特許第6951444号(P6951444)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6951444水性バインダ系、コーティング組成物及びコーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6951444
(24)【登録日】2021年9月28日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】水性バインダ系、コーティング組成物及びコーティング
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/06 20060101AFI20211011BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20211011BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20211011BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20211011BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20211011BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
   C09D201/06
   C09D5/02
   C09D7/63
   C09D133/14
   C09D175/04
   C09D167/00
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-528717(P2019-528717)
(86)(22)【出願日】2017年11月17日
(65)【公表番号】特表2020-512420(P2020-512420A)
(43)【公表日】2020年4月23日
(86)【国際出願番号】US2017062186
(87)【国際公開番号】WO2018102152
(87)【国際公開日】20180607
【審査請求日】2020年9月17日
(31)【優先権主張番号】62/428,124
(32)【優先日】2016年11月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506352278
【氏名又は名称】クローダ インターナショナル パブリック リミティド カンパニー
(73)【特許権者】
【識別番号】508276992
【氏名又は名称】クローダ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(72)【発明者】
【氏名】ビルヘルムス アドリアヌス ヤコーブス ホンコープ
(72)【発明者】
【氏名】バーレント ファン デ フェルデ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンネス ヘンドリック レクスモント
(72)【発明者】
【氏名】メイリー チュア
【審査官】 山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−514088(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0170238(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/191503(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第105199070(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−10/00、
101/00−201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング組成物用水性バインダ系であって、該水性バインダ系は、
A)水性バインダ系の全質量を基準として少なくとも10wt%の水、
B)少なくとも1種のヒドロキシル官能性バインダポリマー、及び、
C)水性バインダ系の全質量を基準として0.1〜20wt%の少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物、ここで該第四級アンモニウム化合物はペンダント基を有するコア第四級アンモニウム基を含み、該ペンダント基は、
i)直鎖又は枝分かれ鎖アルキル又はアルケニル基である、8〜16個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、
ii)2個の独立したヒドロキシル末端基、ここで各ヒドロキシル末端基は1〜10個のアルキレンオキシド残基を含みそして第四級アンモニウム化合物中のアルキレンオキシド残基の総数は5〜12個である、及び、
iii)C1〜C8ヒドロカルビル基、
を含み、
ここでB)及びC)は水性バインダ系内で互いに共有結合していない、水性バインダ系。
【請求項2】
前記第四級アンモニウム化合物は式(I)
【化1】
(上式中、R1は直鎖又は枝分かれ鎖アルキル又はアルケニル基である、8〜16個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、
m及びnは独立して1〜10の値を有し、
m+nの合計は5〜12であり、そして
各Xは、−O−を末端とするエチレンオキシド残基及び−O−を末端とするプロピレンオキシド残基から独立して選ばれ、それにより、式(I)の化合物は2つの末端ヒドロキシル基を含む)のものである、請求項1記載の水性バインダ系。
【請求項3】
前記ヒドロキシル官能性バインダポリマーはポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリエステル及びそれらのコポリマーから選ばれる、請求項1又は2記載の水性バインダ系。
【請求項4】
前記水性バインダ系の全質量を基準として40〜80wt%の水を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の水性バインダ系。
【請求項5】
前記水性バインダ系の全質量を基準として10〜50wt%のヒドロキシル官能性バインダポリマーを含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の水性バインダ系。
【請求項6】
少なくとも1種の顔料又は染料を含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の水性バインダ系。
【請求項7】
アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含む、請求項1〜6のいずれか1項記載の水性バインダ系。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の水性バインダ系及びポリイソシアネートを含むコーティング組成物。
【請求項9】
B)及びC)はポリイソシアネートと反応してポリマーマトリックスを形成する、請求項8記載のコーティング組成物を硬化することによって得られるコーティング。
【請求項10】
