(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記自動制御モードにおいて、上記移動カムが上記第2方向の限界位置にあるとき、上記第2カムフォロア部は上記第2カム面の途中において上記第2保持面寄りの位置にあり、これにより、上記作動板の閉じ方向の限界位置では上記作動板が上記主壁から離れて少量の換気を許容することを特徴とする請求項3に記載の換気装置。
【背景技術】
【0002】
一般的な換気装置は、換気口を有する細長い装置本体と、この装置本体に回動可能またはスライド可能に支持され換気口を開閉する作動板と、この作動板を手動で開閉操作する操作部材とを備えている。
【0003】
上記のように手動で作動板を開閉操作する場合、適切な開閉制御がなされない場合もある。例えば、冬季に暖房している状況で換気通路を開いたまま放置すると、屋外の冷気が入り込んだり室内の暖気が逃げたりするため、暖房効率が低くなりエネルギーの浪費を招く。
【0004】
特許文献1、2に開示された換気装置は、細長い装置本体と、この装置本体内に回動可能かつ装置本体の長手方向にスライド可能に支持された細長い作動板と、この作動板を環境温度に応じて自動的に開閉する温度感応型アクチュエータを備えている。
【0005】
上記温度感応型アクチュエータは、移動カムと、この移動カムの一方側に配置された形状記憶バネ(形状記憶合金製のバネ、以下同じ)と、他方側に配置されたバイアスバネとを備えている。移動カムはこれら2つのバネの引張り力に応じて位置調節される。具体的に説明すると、高温時には形状記憶バネの弾性力が強まってバイアスバネの力に打ち勝ち、移動カムは一方側に移動し、この移動カムと作動板に形成されたカムフォロア部のカム作用により、作動板は開き位置へ回動する。低温時には形状記憶バネのバネ力が弱まるためバイアスバネの力で移動カムが他方側に移動し、この移動カムとカムフォロア部のカム作用により、作動板は閉じ位置へ回動する。
【0006】
特許文献1、2の換気装置は、さらに強制閉じ機能を備えている。この強制閉じ機能を果たすために、換気装置は、装置本体に固定された固定カムと、作動板に形成された他のカムフォロア部とを有している。例えば風雨の強い時には、操作部材の操作により作動板を一方側へスライドさせ、上記他のカムフォロア部と固定カムとのカム作用により、作動板を閉じ位置へ回動させ、雨水の侵入を防ぐ。
【0007】
特許文献1の第2実施形態の換気装置は、さらに強制開き機能を備えている。強制閉じおよび強制開きの機能を果たすために、固定カムには2つのカム面が形成され、作動板には固定カム用の2つのカムフォロア部が形成されている。例えば石油暖房ストーブやガスコンロ等を用いて酸素を多く必要とする時や室内の臭気を逃がしたい時には、操作部材の操作により作動板を上記強制閉じ方向と逆方向にスライドさせ、この作動板のカムフォロア部と固定カムとのカム作用により、作動板を開き位置に回動させる。
【0008】
特許文献1の換気装置では、スライダが装置本体の長手方向にスライド可能に配置されており、このスライダに移動カムが装置本体の長手方向に移動可能に支持されるとともに、形状記憶バネとバイアスバネが装着されている。スライダは、操作部材に連結されており、強制閉じ、強制開きの時には、操作部材により作動板とスライダが一緒に移動するようになっている。
特許文献2の換気装置では、形状記憶バネの一端が移動カムに連結され他端が装置本体に固定されており、バイアスバネの一端が移動カムに連結され他端が操作部材に連結されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1、2の換気装置では、操作部材を操作して作動板を強制的に閉じる際に、形状記憶バネやバイアスバネの抵抗を受けやすく、安定した操作が行なえなかった。
特許文献1の第2実施形態の換気装置では、強制開き操作の際にも同様の不都合があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、換気装置において、
(ア)主壁に換気口を形成してなる細長い装置本体と、
(イ)上記装置本体の長手方向に延び、一方の縁部に、上記装置本体に回動可能かつ上記装置本体の長手方向にスライド可能に支持される軸部を有し、他方の縁部に第1、第2のカムフォロア部を有し、回動に伴い上記主壁に近づいたり離れたりして上記換気口を開閉する作動板と、
(ウ)自動制御位置と、この自動制御位置から第1方向側に離れた強制閉じ位置と、この自動制御位置から上記第1方向とは逆の第2方向側に離れた強制開き位置との間で、上記装置本体の長手方向に移動可能にして上記装置本体に支持されるとともに、上記作動板の回動を許容するようにして上記作動板に連結された操作部材と、
