特許第6951789号(P6951789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6951789竪型ごみ焼却炉及び竪型ごみ焼却炉の廃棄物処理量調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6951789
(24)【登録日】2021年9月29日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】竪型ごみ焼却炉及び竪型ごみ焼却炉の廃棄物処理量調整方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/50 20060101AFI20211011BHJP
【FI】
   F23G5/50 R
   F23G5/50 HZAB
   F23G5/50 B
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-56988(P2020-56988)
(22)【出願日】2020年3月27日
(65)【公開番号】特開2021-156492(P2021-156492A)
(43)【公開日】2021年10月7日
【審査請求日】2020年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000136804
【氏名又は名称】株式会社プランテック
(74)【代理人】
【識別番号】100209129
【弁理士】
【氏名又は名称】山城 正機
(72)【発明者】
【氏名】勝井 基明
(72)【発明者】
【氏名】中島 大輔
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/013849(WO,A1)
【文献】 特開2014−013093(JP,A)
【文献】 特開2019−199983(JP,A)
【文献】 特開平11−094227(JP,A)
【文献】 特開2018−105590(JP,A)
【文献】 特開2014−185835(JP,A)
【文献】 特開2015−209992(JP,A)
【文献】 特開2019−178849(JP,A)
【文献】 特開2018−87685(JP,A)
【文献】 北川 勝,竪型ストーカ式焼却炉の安定運転性能,第26回廃棄物資源循環学会研究発表会講演原稿2015,C1−5,日本,廃棄物資源循環学会,2015年09月02日,p.297−298
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に灰排出手段が配設され、下方から順に灰層、燃焼層、炭化層、乾燥層が形成されるよう廃棄物等の被焼却物が堆積される燃焼室と、
ごみクレーンによって供給される廃棄物等の被焼却物を貯留するとともに前記燃焼室の上方から投入する投入装置と、
前記燃焼室の下方から一次燃焼空気を供給する一次燃焼空気供給手段と、
前記燃焼室の上部に二次燃焼空気を供給する二次燃焼空気供給手段と、
前記燃焼室に堆積された廃棄物等の被焼却物に水を散布する水散布手段と、
燃焼状態を制御する制御装置とを備えた竪型ごみ焼却炉であって、
前記燃焼室に投入された廃棄物等の被焼却物の発熱量を検知する発熱量検知手段を備え、
前記制御装置は、前記一次燃焼空気供給手段によって供給される一次燃焼空気量を理論空気量の1/2以下の所定値に保持するとともに、前記発熱量検知手段で検知された発熱量変動に応じて前記水散布手段から散布される水の散布量を調整することで廃棄物等の被焼却物処理量を所定値に保持する、
ことを特徴とする竪型ごみ焼却炉。
【請求項2】
前記発熱量検知手段が、前記燃焼室内の温度を検出する燃焼室温度検出手段によって構成され、
前記制御装置は、前記燃焼室温度検出手段によって検出される温度が所定値となるよう、前記水散布手段から散布される水の散布量を調整する、請求項1に記載の竪型ごみ焼却炉。
【請求項3】
前記発熱量検知手段が、前記燃焼室内の熱分解ガス中の水分量を検出する水分量検出手段によって構成され、
前記制御装置は、前記水分量検出手段によって検出される水分量が所定値となるよう、前記水散布手段から散布される水の散布量を調整する、請求項1に記載の竪型ごみ焼却炉。
【請求項4】
前記発熱量検知手段が、前記ごみクレーンによって前記燃焼室に投入される廃棄物等の被焼却物の重量を検出する重量検出手段と、前記重量検出手段によって検出された重量から発熱量を推定する発熱量推定手段によって構成され、
