(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記枠状凸部には、前記主面に平行な方向に開口して、前記枠状凸部内側空間と前記枠状凸部の外部とを連通する連通孔が設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電池モジュール。
前記連通孔は複数設けられ、複数の前記連通孔は前記枠状凸部によって囲まれた領域の中心を通って前記主面に平行な方向に延びる直線に対して対称な位置に形成されている、請求項4または請求項5に記載の電池モジュール。
前記主面の上には前記枠状凸部の外側であって、前記連通孔の開口方向で、かつ、当該連通孔の開口から離間した位置に、前記電池厚み方向に突出するとともに前記連通孔の開口方向に対して角度を持った方向に延びる、少なくとも前記連通孔の開口幅寸法以上の長さ寸法を有した防護凸部が形成されてなる、請求項4〜6のいずれか1項に記載の電池モジュール。
前記枠状凸部は、前記主面の方向から見た形状がそれぞれ線状に形成された4つの凸部によって形成され、少なくとも前記凸部のそれぞれの両端部は曲線状に形成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電池モジュール。
前記枠状凸部は、液状樹脂材を一の前記板状電池の前記主面に対して枠状に塗布した後、前記液状樹脂材を硬化させることによって形成される、請求項10に記載の電池モジュールの製造方法。
前記枠状凸部は、液状樹脂材を一の前記板状電池の前記主面に対して枠状に断続的に塗布した後、前記液状樹脂材を硬化させることによって形成される、請求項10に記載の電池モジュールの製造方法。
前記充填工程において、前記枠状凸部内側空間に充填される流体は、前記加圧工程の後に硬化して、一の前記板状電池の前記主面と他の前記板状電池の前記主面とを接着する接着剤である、請求項10〜13のいずれか1項に記載の電池モジュールの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。図面において、同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面において、各部材の大きさや比率は、実施形態の理解を容易にするために誇張し、実際の大きさや比率とは異なる場合がある。
【0010】
図に付したX−Y−Z軸は、電池モジュール100の方位を示している。X軸は、単電池110の積層方向と交差し、かつ、単電池110の長手方向に沿った方向を示している。Y軸は、単電池110(板状電池に相当する)の積層方向と交差し、かつ、単電池110の短手方向に沿った方向を示している。Z軸は、単電池110の積層方向を示している。
【0011】
(電池モジュール100)
まず、電池モジュールについて説明する。
【0012】
図1、および
図2を参照して、電池モジュール100は、扁平な複数の単電池110を積層してなる電池積層体110Sがモジュールケース120内に収納されている。モジュールケース120は、4枚の板部材から構成され、電池積層体110Sを加圧する加圧ユニットとしても機能する。複数の単電池110は、モジュールケース120によって加圧された状態において、バスバーユニット130によって電気的に接続される。
【0013】
図3A、
図3Bおよび
図4を参照して、単電池110は、例えば、扁平なリチウムイオン二次電池である。単電池110は、発電要素111を外装体としての例えば一対のラミネートフィルム112によって封止した本体部110Hと、薄板状の電極端子113と、を有している。発電要素111は、正極板と負極板の電極板をセパレータを介して積層して形成されている。発電要素111は、電解液とともにラミネートフィルム112によって封止されている。本体部110Hの上面および下面は、単電池110(板状電池)の電池厚み方向の面である主面に相当する。電池積層体110Sは、単電池110の主面が互いに対向するように積層して形成されている(
図4を参照)。
【0014】
ラミネートフィルム112は、絶縁性を備えたシートによって金属箔の両側を覆って構成されている。ラミネートフィルム112は、四隅に連結孔112aが形成されている。ラミネートフィルム112は、長手方向Xに沿った両端部112dを、積層方向Zの上方に向かって折り曲げて形成している。
【0015】
電極端子113は、発電要素111に電気的に接続され、ラミネートフィルム112から外部に導出されている。電極端子113は、アノード側電極端子113Aと、カソード側電極端子113Kとを有している。アノード側電極端子113Aおよびカソード側電極端子113Kはともに、ラミネートフィルム112の短手方向Yに沿う一端部から、長手方向Xに沿う一方向(
図3Aにおいて左手前側)に向かって伸びている。
【0016】
電極端子113は、基端部113cから先端部113dにかけてL字形状に折り曲げ形成されている。電極端子113の先端部113dは、バスバー132と対面するように面状に形成されている。なお、電極端子113は図示したL字形状に限定されない、バスバー132の形状との関係において、適宜の形状を有する。アノード側電極端子113Aの形成材料は、例えば、アルミニウムであり、カソード側電極端子113Kの形成材料は、例えば、銅である。
【0017】
図3Bを参照して、単電池110は、電極端子113を備えた側が一対の第1スペーサー114によって支持され、電極端子113を備えていない側が一対の第2スペーサー115によって支持されている。単電池110は、各スペーサー114、115によって支持された状態において積層される。第1スペーサー114には、ラミネートフィルム112の連結孔112aに挿通される連結ピン114aが形成され、第2スペーサー115には、連結孔112aに挿通される連結ピン115aが形成されている。連結ピン114a、115aの先端を熱カシメすることによって、各スペーサー114、115は、ラミネートフィルム112に接続される。各スペーサー114、115は、絶縁性を備えた強化プラスチックスから形成される。