前記コーティングはJIS Z 2801による抗微生物活性が少なくともlog2減少の大腸菌活性である、請求項9記載のコーティング。
【請求項11】
前記コーティングはJIS Z 2801による抗微生物活性が少なくともlog2減少のブドウ球菌活性である、請求項9又は10記載のコーティング。
【請求項12】
前記コーティングは該コーティング中の全固形分を基準にして14wt%以下のC)を含む、請求項9〜11のいずれか1項記載のコーティング。
【請求項13】
請求項8記載のコーティング組成物を基材に塗布する工程、及び、前記コーティング組成物を硬化させる工程を含む、基材上に抗微生物コーティングを提供する方法。
【請求項14】
水性コーティング組成物の硬化時に形成されるポリマーマトリックス中に第四級アンモニウム化合物を反応させることによってコーティングに抗微生物活性を与えるための式(I)
【化2】
(上式中、R1は直鎖又は枝分かれ鎖アルキル又はアルケニル基である、8〜16個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、
m及びnは独立して1〜10の値を有し、
m+nの合計は5〜12であり、そして
各Xは、−O−を末端とするエチレンオキシド残基及び−O−を末端とするプロピレンオキシド残基から独立して選ばれ、それにより、式(I)の化合物は2つの末端ヒドロキシル基を含む)の第四級アンモニウム化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、35U.S.C.§119(e)に基づいて2016年11月30日に出願された米国仮特許出願第62/428,124号の優先権を主張し、その出願の全体を参照により本明細書に取り込む。
【0002】
発明の分野
本発明は、水性バインダ系、該水性バインダ系を含むコーティング組成物、及び、該コーティング組成物を硬化させることなどによって該コーティング組成物から形成されるコーティングに関する。本発明はまた、関連する方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
コーティング組成物は、典型的には、キャリア液、1種以上のバインダポリマー及び添加剤を含む。これらのそれぞれは、単一の成分又は複数の成分を含むことができる。添加剤として顔料及び/又は染料などの着色剤を含むコーティング組成物は、塗料として知られうる。
【0004】
コーティング組成物は水性バインダ系を含むことができる。例えば、ポリウレタンコーティング組成物は、水性バインダ系及びポリイソシアネートを含むことができる。水性バインダ系は水及び1種以上のヒドロキシル官能性成分を含み、これらの成分が一緒に混合されたときにポリイソシアネートと反応するであろう。水性バインダ系とポリイソシアネートとは互いに反応性があるので、それらは別々に貯蔵することができる。
【0005】
水性バインダ系は少なくとも1種のヒドロキシル官能性バインダポリマーを含むことができる。コーティング組成物を基材に塗布する間に、バインダポリマーの反応により、コーティング組成物は基材上にフィルムを形成し、そして基材に付着する。コーティング組成物を基材に塗布した後に基材上にコーティングを形成するプロセスは硬化として知られうる。硬化コーティングは、硬度及び耐薬品性などの様々な望ましい特性を有することができる。
【0006】
多くの添加剤はコーティング組成物及び/又はコーティング組成物用水性バインダ系の中に含まれることができる。これらとしては、顔料レオロジー調整剤、触媒、安定剤、乳化剤、分散剤及び他の界面活性剤が挙げられる。抗微生物性添加剤は、抗細菌効果、例えば静細菌効果及び/又は殺細菌効果を有する添加剤である。抗微生物性添加剤はまた、抗ウイルス効果及び/又は抗真菌効果を有することができる。
【0007】
幾つかの第四級アンモニウム化合物は、細胞膜を損傷しそして細菌を殺すことにより抗細菌効果を有する。このメカニズムは、第四級アンモニウム基上の正電荷部位が細菌上の負電荷部位と相互作用することによる可能性が高い。
【0008】
第四級アンモニウム化合物は、系及び/又は組成物に悪影響を及ぼす可能性が認められているため、典型的には水性バインダ系又はコーティング組成物中には含まれない。理論に制限されることなく、幾つかの第四級アンモニウム化合物のカチオン性は、多くのコーティング組成物の一般的なアニオン性と適合しない可能性があると考えられる。
【発明の概要】
【0009】
発明の概要
ポリウレタンコーティングは二成分コーティング組成物から形成することができる。二成分コーティング組成物は、イソシアネート官能性成分(例えば、ポリイソシアネート)及びヒドロキシル官能性成分を含むことができる。これら2つの成分は混合時に反応する可能性があるので別々に貯蔵することができる。ヒドロキシル官能性成分は、水、ヒドロキシル官能性バインダポリマー及び他の添加剤を含む水性バインダ系であることができる。
【0010】
本発明は、水性バインダ系中に特定の第四級アンモニウム化合物を含むことが水性バインダ系及び/又はコーティング組成物内での適合性、及び、硬化コーティングの硬度及び/又は耐薬品性などの1つ以上の所望の特性に悪影響を及ぼすことなく、硬化コーティングに抗微生物特性を驚くべきことに与え得るという出願人による認識に部分的に基づく。理論に縛られることなく、これは、第四級アンモニウム化合物が限定された範囲の5〜12個のアルキレンオキシド残基を含み、そして水性バインダ系中で遊離しておりそして未反応であることに起因しうると考えられる。
【0011】
水性バインダ系に含まれる場合に、本発明の第四級アンモニウム化合物は、それらの正/カチオン電荷にもかかわらず、バインダ系及びその後のコーティング組成物に適合性のままである。第四級アンモニウム化合物が水性バインダ系中で遊離かつ未反応であるときに、アルキレンオキシド残基は第四級アンモニウム部位での正電荷を不適合なアニオン性成分から遮蔽することができる。本明細書中の実施例は、第四級アンモニウム化合物を水性バインダ系と適合性にするために第四級アンモニウム化合物中に少なくとも5個のアルキレンオキシド残基が必要であることを示している。
【0012】
さらに、第四級アンモニウム化合物中に12個以下のアルキレンオキシド残基が必要とされる。理論に拘束されないが、12個を超えるアルキレンオキシド残基は、第四級アンモニウム化合物を含むコーティング組成物から形成された硬化コーティングの硬度及び/又は耐薬品性を所望されずに損なうであろうと考えられる。
【0013】
第四級アンモニウム化合物はまた、それらが所定の量で含まれる硬化コーティングに予想外に高い抗微生物活性(例えば、強い抗細菌効果)を提供する。それらのヒドロキシル官能性のために、第四級アンモニウム化合物は反応性添加剤でありそしてコーティング組成物が硬化したときに形成されるポリマーマトリックス中で反応する。これは、第四級アンモニウム化合物がポリマーマトリックス中に反応しているので、コーティングからの第四級アンモニウム化合物の浸出を防ぐことによって有益でありうる。第四級アンモニウム化合物をポリマーマトリックス中に直接反応させることによって、これはまた、コーティング表面の近く又はその表面にて第四級アンモニウム部位で正電荷を露出させることによって抗微生物効果を改善することができる。表面に有意な量の正電荷部位がある場合には、細菌及び他の微生物は硬化コーティングの表面から忌避されうる。
