特許第6951592号(P6951592)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6951592
(24)【登録日】2021年9月28日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】皮膚感染の予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/137 20060101AFI20211011BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20211011BHJP
   A61K 31/4418 20060101ALI20211011BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20211011BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20211011BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20211011BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20211011BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20211011BHJP
   A61K 36/61 20060101ALI20211011BHJP
   A61K 36/899 20060101ALI20211011BHJP
   A61K 31/133 20060101ALI20211011BHJP
   A61K 31/164 20060101ALI20211011BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20211011BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20211011BHJP
   A61K 8/9794 20170101ALI20211011BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20211011BHJP
   A61Q 17/00 20060101ALI20211011BHJP
   A61P 31/02 20060101ALI20211011BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20211011BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20211011BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20211011BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20211011BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20211011BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20211011BHJP
   A61K 8/43 20060101ALN20211011BHJP
   A61K 9/70 20060101ALN20211011BHJP
【FI】
   A61K31/137
   A61K31/155
   A61K31/4418
   A61P31/04
   A61P31/10
   A61P43/00 121
   A61K47/02
   A61K47/12
   A61K36/61
   A61K36/899
   A61K31/133
   A61K31/164
   A61K8/41
   A61K8/49
   A61K8/9794
   A61K8/9789
   A61Q17/00
   A61P31/02
   A61P17/00 101
   A61K9/08
   A61K9/10
   A61K9/06
   A61K9/12
   A61Q5/02
   !A61K8/43
   !A61K9/70 401
【請求項の数】19
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2020-561015(P2020-561015)
(86)(22)【出願日】2018年11月9日
(65)【公表番号】特表2021-512145(P2021-512145A)
(43)【公表日】2021年5月13日
(86)【国際出願番号】KR2018013614
(87)【国際公開番号】WO2019212110
(87)【国際公開日】20191107
【審査請求日】2020年10月27日
(31)【優先権主張番号】10-2018-0051150
(32)【優先日】2018年5月3日
(33)【優先権主張国】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520420610
【氏名又は名称】ケアサイド カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヨウ,ヤン クク
【審査官】 六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−232853(JP,A)
【文献】 特開平10−265408(JP,A)
【文献】 特開2007−091661(JP,A)
【文献】 特表2015−500871(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/073715(WO,A1)
【文献】 特表2016−515642(JP,A)
【文献】 特開2001−048721(JP,A)
【文献】 Medical Mycology,2006年,44,p.357-362
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 36/00−36/9068
A61P 17/00
A61P 31/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩酸テルビナフィン;
クロルヘキシジングルコン酸塩
