(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接合層が、酸化ケイ素、窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミナ、五酸化タンタル、ムライト、五酸化ニオブおよび酸化チタンからなる群より選ばれた材質からなることを特徴とする、請求項1記載の接合体。
前記接合層が、酸化ケイ素、窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミナ、五酸化タンタル、ムライト、五酸化ニオブおよび酸化チタンからなる群より選ばれた材質からなることを特徴とする、請求項3記載の接合体の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来は、支持基板または圧電性材料基板の接合面の凹凸形状(たとえはRSmやRa)を測定し、これらを若干大きく制御することでスプリアス波の抑制を行っていた。しかし、接合面のRSmが同じであっても、スプリアス波を抑制できない場合もあり、こうした接合面表面の凹凸形状を制御するだけではスプリアス波を抑制するとはできないことがわかった。
【0006】
本発明の課題は、接合体の圧電性材料基板や支持基板の接合面の表面形状の制御では抑制できないスプリアス波を抑制する新たな構造を提供することである。
【0007】
本発明は、
支持基板、
ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムおよびニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウムからなる群より選ばれた材質からなる圧電性材料基板、および
前記支持基板と前記圧電性材料基板とを接合し、前記圧電性材料基板の主面に接している接合層
を備えている接合体であって、
接合前の前記支持基板の接合面と
接合前の前記圧電性材料基板の接合面との少なくとも一方をX線反射率法によって測定し、この際全反射時の信号強度を1としたとき、前記接合面からの反射光の相対強度Iが1.0×10
−4以上、1.0×10
−1以下の範囲内で下記式(1)によって近似されることを特徴とする。
【数1】
(式(1)において、
θは前記接合面に対するX線の入射角であり、
aは1.0×10
−5以上、2.0×10
−3以下であり、
bは5.0以上、9.0以下である。)
また、本発明は、
支持基板、
ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムおよびニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウムからなる群より選ばれた材質からなる圧電性材料基板、および
前記支持基板と前記圧電性材料基板とを接合する接合層
を備えている接合体を製造する方法であって、
接合前の前記支持基板の接合面と
接合前の前記圧電性材料基板の接合面との少なくとも一方をX線反射率法によって測定し、この際全反射時の信号強度を1としたとき、前記接合面からの反射光の相対強度Iが1.0×10
−4以上、1.0×10
−1以下の範囲内で前記式(1)によって近似され、
前記支持基板の接合面と前記圧電性材料基板の接合面とを前記接合層によって接合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明者は、支持基板や圧電性材料基板の接合面を鏡面化した後、機械加工によって粗面化し、その微構造を詳細に観察し、分析してみた。この結果、機械加工された後の接合面には、表面凹凸形状からは
推し量れないような微細な欠陥や膜変質が生じていることがわかった。こうした測定結果から、スプリアス波の抑制効果は、表面凹凸形状ではなく、圧電性材料基板の表面領域、接合層の表面領域における実効的な結晶学的特性および幾何学的特性によって制御するべきことが判明してきた。
【0009】
本発明者は、こうした知見を踏まえ、種々の加工方法や接合面の測定方法を検討した。この過程で、X線反射率法(XRR法、X-ray Reflection)に注目した。
【0010】
