特許第6951617号(P6951617)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6951617
(24)【登録日】2021年9月29日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】オルゴール装置
(51)【国際特許分類】
   G10F 5/06 20060101AFI20211011BHJP
   G10F 1/06 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
   G10F5/06
   G10F1/06 S
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-26470(P2018-26470)
(22)【出願日】2018年1月29日
(65)【公開番号】特開2019-133114(P2019-133114A)
(43)【公開日】2019年8月8日
【審査請求日】2020年9月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517336474
【氏名又は名称】株式会社サウンドボックス・マキ
(74)【代理人】
【識別番号】517336463
【氏名又は名称】伊坂 明彦
(72)【発明者】
【氏名】西牧 文紀
(72)【発明者】
【氏名】伊坂 明彦
【審査官】 菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−101775(JP,A)
【文献】 特開2017−003936(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3213739(JP,U)
【文献】 特開平09−101776(JP,A)
【文献】 特開2017−146573(JP,A)
【文献】 実開平07−026892(JP,U)
【文献】 中国実用新案第204808853(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10F 1/00−5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取軸を駆動手段としてカードをオルゴール本体に通過させ演奏を行うオルゴール装置において、巻取軸は、巻取クラッチ歯車を備え、かつ、ベルトを介してカードの巻取ローラと連動し、別に配置された巻戻軸は、巻戻クラッチ歯車を備え、かつ、上記ベルトとは異なるベルトを介してカードの巻戻ローラと連動し、更に別の駆動手段である動力装置は歯車を備え、巻取クラッチ歯車と、軸の両側にクラッチ側で対向する2つのクラッチ歯車のうちの一方とを連結しかつ、前記歯車と前期2つのクラッチ歯車のうちの他方とを連結し、更に、巻戻クラッチ歯車と、軸の両側に歯車側で対向する2つのクラッチ歯車のうちの一方とを連結し、かつ、前記歯車と前記2つのクラッチ歯車のうちの他方とを連結する事で、巻取軸と動力装置を連動させた切換手段により、巻取軸を駆動手段として選択出来る事を特徴とするオルゴール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードを交換することにより演奏曲目の変更が可能で尚且つ、長時間演奏が可能なオルゴール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
演奏曲目の変更が容易に出来、尚且つ、長時間演奏が可能なオルゴール装置として、カード式オルゴール装置があるが、この演奏する時のカードの巻取りや演奏終了後のカードの巻戻しをする駆動手段はモータ単独や、手動単独に限定されている。
【先行技術文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−101775
【特許文献2】特開2017−146573
【特許文献3】実公昭57−60072
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開平9−101775では、オルゴールの演奏時にテープがテープローラに巻き取られ、演奏が終了した後はテープを巻き戻すオルゴール装置が開示されているが、この駆動手段はハンドルを回転させ時に発生する手動に限定されている。尚、他の実施例として電動モータをケイシング内に設置して、ハンドル軸を駆動させる記述があるが、この場合はハンドル軸を手動で回転させる事は出来ないだけでなく、カードの巻戻しは手動に限定される。
