結されているので、モータ15が逆回転をするとポンプ12も逆回転している。つまり、モータ制御部423は、アクチュエータAをセミアクティブダンパ或いはパッシブダンパとして機能させる場合であってポンプ12の逆回転を検知すると、モータ15の回転速度をフィードバックして、モータ15の回転速度を0とするようにモータ15を速度フィードバック制御する。
【0051】
より具体的には、モータ制御部423は、速度フィードバック制御によってモータ15を回転速度が0となるように電流指令Iを求める。このようにモータ制御部423が電流指令Iを求めると、ポンプ12の回転速度が0となるように制御され、ポンプ12の逆回転が抑制される。
【0052】
ポンプ12を停止させて、アクチュエータAをパッシブダンパとして機能させる場合、第一開閉弁9と第二開閉弁11とが遮断ポジションを採り、逆止弁17が正常であれば、シリンダ本体Cyが外力で伸縮させられると、シリンダ本体Cyから排出通路21を通じてタンク7へ作動油が排出され、可変リリーフ弁22が作動油の流れに抵抗を与えるので、アクチュエータAは可変リリーフ弁22によって減衰力を発生する。しかしながら、アクチュエータAをパッシブダンパとした場合に、逆止弁17異常あって閉弁できなくなると、シリンダ本体Cyから排出される作動油は、逆止弁17とポンプ12を通過して供給通路16を介してタンク7へ排出されるようになる。シリンダ本体Cyの伸縮速度が極低く、ポンプ12を通過する作動油の流量が少量である場合、作動油は可変リリーフ弁22を迂回してポンプ12の漏れ隙間を通過してタンク7へ流れる。よって、アクチュエータAは、パッシブダンパモードにおいて、逆止弁17に異常があると、シリンダ本体Cyが極低速で伸縮する場合、減衰力を発揮できない。また、シリンダ本体Cyの伸縮速度が速くなり、ポンプ12を通過する作動油の流量が多くなると、作動油は、可変リリーフ弁22を迂回してポンプ12を通過する際に、ポンプ12を逆回転させてタンク7へ流れる。作動油がポンプ12を通過する際に、作動油の流れに対してポンプ12が逆回転する際に生じる摩擦によって抵抗が与えられるが、可変リリーフ弁22による抵抗よりも小さい。そのため、アクチュエータAは、パッシブダンパモードにおいて、逆止弁17に異常があると、シリンダ本体Cyが極低速を超える速度で伸縮しても、大きな減衰力を発揮できなくなる。アクチュエータAは、セミアクティブモードであっても、逆止弁17に異常があると、シリンダ本体Cy内の作動油が逆止弁17およびポンプ12を介してタンク7へ排出されてしまうため、減衰力を発揮したい方向についても減衰力を狙い通りに発生できない。
【0053】
このように、逆止弁17に異常があると、ポンプ12を停止した状態でアクチュエータAに減衰力を発生させる場合、ポンプ12が作動油の流れによって逆回転するのである。これに対して、モータ制御部423は、アクチュエータAをセミアクティブダンパ或いはパッシブダンパとして機能させる場合に回転位置センサ43がポンプ12の逆回転を検知すると、モータ15の回転速度を0とするように制御する。このようにコントローラCがモータ15を制御してポンプ12の逆回転を抑制すると、シリンダ本体Cy内から排出される作動油は、ポンプ12を通過し難くなって可変リリーフ弁22を押し開いて排出通路21を通過してタンク7へ排出される。すると、ロッド側室5内の圧力が可変リリーフ弁22の開弁圧となるように調節されて、アクチュエータAは、十分な減衰力を発生して車体Bの振動を抑制する。このように、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1は、逆止弁17に異常が認められても、セミアクティブモードおよびパッシブダンパモードにおいてアクチュエータAに必要十分な減衰力を発生させて、鉄道車両における乗心地を向上できる。
【0054】