(エ)上記操作部材が上記自動制御位置にあるときに、環境温度に応じて上記作動板を開閉する自動制御モードを実行する温度感応型アクチュエータと、
を備え、上記温度感応型アクチュエータは、
a.上記装置本体の長手方向に移動可能であり、上記室内側に向かって第1方向に進むように傾斜した互いに平行をなす第1、第2のカム面を有し、上記第1方向の移動に伴い上記第1カム面が上記第1カムフォロア部と協働して上記作動板を開き方向に回動させ、上記第2方向の移動に伴い上記第2カム面が上記第2カムフォロア部と協働して上記作動板を閉じ方向に回動させる移動カムと、
b.一端が上記移動カムに固定され他端が上記装置本体に固定され、上記移動カムを上記第1方向に付勢する形状記憶合金製のバネと、
c.一端が上記移動カムに固定され他端が上記操作本体に固定され、上記移動カムを上記第2方向に付勢するバイアスバネと、
d.上記装置本体に固定され、上記移動カムの上記第1方向への移動を規制することにより、上記自動制御モードでの上記作動板の開き方向の限界位置を決定する第1ストッパと、
e.上記装置本体に固定され、上記移動カムの上記第2方向への移動を規制することにより、上記自動制御モードでの上記作動板の閉じ方向の限界位置を決定する第2ストッパと、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、自動制御モードから強制閉じや強制開きを実行する際に、作動板の第1、第2カムフォロア部が移動カムの第1、第2カム面に沿って移動するので、形状記憶合金製のバネやバイアスバネの抵抗が少なくて済み、操作性を高めることができる。
第1、第2ストッパにより移動カムの第1、第2方向の移動を制限することにより、自動制御モードでの作動板の開き方向、閉じ方向の限界位置を決定することができる。
作動板が強制閉じ状態にあるとき、環境温度が高温になっても、第1ストッパにより移動カムの第1方向への移動が制限されているので、作動板に移動カムのカム作用による開き方向の力が作用することはなく、作動板の強制閉じ状態を確実に維持できる。
作動板が強制開き状態にあるとき、環境温度が低温になっても、第2ストッパにより移動カムの第2方向への移動が制限されているので、作動板に移動カムのカム作用による閉じ方向の力が作用することはなく、作動板の強制開き状態を維持できる。
【0013】
好ましくは、さらに、上記装置本体の長手方向に延びて上記装置本体に固定されたスライドガイドを備え、このスライドガイドの長手方向中間部にはガイド窓が形成されており、上記移動カムは、上記スライドガイドのガイド窓に挿入された状態で上記スライドガイドにスライド可能に支持され、上記ガイド窓の長手方向両側縁が、上記第1、第2のストッパとして提供される。
上記構成によれば、第1、第2ストッパの構造を簡略化できるとともに、温度感応アクチュエータをユニット化することができる。
【0014】
好ましくは、上記作動板は、さらに第3、第4のカムフォロア部を有し、上記装置本体には、上記移動カムから上記装置本体の長手方向に離れた位置において、固定カムが固定されており、上記固定カムは、上記移動カムの上記第1、第2のカム面と平行な第3、第4のカム面を有し、上記自動制御モードでは上記第3、第4のカムフォロア部と干渉せずに上記作動板の回動を許容し、上記自動制御モードで上記移動カムが上記第1ストッパにより上記第1方向の限界位置にあるとき、上記第4カムフォロア部が上記第4カム面に近接した位置にあり、上記自動制御モードで上記移動カムが上記第2ストッパにより上記第2方向の限界位置にあるとき、上記第3カムフォロア部が上記第3カム面に近接した位置にある。
上記構成によれば、自動制御モードにおいて環境温度が高く移動カムが第1方向の限界位置にある時(作動板が開き方向の限界位置にある時)に強制閉じ操作を行う場合には、作動板の第2カムフォロア部と移動カムの第2カム面とのカム作用、および作動板の第4カムフォロア部と固定カムの第4カム面とのカム作用により、作動板を安定して閉じ状態にすることができる。
また、自動制御モードにおいて環境温度が低く移動カムが第2方向の限界位置にある時(作動板が閉じ方向の限界位置にある時)に強制開き操作を行う場合には、作動板の第1カムフォロア部と移動カムの第1カム面とのカム作用、および作動板の第3カムフォロア部と固定カムの第3カム面とのカム作用により、作動板を安定して閉じ状態にすることができる。
【0015】
