特許第6951531号(P6951531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6951531
(24)【登録日】2021年9月28日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】回転式の携行型時計の自動巻きデバイス
(51)【国際特許分類】
   G04D 7/02 20060101AFI20211011BHJP
【FI】
   G04D7/02
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-155157(P2020-155157)
(22)【出願日】2020年9月16日
(65)【公開番号】特開2021-96223(P2021-96223A)
(43)【公開日】2021年6月24日
【審査請求日】2020年9月16日
(31)【優先権主張番号】19215629.7
(32)【優先日】2019年12月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・ファーヴル
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−ジャック・ボルン
【審査官】 細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3172270(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第3096191(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第1288744(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0052427(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04D 7/00−7/12
G04B 3/00−9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転運動を行う、携行型時計の自動巻きデバイス(100)であって、
ベース(1)を備え、
前記ベース(1)は、可動な支持体(20)を前記ベース(1)に対して回転駆動させるためのモーター(2)を担持し、
前記支持体(20)は、巻き位置となっている機械的パワーソースを備える機械式携行型時計又は電子式携行型時計を受けるように構成しており、
当該自動巻きデバイスは、前記支持体(20)に固定される携行型時計(10)と直接接触するための受け面がある少なくとも1つの上側携行型時計ホルダー(7)を備え、
前記支持体(20)は、前記携行型時計(10)の音を聞くための少なくとも1つのマイクロホン(30)と、及び前記支持体(20)内に収容され各マイクロホン(30)からの信号を処理するための少なくとも1つの組み込み電子回路(40)とを備え、
当該自動巻きデバイス(100)は、前記組み込み電子回路(40)のそれぞれにパワー供給するために、少なくとも1つの第1のコイル(3)と少なくとも1つの第2のコイル(4)を備え、
前記第1のコイル(3)は、前記ベース(1)又は前記モーター(2)に固定され、かつ、前記ベース(1)によって担持され又はリレーされる静的パワーソース(63)によってパワー供給され、
前記第2のコイル(4)は、前記支持体(20)に組み込まれ、少なくとも1つの前記第1のコイル(3)と連係するように構成しており、前記組み込み電子回路(40)のそれぞれにパワーを伝達するように構成しており、
少なくとも1つの前記組み込み電子回路(40)は、前記ベース(1)に収容される少なくとも1つの静的電子回路(60)と情報を交換するように構成している
ことを特徴とする自動巻きデバイス(100)。
【請求項2】
少なくとも1つの前記第2のコイル(4)は、前記第1のコイル(3)と同軸である
ことを特徴とする請求項1に記載の自動巻きデバイス(100)。
【請求項3】
少なくとも1つの前記組み込み電子回路(40)は、前記ベース(1)に収容される少なくとも1つの静的電子回路(60)と非接触の形態で情報を交換するように構成している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動巻きデバイス(100)。
【請求項4】
前記組み込み電子回路(40)及び前記静的電子回路(60)は、周波数ホッピング拡散スペクトルのプロトコルによって非接触の形態で情報を交換するように構成している情報交換用周辺機器(49、69)を備える又は制御する
ことを特徴とする請求項3に記載の自動巻きデバイス(100)。
【請求項5】
前記支持体(20)は、少なくとも1つの第2の駆動手段を備え、この第2の駆動手段は、前記第2のコイル(4)によってパワー供給され、前記組み込み電子回路(40)によって制御され、前記支持体(20)の回転軸に対して非同軸の運動を前記少なくとも上側携行型時計ホルダー(7)にさせるように構成している