X線反射率法においては、X線を試料表面に極浅い角度で入射させ、その入射角対鏡面方向に反射した反射光のX線強度プロファイルを測定する。この測定で得られたプロファイルをシミュレーション結果と比較し、シミュレーションパラメータを最適化することによって、試料の膜厚および密度を決定する手法である。すなわち、X線反射率法は、本来は、薄膜からのX線反射を利用して薄膜の膜厚および密度を測定する方法である。これは、薄膜から反射された反射光は、薄膜表面の凹凸だけではなく、薄膜の深さ方向の情報(膜厚および密度)の情報を担持していることを意味している。
【0011】
本発明者は、X線反射率法を圧電性材料基板や支持基板の粗面化加工した後の接合面に対して適用することで、これら接合面の表面に近い領域の変質や密度変化の情報を取得し、これとスプリアス波の抑制効果との関係を検討した。
【0012】
すなわち、圧電性材料基板や支持基板の接合面を粗面化加工する。この後、接合面の表面領域における結晶状態の情報をX線反射率法によって取得する。具体的には、非常に低角でX線を接合面に入射させ、その反射光を測定する。ここで、X線の入射角をθとし、θを0°から徐々に変化させたときの反射光の相対強度Iを記録する。この際、相対強度Iは、全反射時の信号強度を1としたときの相対強度とする。この相対強度Iは、反射面が理想的に平坦な場合である場合には1×10
−4に比例して減衰することが知られている。しかし、接合面が平坦な鏡面である場合にはスプリアス波が発生するし、粗面化した場合にも相対強度が1×10
−4に近い比例係数を有する場合には、やはりスプリアス波が抑制できないことが判明した。
【0013】
このため、本発明者は、種々の粗面化処理を行った接合面についてそれぞれX線反射率法による測定を行い、スプリアス波の抑制度合いを測定した。この結果として、接合面からの反射光の相対強度Iが1.0×10
−4以上、1.0×10
−1以下の範囲内では、式(1)によって近似可能であることを見いだした。
【0014】
すなわち、たとえば
図1に模式的に示すように、入射角θが0.0からたとえば0.5°程度までは相対強度Iは約1にとどまり、その後に急激に低下した後、四角形で囲んだ領域(相対強度Iが1.0×10
−4以上、1.0×10
−1以下の範囲)では、以下の近似式が成り立つことがわかった。相対強度がこれよりも低くなってくると、対数目盛りで見てほぼ直線的になる。
【0015】
【数1】
【0016】
ここで、指数bは、5.0以上であり、係数a=1.0×10
−5〜2.0×10
−3で近似できる。これは、接合面が鏡面である場合に比べて、入射角θの増加につれて相対強度Iがより急激に減少することを意味している。また、これは、接合面の表面領域において結晶が変質したり、あるいは表面の微細凹凸以外の欠陥が生じていることを意味している。こうした場合に、スプリアス波が抑制されることを見いだした。
なお、指数bが9.0を超えると、スプリアス波がかえって増加するので、bを9.0以下とする必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施形態を詳細に説明する。
まず、
図2(a)に示すように、一対の主面1a、1bを有する支持基板1を準備する。次いで、主面(接合面)1aに加工Aを施すことによって、粗面化する。次いで、
図2(b)に示すように、支持基板1の主面1a上に接合層2を成膜する。この接合層2の表面2aを、鏡面を得る目的でCMP研磨する。次いで、
図2(c)に示すように、接合層2の表面2aに対して矢印Bのようにプラズマを照射し、表面活性化された接合面2bを得る。
【0019】
一方、
図3(a)に示すように、主面3aを有する圧電性材料基板3を準備する。次いで、圧電性材料基板3の主面に対して矢印Cのようにプラズマを照射することによって表面活性化し、活性化された接合面3bを形成する。
【0020】
次いで、支持基板上の接合層2の活性化された接合面2bと、圧電性材料基板3の活性化された接合面3bとを接触させ、直接接合することによって、
図4(a)に示す接合体5を得る。
【0021】
この状態で、圧電性材料基板3上に電極を設けても良い。しかし、好ましくは、
図4(b)に示すように、圧電性材料基板3の主面3cを加工して基板3Aを薄くし、薄板化された圧電性材料基板3Aを形成し、接合体5Aとする。9は加工面である。次いで、