前記制御装置は、前記発熱量推定手段によって推定される発熱量に基づいて、前記水散布手段から散布される水の散布量を調整する、請求項1に記載の竪型ごみ焼却炉。
【請求項5】
前記水散布手段は水を散布する水散布ノズルを備え、前記水散布ノズルは廃棄物等の被焼却物に向けて散布した水が気相で蒸発しないよう300μm以上の粗い粒子径を散布する、請求項1〜4のいずれかに記載の竪型ごみ焼却炉。
【請求項6】
前記水散布手段として汚泥ノズルを使用し、廃棄物等の被焼却物に向けて生汚泥を散布することで廃棄物等の被焼却物の水分量を調整する、請求項1〜4のいずれかに記載の竪型ごみ焼却炉。
【請求項7】
底部に灰排出手段が配設され、下方から順に灰層、燃焼層、炭化層、乾燥層が形成されるよう廃棄物等の被焼却物が堆積される燃焼室と、ごみクレーンによって供給される廃棄物等の被焼却物を貯留するとともに前記燃焼室の上方から投入する投入装置と、前記燃焼室の下方から一次燃焼空気を供給する一次燃焼空気供給手段と、前記燃焼室の上部に二次燃焼空気を供給する二次燃焼空気供給手段と、前記燃焼室に堆積された廃棄物等の被焼却物に水を散布する水散布手段と、燃焼状態を制御する制御装置とを備えた竪型ごみ焼却炉における、廃棄物等の被焼却物処理量調整方法であって、
前記燃焼室に投入された廃棄物等の被焼却物の発熱量を検知する発熱量検知ステップ、
前記一次燃焼空気供給手段によって供給される一次燃焼空気量を理論空気量の1/2以下の所定値に保持するステップ、
前記発熱量検知手段で検知された発熱量変動に応じて前記水散布手段から散布される水の散布量を調整することで廃棄物等の被焼却物処理量を所定値に保持するステップ、
を有することを特徴とする、竪型ごみ焼却炉における廃棄物等の被焼却物処理量調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竪型ごみ焼却炉及び竪型ごみ焼却炉の廃棄物処理量調整方法に関し、竪型ごみ焼却炉で焼却する廃棄物等の被焼却物の処理量を所定値に保持する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市ごみや産業廃棄物を処理するにあたり、いわゆるストーカ式の焼却炉が用いられている。ストーカ式焼却炉は、前後又は左右方向に複数配設された火格子の前後の往復運動に伴い、ごみが前方に移動しながら徐々に乾燥及び燃焼する方式の焼却炉であり、比較的単純な構造でありながら、投入されるごみの水分や発熱量によらず大量の廃棄物を処理することができるため、多くの焼却処理施設において採用されている。
【0003】
ところで、焼却炉に投入される廃棄物には、紙くずなどのように燃えやすいものから、水分を多く含み燃えにくい生ごみのようなものまで、様々な性状を有する種類のごみが混在する。上記の形式の焼却炉において廃棄物を焼却処理するにあたり、炉内に投入される廃棄物の性状にばらつきがあると、局所的に高温となる箇所が存在して炉壁を焼損するという問題や、完全に燃えきらずに排出されるといった問題がある。そのため、収集運搬されごみピットに投入された廃棄物をごみクレーンにより十分に撹拌混合して、廃棄物の性状が均一になるようにしてから焼却炉に投入する必要がある。
【0004】
このように均一化処理をしたうえで、さらに、焼却炉内の燃焼状態や廃棄物の処理量を安定させるために、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に示されるような様々な手法が開発されている(特許文献1、特許文献2及び特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−124955号公報
【特許文献2】特開2001−3017号公報
【特許文献3】特開2018−21686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された技術によると、ごみピット内をカメラで撮影し、その画像データからごみの塊部分の外形線に対応するエッジを抽出し、抽出されたエッジのフラクタル次元(フラクタル=細部を拡大すると全体と似る複雑図形)に基づいてごみの攪拌状態を検出する。
【0007】
このような検知と撹拌とを行ったうえで、さらに、焼却炉に付設されるボイラの蒸発量が一定となるように、焼却炉に投入する廃棄物量、焼却炉内の火格子送り速度、火格子下からの一次燃焼空気量とその分配を制御している。
【0008】
しかしながら、たとえ撹拌状態を検出したとしても、廃棄物の組成や性状は一定ではなく、そのような廃棄物を、7日分程度の大きなごみピット全体において均一に撹拌・混合するのには無理がある。
