特許第6951804号(P6951804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6951804
(24)【登録日】2021年9月29日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】エンコーダ開発用信号発生装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20211011BHJP
【FI】
   G01D5/244 Z
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-208050(P2020-208050)
(22)【出願日】2020年12月16日
(65)【公開番号】特開2021-111968(P2021-111968A)
(43)【公開日】2021年8月2日
【審査請求日】2020年12月16日
(31)【優先権主張番号】特願2020-89(P2020-89)
(32)【優先日】2020年1月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】520004409
【氏名又は名称】有限会社パスワールド
(74)【代理人】
【識別番号】100195752
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 一正
(72)【発明者】
【氏名】ゴゲ パスカル
【審査官】 榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−202595(JP,A)
【文献】 特開昭61−108914(JP,A)
【文献】 特開昭63−71618(JP,A)
【文献】 特開平5−45177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00 − 5/62
G01B 7/00 − 7/34
H03B 28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリーエンコーダ又はリニアエンコーダにおける信号処理部の開発用の信号発生装置であって、
前記ロータリーエンコーダ又は前記リニアエンコーダのセンサー部が出力するタイミングに相当する正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を一組として生成するデジタル信号生成部と、
前記デジタル信号生成部で生成した前記一組の正弦波形及び余弦波形のデジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換部と、
前記DA変換部でアナログ信号に変換された前記一組の正弦波形及び余弦波形のそれぞれをアナログ信号として前記信号処理部へ出力するアナログ信号増幅・出力部と、を備え、
前記デジタル信号生成部は、テーブルに記憶された正弦波形の少なくとも一部の値を読み出して正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を生成するか、又はCORDICアルゴリズムにより正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を生成することを特徴とするエンコーダ開発用信号発生装置。
【請求項2】
前記デジタル信号生成部は正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を三組生成し、
前記DA変換部は三組の正弦波形及び余弦波形のデジタル信号をアナログ信号に変換し、
前記アナログ信号増幅・出力部は三組の正弦波形及び余弦波形のそれぞれをアナログ信号として前記信号処理部へ出力することを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ開発用信号発生装置。
【請求項3】
ロータリーエンコーダ又はリニアエンコーダにおける信号処理部の開発用の信号発生装置であって、
前記ロータリーエンコーダ又は前記リニアエンコーダのセンサー部が出力するタイミングに相当する正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を一組として生成するデジタル信号生成部と、
前記デジタル信号生成部で生成した前記一組の正弦波形及び余弦波形のデジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換部と、
前記DA変換部でアナログ信号に変換された前記一組の正弦波形及び余弦波形のそれぞれをアナログ信号として前記信号処理部へ出力するアナログ信号増幅・出力部と、を備え、
前記ロータリーエンコーダ又は前記リニアエンコーダのセンサー部から出力される正弦波形及び余弦波形を入力して分析する入力波形分析部を備え、
当該入力波形分析部で分析されたパラメータに基づいて、正弦波形及び余弦波形のそれぞれをアナログ信号として前記信号処理部へ出力することを特徴とするエンコーダ開発用信号発生装置。
【請求項4】
前記ロータリーエンコーダ1回転に相当するタイミング、又はリニアエンコーダが設定済基点を通過するタイミングで、原点信号を1回出力することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエンコーダ開発用信号発生装置。
【請求項5】
ロータリーエンコーダ又はリニアエンコーダにおける信号処理部の開発用の信号発生装置であって、
前記ロータリーエンコーダ又は前記リニアエンコーダのセンサー部が出力するタイミングに相当する正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を一組として生成するデジタル信号生成部と、
前記デジタル信号生成部で生成した前記一組の正弦波形及び余弦波形のデジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換部と、
前記DA変換部でアナログ信号に変換された前記一組の正弦波形及び余弦波形のそれぞれをアナログ信号として前記信号処理部へ出力するアナログ信号増幅・出力部と、を備え、
前記ロータリーエンコーダ又は前記リニアエンコーダの加減速時に相当する正弦波形及び余弦波形を出力することが可能なことを特徴とするエンコーダ開発用信号発生装置。
【請求項6】
ロータリーエンコーダ又はリニアエンコーダにおける信号処理部の開発用の信号発生装置であって、
前記ロータリーエンコーダ又は前記リニアエンコーダのセンサー部が出力するタイミングに相当する正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を一組として生成するデジタル信号生成部と、
前記デジタル信号生成部で生成した前記一組の正弦波形及び余弦波形のデジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換部と、