【0014】
このように、第一の態様から見ると、本発明はコーティング組成物用水性バインダ系を提供し、ここで、該水性バインダ系は、
A)水性バインダ系の全質量を基準として少なくとも10wt%の水、
B)少なくとも1種のヒドロキシル官能性バインダポリマー、及び、
C)水性バインダ系の全質量を基準として0.1〜20wt%の少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物、ここで該第四級アンモニウム化合物はペンダント基を有するコア第四級アンモニウム基を含み、該ペンダント基は、
i)直鎖又は枝分かれ鎖アルキル又はアルケニル基である、8〜16個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、及び、
ii)2個の独立したヒドロキシル末端基、ここで各ヒドロキシル末端基は1〜10個のアルキレンオキシド残基を含みそして第四級アンモニウム化合物中のアルキレンオキシド残基の総数は5〜12個である、
を含み、
ここでB)及びC)は水性バインダ系内で互いに共有結合していない。
【0015】
第二の態様から見ると、本発明は、第一の態様による水性バインダ系及びポリイソシアネートを含むコーティング組成物を提供する。
【0016】
第三の態様から見ると、本発明は、B)及びC)がポリイソシアネートと反応してポリマーマトリックスを形成するように、第二の態様によるコーティング組成物を硬化することによって得ることができるコーティングを提供する。
【0017】
第四の態様から見ると、本発明は、第二の態様によるコーティング組成物を基材に塗布する工程、及び、該コーティング組成物を硬化させる工程を含む、基材上に抗微生物コーティングを提供する方法を提供する。
【0018】
第五の態様から見ると、本発明は、水性コーティング組成物を硬化した際に形成されるポリマーマトリックス中に第四級アンモニウム化合物を反応させることによってコーティングに抗微生物活性を与えるための本明細書に記載の第四級アンモニウム化合物の使用を提供する。
【0019】
本発明の任意の態様は、本発明のその態様又は本発明の任意の他の態様に関して本明細書に記載の任意の特徴を含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本明細書で使用される任意の上限又は下限の量又は範囲の限度は独立して組み合わされてもよいことが理解されるであろう。
【0021】
置換基中の炭素原子数(例えば、「C1〜C6」)を記載するときに、その数は、いかなる枝分かれ基中に存在するものも含めて、置換基中に存在する炭素原子の総数を指すことが理解されるであろう。さらに、例えば脂肪酸中の炭素原子の数を記載するときに、これはカルボン酸中のもの及びいかなる枝分かれ基中に存在するものも含む炭素原子の総数を指す。
【0022】
本発明を製造するために使用することができる化学物質の多くは天然源から入手可能である。そのような化学物質は、それらの天然起源のために典型的には化学種の混合物を含む。そのような混合物が存在するために、本明細書で規定されている様々なパラメータは平均値であることができ、非整数であることができる。
【0023】
成分又は組成物の「固形分」部分への言及は、溶媒又は水ではない成分又は組成物の全ての部分を指すことが理解されるであろう。例えば、コーティング組成物の固形分は、溶媒又は水を除いたすべての部分の合計である。
【0024】
成分B)及びC)は水性バインダ系内で互いに共有結合していない。これは、第四級アンモニウム化合物を水性バインダ系内でより可動性にさせうるので有利であることができる。硬化してコーティングを形成すると、第四級アンモニウム化合物は他の成分と反応してポリマーマトリックスを形成しうる。硬化前の第四級アンモニウム化合物の移動度は、それがポリマーマトリックスに結合する前にそれがポリマーマトリックスの表面に近づくことを可能にし、その結果、そのカチオン電荷はコーティングの表面に近づく。理論に縛られるわけではないが、これはコーティングに向上した抗微生物活性を提供しうる。
【0025】
水性バインダ系成分A)-水
本発明の水性バインダ系は、水性バインダ系の全質量を基準として少なくとも10wt%の水を含む。
【0026】
好ましくは、水性バインダ系は、少なくとも20wt%の水、より好ましくは少なくとも30wt%の水、特に少なくとも40wt%の水、望ましくは少なくとも45wt%の水、特に少なくとも50wt%の水を含み、すべては水性バインダ系の全質量を基準とする。水性バインダ系は、90wt%以下の水、好ましくは80wt%以下の水、特に75wt%以下の水、望ましくは70wt%以下の水を含むことができ、すべては水性バインダ系の全質量を基準とする。例えば、水性バインダ系は水性バインダ系の全質量を基準として40〜80wt%の水を含むことができる。
【0027】
好ましくは、水性バインダ系は、すべて水性バインダの全質量を基準として10wt%未満、より好ましくは5wt%未満、特に2wt%未満、望ましくは1wt%未満、特に0wt%の非水性溶媒を含む。水性バインダ系は実質的に非水性溶媒を含まなくてもよい。非水溶媒は有機溶媒であることができる。
【0028】
水性バインダ系中の水/第四級アンモニウム化合物の質量比は、20:1以下、好ましくは15:1以下、より好ましくは10:1以下であることができる。水性バインダ系中の水/第四級アンモニウム化合物の質量比は、少なくとも0.5:1、好ましくは少なくとも1:1、より好ましくは少なくとも2:1、特に少なくとも4:1、望ましくは少なくとも5:1であることができる。
【0029】
水性バインダ系成分B)-ヒドロキシル官能性バインダポリマー
水性バインダ系は、B)少なくとも1種のヒドロキシル官能性バインダポリマーを含む。
【0030】
ヒドロキシル官能性バインダポリマーはコーティングバインダポリマーであることができる。バインダポリマーはコーティング樹脂バインダポリマーであることができる。バインダポリマーは、第四級アンモニウム基を含まなくてよい。バインダポリマーは親水性であることができる。バインダポリマーは、少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個のヒドロキシル基を含むことができる。バインダポリマーは、10個以下、好ましくは8個以下のヒドロキシル基を含むことができる。バインダポリマーはポリオールであることができる。
【0031】
ヒドロキシル官能性バインダポリマーは水溶性であることができる。室温(20℃)で、バインダポリマーは、少なくとも1g/100g水、好ましくは少なくとも5g/100g水、特に少なくとも10g/100g水の溶解度を有することができる。バインダポリマーは、水中に乳化性及び/又は分散性、好ましくは分散性であることができる。水性バインダ系は、水A)中のB)のエマルジョン及び/又は分散体を含むことができる。
【0032】
ヒドロキシル官能性バインダポリマーは、DIN 53240-2(電位差測定法)に従って測定して、少なくとも10、好ましくは少なくとも50、より好ましくは少なくとも100mgKOH/gのヒドロキシル価を有することができる。バインダポリマーは、250mgKOH/g以下、好ましくは200mgKOH/g以下、より好ましくは150mgKOH/g以下、特に140mgKOH/g以下のヒドロキシル価を有することができる。
