特許第6951857号(P6951857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6951857
(24)【登録日】2021年9月29日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】ズームレンズ及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 15/20 20060101AFI20211011BHJP
【FI】
   G02B15/20
【請求項の数】21
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2017-68694(P2017-68694)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-169564(P2018-169564A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100124327
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(74)【代理人】
【識別番号】100169247
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 佳世
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 嘉人
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 和也
(72)【発明者】
【氏名】日下 航
【審査官】 森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−102462(JP,A)
【文献】 特開平7−77656(JP,A)
【文献】 特開2012−42864(JP,A)
【文献】 特開2012−47814(JP,A)
【文献】 特開2012−242617(JP,A)
【文献】 特開2014−157168(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/026088(WO,A1)
【文献】 特開2013−25147(JP,A)
【文献】 特開昭61−286813(JP,A)
【文献】 特開2009−265652(JP,A)
【文献】 特開2013−117667(JP,A)
【文献】 特開2009−236973(JP,A)
【文献】 特開2012−73308(JP,A)
【文献】 特開2014−186306(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/047757(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0268832(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102156343(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 − 17/08
G02B 21/02 − 21/04
G02B 25/00 − 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群とを備え、各レンズ群間の空気間隔を変化させることで変倍を行うズームレンズであって、
前記第3レンズ群以降に、レンズ1枚で構成されるフォーカス群を備え、
前記フォーカス群は、負の屈折力を有する1枚のレンズで構成され、
無限遠物体から近接物体への合焦時に、当該フォーカス群のみを光軸方向に沿って移動させるものとし、
以下の条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
(1) −1.60 < β3rw < −0.35
(2) 0.75 < f1/√(fw×ft) < 1.25
(6) 0.39 < f1/ft < 0.70
(12−1) 1.80 < Bfw/(fw×tanωw) < 3.00
但し、
β3rw:前記第3レンズ群の最も物体側のレンズから、当該ズームレンズにおいて最も像側のレンズまでの広角端における無限遠合焦時の合成横倍率
f1:前記第1レンズ群の焦点距離
fw:広角端における当該ズームレンズ全系の焦点距離
ft:望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離
Bfw:当該ズームレンズの広角端における最も像側の面から像面までの空気換算長
ωw :当該ズームレンズの広角端における最軸外主光線の半画角
【請求項2】
物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群とを備え、各レンズ群間の空気間隔を変化させることで変倍を行うズームレンズであって、
前記第3レンズ群以降に、レンズ1枚で構成されるフォーカス群を備え、
前記フォーカス群は、物体側面が凸形状であり、
無限遠物体から近接物体への合焦時に、当該フォーカス群のみを光軸方向に沿って移動させるものとし、
広角端から望遠端への変倍時に、前記第1レンズ群が物体側に移動し、
以下の条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
(1−1) −1.45 < β3rw < −0.35
(2) 0.75 < f1/√(fw×ft) < 1.25
(6−1) 0.481 ≦ f1/ft < 0.70
(9−1) 1.60 < f1/fw < 3.20
(13) −0.30 < fF/ft < −0.05
但し、
β3rw:前記第3レンズ群の最も物体側のレンズから、当該ズームレンズにおいて最も像側のレンズまでの広角端における無限遠合焦時の合成横倍率
f1:前記第1レンズ群の焦点距離
fw:広角端における当該ズームレンズ全系の焦点距離
ft:望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離
fF: 前記フォーカス群の焦点距離
【請求項3】
物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群とを備え、各レンズ群間の空気間隔を変化させることで変倍を行うズームレンズであって、
前記第3レンズ群以降に、レンズ1枚で構成されるフォーカス群を備え、
無限遠物体から近接物体への合焦時に、当該フォーカス群のみを光軸方向に沿って移動させるものとし、
以下の条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
(1) −1.60 < β3rw < −0.35
(2) 0.75 < f1/√(fw×ft) < 1.25
(5−1) 0.931≦(Crff+Crfr)/(Crff−Crfr)≦2.074
(12) 1.10 < Bfw/(fw×tanωw) < 3.50
但し、
β3rw:前記第3レンズ群の最も物体側のレンズから、当該ズームレンズにおいて最も像側のレンズまでの広角端における無限遠合焦時の合成横倍率
f1:前記第1レンズ群の焦点距離
fw:広角端における当該ズームレンズ全系の焦点距離
ft:望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離
Crff:前記フォーカス群における最も物体側のレンズ面の曲率半径
Crfr:前記フォーカス群における最も像側のレンズ面の曲率半径
Bfw:当該ズームレンズの広角端における最も像側の面から像面までの空気換算長
ωw :当該ズームレンズの広角端における最軸外主光線の半画角
【請求項4】
以下の条件式を満足する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のズームレンズ。
(3) 0.02 < Crfr/ft < 0.11
但し、
Crfr:前記フォーカス群における最も像側のレンズ面の曲率半径
【請求項5】
前記フォーカス群は、負の屈折力を有する1枚のレンズで構成され、
以下の条件式を満足する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のズームレンズ。
(4) 55.46 ≦ νdLfn
但し、
νdLfn:前記フォーカス群を構成する負の屈折力を有するレンズのd線におけるアッベ数
【請求項6】
