(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記オーバーコート層に形成される凹凸によって前記受容層に形成された凹凸を相殺するように、前記オーバーコート層を熱転写する際の前記発熱体の発熱量を変化させることを特徴とする請求項2に記載の熱転写プリンタによる印刷方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、特許文献1の熱転写プリンタでは、画像中のある領域に対して白色インクを転写するか否かによって、その領域にメタリック効果を持たせるか持たせないかという選択は可能である。しかしながら、メタリック効果の程度を調整することまではできなかった。このため、印刷物の意匠性を向上させるのに限界があった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、メタリック効果の程度を調整可能とすることで、印刷物の意匠性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る熱転写プリンタによる印刷方法は、複数の発熱体が配列されたサーマルヘッドを用いて、インクリボンに塗布されているインクを印刷媒体に熱転写する熱転写プリンタによる印刷方法であって、前記印刷媒体に、金属光沢を有する特色インク層、受容層、及び、カラーインク層を順番に熱転写し、前記特色インク層を熱転写した領域の少なくとも一部において、前記受容層を熱転写する際の前記発熱体の発熱量を変化させることで、前記受容層に凹凸を形成することを特徴とする。
【0007】
このような印刷方法で印刷された印刷物は、受容層に凹凸が形成されていない領域では、その下側の特色インク層がはっきりと見えるのに対して、受容層に凹凸が形成された領域では、その下側の特色インク層がくすんで見えるようになる。このように、受容層に凹凸を形成することによって、金属光沢を有する特色インク層の見え方を変えることができる。したがって、特色インク層によるメタリック効果の程度を調整することができ、印刷物の意匠性を向上させることが可能となる。
【0008】
本発明に係る熱転写プリンタによる印刷方法において、前記印刷媒体に、前記特色インク層、前記受容層、及び、前記カラーインク層を順番に熱転写した後に、さらにオーバーコート層を熱転写し、前記受容層に凹凸を形成した領域の少なくとも一部において、前記オーバーコート層を熱転写する際の前記発熱体の発熱量を変化させることで、前記オーバーコート層に凹凸を形成するとよい。
【0009】
このように、受容層に凹凸を形成することに加えて、オーバーコート層にも凹凸を形成することにより、メタリック効果の調整自由度をさらに向上させることができる。
【0010】
本発明に係る熱転写プリンタによる印刷方法において、前記オーバーコート層に形成される凹凸によって前記受容層に形成された凹凸を相殺するように、前記オーバーコート層を熱転写する際の前記発熱体の発熱量を変化させるとよい。
【0011】
このように、オーバーコート層の凹凸によって受容層の凹凸を相殺することにより、オーバーコート層の表面、すなわち印刷物の表面を平坦化することができる。したがって、印刷物の光沢感を向上させることができる。
【0012】
本発明に係る熱転写プリンタは、上記何れかの印刷方法を実行するように前記サーマルヘッドを制御する制御部を備えたことを特徴とする。
【0013】
このような熱転写プリンタによれば、上述のように、特色インクによるメタリック効果の程度を調整することができるので、印刷物の意匠性を向上させることが可能となる。
【0014】
本発明に係る印刷物は、上記何れかの印刷方法によって印刷されたことを特徴とする。
【0015】
このような印刷物によれば、上述のように、特色インクによるメタリック効果の程度を調整することができるので、意匠性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の一例について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る熱転写プリンタの主要部の概略構成図である。本実施形態の熱転写プリンタ1は、互いに対向配置されたサーマルヘッド10とプラテンローラ11とによって、印刷媒体12とインクリボン13とを重ね合わせた状態で挟み込む。そして、インクリボン13に塗布されているインクを、サーマルヘッド10によって印刷媒体12に熱転写することで、印刷媒体12に画像を形成するものである。印刷媒体12及びインクリボン13は、
