(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程(a1)がセルロース系原料を酸化する工程であり、前記(a2)のセルロースナノファイバーが、セルロースナノファイバーの絶乾重量に対して0.5〜3.0mmol/gの量のカルボキシル基を有する、請求項3に記載のマスターバッチの製造方法。
工程(a1)がセルロース系原料をカルボキシメチル化する工程であり、前記(a2)のセルロースナノファイバーが、セルロースナノファイバーのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.01〜0.50であるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーである、請求項3に記載のマスターバッチの製造方法。
前記ゴム成分が、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)ポリマー、ブタジエンゴム(BR)ポリマー、クロロプレンゴム(CR)ポリマー、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)ポリマー、天然ゴム(NR)ポリマー、またはこれらの組合せを含む、
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X〜Y」はその端値、すなわちXとYを含む。
【0008】
1.マスターバッチの製造方法
一般にマスターバッチの定義は多様であるが、本発明においては、マスターバッチとはゴム成分とセルロースナノファイバーとを含むが架橋剤を含まない組成物をいう。ゴム組成物とはマスターバッチと架橋剤とを含む未架橋ゴム組成物または当該未架橋ゴム組成物を架橋してなる架橋ゴム組成物をいう。
【0009】
(1)工程(a1)
本工程では、セルロース系原料に酸基を導入して変性セルロースを得る。
1)セルロース系原料
セルロース系原料は、特に限定されないが、例えば、植物、動物(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物に由来するものが挙げられる。植物由来のものとしては、例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等)が挙げられる。本発明で用いるセルロース原料は、これらのいずれかまたは組合せであってもよいが、好ましくは植物または微生物由来のセルロース繊維であり、より好ましくは植物由来のセルロース繊維である。
【0010】
セルロース繊維の平均繊維径は特に制限されないが、一般的なパルプである針葉樹クラフトパルプの場合は30〜60μm程度、広葉樹クラフトパルプの場合は10〜30μm程度である。その他のパルプの場合、一般的な精製を経たものの平均繊維径は50μm程度である。例えばチップ等の数cm大のものを精製した原料を用いる場合、リファイナー、ビーター等の離解機で機械的処理を行い、平均繊維径を50μm程度に調整することが好ましい。
【0011】
酸基とはプロトンを放出しうる基であり、例えば、カルボキシル基、カルボキシル基含有基、リン酸基、リン酸基含有基等が挙げられる。カルボキシル基含有基としては、−COOH基、−R−COOH(Rは炭素数が1〜3のアルキレン基)、−O−R−COOH(Rは炭素数が1〜3のアルキレン基)が挙げられる。リン酸基含有基としては、ポリリン酸基、亜リン酸基、ホスホン酸基、ポリホスホン酸基等が挙げられる。これらの酸基は反応条件によっては、塩の形態(例えばカルボキシレート基(−COOM、Mは金属原子))で導入されることもある。よって、本発明においてセルロース原料に酸基を導入するとは、酸基またはその塩形態の基を含有する基を導入することを意味する。カルボキシル基は酸化によって、カルボキシル基含有基はエーテル化によって、リン酸基およびリン酸基含有基はエステル化によってセルロース系原料に導入できる。以下、詳細に説明する。
【0012】
[酸化]
セルロース原料を酸化することによって酸化セルロースが得られる。酸化方法は特に限定されないが、一例として、N−オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物およびこれらの混合物からなる群より選択される物質との存在下で、酸化剤を用いて水中でセルロース原料を酸化する方法が挙げられる。この方法によれば、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、アルデヒド基、カルボキシル基、およびカルボキシレート基からなる群より選ばれる基が生じる。反応時のセルロース原料の濃度は特に限定されないが、5重量%以下が好ましい。
【0013】
N−オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生しうる化合物である。ニトロキシルラジカルとしては例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル(TEMPO)が挙げられる。N−オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。N−オキシル化合物の使用量は、原料となるセルロースを酸化できる触媒量であれば特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.01mmol以上が好ましく、0.02mmol以上がより好ましい。上限は、10mmol以下が好ましく、1mmol以下がより好ましく、0.5mmol以下が更に好ましい。従って、N−オキシル化合物の使用量は絶乾1gのセルロースに対して、0.01〜10mmolが好ましく、0.01〜1mmolがより好ましく、0.02〜0.5mmolがさらに好ましい。
【0014】
臭化物とは臭素を含む化合物であり、例えば、水中で解離してイオン化可能な臭化アルカリ金属、例えば臭化ナトリウム等が挙げられる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、例えば、ヨウ化アルカリ金属が挙げられる。臭化物またはヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。臭化物およびヨウ化物の合計量は絶乾1gのセルロースに対して、0.1mmol以上が好ましく、0.5mmol以上がより好ましい。当該量の上限は、100mmol以下が好ましく、10mmol以下がより好ましく、5mmol以下が更に好ましい。従って、臭化物およびヨウ化物の合計量は絶乾1gのセルロースに対して、0.1〜100mmolが好ましく、0.1〜10mmolがより好ましく、0.5〜5mmolがさらに好ましい。
【0015】