【0018】
第1スペーサー114は、その長手方向(短手方向Y)の両端に載置部114bを有し、第2スペーサー115は、その長手方向(短手方向Y)の両端に載置部115bを有している。単電池110を積層するとき、第1スペーサー114は、積層方向に隣り合う載置部114b同士が接触し、第2スペーサー115は、積層方向に隣り合う載置部115b同士が接触する。載置部114b、115bの上面には、位置決ピン114c、115cが形成されている。載置部114bの下面には、位置決ピン114cの位置に対応した位置決穴114dが形成されている(
図4を参照)。載置部115bの下面にも同様に、位置決ピン115cの位置に対応した位置決穴(図示省略)が形成されている。位置決ピン114c、115cと位置決穴114dとが嵌り合うことによって、載置部114b、115bの位置が定まる。載置部114b、115bには、通しボルトを挿通する貫通孔114e、115eが形成されている。第1スペーサー114は、
図4に示すように、電極端子113の先端部113dをバスバー132とは反対側から支持する支持部114fを有している。
【0019】
モジュールケース120は、電池積層体110Sの各々の単電池110の発電要素111を上下から加圧する上部加圧板121と下部加圧板122、および電池積層体110Sを加圧した状態の上部加圧板121および下部加圧板122を固定する一対の側板123を含んでいる。上部加圧板121は、電池モジュール100を図示しないパックケースに対して固定する締結ボルトを挿入するロケート孔121bが形成されている。下部加圧板122も同様に、締結ボルトを挿入するロケート孔122bが形成されている。一対の側板123は、上部加圧板121および下部加圧板122に対して溶接している。モジュールケース120の形成材料は、特に限定されないが、例えば、ステンレスなどから形成することができる。
【0020】
バスバーユニット130は、上下に並んだ単電池110の電極端子113を電気的に接続するバスバー132と、複数のバスバー132を一体的に保持するバスバーホルダ131と、バスバー132を保護する保護カバー135とを有する。バスバーユニット130はさらに、電気的に接続された複数の単電池110のアノード側の終端を外部の入出力端子に臨ませるアノード側ターミナル133と、カソード側の終端を外部の入出力端子に臨ませるカソード側ターミナル134とを有する。
【0021】
図4に示すように、積層した単電池の電極端子113にバスバー132をレーザー接合するときには、図示しないレーザー発振器は、バスバー132にレーザー光L1を照射する。バスバー132と電極端子113の先端部113dとは、シーム溶接またはスポット溶接によって接合される。
【0022】
(第1実施形態に係る、単電池110に加圧力を付与する構造)
次に、第1実施形態に係る、単電池110に加圧力を付与する構造について説明する。
【0023】
図5Aは、第1実施形態に係る、枠状凸部31が主面20上に形成された単電池110を示す平面図、
図5Bは、
図5Aの状態から、枠状凸部31内の主面20上に充填剤40を塗布した状態を示す平面図、
図5Cは、
図5Bの状態から、単電池110を積層することによって、塗布した充填剤40が緩やかに圧縮されて広がった状態を示す平面図、
図5Dは、
図5Cの状態から、電池積層体110Sを積層方向に加圧した後の状態を示す平面図である。
図6A,
図6B、
図6C、
図6Dは、それぞれ、
図5Aの6A−6A線に沿う断面図、
図5Bの6B−6B線に沿う断面図、
図5Cの6C−6C線に沿う断面図、
図5Dの6D−6D線に沿う断面図である。
【0024】
図5A−
図5D、
図6A−
図6Dを参照して、電池モジュール100は、概説すると、複数の単電池110を、それぞれの単電池110(板状電池)の電池厚み方向の面である主面20が互いに対向するように積層した電池積層体110Sを備えている。電池モジュール100は、複数の単電池110のうちの一の単電池110の主面20上に形成され、当該一の単電池110の主面20から電池厚み方向に突出するとともに電池厚み方向が開口した枠状に形成された枠状凸部31を有している。電池モジュール100は、枠状凸部31、一の単電池110の主面20、および一の単電池110に積層方向において対向する他の単電池110の主面20によって形成された枠状凸部内側空間32に充填された充填剤40を有している。そして、枠状凸部内側空間32に充填される充填剤40の大気圧下における体積は、電池積層体110Sが加圧された状態における枠状凸部内側空間32の体積よりも大きい。以下、詳述する。
【0025】
単電池110は、主面20の方向(
図5A−
図5Dにおいて紙面に直交する方向、
図6A−
図6Dにおいて図の上方から)から見た形状が四辺を備えた略方形形状を有している。単電池110は、電極板が積層して形成された発電要素111がラミネートフィルム112(外装体)の内部に電解液とともに収納されている。ラミネートフィルム112の内部の発電要素111には、電極端子113が接続されている。電極端子113は、四辺のうちのいずれかの辺(
図5A−
図5Dにおいて左辺)からラミネートフィルム112の外部に導出されている。
【0026】
枠状凸部31は、複数の単電池110のうちの一の単電池110の主面20上に形成されている。枠状凸部31は、当該一の単電池110の主面20から電池厚み方向に突出している(
図6A−