図4(c)に示すように、接合体5Aの圧電性材料基板3Aの加工面9上に所定の電極10を形成し、弾性波素子6を得ることができる。
【0022】
また、接合層2と圧電性材料基板3との間に中間層を設けることができる。
図5、
図6はこの実施形態に係るものである。
本例では、
図2(a)に示すように、一対の主面1a、1bを有する支持基板1を準備する。次いで、主面(接合面)1aに加工Aを施すことによって、粗面化する。次いで、
図2(b)に示すように、支持基板1の主面1a上に接合層2を成膜する。この接合層2の表面を、鏡面を得る目的でCMP研磨する。次いで、
図2(c)に示すように、接合層2の接合面に対して矢印Bのようにプラズマを照射し、表面活性化された接合面2bを得る。
【0023】
一方、
図5(a)に示すように、主面3aを有する圧電性材料基板3を準備する。次いで、
図5(b)に示すように、圧電性材料基板3の主面(接合面)3a上に中間層12を形成し、中間層12の表面に対して矢印Cのようにプラズマを照射することによって表面活性化し、活性化された接合面12aを形成する。
【0024】
次いで、支持基板上の接合層2の活性化された接合面2bと、圧電性材料基板3上の中間層12の活性化された接合面12aとを接触させ、直接接合することによって、
図6(a)に示す接合体15を得る。
【0025】
この状態で、圧電性材料基板3上に電極を設けても良い。しかし、好ましくは、
図6(b)に示すように、圧電性材料基板3の主面3cを加工して基板3を薄くし、薄板化された圧電性材料基板3Aを形成し、接合体15Aとする。9は加工面である。次いで、
図6(c)に示すように、接合体15Aの圧電性材料基板3Aの加工面9上に所定の電極10を形成し、弾性波素子16を得ることができる。
【0026】
あるいは、接合層2を成膜した後、続けて接合層2の上に中間層12を成膜してもよい。この場合は、中間層12の表面に対してCMP加工を実施し、接合面(鏡面)を得る。得られた接合面に対してプラズマを照射し、活性化する。次いで支持基板の表面をプラズマ活性化した後、中間層の接合面と直接接合する。
【0027】
本発明においては、bを5.0以上とする。また、bは9.0以下であるが、7.0以下が更に好ましい。また、本発明においては、aは1.0×10
−5以上とするが、1.0×10
−4以上であることが好ましい。また、aは2.0×10
−3以下であるが、1.0×10
−3以下が更に好ましい。
【0028】
好適な実施形態においては、aとbとが以下の関係式(2)を満足する。
−0.713ln(a)+0.5≦b≦−0.713ln(a)+0.7 ・・・(2)
更に好適な実施形態においては、aとbとが以下の関係式(3)を満足する。
b=−0.713ln(a)+0.6 ・・・(3)
【0029】
X線反射率法による測定条件は以下のようにする。
測定装置: リガク製 SmartLab
測定条件
X線発生部: 対陰極 Cu
: 出力 45kV 200mA
検出部: 半導体検出器
入射光学系: Ge(111) 非対称ビーム圧縮結晶
ソーラースリット: 入射側 −
: 受光側 5.0゜
スリット: 入射側 IS=0.05 (mm)
: 長手制限 5 (mm)
: 受光側 RS1=0.1 RS2=0.1 (mm)
走査条件: 走査軸 2θ/ω
走査モード: 連続走査
走査速度: 0.2゜/min
ステップ幅: 0.002゜
解析範囲: 0.3〜3.0゜
【0030】
圧電性材料基板の接合面、支持基板の接合面のX線反射率法による測定結果を前記のように制御するには以下の加工方法を採用することが好ましい。
表面の粗化方法としては研削砥石を用いた研削加工、アルミナ、窒化珪素などの微少メディアを用いるブラスト加工といった機械加工法や、高速でイオンを衝突させるイオンビーム加工などが挙げられる。
【0031】
以下、本発明の各構成要素について順次述べる。
支持基板1の材質は特に限定されないが、好ましくは、シリコン、水晶、サイアロン、ムライト、サファイアおよび透光性アルミナからなる群より選ばれた材質からなる。これによって、弾性波素子6、16の周波数の温度特性を一層改善することができる。
【0032】
接合層、中間層の成膜方法は限定されないが、スパッタリング、化学的気相成長法(CVD)、蒸着を例示できる。
【0033】