【0009】
特許文献2に開示された技術によると、ボイラ蒸発量を測定するとともに炉内燃焼状況を撮影した画像を処理することにより炉内火格子上のごみ燃え切り点の位置を測定し、得られたボイラ蒸発量の測定値と燃え切り点の位置を用いて火格子の移動速度を制御する。
【0010】
特許文献3に開示された技術によると、ストーカ上を搬送されるごみの熱画像を炎越しに連続撮像してごみの移動速度を演算し、演算された移動速度が所要値になるように給じん装置とストーカ駆動装置の少なくとも一方を制御する。
【0011】
これらの技術によると、ボイラの蒸発量、すなわち燃焼により発生する熱量を所定の範囲に収めることができるものの、燃焼状態を撮影する手段や、撮影した画像を処理する手段、処理された画像を用いて給じん装置や火格子速度等を制御する手段等が必要になるなど、別途の測定装置及び画像処理装置が必要になるとともに、複雑な制御が必要となるため、費用の面でのデメリットが課題となる。
【0012】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、ごみピットに投入された廃棄物を撹拌することなく、所定量を安定して焼却処理することが可能なごみ焼却施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0014】
第1の特徴に係る発明は、底部に灰排出手段が配設され、下方から順に灰層、燃焼層、炭化層、乾燥層が形成されるよう廃棄物が堆積される燃焼室と、ごみクレーンによって供給される廃棄物を貯留するとともに燃焼室の上方から投入する投入装置と、燃焼室の下方から一次燃焼空気を供給する一次燃焼空気供給手段と、燃焼室の上部に二次燃焼空気を供給する二次燃焼空気供給手段と、燃焼室に堆積された廃棄物に水を散布する水散布手段と、燃焼状態を制御する制御装置とを備える。また、燃焼室に投入された廃棄物の発熱量を検知する発熱量検知手段を備え、制御装置は、一次燃焼空気供給手段によって供給される一次燃焼空気量を理論空気量の1/2以下の所定値に保持するとともに、発熱量検知手段で検知された発熱量変動に応じて水散布手段から散布される水の散布量を調整することで廃棄物処理量を所定値に保持する、竪型ごみ焼却炉を提供する。
【0015】
第1の特徴に係る発明によれば、焼却炉の運転を実施するにあたって発熱量の変動に応じて廃棄物に水を散布することで、見かけ上の発熱量を一定に保持することができ、その結果、廃棄物の処理量を一定に保持することができる。
【0016】
第2の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明であって、発熱量検知手段が、燃焼室内の温度を検出する燃焼室温度検出手段によって構成され、制御装置は、燃焼室温度検出手段によって検出される温度が所定値となるよう、水散布手段から散布される水の散布量を調整する、竪型ごみ焼却炉を提供する。
【0017】
第2の特徴に係る発明によれば、発熱量検知手段を燃焼室温度検出手段によって構成することにより、燃焼室温度という標準的なパラメータを使用して発熱量の変動を検出することができる。そして、発熱量の変動に基づいて水の散布量を調整することにより、廃棄物の処理量を一定に保持することが可能となる。
【0018】
第3の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明であって、発熱量検知手段が、燃焼室内の熱分解ガス中の水分量を検出する水分量検出手段によって構成され、制御装置は、水分量検出手段によって検出される水分量が所定値となるよう、水散布手段から散布される水の散布量を調整する、竪型ごみ焼却炉を提供する。
【0019】
第3の特徴に係る発明によれば、発熱量検知手段を水分量検出手段によって構成することにより、マテリアルバランスの考え方から精度よく発熱量の変動を検出することができる。そして、発熱量の変動に基づいて水の散布量を調整することにより、廃棄物の処理量を一定に保持することが可能となる。
【0020】
第4の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明であって、発熱量検知手段が、ごみクレーンによって前記燃焼室に投入される廃棄物の重量を検出する重量検出手段と、重量検出手段によって検出された重量から発熱量を推定する発熱量推定手段によって構成され、制御装置は、発熱量推定手段によって推定される発熱量に基づいて、水散布手段から散布される水の散布量を調整する、竪型ごみ焼却炉を提供する。