前記フォーカス群は、正の屈折力を有するレンズ群又は部分レンズ群の像側に空気間隔を介して配置される請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項7】
以下の条件式を満足する請求項1又は請求項2に記載のズームレンズ。
(5) −0.25<(Crff+Crfr)/(Crff−Crfr)<5.00
但し、
Crff:前記フォーカス群における最も物体側のレンズ面の曲率半径
Crfr:前記フォーカス群における最も像側のレンズ面の曲率半径
【請求項8】
以下の条件式を満足する請求項3に記載のズームレンズ。
(6) 0.39 < f1/ft < 0.70
【請求項9】
以下の条件式を満足する請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のズームレンズ。
(7) −15.0<{1−(βft×βft)}×βftr×βftr<−5.5
但し、
βft :前記フォーカス群の望遠端における無限遠合焦時の横倍率
βftr:前記フォーカス群よりも像側に配置される全レンズ群の望遠端における無限遠合焦時の合成横倍率
【請求項10】
広角端から望遠端への変倍時に、前記第1レンズ群が物体側に移動する請求項1又は請求項3に記載のズームレンズ。
【請求項11】
以下の条件式を満足する請求項10に記載のズームレンズ。
(8) 0.10 < |X1|/ft < 0.26
但し、
X1:広角端から望遠端への変倍時に、前記第1レンズ群が物体側に移動する量
【請求項12】
当該ズームレンズにおいて最も像側に配置されるレンズ群を最終レンズ群としたとき、
前記フォーカス群は、前記最終レンズ群以外のレンズ群である請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項13】
以下の条件式を満足する請求項1又は請求項3に記載のズームレンズ。
(9) 1.40 < f1/fw < 3.20
【請求項14】
前記第1レンズ群は、正の屈折力を有するレンズを少なくとも2枚含み、
以下の条件式を満足する請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のズームレンズ。
(10) 64.0 < νd1pave <83.0
但し、
νd1pave:前記第1レンズ群に含まれる正の屈折力を有する全レンズのd線におけるアッベ数の平均値
【請求項15】
以下の条件式を満足する請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のズームレンズ。
(11) 0.86 < |β2t| < 20.00
但し、
β2t:前記第2レンズ群の望遠端における無限遠合焦時の横倍率
【請求項16】
以下の条件式を満足する請求項2に記載のズームレンズ。
(12) 1.10 < Bfw/(fw×tanωw) < 3.50
但し、
Bfw:当該ズームレンズの広角端における最も像側の面から像面までの空気換算長
ωw :当該ズームレンズの広角端における最軸外主光線の半画角
【請求項17】
前記フォーカス群は、変倍時に他のレンズ群とは独立して移動する一のレンズ群を構成し、当該フォーカス群の物体側に、空気間隔を介して正の屈折力を有するレンズ群を備える請求項1から請求項16のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項18】
以下の条件式を満足する請求項1又は請求項3から請求項15のいずれか一項に記載のズームレンズ。
(13) −0.30 < fF/ft < −0.05
但し、
fF: 前記フォーカス群の焦点距離
【請求項19】
負の屈折力を有し、且つ、以下の条件式を満足するレンズをレンズNとしたとき、
前記第3レンズ群以降に、当該レンズNが少なくとも1枚含まれる請求項1から請求項18のいずれか一項に記載のズームレンズ。
(14) 15.0 < νdN < 42.0
(15) 1.85 < NdN < 2.15
但し、
νdN:前記レンズNのd線におけるアッベ数
NdN:前記レンズNのd線における屈折率
【請求項20】
前記第3レンズ群に、前記レンズNが含まれる請求項19に記載のズームレンズ。
【請求項21】
請求項1から請求項20のいずれか一項に記載のズームレンズと、当該ズームレンズの像側に、当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズ、該ズームレンズを有する撮像装置に関する。本発明は、詳しくは、例えば、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等のデジタル入出力機器の撮影光学系に好適な、望遠で小型なズームレンズ、該ズームレンズを有する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルスチルカメラの等の固体撮像素子を用いた撮影装置が普及している。それに伴い、撮像用レンズの高性能化、小型化が進み、小型の撮像装置システムが急速に普及してきている。これら撮像用レンズは、高性能化と共に、小型化への要望も強い。特に、望遠系ズームレンズのような望遠端で焦点距離が長い撮像用ズームレンズにはそれらへの要望が強い。
【0003】
そのような要望に対して、特許文献1に記載のズームレンズは、小型でありながら、ズーム比が4倍程度であり、35mm版相当で望遠端における焦点距離が600mm程度の望遠系ズームレンズを実現している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−126850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載のズームレンズは、フォーカス群が複数枚のレンズにより構成されているため、合焦時の収差変動を抑制し、合焦域全域において高い光学性能を維持している。しかしながら、フォーカス群が重く、フォーカス群を駆動するためのフォーカス駆動機構も大型化するため、レンズユニット全体の軽量化及び小型化の点で不十分である。
【0006】
本件発明の課題は、高い光学性能を維持しつつ、フォーカス群の軽量化を図り、且つ、交換レンズに好適なフランジバックを確保することができる望遠系のズームレンズ及び撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本件発明に係るズームレンズは、以下の3通りのズームレンズを採用した。
【0008】
本件発明に係るズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群とを備え、各レンズ群間の空気間隔を変化させることで変倍を行うズームレンズであって、
前記第3レンズ群以降に、レンズ1枚で構成されるフォーカス群を備え、
前記フォーカス群は、負の屈折力を有する1枚のレンズで構成され、
無限遠物体から近接物体への合焦時に、当該フォーカス群のみを光軸方向に沿って移動させるものとし、以下の条件式を満足することを特徴とする。
【0009】
(1) −1.60 < β3rw < −0.35
(2) 0.75 < f1/√(fw×ft) < 1.25
(6) 0.39 < f1/ft < 0.70
(12−1) 1.80 < Bfw/(fw×tanωw) < 3.00
但し、
β3rw:前記第3レンズ群の最も物体側のレンズから、当該ズームレンズにおいて最も像側のレンズまでの広角端における無限遠合焦時の合成横倍率
f1:前記第1レンズ群の焦点距離
fw:広角端における当該ズームレンズ全系の焦点距離
ft:望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離
Bfw:当該ズームレンズの広角端における最も像側の面から像面までの空気換算長
ωw :当該ズームレンズの広角端における最軸外主光線の半画角
【0010】
本件発明に係るズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群とを備え、各レンズ群間の空気間隔を変化させることで変倍を行うズームレンズであって、
前記第3レンズ群以降に、レンズ1枚で構成されるフォーカス群を備え、
前記フォーカス群は、物体側面が凸形状であり、
無限遠物体から近接物体への合焦時に、当該フォーカス群のみを光軸方向に沿って移動させるものとし、以下の条件式を満足する。
【0011】
(1−1) −1.45 < β3rw < −0.35
(2) 0.75 < f1/√(fw×ft) < 1.25
(6−1) 0.481 ≦ f1/ft < 0.70
(9−1) 1.60 < f1/fw < 3.20
(13) −0.30 < fF/ft < −0.05