前記DA変換部でアナログ信号に変換された前記一組の正弦波形及び余弦波形のそれぞれをアナログ信号として前記信号処理部へ出力するアナログ信号増幅・出力部と、を備え、
回転体の回転軸とエンコーダ軸とが偏心している場合に相当する信号を出力可能なことを特徴とするエンコーダ開発用信号発生装置。
【請求項7】
ロータリーエンコーダ又はリニアエンコーダにおける信号処理部の開発用の信号発生装置であって、
前記ロータリーエンコーダ又は前記リニアエンコーダのセンサー部が出力するタイミングに相当する正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を一組として生成するデジタル信号生成部と、
前記デジタル信号生成部で生成した前記一組の正弦波形及び余弦波形のデジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換部と、
前記DA変換部でアナログ信号に変換された前記一組の正弦波形及び余弦波形のそれぞれをアナログ信号として前記信号処理部へ出力するアナログ信号増幅・出力部と、を備え、
前記正弦波形及び前記余弦波形には、それぞれ高調波が重畳されていることを特徴とするエンコーダ開発用信号発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーモータ等の回転体やリニアモータ等の移動体に用いられるエンコーダにおける信号処理回路の開発用に信号を発生させる信号発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロータリーモータの回転角度やリニアモータの移動量を検出するためにエンコーダが使用されている。最近では、ロボット等に使われるモータ及びエンコーダの精度が向上して正確な位置決めができるようになっている。また、開発を加速させるために、エンコーダの開発を待たずに疑似的にエンコーダの出力信号を発生させてロボットの開発を並行して進めることが行われている。
【0003】
特許文献1には、モータやエンコーダを準備せずに、ホストコントローラのソフトウエアの検証試験を行える疑似位置信号発生装置の構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1:特開2006−318322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、エンコーダのセンサー部と信号処理部の動作についての信号を疑似的に発生させるものであるが、エンコーダのセンサー部からの信号を疑似的に発生させて、エンコーダの信号処理部の開発を行うことができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決して、エンコーダの信号処理部の開発に使用可能なエンコーダ開発用信号発生装置を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、ロータリーエンコーダ又はリニアエンコーダにおける信号処理部の開発用の信号発生装置であって、
前記ロータリーエンコーダ又は前記リニアエンコーダのセンサー部が出力するタイミングに相当する正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を一組として生成するデジタル信号生成部と、
前記デジタル信号生成部で生成した前記一組の正弦波形及び余弦波形のデジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換部と、
前記DA変換部でアナログ信号に変換された前記一組の正弦波形及び余弦波形のそれぞれをアナログ信号として前記信号処理部へ出力するアナログ信号増幅・出力部と、を備え、
前記デジタル信号生成部は、テーブルに記憶された正弦波形の少なくとも一部の値を読み出して正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を生成するか、又はCORDICアルゴリズムにより正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を生成することを特徴とするエンコーダ開発用信号発生装置を提供するものである。
【0008】
この構成により、ロータリーモータ等の回転体及びリニアモータ等の移動体におけるエンコーダの信号処理部の開発に使用可能な信号発生装置を実現することができる。
【0009】
前記デジタル信号生成部は正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を三組生成し、
前記DA変換部は三組の正弦波形及び余弦波形のデジタル信号をアナログ信号に変換し、
前記アナログ信号増幅・出力部は三組の正弦波形及び余弦波形のそれぞれをアナログ信号として出力する構成としてもよい。
【0010】
この構成により、高精度なエンコーダの信号処理部の開発や評価に使用可能な信号発生装置を実現することができる。
【0011】
また、上記課題を解決するために本発明は、ロータリーエンコーダ又はリニアエンコーダにおける信号処理部の開発用の信号発生装置であって、
前記ロータリーエンコーダ又は前記リニアエンコーダのセンサー部が出力するタイミングに相当する正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を一組として生成するデジタル信号生成部と、
前記デジタル信号生成部で生成した前記一組の正弦波形及び余弦波形のデジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換部と、
前記DA変換部でアナログ信号に変換された前記一組の正弦波形及び余弦波形のそれぞれをアナログ信号として前記信号処理部へ出力するアナログ信号増幅・出力部と、を備え、
前記ロータリーエンコーダ又は前記リニアエンコーダのセンサー部から出力される正弦波形及び余弦波形を入力して分析する入力波形分析部を備え、
当該入力波形分析部で分析されたパラメータに基づいて、正弦波形及び余弦波形のそれぞれをアナログ信号として前記信号処理部へ出力することを特徴とするエンコーダ開発用信号発生装置を提供するものである。
【0012】
この構成により、実際のロータリーエンコーダ又はリニアエンコーダと同じパラメータの波形信号を出力することができる。
【0013】
前記ロータリーエンコーダ1回転に相当するタイミング、又はリニアエンコーダが設定済基点を通過するタイミングで、Z信号を1回出力する構成としてもよい。なお、基点は図示しない操作盤から設定できる。
【0014】
この構成により、インクリメンタル型のエンコーダの開発を進めることができる。
【0015】
また、上記課題を解決するために本発明は、ロータリーエンコーダ又はリニアエンコーダにおける信号処理部の開発用の信号発生装置であって、
前記ロータリーエンコーダ又は前記リニアエンコーダのセンサー部が出力するタイミングに相当する正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を一組として生成するデジタル信号生成部と、