酸化剤としては、特に限定されないが例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸、これらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物などが挙げられる。中でも、安価で環境負荷が少ないことから、次亜ハロゲン酸またはその塩が好ましく、次亜塩素酸またはその塩がより好ましく、次亜塩素酸ナトリウムがさらに好ましい。酸化剤の使用量は、絶乾1gのセルロースに対して、0.5mmol以上が好ましく、1mmol以上がより好ましく、3mmol以上がさらに好ましい。当該量の上限は、500mmol以下が好ましく、50mmol以下がより好ましく、25mmol以下がさらに好ましい。従って、酸化剤の使用量は絶乾1gのセルロースに対して、0.5〜500mmolが好ましく、0.5〜50mmolがより好ましく、1〜25mmolがさらに好ましく、3〜10mmolが特に好ましい。N−オキシル化合物を用いる場合、酸化剤の使用量はN−オキシル化合物1molに対して1mol以上が好ましく、上限は40molが好ましい。従って、酸化剤の使用量はN−オキシル化合物1molに対して1〜40molが好ましい。
【0016】
酸化反応時のpH、温度等の条件は特に限定されず、一般に、比較的温和な条件であっても酸化反応は効率よく進行する。反応温度は4℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましい。当該温度の上限は40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。従って、反応温度は4〜40℃が好ましく、15〜30℃程度、すなわち室温であってもよい。反応液のpHは、8以上が好ましく、10以上がより好ましい。pHの上限は、12以下が好ましく、11以下がより好ましい。従って、反応液のpHは、好ましくは8〜12、より好ましくは10〜11程度である。通常、酸化反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHは低下する傾向にある。そのため、酸化反応を効率よく進行させるためには、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加して、反応液のpHを上記の範囲に維持することが好ましい。酸化の際の反応媒体は、取扱いの容易さや、副反応が生じにくいこと等の理由から、水が好ましい。
【0017】
酸化における反応時間は、酸化の進行程度に従って適宜設定することができ、通常は0.5時間以上であり、その上限は通常は6時間以下、好ましくは4時間以下である。従って、酸化における反応時間は通常0.5〜6時間、例えば0.5〜4時間程度である。酸化は、2段階以上の反応に分けて実施してもよい。例えば、1段目の反応終了後に濾別して得られた酸化セルロースを、再度、同一または異なる反応条件で酸化させることにより、1段目の反応で副生する食塩による反応阻害を受けることなく、効率よく酸化させることができる。
【0018】
カルボキシル化(酸化)方法の別の例として、オゾン酸化が挙げられる。この酸化反応により、セルロースを構成するグルコピラノース環の少なくとも2位および6位の水酸基が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。オゾン処理は通常、オゾンを含む気体とセルロース原料とを接触させることにより行われる。気体中のオゾン濃度は、50g/m
3以上であることが好ましい。上限は、250g/m
3以下であることが好ましく、220g/m
3以下であることがより好ましい。従って、気体中のオゾン濃度は、50〜250g/m
3であることが好ましく、50〜220g/m
3であることがより好ましい。オゾン添加量は、セルロース原料の固形分100重量%に対し、0.1量部以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましい。オゾン添加量の上限は、通常30重量%以下である。従って、オゾン添加量は、セルロース原料の固形分100重量%に対し、0.1〜30重量%であることが好ましく、5〜30重量%であることがより好ましい。オゾン処理温度は、通常0℃以上であり、好ましくは20℃以上であり、上限は通常50℃以下である。従って、オゾン処理温度は、0〜50℃であることが好ましく、20〜50℃であることがより好ましい。オゾン処理時間は、通常は1分以上であり、好ましくは30分以上であり、上限は通常360分以下である。従って、オゾン処理時間は、通常は1〜360分程度であり、30〜360分程度が好ましい。オゾン処理の条件が上述の範囲内であると、セルロースが過度に酸化および分解されることを防ぐことができ、酸化セルロースの収率が良好となる。
【0019】
オゾン処理されたセルロースに対しさらに、酸化剤を用いて追酸化処理を行ってもよい。追酸化処理に用いる酸化剤は、特に限定されないが例えば、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム等の塩素系化合物、酸素、過酸化水素、過硫酸、過酢酸などが挙げられる。追酸化処理の方法としては例えば、これらの酸化剤を水またはアルコール等の極性有機溶媒中に溶解して酸化剤溶液を作成し、酸化剤溶液中にセルロース原料を浸漬させる方法が挙げられる。酸化セルロースナノファイバーに含まれるカルボキシル基、カルボキシレート基、アルデヒド基の量は、酸化剤の添加量、反応時間等の酸化条件をコントロールすることで調整することができる。
【0020】
カルボキシル基量の測定方法の一例を以下に説明する。酸化セルロースの0.5重量%スラリー(水分散液)60mLを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定する。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出することができる。
カルボキシル基量〔mmol/g酸化セルロース〕=a〔mL〕×0.05/酸化セルロース重量〔g〕
【0021】
このようにして測定した酸化セルロース中のカルボキシル基の量は、絶乾重量に対して、好ましくは0.5mmol/g以上、より好ましくは0.8mmol/g以上、さらに好ましくは1.0mmol/g以上である。当該量の上限は、好ましくは3.0mmol/g以下、より好ましくは2.5mmol/g以下、さらに好ましくは2.0mmol/g以下である。従って、当該量は0.5〜3.0mmol/gが好ましく、0.8〜2.5mmol/gがより好ましく、1.0〜2.0mmol/gがさらに好ましい。
【0022】
[エーテル化]
エーテル化としては、カルボキシメチル(エーテル)化、メチル(エーテル)化、エチル(エーテル)化、シアノエチル(エーテル)化、ヒドロキシエチル(エーテル)化、ヒドロキシプロピル(エーテル)化、エチルヒドロキシエチル(エーテル)化、ヒドロキシプロピルメチル(エーテル)化などが挙げられる。この中から一例としてカルボキシメチル化の方法を以下に説明する。
【0023】
カルボキシメチル化により得られるカルボキシメチル化セルロースまたはセルロースナノファイバー中の無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.10以上であることがさらに好ましい。当該置換度の上限は、0.50以下が好ましく、0.40以下がより好ましく、0.35以下が更に好ましい。従って、カルボキシメチル基置換度は、0.01〜0.50が好ましく、0.05〜0.40がより好ましく、0.10〜0.30がさらに好ましい。
【0024】