但し、
β3rw:前記第3レンズ群の最も物体側のレンズから、当該ズームレンズにおいて最も像側のレンズまでの広角端における無限遠合焦時の合成横倍率
f1:前記第1レンズ群の焦点距離
fw:広角端における当該ズームレンズ全系の焦点距離
ft:望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離
fF: 前記フォーカス群の焦点距離
【0012】
本件発明に係るズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群とを備え、各レンズ群間の空気間隔を変化させることで変倍を行うズームレンズであって、
前記第3レンズ群以降に、レンズ1枚で構成されるフォーカス群を備え、
無限遠物体から近接物体への合焦時に、当該フォーカス群のみを光軸方向に沿って移動させるものとし、以下の条件式を満足することを特徴とする。
【0013】
(1) −1.60 < β3rw < −0.35
(2) 0.75 < f1/√(fw×ft) < 1.25
(5−1) 0.931≦(Crff+Crfr)/(Crff−Crfr)≦2.074
但し、
β3rw:前記第3レンズ群の最も物体側のレンズから、当該ズームレンズにおいて最も像側のレンズまでの広角端における無限遠合焦時の合成横倍率
f1:前記第1レンズ群の焦点距離
fw:広角端における当該ズームレンズ全系の焦点距離
ft:望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離
Crff:前記フォーカス群における最も物体側のレンズ面の曲率半径
Crfr:前記フォーカス群における最も像側のレンズ面の曲率半径
【0014】
また、上記課題を解決するために、本件発明に係る撮像装置は、上記本件発明に係るズームレンズと、当該ズームレンズの像側に、当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本件発明によれば、高い光学性能を維持しつつ、フォーカス群の軽量化を図り、且つ、交換レンズに好適なフランジバックを確保することができる望遠系のズームレンズ及び撮像装置を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本件発明の実施例1のズームレンズの広角端における無限遠合焦時のレンズ構成例を示す断面図である。
図2】実施例1のズームレンズの広角端における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
図3】実施例1のズームレンズの中間焦点距離位置における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
図4】実施例1のズームレンズの望遠端における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
図5】本件発明の実施例2のズームレンズの広角端における無限遠合焦時のレンズ構成例を示す断面図である。
図6】実施例2のズームレンズの広角端における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
図7】実施例2のズームレンズの中間焦点距離位置における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
図8】実施例2のズームレンズの望遠端における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
図9】本件発明の実施例3のズームレンズの広角端における無限遠合焦時のレンズ構成例を示す断面図である。
図10】実施例3のズームレンズの広角端における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
図11】実施例3のズームレンズの中間焦点距離位置における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
図12】実施例3のズームレンズの望遠端における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置の実施の形態を説明する。但し、以下に説明する当該ズームレンズ及び撮像装置は本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置の一態様であって、本件発明に係るズームレンズは以下の態様に限定されるものではない。
【0018】
1.ズームレンズ
1−1.光学構成
本実施の形態のズームレンズ(変倍光学系)は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群とを備え、各レンズ群間の空気間隔を変化させることで変倍を行うズームレンズであって、第3レンズ群以降にレンズ1枚で構成されるフォーカス群を備え、無限遠物体から近接物体への合焦時に、当該フォーカス群のみを光軸方向に沿って移動させるものとし、後述する条件式(1)及び条件式(2)を満足することを特徴とする。
【0019】
本実施の形態のズームレンズでは、上記構成を採用すると共に、後述する条件式(1)及び条件式(2)を満足させることにより、高い光学性能を維持しつつ、フォーカス群の軽量化を図り、且つ、交換レンズに好適なフランジバックを確保することができる望遠系のズームレンズを実現している。特に、当該ズームレンズでは、テレフォト型のパワー配置を採用し、第1レンズ群により入射光束を収束し、第2レンズ群によりそれを発散させることで、望遠化を図りつつ、焦点距離に比して光学全長の短い小型のズームレンズを実現することが可能になる。
【0020】
また、当該ズームレンズでは、第2レンズ群に大きな負の屈折力を配置しても、その前後に配置される正の屈折力を有する第1レンズ群及び第3レンズ群により、第2レンズ群の横倍率を大きくすることにより、テレフォト傾向の強い望遠系のズームレンズとし、当該ズームレンズの望遠化が可能になる。
【0021】
ここで、本実施の形態のズームレンズでは、上述したとおり、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群とを備え、各レンズ群間の空気間隔を変化させることで変倍を行うズームレンズであって、第3レンズ群以降に上記フォーカス群を備える限り、当該ズームレンズが備えるレンズ群の数や、各レンズ群の具体的な構成は特に限定されるものではない。以下、フォーカス群のより好ましい態様及び当該ズームレンズのより好ましいレンズ群構成について説明する。
【0022】
(1)フォーカス群
フォーカス群は1枚のレンズで構成される。ここで、1枚のレンズとは、一般に単レンズ(球面レンズ/非球面レンズ)と称されるレンズ1枚のことをいう。また、非球面レンズは、表面が精密研磨加工されたものの他、モールドレンズ(硝材製、プラスチック製)、或いは、表面に非球面フィルムが貼設された複合非球面レンズも含む。すなわち、当該ズームレンズにおいて、フォーカス群を構成するレンズの枚数は1枚であり、複数枚のレンズを空気間隔なく接合した接合レンズからなるフォーカス群、或いは、複数枚のレンズを空気間隔を介して配置してなるフォーカス群等、複数枚のレンズで構成されたフォーカス群は本件発明にいうフォーカス群とは相違する。
【0023】
フォーカス群を1枚のレンズで構成することにより、フォーカス群を複数枚のレンズで構成した場合と比較すると、当該フォーカス群の軽量化と小型化とを図ることができる。そのため、フォーカス群を駆動するための駆動機構(メカ部材)についても小型化を図ることができ、当該ズームレンズの鏡筒を含むレンズユニット全体の軽量化及び小型化を実現することができる。また、フォーカス群の軽量化を図ることができるため、迅速なオートフォーカスを実現することも可能になる。
【0024】
また、フォーカス群を1枚のレンズで構成することにより、フォーカス群を複数枚のレンズを空気間隔を介して配置した構成とする場合と比較すると、偏芯誤差や、レンズ間の空気間隔の誤差等種々の製造誤差を小さくすることができる。そのため、製造誤差に起因する光学性能の低下を抑制することができ、光学性能の高いズームレンズを製造することができる。
【0025】
フォーカス群の屈折力は正又は負のいずれであってもよいが、当該ズームレンズの小型化を図るという観点から、負の屈折力を有することが好ましい。
【0026】
