(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した摩耗の検査は、2〜3か月に一度の休風中しか実施できないため、操業中に摩耗が急激に進行した場合、高炉操業に影響が出る可能性が有る。
また、検査が目視確認となるため、定量的な判断が難しく、更新判断が難しい。
さらに、炉体開口部からの目視確認となるため、炉内への落下防止など、安全面の対策が十二分に必要である。
とくに、シュートの内面のライナを目視確認する際には、シュートが炉体開口部に向く状態で停止させる必要がある。
また、目視確認のための炉頂部マンホール等は重量物のため、複数人の作業員と工具を必要とし、大掛かりで作業コストが掛かる。
以上のような課題を解決するため、高炉内面の摩耗検査を、任意の時期に、定量的に、かつ効率よく実施できるようにすることが求められていた。
【0006】
本発明の目的は、旋回シュート内面摩耗検査を、任意の時期に定量的にかつ効率よく実施できる旋回シュート内面摩耗検査装置および旋回シュート内面摩耗検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の旋回シュート内面摩耗検査装置は、高炉の装入装置に設置されたシュートの内面の摩耗を検査する装置であって、前記高炉の内部に導入可能かつ前記内面までの測定距離を測定可能な非接触式の距離測定器と、前記距離測定器で測定された前記測定距離に基づいて前記内面の摩耗を判定する摩耗判定部と、を有する。
このような本発明では、摩耗判定部の制御により距離測定器を高炉の内部に導入し、シュートの内面までの測定距離を測定することで、測定距離に基づいてシュート内面の摩耗を判定することができる。従って、高炉の休風時以外の任意の時期にあっても、機械測定による定量的な検査を効率よく実施できる。
【0008】
本発明の旋回シュート内面摩耗検査装置において、前記距離測定器として、マイクロ波ないしミリ波の測定ビームを照射して前記高炉に装入された装入物表面の三次元形状を測定する装入物表面形状測定器を兼用することが好ましい。
このような本発明では、既存の装入物表面形状測定器を転用することで、新規に距離測定器を設置する必要がなく、実施が容易である。
【0009】
本発明の旋回シュート内面摩耗検査装置において、前記摩耗判定部は、前記シュートを前記距離測定器に
対向する所定の測定姿勢に配置する制御を行うことが好ましい。
このような本発明では、摩耗判定部の制御によりシュートを所定の測定姿勢に配置することで、高炉の内部に導入された距離測定器に対するシュートの相対位置を一定にでき、常に同じ条件で測定距離を測定することで、摩耗判定の精度を高めることができる。
シュートを所定の測定姿勢に配置する構成としては、既存の装入装置に設置されている機構、すなわちシュートを旋回させる旋回機構(垂直な軸まわり)およびシュートの傾斜角度をきめる傾動機構(水平な軸まわり)が利用できる。
所定の測定姿勢としては、シュートが距離測定器に向かう旋回角度位置(垂直な軸まわり)にあり、かつシュートの傾斜角度位置が、シュートの延伸方向軸線と距離測定器からの測定ビームとが直交または直角に近い角度で交差する傾斜角度位置(水平な軸まわり)にある状態とすることができる。
【0010】
本発明の旋回シュート内面摩耗検査装置において、前記シュートは前記シュートの延長方向の軸線まわりに回動可能であり、前記摩耗判定部は前記測定距離を測定する際に前記シュートを回動させる制御を行うことが好ましい。
このような本発明では、測定距離を測定する際にシュートを回動させることで、距離測定器による測定対象部位をシュートの内面を横断するように転移させることができる。例えば、距離測定器からの測定ビームをシュートの横断方向へ振ってシュートの内面を走査した場合、シュートの両端近傍では測定ビームが内面に対して浅い角度となり、摩耗判定には好ましくないことがある。これに対し、シュートを回動させることで、測定ビームの交差角度が直角に近くなる領域を拡大でき、摩耗判定の精度を高めることができる。
シュートを延長方向の軸線まわりに回動させる構成としては、既存の装入装置に設置されている回動機構を適宜利用することができる。
【0011】