図6Dを参照)。枠状凸部31は、電池厚み方向が開口した枠状に形成されている。枠状凸部31は、主面20の方向から見た形状が四辺を備えた略方形形状を有している。
【0027】
枠状凸部31は、電池積層体110Sを積層方向両側から加圧するときに電池厚み方向に圧縮変形される程度の弾性を有している。枠状凸部31は、充填剤40が広がる範囲を限定するダムないし堰のような機能を有している。したがって、枠状凸部31の形成材料は、弾性を備え、充填剤40を通過させることなく遮断し得る材料から形成することができる。例えば、枠状凸部31は、スポンジやゴムあるいは樹脂などの弾性材料から形成することができる。弾性材料からなる枠状凸部31は、主面20に形成する前にすでに賦形されている。
【0028】
枠状凸部31は、例えば、液状樹脂材を一の単電池110の主面20に対して枠状に塗布した後、液状樹脂材をゲル状に硬化させることによって形成することができる。枠状凸部31を連続的に簡単に形成することができる。以下では枠状凸部31を液状樹脂材で形成する態様を説明する。
【0029】
液状樹脂材からなる枠状凸部31は、硬化してもゲル状であるため、弾性を備え、充填剤40の通過を遮断することができる。液状樹脂材は、UV照射によって硬化(ゲル状)する1液タイプの材料、例えばUV硬化型アクリル樹脂、あるいは速乾性の材料が用いられる。液状樹脂材は、接着剤の有無は問わない。本実施形態においては、液状樹脂材を塗布、硬化(ゲル状)させて枠状凸部31を形成する場合を例に挙げて説明する。
【0030】
枠状凸部31、一の単電池110の主面20、および一の単電池110に積層方向において対向する他の単電池110の主面20によって、枠状凸部内側空間32が形成される(
図6Cを参照)。枠状凸部内側空間32は、閉じられた空間である。枠状凸部内側空間32の体積は、電池積層体110Sが加圧されると小さくなる(
図6Dを参照)。
【0031】
枠状凸部内側空間32に充填される充填剤40は、大気圧下における体積が、電池積層体110Sが加圧された状態における枠状凸部内側空間32の体積よりも大きい。充填剤40を充填するときには、圧縮前の枠状凸部内側空間32(
図6Cの状態)の体積を基準とし、この圧縮前の枠状凸部内側空間32の体積以上の体積の流体である充填剤40を充填する。
【0032】
枠状凸部31は充填剤40が広がる範囲を限定する機能を発揮する。そして、上記のような体積関係に設定することによって、充填した充填剤40は、枠状凸部内側空間32において、単電池110への加圧力、すなわち充填剤40から単電池110へ付与する反力が生じることになる。
【0033】
枠状凸部内側空間32に充填される流体は、塑性流体(ビンガム流体)である。ビンガム流体は、一定の剪断応力に達しないと流動を始めない流体である。したがって、加圧によって初期面圧を容易に発生させることができる。充填剤40は、2液反応型アクリル嫌気性樹脂を使用することができる。充填剤40は、接着剤の有無は問わない。枠状凸部31が充填剤40の広がりを規制しており、枠状凸部内側空間32に充填される流体は、ニュートン流体でもよく、接着剤の有無は問わない。二液混合タイプ、一液タイプのいずれでもよい。
【0034】
図5Dに示すように、枠状凸部31の位置は、電池加圧投影範囲21よりも外側に位置されている。
【0035】
電池加圧投影範囲21には充填剤40が満たされることになるため、単電池110は発電要素111を形成する電極板間の距離が大きくならず、電池性能の低下を招くことがない。
【0036】
(電池モジュール100の製造方法)
単電池110を積層するときには、単電池110にスペーサー114、115を接続した電池アッセンブリーを積層する。
図5A−
図5Dにおいてはスペーサー114、115の図示を省略している。電池アッセンブリーの積層は、図示しないロボットによって行う。ロボットは、電池アッセンブリーを真空吸着して保持する吸着パッドを有している。
【0037】
まず、
図5A、および
図6Aに示すように、厚み方向面である主面20から厚み方向に突出するとともに厚み方向が開口した枠状に形成された枠状凸部31を備えた単電池110を複数準備する。枠状凸部31は、液状樹脂材を一の単電池110の主面20に対して枠状に塗布した後、液状樹脂材を硬化させることによって形成する。例えば、UV硬化型アクリル樹脂を枠状に塗布し、UV照射によって硬化(ゲル状)させ、枠状凸部31を形成する。
【0038】
図5Bに示すように、枠状凸部31内の主面20上に充填剤40を楕円形状に塗布する。このとき、枠状凸部31によって囲まれた領域つまり充填剤40が伸展される範囲の中心33と、塗布した充填剤40に外接する仮想的な矩形領域41(
図5Bに二点鎖線によって示される)の中心42とを一致させることが好ましい。電池積層体110Sを積層方向に加圧するときに充填剤40が偏って伸展せず、枠状凸部31を乗り越えることを防止することができる。
【0039】
図5C、および
図6Cに示すように、枠状凸部内側空間32に、枠状凸部内側空間32の体積よりも大きい体積の流体である充填剤40を充填する(充填工程)。充填工程において、枠状凸部内側空間32に充填される流体は、塑性流体(ビンガム流体)である。ビンガム流体は、一定の剪断応力に達しないと流動を始めない流体であるため、加圧によって初期面圧を容易に発生させることができる。充填剤40は、例えば、2液反応型アクリル嫌気性樹脂である。
【0040】
ロボットは上位側の電池アッセンブリーを吸着保持し、下位側の電池アッセンブリーの上に移送し、位置合わせをして積層する。符号51で示される丸印がロボットが吸着保持するエリアを示している(
図5Bを参照)。ロボットは上位側の電池アッセンブリーを下位側の電池アッセンブリーに向けて若干押し下げ、塗布されている充填剤40を若干伸展させる。加圧部位は、吸着エリアと同じ場所である。充填剤40は、枠状凸部31に接触する程度に伸展するように圧縮される。このような圧縮を、ならし圧縮と称する。ならし圧縮のときには、積層方向に隣り合うスペーサー114、115の間には隙間が存在する(