好ましくは、上記移動カムは、上記第1カム面に連なり上記装置本体の長手方向に延びる第1保持面と、上記第2カム面に連なり上記装置本体の長手方向に延びる第2保持面とを有し、上記固定カムは、上記第3カム面に連なり上記装置本体の長手方向に延びる第3保持面と、上記第4カム面に連なり上記装置本体の長手方向に延びる第4保持面を有し、上記操作部材が上記強制開き位置にあり、上記作動板が開き状態にあるとき、上記第1カムフォロア部が上記移動カムの上記第1保持面に位置し、上記第3カムフォロア部が、上記固定カムの上記第3保持面に位置し、上記操作部材が上記強制閉じ位置にあり、上記作動板が閉じ状態にあるとき、上記第2カムフォロア部が上記移動カムの上記第2保持面に位置し、上記第4カムフォロア部が、上記固定カムの上記第4保持面に位置する。
上記構成によれば、作動板が強制閉じ状態にあるとき、作動板の第4カムフォロア部が固定カムの第4保持面に保持されているので、環境温度の変化に拘わらず作動板の強制閉じ状態をより一層確実に維持できる。また、作動板が強制開き状態にあるとき、作動板の第3カムフォロア部が固定カムの第3保持面に保持されているので、環境温度の変化に拘わらず作動板の強制開き状態をより一層確実に維持できる。
【0016】
好ましくは、上記自動制御モードにおいて、上記移動カムが上記第2方向の限界位置にあるとき、上記第2カムフォロア部は上記第2カム面の途中において上記第2保持面寄りの位置にあり、これにより、上記作動板の閉じ方向の限界位置では上記作動板が上記主壁から離れて少量の換気を許容する。
【0017】
本発明の他の態様は、換気装置において、
(ア)主壁に換気口を形成してなる細長い装置本体と、
(イ)上記装置本体の長手方向に延び、一方の縁部に、上記装置本体に回動可能かつ上記装置本体の長手方向にスライド可能に支持される軸部を有し、他方の縁部に第1、第2のカムフォロア部を有し、回動に伴い上記主壁に近づいたり離れたりして上記換気口を開閉する作動板と、
(ウ)自動制御位置と、この自動制御位置から第1方向側に離れた強制閉じ位置と、この自動制御位置から上記第1方向とは逆の第2方向側に離れた強制開き位置との間で、上記装置本体の長手方向に移動可能にして上記装置本体に支持されるとともに、上記作動板の回動を許容するようにして上記作動板に連結された操作部材と、
(エ)上記操作部材が上記自動制御位置にあるときに、環境温度に応じて上記作動板を開閉する自動制御モードを実行する温度感応型アクチュエータと、
を備え、上記温度感応型アクチュエータは、
a.上記装置本体の長手方向に移動可能であり、上記室内側に向かって第1方向に進むように傾斜した互いに平行をなす第1、第2のカム面を有し、上記第1方向の移動に伴い上記第1カム面が上記第1カムフォロア部と協働して上記作動板を開き方向に回動させ、上記第2方向の移動に伴い上記第2カム面が上記第2カムフォロア部と協働して上記作動板を閉じ方向に回動させる移動カムと、
b.一端が上記移動カムに固定され他端が上記装置本体に固定され、上記移動カムを上記第1方向に付勢する形状記憶合金製のバネと、
c.一端が上記移動カムに固定され他端が上記操作本体に固定され、上記移動カムを上記第2方向に付勢するバイアスバネと、
d.上記移動カムから上記装置本体の長手方向に離れて上記装置本体に固定され、2つの保持面を有する保持部材と、
を備え、
上記作動板は、さらに2つの被保持部を有し、
上記操作部材が上記強制閉じ位置にあり、上記作動板が閉じ状態にあるとき、上記作動板の一方の被保持部が上記保持部材の一方の保持面に保持され、
上記操作部材が上記強制開き位置にあり、上記作動板が開き状態にあるとき、上記作動板の他方の被保持部が、上記保持部材の他方の保持面に保持されることを特徴とする。
【0018】
上記他の態様によれば、自動制御モードから強制閉じや強制開きを実行する際に、作動板の第1、第2カムフォロア部は移動カムの第1、第2カム面に沿って移動するので、形状記憶合金製のバネやバイアスバネの抵抗が少なくて済み、操作性を高めることができる。
作動板が強制閉じ状態にあるとき、環境温度が高温になっても、上記作動板の一方の被保持部が保持部材の一方の保持面に保持されているので、作動板の強制閉じ状態を維持できる。
作動板が強制開き状態にあるとき、環境温度が低温になっても、上記作動板の他方の被保持部が保持部材の他方の保持面に保持されているので、作動板の強制開き状態を維持できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、小さな操作力で自動換気制御から強制閉じや強制開きへの移行を実行することができる。また、強制閉じ状態および強制開き状態を確実に維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る換気装置を、図面を参照しながら説明する。本実施形態の換気装置では、室内側から見て左方向が特許請求の範囲の第1方向に相当し、右方向が第2方向に相当する。
本実施形態の換気装置は上框一体型と称されるものであり、サッシ戸の上框としての役割を有する。
図1、