なお、モータ15がブラシレスモータである場合、通常、モータ15に備えられる電気角を検知するためのレゾルバやホール素子等センサが設けられており、このセンサを回転位置センサ43として利用すればよい。アクチュエータAをアクチュエータとして機能させる場合のポンプ12の所定の回転速度については、鉄道車両用制振装置1を適用する鉄道車両の制振に最適な値に予め決めればよい。つまり、モータ制御部423は、所定の回転速度を目標回転速度として、モータ15の回転速度と目標回転速度の偏差に基づいて目標電流値を求め、目標電流値とモータ15に実際に流れている電流量との偏差に基づいてモータ15へ与えるべき電流指令Iを求める。他方、モータ制御部423は、本実施の形態では、アクチュエータAをセミアクティブダンパ或いはパッシブダンパとして機能させる場合には、ポンプ12の駆動を停止し、ポンプ12の停止中にポンプ12が逆回転する場合には、ポンプ12の回転速度を0とするように速度フィードバック制御によって電流指令Iを求める。以上の通り、本実施の形態では、ポンプ12の逆回転を検知する検知装置は、モータ15のロータの回転位置を検知する回転位置センサ43となっているが、モータ15に作用するトルクによってもモータ15が逆回転を検知できるのでトルクセンサとされてもよい。また、検知装置は、ポンプ12の回転位置や回転速度を直接に検知するものであってもよい。そして、本実施の形態では、ポンプ12の逆回転を抑制する逆回転抑制装置は、モータ15を制御するコントローラCを備えており、回転位置センサ43がポンプ12の逆回転を検知すると、コントローラCがモータ15の速度を0とするように速度フィードバック制御を実行する。
【0055】
また、モータ制御部423は、モータ15への通電を停止中に回転位置センサ43から得られる回転速度がモータ15の逆回転を示すと、異常信号送信部428へ異常信号を出力する。異常信号送信部428は、鉄道車両用制振装置1よりも上位の外部装置、たとえば、鉄道車両の情報を監視する図示しない車両モニタ装置や上位の制御装置等へエラー信号を送信する。外部装置は、エラー信号を受け取ると、モニタへの表示やスピーカーからの警報出力によって鉄道車両用制振装置1に異常があったこと鉄道車両のオペレータに知らせる。
【0056】
つづいて、リリーフ弁電流値演算部424は、前述のようにそれぞれ求められた制御力Fに基づいて可変リリーフ弁22へ供給するリリーフ弁電流値IRを求める。ここで、可変リリーフ弁22は、供給される電流量に比例して開弁圧が変化するが、通過流量に応じて圧力損失が増加する圧力オーバーライドを有する特性を備えている。アクチュエータモードが選択されている場合、モータ15の回転速度が所定の回転速度で等速回転しており、可変リリーフ弁22を通過する作動油量がある程度想定できるので、リリーフ弁電流値演算部424は、圧力オーバーライドを加味して前記リリーフ弁電流値IRを求める。他方、セミアクティブモードおよびパッシブダンパモードでは、ポンプ12が停止しているので、ポンプ12からの流量を勘案する必要がないので、圧力オーバーライドを加味せずにリリーフ弁電流値IRを求めてもよい。
【0057】
なお、リリーフ弁駆動部426は、本例では、可変リリーフ弁22の符示しないソレノイドを駆動するドライバとされていて、リリーフ弁電流値IRの入力を受けて可変リリーフ弁22へリリーフ弁電流値IR通りの電流量を供給する。
【0058】
モータドライバ427は、図示はしないが、モータ15を駆動する駆動回路と駆動回路中のスイッチを制御する制御部を備えており、電流指令Iが指示する電流をモータ15へ供給する。モータドライバ427は、本実施の形態では、電流指令Iの入力を受けて、モータ15をPWM制御して、モータ15に流れる電流量が電流指令Iの指示する電流量となるようにモータ15を駆動して、ポンプ12を回転駆動させる。
【0059】
前述したコントローラCの処理を図4に示したフローチャートを用いて説明する。まず、コントローラCは、アクチュエータAのモードを参照して、選択されているモードがアクチュエータモードであるか否かを判断する(ステップF1)。コントローラCは、選択されているモードがアクチュエータモードである場合、ポンプ12を所定の回転速度で駆動し(ステップF2)、さらに、制御力Fを求めて第一開閉弁9、第二開閉弁11および可変リリーフ弁22を制御する(ステップF3)。
【0060】
他方、選択されているモードがアクチュエータモードではなく、セミアクティブモード或いはパッシブダンパモードである場合、コントローラCは、選択されているモードがセミアクティブモードであるか否かを判断する(ステップF4)。そして、選択されているモードがセミアクティブモードである場合、コントローラCは、ポンプ12が逆回転しているか否かを判断する(ステップF5)。ポンプ12が逆回転していない場合、逆止弁17が正常に機能しているので、コントローラCは、モータ15に通電せず(ステップF6)、さらに、制御力Fを求めて第一開閉弁9、第二開閉弁11および可変リリーフ弁22を制御する(ステップF7)。他方、ステップF5の判断で、ポンプ12が逆回転している場合、逆止弁17に異常があって供給通路16を遮断できない状態となっているので、コントローラCは、モータ15の回転速度をフィードバックしてモータ15の回転速度を0とするように制御する(ステップF8)。そして、ステップF7へ移行して、コントローラCは、制御力Fを求めて第一開閉弁9、第二開閉弁11および可変リリーフ弁22を制御する。