【0033】
ヒドロキシル官能性バインダポリマーは、ヒドロキシル価を参照して末端基分析によって決定される数平均分子量Mnが少なくとも900、好ましくは少なくとも1300、より好ましくは少なくとも1500、特に少なくとも2000g/molであることができる。バインダポリマーは、20,000g/mol以下、好ましくは10,000g/mol以下、より好ましくは6000g/mol以下、特に4000g/mol以下の数平均分子量Mnを有することができる。
【0034】
好ましくは、ヒドロキシル官能性バインダポリマーは、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリエステル及びそれらのコポリマーから選ばれる。バインダポリマーは、(メタ)アクリルポリマーポリオール、ウレタンポリマーポリオール、(メタ)アクリル-ウレタンポリマーポリオール又はポリエステルポリオールであることができる。好ましくは、バインダポリマーは(メタ)アクリルポリオール分散体又はポリウレタンポリオール分散体である。硬化コーティングにおいてより高い硬度が望まれる場合には、バインダポリマーは(メタ)アクリルポリマー成分を含むことができる。バインダポリマーは、モノマーとして、特にウレタンポリマー成分の一部として、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)を含むことができる。
【0035】
水中輸送型の適切なヒドロキシル官能性バインダポリマーの市販の例としては、Allenexからの水中のアクリルポリオールエマルジョン/分散体であるSetaqua(商標)シリーズ(例えば、6515、6516、6520など)が挙げられる。さらなる例としては、Alberdingk(商標)AC2594のアクリルポリオール分散体、及びAlberding BolleyからのAlberdingk Dur 95 VPのOH末端ポリウレタン分散体が挙げられる。他の例としては、Covestroからのアクリルポリオール分散体Bayhydrol(商標)A2542、A2646、A2546が挙げられる。
【0036】
水性バインダ系は、すべて水性バインダ系の全質量を基準として、少なくとも5wt%、好ましくは少なくとも10wt%、より好ましくは少なくとも15wt%、特に少なくとも20wt%のヒドロキシル官能性バインダポリマーを含むことができる。水性バインダ系は、すべて水性バインダ系の全質量を基準として、70wt%以下、好ましくは60wt%以下、より好ましくは50wt%以下、特に40wt%以下のヒドロキシル官能性バインダポリマーを含むことができる。
【0037】
好ましくは、水性バインダ系は、水性バインダ系の全質量を基準にして10〜50wt%のヒドロキシル官能性バインダポリマーを含む。
【0038】
水性バインダ系中のヒドロキシル官能性バインダポリマー/第四級アンモニウム化合物の質量比は、10:1以下、好ましくは8:1以下、より好ましくは5:1以下であることができる。水性バインダ系中のヒドロキシル官能性バインダポリマー/第四級アンモニウム化合物の質量比は、少なくとも1:1、好ましくは少なくとも2:1、より好ましくは少なくとも3:1、特に少なくとも4:1であることができる。
【0039】
水性バインダ系成分C)-第四級アンモニウム化合物
水性バインダ系は、C)水性バインダ系の全質量を基準として0.1〜20wt%の少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物を含み、ここで、該第四級アンモニウム化合物は、ペンダント基を有するコア第四級アンモニウム基を含み、該ペンダント基は:
i)直鎖又は枝分かれ鎖アルキル又はアルケニル基である8〜16個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、及び、
ii)2つの独立したヒドロキシル末端基、ここで、各ヒドロキシル末端基は1〜10個のアルキレンオキシド残基を含みそして第四級アンモニウム化合物中のアルキレンオキシド残基の総数は5〜12個である、
を含む。
【0040】
全部で、第四級アンモニウム基は4個のペンダント基を有する。
【0041】
ヒドロカルビル基は、少なくとも9個、好ましくは少なくとも10個、特に少なくとも11個の炭素原子を有することができる。ヒドロカルビル基は、15個以下、好ましくは14個以下、特に13個以下の炭素原子を有することができる。ヒドロカルビル基は直鎖であることができる。ヒドロカルビル基は飽和であることができる。ヒドロカルビル基はアルキル基であることができる。これらの選好のうちの1つ以上は式(I)中のR1にも当てはまることができる。
【0042】
各ヒドロキシル末端基は1〜10個のアルキレンオキシド残基を含む。各基中のアルキレンオキシド残基は、典型的にはポリアルキレンオキシド鎖として存在する。各ポリアルキレンオキシド鎖は、好ましくは式:-(Cr2rO)q-を有し、ここでqは鎖中のアルキレンオキシド残基の数であり、そしてrは2、3又は4、好ましくは2又は3、すなわちエチレンオキシ(-C24O-)又はプロピレンオキシ(-C36O-)基である。各ポリアルキレンオキシド鎖に沿って異なるアルキレンオキシド残基が存在してもよい。各ポリアルキレンオキシド鎖はホモポリマーエチレンオキシド鎖であることが望ましい。しかしながら、鎖は、プロピレンオキシド残基のホモポリマー鎖、又はエチレンオキシド及びプロピレンオキシド残基の両方を含むブロック又はランダムコポリマー鎖であることができる。第四級アンモニウム化合物中の全アルキレンオキシド残基の百分率としてのエチレンオキシド残基のモル量は、少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも70モル%、より好ましくは少なくとも80モル%であることができる。第四級アンモニウム化合物中の全アルキレンオキシド残基の百分率としてのエチレンオキシド残基のモル量は、100モル%以下、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下であることができる。第四級アンモニウム化合物中の全アルキレンオキシド残基の百分率としてのエチレンオキシド残基のモル量は100%であることができる。
【0043】
第四級アンモニウム化合物の各ポリアルキレンオキシド鎖中のアルキレンオキシド残基の平均数、すなわちパラメータqの値は、1〜10、好ましくは1〜7、より好ましくは2〜6の範囲である。あるいは、パラメータqの値は1〜3、好ましくは2〜3であることができる。
【0044】
第四級アンモニウム化合物中のアルキレンオキシド残基の総数、すなわち式(I)中のm+nの合計は、5〜12、好ましくは5〜11、より好ましくは5〜10、特に5〜9、特に5〜8の範囲である。あるいは、第四級アンモニウム化合物中のアルキレンオキシド残基の総数は、5〜7、好ましくは5〜6の範囲であることができる。
【0045】
コア第四級アンモニウム基は、C1〜C8ヒドロカルビル基、より好ましくはC1〜C6アルキル基、特にC1〜C4アルキル基、そして望ましくはメチル基を含むさらなるペンダント基iii)を有する。