図6Cを参照)。
【0041】
枠状凸部内側空間32に充填剤40を充填した一の単電池110に他の単電池110を積層し、主面20が互いに対向するように積層した電池積層体110Sを形成する。
【0042】
電池積層体110Sは、上部加圧板121と下部加圧板122との間に挟まれ、積層方向両側から加圧される(加圧工程)。
【0043】
図5D、および
図6Dに示すように、電池積層体110Sを加圧することによって、枠状凸部31は電池厚み方向に圧縮変形し、積層方向に隣り合うスペーサー114、115同士は密着する。このときの加圧力は、スペーサー114、115の貫通孔114e、115eに組み込まれた金属製カラー同士が接触することによって受ける。枠状凸部31は圧縮され充填剤40が広がる範囲を限定する機能を発揮する。充填した充填剤40は、閉空間の枠状凸部内側空間32において、単電池110への加圧力、すなわち充填剤40から単電池110へ付与する反力を生じる。電池積層体110Sが完成した後、充填剤40は、硬化(ゲル状)する。充填剤40は、硬化するときにはすでに伸展が終了しており、その単電池積層方向の厚みは減少しない。このため、充填剤40から単電池110への反力が低下することはない。この結果、電池モジュール100を使用するときにおいて、単電池110への加圧力の付与が確実なものとなる。
【0044】
充填剤40は接着機能の有無は問わないが、充填剤40は、一の単電池110の主面20と他の単電池110の主面20とを接着する接着剤とすることができる。この場合の製造方法は、充填工程において、枠状凸部内側空間32に充填される流体は、加圧工程の後に硬化して、一の単電池110の主面20と他の単電池110の主面20とを接着する接着剤とする。
【0045】
接着層として必要な面積を確保することができる。
【0046】
枠状凸部31は接着剤の有無は問わないが、枠状凸部31の形成材料は、一の単電池110の主面20と他の単電池110の主面20とを接着する接着剤とすることができる。
【0047】
接着層として必要な面積を確保することができる。
【0048】
単電池110への加圧力の付与に加えて、積層方向に取り合う単電池110同士を接着剤を介して接合することができる。単電池110の位置を高精度に保って、単電池110を積層することができる。このため、電極端子113の位置とバスバー132の位置とを管理し、電極端子113とバスバー132との間に隙間が生じないようにできる。その結果、電極端子113とバスバー132とをレーザー溶接する場合、高品位の溶接品質を確保できる。
【0049】
(充填剤40の塗布形態の改変例)
図7A、
図7B、および
図7Cは、充填剤40の塗布形態の改変例を示す平面図である。
【0050】
充填剤40を塗布するときの平面形状は、
図5Bに示した楕円形状に限定されるものではない。
【0051】
図7Aに示すように、充填剤40を直線形状の3本に分けて塗布することができる。
図7Bに示すように、充填剤40を紙面右手側から見て「N」の字形状に塗布することができる。さらに、
図7Cに示すように、充填剤40を紙面右手側から見て「U」の字形状に塗布することができる。いずれの場合も、
図5Bに示したのと同様に、枠状凸部31によって囲まれた領域つまり充填剤40が伸展される範囲の中心33と、塗布した充填剤40に外接する仮想的な矩形領域41(二点鎖線によって示される)の中心42とを一致させることが好ましい。
【0052】
電池積層体110Sを積層方向に加圧するときに充填剤40が偏って伸展せず、枠状凸部31を乗り越えることを防止することができる。
【0053】
(第1実施形態に係る、枠状凸部31の形状の改変例)
図8A、および
図8Bは、枠状凸部31の形状の改変例を示す平面図である。
【0054】
枠状凸部31の形状は、
図5A−
図5Dに示した矩形形状に限定されるものではない。
【0055】
図8Aに示すように、枠状凸部31は、主面20の方向から見た形状がそれぞれ線状に形成された4つの凸部によって形成され、少なくとも凸部のそれぞれの両端部は曲線状に形成された形状とすることができる。つまり、長方形形状の4つの角部を円弧形状にした形状とすることができる。
【0056】
長方形形状を有する枠状凸部31の場合、長辺方向と短辺方向との寸法が大きく異なると、充填剤40が枠状凸部31に接触するタイミングが、長辺と短辺方向とで異なってくる。このため、枠状凸部31が充填剤40を封じ込めることができず、先に接触した部分の一部が、枠状凸部31を乗り越え溢れ出してしまうおそれがある。長方形形状の4つの角部を円弧形状にすることによって、枠状凸部31のうち短辺方向に沿う長辺側の部分に先に接触した充填剤40は伸展方向を変えて、枠状凸部31の内部全域に均一に広がる。充填剤40が枠状凸部31に局所的に接触することを避けることができ、枠状凸部内側空間32に充填剤40を均一に満たすことができる。
【0057】
また、
図8Bに示すように、枠状凸部31は、主面20の方向から見た形状が楕円形状を有する凸部によって形成することができる。
【0058】
楕円形状にすることによって、直線部分がないため、枠状凸部31に先に接触した側の充填剤40は伸展方向を変えて、枠状凸部31の内部全域に一層均一に広がる。充填剤40が枠状凸部31に局所的に接触することを避けることができ、枠状凸部内側空間32に充填剤40を一層均一に満たすことができる。
【0059】
(第2実施形態に係る、単電池110に加圧力を付与する構造)
次に、第2実施形態に係る、単電池110に加圧力を付与する構造について説明する。
【0060】