クロピロクスオラミン;
マレイン酸;および
ホウ酸ナトリウム;を含有
pH値の範囲が5.3〜5.7である、皮膚感染の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記塩酸テルビナフィンが組成物に対して0.1〜10.0重量部で含まれる、請求項1に記載の皮膚感染の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項3】
前記クロルヘキシジングルコン酸塩が組成物に対して0.1〜20.0重量部で含まれる、請求項1に記載の皮膚感染の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項4】
前記シクロピロクスオラミンが組成物に対して0.1〜10.0重量部で含まれる、請求項1に記載の皮膚感染の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項5】
ティーツリーオイル;をさらに含む、請求項1に記載の皮膚感染の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項6】
前記ティーツリーオイルが組成物に対して0.1〜10.0重量部で含まれる、請求項5に記載の皮膚感染の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項7】
エンバク抽出物;をさらに含む、請求項5に記載の皮膚感染の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項8】
前記エンバク抽出物が組成物に対して0.1〜10.0重量部で含まれる、請求項7に記載の皮膚感染の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項9】
フィトスフィンゴシン、およびフィトスフィンゴシンとセラミドの混合物からなる群より選ばれたいずれか一つをさらに含む、請求項7に記載の皮膚感染の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項10】
前記組成物が動物に使用される、請求項1に記載の皮膚感染の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項11】
塩酸テルビナフィン;
クロルヘキシジングルコン酸塩;
シクロピロクスオラミン
ィーツリーオイル、ティーツリーオイルとエンバク抽出物の混合物、ティーツリーオイルとエンバク抽出物とフィトスフィンゴシンの混合物、およびティーツリーオイルとエンバク抽出物とフィトスフィンゴシンとセラミドの混合物からなる群より選ばれたいずれか一つ
マレイン酸;および
ホウ酸ナトリウム;を含み、
pH値の範囲が5.3〜5.7である、皮膚感染の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項12】
塩酸テルビナフィン;
クロルヘキシジングルコン酸塩
クロピロクスオラミン;
マレイン酸;および
ホウ酸ナトリウム;を含み、
pH値の範囲が5.3〜5.7である、皮膚感染の予防または改善用化粧料組成物。
【請求項13】
ティーツリーオイル、ティーツリーオイルとエンバク抽出物の混合物、ティーツリーオイルとエンバク抽出物とフィトスフィンゴシンの混合物、およびティーツリーオイルとエンバク抽出物とフィトスフィンゴシンとセラミドの混合物からなる群より選ばれたいずれか一つをさらに含む、請求項12に記載の皮膚感染の予防または改善用化粧料組成物。
【請求項14】
前記組成物の剤形がローション、クリーム、軟膏、シャンプー、スプレー、ゲルまたはシャンプーである、請求項12に記載の皮膚感染の予防または改善用化粧料組成物。
【請求項15】
前記塩酸テルビナフィンが組成物に対して0.1〜10.0重量部で含まれる、請求項12に記載の皮膚感染の予防または改善用化粧料組成物。
【請求項16】
前記クロルヘキシジングルコン酸塩が組成物に対して0.1〜20.0重量部で含まれる、請求項12に記載の皮膚感染の予防または改善用化粧料組成物。
【請求項17】
前記シクロピロクスオラミンが組成物に対して0.1〜10.0重量部で含まれる、請求項12に記載の皮膚感染の予防または改善用化粧料組成物。
【請求項18】
前記組成物に対して、
前記塩酸テルビナフィンが0.1〜2.0重量部;
前記クロルヘキシジングルコン酸塩が0.1〜4.0重量部;
前記シクロピロクスオラミンが0.1〜6.0重量部;
前記マレイン酸が0.5〜2.0重量部および
前記ホウ酸ナトリウムが0.3〜0.5重量部含まれる、請求項に記載の皮膚感染の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項19】
前記組成物に対して、
前記塩酸テルビナフィンが0.1〜2.0重量部;
前記クロルヘキシジングルコン酸塩が0.1〜4.0重量部;
前記シクロピロクスオラミンが0.1〜6.0重量部;
前記マレイン酸が0.5〜2.0重量部および
前記ホウ酸ナトリウムが0.3〜0.5重量部含まれる、請求項12に記載の皮膚感染の予防または改善用化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚感染の予防または治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は身体の表面を覆っているので、皮膚糸状菌、カンジダなどの様々な病原体に直接接触する機会が多く感染しやすい。さらには動物の皮膚および毛には各種細菌、カビおよび酵母菌などが寄生して皮膚疾患がよく起こる。
【0003】
動物の皮膚で各種皮膚疾患を誘発する病原性細菌としてはPropionibacterium acnes、Borelia burgdorferi、staphilococcus aureus、Pseudomonas aeruginosaおよびProteus mirabilisなどがあり、病原性真菌としてはMicrosporium canis、Microsporium gypseumおよびTrichophyton mentagrophytesなどがある。
【0004】
