特許第6951743号(P6951743)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6951743
(24)【登録日】2021年9月29日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20211011BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
   A01G31/00 612
   A01G7/00 603
   A01G31/00 601B
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-193316(P2017-193316)
(22)【出願日】2017年10月3日
(65)【公開番号】特開2019-62837(P2019-62837A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】510193153
【氏名又は名称】山本電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】大澤 政敏
【審査官】 佐藤 智子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−237161(JP,A)
【文献】 特開2012−239407(JP,A)
【文献】 特開2004−301810(JP,A)
【文献】 特開2014−017984(JP,A)
【文献】 特開2006−317195(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0128543(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00−31/06
A01G 7/00
A01G 9/00−9/08
A01G 9/24
G01N 21/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向で開口した筒状体と、前記筒状体を前後方向で仕切る仕切り部と、前記筒状体の前端開口と後端開口をそれぞれ開閉自在に閉塞する蓋部とを備えたボックスに、
第1散乱光センサ部を、前記筒状体の仕切り部前方を遮光部、前記前端開口側の蓋部を透光部とし、前方を受光面として前記仕切り部に受光素子を配設して構成し、
第2散乱光センサ部を、上方を受光面として前記仕切り部後方の上側部に受光素子を配設して構成し、更に、
温度・湿度センサ部を、前方を感温・感湿面として前記仕切り部に感温・感湿素子を配設して構成したことを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
請求項1に記載したセンサ装置において、
受光素子および感温・感湿素子は基板に着脱自在に取り付けられてモジュール化されており、前記基板は仕切り部後方側に収容され固定されていることを特徴とするセンサ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載したセンサ装置において、
筒状体の仕切り部後方側には、ベントフィルタが配設されていることを特徴とするセンサ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載したセンサ装置において、
ボックスは、仕切り部及び前記仕切り部前方の筒状体が遮光材で一体成形されており、前記仕切り部後方の筒状体が直状に連設されていることを特徴とするセンサ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載したセンサ装置において、
筒状体の対向する隅部が内方に膨出し、その膨出隅部の前後方向両端側にはネジ孔が形成されており、蓋部が前記ネジ孔を利用したネジ止めにより固定されていることを特徴とするセンサ装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載したセンサ装置において、
感湿素子が感温素子と共に温度・湿度センサ部を構成していることを特徴とするセンサ装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載したセンサ装置において、
温室内での植物への養液を制御する給液制御システムの一部を構成することを特徴とするセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室内の植物生育環境の監視に適したセンサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近では、トマト等の養液栽培では、肥料成分として養液を植物の吸収状況に応じて供給しようとする培養液管理法が採用されている。当該培養液管理法では、必要な肥料を必要なタイミングで供給することが可能となっているため、品質の向上と共に、余剰な肥料の流出を抑えて環境負荷も低減されることが期待されている。
