特許第6951664号(P6951664)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6951664
(24)【登録日】2021年9月29日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】レバー式コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/629 20060101AFI20211011BHJP
【FI】
   H01R13/629
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-10239(P2018-10239)
(22)【出願日】2018年1月25日
(65)【公開番号】特開2019-129078(P2019-129078A)
(43)【公開日】2019年8月1日
【審査請求日】2020年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】月芳 圭一
【審査官】 藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−319124(JP,A)
【文献】 特開2006−120536(JP,A)
【文献】 特開2003−249305(JP,A)
【文献】 特開2016−126841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/56−13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持軸と回転規制部が形成されたハウジングと、
板状をなすアーム部を有し、前記アーム部に形成した軸受孔を前記支持軸を嵌合することで、相手側コネクタとの嵌合開始時に待機する初期位置と前記相手側コネクタとの嵌合を完了する嵌合位置との間で回動可能なレバーと、
前記アーム部における前記ハウジングとの対向面から前記ハウジング側へ突出した形態であり、前記回転規制部に係止することで前記初期位置の前記レバーが前記嵌合位置とは反対側へ回動するのを規制する逆回転規制突起と
前記ハウジングに形成され、前記レバーを前記ハウジングに組み付ける過程で前記逆回転規制突起を係止させることで、前記レバーが前記ハウジングから離脱することを規制可能な離脱規制部と、
を備えているレバー式コネクタ。
【請求項2】
支持軸と回転規制部が形成されたハウジングと、
板状をなすアーム部を有し、前記アーム部に形成した軸受孔を前記支持軸を嵌合することで、相手側コネクタとの嵌合開始時に待機する初期位置と前記相手側コネクタとの嵌合を完了する嵌合位置との間で回動可能なレバーと、
前記アーム部における前記ハウジングとの対向面から前記ハウジング側へ突出した形態であり、前記回転規制部に係止することで前記初期位置の前記レバーが前記嵌合位置とは反対側へ回動するのを規制する逆回転規制突起と、
を備え、
前記アーム部には、前記レバーを前記ハウジングに組み付ける過程で前記支持軸を前記軸受孔へ誘導するガイド溝が形成され、
前記逆回転規制突起が、前記アーム部における前記ガイド溝と反対側の面のうち、前記ガイド溝の形成領域の範囲内に配されているレバー式コネクタ。
【請求項3】
前記ガイド溝には、前記逆回転規制突起の形成領域を挟むように配された一対のスリットが形成されている請求項2記載のレバー式コネクタ。
【請求項4】
前記ガイド溝は、前記アーム部の外周縁に開口して形成された誘導口と、前記軸受孔の孔縁部から前記誘導口側に向かって前記ガイド溝が深くなるように傾斜した誘導傾斜部とを有し、
前記逆回転規制突起が、前記誘導傾斜部よりも前記誘導口側の領域に配されている請求項2又は請求項3記載のレバー式コネクタ。
【請求項5】