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動巻きデバイス(100)。
【請求項6】
前記非同軸の運動は、回転運動である
ことを特徴とする請求項5に記載の自動巻きデバイス(100)。
【請求項7】
前記非同軸の運動は、並進運動である
ことを特徴とする請求項5に記載の自動巻きデバイス(100)。
【請求項8】
前記非同軸の運動は、複数の自由度に従う複雑な運動である
ことを特徴とする請求項5に記載の自動巻きデバイス(100)。
【請求項9】
前記非同軸の運動は、前記組み込み電子回路(40)が備える乱数発生回路によって制御されるランダム運動である
ことを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に記載の自動巻きデバイス(100)。
【請求項10】
少なくとも1つの前記静的電子回路(60)は、温度補償機能付き水晶発振器(64)を備える又は温度補償機能付き水晶発振器(64)とインタフェース接続する
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の自動巻きデバイス(100)。
【請求項11】
前記静的電子回路(60)の少なくとも1つは、前記支持体(20)に固定された前記携行型時計(10)の表示の状態を識別するように構成している視察手段(61)とインタフェース接続する
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の自動巻きデバイス(100)。
【請求項12】
前記支持体(20)は、前記上側携行型時計ホルダー(7)と連係して前記携行型時計(10)を担持するように構成している少なくとも1つの下側携行型時計ホルダー(6)を備え、
前記支持体(20)は、前記下側携行型時計ホルダー(6)と前記上側携行型時計ホルダー(7)を互いに離すように動かす動力化手段又は弾性手段を備える
ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の自動巻きデバイス(100)。
【請求項13】
前記ベース(1)は、ケース(9)の裏部を構成している
ことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の自動巻きデバイス(100)。
【請求項14】
前記支持体(20)の回転駆動は、前記モーター(2)の軸に対して偏心している
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の自動巻きデバイス(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転運動を行う、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)の自動巻きデバイスに関する。これは、ベースを備え、前記ベースは、可動な支持体を前記ベースに対して回転駆動させるためのモーターを担持する。前記支持体は、巻き位置となっている機械的パワーソースを備える機械式携行型時計又は電子式携行型時計を受けるように構成している。当該自動巻きデバイスは、前記支持体に固定される携行型時計と直接接触するための受け面がある少なくとも1つの上側携行型時計ホルダーを備える。
【0002】
本発明は、携行型時計を保管し維持する分野に関し、特に、携行型時計の巻き、そして、携行型時計のレートの調整及び/又は携行型時計の状態の調整の分野に関する。本発明は、特に、自動巻き機構の分野、そして、自動巻き機構の最適化の分野に関し、これによって、レートが良好に調整されており、表示状態が正しく、十分なパワーリザーブがあるような、携行型時計をユーザーに提供する。
【背景技術】
【0003】
The Swatch Group Research & Development Ltdによる欧州特許文献EP33339984B1は、携行型時計の巻きを行うためのデバイスについて記載しており、これは、巻きの程度の判断及び最適な充電のための音響的な携行型時計の検査手段を備える。
【0004】
このような現状の巻きデバイスは、携行型時計の動作の特徴(レート及び振幅)を把握するためのマイクロホンを備える。このマイクロホンにケーブルによってパワー供給し、ケーブルによって固定ベースに接続する必要がある。このケーブルには以下のようないくつかの課題がある。
− 巻き操作中に絡まるおそれ
− ユーザーの取り扱いを妨げるおそれ
− 目に見えることによって審美性を損なうおそれ
【0005】
当然、ケーブルが絡まることを防ぐために携行型時計ホルダーを前後に動かして(例えば、±60°の振動性の回転運動をさせる)、巻きを行うことができるが、振動錘を用いて巻きを行う携行型時計の場合には、振動錘が係合するために必要な角度のおかげで平凡な効率しか得られない。取り扱い時の干渉及び審美性に対する影響を最小限に抑えるために巧妙に隠されたフレキシブルな導体リボンを用いる別の形態においては、摩擦及びブロックされるリスクのおかげで信頼性が十分ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、携行型時計の巻きの程度を音響的に評価する基本原理を開発することを提案するものである。