当該培養液管理法を効果的に実施するためには、栽培対象となっている植物の生育段階を先ず正確に把握する必要があり、特許文献1では、天候に基づく温室内の日射量と植物群落の繁茂程度を考慮して、植物群落の受光環境をモニタリングし、この結果から植物の生育段階を把握することが提案されている。
【0003】
而して、この特許文献1のアイデアを実際の温室での培養液管理法に導入するためには、植物群落の内外にそれぞれ複数の散乱光センサ部を設置すると共に、温度・湿度依存性を考慮するために温度・湿度センサ部も併設することが求められるが、実際の設置作業は当該温室を経営する農家が行うことになるため、植物群落の内側に設置するもの外側に設置するものについてそれぞれまとめてパッケージ化できれば設置個数も減るので、農家の負担も軽減され、導入が促進されるものと期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−237161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の散乱光センサ部と温度・湿度センサ部を物理的に合わせて単純に一体化するのでは、それぞれのセンサ機能の信頼性を担保できない。
それ故、本発明は、上記した問題点を解消し、複数の散乱光センサ部と温度・湿度センサ部をそれぞれのセンサ機能の信頼性を担保しつつ、パッケージ化できたセンサ装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために為されたものであり、請求項1の発明は、前後方向で開口した筒状体と、前記筒状体を前後方向で仕切る仕切り部と、前記筒状体の前端開口と後端開口をそれぞれ開閉自在に閉塞する蓋部とを備えたボックスに、第1散乱光センサ部を、前記筒状体の仕切り部前方を遮光部、前記前端開口側の蓋部を透光部とし、前方を受光面として前記仕切り部に受光素子を配設して構成し、第2散乱光センサ部を、上方を受光面として前記仕切り部後方の上側部に受光素子を配設して構成し、更に、温度・湿度センサ部を、前方を感温・感湿面として前記仕切り部に感温・感湿素子を配設して構成したことを特徴とするセンサ装置である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載したセンサ装置において、受光素子および感温・感湿素子は基板に着脱自在に取り付けられてモジュール化されており、前記基板は仕切り部後方側に収容され固定されていることを特徴とするセンサ装置である。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載したセンサ装置において、筒状体の仕切り部後方側には、ベントフィルタが配設されていることを特徴とするセンサ装置である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかに記載したセンサ装置において、ボックスは、仕切り部及び前記仕切り部前方の筒状体が遮光材で一体成形されており、前記仕切り部後方の筒状体が直状に連設されていることを特徴とするセンサ装置である。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかに記載したセンサ装置において、筒状体の対向する隅部が内方に膨出し、その膨出隅部の前後方向両端側にはネジ孔が形成されており、蓋部が前記ネジ孔を利用したネジ止めにより固定されていることを特徴とするセンサ装置である。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれかに記載したセンサ装置において、感湿素子が感温素子と共に温度・湿度センサ部を構成していることを特徴とするセンサ装置である。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれかに記載したセンサ装置において、温室内での植物への養液を制御する給液制御システムの一部を構成することを特徴とするセンサ装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のセンサ装置は、複数の散乱光センサ部と温度・湿度センサ部を備え、パッケージ化されたものであり、温室の植物群落の内外にそれぞれ少なくとも1つずつ設置すれば、植物の生育段階を正確に把握するのに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係るセンサ装置の斜視図である。
図2図1の分解斜視図である。
図3図1の前面図である。
図4図1の上面図である。
図5図1の左側面図である。
図6図1の右側面図である。
図7図1の後面図である。