カルボキシメチル化方法は特に限定されないが、例えば、発底原料としてのセルロース原料をマーセル化し、その後エーテル化する方法が挙げられる。当該反応には、通常、溶媒が使用される。溶媒としては例えば、水、アルコール(例えば低級アルコール)およびこれらの混合溶媒が挙げられる。低級アルコールとしては例えば、メタノール、エタノール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノールが挙げられる。混合溶媒における低級アルコールの混合割合は、通常は60重量%以上または95重量%以下であり、60〜95重量%であることが好ましい。溶媒の量は、セルロース原料に対し通常は3重量倍である。当該量の上限は特に限定されないが20重量倍である。従って、溶媒の量は3〜20重量倍であることが好ましい。
【0025】
マーセル化は通常、発底原料とマーセル化剤を混合して行う。マーセル化剤としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属が挙げられる。マーセル化剤の使用量は、発底原料の無水グルコース残基当たり0.5倍モル以上が好ましく、1.0モル以上がより好ましく、1.5倍モル以上であることがさらに好ましい。当該量の上限は、通常20倍モル以下であり、10倍モル以下が好ましく、5倍モル以下がより好ましい、従って、マーセル化剤の使用量0.5〜20倍モルが好ましく、1.0〜10倍モルがより好ましく、1.5〜5倍モルがさらに好ましい。
【0026】
マーセル化の反応温度は、通常0℃以上であり、好ましくは10℃以上であり、上限は通常70℃以下、好ましくは60℃以下である。従って、反応温度は通常0〜70℃、好ましくは10〜60℃である。反応時間は、通常15分以上、好ましくは30分以上である。当該時間の上限は、通常8時間以下、好ましくは7時間以下である。従って、反応時間は、通常は15分〜8時間、好ましくは30分〜7時間である。
【0027】
エーテル化反応は通常、カルボキシメチル化剤をマーセル化後に反応系に追加して行う。カルボキシメチル化剤としては例えば、モノクロロ酢酸ナトリウムが挙げられる。カルボキシメチル化剤の添加量は、セルロース原料のグルコース残基当たり通常は0.05倍モル以上が好ましく、0.5倍モル以上がより好ましく、0.8倍モル以上であることがさらに好ましい。当該量の上限は、通常10.0倍モル以下であり、5モル以下が好ましく、3倍モル以下がより好ましい、従って、当該量は好ましくは0.05〜10.0倍モルであり、より好ましくは0.5〜5であり、さらに好ましくは0.8〜3倍モルである。反応温度は通常30℃以上、好ましくは40℃以上であり、上限は通常90℃以下、好ましくは80℃以下である。従って反応温度は通常30〜90℃、好ましくは40〜80℃である。反応時間は、通常30分以上であり、好ましくは1時間以上であり、その上限は、通常は10時間以下、好ましくは4時間以下である。従って反応時間は、通常は30分〜10時間であり、好ましくは1時間〜4時間である。カルボキシメチル化反応の間必要に応じて、反応液を撹拌してもよい。
【0028】
カルボキシメチル化セルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度の測定は例えば、次の方法による。すなわち、1)カルボキシメチル化セルロース(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。2)硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(カルボキシメチル化セルロース)を水素型カルボキシメチル化セルロースにする。3)水素型カルボキシメチル化セルロース(絶乾)を1.5〜2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。4)80%メタノール15mLで水素型カルボキシメチル化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。5)指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのH
2SO
4で過剰のNaOHを逆滴定する。6)カルボキシメチル置換度(DS)を、次式によって算出する:
A=[(100×F’−(0.1NのH
2SO
4)(mL)×F)×0.1]/(水素型カルボキシメチル化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1−0.058×A)
A:水素型カルボキシメチル化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F:0.1NのH
2SO
4のファクター
F’:0.1NのNaOHのファクター
【0029】
[エステル化]
セルロース系原料と後述する化合物Aを反応させることによって、酸基をセルロースに導入できる。具体的には、例えば、セルロース系原料に化合物Aの粉末または水溶液を混合する方法、セルロース系原料のスラリーに化合物Aの水溶液を添加する方法等が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高まり、かつエステル化効率が高くなることから、セルロース系原料またはそのスラリーに化合物Aの水溶液を混合する方法が好ましい。
【0030】
化合物Aとしては例えば、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸、これらのエステル等が挙げられる。化合物Aは、塩の形態でもよい。上記の中でも、低コストであり、扱いやすく、またパルプ繊維のセルロースにリン酸基を導入して、解繊効率の向上が図れるなどの理由から、リン酸系化合物が好ましい。リン酸系化合物は、リン酸基を有する化合物であればよく、例えば、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウム等が挙げられる。用いられるリン酸系化合物は、これらの1種あるいは2種以上の組み合わせでもよい。これらのうち、リン酸基導入の効率が高く、解繊工程で解繊しやすく、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムがより好ましい。また、反応の均一性が高まり、かつリン酸基導入の効率が高くなることから、エステル化においてはリン酸系化合物の水溶液を用いることが好ましい。リン酸系化合物の水溶液のpHは、リン酸基導入の効率を高める観点から7以下が好ましく、パルプ繊維の加水分解を抑える観点から3〜7がより好ましい。
【0031】
リン酸エステル化の方法としては例えば、以下の方法が挙げられる。セルロース系原料の懸濁液(例えば、固形分濃度0.1〜10重量%)に化合物Aを撹拌しながら添加し、セルロースにリン酸基を導入する。化合物Aがリン酸系化合物の場合、セルロース系原料を100重量部に対して化合物Aの添加量はリン元素量として、0.2重量部以上が好ましく、1重量部以上がより好ましい。これにより、微細繊維状セルロースの収率をより向上できる。当該量の上限は、500重量部以下が好ましく、400重量部以下がより好ましい。これにより、化合物Aの使用量に見合った収率を効率よく得ることができる。従って、0.2〜500重量部が好ましく、1〜400重量部がより好ましい。
【0032】