前記ハウジングに形成され、前記レバーを前記ハウジングに組み付ける過程で前記逆回転規制突起を係止させることで、前記レバーが前記ハウジングから離脱することを規制可能な離脱規制部を備えている請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のレバー式コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レバー式コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、互いに平行をなす一対のアーム部を操作部で連結した形態のレバーを備えたレバー式コネクタが開示されている。アーム部には、ハウジングの外側面から突出した支持軸に嵌合される軸受孔が形成されており、レバーは、支持軸及び軸受孔を中心として初期位置と嵌合位置との間で回動し得るようになっている。このコネクタを相手側コネクタと嵌合する際には、レバーを初期位置に保持しておき、両コネクタを浅く嵌合して相手側コネクタのカムピンをレバーのカム溝の入口に進入させ、その状態からレバーを嵌合位置側へ回動させると、両コネクタが嵌合されるようになっている。レバーには、アーム部の外周縁から径方向外方へ延出部が延出し、延出部の延出端部に操作部が形成されている。レバーが初期位置にある状態では、延出部がハウジングの回転規制部に係止することで、レバーが嵌合位置とは反対側へ回動することを規制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−018877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記レバー式コネクタにおいて、ハウジングの設計上の制約等により、回転規制部を、延出部にではなく、アーム部自体に係止させることが考えられる。この場合、アーム部の外周縁から径方向外方へ凸部を形成し、この凸部を回転規制部に係止させることになる。ところが、アーム部の外周縁から凸部を突出させると、アーム部が大径化するという問題がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、アーム部の大径化を回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
支持軸と回転規制部が形成されたハウジングと、
板状をなすアーム部を有し、前記アーム部に形成した軸受孔を前記支持軸を嵌合することで、相手側コネクタとの嵌合開始時に待機する初期位置と前記相手側コネクタとの嵌合を完了する嵌合位置との間で回動可能なレバーと、
前記アーム部における前記ハウジングとの対向面から前記ハウジング側へ突出した形態であり、前記回転規制部に係止することで前記初期位置の前記レバーが前記嵌合位置とは反対側へ回動するのを規制する逆回転規制突起とを備えているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
逆回転規制突起は、アーム部におけるハウジングとの対向面からハウジング側へ突出した形態なので、アーム部の外周縁から径方向外方へ突出する形態の逆回転規制突起を形成した場合に比べると、アーム部の外径を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1のレバー式コネクタの斜視図
図2】レバー式コネクタの平面図
図3】ハウジングの平面図
図4】レバーの斜視図
図5】レバーの側面図
図6図5のA−A線断面図
図7図6のB−B線断面図
図8】ハウジングに対するレバーの組付けを開始した状態をあらわす図2のC−C線相当断面図
図9】ハウジングに対するレバーの組付け過程で支持軸が退避部の手前まで移動した状態をあらわす図2のC−C線相当断面図
図10図9の状態からレバーの組付けが更に進み、逆回転規制突起が離脱規制部に係止している状態をあらわす図2のD−D線相当断面図
図11図10の状態からレバーの組付けが更に進み、支持軸が退避部を移動している状態をあらわす図2のC−C線相当断面図
図12】ハウジングに対するレバーの組付けが完了し、レバーが初期位置に保持されている状態をあらわす図2のC−C線相当断面図
図13】ハウジングに対するレバーの組付けが完了し、レバーが初期位置に保持されている状態をあらわす図2のD−D線相当断面図
図14】レバー式コネクタと相手側コネクタの嵌合を開始して、相手側コネクタのカムフォロアがカム溝の入口に進入した状態をあらわす図2のE−E線相当断面図
図15】レバー式コネクタと相手側コネクタの嵌合が完了した状態をあらわす側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、前記アーム部には、前記レバーを前記ハウジングに組み付ける過程で前記支持軸を前記軸受孔へ誘導するガイド溝が形成され、前記逆回転規制突起が、前記アーム部における前記ガイド溝と反対側の面のうち、前記ガイド溝と対応する領域に配されていてもよい。アーム部のうちガイド溝の形成領域は、厚さが薄くて弾性変形し易いので、レバーをハウジングに組み付ける過程で、逆回転規制突起が回転規制部を乗り越える際の抵抗が低く抑えられる。