図8図1のセンサ装置を植物群落の外側に設置した状態を示す。
図9図1のセンサ装置を植物群落の内側に設置した状態を示す。
図10図8図9のそれぞれのセンサ装置の電気的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態に係るセンサ装置1を図面に従って説明する。
図1図2に示すように、このセンサ装置1はボックス3にパッケージ化されている。このボックス3は略直方体形状になっており、温室の骨材F(後述)に載せて固定するようになっている。
このボックス3の前後方向に延びる角筒状体の前後方向断面がほぼ正方形であり、2つの角筒状体が前後方向で直状に連設され接合されて一体化している。軸方向、すなわち前後方向で見ると、前方の角筒状体5が3/4程度の寸法になっている。図3に示すように、この前方角筒状体5の後端開口が平板状の仕切り部7で閉塞されている。
この仕切り部7の中心と隅部寄りにはそれぞれ連通孔9、11が形成されており、これらの連通孔9、11を介して前後方向の空間が連通されている。前方角筒状体5の4つの角隅部13は内側に丸く膨出していずれも厚肉部になっている。この角隅部13には前面から前方角筒状体5の軸方向に沿って内方に延びるネジ孔15が形成されている。
【0016】
前方角筒状体5と仕切り部7は一体に成形されており、素材は塩ビになっている。素材の地色(灰色)がそのまま表出しており、黒にはなっていないが、十分な遮光性を備えている。
前方角筒状体5の前端開口には、透光性の蓋部17が取り付けられている。この蓋部17はほぼ正方形の平板状をしており、前端開口に当てて閉塞させると、その縁部は前方角筒状体5の外縁部とほぼ面一になる。蓋部17の四隅には挿通孔19がそれぞれ形成されており、上記したように閉塞させると、前方角筒状体5側のネジ孔15に一対一対応で相対するようになっている。
従って、ネジ21、21、……を蓋部17の挿通孔19、19、……に挿通し、更に、前方角筒状体5のネジ孔15、15、……に螺入して蓋部17を前方角筒状体5に対して締結すると、前方角筒状体5の内部は前端側で閉塞された状態となり、ネジ21、21、……を緩めれば、蓋部17は取り外すことができる。蓋部17の素材はグラスファイバー入りポリカーボネート(PC)になっている。
【0017】
仕切り部7の連通孔9には受光素子23が前方を受光面として表出した状態で配設されている。この受光素子23はシリコンフォトダイオードで構成されている。また、連通孔11には感温・感湿素子25が前方を感温・感湿面として表出した状態で配設されている。この感温・感湿素子25は、バンドギャップ式感温素子と静電容量式感湿素子が1チップになっている。
受光素子23、感温・感湿素子25とも、仕切り部7の後面側に固定され、連通孔9、11から露出した回路基板上にコネクタによる着脱式で取り付けられてモジュール化されている。
【0018】
第1散乱光センサ部は、前方角筒状体5側に構成されており、前方角筒状体5及び仕切り部7が遮光部と、蓋部17が透光部となっていることから、受光素子23の受光面の前方側を除いて周囲が遮光された状態になっている。従って、受光素子23の受光面が北方向を向くようにボックス3を設置すると、直達光は遮光され、温室の骨材の影響も阻止されるので、受光素子23は散乱光のみを受光できる。しかも、前方角筒状体5の内面側には受光の妨げとなる凸部も形成されていない。結果として、信頼性のあるセンシング結果が得られる。
【0019】
温度・湿度センサ部は、前方角筒状体5及び仕切り部7と、蓋部17とで形成された閉鎖空間の温度をセンシングするようになっている。いずれの部材の素材も断熱性が低く、特に上方からの直達光の熱を蓄えるような蓄熱部位も形成されていないので、ボックス3の内部環境が周囲環境に追従して信頼性のあるセンシング結果が得られる。なお、湿度も同時にセンシングしており、結露の発生も確認できるようになっている。
【0020】
図1図2図7に示すように、前方角筒状体5の後方には角筒状体27が直状に連設され、接合により一体化されている。この後方角筒状体27の4つの隅部も前方角筒状体5の4つの隅部13と同様にネジ孔(図示省略)が形成されている。後方角筒状体27の後端開口には、蓋部29が取り付けられている。この蓋部29の蓋面はほぼ正方形の平板状をしており、縁付きになっている。後方角筒状体27の後端開口側には段差が設けられているので、その段差に蓋部29の縁部を嵌め込んで閉塞させると、その縁部の外面は後方角筒状体27の外面とほぼ面一になる。蓋部29の四隅には挿通孔31がそれぞれ形成されており、上記したように蓋部29を取り付けると、後方角筒状体27側のネジ孔に一対一対応で相対する。
【0021】
従って、ネジ33を蓋部29の挿通孔31、31、……に挿通し、更に、後方角筒状体27のネジ孔に螺入して蓋部29を後方角筒状体27に対して締結すると、後方角筒状体27の内部は後端側で閉塞された状態となり、ネジ33を緩めれば、蓋部29を取り外すことができる。