現在、このような病原性真菌による皮膚感染を治療するための抗真菌剤としてアムホテリシンB(Ampotericin B)、クロトリマゾール(clotrimazole)、クリニパンAD(crinipan AD)、フルコナゾール(fluconazole)、グリセオフルビン(griseofulvin)またはケトコナゾール(ketoconazole)などが使用されており、抗菌剤としてトリクロサン(triclinicacid)、トリクロカルバン(triclocarban)、塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)または塩化ベンゼトニウム(benzethonium chloride)などが使用されている。
【0005】
しかし、このような抗真菌剤または抗菌剤は精製過程が複雑で製造コストが多くかかり、微生物に対する耐性が増加する問題などがあり、少量では抗菌効果を奏することができない。また、皮膚感染症は、細菌、真菌および酵母などの複合的な要因により現れるので、これらすべてに対して抗菌活性を示すことができない短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書は、抗菌スペクトルが広く皮膚感染症の治療効果に優れ、副作用が少なく、沈殿物が生成されない皮膚感染の予防または治療用組成物を提供する。
【0007】
本明細書は、前記言及された課題に制限されず、言及されていないまた他の課題は、以下の記載から通常の技術者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の一実施例による皮膚感染の予防または治療用薬学的組成物は、塩酸テルビナフィン、クロルヘキシジングルコン酸塩およびシクロピロクスオラミンを含む。
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の他の実施例による皮膚感染の予防または治療用薬学的組成物は、塩酸テルビナフィン、クロルヘキシジングルコン酸塩、シクロピロクスオラミン、ティーツリーオイル、エンバク抽出物、フィトスフィンゴシン、フィトスフィンゴシンの塩、セラミドおよびセラミド誘導体からなる群より選ばれた単独またはこれらの混合物を含む。
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の一実施例による皮膚感染の予防または治療用化粧料組成物は、塩酸テルビナフィン、クロルヘキシジングルコン酸塩およびシクロピロクスオラミンを含む。
【0011】
本発明のその他具体的な事項は、詳細な説明および図面に含まれている。
【発明の効果】
【0012】
本明細書の一実施例による皮膚感染の予防または治療用組成物は、沈殿物が生成されない。
【0013】
本明細書の一実施例による皮膚感染の予防または治療用組成物は、抗菌活性に優れながらも皮膚に対する毒性が少なく長期間使用しても副作用を起こさない。
【0014】
本明細書の一実施例による皮膚感染の予防または治療用組成物は、病原性細菌、病原性真菌および酵母菌に至るまで抗菌スペクトルが広い。
【0015】
本発明の効果は、以上で言及された効果に制限されず、言及されていないまた他の効果は、以下の記載から通常の技術者に明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本明細書による組成物のCandida albicansに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図2】本明細書による組成物のCandida albicansに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図3】本明細書による組成物のCandida albicansに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図4】本明細書による組成物のCandida albicansに対する抗菌活性実験結果のグラフである。
図5】本明細書による組成物のCandida albicansに対する抗菌活性実験結果のグラフである。
図6】本明細書による組成物のCandida parapsilosisに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図7】本明細書による組成物のCandida parapsilosisに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図8】本明細書による組成物のCandida parapsilosisに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図9】本明細書による組成物のCandida parapsilosisに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図10】本明細書による組成物のCandida parapsilosisに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図11】本明細書による組成物のCandida parapsilosisに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図12】本明細書による組成物のCandida parapsilosisに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図13】本明細書による組成物のCandida parapsilosisに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図14】本明細書による組成物のCandida parapsilosisに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図15】本明細書による組成物のCandida parapsilosisに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図16】本明細書による組成物のCandida parapsilosisに対する抗菌活性実験結果のグラフである。
図17】本明細書による組成物のCandida parapsilosisに対する抗菌活性実験結果のグラフである。