【0061】
ステップF4の判断で、選択されているモードがセミアクティブモードではなくパッシブダンパモードである場合、コントローラCは、ポンプ12が逆回転しているか否かを判断する(ステップF9)。ポンプ12が逆回転していない場合、逆止弁17が正常に機能しているので、コントローラCは、モータ15への通電を停止して(ステップF10)、さらに、第一開閉弁9および第二開閉弁11へ通電を停止して閉弁させて制御力Fを求めて可変リリーフ弁22の開弁圧を制御する(ステップF11)。他方、ステップF9の判断で、ポンプ12が逆回転している場合、逆止弁17に異常があって供給通路16を遮断できない状態となっているので、コントローラCは、モータ15の回転速度をフィードバックしてモータ15の回転速度を0とするように制御する(ステップF12)。そして、ステップF11へ移行して、コントローラCは、制御力Fを求めて可変リリーフ弁22の開弁圧を制御し、第一開閉弁9および第二開閉弁11への通電を停止して閉弁させる。
【0062】
なお、コントローラCは、ハードウェア資源としては、図示はしないが具体的にはたとえば、加速度センサ40、各センサ43,44が出力する信号を取り込むためのA/D変換器と、バンドパスフィルタ41で濾波した横方向加速度aを取り込んでアクチュエータAを制御するのに必要な処理に使用されるプログラムが格納されるROM(Read Only Memory)等の記憶装置と、前記プログラムに基づいた処理を実行するCPU(Central Processing Unit)等の演算装置と、前記CPUに記憶領域を提供するRAM(Random Access Memory)等の記憶装置とを備えて構成されればよく、コントローラCの制御処理部42における各部は、CPUの前記プログラムの実行により実現できる。また、バンドパスフィルタ41は、前記CPUのプログラムの実行により実現されてもよい。
【0063】
このように鉄道車両用制振装置1は、鉄道車両の車体Bと台車Tとの間に介装されて作動油(作動液体)の供給により伸縮可能なシリンダ本体Cyと、正回転すると供給通路16を介して作動油をシリンダ本体Cyへ供給するポンプ12と、供給通路16の途中であってポンプ12よりもシリンダ本体Cy側に設けられてポンプ12からシリンダ本体Cyへ向かう作動油の流れのみを許容する逆止弁17とを備えたアクチュエータAと、ポンプ12の逆回転を検知する回転位置センサ(検知装置)43と、ポンプ12の停止中に回転位置センサ(検知装置)43がポンプ12の逆回転を検知するとポンプ12の逆回転を抑制するコントローラ(逆回転抑制装置)Cとを備えている。
【0064】
このように構成された鉄道車両用制振装置1は、ポンプ12の逆回転を検知するので逆止弁17の異常を認識できる。そして、鉄道車両用制振装置1は、ポンプ12の逆回転を検知して逆止弁17の異常を認識すると、ポンプ12の逆回転を抑制し、シリンダ本体Cy側から逆止弁17を通過してポンプ12を通過しようとする作動油の流れに抵抗を与えて作動油のポンプ12の通過を妨げる。このように本実施の形態の鉄道車両用制振装置1によれば、ポンプ12を停止中に逆止弁17の異常を認識すると、ポンプ12の逆回転を抑制して作動油の流れに抵抗を与えるので、逆止弁17に異常が生じてもアクチュエータAが狙い通りに必要十分な減衰力を発生して鉄道車両における乗心地を向上できる。
【0065】
また、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1では、逆回転抑制装置がモータ15を制御するコントローラCを備え、回転位置センサ(検知装置)43がポンプ12の逆回転を検知すると、コントローラCがモータ15の速度を0とするように速度フィードバック制御を実行する。逆止弁17の異常時においてポンプ12を積極的に駆動して正回転させてシリンダ本体Cyに作動油を供給してもよいが、第一開閉弁9と第二開閉弁11とを開弁させていないとアクチュエータAが自ら伸縮してしまうので、アクチュエータAをセミアクティブダンパ或いはパッシブダンパとして機能させる際に第一開閉弁9と第二開閉弁11とを高度に制御しなくてはならなくなる。