【0010】
本発明は、前記ガイド溝には、前記逆回転規制突起の形成領域を挟むように配された一対のスリットが形成されていてもよい。ガイド溝のうち逆回転規制突起が形成されている領域は、一対のスリットによって弾性変形し易くなっているので、逆回転規制突起が回転規制部を乗り越える際の抵抗が、より低く抑えられる。
【0011】
本発明は、前記ガイド溝は、前記アーム部の外周縁に開口して形成された誘導口と、前記軸受孔の孔縁部から前記誘導口側に向かって前記ガイド溝が深くなるように傾斜した誘導傾斜部とを有し、前記逆回転規制突起が、前記誘導傾斜部よりも前記誘導口側の領域に配されていてもよい。この構成によれば、ガイド溝のうち誘導傾斜部より誘導口側の領域は、肉薄で弾性変形し易いので、逆回転規制突起が回転規制部を乗り越え易い。
【0012】
本発明は、前記ハウジングに形成され、前記レバーを前記ハウジングに組み付ける過程で前記逆回転規制突起を係止させることで、前記レバーが前記ハウジングから離脱することを規制可能な離脱規制部を備えていてもよい。この構成よれば、逆回転規制突起が、レバーの逆回転を規制する機能と、レバーのハウジングからの離脱を規制する機能とを兼ね備えているので、レバーの形状を簡素化することができる。
【0013】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図15を参照して説明する。尚、以下の説明において、前後の方向については、図2,3,5,7〜15における左方を前方と定義する。上下の方向については、図1,4〜15にあらわれる向きを、上方、下方と定義する。
【0014】
本実施例のレバー式コネクタFは、合成樹脂製のハウジング10と、合成樹脂製のレバー30と、複数の端子金具(図示省略)とを備えて構成されている。ハウジング10は、ブロック状の端子収容部11と、端子収容部11の前後両外面と左右両外側面を全周に亘って包囲する周壁部14と、周壁部14の左右両外側面と間隔を空けて対向する左右対称な一対のレバー収容部21とを備えている。端子収容部11内には、上下方向に細長い複数のキャビティ12が前後左右に整列して形成されている。
【0015】
複数のキャビティ12内には、複数の端子金具がハウジング10の上方から個別に挿入されている。複数の端子金具の上端部には、夫々、電線28が個別に接続されており、複数本の電線28は、ハウジング10の上端面の電線導出面13から上方へ導出されることで、電線束27を構成している。キャビティ12の上端の開口部は、電線導出面13のほぼ全領域に亘って配されているので、複数本の電線28からなる電線束27は、電線導出面13に近くなるほど前後左右に拡がった形態となる。
【0016】
周壁部14は、その上端部において端子収容部11の外周面に連なっている。端子収容部11と周壁部14との間に構成される空間は、ハウジング10の下面に開放された嵌合空間15となっている。周壁部14を構成する左右両側壁部16には、側面視形状が前後対称な形状の切欠部17が形成されている。切欠部17は、側壁部16の内面から外面に連通し、側壁部16の下端縁に開口している。側壁部16の上縁部、即ち側壁部16のうち切欠部17の上端縁に臨む領域は、離脱規制部18となっている。
【0017】
側壁部16には、切欠部17を前後から挟むように配された前後対称な前側切欠溝19Fと後側切欠溝19Rが形成されている。前側切欠溝19Fは、側壁部16の内面から外面に連通し、側壁部16の上端縁に開放されている。後側切欠溝19Rは、側壁部16の内面から外面に連通し、側壁部16の上端縁に開放されている。側壁部16のうち前側切欠溝19Fの下端部と切欠部17の前端縁部との間の領域は、前側回転規制部20F(請求項に記載の回転規制部)となっている。側壁部16のうち後側切欠溝19Rの下端部と切欠部17の後端縁部との間の領域は、後側回転規制部20R(請求項に記載の回転規制部)となっている。
【0018】
一対のレバー収容部21は、側面視形状が前後対称な形状であり、壁状部22と、前側連結部23Fと、後側連結部23Rとを備えて構成されている。壁状部22は、周壁部14の左右両側壁部16の外面と間隔を空けて対向するように配された平板状をなす。前側連結部23Fは、全体として上下方向に細長く、壁状部22の前端縁部と、側壁部16の外側面のうち切欠部17及び前側切欠溝19Fの下端側領域よりも前方の領域とを繋いでいる。後側連結部23Rは、全体として上下方向に細長く、側壁部16の外側面のうち切欠部17及び後側切欠溝19Rの下端側領域よりも後方の領域とを繋いでいる。