【0046】
コア第四級アンモニウム基を形成するために使用される第四級化剤は、有機硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、酢酸塩又はハロゲン化物、好ましくは有機ハロゲン化物、特にアルキルハロゲン化物から選ぶことができる。第四級化剤は、塩化又は臭化メチル、好ましくは塩化メチルを含むことができる。
【0047】
好ましくは、第四級アンモニウム化合物は式(I)のものである。
【化1】
【0048】
上式中、R1は直鎖又は枝分かれ鎖アルキル又はアルケニル基である、8〜16個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、
m及びnは独立して1〜10、好ましくは1〜7、特に好ましくは2〜6の値を有し、
m+nの合計は5〜12であり、そして
各Xは、-Oを末端とするエチレンオキシド残基及び-Oを末端とするプロピレンオキシド残基から独立して選ばれ、それにより、式(I)の化合物は2つの末端ヒドロキシル基を含む。
【0049】
第四級アンモニウム化合物について本明細書に記載されている特徴及び選好は、式(I)に適用可能な特徴及び選好でもある。
【0050】
水性バインダ系は、少なくとも2種の第四級アンモニウム化合物、好ましくは2種又は3種、特に2種の第四級アンモニウム化合物を含むことができる。各第四級アンモニウム化合物は、独立して本明細書に記載の通りであることができる。
【0051】
水性バインダ系は、すべて水性バインダ系の全質量を基準として、少なくとも0.5wt%、好ましくは少なくとも1wt%、より好ましくは少なくとも2wt%、特に少なくとも4wt%の第四級アンモニウム化合物を含むことができる。水性バインダ系は、すべて水性バインダ系の全質量を基準として、18wt%以下、好ましくは15wt%以下、より好ましくは12wt%以下、特に10wt%以下の第四級アンモニウム化合物を含むことができる。
【0052】
任意成分D)-さらなる添加剤
水性バインダ系は1種以上のさらなる添加剤を含むことができる。これらの添加剤は、顔料、染料、触媒、レオロジー調整剤、湿潤剤、脱泡剤、安定剤、充填剤、乳化剤、分散剤及び他の界面活性剤から選ぶことができる。
【0053】
水性バインダ系は顔料を含むことができる。有機顔料の例は、アゾ顔料、フタロシアニン、キナクリドンである。無機顔料の例は、酸化鉄顔料、二酸化チタン及びカーボンブラックである。
【0054】
水性バインダ系は染料を含むことができる。染料の例はアゾ、アジン、アントラキノン、アクリジン、シアニン、オキサジン、ポリメチン、チアジン及びトリアリールメタン染料である。これらの染料は塩基性染料又はカチオン染料、金属錯体、反応性染料、酸染料、硫黄染料、カップリング染料又は直接染料として使用することができる。
【0055】
好ましくは、水性バインダ系は少なくとも1種の顔料又は染料を含む。別の実施形態において、水性バインダ系は顔料又は染料を含まなくてもよい。顔料又は染料を含まない水性バインダ系を、クリアーコーティング(又はクリアーコート)を形成するコーティング組成物中に使用することができる。このようなコーティング組成物はプライマー又はトップコートとして使用されうる。
【0056】
水性バインダ系は触媒を含むことができる。適切な触媒としては、通常のポリウレタン触媒、例えば二価及び四価スズの化合物、より具体的には二価スズのジカルボキシレートならびにジアルキルスズジカルボキシレート及びジアルコキシレートが挙げられる。例としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズアセテート、ジオクチルスズジアセテート、ジブチルスズマレエート、スズ(II)オクトエート、スズ(II)フェノラート、及び二価及び四価スズのアセチルアセトネートが挙げられる。さらに、第三級アミン又はアミジンも、単独で又は前述のスズ化合物と組み合わせて使用することができる。アミンの例としては、テトラメチルブタンジアミン、ビス-(ジメチルアミノエチル)-エーテル、1,4-ジアザビシクロオクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ-(5.4.0)-ウンデカン、2,2'-ジモルホリノジエチルエーテル、ジメチルピペラジン及びそれらの混合物が挙げられる。
【0057】
水性バインダ系は安定剤を含むことができる。適切な安定剤としては、水性バインダ系の製造、貯蔵及び塗布の間にその粘度を安定化させる材料が挙げられ、そして単官能カルボン酸クロリド及び非腐食性無機酸が挙げられる。そのような安定剤の例は、塩化ベンゾイル、リン酸又は亜リン酸である。さらに、適切な加水分解安定剤としては、例えばカルボジイミドタイプが挙げられる。酸化防止剤又は紫外線吸収剤である安定剤もまた使用されうる。そのような安定剤の例は、HALSヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェノール及び第二級芳香族アミンなどの水素供与性酸化防止剤、ベンゾフラノン、オキサニリド、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール及びUV吸収性顔料である。
【0058】
水性バインダ系は界面活性剤を含むことができる。適切な界面活性剤としては、ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレンポリオール変性ジメチルポリシロキサン及びアルキレングリコール変性ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン界面活性剤、及び、脂肪酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩及びスルホン酸塩などのアニオン性界面活性剤が挙げられる。好ましくは、水性バインダ系は、アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含む。
【0059】
水性バインダ系は充填剤を含むことができる。適切な充填剤としては、粘土、チョーク及びシリカなどの無機充填剤が挙げられる。
【0060】
水性バインダ系は、水性バインダ系の全質量を基準として、少なくとも0.5wt%、好ましくは少なくとも1wt%、特に少なくとも2wt%のこのようなさらなる添加剤を含むことができる。水性バインダ系は、水性バインダ系の全質量を基準として、10wt%以下、好ましくは8wt%以下、特に6wt%以下のそのようなさらなる添加剤を含むことができる。
【0061】
コーティング組成物
本発明はまた、本明細書に記載の水性バインダ系とポリイソシアネートとを含むコーティング組成物を提供する。好ましくは、コーティング組成物は水性コーティング組成物である。コーティング組成物はポリウレタンコーティング組成物、好ましくは二成分(2K)ポリウレタンコーティング系であることができる。水性バインダ系は二成分ポリウレタンコーティング系の第一成分であることができ、ポリイソシアネートは第二成分であることができる。
【0062】