図18】本明細書による組成物のCandida kruseiに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図19】本明細書による組成物のCandida kruseiに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図20】本明細書による組成物のCandida kruseiに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図21】本明細書による組成物のCandida kruseiに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図22】本明細書による組成物のCandida kruseiに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図23】本明細書による組成物のCandida kruseiに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図24】本明細書による組成物のCandida kruseiに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図25】本明細書による組成物のCandida kruseiに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図26】本明細書による組成物のCandida kruseiに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図27】本明細書による組成物のCandida kruseiに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図28】本明細書による組成物のCandida kruseiに対する抗菌活性実験結果のグラフである。
図29】本明細書による組成物のCandida kruseiに対する抗菌活性実験結果のグラフである。
図30】本明細書による組成物のAspergillus fumigatusに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図31】本明細書による組成物のAspergillus fumigatusに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図32】本明細書による組成物のAspergillus fumigatusに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図33】本明細書による組成物のAspergillus fumigatusに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図34】本明細書による組成物のAspergillus fumigatusに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図35】本明細書による組成物のAspergillus fumigatusに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図36】本明細書による組成物のAspergillus fumigatusに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図37】本明細書による組成物のAspergillus fumigatusに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図38】本明細書による組成物のAspergillus fumigatusに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
図39】本明細書による組成物のAspergillus fumigatusに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
【0017】

図40】本明細書による組成物のAspergillus fumigatusに対する抗菌活性実験結果のグラフである。
図41】本明細書による組成物のAspergillus fumigatusに対する抗菌活性実験結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に開示された発明の利点および特徴、並びにこれらを達成する方法は添付する図面と共に詳細に後述されている実施例を参照すると明確になるであろう。しかし、本明細書が以下に開示する実施例に制限されるものではなく、互いに異なる多様な形態で具現することができ、本実施例は、単に本明細書の開示を完全にし、本明細書が属する技術分野の通常の技術者(以下「当業者」)に本明細書の範疇を完全に知らせるために提供するものであり、本明細書の権利範囲は請求項の範疇によってのみ定義される。
【0019】
本明細書において使われた用語は、実施例を説明するためのものであり、本明細書の権利範囲を制限しようとするものではない。本明細書において、単数形は文面で特記しない限り、複数形も含む。明細書で使用される「含む(comprises)」および/または「含み(comprising)」は、言及された構成要素の他に一つ以上の他の構成要素の存在または追加を排除しない。明細書全体にわたって同一の図面符号は同一の構成要素を指称し、「および/または」は言及された構成要素のそれぞれおよび一つ以上のすべての組み合わせを含む。
【0020】
他に定義のない限り、本明細書において使われるすべての用語(技術的および科学的用語を含む)は、本明細書が属する技術分野の通常の技術者に共通して理解される意味で使われる。また、一般に用いられる辞書で定義されているような用語は明白に特に定義されていない限り理想的にまたは過度に解釈されない。
【0021】
以下、当業者が明確に理解できるように本発明を詳細に説明する。
【0022】
本明細書による皮膚感染の予防または治療用組成物は、塩酸テルビナフィン、クロルヘキシジングルコン酸塩およびシクロピロクスオラミンを含む。本明細書による皮膚感染は、主に病原菌による皮膚感染を意味し、多様な細菌、カビおよび酵母などによる皮膚疾患を含む。
【0023】
前記塩酸テルビナフィン(Terbinafine Hydrochloride,[(2E)−6,6−dimethylhept−2−en−4−yn−1−yl](methyl)(naphthalen−1−ylmethyl)aminehydrochloride)は、下記化学式1で表され、白色の微細な結晶性粉末でメタノール、ジクロロメタン、エタノールおよび水に溶解され得る:
【0024】
【化1】
【0025】
前記塩酸テルビナフィンは、真菌の細胞メンブレンの合成に関与する酵素の一つであるスクアレンエポキシダーゼ(squalene epoxidase)を阻害してエルゴステロール(ergosterol)の合成を阻害する。これによって細胞メンブレンの透過性に変化を起こして真菌を溶解(lysis)させて抗真菌作用をする。
【0026】
前記塩酸テルビナフィンは、組成物に対して0.1〜10重量部で含まれ得、好ましくは0.1〜5重量部、または0.1〜2重量部で含まれ得る。前記範囲で含まれる場合、抗菌活性に優れながらも皮膚に刺激が少なく長期間使用時にも毒性を示さない。また、前記範囲の塩酸テルビナフィンを含む場合、後述するマレイン酸とホウ酸ナトリウムをさらに含んで沈殿物が生成されることを防止することができる。
【0027】
例示的な実施例で、前記クロルヘキシジングルコン酸塩(Chlorhexidine gluconate)は、下記化学式2で表されるクロルヘキシジンの2グルコン酸塩水溶液であり得る。
【0028】
【化2】
【0029】
前記クロルヘキシジングルコン酸塩は、グラム−陽性およびグラム−陰性バクテリアを含んで多様な細菌およびカビに対して抗菌活性を示す。前記クロルヘキシジングルコン酸塩は、グルコン酸とクロルヘキシジンが結合された液状物質である。前記クロルヘキシジンはグルコン酸より他の陰イオンと反応して沈殿物を形成する傾向がある。
【0030】
多くの液状医薬品の場合、塩化イオンを含む賦形剤を含んでいるので、前記塩化イオンは前記クロルヘキシジンと結合して沈殿物を生成させ得る。さらに、前記クロルヘキシジングルコン酸塩が塩酸テルビナフィンと複合剤形で使用される場合、クロルヘキシジンと塩酸テルビナフィンの塩化イオンの結合で沈殿物が生成され得る。
【0031】
一実施例による皮膚感染の予防または治療用組成物は、マレイン酸およびホウ酸ナトリウムをさらに含み得る。例示的な実施例で、皮膚感染の予防および治療用組成物はpH値の範囲が5.3〜5.7であり得る。
【0032】
マレイン酸(mallic acid)は、ポリカルボン酸の一つであり、イオンスカベンジャ(scavenger)としての役割を果たし、沈殿物の発生を防止することができる。後述する実験例により確認できるように、マレイン酸はクエン酸、シュウ酸、タルタル酸とは異なり、クロルヘキシジングルコン酸塩に由来する沈殿物を防止する役割を果たすことができる。マレイン酸は組成物に対して含有量が0.5〜2.0重量部で含まれ得る。
【0033】
ホウ酸ナトリウムは後述する実験例により確認できるように、塩化ナトリウム、アンモニア水、クエン酸ナトリウム、炭酸アンモニウムとは異なり沈殿物の形成を防止することができる。ホウ酸ナトリウムはマレイン酸によって変わる組成物のpHを調整することができる。
【0034】
ホウ酸ナトリウムは組成物に対して含有量が0.3〜0.5重量部で含まれ得る。ただし、これに制限されるものではなく、ホウ酸ナトリウムは組成物が上述した範囲内のpH値を有するように含有量を適宜調整することができる。一方、前記クロルヘキシジングルコン酸塩は、組成物に対して0.1〜20重量部で含まれ得、好ましくは1〜10重量部、または0.1〜4重量部で含まれ得る。前記範囲で含まれる場合、抗菌活性に優れ、皮膚に対する刺激が少ない。また、前記範囲のクロルヘキシジングルコン酸塩を含む場合、マレイン酸とホウ酸ナトリウムをさらに含んで沈殿物が生成されることを防止することができる。
【0035】
前記シクロピロクスオラミン(Ciclopirox Olamine,C12H17NO2・C2H7NO,[2(1H)−Pyridinone、6−cyclohexyl−1−hydroxy−4−methyl−compound with 2−aminoethanol (1:1)])は、下記化学式3で表され、シクロピロクス(ciclopirox)のオラミン(olamine)塩形態である。
【0036】
【化3】
【0037】
シクロピロクスオラミンは、合成抗菌作用をする抗菌および抗炎症作用を有する合成抗菌剤である。シクロピロクスはFe3+およびAl3+のような3価の陽イオンに結合し、キレートすることで酵素に必須の補助因子の利用可能性を抑制することによってその作用を発揮する。これは細胞代謝、細胞壁構造の組織化および他の重要な細胞機能に必須の酵素の活性を喪失させ得る。また、シクロピロクスは、5−lipoxygenaseとcyclooxygenase(COX)を抑制することによって抗炎症活性を示すことができる。
【0038】
前記シクロピロクスオラミンは、組成物に対して0.1〜10重量部で含まれ得、好ましくは0.1〜6重量部、または1〜5重量部で含まれ得る。
【0039】
また、前記塩酸テルビナフィンおよびクロルヘキシジングルコン酸塩と併用する場合、それぞれ単独で使用したときに活性を示さなかった病原性細菌、真菌および酵母菌にも活性を示し、少量を使用する場合にも優れた抗菌活性を示すので皮膚に対する刺激を減らすことができる。
【0040】
動物の皮膚には病原性細菌、真菌および酵母菌など多様な微生物が寄生するため、細菌のみ死滅させると真菌が活性化したり真菌を死滅させると細菌が活性化して2次的な疾病の原因となる恐れがある。前記塩酸テルビナフィン、クロルヘキシジングルコン酸塩およびシクロピロクスオラミンを組み合わせて使用する場合は、細菌、真菌および酵母にまで抗菌活性のスペクトルが広くなると、少量使用しても優れた抗菌活性を示すので、皮膚刺激が減って動物用により適する。さらに、皮膚外用剤として使用時美白作用もすることができ、本明細書による組成物は皮膚感染の予防または治療のための薬学的組成物だけでなく化粧料組成物にも適用が可能である。
【0041】
本発明の皮膚感染の予防または治療用組成物は、ティーツリーオイル(teatree oil)、エンバク抽出物、フィトスフィンゴシン、その塩、セラミドおよびセラミド誘導体からなる群より選ばれた単独またはこれらの混合物をさらに含み得る。
【0042】
前記ティーツリーオイルは抗菌力を有しており、特に塩酸テルビナフィン、クロルヘキシジングルコン酸塩およびシクロピロクスオラミンと併用時抗菌力がさらに増大し、天然抽出物であるため皮膚に刺激がなく長期間使用しても副作用が現れない。また、感染による浮腫を鎮め、紅斑を緩和させる役割も果たす。
【0043】