接合層2の材質は、表面活性化処理が可能であれば特に限定されないが、金属酸化膜が好ましく、酸化ケイ素、窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミナ、五酸化タンタル、ムライト、五酸化ニオブおよび酸化チタンからなる群より選ばれた材質が特に好ましい。また、表面活性化処理方法は、用いる接合層の材質に応じて適切なものを選択することができる。こうした表面活性化方法としては、プラズマ活性化とFAB(Ar原子ビーム)を例示できる。
【0034】
中間層12の材質は、表面活性化処理が可能であれば特に限定されないが、金属酸化膜が好ましく、酸化ケイ素、窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミナ、五酸化タンタル、ムライト、五酸化ニオブおよび酸化チタンからなる群より選ばれた材質が特に好ましい。ただし中間層の材質には接合層とは異なるものを選ぶことが好ましい。
【0035】
接合層2の厚さは、本発明の観点からは、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることが更に好ましく、0.2μm以上であることが特に好ましい。また、接合層2の厚さは、3μm以下であることが好ましく、2μm以下が好ましく、1μm以下が更に好ましい。
【0036】
本発明で用いる圧電性材料基板3は、タンタル酸リチウム(LT)単結晶、ニオブ酸リチウム(LN)単結晶、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体とする。これらは弾性波の伝搬速度が速く、電気機械結合係数が大きいため、高周波数且つ広帯域周波数用の弾性表面波デバイスとして適している。
【0037】
また、圧電性材料基板3の主面3aの法線方向は、特に限定されないが、例えば、圧電性材料基板3がLTからなるときには、弾性表面波の伝搬方向であるX軸を中心に、Y軸からZ軸に32〜55°回転した方向のもの、オイラー角表示で(180°,58〜35°,180°)、を用いるのが伝搬損失が小さいため好ましい。圧電性材料基板1がLNからなるときには、(ア)弾性表面波の伝搬方向であるX軸を中心に、Z軸から-Y軸に37.8°回転した方向のもの、オイラー角表示で(0°,37.8°,0°)を用いるのが電気機械結合係数が大きいため好ましい、または、(イ)弾性表面波の伝搬方向であるX軸を中心に、Y軸からZ軸に40〜65°回転した方向のもの、オイラー角表示で(180°,50〜25°,180°)を用いるのが高音速が得られるため好ましい。更に、圧電性材料基板3の大きさは、特に限定されないが、例えば、直径100〜200mm,厚さが0.15〜1μmである。
【0038】
次いで、支持基板1上の接合層2の接合面、圧電性材料基板3の接合面、圧電性材料基板3上の中間層12の接合面に150℃以下でプラズマを照射し、接合面を活性化させる。本発明の観点からは、窒素プラズマを照射することが好ましいが、酸素プラズマを照射した場合にも、本発明の接合体を得ることが可能である。
【0039】
表面活性化時の圧力は、100Pa以下が好ましく、80Pa以下が更に好ましい。また、雰囲気は窒素のみであって良く、酸素のみであってよいが、窒素、酸素の混合物であってもよい。
【0040】
プラズマ照射時の温度は150℃以下とする。これによって、接合強度が高く、かつ結晶性の劣化のない接合体が得られる。この観点から、プラズマ照射時の温度を150℃以下とするが、100℃以下とすることが更に好ましい。
【0041】
また、プラズマ照射時のエネルギーは、30〜150Wが好ましい。また、プラズマ照射時のエネルギーと照射時間との積は、0.12〜1.0Whが好ましい。
プラズマ処理した圧電性材料基板の接合面と接合層の接合面を室温で互いに接触させる。このとき真空中で処理してもよいが、より好ましくは大気中で接触させる。
【0042】
アルゴン原子ビームによる表面活性化を行う際には、特開2014−086400に記載のような装置を使用してアルゴン原子ビームを発生させ、照射することが好ましい。すなわち、ビーム源として、サドルフィールド型の高速原子ビーム源を使用する。そして、チャンバーに不活性ガスを導入し、電極へ直流電源から高電圧を印加する。これにより、電極(正極)と筺体(負極)との間に生じるサドルフィールド型の電界により、電子eが運動して、アルゴン原子とイオンのビームが生成される。グリッドに達したビームのうち、イオンビームはグリッドで中和されるので、アルゴン原子のビームが高速原子ビーム源から出射される。ビーム照射による活性化時の電圧は0.5〜2.0kVとすることが好ましく、電流は50〜200mAとすることが好ましい。