【0007】
本発明は、さらに、マイクロホンとベースの間のケーブルリンクの必要性をなくすことにも関連する。このようなケーブルリンクは、非常に制約が大きい。巻きデバイスの接触マイクロホンを固定ベースに接続するケーブルを用いないことによって、連続的な巻きを可能にし、エルゴノミクスと審美性を改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような状況で、本発明は、請求項1に記載の回転運動を行う、携行型時計の自動巻きデバイスに関する。
【0009】
添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点を明確に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るデバイスの分解斜視図である。ケースの下側部分がベースがモーターを担持するベースによって形成されており、ベースの開口の内側にモーターの出力シャフトが見えている。このモーターの近傍に固定コイルが配置されており、非接触の形態で第2のコイルにパワーを伝達するようにパワー供給され、第2のコイルは、動くことができ、その上側部分に携行型時計を受ける支持体を備えるアセンブリーを構成している。この支持体は、この図においては見えないマイクロホンを備える。
図2図1のデバイスについてのモーター軸を通り抜ける分解断面図であり、携行型時計用ムーブメントのすぐ下における支持体の遠位端に配置された上側携行型時計ホルダーの凹部内にマイクロホンが示されている。
図3】組み付けられた状態の同じデバイスのモーター軸を通り抜ける断面図である。
図4】パワー又は信号の発生、伝達、解析及び制御についてのモジュールどうしの相互作用を示しているブロック図である。
図5】この本発明に係るデバイスが装備されたケースを特定の角度から見た斜視図である。
図6】このケースを図5とは異なる角度から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
The Swatch Group Research & Development Ltdによる欧州特許文献EP33339984B1を本明細書に参照文献として組み入れる。これは、機械的なパワーソースを備える機械式携行型時計又は電子式携行型時計のための巻きデバイスについて記載している。このデバイスは、少なくとも1つのモーターにパワー供給するように構成している少なくとも1つのパワーソースを備える。
【0012】
このモーターは、手動で巻きを行う携行型時計の場合に巻きボタンを回し、又は自動巻き携行型時計の場合に少なくとも1つの振動錘を駆動し、又は少なくとも1つの自動巻き携行型時計の場合に揺動させるように構成している。このデバイスは、巻き位置になっている少なくとも1つの携行型時計の発振器に対する音響測定をするためのセンサー手段が組み込まれている第1の音響測定手段を備える制御手段を備える。この第1の音響測定手段は、特に、マイクロホンを備える。
【0013】
制御手段は、この第1の音響測定手段によって送信される信号を解析し、それらの信号を設定値と比較するように構成している。この設定値は、発振器の動作振幅が第1の最小値以下であるときにモーターを起動し、発振器の動作振幅が第2の最大値以上であるときにモーターを止めることによって、モーターのレートを調整するように構成していることができる。
【0014】
この第1の音響測定手段は、入力オリフィスの後ろのベース内の固定位置に配置される。また、このデバイスには、少なくとも1つの音響ダクトがあり、これは、チャンバ内に配置されて携行型時計を収容する受けオリフィスを、送りオリフィスと連通するように配置する。制御手段は、駆動手段を制御し、これは、この送りオリフィスの運動と空間における位置を決めて、プログラミングされた動作又はユーザーが開始した動作の間に、凹部内に固定された携行型時計のレートを測定し、入力オリフィスに対向するインデクシング位置にて、そして、入力オリフィスのすぐ近く又は入力オリフィスと接触するようにして、この送りオリフィスを配置し動かなくする。
【0015】
このデバイスは、好ましいことに、前記インデクシング位置に到達するように制御手段と連係する光学的手段を備える。
【0016】
特に、このデバイスは、測定中にこのデバイスの近傍の周辺ノイズを測定するための第2の音響測定手段を備える。また、制御手段は、この周辺ノイズを減じることによって、測定動作中に第1の音響測定手段によって行われた音響測定を補正するように構成している。
【0017】