【0021】
第4の特徴に係る発明によれば、ごみクレーンによって投入される廃棄物の重量を用いて発熱量を推定するため、温度計やガス分析計等の別途のセンサの設置を要することなく、発熱量の変動を検出することができる。そして、発熱量の変動に基づいて水の散布量を調整することにより、廃棄物の処理量を一定に保持することが可能となる。
【0022】
第5の特徴に係る発明は、第1から第4のいずれかの特徴に係る発明であって、水散布手段は水を散布する水散布ノズルを備え、水散布ノズルは廃棄物に向けて散布した水が気相で蒸発しないよう300μm以上(望ましくは500μm程度)の粗い粒子径を散布する、竪型ごみ焼却炉を提供する。
【0023】
第5の特徴に係る発明によれば、300μm以上の粗い粒子を散布する水散布ノズルを使用することで、散布した水が確実に廃棄物に到達可能となり、より確実に廃棄物の水分を調整することができ、精度よく廃棄物の処理量を一定に保持することが可能となる。
【0024】
第6の特徴に係る発明は、第1から第4のいずれかの特徴に係る発明であって、水散布手段として汚泥ノズルを使用し、廃棄物に向けて生汚泥を散布することで廃棄物の水分量を調整する、竪型ごみ焼却炉を提供する。
【0025】
第6の特徴に係る発明によれば、水ではなく生汚泥を散布して廃棄物の水分を調整することで、廃棄物の水分を調整すると同時に生汚泥の処理も可能となるため、一定量の安定した廃棄物の処理と生汚泥の処理を同時に可能な有益なシステムを提供することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ごみピットに投入された廃棄物を撹拌することなく、所定量を安定して焼却処理することが可能なごみ焼却施設を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本実施形態に係る竪型ごみ焼却炉を含む焼却装置を示す模式図である。
図2図2は、本実施形態に係る竪型ごみ焼却炉の廃棄物処理量調整方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0029】
[焼却装置の全体構成]
図1を用いて、本実施形態に係る竪型ごみ焼却炉を含む焼却装置の全体構成を説明する。
【0030】
図1に示すように、本実施形態の焼却装置は、竪型ごみ焼却炉1と、ガス冷却装置2と、バグフィルタ3と、誘引通風機4と、煙突5とによって構成される。
【0031】
竪型ごみ焼却炉1は、不定形の一般廃棄物や、産業廃棄物等の廃棄物を焼却処理するものであり、底部に灰排出手段1aが配設され、下方から順に灰層、燃焼層、炭化層、乾燥層が形成されるよう廃棄物が堆積される燃焼室1bと、燃焼室1bの上方に設けられ、燃焼室1bで発生した未燃焼成分を含むガスを燃焼させる再燃焼室1cと、燃焼室1bの上方から廃棄物を投入する投入装置1dと、燃焼室1b内の温度を検出する燃焼室温度検出手段1eと、熱分解ガス中の水分量を検出する水分量検出手段1fと、燃焼室1bに堆積された廃棄物に水を散布する水散布手段1gと、燃焼室1bの下方から一次燃焼空気を供給する一次燃焼空気供給手段1hと、燃焼室1bの上部に二次燃焼空気を供給する二次燃焼空気供給手段1jと、制御装置1kとを備える。
【0032】
投入装置1dは、廃棄物を一時的に貯留するホッパ及び多重のゲートによって構成されており、図示しないごみピットからごみクレーンによって投入装置1dに供給された廃棄物を貯留し、間欠的に燃焼室1bに投入することができる。
【0033】
また、燃焼室1bには、図示しない助燃バーナが配設されており、例えば長期間のメンテナンス後など、燃焼室1bの温度が低下している場合の立ち上げ運転時などにおいて、補助燃料を燃焼することにより、燃焼室1b内を昇温し立ち上げ運転を補助するようになっている。このような追加の燃料の使用は、手軽に燃焼室1b内の温度を上げることができる一方で、焼却設備全体の効率を低下させる要因となるため、なるべく使用しないことが望ましい。
【0034】
一次燃焼空気供給手段1hは燃焼室1bの下方から一次燃焼空気を供給する。一次燃焼空気供給手段1hは図示しない送風機、通風路及び空気予熱器等からなり、燃焼室1bの下方、具体的には、灰排出手段1aを介して一次燃焼空気を供給する。一次燃焼空気が灰層、燃焼層、炭化層、乾燥層を順に通ることにより、廃棄物の乾燥から焼却を行うが、そのメカニズムについて説明する。
【0035】