【0005】
特開2017−146573では、オルゴールの演奏時にモータ動力でパンチカードを巻取り円筒に巻取り、演奏終了後は円筒外側に固定したハンドルで手動回転させパンチカードを巻き戻すオルゴール装置が開示されているが、その駆動手段は演奏時に於いてはモータ動力に、巻戻しは手動に限定されている。
【0006】
実公昭57−60072では、カセットに収納されたエンドレスの環状ベルトで演奏でき、カセット交換で曲目を変更できるオルゴールでは、ハンドルで回転ローラを回動する手段は手動に限定されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、駆動手段を状況に応じて選択して、オルゴール演奏とカード巻取りを連動して行い、演奏終了後にはカードの巻戻し事が出来、尚且つ手動の場合、駆動軸を左右どちらの方向に回転させても演奏とカードの巻取りが可能なカード式オルゴール装置である。
【発明の効果】
【0008】
駆動手段を自在に選択して演奏やカードの巻取り・巻戻しが出来るので、手動の場合は電源の心配がなく、いかなる状況でも利用出来るだけでなく、自在にスピードを変化させて演奏を楽しむ事ができる。又、長時間演奏の場合は、手動で演奏途中でもモータ動力に切り替える事で、身体に負担をかけずに演奏を楽しむ事ができる。更に駆動軸を左右どちらの方向に回転させても演奏や巻取りが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】カード式オルゴールの斜視図である。
図2】オルゴール本体の平面図である。
図3】本発明の切換え手段実施例の斜視図である。
図4】本発明の切換え手段実施例の断面側面図である。
図5】本発明の巻取り巻戻し手段実施例の斜視図である。
図6】本発明のクラッチの別の実施例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、カードをオルゴール本体に通過させながら演奏を行うオルゴール装置において、演奏時に於いてオルゴール本体を通りぬけたカードを巻き取るローラをオルゴール本体の前部に設置し、駆動手段のハンドルとモータ動力をオルゴール本体のローラと前記の巻取りローラを連動させ、複数のクラッチを切換え手段として介在させ、駆動手段に応じて回転伝達の接続・遮断を行う。
【0011】
演奏終了後にカードを巻戻すローラを軸受に対して着脱自在にオルゴール本体の後部に設置し、駆動手段のハンドルとモータ動力を前記の巻戻しローラに連動させ、複数のクラッチ歯車を切換え手段として介在させ、駆動手段に応じて回転伝達の接続・遮断を行う。
【0012】
オルゴールの演奏を手動で行う場合は、ハンドルを左右どちらの方向に回しても、カードには一定方向の推進力が発生し、尚且つカードの巻取りが出来る様、一対のクラッチを切換え手段として一方向回転伝達の制御を行う。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明に係わるカード式オルゴール装置の実施の一形態を示している。このオルゴール装置1は、オルゴール本体3を通過するカード22に推進力を与える送りローラ15とこれを手動や、モータ動力で駆動させる軸12、ハンドル7を備えている。手動の場合はハンドル7を回して行い、電動の場合は、動力収納箱4に収められたモータ動力で行うが(この内部構造の説明は省略)、手動とモータ動力の切換えや、軸12の左右の両方向の回転を一方向に変換する為の切換え手段14を備えている。更に、演奏・巻取りをスタートさせ、カードを巻戻す時のローラ17と従動プーリ6との回転伝達を制御し、動力のモータのスイッチを作動させる操作板40が支柱40cに支持されている。
(操作板40で動力のスイッチをON・OFFさせる図は省略する)
【0014】
取付台2にはローラ軸受18・19が固定され、ローラ16はこの軸受とプーリ軸5aで支持され、軸12に固定されている駆動プーリ8は、従動プーリ5とベルト10で連動され、更に、従動プーリ5はローラ16とプーリ軸5aで支持され、駆動バネ5bの摩擦力で接続されている。同様にローラ軸受20・21とプーリ軸6aがローラ17を支持し、軸13に固定の駆動プーリ9は、従動プーリ6とベルト11で連動され、ローラ17はプーリ軸6a、駆動バネ6bで接続されている。
【0015】