ポリイソシアネートは親水性であることができる。好ましい親水性ポリイソシアネートは親水性の非イオン性基を含有するものである。親水性ポリイソシアネートは少なくとも1つのポリアルキレンエーテル基を含むことができる。ポリイソシアネートは水中に乳化性及び/又は分散性、好ましくは分散性であることができる。ポリイソシアネートは、第四級アンモニウム基を含まなくてよい。
【0063】
ポリイソシアネートは、脂環式を含む脂肪族、又は芳香族であることができる。ポリイソシアネートは、エチレンジイソシアネート、1,2-ジイソシアナトプロパン、1,3-ジイソシアナトプロパン、1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,4-ブチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,4-メチレンビス-(シクロヘキシルイソシアネート)及びイソホロンジイソシアネートから選ぶことができる。適切な芳香族イソシアネートは、トルエンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3-ジクロロ-4,4'-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、又は、それらの変性化合物、例えばそれらのウレトイミン変性化合物から選ぶことができる。脂肪族ポリイソシアネート、特にヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートは好ましい。
【0064】
ポリイソシアネートは脂肪族ポリイソシアネート及び親水性ポリイソシアネートから選ぶことができる。
【0065】
このような脂肪族又は芳香族ポリイソシアネートのビウレット、アロホネート及び/又はイソシアヌレートも使用に適している。本発明での使用に好ましいのはポリイソシアネート、特にヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネートのビウレット及びイソシアヌレートである。最も好ましいのは、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット及びイソシアヌレートである。
【0066】
ポリイソシアネートは、本明細書に記載されるとおりに測定して、少なくとも10wt%、好ましくは少なくとも15wt%のイソシアネート(NCO)値を有することができる。ポリイソシアネートは、本明細書中に記載されるとおりに測定して、30wt%以下、好ましくは25wt%以下のイソシアネート値を有することができる。
【0067】
適切なポリイソシアネートの市販の例としては、Bayhydur(商標)XP2565、N3900、XP2730、Easaqua(商標)XD 401、XL 600、M 501及びTolonate HDT―LVが挙げられる。
【0068】
コーティング組成物は、1種より多く、好ましくは2又は3種、特に2種のポリイソシアネートを含むことができる。ポリイソシアネートは、本明細書に記載のものから選ぶことができる。
【0069】
コーティング組成物は、すべてコーティング組成物の全質量を基準として、少なくとも1wt%、好ましくは少なくとも2wt%、特に少なくとも5wt%、望ましくは少なくとも10wt%のポリイソシアネートを含むことができる。コーティング組成物は、すべてコーティング組成物の全質量を基準として、50wt%以下、好ましくは40wt%以下、特に30wt%以下のポリイソシアネートを含むことができる。
【0070】
硬化前のコーティング組成物の固形分中の遊離イソシアネート基/遊離ヒドロキシル基のモル比(NCO/OH比)は、少なくとも0.7、好ましくは少なくとも0.8、より好ましくは少なくとも0.9、特に少なくとも1であることができる。NCO/OH比は、3以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは2以下、特に1.8以下であることができる。より高いNCO/OH比は、硬化コーティングに対して改善された硬度及び/又は耐薬品性を提供することができる。
【0071】
コーティング組成物は、DIN EN ISO 3251によれば、コーティング組成物の全質量を基準として少なくとも25wt%、好ましくは少なくとも30wt%、より好ましくは少なくとも35wt%、特に少なくとも40wt%の全固形分を有することができる。コーティング組成物は、コーティング組成物の全質量を基準として、80wt%以下、好ましくは70wt%以下、より好ましくは65wt%以下、特に60wt%以下の全固形分を有することができる。
【0072】
コーティング組成物は、すべてコーティング組成物の全質量を基準として、少なくとも10wt%の水、好ましくは少なくとも20wt%の水、特に少なくとも30wt%の水を含むことができる。コーティング組成物は、すべてコーティング組成物の全質量を基準として、90wt%以下の水、好ましくは80wt%以下の水、特に70wt%以下の水を含むことができる。
【0073】
本発明のコーティング組成物は、スプレイ塗布、ブラシ塗布、ローラ塗布、ペイントミット、及び、当該技術分野で公知の他の技術を含むいかなる数の技術によっても基材に塗布することができる。多数の基材はコーティング組成物の塗布に適している。基材は、金属、特に鋼及びアルミニウム、木材、れんが、コンクリート及びプラスチックから選ぶことができる。基材は、外壁、内壁又は床であることができる。
【0074】
コーティング組成物は、基材上のプライマーコーティングとして塗布することができる。オーバーコート又はトップコートなどのさらなるコーティング層をプライマーコーティングの上に塗布することができる。コーティング組成物はトップコートとして塗布することができる。コーティング組成物は、塗料又はラッカー、好ましくは塗料であることができる。コーティング組成物は、着色添加剤、例えば顔料及び/又は染料を含むことができる。
【0075】
コーティング組成物はクリアコートであることができる。コーティング組成物は、透明又は実質的に透明、好ましくは透明であることができる。コーティング組成物は着色剤添加剤を含まなくてよく、例えばそれは顔料及び/又は染料を含まなくてよい。
【0076】
コーティング組成物は、約0℃〜約50℃、好ましくは10℃〜40℃の範囲の温度で塗布及び硬化することができる。好ましくは、コーティング組成物は周囲温度(例えば、20℃〜30℃)で硬化する。コーティングは追加の熱源を使用せずに硬化させることができる。より低い硬化温度は、硬化コーティング中の抗微生物活性を損なう可能性を減らすことができる。
【0077】
コーティング
本発明はまた、B)及びC)がポリイソシアネートと反応してポリマーマトリックスを形成するようにして、本明細書に記載のコーティング組成物を硬化させることによって得られるコーティングを提供する。好ましくは、コーティングは、本明細書に記載のとおりのコーティング組成物を硬化させることによって得られる。ヒドロキシル官能性バインダポリマー上のヒドロキシル基はポリイソシアネートと反応することができる。第四級アンモニウム化合物上のヒドロキシル基はポリイソシアネートと反応することができる。
【0078】
