特許第6951618号(P6951618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6951618
(24)【登録日】2021年9月29日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】加飾品及び加飾品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B44C 5/08 20060101AFI20211011BHJP
   B44F 1/06 20060101ALI20211011BHJP
   G09F 13/04 20060101ALI20211011BHJP
   G09F 13/18 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
   B44C5/08 Z
   B44F1/06
   G09F13/04 J
   G09F13/18 D
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-99844(P2016-99844)
(22)【出願日】2016年5月18日
(65)【公開番号】特開2017-205947(P2017-205947A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【弁理士】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】余郷 広
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−212006(JP,A)
【文献】 特開2012−155143(JP,A)
【文献】 特開2014−153693(JP,A)
【文献】 特開2009−050595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 5/08
B44F 1/06
G09F 13/04
G09F 13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面側から照射される光源からの光を表面側に放出する加飾品であって、
透光性を有する透明基材と、
該透明基材の前記裏面側に塗装された第1装飾部を有する裏面層と、
前記透明基材の前記表面側に塗装された第2装飾部と、該第2装飾部を覆うように塗布されたトップクリア部とを有する表面層と、を備え、
前記裏面層は、前記光源から照射される光を前記表面側に導く導光部を有し、
前記表面層は、前記透明基材と前記第2装飾部の間に設けられ、光反射性を有する反射層及び光を乱反射させるための反射促進層を有し、
前記トップクリア部は、前記透明基材に対向する位置において前記第2装飾部が塗装されていない部位に形成され、前記導光部から前記透明基材を通った光を前記表面側に放出する放出部を有し、
前記第2装飾部は、前記導光部の少なくとも一部に表裏方向において重なる位置に形成されており、前記表裏方向において、前記第1装飾部と前記導光部とにおける前記表裏方向に垂直な方向の境界の近傍に形成されており、
前記放出部は、前記表裏方向に垂直な方向において前記第2装飾部に対向する部位に形成され、かつ、前記第1装飾部に前記表裏方向において重なる位置に形成されていることを特徴とする加飾品。
【請求項2】
前記放出部は、樹脂材料からなり、
前記放出部は、前記表裏方向に垂直な方向において前記反射層及び前記反射促進層に対向する部位に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の加飾品。
【請求項3】
前記導光部の一部は、
前記透明基材に対向する位置において前記第1装飾部が塗装されてない部位に形成され、
前記表裏方向に垂直な方向において前記第1装飾部に対向する部位に形成され、かつ、
前記第2装飾部に前記表裏方向において重なる位置に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の加飾品。
【請求項4】
前記透明基材の裏面側であって前記導光部の一部に面する部分に設けられ、光を乱反射させるための第2反射促進層をさらに備えていることを特徴とする請求項3に記載の加飾品。
【請求項5】
前記第2装飾部の一部は、前記境界の少なくとも一部に、前記表裏方向において重なる位置に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の加飾品。
【請求項6】