前記デジタル信号生成部で生成した前記一組の正弦波形及び余弦波形のデジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換部と、
前記DA変換部でアナログ信号に変換された前記一組の正弦波形及び余弦波形のそれぞれをアナログ信号として前記信号処理部へ出力するアナログ信号増幅・出力部と、を備え、
前記ロータリーエンコーダ又は前記リニアエンコーダの加減速時に相当する正弦波形及び余弦波形を出力することが可能なことを特徴とするエンコーダ開発用信号発生装置を提供するものである。
この構成により、加減速時を含めた開発を進めることができる。特に、リニアエンコーダの場合は、移動量の長い高額なリニアモータを製造しなくても加減速時の動作を確かめることができる。
【0016】
また、上記課題を解決するために本発明は、ロータリーエンコーダ又はリニアエンコーダにおける信号処理部の開発用の信号発生装置であって、
前記ロータリーエンコーダ又は前記リニアエンコーダのセンサー部が出力するタイミングに相当する正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を一組として生成するデジタル信号生成部と、
前記デジタル信号生成部で生成した前記一組の正弦波形及び余弦波形のデジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換部と、
前記DA変換部でアナログ信号に変換された前記一組の正弦波形及び余弦波形のそれぞれをアナログ信号として前記信号処理部へ出力するアナログ信号増幅・出力部と、を備え、
回転体の回転軸とエンコーダ軸とが偏心している場合に相当する信号を出力可能なことを特徴とするエンコーダ開発用信号発生装置を提供するものである。
この構成により、エンコーダの組立誤差を考慮した開発を進めることができる。
【0017】
また、上記課題を解決するために本発明は、ロータリーエンコーダ又はリニアエンコーダにおける信号処理部の開発用の信号発生装置であって、
前記ロータリーエンコーダ又は前記リニアエンコーダのセンサー部が出力するタイミングに相当する正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を一組として生成するデジタル信号生成部と、
前記デジタル信号生成部で生成した前記一組の正弦波形及び余弦波形のデジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換部と、
前記DA変換部でアナログ信号に変換された前記一組の正弦波形及び余弦波形のそれぞれをアナログ信号として前記信号処理部へ出力するアナログ信号増幅・出力部と、を備え、
前記正弦波形及び前記余弦波形には、それぞれ高調波が重畳されていることを特徴とするエンコーダ開発用信号発生装置を提供するものである。
【0018】
この構成により、実際に近い波形をエンコーダの信号処理部に供給することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のエンコーダ開発用信号発生装置は、エンコーダの信号処理部の開発に使用可能な信号発生装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施例1におけるエンコーダ開発用信号発生装置の位置付けを説明する図である。
図2】本発明の実施例1におけるエンコーダ開発用信号発生装置の構成を説明するブロック図である。
図3】本発明の実施例1におけるエンコーダ開発用信号発生装置が出力する信号を説明する図である。
図4】本発明の実施例2におけるエンコーダ開発用信号発生装置の高精度化を説明するためのエンコーダパターンの図である。
図5】本発明の実施例2におけるエンコーダ開発用信号発生装置の構成を説明するブロック図である。
図6】本発明の実施例2におけるエンコーダ開発用信号発生装置が出力する信号を説明する図である。
図7】本発明の実施例3におけるエンコーダ開発用信号発生装置の構成を説明するブロック図である。
図8】本発明の実施例4におけるエンコーダ開発用信号発生装置が出力する信号を説明する図である。
図9】本発明の実施例5におけるエンコーダ開発用信号発生装置が出力する信号を説明する図である。
図10】本発明の実施例5におけるエンコーダ開発用信号発生装置の構成を説明する図である。
図11】本発明の実施例6におけるエンコーダ開発用信号発生装置の構成を説明する図である。
図12】本発明の実施例6におけるエンコーダ開発用信号発生装置が出力する信号を説明する図である。
図13】本発明の実施例7におけるエンコーダ開発用信号発生装置が出力する信号を説明する図である。
図14】本発明の実施例4におけるエンコーダ開発用信号発生装置が出力する加減速時の信号事例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0021】
本発明の実施例1について、図1図3を参照して説明する。図1は、本発明の実施例1におけるエンコーダ開発用信号発生装置の位置付けを説明する図である。図2は、本発明の実施例1におけるエンコーダ開発用信号発生装置の構成を説明するブロック図である。図3は、本発明の実施例1におけるエンコーダ開発用信号発生装置が出力する信号を説明する図である。
【0022】
実施例1におけるエンコーダ開発用信号発生装置100は、図1に示すように、エンコーダのセンサー部SEの代わりに、エンコーダEのセンサー部SEが発生する信号を疑似的に発生し、エンコーダEの信号処理部SIに対して出力するものである。通常、エンコーダEには、ロータリーモータ等の回転体、又はリニアモータ等の移動体が接続されて、その回転量や移動量を検出する。
【0023】
エンコーダ開発用信号発生装置100の出力信号をエンコーダEの信号処理部SIに入力することにより、エンコーダEのセンサー部SEの開発完了を待たずに信号処理部SIの開発を進めることができる。また、実際のロータリーモータ等の回転体やリニアモータ等の移動体では発生させるのに手間のかかるノイズの重畳や偏心ずれや高調波等の様々な状況に応じた信号を出力することができ、信号処理部SIの開発及び評価を加速することができる。
【0024】
実施例1におけるエンコーダ開発用信号発生装置100は、図2に示すように、正弦波生成部20、制御部60、汎用デジタル信号発生部70、デジタル信号生成部130、DA変換部140、及びアナログ信号増幅・出力部150を備え、さらに図示しないマスタークロック発生部、操作盤、及び電源部を備えている。
【0025】
図示しないマスタークロック発生部は、エンコーダ開発用信号発生装置100の各ブロックが動作する基本となるクロックを発生するもので、実施例1においては、100MHzのデジタルクロックを発生している。
【0026】
なお、実施例1においては、クロック周波数を100MHzとしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、90MHzでもよいし、105MHzでもよいし、他の任意の周波数でもよい。