図1の矢印の方向にそれぞれ搬送されるように構成されている。
【0018】
熱転写プリンタ1には、長尺シート状の印刷媒体12が巻かれた給紙ロール14と、インクリボン13が巻かれたインクリボンロール15と、が設けられている。給紙ロール14から引き出された印刷媒体12は、サーマルヘッド10とプラテンローラ11の間で印刷が施された後、ピンチローラ16とフィードローラ17とによって図外の排出口まで搬送される。印刷が施された印刷媒体12は、不図示のカッターによって適切な位置で切断された後に排出口より排出される。本実施形態の印刷媒体12は、基材の表面にインクを受容可能な受容層が形成されたものである。しかしながら、基材がインクを受容可能な素材であれば、印刷媒体12を基材のみで構成してもよい。
【0019】
インクリボンロール15から引き出されたインクリボン13は、ガイドローラ18によってサーマルヘッド10とプラテンローラ11の間に案内される。サーマルヘッド10によって熱が加えられインクが転写された使用済みのインクリボン13は、使用済みロール19に巻き取られる。
【0020】
図2は、本実施形態で用いるインクリボン13を示す図である。インクリボン13は、ホログラム層HG、受容層RC、イエローインク層Y、マゼンタインク層M、シアンインク層C、及び、オーバーコート層OPがそれぞれ塗布されたインク面が、この順番で並んだ構成となっている。
図2において太線で囲んである部分が、1回の印刷で使用されるインク面である。ホログラム層HGは、金属光沢を有する溶融型(昇華型でもよい)のホログラムインクからなる。受容層RCは、インクを受容可能な溶融型の透明な受容インクからなる。イエローインク層Y、マゼンタインク層M、及び、シアンインク層Cは、それぞれ昇華型の各色インクからなる。オーバーコート層OPは、溶融型の透明なオーバーコートインクからなる。
【0021】
サーマルヘッド10には、プラテンローラ11と対向する位置に、複数の微小な発熱体10aが
図1の紙面垂直方向に配列されている。サーマルヘッド10は、プラテンローラ11との間で、印刷媒体12とインクリボン13とを重ね合わせて挟んだ状態で、プラテンローラ11に向かって適度に押し付けられる。そうすると、発熱状態の発熱体10aに押し付けられた部分のインクが溶融又は昇華し、インクリボン13から印刷媒体12に転写される。
【0022】
熱転写プリンタ1は、各部の動作を制御する制御部20を有する。制御部20は、入力された画像データに基づいて、サーマルヘッド10の発熱体10aの発熱制御や印刷媒体12及びインクリボン13の搬送制御を適切に行うことで、印刷媒体12に所望の画像を形成する。各発熱体10aは、それぞれ個別に発熱制御される。
【0023】
次に、本実施形態の熱転写プリンタ1を用いて印刷を行う場合の具体例について説明する。
図3は、画像が形成された印刷物Pの一例を示す図である。印刷物Pに印刷される画像は、星形の領域S1、月形の領域S2、及び、領域S1、S2以外の領域S3を有する。領域S1、S2には、メタリック効果を付与するため、金属光沢を有するホログラム層HGが転写される。一方、領域S3は、通常のカラー画像とされ、ホログラム層HGは転写されない。
【0024】
図4は、印刷物Pの一部を示す断面図であり、a図は領域S1における断面図、b図は領域S2における断面図、c図は領域S3における断面図を示す。なお、
図4では、発明の理解を容易にするため、各層が積層された図としている。しかしながら、実際には昇華型インクを利用しているカラーインク層Y、M、Cは、受容層RCに昇華したインクが染み込むような態様で転写され、このような積層状態となるわけではない。
【0025】