前記境界は、前記第2装飾部の外周よりも内側に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の加飾品。
【請求項7】
前記放出部は、UV塗料から成るものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の加飾品。
【請求項8】
前記第1装飾部は、遮光性を有し、
前記第2装飾部は、前記表面側に蒔絵処理が施されたものであって、
前記第2装飾部は、遮光性及び光反射性を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の加飾品。
【請求項9】
裏面側から照射される光源からの光を表面側に放出する加飾品の製造方法であって、
透光性を有する透明基材を用意し、
該透明基材の前記裏面側に、第1装飾部を塗布して裏面層を形成し、
前記透明基材の前記表面側に、第2装飾部と、該第2装飾部を覆うようにトップクリア部とを塗布して表面層を形成し、
前記裏面層を形成する際に、前記第1装飾部を塗装しないことで、前記光源から照射される光を前記透明基材のある前記表面側に導く導光部を形成し、
前記表面層を形成する際に、
前記透明基材と前記第2装飾部の間に、光反射性を有する反射層及び光を乱反射させるための反射促進層を形成し、かつ、
前記透明基材に対向する位置において前記第2装飾部が塗装されていない部位に、前記トップクリア部の一部であって、前記導光部から前記透明基材を通った光を前記表面側に放出する放出部を形成し、
前記表面層を形成する際に、表裏方向において、前記第1装飾部と前記導光部とにおける前記表裏方向に垂直な方向の境界の近傍であって、前記導光部の少なくとも一部に前記表裏方向において重なる位置に、前記第2装飾部を塗布することとし、
前記表面層を形成する際には、前記表裏方向に垂直な方向において前記第2装飾部に対向する部位であって、前記第1装飾部に前記表裏方向において重なる位置に前記放出部を形成することを特徴とする加飾品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾品及び加飾品の製造方法に係り、特に、光を利用した加飾品、及び当該加飾品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光を用いた加飾品であるディスプレイ装置として、特許文献1には、アクリル板の裏面に印刷された3D画像に、裏面からLEDによって照明を当てることによって、アクリル板の表面に立体的に画像を浮かび上がらせるディスプレイ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−120340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたディスプレイ装置の光の照明方法に係る技術的な思想としては、アクリル板の裏面に印刷されたものを、裏面から照明を当てることによって、単にアクリル板の表面側に浮かび上がらせるというものであった。このため、アクリル板に3D画像が印刷されていなければ、単に裏面側の画像(装飾部)が表面側に投影されるのみであり、意匠的効果は低かった。
一方で、日本の伝統工芸である漆等を用いた塗装品に係る分野においては、新しい意匠的な魅力を創出することが求められていた。
【0005】
本願発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、光による意匠的効果が高められた塗装による装飾部を有する加飾品、及び加飾品の製造方法を提供することにある。
また、光を照射しない状態においても装飾部を有することで見栄えをよくすることが可能な加飾品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明に係る加飾品によれば、裏面側から照射される光源からの光を表面側に放出する加飾品であって、透光性を有する透明基材と、該透明基材の前記裏面側に塗装された第1装飾部を有する裏面層と、前記透明基材の前記表面側に塗装された第2装飾部と、該第2装飾部を覆うように塗布されたトップクリア部とを有する表面層と、を備え、前記裏面層は、前記光源から照射される光を前記表面側に導く導光部を有し、前記表面層は、前記透明基材と前記第2装飾部の間に設けられ、光反射性を有する反射層及び光を乱反射させるための反射促進層を有し、前記トップクリア部は、前記透明基材に対向する位置において前記第2装飾部が塗装されていない部位に形成され、前記導光部から前記透明基材を通った光を前記表面側に放出する放出部を有し、前記第2装飾部は、前記導光部の少なくとも一部に表裏方向において重なる位置に形成されており、前記表裏方向において、前記第1装飾部と前記導光部とにおける前記表裏方向に垂直な方向の境界の近傍に形成されており、前記放出部は、前記表裏方向に垂直な方向において前記第2装飾部に対向する部位に形成され、かつ、前記第1装飾部に前記表裏方向において重なる位置に形成されていることにより解決される。