図9Aは、第2実施形態に係る、枠状凸部31が主面20上に形成された単電池110を、枠状凸部31内の主面20上に充填剤40を塗布した状態において示す平面図、
図9Bは、電池積層体110Sを積層方向に加圧した後の状態を示す平面図である。
図9Cは、
図9Bの9C−9C線に沿う断面図である。
【0061】
図9A−
図9Cを参照して、第2実施形態の電池モジュール100は、概説すると、枠状凸部31には、主面20に平行な方向に開口して、枠状凸部内側空間32と枠状凸部31の外部とを連通する連通孔60が設けられている。
【0062】
枠状凸部31は、液状樹脂材を一の単電池110の主面20に対して枠状に断続的に塗布した後、液状樹脂材を硬化させることによって形成される。枠状凸部31用の液状樹脂材を断続的に塗布することによって、連通孔60を簡単に形成することができる、
図9Aに示すように、連通孔60は複数、図示例では4個、設けられている。枠状凸部31の上辺に第1連通孔60aが形成され、下辺に第2連通孔60bが形成されている。枠状凸部31の左辺には、第3連通孔60cおよび第4連通孔60dが形成されている。第1連通孔60aおよび第2連通孔60bは開口部の幅が同じであり、互いに向かい合う位置に形成されている。第3連通孔60cおよび第4連通孔60dは開口部の幅が同じである。第3連通孔60cおよび第4連通孔60dの開口部の幅は、第1連通孔60aおよび第2連通孔60bの開口部の幅よりも小さくしている。連通孔60の開口部の幅によって、単電池110の主面20に付与する面圧を調整することができる。
【0063】
単電池110の本体部の厚みには多少のばらつきがあるため、対向する主面20間の間隔も多少のばらつきが生じている。対向する主面20間の間隔(枠状凸部内側空間32の高さとなる)が設計上の間隔よりも小さい場合には、枠状凸部内側空間32に充填された充填剤40が単電池110に付与する反力が大きくなりすぎる。
【0064】
図9B、および
図9Cに示すように、このような場合には、充填剤40が枠状凸部内側空間32を満たした後、余分な充填剤40は、枠状凸部内側空間32から、連通孔60を通って、枠状凸部31の外部に逃げる。
【0065】
第2実施形態において、第1実施形態と同様に、枠状凸部内側空間32において、単電池110への加圧力、すなわち充填剤40から単電池110へ付与する反力を生じる。電池積層体110Sが完成した後、充填剤40は、硬化(ゲル状)する。充填剤40は、硬化するときにはすでに伸展が終了しており、その単電池積層方向の厚みは減少しない。このため、充填剤40から単電池110へ反力が低下することはない。この結果、電池モジュール100を使用するときにおいて、単電池110への加圧力の付与が確実なものとなる。
【0066】
さらに、連通孔60を設けることによって、電池積層体110Sを加圧した初期の段階において、初期面圧を低く抑えることができ、単電池110に損傷を与えることがない。
【0067】
なお、充填剤40は、塑性流体(ビンガム流体)であり、一定の剪断応力に達しないと流動を始めない流体である。このため、余分な充填剤40が逃げたとしても、枠状凸部内側空間32に残存する充填剤40によって、充填剤40から単電池110へ付与する反力は十分に生じている。
【0068】
また、「初期面圧」としたのは、時間が経過した定常状態では枠状凸部内側空間32の圧力はパスカルの原理によってどの部位においても均一な圧力になるが、加圧初期の段階では過渡的に圧力差の大小が生じるからである。
【0069】
連通孔60の開口部の幅は、一義的に決まる寸法ではなく、要求される面圧、および面圧を調整できる範囲などを考慮して、実験結果に基づいて決定される。
【0070】
複数の連通孔60は、枠状凸部31によって囲まれた領域の中心33を通って主面20に平行な方向に延びる直線34a、34bに対して対称な位置に形成されている(
図9Aを参照)。第1連通孔60aおよび第2連通孔60bは、中心33を通って主面20に平行な方向に延びる直線34aに対して対称な位置に形成され、第3連通孔60cおよび第4連通孔60dも、中心33を通って主面20に平行な方向に延びる直線34aに対して対称な位置に形成されている。余分な充填剤40を対称的に配置した連通孔60から逃がすことによって、単電池110に均等な面圧を付与することができる。
【0071】
また、連通孔60の存在によって、充填剤40を伸展するときに、枠状凸部内側空間32に空気などのガスが混入する懸念も解消される。
【0072】
(第2実施形態に係る、枠状凸部31の形状の改変例)
図10A、
図10B、
図10Cは、枠状凸部31の形状の改変例を示す平面図である。
【0073】
枠状凸部31の形状は、
図9A、
図9Bに示した形状に限定されるものではない。
【0074】
図10Aを参照して、改変例の単電池110は、第1、第2実施形態と同様に、主面20の方向(
図10Aにおいて紙面に直交する方向)から見た形状が四辺を備えた略方形形状を有している。単電池110は、電極板が積層して形成された発電要素111がラミネートフィルム112(外装体)の内部に電解液とともに収納されている。ラミネートフィルム112の内部の発電要素111には、電極端子113が接続されている。電極端子113は、四辺のうちのいずれかの辺(
図10Aにおいて左辺)からラミネートフィルム112の外部に導出されている。連通孔60は、電極端子113が導出された辺(
図10Aにおいて左辺)以外の辺に向かって開口している。連通孔60は電極端子113の側を向いていない。したがって、電極端子113と連通孔60との間の距離が長くなる。この結果、連通孔60から逃げてきた充填剤40が電極端子113に付着することを防止できる。
【0075】
図10Bを参照して、他の改変例の単電池110は、