本発明の旋回シュート内面摩耗検査装置において、前記摩耗判定部は、予め前記距離測定器で測定された前記内面までの基準距離を記憶しており、前記測定距離を前記基準距離と比較して前記内面の摩耗を判定することが好ましい。
このような本発明では、高炉の稼働開始時などシュートの内面が更新された状態、つまり摩耗を生じていないシュート内面までの距離を測定して基準距離として記憶しておき、稼働経過後に測定距離を測定して基準距離と比較することで、稼働により生じたシュート内面の摩耗を適切に測定できる。
基準距離の測定は、保護ライナの交換などシュート内面が更新された状態で行うことができ、例えば高炉の新規設置時、改修後の稼働開始時、あるいは休風後の稼働再開時などである。
【0012】
本発明の旋回シュート内面摩耗検査装置において、前記摩耗判定部は、複数の前記測定距離を測定し、測定された前記測定距離のうち最小のものを基準距離として選択し、前記基準距離と他の前記測定距離との差分に基づいて前記内面の摩耗を判定してもよい。
このような本発明では、例えばシュートの横断方向の両端近傍では摩耗が少ないか殆どなく、横断方向の中央部では摩耗が大きくなることから、摩耗が少ない両端近傍の最小距離を基準として、摩耗が大きな中央部の測定距離との差分をとって摩耗判定を行うことができ、予め基準距離を別途準備しておく処理などを省略できる。
【0013】
本発明の旋回シュート内面摩耗検査方法は、高炉の装入装置に設置されたシュートの内面の摩耗を検査する方法であって、前記高炉の内部に非接触式の距離測定器を導入し、前記距離測定器で前記内面までの測定距離を測定し、前記測定距離に基づいて前記内面の摩耗を判定する。
このような本発明によれば、本発明の旋回シュート内面摩耗検査装置について説明した通りの作用効果が得られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、旋回シュート内面摩耗検査を、任意の時期に定量的にかつ効率よく実施できる旋回シュート内面摩耗検査装置および旋回シュート内面摩耗検査方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
図1において、高炉10は炉体11を有し、炉頂12には装入装置20が設置されている。
高炉10には、制御装置50が接続されている。制御装置50は、コンピュータシステムで構成され、設定されたプログラムに基づいて装入装置20ほかの高炉10の各部機器を制御可能である。
装入装置20は、炉体11の内部に旋回式のシュート21を有するとともに、炉頂12の外部に装入物供給装置22を有する。
【0017】
装入物供給装置22から投入された装入物23は、落下してシュート21で受けられたのち、シュート21の傾斜に沿って流下し、シュート21の先端から炉体11の内部に散布される。シュート21から散布される装入物23は、シュート21の傾斜角度に応じて装入物表面24に着地する半径方向位置が変化する。
図2にも示すように、シュート21から散布された装入物23は、シュート21の旋回により同心円状に散布され、炉体11の内部に堆積して装入物表面24を形成する。
【0018】
図3に示すように、シュート21は、基端部の両側に一対の支持部材25が接続され、この支持部材25を介して装入物供給装置22に吊り下げ支持されている。
シュート21は、図示しない旋回駆動機構により垂直な軸線A1まわりに回転可能であり、これによりシュート21の旋回動作が行われる。
また、シュート21は、図示しない傾動駆動機構により支持部材25を水平な軸線A2まわりに回動することも可能であり、これによりシュート21の傾斜角度を調整する傾動動作が行われる。
【0019】
シュート21の延長方向の軸線A3は、シュート21の傾動動作により略水平から略垂直下向きまで変化する。
これらのシュート21の旋回動作、傾動動作、回動動作は、それぞれ制御装置50により制御される。
【0020】
シュート21の内側表面には、超硬粒子を鋳込んだ鋳物ライナブロックなどのライナ32が張られている。
ライナ32によりシュート21の内面が形成されることで、装入物23の衝突あるいは流下によるシュート21の摩耗が抑制される。ただし、装入物23によるライナ32の摩耗を無くすことはできず、定期的な検査により摩耗判定された際にはライナ32が張り替えられる。