図4のa図及びb図に示すように、領域S1、S2では、印刷媒体12の表面に、ホログラム層HG、受容層RC、イエローインク層Y、マゼンタインク層M、シアンインク層C、及び、オーバーコート層OPが順番に熱転写される。ただし、領域S1と領域S2とでは、受容層RCを熱転写する形態を異ならせている。すなわち、領域S1において受容層RCを熱転写する際には、発熱体10aの発熱量を一定とすることで、受容層RCの厚みを一定としている。一方、領域S2において受容層RCを熱転写する際には、発熱体10aの発熱量を一定周期で変動させるように制御することで、受容層RCが凹凸を有する波型となるようにしている。具体的には、発熱体10aの発熱量を大きくすれば受容層RCの厚みが増し、発熱体10aの発熱量を小さくすれば受容層RCの厚みが減る。本実施形態では、領域S2における受容層RCの最も厚みが小さい箇所の厚みが、領域S1における受容層RCの厚みと略同じとなるように発熱量を制御している。
【0026】
受容層RCの厚みが一定で平坦である領域S1では、そのすぐ下側のホログラム層HGの金属光沢が特にくすんだりすることなく、メタリック効果が最大限発揮される。これにより、星形の領域S1は、強く輝くように見える。一方、受容層RCに凹凸が形成されている領域S2では、凹凸による光の散乱によって、そのすぐ下側のホログラム層HGの金属光沢がややくすんで見え、メタリック効果を和らげることができる。これにより、月形の領域S2は、淡く輝くように見える。このように1枚の印刷物Pの中で、メタリック効果に差をつけることができ、意匠性を高めることができる。
【0027】
図4のc図に示すように、領域S3では、印刷媒体12の表面に、ホログラム層HGは転写されず、受容層RC、イエローインク層Y、マゼンタインク層M、シアンインク層C、及び、オーバーコート層OPが順番に熱転写される。したがって、領域S3に形成される画像は、メタリック効果のない通常のカラー画像となる。
【0028】
ここで、
図4のb図は、オーバーコート層OPを熱転写する際に、発熱体10aの発熱量を一定にした場合を示している。オーバーコート層OPを一定の発熱量で転写すると、オーバーコート層OPの厚みは一定となり、その結果、受容層RCの凹凸の影響を受けて、領域S2においては印刷物Pの表面にも凹凸が生じることになる。このように、表面に凹凸がある領域S2では、表面が平坦な他の領域S1、S3と比べて、光沢感が落ちる場合がある。そこで、領域S2にも領域S1、S3と同等の光沢感を付与したい場合には、
図5に示すように、領域S2の表面を平坦化すればよい。以下、具体的に説明する。
【0029】
図5は、領域S2においてオーバーコート層OPを熱転写する際に、受容層RCを熱転写した際と逆位相で増減させるように制御した場合を示している。この場合、オーバーコート層OPに、受容層RCの凹凸とは逆向きの凹凸が形成され、オーバーコート層OPの凹凸によって、受容層RCの凹凸が相殺される。これによって、領域S2においても印刷物Pの表面が平坦となり、領域S2の光沢感を領域S1、S3と同等もしくは近づけることができる。なお、オーバーコート層OPの凹凸によって受容層RCの凹凸を完全に相殺することは必須ではない。つまり、オーバーコート層OPの凹凸によって受容層RCの凹凸を多少なりとも相殺できれば、表面をある程度平坦化させることができ、光沢感を向上させることは可能である。
【0030】
(効果)
本実施形態では、印刷媒体12に、金属光沢を有するホログラム層HG(特色インク層)、受容層RC、及び、カラーインク層Y、M、Cを順番に熱転写し、ホログラム層HGを熱転写した領域S1、S2の少なくとも一部において、受容層RCを熱転写する際の発熱体10aの発熱量を変化させることで、受容層RCに凹凸を形成した。このような印刷方法で印刷された印刷物Pは、受容層RCに凹凸が形成されていない領域S1では、その下側のホログラム層HGがはっきりと見えるのに対して、受容層RCに凹凸が形成された領域S2では、その下側のホログラム層HGがくすんで見えるようになる。このように、受容層RCに凹凸を形成することによって、金属光沢を有するホログラム層HGの見え方を変えることができる。したがって、ホログラム層HGによるメタリック効果の程度を調整することができ、印刷物Pの意匠性を向上させることが可能となる。
【0031】