セルロース系原料に対し化合物Aを反応させる際、さらに化合物Bを反応系に加えてもよい。化合物Bを反応系に加える方法としては例えば、セルロース系原料のスラリー、化合物Aの水溶液、またはセルロース系原料と化合物Aのスラリーに、添加する方法が挙げられる。化合物Bは特に限定されないが、塩基性であることが好ましく、塩基性を示す窒素含有化合物がより好ましい。「塩基性を示す」とは通常、フェノールフタレイン指示薬の存在下で化合物Bの水溶液が桃〜赤色を呈すること、または化合物Bの水溶液のpHが7より大きいことを意味する。塩基性を示す窒素含有化合物は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、アミノ基を有する化合物が好ましい。例えば、尿素、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。この中でも低コストで扱いやすい点で、尿素が好ましい。化合物Bの添加量は、2〜1000重量部が好ましく、100〜700重量部がより好ましい。反応温度は0〜95℃が好ましく、30〜90℃がより好ましい。反応時間は特に限定されないが、通常1〜600分程度であり、30〜480分が好ましい。エステル化反応の条件がこれらのいずれかの範囲内であると、セルロースが過度にエステル化されて溶解しやすくなることを防ぐことができ、リン酸エステル化セルロースの収率を向上させることができる。
【0033】
セルロース系原料に化合物Aを反応させた後、通常はエステル化セルロース懸濁液が得られる。エステル化セルロース懸濁液は必要に応じて脱水される。脱水後には加熱処理を行うことが好ましい。これにより、セルロース系原料の加水分解を抑えることができる。加熱温度は、100〜170℃が好ましく、加熱処理の際に水が含まれている間は130℃以下(更に好ましくは110℃以下)で加熱し、水を除いた後100〜170℃で加熱処理することがより好ましい。
【0034】
リン酸エステル化セルロースにおいては、セルロース原料にリン酸基置換基が導入されており、セルロース同士が電気的に反発する。そのため、リン酸エステル化セルロースは容易にナノ解繊することができる。リン酸エステル化セルロースのグルコース単位当たりのリン酸基置換度は0.001以上が好ましい。これにより、十分な解繊(例えばナノ解繊)が実施できる。当該置換度の上限は0.60が好ましい。これにより、リン酸エステル化セルロースの膨潤または溶解を防止し、ナノファイバーが得られない事態を防止することができる。従って当該置換度は0.001〜0.60であることが好ましい。リン酸エステル化セルロースは、煮沸後冷水で洗浄する等の洗浄処理がなされることが好ましい。これにより解繊を効率よく行うことができる。
【0035】
(2)工程(a2)
本工程では、変性セルロースを解繊する。解繊処理は1回行ってもよいし、複数回行ってもよい。複数回の場合それぞれの解繊の時期はいつでもよい。
【0036】
解繊に用いる装置は特に限定されないが、例えば、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などのタイプの装置が挙げられ、高圧または超高圧ホモジナイザーが好ましく、湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーがより好ましい。装置は、セルロース原料または変性セルロース(通常は分散液)に強力なせん断力を印加できることが好ましい。装置が印加できる圧力は、50MPa以上が好ましく、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。装置は、セルロース原料又は変性セルロース(通常は分散液)に上記圧力を印加することができかつ強力なせん断力を印加できる、湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーが好ましい。これにより、解繊を効率的に行うことができる。
【0037】
解繊を変性セルロースの分散液に対して行う場合、分散液中の変性セルロースの固形分濃度は、通常は0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上である。これにより、変性セルロースの量に対する液量が適量となり効率的になる。当該濃度の上限は通常10重量%以下、好ましくは6重量%以下である。これにより流動性を保持することができる。
【0038】
解繊(好ましくは高圧ホモジナイザーでの解繊)、または解繊前に行う分散処理に先立ち、必要に応じて予備処理を行ってもよい。予備処理は、高速せん断ミキサーなどの混合、攪拌、乳化、分散装置を用いて行えばよい。
【0039】
本工程によりセルロースナノファイバーが得られる。セルロースナノファイバーの平均繊維径は、長さ加重平均繊維径にして通常2〜500nm程度であるが、好ましくは2〜50nmである。平均繊維長は長さ加重平均繊維長にして50〜2000nmが好ましい。長さ加重平均繊維径および長さ加重平均繊維長(以下、単に「平均繊維径」、「平均繊維長」ともいう)は、原子間力顕微鏡(AFM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、各繊維を観察して求められる。セルロースナノファイバーの平均アスペクト比は、通常10以上である。上限は特に限定されないが、通常は1000以下である。平均アスペクト比は、下記の式により算出できる。
平均アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
【0040】
本工程で得たセルロースナノファイバーにおけるカルボキシル基量は前述の酸化セルロースのカルボキシル基量と同じであることが好ましい。同様に本工程で得た、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーまたはリン酸エステル化セルロースナノファイバーにグルコース単位当たりの置換度は、それぞれカルボキシメチルセルロースおよびリン酸エステル化セルロースの置換度と同じであることが好ましい。
【0041】
(3)工程(a3)
本工程ではセルロースナノファイバーを酸性化する。セルロースナノファイバーはカルボキシル基等の酸基を有するが、その一部はカルボキシレート基等の塩形態になっている。酸性化とはカルボキシレート基等の塩形態の基をカルボキシル基等の酸基に変換することをいう。以下、説明を簡略にするために、カルボキシレート基をカルボキシル基に変換することを例に説明する。
【0042】
酸性化処理は通常、セルロースナノファイバーの分散液に酸を添加して行う。酸は、無機酸でも有機酸でもよい。無機酸としては例えば、硫酸、塩酸、硝酸、亜硫酸、亜硝酸、リン酸、二酸化塩素発生装置の残留酸などの鉱酸が挙げられ、好適には塩酸である。有機酸としては例えば、酢酸、乳酸、蓚酸、クエン酸、ギ酸などが挙げられる。酸処理時のpHは、通常2以上であり、3以上が好ましい。pHの上限は6以下が好ましく、5以下が好ましい。従ってpHは、2〜6が好ましく、2〜5がより好ましく、3〜5がさらに好ましい。酸の添加量に特に制限はなく、セルロースナノファイバーが凝集して半透明のゲル状物質が沈殿した時点で酸の添加を終了すればよい。
【0043】