なお、フォーカス群は、変倍時に他のレンズ群とは独立して移動する一つのレンズ群として構成されていてもよいし、当該ズームレンズを構成するいずれかのレンズ群の一部として構成されていてもよい。当該ズームレンズにおいて、一つのレンズ群は、互いに隣接するレンズからなり、一のレンズ群に含まれるレンズは、変倍時の光軸方向における移動の向き及び移動量が全て同じであるものとする。また、互いに隣接するレンズ群は、変倍時における光軸方向における移動の向き及び/又は移動量がそれぞれ異なるものとする。但し、一つのレンズ群が1枚のレンズのみから構成される場合もある。この場合の1枚のレンズとは、上記のとおり、単レンズ又は非球面レンズ(ガラスモールドレンズ又は複合非球面レンズ)をいう。
【0027】
そして、フォーカス群が当該ズームレンズを構成するいずれかのレンズ群の一部として構成されるとは、次のことをいう。例えば、フォーカス群が第3レンズ群の一部として構成される場合、変倍時フォーカス群は第3レンズ群と一体に光軸方向に沿って移動又は固定される。そして、無限遠物体から近接物体への合焦時に、第3レンズ群を構成するレンズのうち、フォーカス群を構成するレンズのみが光軸方向に沿って移動する。また、フォーカス群が第3レンズ群の一部として構成される場合、第3レンズ群内において、フォーカス群の物体側に配置された全レンズからなるレンズ群、或いは、第3レンズ群内において、フォーカス群の像側に配置された全レンズからなるレンズ群を部分レンズ群と称する。フォーカス群が、第3レンズ群以外のレンズ群の一部として構成される場合についても同様である。
【0028】
当該ズームレンズにおいて、フォーカス群は第3レンズ群以降に備えられればよく、その配置は特に限定されるものではない。上述したとおり、フォーカス群は、第3レンズ群の一部として構成されていてもよく、第4レンズ群以降のレンズ群の一部として、あるいはその全部として構成されていてもよい。しかしながら、当該ズームレンズ及びレンズユニット全体の小型化を図る上で、フォーカス群は第3レンズ群よりも像側に設けられることが好ましい。すなわち、第4レンズ群以降にフォーカス群が配置されることが好ましい。正の屈折力を有する第3レンズ群の像側にフォーカス群を設けることにより、フォーカス群に入射する光線束を第3レンズ群により収束させることができる。そのため、フォーカス群の径方向の小型化と軽量化とを図ることができる。従って、上述した理由と同様の理由から、当該ズームレンズ及びレンズユニット全体の小型化及び軽量化を図ることができ、迅速なオートフォーカスの実現が可能になる。
【0029】
同様の趣旨から、当該ズームレンズにおいて、フォーカス群は、正の屈折力を有するレンズ群又は部分レンズ群の像側に空気間隔を介して配置されることが好ましい。すなわち、フォーカス群が第3レンズ群以降のレンズ群の一部として構成される場合、フォーカス群の物体側には正の屈折力を有するレンズ群又は部分レンズ群が空気間隔を介して配置されていることが好ましい。また、フォーカス群が第3レンズ群以降の一のレンズ群として構成される場合、フォーカス群の物体側には空気間隔を介して正の屈折力を有するレンズ群が配置されることが好ましい。これらの場合、フォーカス群の直前に配置されるレンズ群又は部分レンズ群により、フォーカス群に入射する光線束をさらに収束させることができるため、フォーカス群の一層の軽量化及び小型化を図ることができる。また、フォーカス群に入射する光線束が収束されているため、変倍時や合焦時にフォーカス群が移動したときも、その間におけるフォーカス群に入射する光線の角度変化を小さくすることができる。つまり、フォーカス群の移動に伴う収差変動を抑制することができ、フォーカス群において発生する収差量も小さくなる。従って、被写体までの距離が短くても、すなわち、近接合焦時においても焦点距離によらず良好な収差補正状態を維持することができる。
【0030】
また、当該ズームレンズの高性能化を実現しつつ、当該ズームレンズ及びレンズユニット全体の小型化を図る上で、フォーカス群の像側に少なくとも一以上の他のレンズ群を備えることが好ましい。ズームレンズにおいて、最も像側に配置されるレンズ群(以下、「最終レンズ群」と称する。)を構成するレンズの径は、一般に、最終レンズ群よりも物体側に配置されるレンズ群を構成するレンズの径よりも大きくなる。フォーカス群を最終レンズ群以外のレンズ群とし、当該フォーカス群の像側に少なくとも一以上の他のレンズ群を配置する構成とすることにより、フォーカス群の一層の軽量化及び小型化を図ることができる。なお、最終レンズ群を正の屈折力を有するレンズ群とすれば、Fナンバーの小さな明るい光学系を実現する上で好ましい。また、最終レンズ群を負の屈折力を有するレンズ群とすれば、光学全長の短い光学系を実現する上で好ましい。
【0031】
(2)レンズ群構成
ここで、本実施の形態のズームレンズは、上記第1レンズ群から第3レンズ群を備え、第3レンズ群以降にフォーカス群が設けられればよく、当該ズームレンズを構成するレンズ群の数やパワー配置、フォーカス群の位置、各レンズ群の具体的なレンズ構成は特に限定されるものではない。例えば、当該ズームレンズを正負正の3群構成とし、第3レンズ群の一部をフォーカス群としてもよい。しかしながら、上述したとおり、フォーカス群は第4レンズ群以降に設けることが好ましいことから、当該ズームレンズは4群構成以上であることが好ましい。また、当該フォーカス群は最終レンズ群以外のレンズ群であることが好ましいため、当該ズームレンズは5群構成以上であることが好ましい。
【0032】
さらに、当該ズームレンズは6群構成以上であると、第4レンズ群を正の屈折力を有するレンズ群とし、第5レンズ群をフォーカス群とすることにより、フォーカス群のより一層の軽量化と小型化とを図ることができて好ましい。
【0033】
(3)絞り
当該ズームレンズにおいて、絞りの配置は特に限定されるものではない。絞りが当該ズームレンズ内のどの位置に配置された場合であっても、当該ズームレンズは本件発明に係る効果を得ることができる。また、当該絞りは像面に対して固定であってもよいし、移動可能に構成されてもよい。
【0034】
(4)防振レンズ群
当該ズームレンズは、いわゆる防振レンズ群を備えてもよい。ここで、防振レンズ群とは、光軸に対して略垂直に移動可能に構成された1枚又は複数枚のレンズからなるレンズ群をいう。防振レンズ群を光軸に対して略垂直方向に移動させることで、光軸に対して略垂直方向に移動させることができる。これにより、手振れ等の撮像時の振動に伴う像ブレを補正することができる。防振レンズ群は、当該ズームレンズを構成するレンズ群のうち、いずれか一のレンズ群とすることができる。また、当該防振レンズ群は、当該ズームレンを構成するいずれか一のレンズ群の一部であってもよい。
【0035】
1−2.動作
次に、当該ズームレンズの変倍時及び合焦時の動作について説明する。
【0036】
(1)変倍時の動作
当該ズームレンズは、各レンズ群間の空気間隔を変化させることで変倍を行う。当該ズームレンズを構成する全てのレンズ群を変倍時に光軸方向に沿って移動させて、各レンズ群間の空気間隔を変化させてもよいし、一部のレンズ群を固定群とし、残りの可動群を変倍時に光軸方向に移動させることにより、各レンズ群間の空気間隔を変化させてもよい。
【0037】
例えば、広角端から望遠端への変倍時に、第1レンズ群と第2レンズ群との間の空気間隔は広がり、第2レンズ群と第3レンズ群との間の空気間隔は狭まるように、各レンズ群を移動又は固定させることができる。
【0038】
また、当該ズームレンズにおいて、広角端から望遠端への変倍時に、第1レンズ群を物体側に移動させるようにすれば、広角端における当該ズームレンズの光学全長を短くすることができる。この場合、鏡筒を例えば入れ子状等の伸縮自在に構成し、広角端から望遠端への変倍時に、第1レンズ群の移動に伴い鏡筒長を伸長させ、望遠端から広角端への変倍時に鏡筒長を短縮するように構成すれば、広角端状態における鏡筒長を短くすることができ、レンズユニットの小型化を図ることができる。
【0039】
さらに、変倍時において、全てのレンズ群を可動群とすれば、焦点距離に応じて各レンズ群の位置を最適に移動させることにより、変倍域全域において収差補正を良好に行うことができる。また、最終レンズ群を固定群としたり、一部のレンズ群を固定群とすることにより、可動群を変倍時に移動させるための駆動機構の軽量化と小型化とを図ることができ、当該ズームレンズのレンズユニット全体の軽量化及び小型化を図ることができる。
【0040】
(2)合焦時の動作
当該ズームレンズは、フォーカス群を光軸方向に沿って移動させることにより、無限遠物体から近接物体への合焦を行う。この際、当該フォーカス群のみを移動させ、他のレンズ群(部分レンズ群を含む)は、光軸方向に固定させるものとする。フォーカス群を1枚のレンズで構成し、当該フォーカス群のみを移動させることにより、上述のとおり、駆動機構の小型化等を図ることができ、且つ、迅速なオートフォーカス等を実現することが可能になる。