図8Aに示した枠状凸部31と同様に、長方形形状の4つの角部を円弧形状にした形状を有している。単電池110は、この形状の枠状凸部31に連通孔60が形成されている。余分な充填剤40は、円弧形状の角部の部分において伸展方向を変えて、連通孔60を通って枠状凸部31の外部に逃げやすい。この結果。電池積層体110Sを加圧した初期の段階において、初期面圧を低く抑えやすくなる。
【0076】
図10Cを参照して、さらに他の改変例の単電池110は、1個の連通孔60のみを有している。連通孔60の個数は複数に限られない。連通孔60の個数は、余分な充填剤40を逃がして単電池110に均等な面圧を付与する観点から決定することができ、1個のみでもよいし、逆に5個以上でもよい。
【0077】
(第3実施形態に係る、単電池110に加圧力を付与する構造)
次に、第3実施形態に係る、単電池110に加圧力を付与する構造について説明する。
【0078】
図11Aは、第3実施形態に係る、枠状凸部31が主面20上に形成された単電池110を示す平面図、
図11Bは、
図11Aの状態から、枠状凸部31内の主面20上に充填剤40を塗布した状態を示す平面図、
図11Cは、
図11Bの状態から、単電池110を積層することによって、塗布した充填剤40が緩やかに圧縮されて広がった状態を示す平面図、
図11Dは、
図11Cの状態から、電池積層体110Sを積層方向に加圧した後の状態を示す平面図である。
図12A,
図12B、
図12C、
図12Dは、それぞれ、
図11Aの12A−12A線に沿う断面図、
図11Bの12B−12B線に沿う断面図、
図11Cの12C−12C線に沿う断面図、
図11Dの12D−12D線に沿う断面図である。
【0079】
第3実施形態は、電池積層体110Sを加圧するときに余分な充填剤40を逃がす連通孔60を有している点において第2実施形態と同じである。また、連通孔60が電極端子113の側を向いていない点において、第2実施形態の改変例(
図10A)と同様である。第3実施形態は、主面20の上に枠状凸部31の外側に防護凸部71をさらに形成した点において、上述した実施形態や改変例と相違している。
【0080】
図11A−
図11D、
図12A−
図12Dを参照して、第3実施形態の電池モジュール100は、概説すると、主面20の上には枠状凸部31の外側であって、連通孔60の開口方向で、かつ、当該連通孔60の開口から離間した位置に、電池厚み方向に突出するとともに連通孔60の開口方向に対して角度を持った方向に延びる、少なくとも連通孔60の開口幅寸法以上の長さ寸法を有した防護凸部71が形成されている。ここに、「連通孔60の開口方向に対して角度を持った方向」とは、連通孔60の開口方向と平行ではなく、連通孔60の開口方向と交差するように傾斜していることを意味する。
【0081】
枠状凸部31は、矩形形状を有している。連通孔60は、電極端子113が導出された辺(
図11A−
図11Dにおいて左辺)以外の辺に向かって開口している。図中上方側の連通孔60の開口方向は上側、図中下方側の連通孔60の開口方向は下側である。
【0082】
防護凸部71は、枠状凸部31の外側の全周を取り囲むように、閉じた矩形形状を有している。防護凸部71は、連通孔60の開口方向で、かつ、当該連通孔60の開口から離間した位置に形成されている。防護凸部71は、電池厚み方向に突出している(
図12A−
図12Dを参照)。防護凸部71は、電池厚み方向が開口した枠状に形成されている。防護凸部71は、主面20の方向から見た形は、主面20の方向から見た形状が四辺を備えた略方形形状を有している。
【0083】
防護凸部71は、電池積層体110Sを積層方向両側から加圧するときに電池厚み方向に圧縮変形される程度の弾性を有している。防護凸部71は、連通孔60を通って外部に逃げた余分な充填剤40が主面20以外の面に漏れ出ることを制限するダムないし堰のような機能を有している。したがって、防護凸部71の形成材料は、弾性を備え、充填剤40を通過させることなく遮断し得る材料から形成することができる。例えば、防護凸部71は、枠状凸部31と同様に、スポンジやゴムあるいは樹脂などの弾性材料から形成することができる。また、防護凸部71は、例えば、液状樹脂材を一の単電池110の主面20に対して枠状に塗布した後、液状樹脂材をゲル状に硬化させることによって形成することができる。液状樹脂材は、UV照射によって硬化(ゲル状)する1液タイプの材料、例えばUV硬化型アクリル樹脂、あるいは速乾性の材料が用いられる。液状樹脂材は、接着剤の有無は問わない。本実施形態においては、液状樹脂材を塗布、硬化(ゲル状)させて防護凸部71を形成する場合を例に挙げて説明する。
【0084】
防護凸部71、一の単電池110の主面20、一の単電池110に積層方向において対向する他の単電池110の主面20、および枠状凸部31によって、余分な充填剤40を収容する防護空間72が形成される(
図12Cを参照)。防護空間72は、閉じられた空間である。
【0085】
(電池モジュール100の製造方法)
まず、
図11A、および
図12Aに示すように、厚み方向面である主面20から厚み方向に突出するとともに厚み方向が開口した枠状に形成された枠状凸部31および防護凸部71を備えた単電池110を複数準備する。枠状凸部31および防護凸部71は、液状樹脂材を一の単電池110の主面20に対して枠状に塗布した後、液状樹脂材を硬化させることによって形成する。例えば、UV硬化型アクリル樹脂を枠状に塗布し、UV照射によって硬化(ゲル状)させ、枠状凸部31および防護凸部71を形成する。
【0086】
図11Bに示すように、枠状凸部31内の主面20上に充填剤40を楕円形状に塗布する。
【0087】
図11C、および
図12Cに示すように、枠状凸部内側空間32に充填剤40を充填する(充填工程)。充填剤40は、例えば、2液反応型アクリル嫌気性樹脂である。