酸性化処理は、カルボキシレート基を有するセルロースナノファイバー(「カルボキシル化セルロースナノファイバー塩」ともいう)と陽イオン交換樹脂を接触させて実施することもできる。カルボキシル化セルロースナノファイバー塩を陽イオン交換樹脂と接触すると塩におけるカチオンがプロトンに置換される。陽イオン交換樹脂を用いると塩化ナトリウム等の不要な副生成物が生成せず、陽イオン交換樹脂を金属メッシュ等により濾過して除去するだけで、濾液としてカルボキシル化セルロースナノファイバーの水分散液が得られる。金属メッシュ等により濾物として除去する対象は陽イオン交換樹脂であり、カルボキシル化セルロースナノファイバーは金属メッシュ等では除去され難く、ほぼ全量が濾液中に含まれる。そのため、収率の低下が極めて少なくなる。濾液には繊維長の短いカルボキシル化セルロースナノファイバーが多量に含まれているが、濾液を洗浄や脱水する必要はないので、カルボキシル化セルロースナノファイバーが凝集しにくい。従って、このようにして得たカルボキシル化セルロースナノファイバーの分散液は粘度の上昇が抑制され得る。
【0044】
陽イオン交換樹脂としては対イオンがプロトンであればよく、強酸性イオン交換樹脂および弱酸性イオン交換樹脂のいずれも用いることができる。中でも、強酸性イオン交換樹脂を用いることが好ましい。強酸性イオン交換樹脂および弱酸性イオン交換樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂あるいはアクリル系樹脂にスルホン酸基あるいはカルボキシ基を導入したものが挙げられる。陽イオン交換樹脂の形状は、特に限定されず、細粒(粒状)、膜状、繊維等、種々の形状のものを用いることができる。処理効率および処理後の分離容易性の観点からは、粒状の陽イオン交換樹脂が好ましい。このような陽イオン交換樹脂としては、例えば、アンバージェット1020、同1024、同1060、同1220(以上、オルガノ社製)、アンバーライトIR−200C、同IR−120B(以上、東京有機化学社製)、レバチットSP 112、同S100(以上、バイエル社製)、GEL CK08P(三菱化学社製)、Dowex 50W−X8(ダウ・ケミカル社製)等の市販品が挙げられる。
【0045】
両者の接触は、例えば粒状の陽イオン交換樹脂とカルボキシル化セルロースナノファイバー塩水分散液を混合し、必要に応じ撹拌および振とうしながら、両者を一定時間接触させた後、陽イオン交換樹脂と水分散液とを分離することによって行うことができる。この際、解繊工程で得られたカルボキシル化セルロースナノファイバー塩の水分散液をそのまま用いてもよいし、水で希釈してから用いてもよい。
【0046】
水分散液の濃度や陽イオン交換樹脂との比率は、特に限定されず、当業者であれば、プロトン置換を効率的に行うとの観点から適宜設定し得る。一例として、水分散液の濃度は、0.05〜10重量%が好ましい。水分散液の濃度が0.05重量%未満であると、プロトン置換に要する時間がかかりすぎる場合がある。水分散液の濃度が10重量%超であると、十分なプロトン置換の効果が得られない場合がある。接触時間も特に限定されず、当業者であれば、プロトン置換を効率的に行うとの観点から適宜設定し得る。例えば、0.2〜4時間接触させて行うことができる。以上、カルボキシレート基を有するセルロースナノファイバーの酸性化処理を説明したが、国際公開第2014−185505号に記載のとおりリン酸塩基を有するセルロースナノファイバーの酸性化処理も同様に行うことができる。
【0047】
系内のpHが酸性の範囲になること、あるいはFT−IR等での分析によって酸型セルロースナノファイバーが生成したことを確認できる。
【0048】
陽イオン交換樹脂を用いる以外の方法で酸性化した場合は、処理後に洗浄処理を行うことが好ましい。これによりゲル状物から遊離酸を除くことができ、酸型セルロースナノファイバー分散液の保存安定性および分散性を向上させることができる。洗浄終了後に洗浄液に含まれる遊離酸量は、特に限定されないが、0.05重量%以下が好ましく、検出限界以下がより好ましい。
【0049】
洗浄処理の方法は特に限定されないが、例えば、酸性化後に得られるゲル状物を予備的に脱水し、洗浄溶媒に分散した後、粉砕し、再度洗浄溶媒に分散することが挙げられる。この一連のサイクルを2回以上繰り返してもよい。洗浄溶媒としては、セルロースナノファイバーが溶媒中で十分に分散し得るものであれば自由に用いることができ、例えば水、有機溶媒およびこれらから選ばれる2以上の溶媒の混合溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、メタノール等の親水性溶媒が好ましい。混合溶媒は、少なくとも水を含むことが好ましい。セルロース系原料が親水性であることから溶媒は水、親水性の有機溶媒、親水性の混合溶媒が好ましく、水がより好ましい。溶媒の添加量は通常、ゲル状物の固形分1〜2重量%程度となる量である。
【0050】
分散は、ミキサーなどのスラリー化装置を用いて行ってもよい。分散は、ゲル状物が短時間で沈降しない程度の粒子径となるまで微細化(スラリー化)するまで行うことが好ましい。
【0051】
粉砕は通常粉砕装置を用いて行う。粉砕装置としては例えば、ビーズミル等の、メディアを使用する粉砕装置、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式分散機などの、メディアを使用しない粉砕装置が挙げられる。中でも、メディアを使用しない粉砕装置が好ましく、高圧式分散機がより好ましく、湿式の高圧式分散機がさらに好ましく、湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーが更により好ましい。これにより酸型セルロースナノファイバーが十分に分散された分散液を効率良く得ることができる。粉砕装置は、好ましくは50MPa以上、より好ましくは100MPa以上、さらに好ましくは140MPa以上の条件下で分散する能力を有することが好ましい。粉砕装置での処理(パス)回数は1回でもよいし2回以上でもよい。
【0052】
洗浄処理においては必要に応じて脱水を行ってもよい。脱水は例えば、遠心分離法による脱水が挙げられる。脱水は、溶媒中の固形分が3〜20重量%程度になるまで行うことが好ましい。
【0053】
洗浄処理の温度は、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましい。上限は、50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましい。従って、10〜50℃が好ましく、20〜40℃がより好ましい。
【0054】
工程(a3)で得られる酸型セルロースナノファイバーのカルボキシル基量およびグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は、前述の酸化セルロースおよびカルボキシメチルセルロースのカルボキシル基量およびカルボキシメチル置換度と同じであることが好ましい。ただし、当該カルボキシル基量は、カルボキシル基をほぼ完全に酸型にして測定した値であり、酸性化処理して得た酸型セルロースナノファイバーにおける酸型/塩型の比率を表してはいない。また、リン酸エステル化セルロースナノファイバーのグルコース単位当たりのリン酸基置換度は、前述のリン酸エステル化セルロースのリン酸基置換度と同じであることが好ましい。
【0055】