これに対して、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1では、コントローラCがモータ15の回転速度を0とするように速度フィードバック制御してポンプ12を正回転させることなくポンプ12の逆回転を抑制できるので、アクチュエータAをセミアクティブダンパ或いはパッシブダンパとして機能させる際の制御が簡単となる利点がある。また、コントローラCがモータ15の回転速度を0とするように速度フィードバック制御する場合、ポンプ12側からシリンダ本体Cyに対して作動油を供給しないので、シリンダ本体Cyの伸縮時に可変リリーフ弁22を通過する作動油に影響を与えずに済むから、アクチュエータAは、逆止弁17が正常な状態で発生する減衰力とほぼ等しい減衰力を発生できる利点もある。これらの利点は、コントローラCがポンプ12の回転変位をフィードバックする変位フィードバック制御を行ってポンプ12の回転変位を0とする制御を行っても同様に享受できる。コントローラCがポンプ12の回転変位を0とする制御を行う場合、ポンプ12が逆回転しようとする逆回転方向の変位を抑制でき、また、ポンプ12を正回転方向へ変位させることもない。よって、コントローラCがポンプ12の回転変位をフィードバックする変位フィードバック制御を行ってポンプ12の回転変位を0とする制御を行っても、アクチュエータAをセミアクティブダンパ或いはパッシブダンパとして機能させる際の制御が簡単となる。加えて、シリンダ本体Cyの伸縮時に可変リリーフ弁22を通過する作動油に影響を与えずに済み、アクチュエータAは、逆止弁17が正常な状態で発生する減衰力とほぼ等しい減衰力を発生できる。
【0066】
また、本実施の形態における鉄道車両用制振装置1は、アクチュエータAがシリンダ本体Cyの伸縮を制御する液圧回路HCを備え、液圧回路HCがポンプ12からシリンダ本体Cyへ作動油を供給する場合にはアクチュエータAをアクチュエータとして機能させ、ポンプ12からシリンダ本体Cyへ作動油の供給を停止する場合にはアクチュエータAをセミアクティブダンパとパッシブダンパの少なくとも一方として機能させるように切換られる。このように構成された鉄道車両用制振装置1によれば、アクチュエータAがセミアクティブダンパ或いはパッシブダンパとして機能する際に、アクチュエータAが狙い通りに減衰力を発揮して車体の振動を十分に制振できる。
【0067】
さらに、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1では、回転位置センサ(検知装置)43がポンプ12の逆回転を検知すると、コントローラCが異常信号を車両モニタや上位の制御装置等の外部装置へ送信する。このように構成された鉄道車両用制振装置1によれば、逆止弁17の異常を検知すると外部装置へ異常信号を送信するので、オペレータに逆止弁17の異常をタイムリーに知らせてメンテナンスが必要である旨を認識させ得る。
【0068】
また、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1では、シリンダ本体Cyは、シリンダ2と、シリンダ2内に摺動自在に挿入されるピストン3と、シリンダ2内に挿入されてピストン3に連結されるロッド4と、シリンダ2内をピストン3で区画したロッド側室5とピストン側室6と、作動油を貯留するとともにポンプ12の吸込口12aに接続されるタンク7とを有し、供給通路16は、ロッド側室5に連通されるとともに、液圧回路HCは、ロッド側室5とピストン側室6とを連通する第一通路8と、第一通路8に設けられる第一開閉弁9と、ピストン側室6とタンク7とを連通する第二通路10と、第二通路10に設けられる第二開閉弁11と、ロッド側室5をタンク7へ接続する排出通路21と、排出通路21の途中に設けられた開弁圧を変更可能な可変リリーフ弁22とを備えている。このように構成された鉄道車両用制振装置1では、第一開閉弁9と第二開閉弁11との開閉によってアクチュエータAをアクチュエータの他にセミアクティブダンパとして機能させられるとともに、アクチュエータAの推力を可変リリーフ弁22の開弁圧の調整によって制御できる。よって、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1によれば、アクチュエータAの推力を調節するために必要なセンサ類が不要となり、ポンプ12の吐出流量の調節のためにモータ15を高度に制御する必要もなくなり、鉄道車両用制振装置1が安価となる。
【0069】