【0007】
上記構成によれば、第2装飾部が、導光部の少なくとも一部に表裏方向において重なる位置に形成されており、表裏方向において、第1装飾部と導光部とにおける表裏方向に垂直な方向の境界の近傍に形成されていることで、光源から照射される光を、第2装飾部を避けた放出部から放出させることで、表面層から放出される光量及び放出箇所が制限される。そして、第2装飾部が光に照射されることで立体的に浮き出るようになり、意匠的効果が高められた加飾品を提供することができる。
【0008】
また、前記放出部は、樹脂材料からなり、前記放出部の一部は、前記表裏方向に垂直な方向において前記反射層及び前記反射促進層に対向する部位に形成されていると好ましい。
また、前記導光部の一部は、前記透明基材に対向する位置において前記第1装飾部が塗装されてない部位に形成され、前記表裏方向に垂直な方向において前記第1装飾部に対向する部位に形成され、かつ、前記第2装飾部に前記表裏方向において重なる位置に形成されていると好ましい。
また、前記透明基材の裏面側であって前記導光部の一部に面する部分に設けられ、光を乱反射させるための第2反射促進層をさらに備えていると好ましい。
【0009】
また、前記第2装飾部の一部は、前記境界の少なくとも一部に、前記表裏方向において重なる位置に形成されていると好ましい。
上記構成によれば、第2装飾部の一部が、境界の少なくとも一部に重なるように形成されていることで、その部分において、境界の内側にある導光部から直接光が表面側に放射されることを防止でき、第2装飾部を間接的に照射することで間接光による意匠効果を高めることができる。
また、前記境界は、前記第2装飾部の外周よりも内側に形成されていてもよい。
上記構成によれば、光源からの照射光が表面側から直接目に触れることを抑制して間接照明とすることで意匠効果を高めることができる。また、光源から光が照射されていない状態において、第1装飾部と導光部との境界が表面側に露出することを防ぎ、見栄えをよくすることができる。
【0010】
また、前記放出部は、UV塗料から成るものであると好ましい。
上記構成によれば、放出部がUV塗料から成るものであることで、乾燥時間を短くして放出部を厚塗りすることができるため、放出部を形成するための塗布回数を抑えることができる。さらに、UV塗料は、紫外線を照射することにより乾燥時間を短くできるため、放出部又は導光層の厚さにムラが生じることを抑制でき、これらを薄く形成することができる。
【0011】
また、前記第1装飾部は、遮光性を有するものであってもよい。
上記構成によれば、第1装飾部が光の透過を抑制することで、第2装飾部を一層浮き出させることができる。
【0012】
また、前記第2装飾部は、前記表面側に蒔絵処理が施されたものでもよい。
上記構成によれば、第2装飾部が、表面側に蒔絵処理が施されたものであることで、放出部から放出される光によって蒔絵処理を目立たせ、意匠性をより高めることができる。
【0013】
また、前記第2装飾部は、遮光性を有するものであってもよい。
上記構成によれば、第2装飾部の光の透過を抑制することで、加飾品の表面側に施された蒔絵処理等を一層浮きださせることができる。
【0014】
また、前記第2装飾部は、光反射性を有するものであってもよい。
上記構成によれば、第2装飾部が光反射性を有することで、第2装飾部の他の部位である放出部から放出させる光量を増大させることができる。
【0015】
また、前記課題は、本発明に係る加飾品の製造方法によれば、裏面側から照射される光源からの光を表面側に放出する加飾品の製造方法であって、透光性を有する透明基材を用意し、該透明基材の前記裏面側に、第1装飾部を塗布して裏面層を形成し、前記透明基材の前記表面側に、第2装飾部と、該第2装飾部を覆うようにトップクリア部とを塗布して表面層を形成し、前記裏面層を形成する際に、前記第1装飾部を塗装しないことで、前記光源から照射される光を前記透明基材のある前記表面側に導く導光部を形成し、前記表面層を形成する際に、前記透明基材と前記第2装飾部の間に、光反射性を有する反射層及び光を乱反射させるための反射促進層を形成し、かつ、前記透明基材に対向する位置において前記第2装飾部が塗装されていない部位に、前記トップクリア部の一部であって、前記導光部から前記透明基材を通った光を前記表面側に放出する放出部を形成し、前記表面層を形成する際に、表裏方向において、前記第1装飾部と前記導光部とにおける前記表裏方向に垂直な方向の境界の近傍であって、前記導光部の少なくとも一部に前記表裏方向において重なる位置に、前記第2装飾部を塗布することとし、前記表面層を形成する際には、前記表裏方向に垂直な方向において前記第2装飾部に対向する部位であって、前記第1装飾部に前記表裏方向において重なる位置に前記放出部を形成することを特徴とすることにより解決される。