【0019】
左右両レバー収容部21と周壁部14(左右両側壁部16)とによって区画された空間は、平面視形状が前後方向に細長い一対の収容空間24となっている。収容空間24は、ハウジング10の上面と下面とに開放されている。前側連結部23Fの上端部は、収容空間24内に臨む前側姿勢抑制部25F(請求項に記載の姿勢抑制部)として機能する。後側連結部23Rの上端部は、収容空間24内に臨む後側姿勢抑制部25R(請求項に記載の姿勢抑制部)として機能する。
【0020】
左右両壁状部22の内面上端部には、軸線を左右方向に向けた左右対称な一対の支持軸26が突出形成されている。支持軸26は、前後方向におけるレバー収容部21の中央に配置されている。各収容空間24内には、夫々、レバー30のアーム部31が収容され、アーム部31の軸受孔34が支持軸26に嵌合されている。レバー30は支持軸26を支点として回動可能となっている。レバー30をハウジング10に組み付ける過程では、アーム部31の外周縁が、前側姿勢抑制部25F又は後側姿勢抑制部25Rに当接し得るようになっている。レバー30をハウジング10に組み付ける過程でアーム部31が前側姿勢抑制部25F又は後側姿勢抑制部25Rに当接すると、レバー30の姿勢の変化が抑制され得るようになっている。
【0021】
レバー30は、左右対称な一対のアーム部31と、操作部32とを有する。操作部32は、両アーム部31のうち径方向外方へ突出した左右対称な一対の延出部33の延出端部同士を連結している。アーム部31は、板厚方向を左右方向(支持軸26の軸線と平行な方向)に向けた略平板状をなし、互いに面一状に連なっている。アーム部31の側面視における略中央部には、貫通形態の軸受孔34が形成されている。アーム部31の内面(側壁部16との対向面)には、アーム部31の外周縁から軸受孔34に接近する経路で延びるカム溝35が形成されている。
【0022】
アーム部31の外面には、アーム部31の外周縁から軸受孔34に至るガイド溝36が形成されている。ガイド溝36は、レバー30をハウジング10に組み付ける過程で、支持軸26を軸受孔34に誘導するための案内経路として機能する。ガイド溝36における軸受孔34とは反対側の端部は、誘導口37としてアーム部31の外周縁に開口している。誘導口37の開口幅は、軸受孔34の内径及び支持軸26の外径と概ね同じ寸法である。
【0023】
側面視において、ガイド溝36は、カム溝35とは異なる領域に配されている。レバー30をハウジング10に組み付ける際には、ガイド溝36の誘導口37が下方(ハウジング10に対するレバー30の組み付け方向と概ね同じ方向)へ開口する姿勢で、アーム部31をハウジング10の上方から収容空間24内に挿入していく。
【0024】
ガイド溝36は、誘導口37と軸受孔34とを直線的に結んだ最短案内部38と、最短案内部38に連通した退避部39とから構成されている。退避部39の形成領域は、誘導口37よりも軸受孔34側の位置から、軸受孔34の開口縁部に至る位置までの範囲である。ガイド溝36の誘導口37が下方へ開口する向きでアーム部31がレバー収容部21(収容空間24)内に挿入されたとき、側面視において、退避部39は、最短案内部38(誘導口37と軸受孔34を結んだ仮想経路)から前側姿勢抑制部25F側へ膨らんだ形態である。側面視において、退避部39のうち前側姿勢抑制部25F側の縁部は、曲線のみで構成されている。
【0025】
最短案内部38は、レバー30をハウジング10に組み付ける過程で、支持軸26を誘導口37から軸受孔34まで案内するための誘導経路として機能する。退避部39は、レバー30をハウジング10に組み付ける過程で、支持軸26を誘導口37より少し軸受孔34寄りの位置から、軸受孔34まで案内するための誘導経路として機能する。ガイド溝36のうち退避部39が形成されている領域は、誘導口37及び軸受孔34より幅寸法の大きい幅広部40となっている。幅広部40の最大幅寸法は、支持軸26の外径の2倍より小さい寸法である。退避部39の誘導経路の一部は、最短案内部38の誘導経路と共通の経路となっている。
【0026】