【0021】
図1および
図4にも示すように、炉体11には、装入物表面形状測定器40が設置されている。
装入物表面形状測定器40は、炉体11の開口部14から炉内へ導入可能な測定器本体41を有し、その先端には距離測定器42が設置されている。
距離測定器42は、測定対象にマイクロ波ないしミリ波の測定ビーム43,44を照射し、測定対象で反射されたビームを検出する既存の非接触距離測定装置とされ、測定対象までの距離を測定可能である。
距離測定器42は、通常は高炉10の操業中あるいは休風時でも炉内に配置され、炉内の状況が通常と異なる際など必要に応じて炉外へ退避する。
【0022】
制御装置50には、表面プロファイル測定部51が形成されている。
表面プロファイル測定部51は、距離測定器42を制御して装入物表面24に測定ビーム43を照射し、装入物表面24を走査することで装入物表面24の三次元形状(装入物表面形状)を測定可能である。
得られた装入物表面24の三次元形状は、制御装置50が装入装置20の装入動作を制御する際に参照される。
【0023】
制御装置50には、さらに摩耗判定部52が形成されている。
摩耗判定部52は、距離測定器42を制御してシュート21の内面に測定ビーム44を照射し、ライナ32の表面までの距離を測定することで、ライナ32の表面の摩耗を判定可能である。
図4に示すように、判定する際には、摩耗判定部52は、シュート21を旋回させてシュート21を距離測定器42に対向させるとともに、シュート21を傾動させてシュート21の延長方向と測定ビーム44とが略直交する角度に配置し、これによりシュート21を所定の測定姿勢としておく。
【0024】
所定の測定姿勢としては、シュート21が距離測定器42に向かう旋回角度位置(垂直な軸線A1まわり)にあり、かつシュート21の傾斜角度位置(水平な軸線A2まわり)が、シュート21の延伸方向の軸線A3と距離測定器42からの測定ビーム44とが直交または直角に近い角度で交差する傾斜角度位置にある状態とする。
図5に示すように、前述した所定の測定姿勢を保ったまま、測定ビーム44の照射角度およびシュート21の傾動角度をそれぞれ変化させることで、測定ビーム44のライナ32表面に対する照射位置を、シュート21の基端部側からシュート21の先端側に至る所定長さにわたって変化させることができる。
このような測定動作を行うことで、ライナ32の表面の一方の端部から他方の端部にわたる範囲の複数の点で間欠的または連続的に測定距離Dtを測定することができ、測定した測定距離Dtは、ライナ32の表面の一方の端部から他方の端部にわたる範囲の測定形状Ptとして記憶しておく。
【0025】
図6に示すように、ライナ32の基端部側から先端側にかけての測定形状Ptにおいては、基端部近傍に測定距離Dtの大きな谷があり、先端側に向けて浅い領域が続く。これは、シュート21の基端部近傍では、装入物供給装置22から投入された装入物23が落下し、ライナ32の表面の摩耗が大きいことによる。ライナ32に受けられた装入物23がシュート21の先端側に向けて流下することで、ライナ32の表面に摩耗が生じるが、この領域では基端部近傍よりも摩耗の程度が小さくなる。
一方、ライナ32の基端側の端部では、装入物23の落下が少なく、ライナ32の表面の摩耗が最も小さくなる。そこで、この最小の測定距離Dtを基準距離Drとすることができる。そして、選択された基準距離Drと、測定形状Ptに記録された他の地点の基準距離Drとの差分Wt=Dt−Drを順次計算し、得られた差分Wtのいずれかが既定のライナ32の摩耗判定値Wsを超えていれば、摩耗状態で交換等が必要と判定できる。
【0026】
このように、摩耗判定部52は、測定形状Ptに記録された複数の測定距離Dtのうち最小のものを基準距離Drとするとともに、他の測定距離Dtと比較して各々の位置における差分Wt=Dt−Drを計算することで、各点での摩耗を測定することができる。そして、得られた各点の差分Wtを、既定のライナ32の摩耗判定値Wsと比較することで、これを超えていれば摩耗状態で交換等が必要と判定することができる。