【0016】
上記構成によれば、表面層を形成する際に、表裏方向において、第1装飾部と導光部とにおける表裏方向に垂直な方向の境界の近傍であって、導光部の少なくとも一部に表裏方向において重なる位置に、第2装飾部を塗布するようにして加飾品を製造することで、製造された加飾品における、表面層から放出される光量及び放出箇所を制限することができる。そして、第2装飾部が光に照射されることで立体的に浮き出るようになり、意匠的効果が高められた加飾品の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、光による意匠的効果が高められた塗装による装飾部を有する加飾品を提供することができる。
また、本発明によれば、第2装飾部を間接的に照射することで間接光による意匠効果を高めることができる。
また、本発明によれば、光源から光が照射されていない状態において、加飾品の表面側に第1装飾部と導光部との境界が露出することを防ぎ、見栄えをよくすることができる。
また、本発明によれば、表面層を形成するための塗布回数を抑えることができる。
また、本発明によれば、第2装飾部を一層浮き出させることができる。
また、本発明によれば、光の有無に応じた意匠性をより効果的に変化させることができる。
また、本発明によれば、放出部から放出される光によって蒔絵処理を目立たせ、意匠性をより高めることができる。
また、本発明によれば、第2装飾部の他の部位である放出部から放出させる光量を増大させることができる。
また、本発明によれば、光による意匠的効果が高められた塗装による装飾部を有する加飾品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る加飾品の表面を示す図であって、光が照射されていない状態を示す平面図である。
図2図1のII-II断面を示す断面図である。
図3図1に対応する図であって、光が照射されている状態を示す平面図である。
図4】第1変形例に係る加飾品の表面を示す図であって、光が照射されていない状態を示す平面図である。
図5図4のV-V断面を示す断面図である。
図6図4に対応する図であって、光が照射されている状態を示す平面図である。
図7】加飾品の光演出を示す平面図である。
図8】第2変形例に係る加飾品の表面を示す図であって、光が照射されていない状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、加飾品及び加飾品の製造方法に関するものであり、特に、光を利用した加飾品及び当該加飾品の製造方法に関するものである。
以下において、本発明の実施形態に係る加飾品1b,1cについて説明する。
なお、以下に説明する実施形態において、蒔絵部5b及びトップクリア部5cがある側(図2における上側)を、加飾品1b,1cの表面側、背景塗装部3aがある側(図2における下側)を加飾品1b,1cの裏面側として説明する。
また、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0020】
(加飾品の構成について)
まず、本実施形態に係る加飾品1bの構成について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は、本発明の実施形態に係る加飾品1bの表面を示す図であって、光が照射されていない状態を示す平面図、図2は、図1のII-II断面を示す断面図である。
本実施形態に係る加飾品1bは、後述する蒔絵部5bによって図1に示すように金魚の装飾が施されたものである。この金魚の装飾がされた蒔絵部5bは、裏面側にある後述するLED8から出射される光によって、図3に示して後述するように、背景塗装部3aから浮き出るように形成されている。
【0021】
本実施形態に係る加飾品1bは、積層構造を有し、詳細には図2に示すように、透明基材2xと、透明基材2xの裏面に塗布された裏面層23と、透明基材2xの表面に塗布された表面層25と、から主に構成されている。
【0022】