さらに、本実施の形態の鉄道車両用制振装置1では、液圧回路HCは、タンク7からピストン側室6へ向かう作動油の流れのみを許容する吸込通路19と、ピストン側室6からロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容する整流通路18とを備える。このように構成された鉄道車両用制振装置1によれば、ポンプ12を停止して第一開閉弁9および第二開閉弁11を閉弁させると、自動的にアクチュエータAがユニフロー型のパッシブダンパとして機能できる。なお、電流供給の停止によって第一開閉弁9と第二開閉弁11とが閉弁するようにしておくと、アクチュエータAがフェール時にも自動的にパッシブダンパとして機能できる。
【0070】
なお、逆回転抑制装置は、図5に示すように、モータ15のロータ15aの回転の抑制と許容を切換る電磁ブレーキ30で構成されてもよい。電磁ブレーキ30は、ロータ15aに設けたブレーキロータ31と、モータ15のケース15bに対して不動に設置されて内部にコイル32aを備えたステータ32と、ブレーキロータ31に対して遠近可能な摩擦板33と、摩擦板33をブレーキロータ31へ当接させるように付勢するばね34とを備えている。そして、電磁ブレーキ30は、コイル32aへ通電するとコイル32aが摩擦板33を吸引してブレーキロータ31から離間させてブレーキロータ31の自由な回転を許容する一方、コイル32aへの通電を断つと摩擦板33がばね34の付勢力でブレーキロータ31へ密着してブレーキロータ31の回転を抑制する。このように電磁ブレーキ30は、通電時にモータ15のロータ15aの回転を許容し、非通電時にモータ15のロータ15aの回転を阻止する。このように逆回転抑制装置を電磁ブレーキ30としても、逆止弁17の異常時においてモータ15の回転を阻止してポンプ12の逆回転を抑制できる。よって、逆回転抑制装置を電磁ブレーキ30とした鉄道車両用制振装置1によれば、逆止弁17に異常が生じてもアクチュエータAが狙い通りに必要十分な減衰力を発生して鉄道車両における乗心地を向上できる。なお、ポンプ12への通電を停止する場合、逆止弁17の異常を検知すると電磁ブレーキ30への通電を停止してポンプ12の逆回転を抑制するようにしてもよいが、ポンプ12の停止時には電磁ブレーキ30への電流供給も停止するようにしてもよい。また、電磁ブレーキ30は、通電時にモータ15のロータ15aの回転を抑制し、非通電時にロータ15aの自由な回転を許容するものであってもよい。なお、ステータ32は、モータ15のケース15bに対して不動であれば、ケース15bに固定してもよいし、他所に設置されてもよい。また、電磁ブレーキ30は、モータ15を介さずにポンプ12の回転を直接に抑制するように設置されてもよい。
【0071】
なお、逆回転抑制装置は、図6に示すように、モータ15の巻線を短絡させてモータ15の回転を抑制する短絡回路60を備えて構成されてもよい。短絡回路60は、モータドライバ427内に設けられるモータ15を駆動する駆動回路50に組み込まれている。駆動回路50は、モータ15を駆動するために、図6に示すように、モータ15の三相の各巻線U,V,Wのそれぞれに対応して接続される三つのアーム51,52,53と、各アーム51,52,53へ電力供給する電源54と、各アーム51,52,53と電源54との間に介装したリレー55とを備えている。他方、短絡回路60は、各巻線U,V,Wを短絡するためのバイパス61と、バイパス61の途中に設けた短絡用スイッチ62および抵抗63とを備えている。
【0072】
本実施の形態では、モータ15が三相ブラシレスモータとされており、モータ15を駆動するため駆動回路50は、三つのアーム51,52,53を備えているが、モータ15がブラシレスモータの場合には巻線の相数に対応する数のアームを設ければよい。また、モータ15がDCブラシ付モータの場合には、アームを二つとして巻線の両端を各アームに接続すればよい。なお、このモータ15の場合、図示するところでは、各巻線U,V,WがY字型に結線されているが、Δ結線とされてもよく、Δ結線する場合には、結線部分をそれぞれ対応するアーム51,52,53へ接続すればよい。
【0073】
アーム51は、スイッチ51a,51bを直列に接続して構成され、スイッチ51a,51b間をモータ15の巻線Uの一端に接続している。アーム52は、スイッチ52a,52bを直列に接続して構成され、スイッチ52a,52b間をモータ15の巻線Vの一端に接続している。アーム53は、スイッチ53a,53bを直列に接続して構成され、スイッチ53a,53b間をモータ15の巻線Wの一端に接続している。