【0027】
正弦波生成部20は、正弦波の波形を角度360°が任意に等分割された値をテーブルとして記憶しているもので、このテーブル内容を読み出すことにより、正弦波を生成することができる。そして、読み出す角度のステップを変化させることにより、周波数を変更することが可能であり、後述するロータリーモータ等の回転体やリニアモータ等の移動体の加減速に対応した正弦波の波形を生成することができる。例えば、読み出す角度のステップが大きい場合は周波数が高くなり、読み出す角度のステップが小さい場合は周波数が低くなる。また、正弦波の波形の位相を90°ずらすことにより、余弦波の波形を生成することができる。さらに、実際のセンサー部SEは完璧ではないため、実際のセンサー部SEに合わせて、正弦波と余弦波の位相差は90°に限らず任意にずらすことができる。
【0028】
なお、実施例1においては、正弦波生成部20が正弦波の波形を角度360°が任意に等分割された値をテーブルとして記憶しているが、必ずしもこれに限定するものではなく、適宜変更が可能である。例えば、正弦波は90°あたりの垂直線に対し左右対称である。さらに0点に対する対称である。従って、90から180までは90°の左右対称を利用し、0点対称も利用すると正弦波の1/4の波形のみあれば全ての角度を記憶するようにしてもよい。また、CORDIC等のアルゴリズムにより、正弦波、余弦波を生成するように構成してもよい。
【0029】
実施例1におけるデジタル信号生成部130は、正弦波生成部20から読み出した正弦波の波形に基づいて、2種類の波形を生成することが可能で、第1デジタル信号生成部31と第2デジタル信号生成部32を備えており、ロータリーモータ等の回転体の回転に伴うロータリーエンコーダ、又はリニアモータ等の移動体の移動に伴うリニアエンコーダのセンサー部が出力するタイミングに相当する正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を一組として生成することができる。第1デジタル信号生成部31は正弦波を生成し、第2デジタル信号生成部32は、正弦波生成部20から読み出した正弦波の波形に対して位相を90°ずらして余弦波の波形を生成する。生成する波形の種類は、正弦波や余弦波に限定されず他の波形(例えば、インクリメンタルエンコーダの原点信号)の生成も可能であり、図示しない操作盤から設定することができ、その周波数や振幅、又は電圧オフセットを設定できる。
【0030】
ここで、ロータリーモータ等の回転体の回転に伴うロータリーエンコーダのセンサー部が出力するタイミングに相当する正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を生成するとは、操作盤等で指定されたロータリーモータ等の回転体の回転数や回転速度に相当するデジタル信号を生成することである。同様に、リニアモータ等の移動体の移動に伴うリニアエンコーダのセンサー部が出力するタイミングに相当する正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を生成するとは、操作盤等で指定されたリニアモータ等の移動体の移動距離や移動速度に相当するデジタル信号を生成することである。
また、ここでのデジタル信号とは、インクリメンタルエンコーダにおけるA,B,Z信号(1回転に相当するタイミングで出力)、ブラシレスモータにおけるU、V、Wスイッチング信号、光学アブソリュートエンコーダにおける疑似ランダム信号等である。また、リニアエンコーダの場合は操作盤等で指定された移動距離、ピッチ、及び最大加速度(最大減速度)に相当するデジタル信号(例えば、設定済基点を通過するタイミングでZ信号を出力)を生成することを意味する。
【0031】
DA変換部140は、第1DA変換部41と第2DA変換部42とを備え、デジタル信号生成部130で生成した一組の正弦波形及び余弦波形のデジタル信号をアナログ信号に変換することができる。第1DA変換部41は、第1デジタル信号生成部31が生成した正弦波のデジタル信号をアナログ信号に変換し、第2DA変換部42は、第2デジタル信号生成部32が生成した余弦波のデジタル信号をアナログ信号に変換する。ここで、本発明におけるアナログ信号とは、第1DA変換部41及び第2DA変換部42から出力されるシングルエンド信号又は差動信号をいう。
【0032】
アナログ信号増幅・出力部150は、第1アナログ信号増幅・出力部51と第2アナログ信号増幅・出力部52とを備え、DA変換部140でアナログ信号に変換された一組の正弦波形及び余弦波形のそれぞれを差動信号又はシングルエンド信号として出力することができる。実施例1における第1アナログ信号増幅・出力部51は第1DA変換部41が変換した正弦波のアナログ信号を差動信号(sinN、sinP)として出力し、第2アナログ信号増幅・出力部52は第2DA変換部42が変換した余弦波のアナログ信号を差動信号(cosN、cosP)として出力するものである。また、アナログ信号増幅・出力部150により、各信号の振幅及びオフセットの設定を行うことができる。
【0033】
制御部60は、エンコーダ開発用信号発生装置100において各ブロックを制御するものである。汎用デジタル信号発生部70は、エンコーダEがインクリメンタルエンコーダである場合に、A相、B相、Zの各信号を発生し、デジタルで出力することができる。また、ABZ信号の他にUVW信号やランダムコードを発生することが可能である。汎用デジタル信号発生部70でどのような信号を発生させるかは、操作盤で指示することにより選択することができる。実施例1においては、これら任意のデジタル信号は16ビットで表現されるが、これに限定されずビット数を任意に設定できる。
【0034】
実施例1におけるエンコーダ開発用信号発生装置100が出力する正弦波の波形及び余弦波の波形を図3に示す。図3(a)は正弦信号を示し、差動信号として出力される。OffSは、正弦信号の電圧オフセットを示し、ASは正弦信号の振幅を示している。図3(b)は余弦信号を示し、正弦信号と同期しており、差動信号として出力される。OffCは、余弦信号の電圧オフセットを示し、AC余弦信号の振幅を示している。
【0035】
なお、実施例1においては、第1アナログ信号増幅・出力部51から正弦波の波形を出力し、第2アナログ信号増幅・出力部52からは余弦波の波形を出力するように構成したが、かならずしもこれに限定されず、適宜変更が可能である。例えば、第1アナログ信号増幅・出力部51から余弦波の波形を出力し、第2アナログ信号増幅・出力部52からは正弦波の波形を出力するようにしてもよいし、第1アナログ信号増幅・出力部51及び第2アナログ信号増幅・出力部52の双方から正弦波又は余弦波の波形を出力してもよい。さらに、それぞれの周波数や振幅を異なるように出力してもよい。
【0036】
正弦波又は余弦波の波形を差動信号として出力することにより、ノイズに強い信号とすることができる。
【0037】