透明基材2xは、透光性を有するポリカーボネートから成る約3mm程度の厚さを有する板材であり、背景塗装部3aの塗布対象、及び後述する反射促進層5dの接着対象となるベース部材である。特に、透明基材2xを薄くし過ぎると剛性が低くなる。そして、透明基材2xが撓んだ場合に、後述する背景塗装部3aや蒔絵部5bに割れ等の発生を抑制する必要がある。このため、透明基材2xは、約3mm以上の厚さを有すると好ましい。
一方で、背景塗装部3aや蒔絵部5bに影響を及ぼさないために、透明基材2xの変形が制限されるように透明基材2xが他の部材に接着や固定されていれば、透明基材2xを薄くしてフィルム状にすることも可能である。
【0023】
なお、透明基材2xは、透光性を有するのであれば、ポリカーボネートから成るもの限定されない。例えば、透明基材2xは、アクリル、AES(Acrylonitrile Ethylene Styrene)、PVC(Poly Vinyl Chloride)等の樹脂フィルム又はガラス板等であってもよい。
【0024】
裏面層23は、透明基材2xの裏面側に塗布される有色の背景塗装部3aと、背景塗装部3aと同様の高さ位置にあり、背景塗装部3aが塗布されていない空間である導光部2yと、から構成されている。背景塗装部3aは、本発明に係る第1装飾部に相当し、有色の塗料によって塗装された部位であり、約1mm以下の膜厚を有する。
【0025】
表面層25は、透明基材2xの表面側に接着された反射促進層5dと、反射促進層5dの表面側に接着された遮光/反射層5aと、遮光/反射層5aの表面側に形成された蒔絵部5bと、遮光/反射層5a及び蒔絵部5bを覆うように塗布されたトップクリア部5cと、から構成されている。ここで、遮光/反射層5a及び蒔絵部5bは、本発明に係る第2装飾部に相当する部分である。
【0026】
遮光/反射層5aは、遮光性及び光反射性を有する白色のウレタン塗装等が施された塗装部であり、導光部2yを通って加飾品1bの表面側に放出される光のうち、蒔絵部5bを通る光を遮断し、反射するためのものである。遮光/反射層5aは、遮光性を有し、蒔絵部5bに向かう光を遮断することで、蒔絵部5bの周囲にある後述する放出部5xを通る光に対するコントラストを高めることができ、蒔絵部5bを浮き立たせることが可能となる。
さらに、遮光/反射層5aは、光反射性を有し、蒔絵部5bに向かう光を反射することで、蒔絵部5bの周囲にある後述する放出部5xを通る光の量を増大させることができ、蒔絵部5bを浮き立たせることが可能となる。
【0027】
遮光/反射層5aは、透明基材2x側ではない表面層25の露出面側である表面側から導光部2yを覆うように形成されている。厳密には、遮光/反射層5aは、背景塗装部3aと導光部2yとの表裏方向に垂直な方向の(閉空間である)境界10cよりも外側にはみ出すように形成されている。換言すると、背景塗装部3aと導光部2yとの境界10cは、遮光/反射層5a(蒔絵部5b)の外周よりも内側に位置するよう、加飾品1bの表裏方向において遮光/反射層5aに重なる位置に形成されている。
【0028】
蒔絵部5bは、本実施形態においては、金魚の装飾を形成するものであり、遮光/反射層5a上に塗布された、例えば自然漆の部分に金箔等によって蒔絵処理が施された部位であり、約1mm以下の膜厚を有する。
トップクリア部5cは、例えばUV塗料を含んで透光性を有する樹脂材料から成る。トップクリア部5cは、遮光/反射層5a及び反射促進層5dの周面並びに蒔絵部5bの底面以外の面を覆って保護し、かつ表面を平滑化するものである。そして、トップクリア部5cにおける遮光/反射層5a、蒔絵部5b及び反射促進層5dに表裏方向において交差しない部分は、導光部2yを通る光を表面側に放出する放出部5xとして機能する。このように、UV塗料を用いて、紫外線を照射することによって、乾燥時間を低減させて厚塗り可能となる。このため、トップクリア部5cの塗り回数を減らして製造工数を削減することができる。さらに、UV塗料は、紫外線を照射することにより乾燥時間を短くできるため、トップクリア部5cの厚さにムラが生じることを抑制でき、これらを薄く形成することができる。
【0029】
反射促進層5dは、光を乱反射させるための層であり、その裏面側が梨地状に表面処理されている。このように反射促進層5dによって、蒔絵部5bの下方において遮光するだけではなく、光を反射することで、蒔絵部5bの周囲にある放出部5xから放出される光を増大させることができる。
なお、反射促進層5dに透光性を有するものを採用した上で、反射促進層5dを透明基材2xの裏面側であって、導光部2yに面する部分に設けるようにしてもよい。このように、反射促進層5dを透明基材2xの裏面側にも設けることで、放出部5xから放出される光の量を増大させることができる。