【0041】
1−3.条件式
次に、当該ズームレンズが満たすべき条件、又は、満たすことが好ましい条件について説明する。当該ズームレンズは、上記構成を採用すると共に、以下の条件式(1)及び条件式(2)を満足することを特徴とする。
【0042】
条件式(1):
−1.60 < β3rw < −0.35
条件式(2):
0.75 < f1/√(fw×ft) < 1.25
【0043】
但し、
β3rw:前記第3レンズ群の最も物体側のレンズから、当該ズームレンズにおいて最も像側のレンズまでの広角端における無限遠合焦時の合成横倍率
f1:前記第1レンズ群の焦点距離
fw:広角端における当該ズームレンズ全系の焦点距離
ft:望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離
【0044】
1−3−1.条件式(1)
条件式(1)は、第3レンズ群の最も物体側のレンズから、当該ズームレンズにおいて最も像側のレンズまでの広角端における無限遠合焦時の合成横倍率を規定する式である。すなわち、第3レンズ群の最も物体側のレンズ以降に配置された全レンズによる広角端における無限遠合焦時の合成横倍率を規定した式である。条件式(1)を満足させることにより、一眼レフレックスカメラやミラーレス一眼カメラ等の交換レンズシステムを適用した撮像装置に好適なフランジバックを確保することができる。
【0045】
これに対して、条件式(1)の数値が上限値以上になると、広角端におけるフランジバックが短くなり、交換レンズシステムに適したフランジバックを確保することが困難となり好ましくない。一方、条件式(1)の数値が下限値以下になると、広角端におけるフランジバックが交換レンズシステムに要求されるフランジバックを超えて大きくなる。すなわち、広角端における当該ズームレンズの光学全長が長くなる。そのため、当該ズームレンズの小型化を図ることが困難になり好ましくない。
【0046】
上記効果を得る上で、条件式(1)の下限値は、−1.50であることが好ましく、−1.48であることがより好ましく、−1.45であることがさらに好ましい(条件式(1−1) −1.45 < β3rw < −0.35)。また、条件式(1)の上限値は、−0.38であることが好ましく、−0.40であることがより好ましく、−0.45であることがさらに好ましく、−0.48であることが一層好ましい。
【0047】
1−3−2.条件式(2)
条件式(2)において、「√(fw×ft)」は、当該ズームレンズの中間焦点距離位置における当該ズームレンズ全系の焦点距離(以下、「中間焦点距離」と称する。)を示す。条件式(2)は第1レンズ群の焦点距離と、当該ズームレンズ全系の中間焦点距離との比を規定する式である。条件式(2)を満足させることにより、焦点距離に比して光学全長を短くしつつ、望遠端における軸上色収差の劣化を抑制することができる。そのため、変倍域全域においてより高性能で小型のズームレンズを実現することができる。
【0048】
これに対して、条件式(2)の数値が上限値以上になると、当該ズームレンズの変倍域に対して、第1レンズ群の焦点距離が長くなるため、光学全長が長くなり、当該ズームレンズの小型化を図ることが困難となり、好ましくない。一方、条件式(2)の数値が下限値以下になると、当該ズームレンズの変倍域に対して、第1レンズ群の焦点距離が短くなるため、望遠端における軸上色収差の補正が困難になる。このため、変倍域全域において高性能なズームレンズを実現するためには、収差補正に要するレンズ枚数を増加させる必要があるため、当該ズームレンズの小型化と高性能化とを共に実現することが困難になる。
【0049】
上記効果を得る上で、条件式(2)の下限値は、0.80であることが好ましく、0.85であることがより好ましい。また、条件式(2)の上限値は、1.20であることが好ましく、1.15であることがより好ましい。
【0050】
1−3−3.条件式(3)
当該ズームレンズは、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0051】
条件式(3):
0.02 < Crfr/ft < 0.11
但し、
Crfr:フォーカス群における最も像側のレンズ面の曲率半径
ft :望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離
【0052】
条件式(3)は、フォーカス群における最も像側のレンズ面の曲率半径と望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離との比を規定する式である。まず、条件式(3)の数値範囲は正であるから、Crfrの値が正であることが求められる。すなわち、当該ズームレンズにおいて、当該フォーカス群における最も像側のレンズ面は像側に凹面形状であることが好ましい。そして、フォーカス群における最も像側のレンズ面を、望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離に対して、条件式(3)を満足する曲率半径を有するレンズ面形状とすることで、像面湾曲、歪曲収差等の種々の収差を良好に行うことが可能になり、合焦域全域において、より高性能なズームレンズを実現することが可能になる。
【0053】
これに対して、条件式(3)の数値が上限値以上になると、すなわち、望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離に対するフォーカス群における最も像側のレンズ面の曲率半径が大きくなると、歪曲収差の補正が困難となり好ましくない。また、条件式(2)の数値が下限値以下になると、すなわち、望遠端にける当該ズームレンズ全系の焦点距離に対するフォーカス群における最も像側のレンズ面の曲率半径が小さくなると、像面湾曲の補正が困難となり、好ましくない。
【0054】
上記効果を得る上で、条件式(3)の下限値は、0.03であることがより好ましく、0.04であることがさらに好ましく、0.05であることが一層好ましい。また、条件式(3)の上限値は、0.10であることがより好ましく、0.095であることがさらに好ましく、0.09であることが一層好ましい。
【0055】
1−3−4.条件式(4)
当該ズームレンズにおいて、フォーカス群は負の屈折力を有する1枚のレンズで構成され、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0056】
条件式(4):
40.0 < νdLfn
但し、
νdLfn:フォーカス群を構成する負の屈折力を有するレンズのd線におけるアッベ数
【0057】
条件式(4)は、上記フォーカス群が負の屈折力を有するレンズ1枚で構成されている場合、当該負の屈折力を有するレンズのd線に対するアッベ数を規定する式である。条件式(4)を満足することにより、すなわち、フォーカス群をアッベ数が40.0のレンズよりも分散の小さい負レンズで構成することにより、フォーカス群において発生する軸上色収差及び倍率色収差を小さくすることができる。そのため、当該フォーカス群を1枚の負レンズで構成した場合にも、近接被写体合焦時に生じやすいこれらの色収差を良好に補正することができ、合焦域全域において高い光学性能を実現することができる。
【0058】
上記効果を得る上で、条件式(4)の下限値は、42.0であることがより好ましく、44.0であることがさらに好ましい。なお、アッベ数が大きくなるほど、そのレンズの分散は小さくなるため、色収差が生じにくくなる。従って、フォーカス群において発生する色収差を小さくするという観点からは、当該条件式(4)の値は大きいほど好ましく、特に、上限値を定める必要はない。しかしながら、現存する硝材のアッベ数は100程度である。また、アッベ数の大きい低分散の硝材は一般に高価である。従って、当該ズームレンズを製造する際のコスト的な観点からは、条件式(4)の上限値は100であることが好ましく、85.0であることがより好ましく、77.0であることがさらに好ましい。
【0059】
1−3−5.条件式(5)
当該ズームレンズは、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0060】
条件式(5):
−0.25<(Crff+Crfr)/(Crff−Crfr)<5.00
但し、
Crff:前記フォーカス群における最も物体側のレンズ面の曲率半径