これらの距離測定器42および摩耗判定部52により、本発明の旋回シュート内面摩耗検査装置9が構成されている。
【0027】
図7において、本実施形態では次のような動作を行う。
高炉10が稼働状態(操業中または休風時も含む)にあるとき(処理P1)、制御装置50は摩耗検査の実行タイミングまで稼働を維持する(処理P2)。ユーザの指示あるいは定期実行時刻になったとき、制御装置50は摩耗判定部52に制御を渡し、摩耗判定部52が摩耗判定動作(処理P3〜P6)を実行する。
【0028】
摩耗判定動作では、摩耗判定部52は、シュート21を所定の測定姿勢に配置する(処理P3)。
続いて、摩耗判定部52は、シュート21の傾動角度を変化させつつ測定ビーム44の照射角度を変化させ、測定ビーム44が延長方向の軸線A3と略直交した状態を維持したまま、シュート21の基端部側から先端側までの複数の点でライナ32の表面までの測定距離Dtを測定し、シュート21の内面の横断形状を示す測定形状Ptとして記憶する(処理P4)。
【0029】
摩耗判定部52は、得られた測定形状Ptに記録された複数の測定距離Dtのうち、最小のものを基準距離Drとして選択する(処理P5)。
そして、選択された基準距離Drと、測定形状Ptに記録された他の地点の測定距離Dtとの差分Wt=Dt−Drを順次計算し、得られた差分Wtのいずれかが既定のライナ32の摩耗判定値Wsを超えていれば、摩耗状態で交換等が必要と判定する。
摩擦判定が済んだら、摩耗判定部52は、制御装置50に制御を返す。
【0030】
このような本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
本実施形態では、高炉10の内部に導入された距離測定器42により、シュート21の内面までの測定距離Dtを測定することで、測定距離Dtに基づいてシュート21内面に張られたライナ32表面の摩耗を判定することができる。従って、高炉10の休風時以外の任意の時期にあっても、機械測定による定量的な検査を効率よく実施できる。
【0031】
本実施形態では、距離測定器42として、マイクロ波ないしミリ波の測定ビームを照射して高炉10に装入された装入物表面24の三次元形状を測定する装入物表面形状測定器40を兼用することで、新規に距離測定器を設置する必要がなく、実施が容易である。
本実施形態では、摩耗判定部52の制御によりシュート21を所定の測定姿勢に配置することで、高炉10の内部に導入された距離測定器42に対するシュート21の相対位置を一定にでき、常に同じ条件で測定距離Dtを測定することで、摩耗判定の精度を高めることができる。
【0032】
本実施形態では、摩耗判定部52が、複数の測定距離Dtを測定し、測定された測定距離Dtのうち最小のものを基準距離Drとして選択し、基準距離Drと他の測定距離Dtとの差分Wtに基づいてライナ32の表面の摩耗を判定するとしたため、比較判定の基準となる基準距離Drを容易に設定することができる。
【0033】
〔第2実施形態〕
図8から
図10には本発明の第2実施形態が示されている。
本実施形態は、前述した第1実施形態の旋回シュート内面摩耗検査装置9と基本構成が同様であり、共通の構成については重複する説明を省略し、以下には相違部分のみ説明する。
前述した第1実施形態では、シュート21の延長方向(軸線A3方向)に沿ってライナ32までの距離を測定し、同方向に沿ったライナ32の摩耗量の変化を検出していた。
これに対し、本実施形態では、シュート21の横断方向(軸線A2方向)に沿ってライナ32までの距離を測定し、同方向に沿ったライナ32の摩耗量の変化を検出する。
【0034】
本実施形態の装入装置20は、シュート21が、図示しないシュート回動機構により、その延長方向の軸線A3まわりに回動可能である。この場合のシュート21の回動角度は、360
度とされる。
さらに、本実施形態の摩耗判定部52は、シュート21を延長方向の軸線A3まわりに回動させることにより、測定ビーム44をライナ32の両側領域に対してもなるべく直角に照射させることができる。
【0035】
前述した
図4において、距離測定器42から測定ビーム44を照射しつつ、シュート21を軸線A3まわりに回動させることで、