後方角筒状体27と蓋部29の素材はグラスファイバー入りポリカーボネート(PC)になっている。
【0022】
図4に示すように、後方角筒状体27の4つの側部のうち、上側部35の中間には連通孔37が形成されている。この連通孔37は前方角筒状体5の連通孔9と同様の目的で利用されている。連通孔37を挟んで両側にはネジ孔39、39が形成されている。
連通孔37には受光素子23が上方を受光面として表出した状態で配設されている。この受光素子23の装着先の回路基板は、上側部35の下面側、換言すれば、後方角筒状体27の内面側に固定されている。
【0023】
受光素子23は上側部35の板厚内に収まっており、上面からは突出していない。この受光素子23の受光面は長方形の保護板41で上側から覆われて保護されている。この保護板41は透光性になっており、その長手方向両側に挿通孔43、43が形成されている。ネジ45を保護板41の挿通孔43、43に挿通し、更に、上側部35のネジ孔39、39に螺入して保護板41を上側部35に対して締結すると、保護板41が上側部35に重なり、受光素子23の受光面が保護された状態となる。ネジ45を緩めれば、保護板41は取り外すことができる。保護板41の素材はアクリルになっている。
【0024】
第2散乱光センサ部は、後方角筒状体27側に構成されており、散乱光センサ部の受光素子23の受光面を北方向に向けてボックス3を設置すると、光合成有効光量子束密度センサ部の受光素子23の受光面が自動的に上方向を向くことになる。しかも、保護板41で受光面は保護されている。従って、受光素子23は直達光を確実に受光でき、信頼性のあるセンシング結果が得られる。
【0025】
図5図6に示すように、後方角筒状体27の左側部47と右側部49にはそれぞれベントフィルタ51、51が設けられている。左側部47では下側に、右側部49では上側に配置され、対角線上で対向している。このベントフィルタ51、51の利用により、蓋部17、29でボックス3の内部を閉塞しても内外の気圧に差が出ないように自動調整されている。
また、右側部49にはケーブルグランド53が取り付けられており、このケーブルグランド53から電線(電源線、センサ線)Wが引き出されるようになっている。従って、電線Wは折れが防止され、且つ引出穴からの水の侵入が阻止されている。
これらの工夫により、ボックス3としての保安性が担保されている。
【0026】
センサ装置1は、上記した構成になっており、散乱光センサ部と光合成有効光量子束密度センサ部と温度・湿度センサ部を備え、パッケージ化されたものであり、温室の植物群落の内外にそれぞれ少なくとも1つずつ設置すれば、植物の生育段階を正確に把握するのに利用することができる。
図8図9に示すように、センサ装置1は、温室の骨材Fを利用して、その上に架け渡した支持板Bに載せることで簡単に設置できる。
また、センサ装置1は、蓋部17や保護板41を取り外すことができるので、基板にコネクタ接続させた受光素子23や感温・感湿素子25を取り外して新しいものと交換することができる。素子の交換時期が来たら素子だけを交換でき、ボックス3はそのまま使用できるので、コスト的にも有利である。
【0027】
センサ装置1は、温室内での植物への養液を制御する給液制御システムの一部を構成しており、図10に示すように、2つのセンサ装置1、1を上下で鉛直方向に一直線上になるように設置する。それぞれのボックス3から引き出された電線Wは温室の外に設置したコントローラCに接続される。コントローラCはセンシング結果を受け取って、養液の供給手段(図示省略)を作動させ、栽培ベッドに養液を過不足なく適切なタイミングで供給するようになっている。
【0028】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
センサ装置1でのセンシング結果をどのような理論に基づいて養液の制御に利用するかは限定されておらず、例えば、2つの散乱光センサ部における出力差の積算値で給液制御をしてもよいし、出力差が所定の閾値を超えたタイミングで給液してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1…センサ装置 3…ボックス 5…前方角筒状体 7…仕切り部
9…連通孔 11…連通孔 13…角隅部 15…ネジ孔
17…蓋部 19…挿通孔 21…ネジ 23…受光素子
25…感温・感湿素子 27…後方角筒状体 29…蓋部 31…挿通孔
33…ネジ 35…上側部 37…連通孔 39…ネジ孔
41…保護板 43…挿通孔 45…ネジ 47…左側部
49…右側部 51…ベントフィルタ 53…ケーブルグランド
F…温室の骨材 B…支持板 C…コントローラ W…電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10