レバー30の延出部33は、アーム部31の外周縁のうち軸受孔34を挟んで誘導口37と反対側の領域から径方向外方へ延出している。操作部32は、延出部33の延出端部のうち前側(最短案内部38から退避部39が張り出す側)の側縁部同士を連結した形態である。レバー30をハウジング10に組み付ける過程では、誘導口37が下向きに開口するので、延出部33と操作部32がアーム部31の上方に位置することになる。レバー30の組み付け過程では、操作部32は、電線導出面13から上方へ導出されている電線束27の前方近傍を移動する。
【0027】
ガイド溝36には、軸受孔34の孔縁部から誘導口37側に向かってガイド溝36が次第に深くなるように傾斜した誘導傾斜部41が形成されている。誘導傾斜部41の形成領域は、軸受孔34の孔縁部から、退避部39における誘導口37側の端部よりも軸受孔34側の位置に至る範囲である。ガイド溝36のうち誘導傾斜部41から誘導口37に至る領域は、深さが一定の深溝部42となっている。したがって、幅広部40は、誘導傾斜部41と深溝部42とによって構成されている。アーム部31のうち深溝部42の形成領域は、ガイド溝36やカム溝35の形成されていない領域よりも厚さの薄い肉薄部となっている。
【0028】
深溝部42(肉薄部)には、深溝部42をアーム部31の板厚方向に貫通した形態の一対のスリット43が形成されている。一対のスリット43の形成範囲は、最短案内部38のうち退避部39と共通の経路となっていない領域、即ち誘導口37に近い領域である。一対のスリット43は、最短案内部38の長さ方向と平行な直線状をなしており、最短案内部38の幅方向両端縁に沿うように配されている。深溝部42(肉薄部)のうち一対のスリット43で挟まれた領域は、誘導傾斜部41の全領域、及び深溝部42のうち一対のスリット43で挟まれていない領域よりも撓み剛性の低い変形容易部44となっている。
【0029】
一対のアーム部31の内面(ガイド溝36が形成されている面とは反対側の面)には、左右対称な一対の逆回転規制突起45が形成されている。逆回転規制突起45は、側面視においてガイド溝36の形成領域の範囲内に配されている。詳細には、逆回転規制突起45の全体が、一対のスリット43に挟まれた変形容易部44に配され、逆回転規制突起45はハウジング10(端子収容部11)の外側面に向かって突出している。変形容易部44が弾性変形するのに伴い、逆回転規制突起45が端子収容部11の外側面から遠ざかる方向へ変位するようになっている。
【0030】
一対のアーム部31の内面(逆回転規制突起45が形成されている面と同じ面)には、左右対称な一対の初期位置保持突起46が形成されている。初期位置保持突起46は、側面視においてガイド溝36と非対応の位置、即ちガイド溝36の形成領域とは異なる領域に配されている。詳細には、支持軸26(軸受孔34)を中心とする周方向においてカム溝35とガイド溝36の間に配され、且つ周方向において逆回転規制突起45と対向するように配されている。初期位置保持突起46は、略U字形の隙間に囲まれているので、アーム部31の板厚方向へ弾性変形し得るようになっている。
【0031】
レバー30は、アーム部31の概ね全体をレバー収容部21の収容空間24内に収容し、軸受孔34を支持軸26に嵌合し、延出部33と操作部32を収容空間24の上端開口から外部へ突出させた状態でハウジング10に組み付けられている。レバー30は、支持軸26及び軸受孔34を中心として、相手側コネクタMとの嵌合に備えて待機する初期位置(図12〜14を参照)と、相手側コネクタMとの嵌合を完了させる嵌合位置(図15を参照)との間で回動し得るようになっている。
【0032】
レバー式コネクタFを相手側コネクタMと嵌合する際には、図13に示すように、逆回転規制突起45と初期位置保持突起46を回転規制部20に対し周方向に挟むように係止させることで、レバー30を初期位置に保持しておく。このとき、操作部32は、電線束27の前方に位置する。この状態で、図14に示すように、相手側コネクタMのフード部50を下から嵌合空間15内に浅く嵌入し、相手側コネクタMのカムフォロア51をカム溝35の入口に進入させる。すると、相手側コネクタMの解除部52が初期位置保持突起46を弾性変形させて回転規制部20から解離させるので、レバー30は、嵌合位置側へ回動可能となる。但し、逆回転規制突起45が回転規制部20に係止しているので、レバー30が嵌合位置とは反対側(図8〜15における時計回り方向)へ回動することは規制されている。
【0033】