まず、灰排出手段1aを介して供給される一次燃焼空気は灰層が保有する熱を受け昇温され、高温になった一次燃焼空気は燃焼層で酸素を消費することで廃棄物中の可燃物を燃焼し、燃焼排ガスとなる。燃焼層で廃棄物を燃焼することで発生した燃焼排ガスは、酸素が消費された高温の不活性ガスであるため、炭化層において不活性雰囲気下で廃棄物を熱分解する。炭化層において廃棄物が熱分解されることによって発生した不活性の熱分解ガスは、乾燥層において投入装置1dから投入された廃棄物を乾燥する。そして、廃棄物が乾燥された後の乾燥層からは水分を含んだ熱分解ガスが排出される。
【0036】
以上のようなメカニズムにより、燃焼室1bの下方から供給された一次燃焼空気が灰層、燃焼層、炭化層、乾燥層を生成し、廃棄物の乾燥から熱分解・焼却を行う。
【0037】
二次燃焼空気供給手段1jは燃焼室1bの上部に二次燃焼空気を供給する。二次燃焼空気供給手段1jは図示しない送風機、通風路及び空気予熱器等からなり、燃焼室1bの上部に設けられた図示しない開口から二次燃焼空気を供給することで、乾燥層から排出された熱分解ガス中に含まれる可燃ガス成分を燃焼する。
【0038】
なお、本実施形態に係る竪型ごみ焼却炉1において、一次燃焼空気の空気比は0.35〜0.5程度であり、従来のストーカ炉における一次燃焼空気の空気比(0.8〜1.0程度)と比べて、1/3〜1/2倍程度の空気比である。また、二次燃焼空気の空気比は0.9〜1.0程度であり、従来のストーカ炉における二次燃焼空気の空気比(0.3〜0.5程度)と比べて、1.5〜3倍程度の空気比である。すなわち、本実施形態に係る竪型ごみ焼却炉1においては、一次燃焼空気の割合より二次燃焼空気の割合が多い。
【0039】
このような構成によって、廃棄物の堆積層では燃焼熱を用いて積極的に熱分解を行い、熱分解によって発生した熱分解ガスを用いて廃棄物の乾燥を行う。そして、廃棄物の堆積層から発生したガス中の可燃ガス成分を二次燃焼空気で撹拌・混合して燃焼させる構成となっている。
【0040】
また、竪型ごみ焼却炉1の燃焼室1b上方には再燃焼室1cが配設されており、二次燃焼空気の供給によって発生した燃焼ガス中に残留する有害成分を完全に燃焼するために、燃焼ガスを所定時間にわたって850℃以上に保持する。このように、高温雰囲気下でダイオキシン類生成の前駆物質である未燃炭素類及び悪臭の原因となる未燃ガス等を完全燃焼する。
【0041】
制御装置1kは、状況に応じて、一次燃焼空気供給手段1hから供給される一次燃焼空気の供給量の調整、二次燃焼空気供給手段1jから供給される二次燃焼空気量の供給量の調整、投入装置1dによって廃棄物を投入する間隔調整、灰排出手段1aによって焼却灰を排出する間隔調整等を行う。
【0042】
また、本実施形態の焼却装置の制御装置1kにおいては、廃棄物の発熱量の変動に応じて水散布手段1gからの水散布量の調整を行うことで、廃棄物処理量の調整を行う。これについては後述する。
【0043】
なお、燃焼室温度検出手段1e、水分量検出手段1f及び水散布手段1gは、二次燃焼空気供給手段1jよりも下方に設置されている。
【0044】
特に、水散布手段1gは、堆積された廃棄物層の直上であって、投入装置1dからの廃棄物の投入の邪魔にならない位置に配設させることが望ましい。
【0045】
水散布手段1gをこのような位置に配設することで、散布した水が蒸発することなく廃棄物層の乾燥ゾーンに確実に到達することとなり、乾燥中の廃棄物に水分を供給することができるため、廃棄物中の見かけ上の水分含有量を調整することができる。
【0046】
ただし、水散布手段1gと廃棄物層の乾燥ゾーンとの距離が近すぎると、廃棄物層表面全体に散布水を行き渡らせることができなくなるため、廃棄物層上面とある程度の距離を隔てて設置する必要がある。
【0047】
なお、水散布手段1gは1か所に限らず、複数個所(例えば周囲4か所)に設置してもよい。
【0048】
ガス冷却装置2は、竪型ごみ焼却炉1から排出された排ガスの温度をバグフィルタ3に供給可能な程度であって、「ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン」に記された200℃程度以下まで減温するものであり、その形式は問わない。
【0049】
バグフィルタ3は、ガス冷却装置2で減温された排ガスをろ過することで、排ガス中に含まれる煤塵や有害成分などの不純物を中和あるいは吸着し除去するものであって、煤塵や有害成分をろ過するためのろ布を含む。
【0050】