工程(a3)で得られる酸型セルロースナノファイバーは、塩型セルロースナノファイバー(本工程を経ずに(a2)工程で得られるセルロースナノファイバー)に対する置換度の比率「酸型/(酸型+塩型)」にして、20%以上が好ましく、40%以上がより好ましい。これにより酸型セルロースナノファイバーの効果を得ることができる。
【0056】
酸型置換度の比率は、例えば次の方法により測定することができる。
1)試料1g(純分換算)を純水200mlとN/10のNaOH100mlが入っているフラスコ中に入れて溶解する。
2)過剰のN/10のNaOHをN/10のH
2SO
4でフェノールフタレインを指示薬として滴定し、その滴下量B(ml)を得る。
3)別の試料1g(純分換算)を磁性ルツボに入れて600℃で灰化し、灰化によって生成した酸化ナトリウムをN/10のH
2SO
4 100mlを添加して中和する。
4)過剰のH
2SO
4をN/10のNaOHでフェノールフタレインを指示薬として滴定し、その滴下量C(ml)を得る。
5)次式によってセルロースナノファイバーの塩型置換度および酸型置換度をそれぞれ求め、それらの比から酸型置換度の比率を求める。なお、このとき、f
1=N/10のH
2SO
4の力価、f
2=N/10のNaOHの力価である。
【0058】
(4)工程(b)
本工程では、ゴム成分と前記酸型セルロースナノファイバーを混合する。混合はホモミキサー、ホモジナイザー、プロペラ撹拌機等の公知の装置を用いて実施できる。混合する温度は限定されないが、室温(20〜30℃)が好ましい。混合時間も適宜調整してよい。以下、混合に供される酸型セルロースナノファイバーを単にセルロースナノファイバーともいう。
【0059】
本工程における混合比率は、後述するゴム組成物としたときの比率を達成できるように調整されるが、例えばゴム成分100重量部に対してセルロースナノファイバーを0.1〜100重量部とすることが好ましい。
【0060】
1)ゴム成分
ゴム成分とはゴムの原料であって架橋してゴムとなるものをいう。天然ゴム用のゴム成分および合成ゴム用のゴム成分が存在するが、本発明においてはいずれを用いてもよく、また両者を組合せてもよい。便宜上、天然ゴム用等のゴム成分を「天然ゴムポリマー」等という。
天然ゴム(NR)ポリマーとしては、化学修飾を施さない狭義の天然ゴムポリマー;塩素化天然ゴムポリマー、クロロスルホン化天然ゴムポリマー、エポキシ化天然ゴムポリマー等の化学修飾した天然ゴムポリマー;水素化天然ゴムポリマー;脱タンパク天然ゴムポリマーが挙げられる。合成ゴムポリマーとしては例えば、ブタジエンゴム(BR)ポリマー、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)ポリマー、イソプレンゴム(IR)ポリマー、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)ポリマー、クロロプレンゴム(CR)ポリマー、スチレン−イソプレン共重合体ゴムポリマー、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴムポリマー、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴムポリマー等のジエン系ゴムポリマー;ブチルゴム(IIR)ポリマー、エチレン−プロピレンゴム(EPM、EPDM)ポリマー、アクリルゴム(ACM)ポリマー、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)ポリマー、フッ素ゴム(FKM)ポリマー、シリコーンゴム(Q)ポリマー、ウレタンゴム(U)ポリマー、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)ポリマー等の非ジエン系ゴムポリマーが挙げられる。これらのゴムポリマーは一種のみ使用してもよいし、複数種を併用してもよい。これらの中でもNBRポリマー、NRポリマー、SBRポリマー、CRポリマー、BRポリマーが特に好ましい。
【0061】
ゴム成分はそのまま混合に供してもよいが、ゴム成分を分散媒に分散させた分散液(ラテックス)や溶媒に溶解した溶液にして混合に供してもよい。分散媒および溶媒(以下、まとめて「液状媒体」ともいう)としては例えば、水、有機溶媒が挙げられる。液状媒体の量は、ゴム成分100重量部に対して10〜1000重量部が好ましい。
【0062】
[混合に供されるセルロースナノファイバーの形態]
ゴム成分と混合されるセルロースナノファイバーの形態は特に限定されない。例えば、酸型セルロースナノファイバーの分散液、当該分散液の乾燥固形物、当該分散液の湿潤固形物を混合に供してよい。分散液におけるセルロースナノファイバーの濃度は、分散媒が水である場合は0.1〜5%(w/v)とすることができる。分散媒が水の他にアルコール等の有機溶媒を含む場合は、前記濃度を0.1〜20%(w/v)とすることができる。湿潤固形物とは、前記分散液と乾燥固形物との中間の態様の固形物である。前記分散液を通常の方法で脱水して得た湿潤固形物中の分散媒の量はセルロースナノファイバーに対して5〜15重量%であることが好ましいが、液状媒体の追加またはさらなる乾燥により分散媒の量は適宜調整できる。
【0063】
また、セルロースナノファイバーと水溶性高分子溶液との混合液、混合液の乾燥固形物、混合液の湿潤固形物などを使用できる。当該混合液および乾燥固形物における液状媒体の量は、前述の範囲であってよい。水溶性高分子としては例えば、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース)、キサンタンガム、キシログルカン、デキストリン、デキストラン、カラギーナン、ローカストビーンガム、アルギン酸、アルギン酸塩、プルラン、澱粉、かたくり粉、クズ粉、陽性澱粉、燐酸化澱粉、コーンスターチ、アラビアガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ゲランガム、ポリデキストロース、ペクチン、キチン、水溶性キチン、キトサン、カゼイン、アルブミン、大豆蛋白溶解物、ペプトン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミノ酸、ポリ乳酸、ポリリンゴ酸、ポリグリセリン、ラテックス、ロジン系サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド・ポリアミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミン、植物ガム、ポリエチレンオキサイド、親水性架橋ポリマー、ポリアクリル酸塩、でんぷんポリアクリル酸共重合体、タマリンドガム、ジェランガム、ペクチン、グァーガム、およびコロイダルシリカ、ならびにこれらの混合物が挙げられる。この中でも溶解性の点から、カルボキシメチルセルロースまたはその塩を用いることが好ましい。当該カルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチル化されたセルロースナノファイバーとは異なる。
【0064】