Crfr:前記フォーカス群における最も像側のレンズ面の曲率半径
【0061】
条件式(5)は、フォーカス群を構成するレンズのレンズ面の形状を規定するための式である。条件式(5)を満足する場合、フォーカス群を構成するレンズは、物体側の面よりも像側の面の方が曲率の強い形状を有する。条件式(5)を満足する形状のレンズによりフォーカス群を構成することで、フォーカス群に強い負の屈折力を配置して、近接被写体合焦時のフォーカス群の移動量を小さくすることができる。これと同時に、フォーカス群の移動に伴うコマ収差や像面湾曲の変動を抑制し、近接被写体合焦時においてもコマ収差や像面湾曲を良好に補正することができる。このため、当該ズームレンズの小型化と、合焦域全域における高性能化を実現することができ、好ましい。
【0062】
上記効果を得る上で、条件式(5)の下限値は、−0.20であることがより好ましく、−0.10であることがさらに好ましく、0.50であることが一層好ましい。また、条件式(5)の上限値は、4.00であることがより好ましく、3.00であることがさらに好ましく、2.50であることが一層好ましい。
【0063】
条件式(5)の範囲は、以降に述べる当該ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例(実施例1、実施例2)から、以下の条件式(5−1)として満足することも好ましい。
(5−1) 0.931≦(Crff+Crfr)/(Crff−Crfr)≦2.074
【0064】
1−3−6.条件式(6)
当該ズームレンズは、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0065】
条件式(6):
0.39 < f1/ft < 0.70
但し、
f1:第1レンズ群の焦点距離
ft:望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離
【0066】
条件式(6)は、第1レンズ群の焦点距離と、望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離との比を規定する式である。条件式(6)を満足させることにより、光学性能を高く維持しつつ、望遠比のより大きなズームレンズを実現することが容易になる。すなわち、高性能であり、且つ、望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離に比して、光学全長の短いズームレンズを実現することがより容易になる。
【0067】
これに対して、条件式(6)の数値が上限値以上になると、すなわち、第1レンズ群の焦点距離が、望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離に対して大きくなると、望遠端における当該ズームレンズの光学全長が長くなるため、当該ズームレンズの小型化を図る上で好ましくない。一方、条件式(6)の数値が下限値以下になると、すなわち、第1レンズ群の焦点距離が、望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離に対して小さくなると、望遠端における軸上色収差や球面収差の補正が困難となり、変倍域全域で高性能なズームレンズを実現することが困難になる。
【0068】
上記効果を得る上で、条件式(6)の下限値は、0.40であることがより好ましく、0.41であることがさらに好ましく、0.44であることが一層好ましく、0.46であることがより一層好ましい。また、条件式(6)の上限値は、0.68であることがより好ましく、0.65であることがさらに好ましく、0.62であることが一層好ましい。
【0069】
1−3−7.条件式(7)
当該ズームレンズは、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0070】
条件式(7):
−15.0 <{1−(βft×βft)}×βftr×βftr< −5.5
但し、
βft :フォーカス群の望遠端における無限遠合焦時の横倍率
βftr:フォーカス群よりも像側に配置される全レンズ群の望遠端における無限遠合焦時の合成横倍率
【0071】
条件式(7)は、フォーカス群のピント敏感度、すなわち、フォーカス群が単位量移動したときの像面移動量を規定する式である。条件式(7)を満足させることにより、無限遠物体から近接物体への合焦時におけるフォーカス群の移動量を適切な範囲内とすることができ、迅速なオートフォーカスを実現すると共に、当該ズームレンズの小型化を図ることがより容易になる。
【0072】
これに対して、条件式(7)の数値が上限値以上になると、すなわち、フォーカス群のピント敏感度が小さくなりすぎると、無限遠物体から近接物体への合焦時におけるフォーカス群の移動量が大きくなり、当該ズームレンズの光学全長が長くなる他、迅速なオートフォーカスを実現することが困難になるため、好ましくない。一方、条件式(7)の数値が下限値以下になると、すなわち、フォーカス群のピント敏感度が大きくなりすぎると、合焦位置を合わせるためのフォーカス群の位置制御を高精度に行う必要があり、フォーカス群の制御が困難になるため、好ましくない。
【0073】
上記効果を得る上で、条件式(7)の下限値は、−14.5であることがより好ましく、−14.0であることがさらに好ましく、−13.5であることが一層好ましく、−13.0であることがより一層好ましく、−12.5であることがさらに一層好ましい。また、条件式(7)の上限値は、−6.0であることがより好ましく、−6.5であることがさらに好ましく、−7.0であることが一層好ましく、−8.0であることがより一層好ましい。
【0074】
1−3−8.条件式(8)
当該ズームレンズにおいて、広角端から望遠端への変倍時に第1レンズ群が物体側に移動するように構成したとき、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0075】
条件式(8):
0.10 < |X1|/ft < 0.26
但し、
X1:広角端から望遠端への変倍時に、第1レンズ群が物体側に移動する量
【0076】
条件式(8)は、広角端から望遠端への変倍時に第1レンズ群が物体側に移動するように構成したときの、第1レンズ群の移動量を規定する式である。条件式(8)を満足させることにより、上記変倍時における第1レンズ群の移動量が適正な範囲内となり、各レンズ群に対してそれぞれより良好なパワー配置を行うことがでる。そのため、軸上色収差や球面収差等の諸収差の補正をより少ないレンズ枚数で良好に行うことができ、合焦域全域において高性能なズームレンズを実現することがより容易になる。これと同時に当該ズームレンズの一層の小型化を図ることができる。また、合焦時のフォーカス群の移動量を適正な範囲内とすることができるため、迅速なオートフォーカスを実現するともに、フォーカス群の駆動制御を適正に行うことができる。
【0077】
これに対して、条件式(8)の数値が上限値以上になると、広角端から望遠端への変倍の際の第1レンズ群の移動量が大きくなる。すなわち、広角端状態における鏡筒長に対して、望遠端状態における鏡筒長を長くする必要があるため、鏡筒の入れ子構造やカム構造など、鏡筒構造が複雑になる。その結果、鏡筒が大きくなり、レンズユニット全体の小型化や軽量化を図ることが困難になる。一方、条件式(8)の数値が下限値以下になると、広角端から望遠端への変倍の際の第1レンズ群の移動量が小さくなる。この場合、変倍比の大きなズームレンズを実現するには、他のレンズ群に配分するパワーを強くする必要がある。そのため、高性能なズームレンズを実現するには、軸上色収差や球面収差等の諸収差の補正を行うためにレンズ枚数を増加させる必要があり、当該ズームレンズの小型化や軽量化を実現することが困難になる。
【0078】
上記効果を得る上で、条件式(8)の下限値は、0.12であることがより好ましく、0.14であることがさらに好ましく、0.16であることが一層好ましい。また、条件式(8)の上限値は、0.25であることがより好ましい。
【0079】
1−3−9.条件式(9)
当該ズームレンズは、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0080】
条件式(9):
1.40 < f1/fw < 3.20
但し、
f1:第1レンズ群の焦点距離
fw:広角端における当該ズームレンズ全系の焦点距離
【0081】