図2(A)に示すように、換気装置は、主たる構成要素として、左右方向に水平に細長く延びる装置本体10と、同方向に細長く延びる作動板20と、操作つまみ30(操作部材)と、操作つまみ30用の支持フレーム40と、固定カム50(保持部材)と、温度感応型アクチュエータ60とを備えている。
【0022】
図1、
図2(A)に示すように、上記装置本体10は、室内側の樹脂製押出型材11および室外側の2本のアルミ製押出型材12、13を組み付けるとともに、これら型材11〜13の長手方向両端にキャップ14を嵌め込むことにより構成されている。装置本体10の下側に形成された嵌合凹部15には、サッシ戸のガラス板(図示しない)の上縁部が嵌るようになっており、上側に形成された断面U字形のガイド部16には、窓枠の上レール(図示しない)が収容されるようになっている。
【0023】
図2(A)に示すように、型材11〜13は、垂直をなす壁11a,12a,13aをそれぞれ有している。室内側の壁11aの右端部には左右に延びるガイド穴(図示しない)が形成されており、それ以外の部位には多数の換気口11xが左右に間隔をおいて形成されている。中間の壁12a(主壁)の右端部には、左右に延びるガイド穴(図示しない)が形成されており、それ以外の部位には多数の換気口12xが左右に間隔をおいて形成されている。室外側の壁13aには、多数の換気口13xが左右に間隔をおいて形成されている。
【0024】
装置本体10は、その内部に換気通路17を有している。この換気通路17は、壁11a,12aの換気口11x、12xを介して室内側と連通し、壁13aの換気口13xを介して室外側と連通している。
中間の壁12aの上縁部の室外側には、断面円形の軸支溝12yが形成されている。
【0025】
作動板20はアルミ製の押出型材からなり、
図4に示すように、その下縁の室内側から見て右寄りには突起21が形成されている。この突起21の右端21aが第1カムフォロア部として提供され、左端21bが第2カムフォロア部として提供される。
作動板20の左端部の下縁の左側には、短い距離だけ離れた突起23,24が形成されている。左側の突起23が第3カムフォロア部(被保持部)として提供され、右側の突起24が第4カムフォロア部(被保持部)として提供される。
【0026】
作動板20の上縁部には断面円形の軸部25が形成され、右端近傍には係合穴26が形成されている。
作動板20の室内側の面にはその下縁部および長手方向両端部にシール用のパッキン27が貼り付けられている。作動板20の室外側の面には緩衝用のパッキン28(
図2(A)参照)が貼り付けられている。
【0027】
図2(A)に示すように、作動板20は換気通路17内に収容されており、その軸部25が装置本体10の軸支溝12yに挿入されることにより、作動板20は装置本体10に長手方向(左右方向)にスライド可能かつ回動可能に支持されている。
作動板20が中間の壁12aから離れると、この壁12aに形成された換気口12xが開放されるため、室内外の換気を行うことができる。全開状態では作動板20のパッキン28が装置本体10に当たる。
【0028】
作動板20の傾斜量に応じて換気量が調節される。
図2(B)に示すように作動板20が壁12aに近づくと、換気が抑制される。さらに
図2(C)に示すように作動板20のパッキン27が壁12aに接すると、壁12aの換気口12xが閉じられ、換気通路17は遮断状態となる。
【0029】
図1に示すように、装置本体10の室内側の壁11aの右端部の室内側には、長方形の樹脂製の支持フレーム40が装着されており、この支持フレーム40に、操作つまみ30が左右方向にスライド可能に支持されている。支持フレーム40は左右に細長い窓41を有しており、この窓41から操作つまみ30の一部が露出している。
【0030】
操作つまみ30は、樹脂製の室内側部材31(
図3(A)参照)と室外側部材32(
図2(A)参照)を組み付けることにより構成されている。室内側部材31は、左右に細長く形成されており、支持フレーム40の窓41に挿入されて室内に突出する中央の操作凸部31aと、左右の翼部31bと、室外側に突出する係合凸部31cを有している。室外側部材32は中空の箱形状をなし、係合凸部31cに取り付けられて室外側に突出している。室外側部材32には圧縮コイルバネが内蔵されている。
【0031】
操作つまみ30は、装置本体10の壁11a,12aの前述したガイド穴に左右方向にスライド可能に支持されている。
操作つまみ30の室外側部材32が上記作動板20の係合穴26に入り込むことにより、操作つまみ30と作動板20が連結されており、作動板20は操作つまみ30と一緒に装置本体10の長手方向にスライドするようになっている。なお、この連結は、作動板20の回動を許容している。
【0032】