前記乾燥固形物および湿潤固形物は、セルロースナノファイバーの分散液またはセルロースナノファイバーと水溶性高分子の混合液を乾燥して調製できる。乾燥方法は特に限定されないが、例えば、スプレードライ、圧搾、風乾、熱風乾燥、または真空乾燥が挙げられる。乾燥装置としては例えば、連続式のトンネル乾燥装置、バンド乾燥装置、縦型乾燥装置、垂直ターボ乾燥装置、多重段円板乾燥装置、通気乾燥装置、回転乾燥装置、気流乾燥装置、スプレードライヤ乾燥装置、噴霧乾燥装置、円筒乾燥装置、ドラム乾燥装置、スクリューコンベア乾燥装置、加熱管付回転乾燥装置、振動輸送乾燥装置等、回分式の箱型乾燥装置、通気乾燥装置、真空箱型乾燥装置、または撹拌乾燥装置等が挙げられる。これらの乾燥装置は、単独で用いてもよいし、2つ以上を組合せて用いてもよい。ドラム乾燥装置は、均一に被乾燥物に熱エネルギーを直接供給することができるのでエネルギー効率が高く、かつ必要以上に熱を加えずに直ちに乾燥物を回収することができるので好ましい。
【0065】
2)他の配合剤
本工程(b)においては、ゴム成分とセルロースナノファイバーに加えて、他の配合剤を混合してもよい。他の配合剤としては、スルフェンアミド(N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等)、酸化亜鉛、ステアリン酸等の加硫促進剤、加硫促進助剤、カーボンブラック、シリカ等の補強剤、シランカップリング剤、オイル、硬化レジン、ワックス、老化防止剤、しゃく解剤、着色剤、pH調整剤などゴムの分野で使用可能なものが挙げられる。
【0066】
3)ろ過
セルロースナノファイバー中には解繊が不十分なことによる未解繊繊維等の異物が存在することがある。異物を含んだままゴム組成物とすると異物等を起点としてゴム組成物が破断しやすくなり、強度の低下等が生じることがある。このため、セルロースナノファイバー分散液をろ過して得た分散液またはこれから単離したセルロースナノファイバーを用いてもよい。ろ過に関しては、特願2016−136722に記載の内容を本発明において援用する。
【0067】
(5)工程(c)
本工程では、前記混合物を100〜300℃の条件下で5〜600分加熱する。この加熱処理によってセルロースナノファイバーとゴム成分の親和性が向上する。親和性が向上するメカニズムは限定されないが、酸型セルロースナノファイバーの表面には、カルボキシレート基に比べて疎水性であるカルボキシル基、カルボキシメチル基、またはリン酸基等が存在し、かつ当該セルロースナノファイバーが加熱による変性を受けてさらに疎水性を帯びることによると推察される。温度が100℃未満であるとこの効果が十分に発現せず、300℃を超えるとゴム成分等が劣化する。この観点から、加熱温度の下限は105℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましい。加熱温度の下限は200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましい。同様に加熱時間が5分未満であるとこの効果が十分に発現せず、600分を超えるとゴム成分等が劣化する。この観点から、加熱時間は5〜300分が好ましく、10〜120分がより好ましく、15〜70分がさらに好ましい。
【0068】
加熱処理は例えば通風オーブン等の公知の装置を用いて行える。加熱雰囲気は、酸素存在であってもよいし不存在下であってもよい。また、加熱雰囲気の圧力は常圧(1気圧)下であることが好ましい。
【0069】
(6)乾燥工程
前述のとおり、ゴム成分を分散媒に分散させた分散液または溶媒に溶解した溶液、あるいはセルロースナノファイバーを分散媒に分散させた分散液等を用いて工程(b)を実施できる。この場合、混合物中に液状媒体が存在するので、工程(c)の前にこれを除去することが好ましい。具体的には混合物を乾燥して液状媒体を除去することが好ましい。乾燥温度は50〜80℃が好ましい。乾燥時間は適宜調整してよい。乾燥後の混合物は絶乾状態でもよいが、ゴム成分とセルロースナノファイバーの合計量に対して10重量%以下の液状媒体を含んでいてもよい。また、上記以外の液状媒体を除去する方法としては、特に制限されず従来公知の方法で行うことができる。例えば、酸や塩を添加することにより混合物を凝固させ、脱水、洗浄して乾燥する方法が挙げられる。
【0070】
2.マスターバッチ
前記の方法で製造したマスターバッチは、酸型セルロースナノファイバーとゴム成分との親和性に優れる。これはセルロースナノファイバーが比較的疎水性を帯びていることに起因するが、この疎水性の度合いおよび親和性の度合いを定量的に文言で表現することは非現実的である。
【0071】
3.ゴム組成物の製造方法
架橋剤を添加して混練りすることで未架橋ゴム組成物(架橋性ゴム組成物)を製造できる。混練りとはマスターバッチ中に、架橋剤や他の配合剤を均一に分散させる工程である。混練りは公知のとおりに行ってよく、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、オープンロールなどを用いて実施できる。架橋剤としては硫黄や過酸化物が挙げられる。他の配合剤としては、スルフェンアミド(N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等)、酸化亜鉛、ステアリン酸等の加硫促進剤、加硫促進助剤、カーボンブラック、シリカ等の補強剤、シランカップリング剤、オイル、硬化レジン、ワックス、老化防止剤、しゃく解剤、着色剤、pH調整剤などゴムの分野で使用可能なものが挙げられる。他の配合剤をマスターバッチに添加することもできる。
【0072】
また、マスターバッチに、架橋剤とともにさらにゴム成分を加えて混練りを行い、セルロースナノファイバー濃度を希釈したゴム組成物とすることもできる。
【0073】
混練りの温度は、常温程度(15〜30℃程度)でよいが、ゴム成分が架橋反応しない程度に高温に加熱してもよい。例えば温度の上限は140℃以下、より好ましくは100℃である。温度の下限は15℃以上、好ましくは20℃以上である。従って混練りの温度は、15〜140℃程度が好ましく、20〜100℃程度がより好ましい。
【0074】
混合終了後に、必要に応じて成形を行ってもよい。成形装置としては、例えば、金型成形、射出成形、押出成形、中空成形、発泡成形等が挙げられ、最終製品の形状、用途、成形方法に応じて適宜選択すればよい。
【0075】
架橋については、架橋反応が進む条件であれば、温度に特に制限は無いが、一般的には、混練りして得た未架橋ゴム組成物を加熱して架橋(硫黄を含む場合は加硫ともいう)すると架橋ゴム組成物が得られる。加熱温度は、140℃以上が好ましく、200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましい。従って、加熱温度は140〜200℃程度が好ましく、140〜180℃程度がより好ましい。架橋には、例えば、型加硫、缶加硫、連続加硫等を行う加硫装置を使用できる。本発明のゴム組成物はセルロースナノファイバーを含まない組成物に比べて架橋反応が速やかに進行する傾向にある。この理由は限定されないが、セルロースナノファイバー中のカルボキシル基等の官能基が架橋反応を促進するためではないかと推察される。
【0076】
架橋後、最終製品とする前に、必要に応じ仕上げ処理を行ってもよい。仕上げ処理としては例えば、研磨、表面処理、リップ仕上げ、リップ裁断、塩素処理などが挙げられ、これらの処理のうち1つのみを行ってもよいし2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0077】