【0074】
そして、これらアーム51,52,53は、並列に接続されており、リレー55を介して各アーム51,52,53の図6中上方側の接続点が電源54に接続され、図6中下方側の接続点が接地されている。そして、電源54から駆動回路50への電流供給の可不可は、リレー55によって行われ、モータ15を停止させる場合にはリレー55をオフして駆動回路50への電流供給を停止させる。
【0075】
このように構成された駆動回路50によれば、たとえば、スイッチ51aとスイッチ52bをオンすると、モータ15の巻線U,Vに電流を流すことができる。駆動回路50は、各スイッチ51a,51b,52a,52b,53a,53bを適宜開閉動作させて巻線U,V,Wへ通電して回転磁界を作り出してモータ15を回転駆動する。なお、スイッチ51a,51b,52a,52b,53a,53bとしては、たとえば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transister)等のスイッチング素子を利用すればよい。
【0076】
他方、短絡回路60は、駆動回路50に並列に接続されており、バイパス61と、バイパス61に設けた短絡用スイッチ62と抵抗63とを備えている。バイパス61は、この場合、各アーム51,52,53に対して並列に接続されており、このバイパス61の途中には短絡用スイッチ62が設けられている。この短絡用スイッチ62は、たとえば、MOSFETとされて、ドレイン電極とソース電極をバイパス61の途中に接続してあり、ゲート電極に電圧が印加されるとオンとなり、電圧の印加が無いとオフとなる。
【0077】
短絡用スイッチ62は、モータ制御部423によって開閉制御され、回転位置センサ43が検知するモータ15の回転位置から得たポンプ12の回転方向が逆回転である場合にオンされる。なお、モータ制御部423は、ポンプ12を正回転させるようにモータ15を駆動する場合には短絡用スイッチ62をオフにする。モータ制御部423は、モータ15を停止させる場合にポンプ12が逆回転しているか否かに関わらず短絡用スイッチ62をオンしてもよい。
【0078】
このように構成された鉄道車両用制振装置1では、ポンプ12の停止時にポンプ12が逆回転しても、短絡用スイッチ62がオンされて短絡回路60によってモータ15の巻線U,V,Wが短絡される。ポンプ12の逆回転によって短絡回路60によって短絡されたモータ15に逆起電力が生じてポンプ12の逆回転を抑制するトルクが発生し、ポンプ12の逆回転が抑制される。このように逆回転抑制装置を短絡回路60としても、逆止弁17の異常時においてモータ15の回転を阻止してポンプ12の逆回転を抑制できる。よって、逆回転抑制装置を短絡回路60とした鉄道車両用制振装置1によれば、逆止弁17に異常が生じてもアクチュエータAが狙い通りに必要十分な減衰力を発生して鉄道車両における乗心地を向上できる。なお、ポンプ12への通電を停止する場合、逆止弁17の異常を検知すると短絡用スイッチ62をオンしてポンプ12の逆回転を抑制するようにしてもよいが、ポンプ12の停止時には短絡用スイッチ62をオンして短絡回路60でモータ15の巻線U,V,Wを短絡してもよい。
【0079】
このように逆回転抑制装置は、ポンプ12の逆回転をモータ15の制御によって抑制してもよいし、ブレーキによってポンプ12の逆回転を抑制してもよいし、さらには、モータ15を短絡してポンプ12の逆回転を抑制してもよいし、その他、モータ15或いはポンプ12の逆回転を物理的に規制するものであってもよい。
【0080】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1・・・鉄道車両用制振装置、2・・・シリンダ、3・・・ピストン、4・・・ロッド、5・・・ロッド側室、6・・・ピストン側室、7・・・タンク、8・・・第一通路、9・・・第一開閉弁、10・・・第二通路、11・・・第二開閉弁、12・・・ポンプ、12a・・・吸込口、15・・・モータ、16・・・供給通路、17・・・逆止弁、18・・・整流通路、19・・・吸込通路、21・・・排出通路、22・・・可変リリーフ弁、43・・・回転位置センサ(検知装置)、30・・・電磁ブレーキ、60・・・短絡回路(逆回転抑制装置)、A・・・アクチュエータ、C・・・コントローラ(逆回転抑制装置)、Cy・・・シリンダ本体、HC・・・液圧回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6