操作つまみ30は、3つの操作位置、すなわち中央の「自動制御位置」と左寄りの「強制閉じ位置」と右寄りの「強制開き位置」との間でスライド可能であり、各位置でロックされるようになっている。このロック機能を得るために、
図3に示すように、支持フレーム40の窓41の左右縁には室外側に突出する突起41aがそれぞれ形成されている。操作つまみ30の室内側部材31の左右の翼部31bにおける室内側の面には、操作凸部31aの近傍に凹部31x、操作凸部31aから離れた位置に凹部31y、左右端に段差31zが、それぞれ形成されている。
【0033】
図3(A)に示す「自動制御位置」では、操作凸部31aが窓41の中央に位置し、左右一対の凹部31yに窓41の左右縁の突起41aが嵌っている。
図3(B)に示す「強制閉じ位置」では、操作凸部31aが窓41の左端部に位置し、左縁の突起41aが左の凹部31x嵌り、右縁の係合突起41aが右の段差31zに係合している。
図3(C)に示す「強制開き位置」では、操作凸部31aが窓41の右端部に位置し、右縁の突起41aが右側の凹部31xに嵌り、左縁の突起41aが左の段差31zに係合している。
上記ロック状態は、室内側部材31を室外側部材32に内蔵されたコイルバネに抗して押すことにより解除することができる。
【0034】
図1、
図2(A)に示すように、室内側壁部11aの室内側の面には、右端部以外の部位において、フィルタ45と、このフィルタ45を支持するフィルタ押さえ46が装着されている。フィルタ45は、室内側の壁11aに形成された換気口11xを覆っている。
【0035】
装置本体10の換気通路17の底部には、
図2(A)、
図8に示す固定カム50が固定されている。この固定カム50は、後述する移動カム70から装置本体10の長手方向に離れて(本実施形態では左方向に離れて)配置されている。固定カム50は、後述の強制閉じ動作又は強制開き動作の際に、作動板20の突起23,24と協働して作動板20を閉じたり開いたりする役割と、作動板20の全閉位置および全開位置を保持する役割を担う。
【0036】
固定カム50はその左側にカム面51(第3カム面)を有し,その右側にカム面52(第4カム面)を有している。これらカム面51,52は互いに平行をなしており、上から見て装置本体10の長手方向に対して傾斜している。本実施形態では室内側に向かって左方向に進むように傾斜している。さらに固定カム50は、カム面51の室外側の一端に連なり装置本体10の長手方向に延びる保持面53(第3保持面)と、カム面52の室内側の一端に連なり装置本体10の長手方向に延びる保持面54(第4保持面)とを有している。固定カム50は、後述するように自動制御モードにおいて作動板20の突起23、突起24と所定の位置関係を有している。
【0037】
図2(A)に示すように、温度感応型アクチュエータ60は、装置本体10の右端部において換気通路17に収容されている。
図5〜
図8に示すように、温度感応型アクチュエータ60は、装置本体10の長手方向に延びて装置本体10に固定されたスライドガイド61と、このスライドガイド61の両端に固定されたバネホルダ62,63と、引張コイルバネからなる形状記憶バネ65(形状記憶合金製のバネ)と、引張コイルバネからなるステンレス製のバイアスバネ66と、移動カム70と、を備えており、ユニット化されている。
【0038】
スライドガイド61は、断面U字形をなし、室内側の起立壁61aと室外側の起立壁61bを有している。室内側の起立壁61aにはガイド窓61cが形成されており、このガイド窓61cの左縁61dは第1ストッパとして提供され、右縁61e第2ストッパとして提供される。
【0039】
上記移動カム70は、スライドガイド61にスライド可能に支持されている。移動カム70は、室内側から室外側に向かって順に、カム部70a,係合部70b、バネホルダ部70cを有している。係合部70bはスライドガイド61のガイド窓61cに収容され、バネホルダ部70cは、スライドガイド61内に配置され、カム部70aはスライドガイド61から室内側に突出している。
【0040】
形状記憶バネ65は移動カム70の左側においてスライドガイド61内に収容され、一端がバネホルダ62に掛けられ、他端が移動カム70のバネホルダ部70cに掛けられている。バイアスバネ66は移動カム70の右側においてスライドガイド61内に収容され、一端がバネホルダ63に掛けられ、他端が移動カム70のバネホルダ部70cに掛けられている。移動カム70は、形状記憶バネ65とバイアスバネ66により反対方向に付勢されている。
【0041】
上記形状記憶バネ65は、温度が上昇するにしたがって、自然長が減少する特性、換言すれば引張り弾性力がほぼリニアに増大する特性を有している。したがって、温度感応型アクチュエータ60において、移動カム70は温度環境に応じて両バネ65,66の弾性力が均衡する位置になるように制御される。
【0042】