前記ティーツリーオイルは、学名がMelaleucaalternifoliaであるティーツリーから得た淡黄色精油を意味する。
【0044】
前記ティーツリーオイルは通常の方法により製造できるが、具体的には、ティーツリーの新鮮な葉や小さい枝の先端部分をスチーム蒸留で抽出して得た溶液を分離することによって得ることができる。
【0045】
前記ティーツリーオイルには48の種類以上の成分が含まれており、主に1−テルピネン−4−オール(1−terpinen−4−ol)、α−ピネン(α−pinene)、α−テルピネン(α−terpinene)、ρ−シメン(ρ−cimene)、γ−テルピネン(γ−terpinene)、テルピノレン(terpinolene)、α−テルピネオール(α−terpineol)、1,8−シネオール(1,8−cineol)などのテルペン類成分である。
【0046】
前記ティーツリーオイルは、組成物に対して0.1〜10重量部で含まれ得、好ましくは1〜5重量部で含まれ得る。前記範囲で含まれる場合、本発明の組成物の抗菌効果を増大させて紅斑などの皮膚感染症状を緩和させる一方、病原性微生物でない他の微生物の過大増殖を抑制することができる。
【0047】
前記エンバク抽出物は、感染による皮膚そう痒症を緩和することができ、皮膚に保湿力を付与することができる。また、天然抽出物であるため長期間使用しても副作用が少ないだけでなく塩酸テルビナフィンおよびクロルヘキシジングルコン酸塩と併用して使用時病原菌による皮膚感染症の治療および予防の効果をさらに増大させることができる。
【0048】
前記エンバク抽出物は、穀類であるエンバク(Avena sativa)から得られる。エンバクは良質の蛋白質、りん、マグネシウム、カルシウムなどの無機物が豊富である。前記エンバク抽出物は通常の穀物抽出物の製造方法で抽出して得ることができる。
【0049】
具体的には、エンバクを乾燥させたりそのまま粉砕して得られた粉砕物に、蒸溜水、有機溶媒およびこれらの混合物からなる群より選ばれた溶媒から抽出され得、有機溶媒の極性によって順次に2種以上の溶媒を使用することができる。前記有機溶媒は当業界に公知されたものが制限なしに使用され得、具体的にはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどの低級アルコール、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコールおよび石油エーテル、メチルアセテート、エチルアセテート、ベンゼン、ヘキサン、メチレンクロリド、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトンなどの炭化水素系溶媒からなる群より選ばれた単独またはこれらの混合物を使用することができる。好ましくは、皮膚に対する刺激および毒性を減らすために水、エタノールまたはこれらの混合物を使用して抽出することができる。
【0050】
抽出時溶媒の含有量は粉砕物の乾燥重量に対して1〜15体積比の量で添加した後50℃〜100℃で1〜24時間加熱して抽出する温浸法を用いるか、4℃〜25℃の低い温度で1〜20日間沈積させる冷浸法を用いる。この時得られた抽出ろ液を脱水または脱溶媒化した後減圧濃縮または凍結乾燥して液状または粉末形態で本発明の皮膚感染の予防または治療用組成物に配合する。
【0051】
前記エンバク抽出物は、組成物に対して0.1〜10.0重量部で含まれ得、好ましくは1〜5重量部で含まれ得る。前記範囲で含まれる場合、エンバク抽出物の使用による効果を得ることができ、使用感も良いため各種剤形化に困難性はない。
【0052】
前記フィトスフィンゴシン(phytosphingosine)は、分子式がC1839NOであり、下記化学式4で表される:
【0053】
【化4】
【0054】
前記フィトスフィンゴシンは、皮膚表面でセラミドが分解されながら生成されるものであり、角質層に約1〜2%程度存在する。前記フィトスフィンゴシンは、外部病原菌に対して抗菌作用をして塩酸テルビナフィンおよびクロルヘキシジングルコン酸塩と併用時本発明の組成物の抗菌力をさらに増大させることができる。また、セラミド合成を促進させて皮膚感染による炎症を緩和させて皮膚再生能力を向上させて皮膚傷を速やかに回復させる役割を果たすことができる。
【0055】
前記フィトスフィンゴシンは、組成物に対して0.005〜1重量部で含まれ得、好ましくは0.005〜0.1重量部で含まれ得る。前記範囲で含まれる場合、皮膚再生能力が向上して抗菌力を増大させてフィトスフィンゴシンを使用する目的を達成することができ、剤形化に困難性はない。
【0056】
前記フィトスフィンゴシンは、フィトスフィンゴシン塩酸塩など本発明の目的を阻害しない範囲内でその塩の形態で使用してもよい。
【0057】
前記セラミドは細胞間脂質(intercellular lipids)の最も重要な脂質として(全体40〜50%)水分蒸発を防いで水分を保つことができ、皮膚に保湿力を提供する役割を果たす。また、皮膚角質層の皮膚保護障壁の機能を向上させるので、皮膚感染を予防して皮膚感染症がより速い速度で治るようにする。
【0058】
前記セラミド誘導体は、皮膚の再生能力を増加させて皮膚感染治療効果をさらに増大させるだけでなく皮膚に保湿力を提供する。前記セラミド誘導体は、親油性鎖長および親水基に応じてビスヒドロキシエチルビスセチルマロアミド(Bishydroxyethyl biscetyl maloamide)、ヒドロキシプロピルビスパルミタミドMEA(Hydroxypropyl bispalmitamide MEA)、ヒドロキシプロピルビスラウラミドMEA(Hydroxypropyl bislauramide MEA)、ヒドロキシプロピルビスステアロイルアミドMEA(Hydroxypropyl bisstearoylamide MEA)およびヒドロキシプロピルビスイソステアロイルアミドMEA(Hydroxypropyl bisisostearoyl amide MEA)からなる群より選ばれた単独またはこれらの混合物を使用することができる。
【0059】
前記セラミドまたはセラミド誘導体は、組成物に対して0.005〜1重量部で含まれ得、好ましくは0.005〜0.1重量部で含まれ得る。前記範囲で含まれる場合、皮膚再生能力を向上させる一方、皮膚感染の治療効果を向上させてセラミドまたはセラミド誘導体を含む本発明の目的を達成することができ、剤形化に困難性はない。
【0060】