なお、バグフィルタ3の上流側には、図示しない薬剤供給装置が設けられており、排ガス中に含まれる塩化水素や硫黄酸化物等の酸性成分を中和するための消石灰等のアルカリ薬剤、及び、排ガス中に含まれる有害物質を吸着するための活性炭等の吸着剤を、排ガス中及びバグフィルタに供給する。
【0051】
誘引通風機4は、バグフィルタ3の下流に配設される通風機であり、バグフィルタ3で浄化された排ガスを吸引して、煙突5から排ガスを大気に放出するためのものである。
【0052】
煙突5は、竪型ごみ焼却炉1から排出された排ガスを大気中に排出するものであって、誘引通風機4の下流に配設される。
【0053】
[廃棄物処理量調整フロー]
次に、図2を用いて、本実施形態に係る竪型ごみ焼却炉を用いた廃棄物処理量調整の流れについて説明する。
【0054】
まず、制御装置1kは、燃焼室に投入された(あるいは投入される)廃棄物の発熱量を検知する(ステップS100)。
【0055】
廃棄物の発熱量を検知する手段の詳細については後述するが、例えば、燃焼室温度検出手段1eによって計測した燃焼室1b内の温度等を用いて、投入された廃棄物の発熱量を検知する。
【0056】
次に、制御装置1kは、一次燃焼空気供給手段1hによって供給される一次燃焼空気量を理論空気量の1/2以下の所定値に保持する(ステップS110)。
【0057】
そして、制御装置1kは、発熱量検知手段で検知された発熱量変動に応じて水散布手段1gから散布される水の散布量を調整することで廃棄物処理量を所定値に保持する(ステップS120)。
【0058】
このようにすることで、水散布手段1gからの水散布量を調整することによって廃棄物処理量を調整することができる。
【0059】
〔水散布量調整による廃棄物処理量調整のメカニズム〕
次に、水散布手段1gからの水散布量を調整することによって廃棄物処理量を調整する原理について説明する。
【0060】
上述のとおり、竪型ごみ焼却炉1においては、炉底に廃棄物の堆積層を形成し、炉底から灰排出手段1aを介して一定量の一次燃焼空気を、燃焼に必要な理論燃焼空気量の1/2以下を保持するように供給し、廃棄物層上方から投入される廃棄物を熱分解ガスが持つ熱によって乾燥させる。乾燥された廃棄物は下方に移動しながら徐々に熱分解を引き起こし、可燃物を含む炭化物が生成される。このような炭化物を含む熱分解残渣は炉底からの一次燃焼空気により完全燃焼させられ、焼却灰となって灰排出手段1aから排出される。一方、廃棄物を熱分解することによって発生した熱分解ガスは、燃焼室上部に吹き込まれた二次燃焼空気によって完全燃焼させられる。
【0061】
ここで、一次燃焼空気量は理論燃焼空気量の1/2以下であり、かつ、一定量が吹き込まれるため、廃棄物を処理できる能力(焼却量)及び、それによって発生する燃焼熱量は、廃棄物中の可燃物の元素による組成(C、H、O)により多少異なるものの、ほぼ一定である。一方、廃棄物は成分としては可燃分、灰分及び水分の三成分によって構成され、また、発熱量は廃棄物中の可燃分と水分の比によって決まるため、発熱量が低いということは水分量が多いことを意味し、発熱量が高いということは水分量が少ないことを意味する。そして、一次燃焼空気供給手段1hから供給される一次燃焼空気量は一定に制御されていることから燃焼可能な可燃分量は一定であるため処理される廃棄物量は水分量によって決まり、発熱量が低く水分量が多い廃棄物は処理量も多くなり、逆に、発熱量が高い場合は処理量が少なくなる。
【0062】
本発明では、この原理を利用して、発熱量検知手段によって廃棄物の発熱量を検知し、検知した発熱量の変動に応じて水散布手段1gから散布される水の散布量を変化させ廃棄物の水分量を調整することによって、廃棄物の処理量を調整する。すなわち、発熱量に応じて、可燃分と水分の比が一定となるように廃棄物の表面に散布する水の散布量を調整し、廃棄物の見かけ上の発熱量を一定にすることで、処理量を一定にしようとするものである。
【0063】
<実施形態1>
実施形態1においては、発熱量検知手段として、燃焼室1b内の温度、特に、二次燃焼空気供給手段1jが配設される位置よりも下方であって廃棄物層の直上の温度を計測する燃焼室温度検出手段1eを使用する。
【0064】