【0030】
そして、加飾品1bにおける背景塗装部3aの裏面に対向する部位には、導光部2y及び透明基材2x等を介して、蒔絵部5bが背景塗装部3aから浮かび上がるように光を当てるための本発明に係る光源としての複数のLED8が取り付けられている。本実施形態に係るLED8は、透明基材2x及び背景塗装部3aに平行に延在する層状に配設された部材である。
なお、図2においては、背景塗装部3aとLED8との間に空間が形成されている。この空間を形成するか、背景塗装部3aとLED8とが直接当接していることで空間を形成しないかは、加飾品1bにおける背景塗装部3aの塗布方法、及びLED8の取付方法並びにLED8の発熱量や背景塗装部3aの耐熱性等に応じて任意に変更することができる。
【0031】
また、光源としては、光を出射する部材であればよく、層状に配設されたLED8に限られない。光源としては、例えば、透明基材2xに対向する位置にあり、透明基材2x及び背景塗装部3aに平行に延在する層状に形成されたものではなく、任意の位置から出射した光を、ミラー等の反射材と透光性材料とから成る導光部材を介し、さらに導光部2yを介して透明基材2xに照射するものであってもよい。さらには、LEDに限定されず、電球、液晶、LD(Laser Diode)、有機EL(Organic Electro Luminescence)素子その他の固体発光素子であってもよい。
【0032】
そして、LED8に電力を供給するとともに、LED8の光出射のオン・オフや、詳細については後述する、選択的に一部のみのLED8のみ光を出射可能とするための制御部CがLED8に接続されている。
【0033】
(加飾品の加飾効果について)
制御部Cの制御によって、LED8から出射した光は、導光部2y及び背景塗装部3aと反射促進層5dとの隙間にある透明基材2xを通り、さらに、背景塗装部3aと反射促進層5dとの間の隙間を通って、放出部5xから加飾品1bの表面側に放出される。放出部5xから放出された光は、図3に示すように、蒔絵部5bを浮かび上がらせるように、その周囲を明るくさせる。
【0034】
特に上記のように、背景塗装部3aと導光部2yとの境界10cは、遮光/反射層5a(蒔絵部5b)の外周よりも内側に形成されている。このため、LED8から光が出射していない状態においても、背景塗装部3aと蒔絵部5b(遮光/反射層5a)との間の隙間(換言すると、背景塗装部3aと導光部2yとの境界10c)を表面側から見えづらくすることができ、見栄えをよくすることができる。また、LED8から光が出射したときには、使用者の目に直接光が入射することを抑制して、間接照明として高い意匠効果を付与することができる。
【0035】
さらには、背景塗装部3aと蒔絵部5bとの厚さが所定の関係にある場合には、放出部5xとLED8とが直線的に連通していなくても、光の回折効果により、背景塗装部3aと蒔絵部5b(遮光/反射層5a)との間から放出部5xに光を放出させることができる。つまり、加飾品1bの表面層25の表面に対して斜めから使用者が見たときに、背景塗装部3aと蒔絵部5b(遮光/反射層5a)との間の隙間が全く見えないような構成であっても、光を放出部5xから放出させることができる。
【0036】
(加飾品の製造方法について)
上記の加飾品1bの製造方法としては、まず、透明基材2xを用意する。用意した透明基材2xの裏面側に背景塗装部3aを塗布する。このとき、導光部2yとなる部位をマスキングした状態で透明基材2xに背景塗装部3aを塗布することで、裏面層23を形成する。
そして、透明基材2xの表面側に反射促進層5dを接着させ、遮光/反射層5a及び蒔絵部5bを塗布する。
具体的には、透明基材2xに反射促進層5dを接着した後、放出部5xとなる部位をマスキングした状態で反射促進層5dの表面に遮光/反射層5a及び蒔絵部5bを順に塗布し、さらに、透明基材2x及び蒔絵部5bを表面側から覆うようにトップクリア部5cを塗布して表面層25を形成する。反射促進層5dを透明基材2xに接着し、遮光/反射層5a及び蒔絵部5bを反射促進層5dに塗布する際には、これらが、背景塗装部3aと導光部2yとの境界10cの少なくとも一部に表裏方向において重なるようにする。
このようにして、蒔絵部5bの周囲の一部から光が放出することができる加飾品1bを製造することができる。
【0037】
<第1変形例>
次に、第1変形例に係る加飾品1cを、図4図6を参照して説明する。なお、図4は、第1変形例に係る加飾品1cの表面を示す図であって、光が照射されていない状態を示す平面図、図5は、図4のV-V断面を示す断面図、図6は、図4に対応する図であって、光が照射されている状態を示す平面図である。