【0088】
ロボットは上位側の電池アッセンブリーを吸着保持し、下位側の電池アッセンブリーの上に移送し、位置合わせをして積層する。ロボットは上位側の電池アッセンブリーを下位側の電池アッセンブリーに向けて若干押し下げ、塗布されている充填剤40を若干伸展させる。充填剤40は、枠状凸部31に接触する程度に伸展するように圧縮される。
【0089】
枠状凸部内側空間32に充填剤40を充填した一の単電池110に他の単電池110を積層し、主面20が互いに対向するように積層した電池積層体110Sを形成する。
【0090】
電池積層体110Sは、上部加圧板121と下部加圧板122との間に挟まれ、積層方向両側から加圧される(加圧工程)。
【0091】
図11D、および
図12Dに示すように、電池積層体110Sを加圧することによって、枠状凸部31は電池厚み方向に圧縮変形し、積層方向に隣り合うスペーサー114、115同士は密着する。枠状凸部31は圧縮され充填剤40が広がる範囲を限定する機能を発揮する。充填した充填剤40は、閉空間の枠状凸部内側空間32において、単電池110への加圧力、すなわち充填剤40から単電池110へ付与する反力を生じる。余分な充填剤40は、連通孔60を通って防護空間72内に収容される。電池積層体110Sが完成した後、充填剤40は、硬化(ゲル状)する。充填剤40は、硬化するときにはすでに伸展が終了しており、その単電池積層方向の厚みは減少しない。このため、充填剤40から単電池110へ反力が低下することはない。この結果、電池モジュール100を使用するときにおいて、単電池110への加圧力の付与が確実なものとなる。
【0092】
防護空間72は閉じられた空間であるため、連通孔60から枠状凸部内側空間32外部に逃げてきた充填剤40が電極端子113や、周辺生産設備に付着する汚染を防止することができる。なお、上記実施形態では防護凸部71を連続して形成する事によって、防護空間72を閉じられた空間とする例をあげたがこれに限定されない。防護凸部71は少なくとも連通孔60の開口幅寸法以上の長さ寸法を有して、連通孔60の開口方向(単電池110の主面に沿った方向で、連通孔60の外方)に設けられていれば良い。防護凸部71の長さは連通孔60から枠状凸部内側空間32外部に流出する充填剤40の量に応じて適宜、変更可能である。
【0093】
(第3実施形態に係る、防護凸部71の形状の改変例)
図13A、
図13Bは、防護凸部71の形状の改変例を示す平面図である。
【0094】
図13Aを参照して、改変例の単電池110は、枠状凸部31の角部のそれぞれに、対角線外方に向かって開口する連通孔60を形成している。この防護凸部71も、主面20の上に枠状凸部31の外側であって、連通孔60の開口方向で、かつ、当該連通孔60の開口から離間した位置に形成されている。防護凸部71は、電池厚み方向に突出するとともに連通孔60の開口方向に対して角度を持った方向に延びる、少なくとも連通孔60の開口幅寸法以上の長さ寸法を有している。この改変例の防護凸部71は、枠状凸部31に連続して形成され、それぞれの連通孔60を独立して囲むように形成されている点で、第3の実施形態と相違している。
【0095】
図13Bを参照して、改変例の単電池110は、電極端子113と枠状凸部31の図中左辺との間に配置された土手形状を有ししている。防護空間72が閉じられていない点において、第3の実施形態や上記の改変例と相違している。この場合の防護空間72は閉空間ではないものの、連通孔60から逃げてきた充填剤40が電極端子113に付着することを防止できる。
【0096】
以上説明したとおり、各実施形態や変形例によれば、以下の作用効果を奏する。
【0097】
電池モジュール100は、枠状凸部31、一の単電池110の主面20、および一の単電池110に積層方向において対向する他の単電池110の主面20によって形成された枠状凸部内側空間32に充填された充填剤40を有している。そして、枠状凸部内側空間32に充填される充填剤40の大気圧下における体積は、電池積層体110Sが加圧された状態における枠状凸部内側空間32の体積よりも大きくしている。
【0098】
このように構成することによって、枠状凸部31は圧縮され充填剤40が広がる範囲を限定する機能を発揮する。充填した充填剤40は、閉空間の枠状凸部内側空間32において、単電池110への加圧力、すなわち充填剤40から単電池110へ付与する反力を生じる。充填剤40は、硬化するときにはすでに伸展が終了しており、その単電池積層方向の厚みは減少しない。このため、充填剤40から単電池110への反力が低下することはない。この結果、電池モジュール100を使用するときにおいて、単電池110への加圧力の付与が確実なものとなる。
【0099】
充填剤40は、一の単電池110の主面20と他の単電池110の主面20とを接着する接着剤である。
【0100】
このように構成することによって、接着剤である充填剤40によって、接着層として必要な面積を確保することができる。
【0101】
枠状凸部31の形成材料は、一の単電池110の主面20と他の単電池110の主面20とを接着する接着剤である。
【0102】
このように構成することによって、接着剤である枠状凸部31によって、接着層として必要な面積を確保することができる。
【0103】
枠状凸部31には、主面20に平行な方向に開口して、枠状凸部内側空間32と枠状凸部31の外部とを連通する連通孔60が設けられている。
【0104】
このように、連通孔60を設けることによって、電池積層体110Sを加圧した初期の段階において、初期面圧を低く抑えることができる。
【0105】
連通孔60は、電極端子113が導出された辺(
図10Aにおいて左辺)以外の辺に向かって開口している。
【0106】