好ましくは、コーティングは抗微生物性コーティングである。コーティングは抗微生物活性を有することができる。抗微生物活性は、細菌、ウイルス及び真菌に対する、好ましくは細菌に対するものであることができる。コーティングは、グラム陰性細菌(例えば、大腸菌(E.coli))及びグラム陽性細菌(例えば、S.Simulansなどのブドウ球菌)に対する抗微生物活性を有することができる。
【0079】
コーティングは、本明細書に記載のとおりのJIS Z 2801によれば、少なくともlog 2減少、好ましくは少なくともlog 2.1減少、より好ましくは少なくともlog 2.5減少、特に少なくともlog 3減少の大腸菌(E.coli)活性の抗微生物活性を有することができる。コーティングは、log 7減少以下、好ましくはlog 6.5減少以下の大腸菌(E.coli)活性の抗微生物活性を有することができる。
【0080】
コーティングは、本明細書に記載のとおりのJIS Z 2801によれば、少なくともlog 2減少、好ましくは少なくともlog 2.5減少、より好ましくは少なくともlog 3減少、特に少なくともlog 3.5減少、望ましくは少なくともlog 4減少のブドウ球菌活性(例えば、S.Simulans活性)の抗微生物活性を有することができる。コーティングは、log 7減少以下、好ましくはlog 6.5減少以下のブドウ球菌活性の抗微生物活性を有することができる。
【0081】
コーティング中の高レベルの抗微生物活性は、部分的には、水性バインダ系内で移動性である第四級アンモニウム化合物に起因しうる。理論に拘束されないが、極性溶媒としての水の存在は、コーティングがコーティングの表面に近い位置で硬化されるときに形成されるポリマーマトリックス中で第四級アンモニウム化合物を反応させ、それによって、第四級アンモニウム化合物上の正電荷がより大きな抗微生物効果を有することを可能にする。
【0082】
コーティングは、コーティングの全質量を基準として、少なくとも1wt%、好ましくは少なくとも2wt%、より好ましくは少なくとも4wt%、特に少なくとも6wt%の第四級アンモニウム化合物を含むことができる。コーティングは、コーティングの全質量を基準として、20wt%以下、好ましくは18wt%以下、より好ましくは16wt%以下、特に14wt%以下、望ましくは12wt%以下の第四級アンモニウム化合物を含むことができる。
【0083】
コーティングは、コーティングの全固形分を基準として、少なくとも1wt%、好ましくは少なくとも2wt%、より好ましくは少なくとも4wt%、特に少なくとも6wt%の第四級アンモニウム化合物を含むことができる。コーティングは、コーティングの全固形分を基準として、20wt%以下、好ましくは18wt%以下、より好ましくは16wt%以下、特に14wt%以下、望ましくは12wt%以下の第四級アンモニウム化合物を含むことができる。
【0084】
コーティングの硬度は、圧力、摩擦又は引っ掻きなどの機械的力に対するコーティングの耐性を示しうる。コーティングの硬度はケーニッヒ硬度によって測定することができる。コーティング(硬化後)は、DIN ISO 2815に従って測定したときに、少なくとも50秒、好ましくは少なくとも60秒、より好ましくは少なくとも70秒、特に少なくとも80秒のケーニッヒ硬度を有することができる。コーティングは、DIN ISO 2815に従って測定したときに、180秒以下、好ましくは170秒以下のケーニッヒ硬度を有することができる。
【0085】
コーティングは、工業用コーティング、建築用コーティング、金属コーティング、プラスチックコーティング、外壁コーティング、内壁コーティング又は床コーティングであることができる。コーティングはプライマーコーティング又はトップコーティングであることができる。コーティングはクリア(例えば透明)コーティングであることができる。
【0086】
本発明はまた、本明細書中に記載されるとおりのコーティング組成物を基材に塗布する工程及び該コーティング組成物を硬化させる工程を含む、基材上に抗微生物コーティングを提供する方法を提供する。
【0087】
本発明はまた、水性コーティング組成物の硬化時に形成されるポリマーマトリックス中に第四級アンモニウム化合物を反応させることによってコーティングに抗微生物活性を与えるための、本明細書に記載のとおりの第四級アンモニウム化合物の使用を提供する。
【0088】
開示された特徴のいずれか又はすべて、及び/又は、記載された方法もしくはプロセスのいずれか又はすべての工程は、本発明のいかなる態様においても使用されうる。
【実施例】
【0089】

本発明を以下の非限定的な実施例によって説明する。
【0090】
本明細書に記載のすべての試験手順及び物理的パラメータは、本明細書に別段の記載がない限り、又は参照試験方法及び手順に別段の記載がない限り、大気圧、室温(すなわち約20℃)及び相対湿度50%で決定された。
【0091】
特記しない限り、すべての部及び百分率は質量基準である。実施例中の「固形分」への言及はすべて、溶媒又は水ではない成分の部分を指す。
【0092】
実施例で使用した化合物は以下のように同定される。
・Setaqua(商標)6515-Allnexからのアクリルポリオールエマルジョン
・Setaqua 6516−Allnexからのアクリルポリオールエマルジョン
・Setaqua 6520−Allnexからのアクリルポリオール分散体
・Alberdingk(商標)AC2594−Alberdingk Boleyからのアクリルポリオール分散体
・TEGO(商標)Foamex 822−Evonikからの脱泡剤エマルジョン
・BYK(商標)349−BYKからの湿潤剤
・Tafigel(商標)PUR 40−Munzing Chemie GmbHからのレオロジー調整剤
・Bayhydur(商標)XP2655−Covestroからのヘキサメチレンジイソシアネートをベースとするポリイソシアネート。
【0093】
試験方法
本明細書において、以下の試験方法を使用した。
(i)ヒドロキシル価を参照して末端基分析により数平均分子量を求めた。
(ii)ヒドロキシル価は、サンプル1gのヒドロキシル含有量に相当する水酸化カリウムのmg数として定義され、アセチル化とそれに続く過剰の無水酢酸の加水分解によって測定した。続いて、形成された酢酸をエタノール性水酸化カリウム溶液で滴定した。
(iii)酸価は、サンプル1g中の遊離脂肪酸を中和するのに必要とされる水酸化カリウムのmg数として定義され、そして標準水酸化カリウム溶液を用いる直接滴定により測定した。
(iv)イソシアネート(NCO)値又は含有量は、サンプルの全質量に基づくサンプル中のイソシアネートの質量%含有量として定義され、そして過剰のジブチルアミンと反応させ、そして塩酸で逆滴定することにより決定した。
(v)既知の分子量を有するカチオン性第四級アンモニウム化合物中の%カチオン性活性剤は、ISO 2871に従ってアニオン性溶液での滴定を用いて決定される。
(vi)ケーニッヒ硬度は、DIN ISO 2815に従って試験した。
(vii)耐薬品性は、DIN12720に従って評価され、ここでコーティングサンプルは所定の時間スポットテストされ、5=損傷なし、から0=完全損傷までの等級が与えられた。