図8に示すライナ32の内側表面を横断方向(軸線A2方向)に走査し、「−90度」方向から「0度」方向をへて「+90度」方向までのライナ32の表面までの距離を測定することができる。測定された距離は、
図9に示す展開図のグラフとして表すことができる。
図9のグラフでは、左端の「−90度」位置は、
図8のライナ32の「−90度」側の端部を示し、右側の「+90度」位置は、
図3のライナ32の「−90度」側の端部を示す。
【0036】
図9(A)のように、ライナ32が新品で摩耗がない場合、ライナ32の表面は新規表面321である。新規表面321に測定ビーム44を照射しつつシュート21を回動させることで、新規表面321の一方の端部から他方の端部にわたる範囲の複数の点で間欠的または連続的に基準距離Dsを測定することができる。得られた複数の基準距離Dsは、基準形状Psつまり新規表面321の一方の端部から他方の端部にわたる横断形状として記録することができる。
【0037】
図9(B)のように、装入物23が投入されることで、新規表面321が摩耗し、表面322,323のように変化する。表面322,323の摩耗は、通常姿勢でシュート21の底部となるシュート21の横断方向の中央部(0度方向の近辺)で顕著であり、通常姿勢でシュート21の側部となるシュート21の横断方向の両端部(−90度方向および+90度方向の近辺)では摩耗が少なくなる。
【0038】
図9(C)のように、摩耗が進んだ表面323に対して、測定ビーム44を照射しつつシュート21を回動させることで、表面323の一方の端部から他方の端部にわたる範囲の複数の点で間欠的または連続的に測定距離Dtを測定することができる。得られた複数の測定距離Dtは、測定形状Ptつまり表面323の一方の端部から他方の端部にわたる横断形状として記録することができる。
【0039】
摩耗判定部52においては、測定形状Ptに記録された複数の測定距離Dtに対して、基準形状Psから対応する地点の基準距離Dsを選択し、これらの差分Wt=Dt−Dsを計算することで、各点での摩耗を測定することができる。得られた差分Wtを、既定のライナ32の摩耗判定値Wsと比較し、これを超えていれば摩耗状態で交換等が必要と判定することができる。
これらの距離測定器42および摩耗判定部52により、本発明の旋回シュート内面摩耗検査装置9が構成されている。
【0040】
図10において、本実施形態では次のような動作を行う。
高炉10が新規築炉あるいは改修を経て試運転状態にあるとき(処理P10)、外部指令あるいは既定のタイミングにより、制御装置50は摩耗判定部52に制御を渡し、摩耗判定部52が基準形状測定動作(処理P11〜P16)を実行する。
【0041】
基準形状測定動作では、摩耗判定部52は、シュート21を所定の測定姿勢に配置する(処理P11)。
続いて、摩耗判定部52は、シュート21の延長方向である軸線A3上の測定位置を選択する(処理P12)。測定位置は、少なくともシュート21に張られたライナ32の1枚につき1箇所となるように配置する。
測定位置を選択したら、距離測定器42でライナ32の表面までの基準距離Dsを測定し(処理P13)、シュート21の内面の横断形状を示す基準形状Psとして記憶する(処理P14)。測定位置ごとの基準形状Psには、シュート21の横断方向の複数の点の基準距離Dsが、シュート21の横断方向の位置(軸線A3まわりの角度位置)とともに記憶される。
1つの測定位置についての基準形状Ps(複数の基準距離Dsを含む)の測定が済んだら、未測定の測定位置があるかを判定し(処理P15)、あれば次の測定位置を選択し(処理P12)、同様の処理P13〜P15を繰り返す。
【0042】
処理P15で未測定の測定位置がなくなったら、摩耗判定部52は、制御装置50に制御を返す。
高炉10が稼働状態(操業中または休風時も含む)にあるとき(処理P20)、制御装置50は摩耗検査の実行タイミングまで稼働を維持する(処理P21)。ユーザの指示あるいは定期実行時刻になったとき、制御装置50は摩耗判定部52に制御を渡し、摩耗判定部52が摩耗判定動作(処理P22〜P27)を実行する。
【0043】
摩耗判定動作では、摩耗判定部52は、シュート21を所定の測定姿勢に配置する(処理P22)。