燃焼室1b内の温度、特に、廃棄物層の直上における温度は廃棄物の発熱量に応じて変動する。すなわち、燃焼室1b内における廃棄物層の直上における温度は、廃棄物が乾燥ゾーンにおいて乾燥されることによって発生する水分が蒸発することで奪う潜熱と乾燥ゾーンから発生する熱分解ガスが保有する熱量によって決まる。すなわち、廃棄物の発熱量が高いということは、水分が少ないことを意味し、潜熱により吸収する熱量が小さくなるため、燃焼室1b内の温度も高くなる。逆に、発熱量が低ければ燃焼室1b内の温度は低くなる。そこで、目標の廃棄物処理量が得られる燃焼室温度を予め定めておき、燃焼室温度検出手段1eで計測される燃焼室温度が予め定められた値となるように水散布手段1gから廃棄物層に散布する水散布量を制御する。このように、燃焼室温度に応じて水散布量を制御することで、所定の廃棄物処理量を得ることができる。
【0065】
このとき、水散布手段1gから散布する水が、廃棄物層に届く前に蒸発してしまうと、廃棄物中の水分を増加させることができず、廃棄物の処理量を調整することができない。特に、二次燃焼空気供給手段1jが配設される位置よりも上方は、二次燃焼空気によって熱分解ガス中の未燃分が燃焼するため高温の燃焼場が形成され、水を散布しても蒸発してしまい廃棄物層に到達しないおそれがある。そこで、本実施形態においては、水散布手段1gを二次燃焼空気供給手段1jが配設される位置よりも低い位置に配設することで、散布した水が廃棄物層の乾燥ゾーンに確実に到達するようにしている。
【0066】
実施形態1においては、発熱量検知手段を燃焼室温度検出手段1eによって構成することにより、燃焼室温度という標準的なパラメータを使用して発熱量の変動を検出することができる。そして、発熱量の変動に基づいて廃棄物層に散布する水の散布量を調整することにより、廃棄物の処理量を一定に保持することが可能となる。
【0067】
<実施形態2>
実施形態2においては、発熱量検知手段として、燃焼室1b内の熱分解ガス中の水分量、特に、二次燃焼空気供給手段1jが配設される位置よりも下方であって廃棄物層の直上の水分量を計測する水分量検出手段1fを使用する。
【0068】
熱分解ガス中の水分量、特に、廃棄物層の直上の水分量は廃棄物の発熱量に応じて変動する。上述の通り、発熱量は廃棄物中の可燃分と水分の比によって決まる。また、燃焼室1b内における廃棄物が堆積された箇所よりも上方においては、廃棄物中の水分は熱分解ガス中に水蒸気として存在する。そこで、燃焼室1b内に設置した水分量検出手段1fによって熱分解ガス中の水分量(ないしは水分割合)を計測することで、廃棄物中の水分の割合を推定することができ、水分量が予め定められた値となるように水散布手段1gから廃棄物層に散布する水散布量を制御する。このように、熱分解ガス中の水分量に応じて水散布量を制御することで、所定の廃棄物処理量を得ることができる。
【0069】
このとき、水散布手段1gから散布する水が、廃棄物層に届く前に蒸発してしまうと、廃棄物中の水分を増加させることができず、廃棄物の処理量を調整することができない。特に、二次燃焼空気供給手段1jが配設される位置よりも上方は、二次燃焼空気によって熱分解ガス中の未燃分が燃焼するため高温の燃焼場が形成され、水を散布しても蒸発してしまい廃棄物層に到達しないおそれがある。そこで、本実施形態においては、水散布手段1gを二次燃焼空気供給手段1jが配設される位置よりも低い位置に配設することで、散布した水が廃棄物層の乾燥ゾーンに確実に到達するようにしている。
【0070】
このようにして、実施形態2においては、発熱量検知手段を水分量検出手段1fによって構成することにより、マテリアルバランスの考え方から精度よく発熱量の変動を検出することができる。そして、発熱量の変動に基づいて廃棄物層に散布する水の散布量を調整することにより、廃棄物の処理量を一定に保持することが可能となる。
【0071】
なお、水分量検出手段1fは、ガスクロマトグラフ分析計等、周知の分析装置が使用され、熱分解ガスの性状を分析可能であれば形式は問わない。
【0072】
<実施形態3>
実施形態3においては、発熱量検知手段として、ごみクレーンによって投入装置1dに投入される際の廃棄物の重量を計測する図示しない重量検出手段、及び、重量検出手段で計測された廃棄物の重量から発熱量を推定する発熱量推定手段を使用する。
【0073】
ごみクレーンで計量した廃棄物の重量から発熱量を推定することができる。つまり、ごみクレーンのバケットによってごみピットから持ち出される廃棄物の容積はバケットの大きさによって決まっており、バケットで持ち上げた廃棄物の重量を重量検出手段の一例であるロードセルで計量することで、廃棄物の嵩比重が算出できる。廃棄物の嵩比重と水分量は、ごみ質によって多少のばらつきはあるものの相関関係にあるため、嵩比重から水分量を推定することができる。このようにして、ロードセルで計測した重量から発熱量推定手段によって水分量を推定、すなわち廃棄物の発熱量を推定することができる。