また、本実施形態の変形例では、印刷媒体12に、ホログラム層HG、受容層RC、及び、カラーインク層Y、M、Cを順番に熱転写した後に、さらにオーバーコート層OPを熱転写し、受容層RCに凹凸を形成した領域S2の少なくとも一部において、オーバーコート層OPを熱転写する際の発熱体10aの発熱量を変化させることで、オーバーコート層OPに凹凸を形成した。このように、受容層RCに凹凸を形成することに加えて、オーバーコート層OPにも凹凸を形成することにより、メタリック効果の調整自由度をさらに向上させることができる。
【0032】
また、本実施形態の変形例では、オーバーコート層OPに形成される凹凸によって受容層RCに形成された凹凸を相殺するように、オーバーコート層OPを熱転写する際の発熱体10aの発熱量を変化させるようにした。このように、オーバーコート層OPの凹凸によって受容層RCの凹凸を相殺することにより、オーバーコート層OPの表面を平坦化することができる。したがって、印刷物Pの光沢感を向上させることができる。
【0033】
(他の実施形態)
上記実施形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
【0034】
上記実施形態では、金属光沢を有する特色インク層として、ホログラム層HGを採用した場合について説明した。しかしながら、特色インク層はホログラム層HGに限定されず、例えば、銀色メタリック層や金色メタリック層であってもよい。
【0035】
上記実施形態では、インクリボン13が、ホログラム層HG、受容層RC、イエローインク層Y、マゼンタインク層M、シアンインク層C、及び、オーバーコート層OPが塗布されたインク面を有しているものとした。しかしながら、インクリボン13が有するインク面の種類はこれに限定されず、適宜、変更が可能である。例えば、カラーのインク面として、イエロー、マゼンタ、及び、シアン以外の色のインク面を設けてもよいし、ブラックのインク面を設けてもよい。さらには、オーバーコート層OPが塗布されたインク面を省略することも可能である。
【0036】
上記実施形態では、熱転写プリンタ1が、サーマルヘッド10を1つだけ有する、いわゆるシングルヘッド型のものとした。しかしながら、熱転写プリンタ1として、サーマルヘッド10を複数有するマルチヘッド型を採用してもよい。例えば、2つのサーマルヘッド10を設けた場合には、従来からよくあるイエローインク層Y、マゼンタインク層M、シアンインク層C、及び、オーバーコート層OPが塗布されたインク面を有するインクリボンと、ホログラム層HG及び受容層RCが塗布されたインク面を有するインクリボンとを用いて、上記実施形態の印刷方法を実行することも可能である。
【0037】
上記実施形態では、印刷媒体12が長尺シート状のものであるとしたが、印刷媒体12はこれに限定されず、カード状のものや規定サイズ(A4等)のプリント用紙等でもよい。
【0038】
上記実施形態の変形例では、受容層RCに形成された凹凸を相殺するように、オーバーコート層OPに凹凸を形成するものとした。しかしながら、反対に、受容層RCに形成された凹凸を増幅させるように、オーバーコート層OPに凹凸を形成するようにしてもよい。この場合、ホログラム層HGによるメタリック効果をさらに和らげることができる。
【0039】
上記実施形態では、発熱体10aの発熱量を一定周期で変動させることで、受容層RCに凹凸を形成するものとした。ここで、受容層RCを熱転写する際の発熱量を所定量以上に大きくすると、転写される受容層RCの厚みは変わらないが、受容層RCが過熱されることで、上記凹凸に加えて表面に荒れが生じることがある。このような荒れも、受容層RCでの光の散乱を助長させる。したがって、凹凸の受容層RCを形成する際に、敢えて発熱体10aを所定量以上の発熱量で過熱し、表面に荒れを生じさせることで、メタリック効果をさらに和らげることも可能である。
【0040】
上記実施形態では、発熱体10aの発熱量を一定周期で変動させることで、受容層RCに波型の凹凸を形成するものとした。しかしながら、発熱体10aの発熱量を一定周期で変動させることは必須ではなく、ランダムに変動させてもよい。また、メタリック効果を有する領域内で、例えば市松模様等の模様が浮かび上がったり、グラデーション効果が生じたりするように、発熱体10aの発熱量を規則的に制御して凹凸の形態を変化させることも可能である。