条件式(9)は、第1レンズ群の焦点距離と広角端における当該ズームレンズ全系の焦点距離との比を規定する式である。条件式(9)を満足させることにより、広角端における当該ズームレンズ全系の焦点距離に対する第1レンズ群の焦点距離がより適切な範囲内となり、広角端における当該ズームレンズの光学性能をより向上することができ、小型化を図る上でも好ましい。
【0082】
これに対して、条件式(9)の数値が上限値以上になると、第1レンズ群の焦点距離が当該ズームレンズの広角端における焦点距離に対して長くなり、広角端における当該ズームレンズ及びレンズユニットの小型化を図る上で好ましくない。一方、条件式(9)の数値が下限値以下になると、第1レンズ群の焦点距離が当該ズームレンズの広角端における焦点距離に対して短くなり、広角端においてコマ収差や歪曲収差の補正が困難になる。このため、変倍域全域において高性能なズームレンズを実現するためには、収差補正に要するレンズ枚数を増加させる必要があるため、当該ズームレンズの小型化と高性能化とを共に実現することが困難になる。
【0083】
上記効果を得る上で、条件式(9)の下限値は、1.50であることがより好ましく、1.60であることがさらに好ましく(条件式(9−1) 1.60 < f1/fw < 3.20)、1.70であることが一層好ましい。また、条件式(9)の上限値は、3.00であることがより好ましく、2.80であることがさらに好ましく、2.60であることが一層好ましく、2.30であることがより一層好ましい。
【0084】
1−3−10.条件式(10)
当該ズームレンズにおいて、第1レンズ群は正の屈折力を有するレンズを少なくとも2枚含むものとし、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0085】
条件式(10):
64.0 < νd1pave <83.0
但し、
νd1pave:第1レンズ群に含まれる正の屈折力を有する全レンズのd線におけるアッベ数の平均値
【0086】
条件式(10)は、第1レンズ群に含まれる正の屈折力を有する全てのレンズのd線におけるアッベ数の平均値を規定する式である。上述したとおり、アッベ数の大きい硝材は、低分散であるため、アッベ数の大きい硝材からなるレンズを用いれば色収差の発生を抑制することができる。しかしながら、アッベ数の大きい硝材は一般に高価である。そのため、条件式(10)を満足させることにより、望遠端における軸上色収差の補正を良好に行うと共に、当該ズームレンズの高コスト化を抑制することができる。
【0087】
これに対して、条件式(10)の数値が上限値以上になると、すなわち、第1レンズ群に含まれる正の屈折力を有するレンズの平均アッベ数が大きくなると、第1レンズ群を構成するために用いる正の屈折力を有するレンズが高価になり、当該ズームレンズを製造する際のコスト的な観点から好ましくない。一方、条件式(10)の数値が下限値以下になると、第1レンズ群に含まれる正の屈折力を有する全レンズのアッベ数が小さく、分散が大きくなるため、望遠端における軸上色収差を補正することが困難になり、変倍域全域において高性能なズームレンズを実現することが困難になる。
【0088】
上記効果を得る上で、条件式(10)の下限値は、65.3であることがより好ましく、66.2であることがさらに好ましく、67.1であることが一層好ましい。また、条件式(10)の上限値は、82.0であることがより好ましく、80.5であることがさらに好ましく、79.0であることが一層好ましく、77.0であることがより一層好ましく、73.0であることがさらに一層好ましい。
【0089】
1−3−11.条件式(11)
当該ズームレンズは、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0090】
条件式(11):
0.86 < |β2t| < 20.00
但し、
β2t:第2レンズ群の望遠端における無限遠合焦時の横倍率
【0091】
条件式(11)は、第2レンズ群の望遠端における無限遠合焦時の横倍率を規定する式である。条件式(11)を満足させることにより、第2レンズ群の望遠端無限遠合焦時における横倍率がより適切な範囲内となり、当該第2レンズ群の変倍作用により、当該ズームレンズの変倍比をより大きくしつつ、変倍域全域において高性能なズームレンズを実現することがより容易になる。
【0092】
これに対して、条件式(11)の数値が上限値以上になると、第2レンズ群の望遠端における無限遠合焦時の横倍率が大きくなり、望遠端における第2レンズ群による変倍作用が大きくなり過ぎる。そのため、球面収差や像面湾曲、コマ収差等の諸収差の補正が困難となり、少ないレンズ枚数で高性能なズームレンズを構成することが困難になり、当該ズームレンズの小型化を図ることが困難になる。一方、条件式(11)の数値が下限値以下になると、第2レンズ群の望遠端合焦時における横倍率が小さく、望遠端における第2レンズ群による変倍作用が小さくなり過ぎる。そのため、望遠端における焦点距離の長い、望遠系ズームレンズとするには、第1レンズ群の焦点距離を長くする必要があり、当該ズームレンズの光学全長が長くなるため、当該ズームレンズ及びレンズユニットの小型化を図ることが困難になる。
【0093】
上記効果を得る上で、条件式(11)の下限値は、0.90であることがより好ましく、0.95であることがさらに好ましく、1.00であることが一層好ましく、1.05であることがより一層好ましい。また、条件式(11)の上限値は、18.0であることがより好ましく、16.0であることがさらに好ましく、15.0であることが一層好ましい。
【0094】
1−3−12.条件式(12)
当該ズームレンズにおいて、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0095】
条件式(12):
1.10 < Bfw/(fw×tanωw) < 3.50
但し、
Bfw:当該ズームレンズの広角端における最も像側の面から像面までの空気換算長
ωw :当該ズームレンズの広角端における最軸外主光線の半画角
【0096】
条件式(12)は、当該ズームレンズの広角端におけるフランジバックの長さを規定するための式である。条件式(12)を満足させることにより、当該ズームレンズの広角端におけるフランジバックを、レンズ交換システムを適用した撮像装置に好適な長さにすることができる。
【0097】
これに対して、条件式(12)の数値が上限値以上であると、当該ズームレンズの広角端におけるフランジバックが長くなりすぎ、当該ズームレンズの小型化を図る上で好ましくない。一方、条件式(12)の数値が下限値以下であると、当該ズームレンズの広角端におけるフランジバックが短くなるため、当該ズームレンズをレンズ交換システムを適用した撮像装置の交換レンズに要求されるフランジバックを確保することが困難になるため、好ましくない。
【0098】
上記効果を得る上で、条件式(12)の下限値は、1.15であることがより好ましく、1.20であることがさらに好ましく、1.40であることが一層好ましく、1.80であることがより一層好ましい。また、条件式(12)の上限値は、3.20であることがより好ましく、3.00であることがさらに好ましく、2.90であることが一層好ましい。
【0099】
条件式(12)の範囲は、上述のより好ましい数値から、以下の条件式(12−1)として満足することも好ましい。
(12−1) 1.80 < Bfw/(fw×tanωw) < 3.00
【0100】
1−3−13.条件式(13)
当該ズームレンズにおいて、以下の条件式を満足することが好ましい。
【0101】
条件式(13):
−0.30 < fF/ft < −0.05
但し、
fF: フォーカス群の焦点距離
【0102】
条件式(13)は、フォーカス群の焦点距離と、望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離との比を規定する式である。条件式(13)を満足させることにより、望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離に対するフォーカス群の焦点距離が適正な範囲内となり、軸上色収差や球面収差等の諸収差の補正をより少ないレンズ枚数で良好に行うことができ、合焦域全域において高性能なズームレンズを実現することがより容易になる。これと同時に当該ズームレンズの一層の小型化を図ることができる。また、合焦時のフォーカス群の移動量を適正な範囲内とすることができるため、迅速なオートフォーカスを実現するともに、フォーカス群の位置制御を適正に行うことができる。
【0103】