【0043】
好適な実施形態においては、表面活性化処理前に、支持基板上の接合層の接合面、圧電性材料基板の接合面、圧電性材料基板上の中間層の接合面を平坦化加工する。各接合面を平坦化する方法は、ラップ(lap)研磨、化学機械研磨加工(CMP)などがある。また、平坦面は、Ra≦1nmが好ましく、0.3nm以下にすると更に好ましい。
【0044】
次いで、支持基板上の接合層の接合面と圧電性材料基板3の接合面あるいは中間層の接合面を接触させ、接合する。この後、アニール処理を行うことによって、接合強度を向上させることが好ましい。アニール処理時の温度は、100℃以上、300℃以下が好ましい。
【0045】
本発明の接合体5、5A、15、15Aは、弾性波素子6、16に対して好適に利用できる。すなわち、本発明の接合体、および圧電性材料基板上に設けられた電極を備えている、弾性波素子である。
具体的には、弾性波素子6、16としては、弾性表面波デバイスやラム波素子、薄膜共振子(FBAR)などが知られている。例えば、弾性表面波デバイスは、圧電性材料基板の表面に、弾性表面波を励振する入力側のIDT(Interdigital Transducer)電極(櫛形電極、すだれ状電極ともいう)と弾性表面波を受信する出力側のIDT電極とを設けたものである。入力側のIDT電極に高周波信号を印加すると、電極間に電界が発生し、弾性表面波が励振されて圧電性材料基板上を伝搬していく。そして、伝搬方向に設けられた出力側のIDT電極から、伝搬された弾性表面波を電気信号として取り出すことができる。
【0046】
圧電性材料基板3A上の電極10を構成する材質は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、金が好ましく、アルミニウムまたはアルミニウム合金がさらに好ましい。アルミニウム合金は、Alに0.3から5重量%のCuを混ぜたものを使用するのが好ましい。この場合、CuのかわりにTi、Mg、Ni、Mo、Taを使用しても良い。
【実施例】
【0047】
(実施例1)
図2〜
図4を参照しつつ説明した方法に従い、
図4(c)に示す弾性波素子6を作製した。
【0048】
具体的には、厚さ250μmの42YカットX伝搬LiTaO
3基板(圧電性材料基板)3の一方の主面3cを鏡面に研磨し、他方の主面3aを、GC#1000でラップ加工した。また、厚みが0.23mmの高抵抗(>2kΩ・cm)Si(100)基板(支持基板)1を用意した。基板サイズはいずれも150mmである。
【0049】
次いで、支持基板の接合面を粗面に加工した。本実施例では番手が#6000の研削砥石を用いて研削加工した。加工量はおおよそ3μmとした。
この支持基板の接合面のX線反射率法によるスペクトルを取得し、相対信号強度を(1)式で近似したところ、a=9.2×10
−4、b=5.55が得られた。
【0050】
次に、この支持基板1の接合面1a上に、酸化珪素膜2を0.7μm成膜し、その表面をCMP(化学機械的研磨加工)で約0.2um研磨し、平坦化した。次いで、圧電性材料基板3の接合面3bと酸化珪素膜2の接合面をそれぞれN2プラズマで活性化した後に、大気中で接合した。具体的には、研磨後の接合層の表面粗さをAFM(原子間力顕微鏡)で測定したところ、Raが0.4nmと接合に十分な鏡面が得られていることを確認した。
【0051】
次いで、圧電性材料基板3の接合面3bおよび接合層2の接合面2bをそれぞれ洗浄および表面活性化した。具体的には、純水を用いた超音波洗浄を実施し、スピンドライにより基板表面を乾燥させた。次いで、洗浄後の支持基板をプラズマ活性化チャンバーに導入し、窒素ガスプラズマで30℃で接合層の接合面を活性化した。また、圧電性材料基板3を同様にプラズマ活性化チャンバーに導入し、窒素ガスプラズマで30℃で表面活性化した。表面活性化時間は40秒とし、エネルギーは100Wとした。表面活性化中に付着したパーティクルを除去する目的で、上述と同じ超音波洗浄、スピンドライを再度実施した。