図2は、オルゴール本体3の平面図であるが、軸12はフレーム23に固定されている地板A24と地板C26で回転自在に支持され、クラッチ歯車A29、クラッチ歯車B30は冠歯車27と噛み合い、ピニオン28を介して送りローラ15と繋がっている。又、クラッチ歯車A29・クラッチ歯車B30と軸12は回転方向に応じて回転の接続・遮断が出来るように構成され、更に、駆動プーリ8はクラッチ歯車A29に一体固定されている。軸13は地板B25と地板C26で回転自在に支持され、クラッチ歯車B33とは一方向のみ回転が伝達され、又、駆動プーリ9はクラッチ歯車B33に一体固定されている。
【0016】
図3図4は切換え手段の実施例である。クラッチ歯車A29は凹部29bが設けられ、ラチェット29aが嵌入し、軸12とラチェット29aは一体固定されている。軸12、ラチェット29aが右回転(矢印方向)すると、腕先端が凹部29bに設けられた段差に係合し、クラッチ歯車A29と接続されて冠歯車27に回転が伝達される様にクラッチが構成されている。尚、クラッチ歯車A29では、左回転させた時だけ軸12と接続して回転が伝達される。
【0017】
クラッチ歯車A29、A32、A34及びB30、B31、B33、B35の部品構成・機能は全く同じであり、軸12にはクラッチ歯車A29とB30が、軸37にはクラッチ歯車A32とB31が、同じく軸38にはクラッチ歯車A34とB35が対向して配置されている。従ってクラッチ歯車B30、B31、B35は、軸12、37、38が左回転する時だけ軸と接続して回転伝達される。更に、クラッチ歯車A32とB35は、モータ動力からの回転を伝達する動力歯車36と噛み合い、軸12、13へ動力伝達の接続・遮断を行う。
【0018】
図5は巻取り手段と巻戻し手段の実施例である。巻取りローラ16は、フランジ16cと16dを両端に一体固定された円筒16aで構成され、ローラ軸受18、ローラ軸16fにより回転自在に支持されている。又、ローラ軸受19、プーリ軸5aが軸受孔16eで回転自在に支持され、プーリ軸5aには駆動バネ5bが固定され、フランジ16dを押している。又、円筒16aの外周部には、カード22の先端部を固定する為の板バネ16bが固定されている。
【0019】
巻戻しローラ17は、円筒17aの片側にはフランジ17dが一体固定されているが、他端のフランジ17cは円筒17aとは手で分離可能な状態で構成され、フランジ17cはローラ軸受20、スライド軸17hにより、軸受孔17gで支持される同時に、圧縮バネ17iでスライド軸17hがフランジ17cを押している。反対側では、ローラ軸受21、プーリ軸6aが、軸受孔17eでフランジ17dを回転自在に支持し、駆動バネ6bがプーリ軸6aに一体固定されている。更に従動プーリ6に設けられた溝6cに、レバー40bが係合しており、操作板40の作動によりレバー40bが支柱40cを支点にして回動すると、駆動バネ6bがスライドして駆動孔17fに対して嵌入・離脱する。又、17aの外周部には、カード22の後端部を固定する為の板バネ17bが固定されている。
【0020】
以下、オルゴール装置1の作動について説明する。最初、ローラ17側のスライド軸17hを引っ張りフランジ17c、dが両サイドに固定されている円筒17aを取り外す。次にフランジ17cを外してロール状のカード22を円筒17aに押しこみ装着後、再びスライド軸17hをスライドさせて元の位置にセットする。この時、操作板40が図1のSの位置に有り、駆動バネ6bが駆動孔17fから離脱しており、ローラ17は回転自在状態なので、カード22の先端を取り出し、オルゴール本体3に差し込みながらハンドル7を回転させると、送りローラ15も回転してカード22に推進力が発生し、オルゴール本体3に挿入される。さらハンドル7を回転させ、カード22の先端をローラ17の板バネ17bまで送り、先端をこの板バネに差し込む事により演奏準備が完了する。尚この時、ハンドル7を左右どちらの方向に回転させても、クラッチ歯車A29、B30と軸12の作用により、冠歯車27は図3の矢印方向に回転し、カード22は前方に送られる。同時に、クラッチ歯車A29には駆動プーリ8が固定され、ベルト10により従動プーリに連動してローラ16が回転するので、演奏している間、カード22はローラ16に巻き取られる。尚、カード22の送りスピードよりローラ16の回転速度を速く設定してあるので、押えバネ5bの働きによりローラ16には摩擦伝達力が発生し、カード22はローラ16に確実に巻き取られる。
【0021】