移動カム70の係合部70bはガイド窓61c内で装置本体10の長手方向に所定ストロークにわたって移動可能であり、左右の縁61d、61eに当たることによりその移動を制限されている。
【0043】
移動カム70はカム溝71を有している。このカム溝71の両側面が互いに平行なカム面75,76として提供される。カム面75,76は、上から見て装置本体10の長手方向に対して傾斜している。本実施形態では室内側に向かって左方向に進むように傾斜しており、その傾斜角は固定カム50のカム面51,52の傾斜角と実質的に等しい。
【0044】
移動カム70は、右側のカム面75(第1カム面)の室外側の端に連なり装置本体10の長手方向に延びる保持面77(第1保持面)と、左側のカム面76の室内側の端に連なり装置本体10の長手方向に延びる保持面78(第2保持面)とを有している。
【0045】
上記構成において、まず自動換気制御モードについて説明する。この自動換気制御モードは、操作つまみ30を
図3(A)に示す自動制御位置にすることにより実行される。作動板20の長手方向の位置は操作つまみ30の位置により決定され、
図8(A)、(B)に示すように、作動板20の突起23と突起24との間に固定カム50が位置している。換言すると、作動板20がスライドせずに回動する際に、作動板20は固定カム50の干渉を受けない。
【0046】
自動制御モードでは、移動カム70の位置が形状記憶バネ65とバイアスバネ66の弾性力の釣り合いにより決定され、この移動カム70のカム溝71と作動板20の突起21とのカム作用により作動板20の開度が決定される。
【0047】
温度が低下すると、形状記憶バネ65の弾性力が弱まるので、バイアスバネ66の力により移動カム70は室内側から見て右方向に移動し、作動板20の突起21と移動カム70のカム溝71とのカム作用(厳密には、突起21の左端21bとカム面76とのカム作用)により、作動板20が回動して壁12aに近づき開度が減少する。温度がさらに低下して低温側設定温度(本実施形態では7°C)に達すると、
図8(A)に示すように作動板20の突起21がカム溝71の室内側の端に近づき、作動板20が
図2(B)に示す閉じ状態となる。自動換気制御モードでの閉じでは、第1突起21がカム溝71の室内側の端に到達せず(突起21の左端21bがカム面76の途中の位置にあり)、作動板20は完全な閉じではなく1/3程度開いており(換言すれば2/3閉じ)、少量の換気が可能な状態である。
【0048】
図8(A)に示すように、環境温度が低温側設定温度に達した時、移動カム70の係合部70bがスライドガイド61のガイド窓61cの右縁61e(
図6参照)に当たるため、環境温度がさらに低下しても、移動カム70はそれ以上右方向への移動するのを阻止される。換言すればバイアスバネ66がそれ以上縮むのを阻止される。その結果、作動板20は上記2/3閉じの状態を維持される。
【0049】
環境温度が高くなると、形状記憶バネ65の弾性力が強まるので、
図8(B)に示すように、移動カム70は室内側から見て左方向に移動し、作動板20の突起21と移動カム70のカム溝71とのカム作用(厳密には、突起21の右端21aとカム面75とのカム作用)により、作動板20が壁12aから離れる方向に回動して作動板20の開度が増大する。環境温度がさらに上昇して高温側設定温度(本実施形態では13°C)に達すると、
図8(B)に示すように作動板20の突起21がカム溝71の室外側の端に至り、作動板20が
図2(A)に示す全開状態となる。
【0050】
図8(B)に示すように、環境温度が高温側設定温度に達して突起21がカム溝71の室外側の端に達した時、移動カム70の係合部70bがスライドガイド61のガイド窓61cの左縁61d(
図6参照)に当たるため、環境温度がさらに上昇しても、移動カム70はそれ以上左方向への移動するのを阻止される。換言すれば、形状記憶バネ65がそれ以上縮むのを阻止される。その結果、突起21は、カム溝71の室外側の端に位置した状態を維持される。
【0051】
環境温度が高温側設定温度と低温側設定温度との間にある時には、形状記憶バネ65の弾性力がほぼリニアに変化するため、移動カム70のカム溝71と突起21とのカム作用により、環境温度に応じて作動板20の開度が調節される。上記自動換気制御での作動板20の環境温度に対応した開度調節は、作動板20の装置本体10長手方向へのスライドを伴わないので、バネ65,66の負担は軽くて済み、バネ65,66の小型化を図ることができる。
【0052】
暴風雨の際には、環境温度とは無関係に作動板20を全閉状態にすることが要求される。この場合、操作つまみ30の自動制御位置でのロック状態を外し、
図3(B)に示すように、操作つまみ30を室内側から見て左方向に移動させ、強制閉じ位置にする。この強制閉じ操作の過程で、操作つまみ30に追随して作動板20が左方向に移動する。