本発明の皮膚感染の予防または治療用組成物は、薬学的組成物であって皮膚外用剤に剤形化され得る。この時、投与のために上述した有効成分以外にさらに薬剤学的に許容可能な担体を1種以上含み得る。前記薬剤学的に許容可能な担体として食塩水、滅菌数、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロールおよびエタノールからなる群より選ばれた単独またはこれらの混合物を使用し得、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤および潤滑剤を付加的に添加して製剤化することができる。さらに進んで当分野の適正な方法でまたはRemington’s Pharmaceutical Science(最近版)、Mack Publishing Company,Easton PAに開示されている方法を用いて各疾患に応じてまたは成分に応じて好ましく製剤化することができる。
【0061】
本発明の薬学的組成物は、局部投与が好ましく、皮膚および粘膜治療用に軟膏、クリーム、乳液、膏薬、パウダー、含浸パッド、溶液、ゲル、スプレー、ローションまたは懸濁液形態で提供されることができる。
【0062】
本発明の薬学的組成物の好ましい投与量は、患者の状態、状態、疾病の程度、薬物の形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者によって適宜選ばれることができる。好ましくは一回約10〜30mlまたは10〜30gずつ数回にわたって患部に塗る。前記投与量はいかなる面においても本発明の範囲を限定するものではない。
【0063】
本発明の皮膚感染の治療および予防のための組成物は、化粧料組成物で製造されることができる。本発明の化粧料組成物は前記成分の他に本発明の目的を阻害しない範囲内で通常化粧料に使用される各種成分を配合することができる。具体的には例えば、ラノリン、スクアレンなどの天然動植物油脂類、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコールなどの高級アルコール類、高級脂肪酸、グリセリン、ヒアルロン酸などの保湿剤、ビタミンC、ビタミンE、紫外線吸収剤、紫外線遮蔽剤、防腐剤、粘度調整剤、顔料、香料などを当業者の必要に応じて任意の含有量で配合することができる。
【0064】
前記化粧料組成物は、化粧水、クリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パウダー、エッセンス、パック、軟膏、石鹸またはシャンプーなどの剤形を有することができる。
【0065】
以下、実験例により本発明をより具体的に説明する。これは本発明の説明のためのものであり、これにより発明の範囲は制限されない。
【0066】
<実験概要>
1.実験方法:ディスク拡散法(modified clsi method)
2.指標菌および条件(表01)
【0067】
【表1】
【0068】
3.実験サンプル:既存抗菌剤、新規サンプル63種(表02)
【0069】
【表2】
【0070】
<実験の結果>
本明細書による組成物の抗菌活性を判断するためにCandida albicans、Candida prapsilosis、Candida kruseiおよびAspergillus fumigatusを指標菌(indicator)として実験を行った。
【0071】
1.Candida albicans
図1図3は本明細書による組成物のCandida albicansに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
【0072】
図4および図5は本明細書による組成物のCandida albicansに対する抗菌活性実験結果のグラフである。
【0073】
図4および図5を参照すると、既存製品の抗菌活性抑制帯の大きさは赤線で表示して比較分析を容易にした。図5図4における抑制帯(y軸)の一部区間の拡大グラフである。
【0074】
前記Candida albicansは、動物のカンジダ症、アトピー性皮膚炎などに関与する菌株として、該当菌株で既存製品の抑制帯は27mmで示され、CiO濃度が0.2%のサンプルを除いたすべての濃度の新規サンプルで既存製品より大きい抑制帯を形成した。特に、CiO濃度0.3%のサンプルC3の場合、CHX濃度0.6%以上のサンプルから34mm以上の大きい抑制帯を形成し、その値が濃度依存的に増加する様相を示す。しかし、C3を除いた残りのサンプルの場合、CHX濃度0.6%以上からは抑制帯の大きさが減少する傾向を示し、全般的にCiO濃度の増加に伴い抑制帯の大きさも増加する様相を示した。特異事項としては、グラフには明示されていないが、C4〜C6までのサンプルで急に抑制帯が増加する現象を示した。
【0075】
2.Candida parapsilosis
図6図15は本明細書による組成物のCandida parapsilosisに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
【0076】
図16および図17は本明細書による組成物のCandida parapsilosisに対する抗菌活性実験結果のグラフである。
【0077】
図16および図17を参照すると、既存製品の抗菌活性抑制帯の大きさは赤線で表示して比較分析を容易にした。図17図16における抑制帯(y軸)の一部区間の拡大グラフである。
【0078】
前記Candida parapsilosisにおいて既存製品の抑制帯は34mmで示され、C. albicansとは異なり、CiO濃度が0.2%のサンプルのみが既存製品に比べて大きい抑制帯を形成する様相が確認され、CiO濃度依存的に抑制帯の大きさが増加する傾向を示すこともなかった。ただし、C2とC3のサンプルではCHX濃度の増加に伴い抑制帯の大きさが減少する傾向を示しているが、残りのサンプルに対してはCHX濃度の増加による抑制帯の減少傾向は誤差が小さいことが確認された。
【0079】
3.Candida krusei
図18図27は本明細書による組成物のCandida kruseiに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
【0080】
図28および図29は本明細書による組成物のCandida kruseiに対する抗菌活性実験結果のグラフである。
【0081】
図28および図29を参照すると、既存製品の抗菌活性抑制帯の大きさは赤線で表示して比較分析を容易にした。図29図28における抑制帯(y軸)の一部区間の拡大グラフである。