このデバイスは、好ましいことに、ベースに対して動くことができる少なくとも1つの支持体を備え、この支持体は、巻き位置となっている機械的パワーソースを備える機械式携行型時計又は電子式携行型時計を受けるように構成している。このような支持体はそれぞれ、このような音響ダクトを備える。送りオリフィスは、支持体の周部に位置する。また、制御手段は、支持体の運動及び空間における位置を決める同じ駆動手段を制御し、これによって、プログラミングされた又はユーザーが開始した動作の間に、凹部内に固定された携行型時計のレートを測定し、入力オリフィスに対向するインデクシング位置に、そして、入力オリフィスのすぐ近く又は入力オリフィスと接触するようにして、送りオリフィスを配置し固定する。
【0018】
この特許文献は、さらに、機械的パワーソースを備えるジェネレーターを備える電子式携行型時計の巻きを行うこのようなデバイスの使用について記載している。このような状況で、制御手段は、パワーの充電の調整を制御するためにこのジェネレーターが発生させる場を測定するためのセンサー手段が組み込まれている測定手段を備える。
【0019】
この特許文献は、さらに、このデバイスを用いて携行型時計を用意する方法のいくつかのステップについて記載している。
− 携行型時計がこのデバイス上に置かれる。
− 携行型時計のレートが最も正確な角位置を決める。
− 当該携行型時計のレートが最も安定しているような、携行型時計に機械的パワーソースがある場合には巻きの程度、携行型時計に電気的パワーソースがある場合には充電の程度、を決める。
−携行型時計は、この携行型時計の最適なレートに対応する、この角位置と、巻きの度合い又は充電の度合いとの両方にて、保持される。
【0020】
本発明は、携行型時計の巻きの程度を音響的に評価する基本原理を開発することを提案するものである。
【0021】
本発明は、さらに、非常に制約が大きいマイクロホンとベースの間のケーブルリンクの必要性をなくす。巻きデバイスの接触マイクロホンを固定ベースに接続するケーブルをなくすことによって、連続的な巻きが可能になり、エルゴノミクスと審美性を改善する。
【0022】
本発明は、パワー伝達のために互いに連係するように構成している少なくとも2つのコイルを用いて電子回路にパワー供給することを行い、これらのコイルは、特に、同軸であるが、これに限定されない。
【0023】
FHSS(「周波数ホッピングスペクトラム拡散」)技術、特に、「Bluetooth」タイプ又は類似タイプのプロトコルを使用することは、マイクロホンユニットと固定ベースの間の無線通信に適している。
【0024】
欧州特許文献EP3339984B1と、The Swatch Group Research & Development Ltdによる欧州特許出願EP3410235、EP3410326、EP18173402及びEP18208249について、本明細書に参照文献として組み入れる。基本原理は、前記パワー供給及び前記無線通信を除き、これらの文献に開示された基本原理のものである。すなわち、振幅の測定、レートのサーボ制御アルゴリズム、携行型時計のレート及び/又は状態を補正するための振動動作、又は巻き動作である。
【0025】
当該携行型時計は、好ましくは、図示しているように、ベース、又はベースとしてはたらくケースと一体化されたマイクロホンユニットによって保持される。これは、ユーザーにとってエルゴノミックス的に優れている。特に、このマイクロホンユニットは、複数の部品によって作られている。図示している代替的実施形態の1つにおいて、マイクロホンを包囲する上側携行型時計ホルダー半部と、ベースに対して回転するように取り付けられた下側携行型時計ホルダー半部とを備える。なお、これに限定されない。
【0026】
特に、このマイクロホンは、最も良好な信号対ノイズ比を得るために、接触マイクロホン、特に、圧電マイクロホンタイプのもの、である。この圧電マイクロホンは、好ましいことに、携行型時計の直下に収容され、特に、図示している代替的実施形態において上側携行型時計ホルダー半部に収容される。
【0027】
1つの有利な代替的実施形態においては、この圧電マイクロホンを携行型時計の巻きボタンに接触するように配置する。なぜなら、携行型時計の巻き及びセッティング用ステムは、ムーブメントの中核部に直接的に入り込むからである。ここでは、エスケープのノイズの測定が非常に良好であり、このことによって、裏部及び裏部のジョイントに起因する減衰を防ぐことができる。このような減衰は、圧電マイクロホンが携行型時計ケースの裏部の直下に配置されている場合には避けられない。しかし、このような様々な異なる携行型時計のための巻きボタンに接触する圧電マイクロホンを製造することは、さらに難しい。したがって、巻きボタンの配置に関して、同じタイプ又は非常に類似したタイプの携行型時計を準備する方が有利である。
【0028】
別の代替的実施形態は、巻きデバイスが、空気用マイクロホン及び携行型時計に通じる音響ダクトを装備する。例えば、下側携行型時計ホルダー半部に空気用マイクロホンを装備する。しかし、周辺ノイズが与える影響によって、この単純な低コストな手法が、携行型時計に直接接触する圧電マイクロホンの手法よりも正確性が低くなる。