続いて、摩耗判定部52は、シュート21の延長方向である軸線A3上の測定位置を選択し(処理P23)、選択した測定位置のライナ32の表面までの測定距離Dtを測定し(処理P24)、シュート21の内面の横断形状を示す測定形状Ptとして記憶する(処理P25)。測定位置ごとの測定形状Ptには、シュート21の横断方向の複数の点の測定距離Dtが、シュート21の横断方向の位置(軸線A3まわりの角度位置)とともに記憶される。
【0044】
摩耗判定部52は、得られた測定形状Ptの各点の測定距離Dtと、先に記憶しておいた基準形状Psの対応する点の基準距離Dsとを比較し、各点での差分Wt=Dt−Dsを計算し、各々の差分Wtのいずれかが予め設定されている摩耗判定値Wsより大きければ、その地点を含むライナ32が摩耗していると判定する(処理P26)。
摩耗判定部52は、1つの測定位置についての摩耗検査が済んだら、未測定の測定位置があるかを判定し(処理P27)、あれば次の測定位置を選択し(処理P23)、同様の処理P24〜P27を繰り返す。
処理P27で未測定の測定位置がなくなったら、摩耗判定部52は、制御装置50に制御を返す。
制御装置50は、高炉10の稼働(処理P20〜P21)に戻る。
【0045】
このような本実施形態によれば、前述した第1実施形態と同様な効果が得られるとともに、次のような効果が得られる。
【0046】
本実施形態では、測定距離Dtを測定する際に、シュート回動機構28でシュート21を軸線A3まわりに回動させることで、距離測定器42による測定対象部位をシュート21の内面を横断するように転移させることができる。例えば、距離測定器42からの測定ビーム44をシュート21の横断方向へ振ってシュート21の内面を走査した場合、シュート21の両端近傍では測定ビーム44が内面に対して浅い角度となり、摩耗判定には好ましくないことがある。これに対し、シュート21を回動させることで、測定ビーム44の交差角度が直角に近くなる領域を拡大でき、摩耗判定の精度を高めることができる。
シュート21を延長方向の軸線A3まわりに回動させる構成としては、既存の装入装置20に設置されているシュート回動機構28を利用することができ、装置の複雑化をまねくことは避けられる。
【0047】
本実施形態では、高炉10の稼働開始時などシュート21の内面が更新された状態、つまり摩耗を生じていないシュート21の内面つまり新品のライナ32の表面(
図9の新規表面321)までの距離を測定して基準距離Dsとして記憶しておき、稼働経過後に測定距離Dtを測定して基準距離Dsと比較するようにしたので、稼働により生じたライナ32の摩耗を適切に測定できる。
【0048】
〔第3実施形態〕
図11および
図12には本発明の第3実施形態が示されている。
本実施形態は、前述した第2実施形態の旋回シュート内面摩耗検査装置9と基本構成が同様であり、共通の構成については重複する説明を省略し、以下には相違部分のみ説明する。
前述した第2実施形態では、シュート21を軸線A3まわりに回転させつつ測定ビーム44を照射し、摩耗がないライナ32の基準距離Dsを測定しておき、摩耗したライナ32の測定距離Dtとの差分Wtにより摩耗を判定していた。
これに対し、本実施形態では、シュート21を軸線A3まわりに回転させつつ測定ビーム44を照射することは共通するが、測定した測定距離Dtのうち最小のものを基準距離Drとして選択し、この基準距離Drと他の測定距離Dtとの差分Wt=Dt−Drに基づいて摩耗を判定する。
【0049】
図11(A)のように、装入物23が投入されることで、新規表面321が摩耗し、表面322,323のように変化する(第2実施形態の
図9(B)と同様)。
図11(B)のように、摩耗が進んだ表面323に対して、測定ビーム44を照射しつつシュート21を回動させることで、表面323の一方の端部から他方の端部にわたる範囲の複数の点で間欠的または連続的に測定距離Dtを測定し、得られた複数の測定距離Dtは測定形状Ptとして記録しておく(第2実施形態の
図9(C)と同様)。
【0050】
ここで、表面323の摩耗は、通常姿勢でシュート21の底部となるシュート21の横断方向の中央部(0度方向の近辺)で顕著であり、測定距離Dtが相対的に大きくなる。