作動板20が左方向に移動すると、作動板20の突起21と移動カム70のカム溝71とのカム作用、および作動板20の突起24と固定カム50のカム面52とのカム作用により、作動板20が壁12aに向かって回動し、
図2(C)の全閉状態になる。この強制閉じ操作において、作動板20の突起21はカム溝71に沿って移動するので、形状記憶バネ65やバイアスバネ66の抵抗を殆ど受けない。強制閉じ操作時のカム作用の詳細については後述する。
【0053】
操作つまみ30が強制閉じ位置に達すると、
図9に示すように作動板20の突起21が移動カム70のカム面76を超えて保持面78に至り、突起24が固定カム50のカム面52を越えて保持面54に至るので、強風でも安定して作動板20の閉じ状態を維持できる。
【0054】
なお、作動板20の強制閉じ位置にあっても、移動カム70は、ガイド窓71cの両側縁71d、71eで決められた移動ストロークの範囲で移動可能である。低温設定温度以下の場合、すなわち移動カム70が右方向への限界位置にある時には、
図9(A)に示すように、作動板20の突起21は移動カム70の保持面78の左端部に位置している。高温設定温度以上の場合、すなわち移動カム70が左方向への限界位置にある時には、
図9(B)に示すように、作動板20の突起21は移動カム70の保持面78の右端部に位置している。
【0055】
上記作動板20が強制閉じ位置にある時、移動カム70は
図9(B)に示す限界位置より左方向に移動せず、したがって、移動カム70のカム面75と作動板20の突起21とのカム作用により作動板20が開き方向の力を受けることはない。しかも、
図9(B)に示すように作動板20の突起24が固定カム50の保持面54に保持されているので、作動板20が開き方向に回動することはない。
【0056】
環境温度と無関係に室内を換気する場合には、操作つまみ30を室内側から見て右方向に移動させ、
図3(C)の強制開き位置にする。この強制開き操作の過程で、操作つまみ30に追随して作動板20が右方向に移動する。
作動板20が右方向に移動すると、作動板20の突起21と移動カム70のカム溝71とのカム作用および作動板20の突起23と固定カム50のカム面53とのカム作用により、作動板20が壁12aから離れる方向に回動し、
図2(A)の全開状態になる。この強制開き操作において、作動板20の突起21はカム溝71に沿って移動するので、形状記憶バネ65やバイアスバネ66の抵抗を殆ど受けない。強制開き操作時のカム作用の詳細については後述する。
【0057】
操作つまみ30が強制開き位置に達すると、
図10に示すように作動板20の突起21が移動カム70のカム面75を超えて保持面77に至り、作動板20の突起23が固定カム50のカム面51を越えて保持面53に至るので、安定して作動板20の全開状態を維持できる。
【0058】
なお、作動板20が強制開き位置にあっても、移動カム70は上述の所定ストロークの範囲で移動可能である。低い温設定温度以下の場合、すなわち移動カム70が右方向への限界位置にある時には、
図10(A)に示すように、作動板20の突起21は移動カム70の保持面77の左端部に位置している。高温設定温度以上の場合、すなわち移動カム70が左方向への限界位置にある時には、
図10(B)に示すように、作動板20の突起21は移動カム70の保持面77の右端部に位置している。
【0059】
上記作動板20が強制開き位置にある時、移動カム70は
図10(A)に示す限界位置より右方向に移動せず、したがって、移動カム70のカム面76と作動板20の突起21とのカム作用により作動板20が閉じ方向の力を受けることはない。しかも、
図10(A)に示すように作動板20の突起23が固定カム50の保持面53に保持されているので、作動板20が閉じ方向に回動することはない。
【0060】
以下、環境温度毎に場合分けして、自動制御モードからの強制閉じ操作時および強制開き操作時における移動カム70と固定カム50のカム作用について、主に
図11(A)、(B)を参照しながら、詳述する。
図11(A)、(B)において、作動板20の突起21,23,24は3つの位置で示されている。自動制御の位置での突起21,23,24に符号(X)を付し、強制閉じの位置での突起21,23,24に符号(Y)を付し、強制開きの位置での突起21,23,24に符号(Z)を付す。
【0061】
最初に、環境温度が低温設定温度以下の場合について