【0029】
このような状況で、本発明は、特に、図示しているように、回転運動を行う、携行型時計の自動巻きデバイス100に関する。このデバイス100は、支持体20の回転を駆動するためのモーター2を担持するベース1を備える。この支持体20は、ベース1に対して動くことができる。
【0030】
この支持体20は、巻き位置となっている機械的パワーソースを備える機械式携行型時計又は電子式携行型時計を受けるように構成しており、支持体20に固定された携行型時計10と直接接触するための受け面がある少なくとも1つの上側携行型時計ホルダー7を備える。
【0031】
本発明によれば、支持体20は、携行型時計10の音を聞くための少なくとも1つのマイクロホン30と、及び支持体20内に収容されて各マイクロホン30からの信号を処理する少なくとも1つの組み込み電子回路40とを備える。また、当該デバイス100は、各組み込み電子回路40にパワー供給するために、少なくとも1つの第1のコイル3と少なくとも1つの可動な第2のコイル4の両方を備える。前記第1のコイル3は、ベース1又はモーター2に固定され、ベース1によって担持される又はリレーされる静的パワーソース63によってパワー供給される。前記可動な第2のコイル4は、支持体20に組み込まれ、少なくとも1つの第1のコイル3、特に、第1のコイル3のそれぞれ、と連係するように構成しており、各組み込み電子回路40にパワーを伝達するように構成している。組み込み電子回路40のみにパワー供給するには、1Wのオーダーの比較的低いパワーで十分である。第1のコイル3は、例えば、5Vにて0.1Aのオーダーの電流でパワー供給される。
【0032】
特に、少なくとも1つの第2のコイル4は、第1のコイル3に対して同軸である。さらに詳しくは、第1のコイル3のすべては、互いに同軸である。さらに詳しくは、第2のコイル4のすべては、互いに同軸である。さらに詳しくは、第1のコイル3のすべてと第2のコイル4のすべては、互いに同軸である。
【0033】
同軸であることが、音響測定及び/又はパワー伝達に有用であることがわかる。したがって、これらの段階の間にのみ、第1のコイル3及び第2のコイル4を同軸にすることができると考えられる。
【0034】
図1〜3は、これらのコイルの構成を示している。なお、これに限定されない。第1のコイル3は、モーター2の前面にあり、特に、スポット面23にあり、第2のコイル4は、支持体20のフランジ5に形成された、凹部54、例えば、溝、内にある。このフランジ5には、モーター2のシャフト21と連係するボア52が形成されており、このシャフト21は、フランジ5内にて半径方向に取り付けられるねじ53によってクランプされる。この場合、このフランジ5は、カラム8を担持し、このカラム8は、支持体20の下の空間、そして、特に、下側携行型時計ホルダー6の下の空間、を自由にすることを可能にし、これによって、携行型時計10のブレスレットを支持体20に組み付けることが容易になる。
【0035】
少なくとも1つの組み込み電子回路40は、ベース1にて収容される少なくとも1つの静的電子回路60と情報を交換するように構成している。したがって、コイル3、4の間のパワー伝達が非接触の形態で行われる。特に、第2のコイル4はそれぞれ、各第1のコイル3に、そして、モーター2の出力シャフト21に対して同軸である。代替的実施形態の1つにおいて、支持体20は、モーター2の出力シャフト21のまわりの回転運動をするように動く。別の代替的実施形態において、支持体20は、モーター2の出力シャフト21に対して偏心している回転運動をするように動く。
【0036】
特に、少なくとも1つの組み込み電子回路40は、ベース1にて収容された少なくとも1つの静的電子回路60と非接触の形態で情報を交換するように構成している。
【0037】
特に、この組み込み電子回路40及びこの静的電子回路60はそれぞれ、動的な情報交換用周辺機器49と静的な情報交換用周辺機器69である、情報交換用周辺機器を備え又は制御する。これらは、特に「Bluetooth」などの周波数ホッピング拡散スペクトル方式にしたがって、無線周波数の電波を利用する短距離のデジタルデータ通信によって非接触的な形態で情報を交換するように構成している。具体的には、ベース1における、静的な情報交換用周辺機器69、特に、アンテナは、静的電子回路60の隣接するコンポーネントであることができ、又はこの静的電子回路60が備えるプリント回路のトラックなどであることができる。組み込み型情報交換用周辺機器49は、特に、上側携行型時計ホルダー7に収容される。
【0038】
別の代替的実施形態において、第1のコイル3及び第2のコイル4は、パワー伝達に加えて、情報伝達にも用いられる。当然、この代替的実施形態は、一方ではパワー伝達であり、他方では信号伝達である、別個の伝達を伴う代替的実施形態よりも実装が少し複雑であるが完全に実行可能である。
【0039】