【0038】
加飾品1cにおける加飾品1bとの相違点の一つとして、加飾品1cは、上記実施形態に係る加飾品1bと異なり、図5に示すように、表面層35において遮光/反射層5a及び反射促進層5dを備えていない。
上記実施形態に係る加飾品1bにおいては、蒔絵部5bの裏面側に遮光/反射層5aを備える構成について説明した。遮光/反射層5aが遮光性を有することにより、蒔絵部5bから表面側に光が放出することを抑制することができ、放出部5xから放出される放出光9との明暗のコントラストを際立たせることができるため、加飾品1bの意匠的効果を高めることができる。さらに、遮光/反射層5aが光反射性を有することにより、放出部5xから放出される放出光9の光量を多くすることができる。
しかしながら、蒔絵部5bを浮き立たせるという効果を得るためには、上記実施形態に係る放出部5xを構成するトップクリア部5cの透光性よりも、蒔絵部5bの透光性が低ければよい。さらに、放出部5xから十分な光が放出されるならば、光反射性を有する遮光/反射層5aは任意の構成となる。
【0039】
また、反射促進層5dを備えるようにすると、放出部5xから放出される放出光9の光量を増大させることができるため好適であるが、これについても任意の構成である。例えば、反射促進層5dがなくても十分な光量が得られている場合には、反射促進層5dを校正から除外することにより反射促進層5dの透明基材2xへの接着工程を削除できるため、加飾品1cの製造を容易にすることができる。
【0040】
また、加飾品1cにおいては、上記実施形態に係る加飾品1bと異なり、表面層35においてトップクリア部5cが形成されていない。上記実施形態に係る加飾品1bのように、その表面側にトップクリア部5cを備えると、蒔絵部5bを保護することができ、また、加飾品1bの表面を平滑化できるため望ましい。
しかしながら、例えば表面側に図示せぬカバー部材を備える等によって、加飾品1bの表面側についての平滑化の重要性が低く、蒔絵部5bの保護の必要性が低い場合には、加飾品1cのように、トップクリア部5cを備えないものとしてもよい。このように、トップクリア部5cを備えない加飾品1cであれば、トップクリア部5cを透明基材2xに塗布する工数を減らすことができ、蒔絵部5bの周囲の放出部としての空間に、直接的に光を放出させることができるため、意匠的効果を高めることができる。
【0041】
また、加飾品1cに係る透明基材2x上に積層される裏面層33は、上記実施形態に係る加飾品1bの裏面層23と異なる。詳細には、図5における左側にある背景塗装部3bと導光部2yとにおける表裏方向に垂直な方向の境界10dは、面方向において蒔絵部5bとの間に隙間Gを形成するように外側にある。
【0042】
このように裏面層33が形成されていることで、LED8から出射された光を、背景塗装部3bと蒔絵部5bとの隙間Gを介する一部のみ、直線的に放出させることができる。したがって、図6に示すように、放出光9aのうち、隙間Gの表面側の一部のみの光の放射量を大きくすることができ、意匠的効果を高めることができる。
【0043】
また、図5における右側にある背景塗装部3cと導光部2yとにおける表裏方向に垂直な方向の境界10eは、蒔絵部5bの外周と表裏方向において一致する位置にある。このような、位置関係にある場合でも、蒔絵部5bによって、LED8から射出される光の直線的な放出の少なくとも一部が制限される。よって、このような場合でも、加飾品1cは、間接照明として意匠的な効果を得ることができる。
【0044】
つまり、蒔絵部5bは、導光部2yの少なくとも一部に表裏方向において重なる位置に形成されていれば、LED8から放出される光量及び光の放出箇所を制限できる。さらに、蒔絵部5bの一部が、背景塗装部3cと導光部2yとの境界10eの少なくとも一部に表裏方向において重なる位置に形成されていることで、間接照明としての意匠的効果を奏することができる。
換言すると、本発明に係る加飾品は、少なくとも一部において間接照明としての意匠的効果を奏することができればよく、境界10cが、蒔絵部5bの全周に亘って面方向の内側に形成されている必要はない。
【0045】
(光演出について)
次に、図7を参照して、加飾品1bの光演出について説明する。なお、以下に説明する光演出については、加飾品1cでも同様の演出が可能である。ここで、図7は、加飾品1bの光演出を示す平面図である。
加飾品1bは、単純に蒔絵部5bの周囲を照射して、蒔絵部5bを背景塗装部3aから浮き出て見せるものの他に、制御部Cの制御によって各種光演出をするようにして、意匠的効果を高めるようにしてもよい。