(viii)硬化コーティングの抗微生物特性は、日本規格JIS Z 2801(2010)「抗細菌製品-抗細菌活性及び有効性についての試験」に従って決定した。抗微生物活性をS.Simulans(ATCC 27848;グラム陽性細菌)及び大腸菌(E.coli)(ATCC 23716;グラム陰性細菌)に対して試験した。バードアプリケータを使用して120μmの湿潤コーティング厚さでレナータP121−10Nシートにコーティングを塗布し、周囲温度で少なくとも1週間硬化させた。微生物懸濁液を調製し、そして1×105〜1×106細胞/mlに調整した。コーティングサンプルをペトリ皿に入れ、これらの懸濁液0.1mlを接種した。接種材料をガラスシートで覆い、サンプルを35℃(細菌)で24時間インキュベートした。インキュベーション後に、10mlのブロスを各ペトリ皿に添加し、カバーガラスシートを取り除き、そしてペトリ皿を穏やかに旋回させることにより生存微生物をブロス中に混合した。洗い流し物を100倍及び1000倍に希釈し、洗い流し物及び希釈物を微生物用の適切な栄養寒天を用いてプレーティングした。プレートを35℃(細菌)で24時間インキュベートし、その後、コロニーを計数した。抗微生物活性は、試験コーティングの生存微生物の対数を参照基材(ガラスシート)のそれから差し引くことによって計算した。log 2減少は「抗微生物性」と規定され、99%の微生物の不活化に相当する。試験は複数回行った。
【0094】
例1
本発明による第四級アンモニウム化合物は以下のとおりに合成した。
【0095】
100質量部のココアミン-2EO(ココアミン-2EOは、後に2モルのエチレンオキシドでエトキシル化されたC12アルキルアミン−従って2EOを含むココナッツ脂肪酸から誘導されたアミンである)及び0.17質量部の触媒(苛性カリ、水中45wt%)を加圧反応器(Parr)に装入した。撹拌しながら窒素を流しながら、温度をゆっくりと150〜160℃に上げた。この温度に達すると、エチレンオキシドを反応器にフィードする。添加後、所望の酸価及びヒドロキシル価が得られるまで、反応をこの温度で2時間保持した。得られた生成物は全部で8個のエチレンオキシド残基(8EO)を含み、それぞれ平均4EOを有する2個のエチレンオキシド鎖の間で分割されていた。生成物は2mgKOH/g未満の酸価及び200〜215mgKOH/gのヒドロキシル価を有していた。この生成物はココアミン-8EOと呼ばれる。
【0096】
100質量部(1モル)のココアミン-8EOを、撹拌しながら窒素を流しながら加圧反応器(Parr)に入れた。N2で30分間、1psiの圧力で温度を75〜80℃まで上げた。8.6質量部(1モル)の塩化メチルを反応器に加えてココアミン-8EOを第四級化した。所望の酸価及びヒドロキシル価ならびに第四級化の量が得られるまで反応を続けた。得られた生成物は、<1mgKOH/gの酸価及び107mgKOH/gのヒドロキシル価を有し、そしてココ-8EO-クワットと称される。ココ−8EO−クワットの%カチオン活性は、ISO 2871に従って試験され、少なくとも90%であると決定された。
【0097】
例2
例1の第四級アンモニウム化合物(クワット)の幾つかのアルコキシル化変種を同等の手順に従って製造したが、生成物中のエチレンオキシド(EO)残基及びプロピレンオキシド(PO)残基の量を変えた。
【0098】
本発明に必要とされるクワット中の最小5個より少ないアルキレンオキシド残基を有する、本発明によらない2つの比較例(ココ-3EO-クワット及びココ-4EO-クワット)も製造した。
【0099】
次に全てのクワット変種を本発明による水性バインダ系における適合性について試験した。Setaqua 6520を使用して適合性について試験した水性バインダ系の組成を表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
Setaqua 6515、6516及びAlberdingk AC2594におけるさらなるヒドロキシル官能性バインダポリマーもまた、表2に示されるように適合性について試験した。適合性評価は、成分が一緒に混合された後1時間までに相分離が起こらないという目視検査であった。結果を表2に示す。表中、適合性は「+」、非適合性は「-」として示されている。
【0102】
【表2】
【0103】
表2から、比較例は水性バインダ系中のヒドロキシル官能性バインダポリマーと適合性ではないことが分かる。これは、比較例のエトキシル化度が低すぎる(3及び4モルEO)ためであると考えられる。
【0104】
例3
本発明の水性バインダ系を含むコーティング組成物から形成された硬化コーティングの特性を調べた。Setaqua 6520を含むコーティング組成物を表3に示す。水性パートA1及びA2は水性バインダ系の100wt%を構成する。ポリイソシアネートパートBは、水性バインダ系(A1+A2)100質量部に対して19質量部(wt%)で添加される。
【0105】
【表3】
【0106】
コーティング組成物は、最初に室温で均一な混合物が得られるまでパートA1に記載の成分を混合し、続いてパートA2を添加し、均一な水性バインダ系が得られるまで再び混合することによって調製した。A2を含まない比較例も作製した。
【0107】
コーティング組成物を基材に塗布する直前に、パートBに記載のイソシアネートを水性バインダ系(A1+A2)に添加し、そして混合した。コーティング組成物を基材としてのガラス上に塗布し、ここで、該ガラス上に120μmのコーティング組成物のフィルムを塗布器フレーム(BYK PA-2030)の助けを用いて塗布し、硬度及び耐薬品性評価を行った。微生物評価のために、コーティング組成物をレナータ(Lenata) P 121−10Nシート上に塗布した。
【0108】
硬化コーティング特性を評価し、そして結果を表4に示す。
【0109】
【表4】
【0110】
表4から、第四級アンモニウム化合物を含まない比較例は、コーティング中で最も高い硬度及び耐薬品性を有するが、抗微生物効果を有しなかったことが分かる。本発明による他のすべての実施例は、大腸菌(E.coli、グラム陰性細菌)及びスタフィロコッカス・シムランス(S.Simulans、グラム陽性細菌)活性の対数減少が少なくとも2であることによって示されるように、有意な抗微生物効果を有した。2の対数減少は微生物活性の99%の阻害に相当する。第四級アンモニウム化合物中に12モルのエトキシル化が存在すると、硬化コーティングの硬度が5モル(154秒)及び8モル(162秒)と比較したときに有意に減少すること(94秒)も分かる。
【0111】
例4
例3のコーティング組成物の変更は、表3のSetaqua 6520をAlberdingk AC 2594と交換することによってなされた。結果を表5に示す。
【0112】
【表5】
【0113】
表5から、第四級アンモニウム化合物を含まない比較例は最も高い硬度を有するが、有意な抗微生物効果を有しなかったことが分かる。本発明による他の全ての実施例は、大腸菌及びS.Simulans活性の対数減少が少なくとも2であることによって示されるように、抗微生物効果を有した。2の対数減少は、微生物活性の99%の阻害に相当する。第四級アンモニウム化合物中に12モルのエトキシル化が存在すると、コーティングの耐薬品性が低下することも分かる。
【0114】
本発明は、例としてのみ記載されている上記実施形態の詳細に限定されるべきではないことが理解されるべきである。多くの変形は可能である。