このように構成することによって、連通孔60は電極端子113の側を向いていない。電極端子113と連通孔60との間の距離が長くなる結果、連通孔60から逃げてきた充填剤40が電極端子113に付着することを防止できる。
【0107】
複数の連通孔60は、枠状凸部31によって囲まれた領域の中心33を通って主面20に平行な方向に延びる直線34a、34bに対して対称な位置に形成されている(
図9Aを参照)。
【0108】
このように構成することによって、余分な充填剤40を対称的に配置した連通孔60から逃がすことができ、単電池110に均等な面圧を付与することができる。
【0109】
電池モジュール100は、主面20の上には枠状凸部31の外側であって、連通孔60の開口方向で、かつ、当該連通孔60の開口から離間した位置に、電池厚み方向に突出するとともに連通孔60の開口方向に対して角度を持った方向に延びる、少なくとも連通孔60の開口幅寸法以上の長さ寸法を有した防護凸部71が形成されている。
【0110】
このように構成することによって、防護凸部71によって、連通孔60から逃げてきた充填剤40が電極端子113や、周辺生産設備に付着する汚染を防止することができる。
【0111】
枠状凸部31は、主面20の方向から見た形状がそれぞれ線状に形成された4つの凸部によって形成され、少なくとも凸部のそれぞれの両端部は曲線状に形成されている。
【0112】
このように構成することによって、充填剤40は伸展方向を変えて、枠状凸部31の内部全域に均一に広がりやすくなる。充填剤40が枠状凸部31に局所的に接触することを避けることができ、枠状凸部内側空間32に充填剤40を均一に満たすことができる。
【0113】
枠状凸部31は、主面20の方向から見た形状が楕円形状を有する凸部によって形成することができる。
【0114】
このように構成することによって、枠状凸部31は直線部分がないため、充填剤40は伸展方向を変えて、枠状凸部31の内部全域に一層均一に広がる。充填剤40が枠状凸部31に局所的に接触することを避けることができ、枠状凸部内側空間32に充填剤40を一層均一に満たすことができる。
【0115】
枠状凸部31の位置は、電池加圧投影範囲21よりも外側に位置されている。
【0116】
このように構成することによって、電池加圧投影範囲21には充填剤40が満たされることになるため、単電池110は電極板間の距離が大きくならず、電池性能の低下を招くことがない。
【0117】
電池モジュールの製造方法は、枠状凸部内側空間32に、枠状凸部内側空間32の体積よりも大きい体積の流体である充填剤40を充填する(充填工程)。電池積層体110Sを形成し、この電池積層体110Sを積層方向両側から加圧する(加圧工程)。
【0118】
このように構成することによって、枠状凸部31は圧縮され充填剤40が広がる範囲を限定あい、充填した充填剤40は、閉空間の枠状凸部内側空間32において、単電池110への加圧力、すなわち充填剤40から単電池110へ付与する反力を生じる。充填剤40は、硬化するときにはすでに伸展が終了しており、その単電池積層方向の厚みは減少しない。このため、充填剤40から単電池110への反力が低下することはない。この結果、単電池110への加圧力の付与が確実な電池モジュール100を製造できる。
【0119】
枠状凸部31は、液状樹脂材を一の単電池110の主面20に対して枠状に塗布した後、液状樹脂材を硬化させることによって形成する。
【0120】
このように構成することによって、枠状凸部31を連続的に簡単に形成することができる。
【0121】
枠状凸部31は、液状樹脂材を一の単電池110の主面20に対して枠状に断続的に塗布した後、液状樹脂材を硬化させることによって形成される。
【0122】
このように構成することによって、枠状凸部31用の液状樹脂材を断続的に塗布することによって、連通孔60を簡単に形成することができる、
充填工程において、枠状凸部内側空間32に充填される流体は、塑性流体(ビンガム流体)である。
【0123】
ビンガム流体は、一定の剪断応力に達しないと流動を始めない流体である。したがって、加圧によって初期面圧を容易に発生させることができる。
【0124】
充填工程において、枠状凸部内側空間32に充填される流体は、加圧工程の後に硬化して、一の単電池110の主面20と他の単電池110の主面20とを接着する接着剤である。
【0125】
このように構成することによって、接着剤である枠状凸部内側空間32に充填される流体によって、接着層として必要な面積を確保することができる。
【0126】
(その他の改変例)
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、適宜改変することができる。
【0127】
例えば、
図14Aに示すように、外装材の向かい合う2辺から電極端子113を導出した単電池110についても適用することができる。また、
図14Bに示すように、長辺側の端部から電極端子113を導出した電極端子113が単電池110についても適用することができる。
【0128】
主面に枠状凸部31を形成する板状電池を例に挙げて説明したが、主面に枠状凸部が予め形成されている板状電池にも本発明は適用可能である。たとえば、外装体が金属缶の角型電池であって、缶自体に枠状のリブが設けられている板状電池にも本発明を適用できる。したがって、本発明に係る電池モジュールの製造方法にあっては、枠状凸部31を形成する工程は必須の工程とはならない。
【0129】
更にまた、単電池110の主面20に液状樹脂材を枠状に塗布する事によって枠状凸部31や防護凸部71を形成する態様を例に挙げて説明したが、枠状凸部31や防護凸部71を形成する方法はこれに限定されない。例えば、予め枠状に形成された枠状凸部31や防護凸部71を単電池110の主面20上に設置あるいは貼り付けて形成しても良い。