なお、リニアモータの場合、動作範囲が限られているので正弦波の波数が固定となる。その場合、物理的な動きを再現するのは、加速、固定周波数、減速であり、これらは操作盤から移動距離、ピッチ、最大加速度を設定することにより信号を発生させることが可能である。
【0038】
このように実施例1においては、ロータリーエンコーダ又はリニアエンコーダにおける信号処理部の開発用の信号発生装置であって、
前記ロータリーエンコーダ又は前記リニアエンコーダのセンサー部が出力するタイミングに相当する正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を一組として生成するデジタル信号生成部と、
前記デジタル信号生成部で生成した前記一組の正弦波形及び余弦波形のデジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換部と、
前記DA変換部でアナログ信号に変換された前記一組の正弦波形及び余弦波形のそれぞれをアナログ信号として前記信号処理部へ出力するアナログ信号増幅・出力部と、を備えたことを特徴とするエンコーダ開発用信号発生装置を実現することができる。
【実施例2】
【0039】
本発明の実施例2は、デジタル信号生成部、DA変換部、及びアナログ信号増幅・出力部を、それぞれ三組分備えた点で実施例1と異なっている。実施例2について図4図6を参照して説明する。図4は、本発明の実施例2におけるエンコーダ開発用信号発生装置の高精度化を説明するためのエンコーダパターンの図である。図5は、本発明の実施例2におけるエンコーダ開発用信号発生装置の構成を説明するブロック図である。図6は、本発明の実施例2におけるエンコーダ開発用信号発生装置が出力する信号を説明する図である。
【0040】
実施例2は、特に高精度なエンコーダに対応可能としている。つまり、図4に示すように、高精度エンコーダの回転盤に形成されたパターンが、マスター(M:Master)パターンP2、ヴェルニエ(V:Vernier)パターンP1、セグメント(S:Segment)パターンP3の三種類からなっており、ヴェルニエパターンP1は最外周に形成され、マスターパターンP2はその内周、セグメントパターンP3は最内周に形成されて、それぞれのパターン個数が微妙に異なっている。ヴェルニエ(V:Vernier)はNoniusという呼称もあるが、本発明においては、ヴェルニエ(V:Vernier)と呼ぶ。例えば、マスターパターンP2の形成個数が256の場合、ヴェルニエパターンP1の形成個数はマスターの形成個数より1少ない255であり、セグメントパターンP3の形成個数は240である。これにより、形成されたパターンのエッジ部分が不鮮明であってもセグメントの形成パターンを用いて精度の限界を高めることができる。なお、図4はロータリーエンコーダのパターン図を示しているが、リニアエンコーダの場合には三種類のパターンを平行に並べ、同一の長さで256、255、240個のパターンとなる。
【0041】
このマスターパターンP2、ヴェルニエパターンP1、セグメントパターンP3の各パターンをセンサー(例えば磁気センサー)が読み取って出力する波形信号を実施例2におけるエンコーダ開発用信号発生装置200は出力することができる。このため、高精度なエンコーダの信号処理部の開発にとって有用である。
【0042】
具体的には、図5に示すように、6チャンネル分(三組分)の波形信号を出力可能に構成している。つまり、実施例2におけるエンコーダ開発用信号発生装置200は、正弦波生成部20、デジタル信号生成部230、DA変換部240、及びアナログ信号増幅・出力部250を備え、さらに図示しないマスタークロック発生部、操作盤、電源部を備えている。図5で示すような6チャンネル分(三組分)の波形信号を出力可能とするには、実施例1におけるエンコーダ開発用信号発生装置100を3台用いて、それぞれを同期させることも可能である。しかしながら、実施例2におけるエンコーダ開発用信号発生装置200は、それぞれの波形信号が同期しているため、容易に6チャンネル分の同期した信号を出力することが可能である。
【0043】
図示しないマスタークロック発生部は、エンコーダ開発用信号発生装置200の各ブロックが動作する基本となるクロックを発生するもので、実施例2においては、100MHzのデジタルクロックを発生しているが、100MHz以外の任意の周波数でもよい。
【0044】
正弦波生成部20は、正弦波の波形を角度360°が任意に等分割された値をテーブルとして記憶しているもので、このテーブル内容を読み出すことにより、正弦波を生成することができる。そして、読み出しステップを変化させることにより、周波数を変更することが可能であり、後述するモータの加減速に対応した正弦波の波形を生成することができる。例えば、読み出す角度のステップが大きい場合は周波数が高くなり、読み出す角度のステップが小さい場合は周波数が低くなる。また、正弦波の波形の位相を90°ずらすことにより、余弦波の波形を生成することができる。
【0045】
実施例2におけるデジタル信号生成部230は、正弦波生成部20から読み出した正弦波の波形に基づいて、6種類の波形を生成することが可能で、第1デジタル信号生成部31、第2デジタル信号生成部32、第3デジタル信号生成部33、第4デジタル信号生成部34、第5デジタル信号生成部35、及び第6デジタル信号生成部36を備えており、ロータリーモータ等の回転体の回転に相当するタイミングで正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を一組として三組生成することができる。第1デジタル信号生成部31はマスターパターンP2の正弦波を生成し、第2デジタル信号生成部32は、正弦波生成部20から読み出した正弦波の波形に対して位相を90°ずらしてマスターパターンP2の余弦波の波形を生成する。同様に、第3デジタル信号生成部33はヴェルニエパターンP1の正弦波を生成し、第4デジタル信号生成部34は、正弦波生成部20から読み出した正弦波の波形に対して位相を90°ずらしてヴェルニエパターンP1の余弦波の波形を生成し、第5デジタル信号生成部35はセグメントパターンP3の正弦波を生成し、第6デジタル信号生成部36は、正弦波生成部20から読み出した正弦波の波形に対して位相を90°ずらしてセグメントパターンP3の余弦波の波形を生成する。生成する波形の種類は、図示しない操作盤から設定することができ、その周波数や振幅、又は電圧オフセットを設定できる。
【0046】
DA変換部240は、第1DA変換部41、第2DA変換部42、第3DA変換部43、第4DA変換部44、第5DA変換部45、及び第6DA変換部46を備え、デジタル信号生成部230で生成した三組の正弦波形及び余弦波形のデジタル信号をアナログ信号に変換することができる。第1DA変換部41は、第1デジタル信号生成部31が生成した正弦波のデジタル信号をアナログ信号に変換し、第2DA変換部42は、第2デジタル信号生成部32が生成した余弦波のデジタル信号をアナログ信号に変換し、第3DA変換部43は、第3デジタル信号生成部33が生成した正弦波のデジタル信号をアナログ信号に変換し、第4DA変換部44は、第4デジタル信号生成部34が生成した余弦波のデジタル信号をアナログ信号に変換し、第5DA変換部45は、第1デジタル信号生成部35が生成した正弦波のデジタル信号をアナログ信号に変換し、第6DA変換部46は、第2デジタル信号生成部36が生成した余弦波のデジタル信号をアナログ信号に変換する。