図11(A)を参照しながら説明する。自動制御モードでは作動板20の突起21は符号21(X)で示すようにカム溝71の途中において室内側寄りに位置している。この状態で作動板20を左方向の強制閉じ位置に移動させると、突起21とカム溝71のカム作用により(より具体的には突起21の左端21bとカム面76のカム作用により)、作動板20は壁12aに対して斜めに移動しながら近づき全閉となる。移動カム70が左方向の限界位置にあるため、突起21がカム面76を左方向に押しても移動することがなく、カム作用を安定して行なうことができる。
【0062】
作動板20がさらに強制閉じ位置に向かって左方向に移動すると、突起21は保持面78に沿って移動し、符号21(Y)に示すように保持面78の左端部に至る。
図11(A)に示すように、低温設定温度以下での自動制御モードでは、作動板20の突起24は符号24(X)で示すようにカム面52から離れた位置にあり、上記強制閉じ操作の過程で、作動板20の突起24は固定カム50のカム面52に接することなく斜めに移動した後で左方向に直線的に移動することにより、符号24(Y)で示すように保持面54に至る。
【0063】
低温設定温度以下での自動制御では、
図11(A)に示すように、作動板20の突起23は符号23(X)で示すように固定カム50のカム面51に近接した位置にある。同様に、突起21の右端21aも移動カム70のカム面75に近接した位置にある。そのため、作動板20を自動制御位置から右方向の強制開き位置に移動させると、突起23とカム面51のカム作用、および突起21とカム面75のカム作用により、作動板20は壁12aに対して斜めに移動しながら離れて全開となる。
作動板20がさらに強制開き位置に向かって右方向に移動すると、突起23が符号23(Z)で示すように保持面53に至り、突起21が符号21(Z)で示すように保持面77の左端部に至る。
【0064】
次に、環境温度が、高温設定温度以上の場合について
図11(B)を参照しながら説明する。自動制御モードでは作動板20の突起21は符号21(X)で示すようにカム溝71の室外側の端に位置している。突起24は符号24(X)で示すように固定カム50のカム面52に近接した位置にある。同様に突起21の左端21bもカム面76に近接した位置にある。そのため、作動板20を自動制御位置から左方向の強制閉じ位置に移動させると、突起24とカム面52のカム作用、および突起21とカム面76のカム作用により、作動板20は壁12aに対して斜めに移動しながら近づいて全閉となる。
作動板20がさらに強制閉じ位置に向かって左方向に移動すると、突起24が符号24(Y)で示すように保持面54に至り、突起21が符号21(Y)で示すように保持面78の右端部に至る。
【0065】
自動制御位置から作動板20を右方向の強制開き位置に移動させると、突起21はそのまま右方向に直線的に移動し、符号21(Z)で示すように保持面77の右端部に至る。低温設定温度以下で自動制御モードを実行している時には、作動板20の突起23は符号23(X)で示すようにカム面51から離れた位置にある。そのため、上記強制開き操作により、作動板20の突起は右方向に直線的に移動することにより、符号23(Z)で示すように保持面53に至る。
【0066】
環境温度が低温設定温度と高温設定温度との間にある場合には、自動制御モードにおいて作動板20の突起21はカム溝71内において、
図11(A)に符号21(X)で示す位置と
図11(B)において符号21(X)で示す位置との間にある。この場合に、強制閉じ操作または強制開き操作を行うと、移動カム70のカム溝71と作動板20の突起21のカム作用だけで作動板20の開閉が行なわれる。
【0067】
上記実施形態において、自動制御モードでの低温設定温度以下のときに、作動板20を全閉にしてもよい。この場合、作動板20の突起21はカム溝71の室内側の端に至る。
【0068】
上記実施形態において、装置本体10が長い場合には、固定カム50を装置長手方向に間隔をおいて複数設置してもよい。
装置本体10が短い場合には固定カム50を省いてもよい。この場合、第1、第2ストッパ(上記実施形態におけるガイド溝61cの左右の縁)が、移動カム70のカム作用による作動板20の回動を禁じることにより、作動板20の強制閉じ状態、強制開き状態を維持する。
【0069】
上記実施形態において、第1、第2のストッパを省いてもよい。この場合、固定カム50(保持部材)の第3保持面53、第4保持面54が作動板20の突起23,24(被保持部)を保持することにより、作動板20の強制閉じ状態、強制開き状態を維持する。この場合、自動制御モードでの閉じを、全閉とするのが好ましい。
【0070】
本発明は上記実施形態に制約されず種々の態様が可能である。
形状記憶バネ,バイアスバネとして、引張コイルバネを用いたが、圧縮コイルバネを用いてもよい。この場合、第1実施形態において形状記憶バネ,バイアスバネの配置を左右逆にする。
本発明の換気装置はサッシ戸の上框と別体をなし上框の下に装着するようにしてもよいし、サッシ戸以外の場所に設置してもよい。