【0082】
前記Candida kruseiにおいて既存製品の抑制帯は41.3mmで示され、全体的に既存製品と大きな誤差を示す新規サンプルはないことが確認される。(抑制帯の大きさは実験者の手で測定するため、2〜3mmまでは誤差範囲として判断)特異点は、CiO濃度が低いC2、C3のサンプルが比較的高い抗菌活性抑制帯を示しており、CHX濃度0.4〜0.6%範囲で抑制帯の大きさが減少して0.7%から再び増加する様相を示している。
【0083】
4.Aspergillus fumigatus
図30図39は本明細書による組成物のAspergillus fumigatusに対する抗菌活性実験結果である抑制帯形成結果である。
【0084】
図40および図41は本明細書による組成物のAspergillus fumigatusに対する抗菌活性実験結果のグラフである。
【0085】
図40および図41を参照すれば、既存製品の抗菌活性抑制帯の大きさは赤線で表示して比較分析を容易にした。図41図40における抑制帯(y軸)の一部区間の拡大グラフである。
【0086】
Aspergillus fumigatusは、動物の耳、鼻、呼吸器などに感染すると疾患を起こす要因である。前記Aspergillus fumigatusにおいて既存製品の抑制帯は35mmで示され、新規サンプルは全体的に既存製品より高い抗菌活性を示した。CiO濃度が最も高いC10サンプルで抗菌活性が高く示され、全般的なサンプルでCiO濃度依存的に抗菌活性が増加する傾向を示した。CHX濃度による影響はCiO濃度0.6%以下のサンプルで主に確認されているが、0.2%と0.8%を比較するとき1〜2mm差で減少幅は大きな誤差を示さなかった。
【0087】
5.沈殿物の生成防止の実験
前述したように、多くの液状医薬品の場合、塩化イオンを含む賦形剤が含まれ、塩酸テルビナフィンと複合剤形の本発明の組成物も沈殿が発生し得る。ただし、マレイン酸とホウ酸ナトリウムをさらに含み、塩酸テルビナフィンの沈殿物生成を防止することができる。以下では塩酸テルビナフィンの沈殿物生成実験について説明する。
【0088】
先に、下記の表3のように塩酸テルビナフィン、クロルヘキシジングルコン酸塩およびシクロピロクスオラミンを含む液状製剤を調製する。前記調製された液状製剤にマレイン酸、またはマレイン酸以外のポリカルボン酸を添加して沈殿物の発生の有無を観察する。
【0089】
【表3】
【0090】
先に、マレイン酸のようなポリカルボン酸としてマレイン酸、クエン酸、シュウ酸、タルタル酸を準備する。前記表3で調製された液状製剤にポリカルボン酸をそれぞれ0.1、0.3、0.5、0.7、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0(w/v%)に入れた後、pH調整剤を用いてクロルヘキシジングルコン酸塩が安定したpH5.0まで調整する。そして、前記液状製剤を加速条件40±2℃、相対湿度75±5%で保管し、沈殿物の発生の有無を観察する。
【0091】
ポリカルボン酸およびpH調整剤の種類による沈殿物発生結果を下記の表4に示した。
【0092】
【表4】
【0093】
前記表4を参照すると、ポリカルボン酸としてマレイン酸を、pH調整剤としてホウ酸ナトリウムを含む液状製剤は沈殿物が発生しないことが分かる。
【0094】
次に、ホウ酸ナトリウムの含有量と液状製剤のpHを調整して前記表4と同様に沈殿物の発生有無の実験を行った。マレイン酸を1.0%で添加し、ホウ酸ナトリウムの含有量と液状製剤のpHを調整しながら沈殿物が発生しない範囲を実験した。前記実験結果を下記の表5に示した。
【0095】
【表5】
【0096】
前記表5を参照すると、ホウ酸ナトリウムを0.3重量%〜0.5重量%添加してマレイン酸を含む液状製剤のpHを5.3または5.7に調整した時沈殿物が発生しないことが分かる。
【0097】
次に、マレイン酸1.0%、ホウ酸ナトリウムを0.3%を添加した後、クロルヘキシジングルコン酸塩、塩酸テルビナフィン、シクロピロクスオラミンの含有量を調整して沈殿物の発生有無の実験を行う。前記実験結果を下記表6および表7に示し、マレイン酸とホウ酸ナトリウムを添加せずに調製された液状製剤の沈殿物の発生有無の実験を行って下記表8に示した。
【0098】
【表6】
【0099】
【表7】
【0100】
【表8】
【0101】
前記表6ないし表8を参照すると、マレイン酸とホウ酸ナトリウムを含み、pHが5.3〜5.7である液状製剤において、クロルヘキシジングルコン酸塩が0.1重量%、塩酸テルビナフィンが0.1重量%であり、シクロピロクスオラミンが0.1重量%〜6.0重量%であるとき、沈殿物が発生しないことが分かる。
【0102】
これに対し、マレイン酸とホウ酸ナトリウムを含まず、pHが調整されない液状製剤において、クロルヘキシジングルコン酸塩が0.1重量%、塩酸テルビナフィンが0.1重量%であり、シクロピロクスオラミンが0.1重量%〜0.9重量%であるとき、沈殿物が発生したことが分かる。
【0103】
したがって、クロルヘキシジングルコン酸塩2.0重量%、塩酸テルビナフィン1.0重量%、シクロピロクスオラミン0.5重量%である液状製剤において、マレイン酸とpH調整剤としてホウ酸ナトリウムを添加して沈殿物の発生を防止することができる。前記マレイン酸とホウ酸ナトリウムの含有量はそれぞれ0.5〜2.0重量%および0.3〜0.5重量%であり、pH値の範囲は5.3〜5.7が適当である。また、前記の方法で調製された液状製剤において、沈殿物が発生しないクロルヘキシジングルコン酸塩の範囲は0.1〜4.0重量%であり、塩酸テルビナフィンの濃度は0.1〜2.0重量%であることがわかる。
【0104】
以上、添付した図面を参照して本明細書の実施例を説明したが、本明細書が属する技術分野の通常の技術者は、本発明のその技術的思想や必須の特徴を変更せず他の具体的な形態で実施できることを理解することができる。したがって、上記実施例はすべての面で例示的なものであり、制限的なものでないことを理解しなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
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図39
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