4.ゴム組成物
本発明のマスターバッチは、セルロースナノファイバーとゴム成分との密着性に優れるので、機械的特性に優れるゴム組成物を与える。ゴム組成物におけるセルロースナノファイバーの含有量は、ゴム成分100重量部に対して0.1〜100重量部であることが好ましい。引張強度の向上の観点からは、前記含有量はゴム成分100重量部に対して1重量部以上がより好ましく、2重量部以上がさらに好ましく、3重量部以上がよりさらに好ましい。当該量の上限は、50重量部以下がより好ましく、40重量部以下がさらに好ましく、30重量部以下がよりさらに好ましい。当該量により製造工程における加工性を保持することができる。
【0078】
本発明のゴム組成物の用途は、特に制限されず、例えば、自動車、電車、船舶、飛行機等の輸送機器等;パソコン、テレビ、電話、時計等の電化製品等;携帯電話等の移動通信機器等;携帯音楽再生機器、映像再生機器等のAV機器;印刷機器;複写機器;スポーツ用品;建築材;文具等の事務機器;容器、コンテナー等の梱包用品が挙げられる。これら以外であっても、ゴムや柔軟なプラスチックが用いられている部材への適用が可能であり、タイヤへの適用が好適である。タイヤとしては例えば、乗用車用、トラック用、バス用、重車両用などの空気入りタイヤが挙げられる。
【実施例】
【0079】
<実施例1>
[酸化セルロースナノファイバーの製造]
1)酸化および解繊処理
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)5.00g(絶乾)を、TEMPO(Sigma Aldrich社製)39mg(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウムが5.5mmol/gになるように添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムが消費され系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗することで酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.6mmol/gであった。反応混合物に水を加えて濃度を1.0重量%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で3回処理して、酸化セルロースナノファイバー水分散液を得た。平均繊維径は3nm、アスペクト比は250であった。
【0080】
2)酸性化処理
当該酸化セルロースナノファイバー水分散液500gに対し、pHが2.4になるまでHClを添加し、ゲル状の凝集物を得た。これを脱水し、十分に水洗した後に、再度水を加えてミキサーで処理し、固形分濃度1重量%のスラリーを得た。このスラリーを、超高圧ホモジナイザー(処理圧140MPa)で5回処理することにより、洗浄後の酸型セルロースナノファイバー水分散液(1重量%)を得た。
【0081】
[マスターバッチの製造]
1)混合および乾燥工程
前述のとおり得た酸型セルロースナノファイバー水分散液636gと、ゴム成分としてアクリロニトリル−ブタジエンゴムポリマーラテックス(商品名:Nipol511A、日本ゼオン株式会社製、固形分濃度46%)76gを混合してゴム成分とセルロースナノファイバーとの重量比が100:20となるようにし、TKホモミキサー(8000rpm)で60分間撹拌した。この水性懸濁液を、70℃の加熱オーブン中で一晩乾燥して乾燥物を得た。
【0082】
2)加熱工程
この乾燥物を、オーブン中で、120℃にて30分加熱して、マスターバッチを製造した。
【0083】
3)加硫および成形工程
前記マスターバッチに、硫黄1.2g(ゴム成分に対し3.5重量%)、加硫促進剤(N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)0.25g(ゴム成分に対し0.7重量%)、酸化亜鉛2.1g(ゴム成分に対し6重量%)、ステアリン酸0.18g(ゴム成分に対し0.5重量%)を加え、オープンロール(関西ロール株式会社製)を用い、30℃で10分間混練して、未架橋ゴム組成物のシートを得た。
【0084】
このシートを、金型にはさみ、160℃で15分間プレス架橋することにより、厚さ約2mmの架橋ゴム組成物のシートを得た。これを所定の形状の試験片に裁断し、JIS K6251「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に従い、補強性の一つである引張特性として、100%ひずみ時および300%ひずみ時における応力をそれぞれ測定した。各々の数値が大きい程、架橋ゴム組成物(加硫ゴム組成物)が良好に補強されており、ゴムの機械強度に優れることを示す。
【0085】
<実施例2>
前記加熱工程における加熱温度を150℃とした以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を製造し、評価した。
【0086】
<実施例3、4>
前記酸性化処理を以下のように変更した以外は実施例1および2と同様にしてゴム組成物を製造し、評価した。
酸性化処理:酸化セルロースナノファイバー水分散液500gに、陽イオン交換樹脂(オルガノ社製、「アンバージェット1024」)を添加し、20℃で0.3時間撹拌して接触させた。その後、金属メッシュ(目開き100メッシュ)で陽イオン交換樹脂と水分散液を分離して、カルボキシル化セルロースナノファイバー分散液(1重量%)を得た。
【0087】
<比較例1>
前記加熱工程を実施しなかった以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を製造し、評価した。
【0088】
<比較例2>
前記酸性化処理をしなかった以外は実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー水分散液を製造した。当該セルロースナノファイバーは多くのカルボキシレート基を有するので、便宜上「塩型セルロースナノファイバー」ともいう。当該塩型セルロースナノファイバー水分散液を用いた以外は、比較例1と同様にしてゴム組成物を製造し、評価した。
【0089】
<比較例3>
比較例2と同様にして塩型セルロースナノファイバー水分散液を製造した。当該水分散液を用いた以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を製造し、評価した。
【0090】
<比較例4>
比較例2と同様にして塩型セルロースナノファイバー水分散液を製造した。当該水分散液を用いた以外は、実施例2と同様にしてゴム組成物を製造し、評価した。
【0091】
<比較例5>
酸性化処理条件を実施例3に示す条件に変更した以外は、比較例1と同様にしてゴム組成物を製造し、評価した。
これらの結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
本発明のマスターバッチから製造されたゴム組成物は優れた機械的特性を有する。これは、酸性化処理かつ加熱処理によってセルロースナノファイバーの表面が疎水化してゴムとの親和性が向上したためと推察される。