【0047】
アナログ信号増幅・出力部250は、第1アナログ信号増幅・出力部51、第2アナログ信号増幅・出力部52、第3アナログ信号増幅・出力部53、第4アナログ信号増幅・出力部54、第5アナログ信号増幅・出力部55、第6アナログ信号増幅・出力部56を備え、DA変換部240でアナログ信号に変換された三組の正弦波形及び余弦波形のそれぞれを差動信号として出力することができる。第1アナログ信号増幅・出力部51は第1DA変換部41が変換した正弦波のアナログ信号を差動信号として出力し、第2アナログ信号増幅・出力部52は第2DA変換部42が変換した余弦波のアナログ信号を差動信号として出力し、第3アナログ信号増幅・出力部53は第3DA変換部43が変換した正弦波のアナログ信号を差動信号として出力し、第4アナログ信号増幅・出力部54は第4DA変換部44が変換した余弦波のアナログ信号を差動信号として出力し、第5アナログ信号増幅・出力部55は第5DA変換部45が変換した正弦波のアナログ信号を差動信号として出力し、第6アナログ信号増幅・出力部56は第6DA変換部46が変換した余弦波のアナログ信号を差動信号として出力するものである。
【0048】
なお、実施例2においては、ロータリーモータ等の回転体の回転に相当するタイミングで正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を一組として三組生成するように構成したが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、ロータリーモータ等の回転体の回転に相当するタイミングで正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を一組として二組生成するように構成してもよいし、ロータリーモータ等の回転体の回転に相当するタイミングで正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を一組として四組生成するように構成してもよい。なお、実施例2においてもアナログ信号増幅・出力部からアナログ信号は、差動信号に限らず、シングルエンド信号でもよい。
【0049】
実施例2におけるエンコーダ開発用信号発生装置200が出力する正弦波の波形及び余弦波の波形を図6に示す。図6(a)はマスターMの正弦波信号及び余弦信号を示し、差動信号として出力される。図6(b)はヴェルニエVの正弦波信号及び余弦信号を示し、差動信号として出力される。図6(c)はセグメントSの正弦波信号及び余弦信号を示し、差動信号として出力される。OffSは、正弦信号の電圧オフセットを示し、ASは正弦信号の振幅を示している。OffCは、余弦信号の電圧オフセットを示し、ACは余弦信号の振幅を示している。
【0050】
このように実施例2においては、前記デジタル信号生成部は正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を三組生成し、
前記DA変換部は三組の正弦波形及び余弦波形のデジタル信号をアナログ信号に変換し、
前記アナログ信号増幅・出力部は三組の正弦波形及び余弦波形のそれぞれをアナログ信号として出力することにより、高精度なエンコーダの開発を行うことができる。
【実施例3】
【0051】
本発明の実施例3におけるエンコーダ開発用信号発生装置は、実際のエンコーダにおけるセンサー部が出力した波形を入力し、同じ周波数、振幅、電圧オフセットで出力できる点で、実施例1及び2と異なっている。図7を参照して実施例3について説明する。図7は、本発明の実施例3におけるエンコーダ開発用信号発生装置の構成を説明するブロック図である。
【0052】
実施例3におけるエンコーダ開発用信号発生装置300は、正弦波生成部20、デジタル信号生成部130、DA変換部140、アナログ信号増幅・出力部150、及び入力波形分析部380を備え、さらに図示しないマスタークロック発生部、操作盤、電源部を備えている。
【0053】
図示しないマスタークロック発生部は、エンコーダ開発用信号発生装置300の各ブロックが動作する基本となるクロックを発生するもので、実施例3においては、100MHzのデジタルクロックを発生している。なお、実施例3においては、クロック周波数を100MHzとしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、90MHzでもよいし、105MHzでもよいし、他の任意の周波数でもよい。
【0054】
正弦波生成部20は、正弦波の波形を角度360°が任意に等分割された値をテーブルとして記憶しているもので、このテーブル内容を読み出すことにより、正弦波を生成することができる。そして、読み出しステップを変化させることにより、周波数を変更することが可能であり、後述するモータの加減速に対応した正弦波の波形を生成することができる。例えば、読み出す角度のステップが大きい場合は周波数が高くなり、読み出す角度のステップが小さい場合は周波数が低くなる。また、正弦波の波形の位相を90°ずらすことにより、余弦波の波形を生成することができる。また、実際のセンサー部SEに類似させて、90°以外の任意の角度にずらして生成してもよい。なお、実施例3においても正弦波生成部20において、テーブルを持たずにCORDIC等のアルゴリズムで正弦波、余弦波を生成するようにしてもよい。
【0055】
実施例3におけるデジタル信号生成部130は、正弦波生成部20から読み出した正弦波の波形に基づいて、2種類の波形を生成することが可能で、第1デジタル信号生成部31と第2デジタル信号生成部32を備えており、ロータリーモータ等の回転体の回転に相当するタイミングで正弦波形及び余弦波形のデジタル信号を一組として生成することができる。第1デジタル信号生成部31は正弦波を生成し、第2デジタル信号生成部32は、正弦波生成部20から読み出した正弦波の波形に対して位相を90°ずらして余弦波の波形を生成する。生成する波形の種類は、正弦波や余弦波に限定されず他の波形の生成も可能であり、図示しない操作盤から設定することができ、その周波数や振幅、又は電圧オフセットを設定できる。
【0056】
DA変換部140は、第1DA変換部41、及び第2DA変換部42を備え、デジタル信号生成部130で生成した正弦波形及び余弦波形のデジタル信号をアナログ信号に変換することができる。第1DA変換部41は、第1デジタル信号生成部31が生成した正弦波のデジタル信号をアナログ信号に変換し、第2DA変換部42は、第2デジタル信号生成部32が生成した余弦波のデジタル信号をアナログ信号に変換する。
【0057】