この状態から操作部32を下方へ動かすと、レバー30が嵌合位置側へ回動し、カム溝35とカムフォロア51との係合によるカム作用により、図15に示すように、レバー式コネクタFと相手側コネクタMが嵌合される。両コネクタF,Mを離脱する際には、レバー30を嵌合位置から初期位置へ回動させ、その後、両コネクタF,Mを上下に引き離せばよい。レバー30を初期位置へ戻すと、初期位置保持突起46が回転規制部20に係止することにより、レバー30の嵌合位置側への回動を規制される。これと同時に、逆回転規制突起45が回転規制部20に係止することにより、レバー30が嵌合位置と反対方向へ回動することが規制される。
【0034】
次に、レバー30をハウジング10に組み付ける作業について説明する。レバー30は、ガイド溝36の誘導口37が下方へ開口する向きとし、操作部32が電線束27の前方に位置するようにして、ハウジング10の上方からアーム部31を収容空間24内に挿入する。このとき、図8に示すように、操作部32で電線束27を後方へ押すようにするが、電線束27のうち操作部32で押される部分は、端子収容部11(電線導出面13)から離れているので、電線束27を後方へ曲げたときの抵抗は小さい。
【0035】
アーム部31を収容空間24内に挿入するときに、支持軸26を誘導口37に進入させる。この状態からレバー30を全体的に下方へ変位させると、支持軸26は、図9に示すように、最短案内部38のうち退避部39と共通の経路となっていない領域を移動し、さらにガイド溝36内を軸受孔34に向かって移動し、図10に示すように、幅広部40に到達する。レバー30の組付けが進むのに伴い、操作部32が電線導出面13に接近するのであるが、電線束27は、電線導出面13に近いほど電線28の間隔が前後左右に拡がった末広がり状をなしているため、操作部32が電線束27に対し前方から干渉することになる。
【0036】
ここで、各電線28は、電線導出面13の広い範囲に亘って分散配置された複数のキャビティ12に個別に挿入されているため、ハウジング10の電線導出面13に向かって末広がり状の電線束27を変形させることは困難である。そのため、レバー30の組付が進むのに伴い、操作部32は、電線束27との干渉を回避又は緩和するために前方へ変位する。これに伴い、レバー30が支持軸26を略支点して前方へ傾くように変位する。ところが、アーム部31の前方近傍には前側姿勢抑制部25Fが存在しているので、レバー30が前方へ傾くことによってアーム部31が前側姿勢抑制部25Fに当接し、レバー30の前傾変位と操作部32の前方変位が規制される。
【0037】
操作部32の前方変位が規制されると、操作部32と電線束27とが干渉する。しかも、電線束27は末広がり状なので、操作部32が電線導出面13に接近するほど操作部32と電線束27との干渉を回避することが困難となる。前側姿勢抑制部25Fと支持軸26との位置関係は一定なので、アーム部31が前側姿勢抑制部25Fに当接し、支持軸26がガイド溝36の最短案内部38に留まった状態では、レバー30の姿勢を前傾するように変化させることはできない。操作部32と電線束27の干渉が強くなると、レバー30の組付け動作の抵抗が増大し、作業性が低下することになる。
【0038】
この対策として、ガイド溝36に退避部39を設けている。退避部39は、最短案内部38から前側姿勢抑制部25F側へ張り出した形態なので、支持軸26が退避部39内へ変位することにより、アーム部31と前側姿勢抑制部25Fとの間に十分なクリアランスが空く状態となる。このクリアランスにより、レバー30の姿勢を支持軸26を略支点として前傾するように変化させることができる。図11に示すように、レバー30が前傾することによって、操作部32が電線束27から退避するように前方へ変位する。これにより、操作部32と電線束27との干渉を回避し易くなるので、レバー30を組み付け際の作業性が良好となる。
【0039】
また、支持軸26が誘導口37から誘導傾斜部41に至るまでの案内経路は、比較的深い深溝部42となっているので、支持軸26の突出端が深溝部42に摺接しても、摺動抵抗は小さい。したがって、レバー30の組み付けの際の抵抗も小さくて済む。支持軸26が誘導傾斜部41に進むと、支持軸26の突出端が誘導傾斜部41に摺接するため、摺動抵抗が徐々に増大していく。支持軸26が軸受孔34に到達して嵌合すると、支持軸26と誘導傾斜部41との摺動抵抗が一気に解消されるため、作業者は、この摺動抵抗の解消によって支持軸26が軸受孔34に嵌合したことを感得することができる。以上により、ハウジング10に対するレバー30の組み付け作業が完了する。
【0040】