以下、モータ動力で作動させる場合を説明する。図1で操作板40をPの位置まで回動させるとモータのスイッチがONとなり、動力歯車36が右回転する。するとこの歯車と噛み合っているクラッチ歯車A32は左回転し、軸37と接続状態となり軸37は左回転し、クラッチ歯車B31は接続されて左回転する。この為、クラッチ歯車B31と噛み合っているクラッチ歯車A29は右回転して冠歯車27を矢印方向に回転させる。反対側で動力歯車36と噛み合っているクラッチ歯車B35は左回転するので回転伝達が遮断され軸13、駆動プーリ9は回転しない。
【0022】
次に演奏が終了し、カード22を手動で巻戻す場合を説明する。図1で操作板40をRの位置まで回動させ、レバー40bにより駆動プーリ6、駆動バネ6bがスライドして駆動孔17fと係合させる。次にローラ16に巻き取られているカード22の終端部を持ち、オルゴール本体3の上方を渡してローラ17の方向に引っ張ってきて、板バネ17bで固定する。ハンドル7を軸13に付け替え、左に回転するとクラッチ歯車B33、駆動プーリも左回転し、ベルト11と連動している従動プーリ6、ローラ17も左回転してカード22が巻戻される。尚、カード22が巻戻される時、ローラ16は駆動バネ5bで押されて摩擦接続しているだけなので、強制的に左方向に回転させられる。
【0023】
以下、モータ動力でカード22を巻戻す場合であるが、前記と同じ要領でカード22の終端部をローラ17に固定した後、操作板40をRの位置のままでモータスイッチをONにすると、動力歯車36が左回転する。するとこの歯車と噛み合っているクラッチ歯車B35は右回転し、軸38とは接続状態となりクラッチ歯車A34も右回転し、この結果クラッチ歯車B33、駆動プーリ9も一体で左回転してローラ17がカード22を巻戻す。この時、反対側で動力歯車36と噛み合っているクラッチ歯車A32は右回転するので回転伝達が遮断され軸12、駆動プーリ8は回転しない。円筒17aに巻き取られたカード22を交換する場合は、スライド軸17hを引っ張ってスライドさせ、取り外した後、フランジ17cを外し、ロール状のカード22を円筒17aから抜き取り後、オルゴール装置1の作動で先述の通りの手順で別のカードをセットする。
【0024】
以上は本発明の一実施例であり、この実施例に限定されるものではない。例えば切換え手段の構成部品であるクラッチ歯車の別の実施例は図6で示す様に、クラッチ歯車41には環状部41aが設けられ、軸38に固定されている受板41bが嵌入している。受板41bは凹部41dを有し、その中にコロ41cが嵌入しており、軸38やクラッチ歯車41の回転方向に応じて、回転伝達の接続・遮断を行う。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によるカード式オルゴール装置は、多様な顧客ニーズを1台で対応出来、手指など身体のリハビリや、長時間音楽を聴くことで癒し効果が得られる音楽療法により、医療福祉機器への展開も可能であるだけでなく、長時間演奏用の長いカードで、音楽編曲の自由度も拡大できるので、より広い分野での商品展開を図り、オルゴールの存在価値をより一層高める事ができる。
【符号の説明】
【0026】
1 オルゴール装置
2 取付台
3 オルゴール本体
4 動力収納箱(駆動手段:モータ)
5 従動プーリ(巻取り)
5a プーリ軸
5b 駆動バネ
6 従動プーリ(巻戻し)
6a プーリ軸
6b 駆動バネ
6c 溝
7 ハンドル(駆動手段:手動)
8 駆動プーリ(巻取り)
9 駆動プーリ(巻戻し)
10 ベルト
11 ベルト
12 軸
13 軸
14 切換え手段
15 送りローラ
16 ローラ(巻取り手段)
16a 円筒
16b 板バネ
16c フランジ
16d フランジ
16e 軸受孔
16f ローラ軸
17 ローラ(巻戻し手段)
17a 円筒
17b 板バネ
17c フランジ
17d フランジ
17e 軸受孔
17f 駆動孔
17g 軸受孔
17h スライド軸
17i 圧縮バネ
18 ローラ軸受
19 ローラ軸受
20 ローラ軸受
21 ローラ軸受
22 カード
23 フレーム
24 地板A
25 地板B
26 地板C
27 冠歯車
28 ピニオン
29 クラッチ歯車A(切換え手段〜35)
29a ラチェット
29b 凹部
30 クラッチ歯車B
31 クラッチ歯車B
32 クラッチ歯車A
33 クラッチ歯車B
34 クラッチ歯車A
35 クラッチ歯車B
36 動力歯車
37 軸
38 軸
39 動力軸
40 操作板
40a 支柱
40b レバー
40c 支柱
41 クラッチ歯車
41a 環状部
41b 受板
41c コロ
41d 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6