特に、図示していない代替的実施形態の1つにおいて、支持体20は、組み込み電子回路40によって制御される、第2のコイル4によってパワー供給される、少なくとも1つの第2の駆動手段を備え、これは、少なくとも上側携行型時計ホルダー7に、支持体20の回転軸に対して非同軸の運動をさせるように構成している。代替的実施形態の1つにおいて、この非同軸の運動は、回転運動である。別の代替的実施形態において、この非同軸の運動は並進運動である。さらに、別の代替的実施形態において、この非同軸の運動は、複数の自由度に従う複雑な運動である。特に、この非同軸の運動は、組み込み電子回路40が備える乱数発生回路によって制御されるランダム運動である。
【0040】
特定のアプリケーションにおいて、この非同軸の運動の目的は、携行型時計をカメラのような視察手段61及び/又は照明手段の方に向けることであり、これによって、これらをユーザーの視野の外に配置することができる。なお、これに限定されない。
【0041】
さらに、別の代替的実施形態において、当該デバイス100は、少なくとも1つの第1のコイル3及び少なくとも1つの第2のコイル4を備え、これらは、モーター又は同様のコンポーネントのような、支持体20内に配置されるアクチュエーター、のパワー供給に特有のパワー伝達、例えば、数十ワットの伝達、のために特別に配置される。
【0042】
特に、少なくとも1つの静的電子回路60は、温度補償機能付きの水晶発振器64を備え、又はこれとインタフェース接続する。
【0043】
特に、少なくとも1つの静的電子回路60は、支持体20に固定された携行型時計10の表示の状態を識別するように構成している視察手段61とインタフェース接続する。
【0044】
特に、支持体20は、上側携行型時計ホルダー7と連係するように携行型時計10を担持するように構成している少なくとも1つの下側携行型時計ホルダー6を備え、下側携行型時計ホルダー6と上側携行型時計ホルダー7を互いに離すように動かすための動力化手段又は弾性手段を備える。
【0045】
特に、ベース1は、ヒンジ90とカバー91などを備えるケース9の裏部を構成している。
【0046】
図示していない別の実施形態において、当該デバイス100は、支持体20に自動センタリングデバイスを搭載することができ、これは、組み込み式の調整可能な錘を備えて、携行型時計10を装備した携行型時計ホルダーの支持体20の慣性中心を回転軸上に配置する。この機能によって、パワーの消費を少量に抑えることができ、組み込み電子回路40にパワー供給するような寸法構成のコイル3及び4は、前記のような機能に十分であり、それ以上である。なぜなら、この調整は、支持体20に携行型時計10を組み付けた直後に、適宜音響計測及び巻き/振動動作の前に、1回のみ行えばいいためである。
【0047】
図4は、複数の機能モジュールの例を示している。なお、これに限定されない。デバイス100の下側部分において、静的電子回路60は、中央制御手段を構成しており、デバイス100に設けられる以下の周辺機器の対応部分を管理する。
− 携行型時計の表示状態を解析するための視察デバイス61
− 通常、「Bluetooth」アンテナ又は同様のコンポーネントである、静的な情報交換用周辺機器69
− ユーザーインタフェース62
− 電池63
− 温度補償機能付き水晶発振器64
− モーター2及びその制御モジュール65
− 特にユニバーサルシリアルバス(USB)タイプのものである、交換ポート66、
【0048】
当該デバイスの上部では、組み込み電子回路40が、特に、以下を管理する。
− 通常、「Bluetooth」アンテナ又は同様のコンポーネントである、動的な情報交換用周辺機器49
− マイクロホン30、特に、圧電タイプのマイクロホン、及びその信号増幅器32
【0049】
特定のファクターを最適化することによって、以下のように当該システムを強化することができる。
− コイルが伝達可能なパワーを増やす。
− 保持構造が発生させるアンバランスを最小限に抑えて、巻きの間の消費を最小限に抑える。
− アセンブリー全体の慣性を最小限に抑えて、振動の間の消費を最小限に抑える。
− 携行型時計ホルダーの回転軸に対して(大きさにかかわらず)携行型時計をセンタリングして、上述の2点を改善するとともに、携行型時計の状態を検査し調整することを行う代替的実施形態において視察モジュールを用いて認識を容易にする。
【符号の説明】
【0050】
1 ベース
2 モーター
3 第1のコイル
4 第2のコイル
5 フランジ
6 下側携行型時計ホルダー
7 上側携行型時計ホルダー
8 カラム
9 ケース
10 携行型時計
20 支持体
30 マイクロホン
40 組み込み電子回路
49、69 情報交換用周辺機器
60 静的電子回路
61 視察手段
63 静的パワーソース
64 温度補償機能付き水晶発振器
90 ヒンジ
91 カバー
100 自動巻きデバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6