レバー30をハウジング10に組み付ける過程では、逆回転規制突起45が離脱規制部18が乗り越えて切欠部17内に進入する。逆回転規制突起45が切欠部17内に進入すれば、逆回転規制突起45が離脱規制部18に係止することにより、レバー30は、ハウジング10に対し仮組みされた状態に保持され、ハウジング10から離脱する虞はない。
【0041】
また、逆回転規制突起45は、離脱規制部18を乗り越える際に、変形容易部44と一体となって左右方向外方(側壁部16から遠ざかって壁状部22に接近する方向)へ変位する。変形容易部44は、アーム部31のうちガイド溝36やカム溝35の形成されていない肉厚の領域に比べて弾性変形し易いので、逆回転規制突起45が離脱規制部18を乗り越える際の抵抗が小さくて済む。
【0042】
また、レバー30の組付け工程において、その工程終盤でレバー30を前傾させていくことにより、レバー30の組付け完了と同時に逆回転規制突起45が後側切欠溝19R内に進入させ、レバー30を初期位置に保持することが可能である。この場合、図11,12に示すように、逆回転規制突起45が、離脱規制部18の後端部又は側壁部16のうち切欠部17と後側切欠溝19Rとの間の領域を乗り越えて、後側切欠溝19R内に進入することになるが、上述同様、逆回転規制突起45が形成されている変形容易部44は撓み剛性が低いので、逆回転規制突起45が後側切欠溝19R内に進入する際の抵抗が小さくて済む。
【0043】
上述のように本実施例1のレバー式コネクタFは、外側面に支持軸26が形成され、電線導出面13から電線束27を導出させたハウジング10と、アーム部31を有するレバー30とを備えている。ハウジング10の外側面には、レバー30をハウジング10に組み付ける過程でアーム部31の外周縁が当接したときにレバー30の姿勢変化を抑制する前側姿勢抑制部25Fが形成されている。レバー30には、アーム部31の外周縁から延出した形態であり、レバー30をハウジング10に組み付ける過程で電線導出面13に接近するように変位する操作部32が形成されている。
【0044】
アーム部31には、支持軸26に嵌合することでレバー30をハウジング10に対して回動可能に支持する軸受孔34が形成されている。同じくアーム部31には、レバー30をハウジング10に組み付ける過程で支持軸26を軸受孔34へ誘導するガイド溝36が形成されている。ガイド溝36には退避部39が形成されている。レバー30をハウジング10に組み付ける過程では、アーム部31が前側姿勢抑制部25Fに当接した状態で支持軸26が退避部39内を移動することで、操作部32が電線束27から遠ざかるように変位することができる。
【0045】
このように本実施例のレバー式コネクタFによれば、レバー30をハウジング10に組み付ける過程でアーム部31が姿勢抑制部に当接してレバー30の姿勢変化が抑制されても、支持軸26が退避部39内を移動することにより、操作部32が電線束27から遠ざかるように変位する。これにより、操作部32が電線束27と干渉することに起因する作業性の低下を防止できる。また、退避部39の内側面が曲面のみで構成されているので、支持軸26が退避部39の内側面に摺接する際に、引っ掛かりがなく、レバー30組み付け時の作業性がよい。
【0046】
また、アーム部31の外周縁にはガイド溝36の誘導口37が開口して形成されており、ガイド溝36は、誘導口37と軸受孔34とを直線的に結んだ最短案内部38を有している。操作部32が電線束27と干渉する虞のない場合には、支持軸26を最短案内部38内を直線的に移動させることができるので、作業性が良好である。
【0047】
また、ガイド溝36は、軸受孔34の内径及び誘導口37の開口幅よりも幅寸法の大きい幅広部40を有しており、幅広部40の一部が退避部39となっている。この構成によれば、ガイド溝36の誘導口37が比較的狭いことにより、ガイド溝36と支持軸26を嵌める際にハウジング10とレバー30との位置関係が規定されるので、レバー30がハウジング10に対して不正な向きや姿勢で組み付けられることを回避できる。また、アーム部31が前側姿勢抑制部25Fに当接し、支持軸26が幅広部40内を移動する際には、ガイド溝36の幅方向における支持軸26の移動許容範囲が広いので、レバー30の姿勢や位置を変化させる際の自由度が高い。
【0048】