アナログ信号増幅・出力部150は、第1アナログ信号増幅・出力部51、及び第2アナログ信号増幅・出力部52を備え、DA変換部140でアナログ信号に変換された正弦波形及び余弦波形のそれぞれを差動信号として出力することができる。第1アナログ信号増幅・出力部51は第1DA変換部41が変換した正弦波のアナログ信号を差動信号として出力し、第2アナログ信号増幅・出力部52は第2DA変換部42が変換した余弦波のアナログ信号を差動信号として出力するものである。
【0058】
実施例3では、さらに、入力波形分析部380を備えている。入力波形分析部380は、実際のエンコーダEのセンサー部SEからの出力を入力し、AD変換した後、それら波形の周波数、振幅、電圧オフセット等のパラメータを分析し制御部60に入力して記憶する。再生する場合は、記憶していた周波数、振幅、電圧オフセットをデジタル信号生成部130における第1デジタル信号生成部31、第2デジタル信号生成部32に指示して入力した波形と同じ周波数、振幅、電圧オフセットの波形を生成して、DA変換部140でDA変換し、アナログ信号増幅・出力部150で差動信号として出力する。なお、実施例3においてもアナログ信号増幅・出力部からアナログ信号は、差動信号に限らず、シングルエンド信号でもよい。
【0059】
なお、実施例3においては、実際のエンコーダEのセンサー部SEからの出力を入力してパラメータを分析し記憶するように構成したが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、分析したパラメータを記憶せずに、分析したパラメータにより各種の差動信号を出力するように構成してもよい。
【0060】
このように実施例3においては、前記エンコーダのセンサー部から出力される正弦波形及び余弦波形を入力して分析する入力波形分析部を備え、
当該入力波形分析部で分析されたパラメータに基づいて、正弦波形及び余弦波形のそれぞれを差動信号として出力することにより、実際のエンコーダと同じ波形信号を出力することができる。
【実施例4】
【0061】
本発明の実施例4におけるエンコーダ開発用信号発生装置は、ロータリーモータ等の回転体やリニアモータ等の移動体の加減速時に相当する正弦波形及び余弦波形を出力することが可能な点で、実施例1〜3と異なっている。実施例4について図8図14を参照して説明する。図8は、本発明の実施例4におけるエンコーダ開発用信号発生装置が出力する信号を説明する図であり、(A)は加速時の信号を示し、(B)は減速時の信号を示している。図14は、本発明の実施例4におけるエンコーダ開発用信号発生装置が出力する加減速時の信号事例を説明する図である。
【0062】
回転体や移動体の加速時は、回転体や移動体の回転が静止状態から徐々に回転数が上昇していく。それに伴って、センサー部SEの回転盤は回転数が上昇するので、エンコーダ開発用信号発生装置400(図示せず)は低い周波数から高い周波数の正弦波形及び余弦波形を疑似的に再現して出力する。同様に、モータ等の減速時は、モータ等の回転が高速回転状態から徐々に回転数が下降していく。それに伴って、センサー部SEの回転盤は回転数が減少するので、エンコーダ開発用信号発生装置400(図示せず)は高い周波数から低い周波数の正弦波形及び余弦波形を疑似的に再現して出力する。加減速時に相当する場合に出力する正弦波の波形信号例を図8に示す
【0063】
正弦波及び余弦波の周波数を変化させるには、正弦波生成部20のテーブルから読み出す角度のステップを変化させればよい。つまり、加速時には、正弦波生成部20から読み出す角度のステップを小さいステップから徐々に大きいステップに変化させればよい。同様に、減速時には、正弦波生成部20から読み出す角度のステップを大きいステップから徐々に小さいステップに変化させればよい。なお、実施例4においても正弦波生成部20において、テーブルを持たずにCORDIC等のアルゴリズムで正弦波、余弦波を生成するようにしてもよい。
【0064】
このように、回転体や移動体の加減速時に相当する正弦波形及び余弦波形を出力することが可能なことにより、実際のエンコーダと同じパラメータの波形信号を出力することができる。特に、移動範囲の限られているリニアモータの場合は、高額なリニアモータを製造しなくてもエンコーダの開発や評価が行えるので有用である。また、加速度は任意的に設定可能で、実際のエンコーダにあり得ない加速度を設定することも可能。これにより、例えば瞬間的に静止から1万回転に変化させることで、処理部の遅延を測定することも可能である。さらに、加速度及び減速度の設定によりリニアエンコーダの類似信号が生成可能となる。連続的に回転可能なロータリエンコーダと異なり、リニアエンコーダには始点と終点があり、図14が示すようにT0−T1間の領域は加速範囲、T1−T2間の領域は一定速度範囲、T2−T3間の領域は減速度範囲となる。時間に対する加速度は図14の実線が示すように一定にも、若しくは点線が示すように可変にも任意に設定可能である。
【実施例5】
【0065】
本発明の実施例5におけるエンコーダ開発用信号発生装置は、ロータリーモータ等の回転体における回転軸とエンコーダ軸とが偏心している場合に相当する信号を出力可能な点で実施例1〜4と異なっている。実施例5について、図9図10を参照して説明する。図9は、本発明の実施例5におけるエンコーダ開発用信号発生装置が出力する信号を説明する図であり、図9(a)は、回転軸とエンコーダ軸とが偏心した状態を示し、図9(b)は、回転軸とエンコーダ軸とが偏心している場合に相当する出力信号を示している。図10は、本発明の実施例5におけるエンコーダ開発用信号発生装置の構成を説明するブロック図である。
【0066】
図9(a)に示すように、モータMOの回転軸とエンコーダEにおける回転盤SE1の回転軸がずれた状態で組み立てられると、回転盤は偏心して回転する。その場合、回転盤から読み取った信号は、図9(b)の(A)に示すように、1回転のなかで正弦波及び余弦波の周波数が変化する。
【0067】
実施例5においては、回転軸とエンコーダ軸とが偏心している場合に相当するように周波数が1回転内で変化する正弦波及び余弦波の波形を出力することができる。出力する正弦波及び余弦波の周波数を変化させるには、正弦波生成部20から読み出す角度のステップを変化させればよい。
【0068】
図10に示すように、実施例5におけるエンコーダ開発用信号発生装置500は、正弦波生成部20、デジタル信号生成部130、DA変換部140、アナログ信号増幅・出力部150、及び偏心信号発生部581を備え、さらに図示しないマスタークロック発生部、操作盤、電源部を備えている。
【0069】
ここで、正弦波生成部20、デジタル信号生成部130、DA変換部140、及び信号出力部150は実施例1と同様であるので説明を省略する。偏心信号発生部581は、デジタル信号生成部130が生成する正弦波及び余弦波において、モータ軸とエンコーダ軸とが偏心している場合に相当する波形とするための基本となる信号を発生する。つまり、正弦波生成部20から読み出す角度のステップを操作盤から指示された偏心量に相当する周波数にあわせて変化させてデジタル信号生成部130に伝達する。なお、実施例5においても正弦波生成部20において、テーブルを持たずにCORDIC等のアルゴリズムで正弦波、余弦波を生成するようにしてもよい。