一方、通常姿勢でシュート21の側部となるシュート21の横断方向の両端部(−90度方向および+90度方向の近辺)では摩耗が少なくなり、測定距離Dtが小さくなる。
【0051】
図11(C)のように、摩耗判定部52において、測定形状Ptに記録された複数の測定距離Dtのうち、最小のものを基準距離Drとして選択する。通常はシュート21の横断方向の両端部で測定された測定距離Dtが該当する。
選択された基準距離Drと、測定形状Ptに記録された他の地点の測定距離Dtとの差分Wt=Dt−Drを順次計算し、得られた差分Wtのいずれかが既定のライナ32の摩耗判定値Wsを超えていれば、摩耗状態で交換等が必要と判定することができる。
【0052】
図12において、本実施形態では次のような動作を行う。
高炉10が稼働状態(操業中または休風時も含む)にあるとき(処理P30)、制御装置50は摩耗検査の実行タイミングまで稼働を維持する(処理P31)。ユーザの指示あるいは定期実行時刻になったとき、制御装置50は摩耗判定部52に制御を渡し、摩耗判定部52が摩耗判定動作(処理P32〜P38)を実行する。
【0053】
摩耗判定動作では、摩耗判定部52は、シュート21を所定の測定姿勢に配置する(処理P32)。
続いて、摩耗判定部52は、シュート21の延長方向である軸線A3上の測定位置を選択し(処理P33)、選択した測定位置のライナ32の表面までの測定距離Dtを測定し(処理P34)、シュート21の内面の横断形状を示す測定形状Ptとして記憶する(処理P35)。測定位置ごとの測定形状Ptには、シュート21の横断方向の複数の点の測定距離Dtが、シュート21の横断方向の位置(軸線A3まわりの角度位置)とともに記憶される。
【0054】
摩耗判定部52は、得られた測定形状Ptに記録された複数の測定距離Dtのうち、最小のものを基準距離Drとして選択する(処理P36)。
そして、選択された基準距離Drと、測定形状Ptに記録された他の地点の測定距離Dtとの差分Wt=Dt−Drを順次計算し、得られた差分Wtのいずれかが既定のライナ32の摩耗判定値Wsを超えていれば、摩耗状態で交換等が必要と判定する。
【0055】
摩耗判定部52は、1つの測定位置についての摩耗検査が済んだら、未測定の測定位置があるかを判定し(処理P38)、あれば次の測定位置を選択し(処理P33)、同様の処理P34〜P37を繰り返す。
処理P37で未測定の測定位置がなくなったら、摩耗判定部52は、制御装置50に制御を返す。
制御装置50は、高炉10の稼働(処理P30〜P31)に戻る。
【0056】
このような本実施形態によれば、前述した第2実施形態と同様な効果が得られるとともに、前述した第1実施形態と同様に測定距離Dtのうち最小のものを基準距離Drとすることで、第2実施形態における予め基準距離Dsを測定して基準形状Psとして記憶しておく処理が必要なく、第2実施形態よりも処理を簡素化できる。
【0057】
〔他の実施形態〕
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前記実施形態では、距離測定器42として、マイクロ波ないしミリ波の測定ビーム43を照射して高炉10に装入された装入物表面24の三次元形状を測定する装入物表面形状測定器40を兼用したが、異なる測定原理の非接触式距離測定器などを専用で設置してもよい。
前記実施形態では、シュート21の内側にライナ32を設置し、その表面をシュート21の内面としたが、ライナ32を省略し、シュート21自体の表面をシュート21の内面としてその摩耗検査を行ってもよい。
【解決手段】旋回シュート内面摩耗検査装置9は、高炉10の装入装置20に設置されたシュート21の内面に張られたライナ32の表面の摩耗を検査する装置であって、高炉10の内部に導入可能かつライナ32の表面までの測定距離を測定可能な非接触式の距離測定器42と、距離測定器42で測定された測定距離に基づいてライナ32の表面の摩耗を判定する摩耗判定部52と、を有する、距離測定器42として、マイクロ波ないしミリ波の測定ビームを照射して高炉10に装入された装入物表面24の三次元形状を測定する装入物表面形状測定器40を兼用できる。