また、レバー30は、相手側コネクタMとの嵌合開始時に待機する初期位置と、相手側コネクタMとの嵌合を完了する嵌合位置との間で回動可能である。アーム部31におけるガイド溝36と反対側の面(内面)には、ガイド溝36と対応する領域から突出した形態の逆回転規制突起45が形成されている。ハウジング10には、逆回転規制突起45を係止させることで、初期位置のレバー30が嵌合位置とは反対側へ回転することを規制する回転規制部20が形成されている。アーム部31のうちガイド溝36の形成領域は、厚さが薄くて弾性変形し易いので、レバー30をハウジング10に組み付ける過程で、逆回転規制突起45が回転規制部20を乗り越える際の抵抗が低く抑えられる。
【0049】
また、逆回転規制突起45は、アーム部31におけるハウジング10(端子収容部11又は側壁部16)との対向面からハウジング10(端子収容部11)側へ突出した形態である。したがって、アーム部31の外周縁から径方向外方へ突出する形態の逆回転規制突起を形成した場合に比べると、アーム部31の外径を小さくすることができる。
【0050】
また、ガイド溝36には、逆回転規制突起45の形成領域を挟むように配された一対のスリット43が形成されている。ガイド溝36のうち逆回転規制突起45が形成されている領域は、一対のスリット43によって弾性変形し易い変形容易部44となっているので、逆回転規制突起45が回転規制部20を乗り越える際の抵抗が、より低く抑えられる。
【0051】
また、ガイド溝36は、アーム部31の外周縁に開口して形成された誘導口37と、軸受孔34の孔縁部から誘導口37側に向かってガイド溝36が深くなるように傾斜した誘導傾斜部41とを有している。逆回転規制突起45は、誘導傾斜部41よりも誘導口37側の領域(深溝部42)に配されている。ガイド溝36のうち誘導傾斜部41より誘導口37側の領域は、肉薄で弾性変形し易いので、逆回転規制突起45が回転規制部20を乗り越える際の抵抗が少ない。
【0052】
また、ハウジング10には離脱規制部18が形成されている。レバー30をハウジング10に組み付ける過程では、逆回転規制突起45が離脱規制部18に係止することで、レバー30がハウジング10から離脱することを規制される。このように、逆回転規制突起45は、レバー30の逆回転を規制する機能と、レバー30のハウジング10からの離脱を規制する機能とを兼ね備えているので、レバー30の形状を簡素化することができる。
【0053】
また、レバー30は、相手側コネクタMとの嵌合開始時に待機する初期位置と、相手側コネクタMとの嵌合を完了する嵌合位置との間で回動可能であり、アーム部31におけるガイド溝36の近傍位置には、初期位置にあるレバー30が嵌合位置側へ回動することを規制する初期位置保持突起46が形成されている。この初期位置保持突起46は、ガイド溝36と非対応の位置に配されているので、初期位置保持突起46を厚肉に形成することができた。したがって、レバー30を初期位置に保持する機能が高い。
【0054】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、レバーが一対のアーム部を有するが、レバーは、一枚板状のアーム部のみを有し、操作部がアーム部の外周縁から支持軸の軸線と平行に延出した形態であってもよい。
(2)上記実施例では、逆回転規制突起をガイド溝との対応領域に配したが、逆回転規制突起はガイド溝との対応領域とは異なる領域に配してもよい。
(3)上記実施例では、レバーには支持軸を軸受孔に誘導するためのガイド溝を形成したが、レバーは、ガイド溝を有しない形態であってもよい。
(4)上記実施例では、ガイド溝に逆回転規制突起を挟む一対のスリットを形成したが、ガイド溝は一対のスリットが形成されない形態であってもよい。
(5)上記実施例では、逆回転規制突起が、レバーの逆回転を規制する機能と、レバーのハウジングからの離脱を規制する機能とを兼ね備えているが、逆回転規制突起は、レバーの逆回転を規制する機能のみを有するものであってもよい。
(6)上記実施例では、逆回転規制突起がアーム部の内面に形成されているが、逆回転規制突起はアーム部の外面に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
F…レバー式コネクタ
M…相手側コネクタ
10…ハウジング
18…離脱規制部
20F…前側回転規制部(回転規制部)
20R…後側回転規制部(回転規制部)
26…支持軸
30…レバー
31…アーム部
34…軸受孔
36…ガイド溝
37…誘導口
41…誘導傾斜部
43…スリット
45…逆回転規制突起
図1
図2
図3
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