【0070】
このように実施例5においては、回転軸とエンコーダ軸とが偏心している場合に相当する信号を出力可能なことにより、エンコーダの組立公差を考慮した開発や評価を進めることができる。
【実施例6】
【0071】
本発明の実施例6におけるエンコーダ開発用信号発生装置は、出力する正弦波及び余弦波の波形にノイズを重畳することができる点で実施例1〜5と異なっている。実施例6について図11図12を参照して説明する。図11は、本発明の実施例6におけるエンコーダ開発用信号発生装置の構成を説明する図である。図12は、本発明の実施例6におけるエンコーダ開発用信号発生装置が出力する信号を説明する図である。
【0072】
図11に示すように、実施例6におけるエンコーダ開発用信号発生装置600は、正弦波生成部20、デジタル信号生成部130、DA変換部140、アナログ信号増幅・出力部150、及びノイズ信号発生部682を備え、さらに図示しないマスタークロック発生部、操作盤、電源部を備えている。
【0073】
ここで、正弦波生成部20、デジタル信号生成部130、DA変換部140、及び信号出力部150は実施例1と同様であるので説明を省略する。ノイズ信号発生部682は、正弦波及び余弦波に重畳させるノイズ信号を発生させる。つまり、正弦波生成部20から読み出した正弦波をデジタル信号生成部130に伝達するとともに、操作盤から指示された周波数及び振幅のノイズを発生させて、重畳するようにDA変換部140に指示する。なお、実施例6においても正弦波生成部20において、テーブルを持たずにCORDIC等のアルゴリズムで正弦波、余弦波を生成するようにしてもよい。
【0074】
ノイズを重畳させた正弦波形の例を図12に示す。正弦波に指定されたノイズを重畳させている。これにより、ノイズの影響を受けた場合についても開発を進めることができる。
【実施例7】
【0075】
本発明の実施例7におけるエンコーダ開発用信号発生装置は、生成する正弦波形及び余弦波形にそれぞれ高調波が重畳されている点で実施例1〜6と異なっている。実施例7について図13を参照して説明する。図13は、本発明の実施例7におけるエンコーダ開発用信号発生装置が出力する信号を説明する図であり、(a)は完璧な正弦波形、(b)は、歪みのある正弦波形、(c)は、完璧な正弦波形の周波数分布、(d)は、歪みのある正弦波形の周波数分布を示す。
【0076】
ロータリーエンコーダ又はリニアエンコーダに用いられるセンサー部は、磁気式もしく光学式である。磁気式においては磁界の変化により、光学式においては反射・非反射もしくは透過・非透過により信号が発生し、その信号はほぼ正弦波、余弦波となるはずであるが、実際のエンコーダEにおけるセンサー部SEから出力される信号には一般的に歪みがある。つまり、完璧な正弦波形(図13(a)参照)とはならず、歪みのある正弦波形(図13(b)参照)となる。
【0077】
実施例7におけるエンコーダ開発用信号発生装置は、歪みのある波形を発生させることができる。つまり、完璧な正弦波形における周波数分布は図13(c)に示すように基本周波数のみであるが、図13(b)に示すような歪みのある波形における周波数分布は図13(d)に示すように基本周波数と2倍、3倍等の高調波が存在する。したがって、図13(d)に示すように、高調波を基本周波数に重畳させれば、図13(b)に示すような歪みのある波形を発生させることが可能である。何次の高調波を重畳させるかは、図示しない操作盤から操作して設定することができる。設定された値により、例えば、n次高調波を重畳させるには、正弦波生成部20から読みだした波形をn倍した周波数に変換して元の正弦波形に加算すればよい。その場合の高調波の振幅も操作盤から設定ができる。
【0078】
生成された高調波が重畳された正弦波形及び余弦波形は、DA変換部140でDA変換され、アナログ信号増幅・出力部からエンコーダの信号処理部へと出力される。
【0079】
このように、実施例7においては、生成する正弦波形及び余弦波形にそれぞれ高調波が重畳させることができるため、実際のエンコーダの動作に即した波形を出力することができ、エンコーダの開発にとって有効である。
【実施例8】
【0080】
本発明の実施例8におけるエンコーダ開発用信号発生装置は、回転体がロータリーモータではなく、人力等で回転駆動する点で実施例1〜7と異なっている。例えば、様々な角度センサー、ジャイロ、トラックボール、ハンドル等に用いられるロータリーエンコーダの信号処理部の開発に利用することができる。
【0081】
また、同様に、移動体がリニアモータでなく、人力等で移動する対象物に用いられるリニアエンコーダにも利用することが可能である。
【0082】
このように、実施例8におけるエンコーダ開発用信号発生装置は、回転体及び移動体がモータではないエンコーダの開発に利用できるため、様々な分野に利用ができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明におけるエンコーダ開発用信号発生装置は、ロータリーモータ等の回転体やリニアモータ等の移動体用エンコーダの信号処理部を開発する分野に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0084】
10:マスタークロック発生部 20:正弦波生成部
31:第1デジタル信号生成部 32:第2デジタル信号生成部 33:第3デジタル信号生成部
34:第4デジタル信号生成部 35:第5デジタル信号生成部 36:第6デジタル信号生成部
41:第1DA変換部 42:第2DA変換部 43:第3DA変換部
44:第4DA変換部 45:第5DA変換部 46:第6DA変換部
51:第1アナログ信号増幅・出力部 52:第2アナログ信号増幅・出力部
53:第3アナログ信号増幅・出力部 54:第4アナログ信号増幅・出力部
55:第5アナログ信号増幅・出力部 56:第6アナログ信号増幅・出力部
60:制御部 70:汎用デジタル信号発生部
100:エンコーダ開発用信号発生装置
130:デジタル信号生成部 140:DA変換部
150:アナログ信号増幅・出力部
200:エンコーダ開発用信号発生装置
230:デジタル信号生成部 240:DA変換部
250:アナログ信号増幅・出力部
300:エンコーダ開発用信号発生装置
330:デジタル信号生成部 340:DA変換部
350:アナログ信号増幅・出力部
380:入力波形分析部
500:エンコーダ開発用信号発生装置
581:偏心信号発生部
600:エンコーダ開発用信号発生装置
682:ノイズ信号発生部
E:エンコーダ SE:センサー部 SI:信号処理部
SE1:回転盤 MO:モータ
M:マスター V:ヴェルニエ S:セグメント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14