【0052】
次いで、各基板の位置合わせを行い、室温で両基板の活性化した接合面同士を接触させた。圧電性材料基板3側を上にして接触させた。この結果、基板同士の密着が広がる様子(いわゆるボンディングウェーブ)が観測され、良好に予備接合が行われたことが確認できた。次いで、接合強度を増すことを目的に、接合体を窒素雰囲気のオーブンに投入し、130℃で40時間保持した。
【0053】
加熱後の接合体の圧電性材料基板3の表面3cを研削加工、ラップ加工、およびCMP加工に供し、圧電性材料基板3Aの厚さが7μmとなるようにした。
【0054】
次いで、本発明の効果を確認するために、接合体の圧電性材料基板上に、金属アルミニウムからなる櫛歯電極を形成し、表面弾性波素子の共振子を作製した。その諸元を以下に示す。
IDT周期 6μm
IDT開口長 300um
IDT本数 80本
反射器本数 40本
【0055】
ネットワークアナライザで共振器の反射特性を測定したところ、
図7に示すように、反共振周波数より高い領域でほとんどスプリアスがみられなかった。スプリアス波の値は2.7dBであった。
これらの結果を表1に示す。
【0056】
(実施例2)
実施例1と同様にして表面弾性波素子の共振器を作製し、ネットワークアナライザで共振器の反射特性を測定した。ただし、支持基板の接合面の加工は、#8000の研削砥石を用いて研削加工を実施した。
この結果、支持基板の接合面のX線反射率法によるスペクトルを取得し、相対信号強度を(1)式で近似したところ、a=7.1×10
−4、b=5.80が得られた。スプリアス波の大きさは3.2dBであった。
【0057】
(実施例3)
実施例1と同様にして表面弾性波素子の共振器を作製し、ネットワークアナライザで共振器の反射特性を測定した。ただし、支持基板の接合面の加工は、窒化珪素粒を用いて基板全面をブラスト加工した。この時の加工量を見積もったところ、僅か10nmであった。
この結果、支持基板の接合面のX線反射率法によるスペクトルを取得し、相対信号強度を(1)式で近似したところ、a=2.2×10
−5、b=8.84が得られた。スプリアス波の大きさは4.8dBであった。
【0058】
(実施例4)
実施例1と同様にして表面弾性波素子の共振器を作製し、ネットワークアナライザで共振器の反射特性を測定した。ただし、支持基板の接合面の加工は、支持基板をイオン加工機に投入し、0.5keVで加速したArイオンを衝突させてその接合面を加工した。
この結果、支持基板の接合面のX線反射率法によるスペクトルを取得し、相対信号強度を(1)式で近似したところ、a=5.6×10
−5、b=7.63が得られた。スプリアス波の大きさは3.3dBであった。
【0059】
(実施例5)
実施例1と同様にして表面弾性波素子の共振器を作製し、ネットワークアナライザで共振器の反射特性を測定した。支持基板をイオン加工機に投入し、1.0keVで加速したArイオンを衝突させてその接合面を加工した。
この結果、支持基板の接合面のX線反射率法によるスペクトルを取得し、相対信号強度を(1)式で近似したところ、a=1.8×10
−3、b=5.12が得られた。スプリアス波の大きさは3.5dBであった。
【0060】
(比較例1)
実施例1と同様にして表面弾性波素子の共振器を作製し、ネットワークアナライザで共振器の反射特性を測定した。ただし,支持基板の接合面は鏡面としたので、Raは0.02nmであり、前記式(1)による近似ができなかった。反射特性は、
図8に示すように、スプリアスがみられた。スプリアス波の大きさは12dBであった。
【0061】
【表1】
【解決手段】接合体は、支持基板、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムおよびニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウムからなる群より選ばれた材質からなる圧電性材料基板、および支持基板と圧電性材料基板とを接合し、圧電性材料基板の主面に接している接合層を備える。支持基板の接合面と圧電性材料基板の接合面との少なくとも一方をX線反射率法によって測定し、この際全反射時の信号強度を1としたとき、接合面からの反射光の相対強度Iが1.0×10