【0074】
そして、発熱量推定手段によって推定された発熱量に応じて、水散布手段1gから廃棄物層に散布する水散布量を制御する。このように、廃棄物の重量に応じて水散布量を制御することで、所定の廃棄物処理量を得ることができる。
【0075】
このとき、水散布手段1gから散布する水が、廃棄物層に届く前に蒸発してしまうと、廃棄物中の水分を増加させることができず、廃棄物の処理量を調整することができない。特に、二次燃焼空気供給手段1jが配設される位置よりも上方は、二次燃焼空気によって熱分解ガス中の未燃分が燃焼するため高温の燃焼場が形成され、水を散布しても蒸発してしまい廃棄物層に到達しないおそれがある。そこで、本実施形態においては、水散布手段1gを二次燃焼空気供給手段1jが配設される位置よりも低い位置に配設することで、散布した水が廃棄物層の乾燥ゾーンに確実に到達するようにしている。
【0076】
このように、ごみクレーンによって投入される廃棄物の重量を用いて発熱量を推定するため、温度計やガス分析計等の別途のセンサの設置を要することなく、発熱量の変動を検出することができる。そして、発熱量の変動に基づいて廃棄物層に散布する水の散布量を調整することにより、廃棄物の処理量を一定に保持することが可能となる。
【0077】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、発熱量検知手段として使用される手段は、燃焼室1b内に投入される(投入された)廃棄物の発熱量の変動を計測ないし推定できるものであれば、上記実施形態に限ったものではない。
【0078】
なお、水散布手段1gに使用するノズルとして、廃棄物に向けて散布した水が気相で蒸発しないよう300μm以上(望ましくは500μm程度)の粗い粒子径となるようなノズルを使用することが好ましい。もし、散布した水が廃棄物に到達する前に蒸発したとすると、熱分解ガスの流れに伴って上昇して燃焼室1bから排出されてしまい、廃棄物量の調整に寄与しなくなるためである。
【0079】
また、水散布手段1gとして汚泥ノズルを使用し、水ではなく生汚泥を散布して水分量を調整することができる。生汚泥は水分を多く含み、しかも、水のように簡単には蒸発しないので、高温の燃焼室1b内においても廃棄物の水分を適切に調整することが可能である。このとき、生汚泥による発熱量も併せて勘案することで、より正確に廃棄物の処理量を所望の値に保持することができる。
【0080】
また、散布する汚泥として、含水率の高い生汚泥のほかに、脱水汚泥を使用することができる。さらに、除染水等の有害成分を含有する水を使用することもできる。
【0081】
また、一般的に、焼却炉において炉温調整用の噴霧水や冷却空気を使用することがある。本発明によって燃焼室内の廃棄物に水を散布して廃棄物の発熱量変動を抑制して廃棄物の処理量を一定に保持する場合、廃棄物層から発生する熱分解ガスの温度及び水分量がほぼ一定となるため、上記のような炉温調整用媒体の流量の制御が容易、あるいは炉温調整用媒体が不要となるという効果が得られる。
【0082】
その際、燃焼室1b内の温度を調整するための水噴霧ノズルを別途設置することになるが、その場合、温度調整用の水噴霧ノズルは水散布手段1gよりも上方に、すなわち水散布手段1gは温度調整用の水噴霧ノズルの下方に設置される。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述したこれらの実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0084】
また、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
この発明のごみ焼却施設は、家庭ごみ、産業廃棄物、医療廃棄物、下水汚泥等、種々の廃棄物の焼却処理を行うごみ焼却設備に適用することができる。また、本発明の技術は、廃棄物を焼却処理するごみ焼却設備のみならず、バイオマスを含む各種固体燃料を燃焼室の下部に堆積させて燃焼する燃焼装置に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 竪型ごみ焼却炉
1a 灰排出手段
1b 燃焼室
1c 再燃焼室
1d 投入装置
1e 燃焼室温度検出手段
1f 水分量検出手段
1g 水散布手段
1h 一次燃焼空気供給手段
1j 二次燃焼空気供給手段
1k 制御装置
2 ガス冷却装置
3 バグフィルタ
4 誘引通風機
5 煙突

図1
図2