【0046】
例えば、制御部Cが、LED8による光の出射及び出射の中止を所定の間隔で漸次的に繰り返すように制御することで、蛍の光のように図3に示す放出光9を消滅点灯させるようにしてもよい。また、制御部Cは、図7に示すように、複数配置されたLED8の一部からのみ光を出射させるようにして、局所的に点在する複数の箇所における放出光9bを順次点灯させるように制御してもよい。さらには、制御部Cは、複数配置されたLED8のうち隣接するLED8を順次点灯消滅させるようにして、局所的に点在する複数の箇所を結ぶように連続的に放出光9bが動いているかのように見せることも可能である。
なお、加飾品1bは、上記のような演出を不要とし、光の放出のオン・オフのみを操作する場合には、制御部Cを備える必要はない。
【0047】
<第2変形例>
次に、第2変形例に係る加飾品1dについて、図8を参照して説明する。ここで、図8は、第2変形例に係る加飾品1dの表面を示す図であって、光が照射されていない状態を示す平面図である。
上記の実施例に係る加飾品1b,1cにおいては、蒔絵部5bの少なくとも一部が、境界10c,10eの少なくとも一部に、表裏方向において重なる位置に形成されている例を説明した。このような構成であれば、蒔絵部5bの少なくとも一部を放出光9により間接的に照らすことができるため、意匠効果を高めることができる。しかしながら、本願発明はこのような形態に限定されない。
【0048】
第2変形例に係る加飾品1dは、背景塗装部3bと導光部2yとにおける表裏方向に垂直な境界と、蒔絵部5bにおける面方向の縁との間に、例えば約1mm〜5mm程度の隙間G1が形成されるように構成されている。この隙間G1は、第1変形例において図4及び図5を参照して説明した蒔絵部5bと背景塗装部3bとの隙間Gが、蒔絵部5bにおける面方向の全周に亘る縁に対して形成されているものである。
このように、加飾品1dに隙間G1が形成されていても、蒔絵部5bが背景塗装部3bと導光部2yとにおける表裏方向に垂直な境界の近傍に形成されていることで、蒔絵部5bが背景塗装部3bに対して立体的に浮かび上がって見えるような視覚効果(意匠効果)を得ることができる。
【0049】
なお、加飾品1dの製造方法は、加飾品1bの製造方法と同様である。具体的に異なる点は、反射促進層5dを透明基材2xに接着し、遮光/反射層5a及び蒔絵部5bを反射促進層5dに塗布する際に、これらが、背景塗装部3aと導光部2yとの境界よりも面方向の内側近傍に位置するように塗布する点である。
【0050】
上記の実施形態においては、導光部2yを表面側から覆うように塗装される第2装飾部が蒔絵部5bであるとして説明した。このように第2装飾部が蒔絵部5bであると、その立体的な装飾によって、周囲から放出される光が蒔絵部5bに反射することによって、蒔絵部5bの陰影を際立たせることができるため意匠的効果が高い。
しかしながら、第2装飾部としては、蒔絵処理がされたものに限定されず、有色の塗料が塗布されているものでもよい。例えば、第2装飾部が背景塗装部3aと同色の塗料が塗布された部位であるとして、LED8から光が出射されない状態においては、何の模様も識別させず、LED8から光が出射されたときに初めて、第2装飾部が浮かび上がるようにしてもよい。
【0051】
さらに、加飾品1bにおいては、蒔絵部5bの裏面に遮光/反射層5aを設けるものとしたが、背景塗装部3aの裏面に遮光/反射層5aを設けるようにしてもよい。このようにすれば、背景塗装部3aから透過する光を抑制することができ、放出光9と背景塗装部3aとの明暗のコントラストを際立たせることができる。このため、放出光9により蒔絵部5bをより浮き出させるように見せることができ、加飾品1bの意匠的効果を高めることができる。
【0052】
なお、本発明に係る加飾品は、提灯、照明器具のシェード、車両のスイッチパネル、足元灯やガーニッシュ等、屋内、屋外問わずに用いることができ、特に暗い場所で用いる場合は、光源による光の演出が効果的となる。
【符号の説明】
【0053】
1b,1c,1d 加飾品
2x 透明基材
2y 導光部
23,33 裏面層
3a,3b,3c 背景塗装部(第1装飾部)
25,35 表面層
5a 遮光/反射層(第2装飾部)
5b 蒔絵部(第2装飾部)
5c トップクリア部
5d 反射促進層
5x 放出部
8 LED(光源)
9,9a,9b 放出光
10c,10d,10e 境界
C 制御部
G,G1 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8