これに対して、条件式(13)の数値が上限値以上になると、望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離に対するフォーカス群の焦点距離が短くなり過ぎる。そのため、近接被写体合焦時における軸上色収差、球面収差、像面湾曲等の諸収差を補正することが困難になり、少ないレンズ枚数で、合焦域全域において高性能なズームレンズを実現することが困難になる。また、この場合、フォーカス群のピント敏感度が大きくなるため、合焦位置を合わせるためのフォーカス群の位置制御を高精度に行う必要があり、フォーカス群の位置制御が困難になるため、好ましくない。
【0104】
一方、条件式(13)の数値が下限値以下になると、望遠端における当該ズームレンズ全系の焦点距離に対するフォーカス群の焦点距離が長くなり過ぎる。この場合、フォーカス群のピント敏感度が小さくなるため、合焦時のフォーカス群の移動量が大きくなり、当該ズームレンズの光学全長が長くなる他、迅速なオートフォーカスを実現することが困難になるため、好ましくない。
【0105】
上記効果を得る上で、条件式(13)の下限値は、−0.25であることがより好ましく、−0.20であることがさらに好ましく、−0.18であることが一層好ましい。また、条件式(13)の上限値は、−0.07であることがより好ましく、−0.09であることがさらに好ましく、−0.10であることが一層好ましい。
【0106】
1−3−14.条件式(14)及び条件式(15)
当該ズームレンズにおいて、負の屈折力を有し、且つ、以下の条件式を満足するレンズをレンズNとしたとき、第3レンズ群以降に当該レンズNが少なくとも1枚含まれることが好ましい。
【0107】
(14) 15.0 < νdN < 42.0
(15) 1.85 < NdN < 2.15
但し、
νdN:レンズNのd線におけるアッベ数
NdN:レンズNのd線における屈折率
【0108】
第3レンズ群以降に含まれる負の屈折力を有するレンズの少なくともいずれか一つが上記条件式(14)及び条件式(15)を満足する高分散高屈折率のレンズNであると、第1レンズ群を構成する正の屈折力を有するレンズにおいて生じた色収差を当該レンズNにより相殺することができるため、望遠端における軸上色収差を小さくすることができる。そのため、第1レンズ群を構成する正の屈折力を有するレンズの硝材として、分散の極めて小さい高価な硝材を用いずとも、望遠端における軸上色収差を小さくすることができる。従って、高性能なズームレンズを実現しつつ、高コスト化を抑制することができるため、好ましい。
【0109】
上記効果を得る上で、条件式(14)の下限値は、20.0であることがより好ましく、24.0であることがさらに好ましく、25.2であることが一層好ましく、28.0であることがより一層好ましい。また、条件式(14)の上限値は、41.0であることがより好ましく、39.0であることがさらに好ましく、37.5であることが一層好ましい。
【0110】
また、上記効果を得る上で、条件式(15)の下限値は、1.87であることがより好ましく、1.89であることがさらに好ましい。また、条件式(12)の上限値は、2.05であることがより好ましく、1.98であることがさらに好ましく、1.95であることが一層好ましい。
【0111】
当該ズームレンズにおいて、第3レンズ群にレンズNを含ませることにより、第3レンズ群において、第1レンズ群において発生した色収差を相殺することができるため、望遠端における軸上色収差をより小さくすることができ好ましい。なお、当該ズームレンズには、この条件式(14)及び条件式(15)を満足する負の屈折力を有するレンズNが第3レンズ群以降に複数枚含まれていてもよい。
【0112】
2.撮像装置
次に、本実施の形態の撮像装置について説明する。本実施の形態の撮像装置は、上記ズームレンズと、上記ズームレンズの像側に設けられた、当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする。
【0113】
本件発明において、撮像素子等に特に限定はなく、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの固体撮像素子等も用いることができる。
【0114】
特に、上記ズームレンズは、広角端においても一眼レフレックスカメラやミラーレス一眼カメラ等の交換レンズシステムに好適なフランジバックを確保することができる。従って、当該撮像装置は、これらの交換レンズシステムを適用した撮像装置に好適である。
【0115】
撮像装置は、上記撮像素子により電気的信号に変換された光学像(画像データ)に対して、電気的に加工する画像処理部を有し、当該画像処理部により画像データに対して画像処理を施すことができるように構成されていることが好ましい。例えば、当該画像処理部は、上記ズームレンズを用いて被写体を撮像したときに得られる光学像は、理想的な被写体像に対して、上記ズームレンズの種々の収差に起因する歪み(理想的な被写体像からのズレ)を有する場合がある。そこで、上記ズームレンズの収差特性に基づき、予めこれらの収差を補正するための補画像補正用のデータを用意しておき、その画像補正用のデータを用いて、画像処理部により、上記画像データを電気的に加工することにより、光学像の歪みが補正された画像データを生成するようにすることができる。なお、当該撮像装置は、上記画像補正用のデータが予め格納された歪み補正データ格納部を有していてもよいし、当該画像補正データを格納可能に構成されたデータ格納部を有していてもよい。また、当該撮像装置は、無線通信手段等の通信手段と、当該通信手段等を介して、外部機器に格納された画像補正用のデータを取得するデータ取得部を備え、上記通信手段等を介して取得した画像補正用のデータを用いて、上記画像処理部により、上記画像データを電気的に加工してもよい。画像処理に関するこれらの具体的な態様は特に限定されるものではない。なお、理想的な被写体像とは、収差のないレンズ(ズームレンズ)を用いて、被写体を撮像したときに得られる光学像を指すものとする。
【0116】
当該撮像装置が、上記画像処理部を備え、例えば、歪曲収差に起因する光学像の歪みを、予め用意された歪曲収差補正用のデータを用いて、上記画像処理部により歪曲収差を補正可能に構成されている場合、上記ズームレンズにおいて、絞りより像側に配置された負の屈折力を強くすることができ、当該ズームレンズの光学全長及び径方向の小型化を図ることができて好ましい。
【0117】
また、当該撮像装置が、上記画像処理部を備え、例えば、倍率色収差に起因する光学像の歪みを、予め用意された倍率色収差補正用のデータを用いて、上記画像処理部により倍率色収差を補整可能に構成されている場合、上記ズームレンズにおいて、絞りより像側に配置された負の屈折力を強くすることができ、当該ズームレンズの光学全長及び径方向の小型化を図ることができて好ましい。
【0118】
次に、実施例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下に挙げる各実施例のズームレンズは、上記撮像装置(光学装置)に用いられるズームレンズ(変倍光学系)であり、特に、レンズ交換撮像システムを適用した撮像装置に好ましく適用することができる。また、各レンズ断面図において、図面に向かって左方が物体側であり、右方が像側である。
【実施例1】
【0119】
(1)光学系の構成
図1は、本件発明に係る実施例1のズームレンズの広角端における無限遠合焦時のレンズ構成を示す断面図である。当該ズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4と、負の屈折力を有する第5レンズ群G5と、負の屈折力を有する第6レンズ群G6とから構成されている。第5レンズ群G5はフォーカス群であり、後述するレンズ1枚で構成されている。無限遠物体から近距離物体への合焦の際、第5レンズ群G5が光軸に沿って像側に移動する。開口絞りSは第3レンズ群G3の最も像面側に配置されている。図1において、「CG」は、カバーガラス、ローパスフィルター、赤外線フィルターなどをさす。「IMG」は像面であり、CCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子の撮像面、或いは、銀塩フィルムのフィルム面等を示す。これらの点は、他の実施例で示す各レンズ断面図においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0120】
次に、各レンズ群の構成を説明する。第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側凸形状の負メニスカスレンズL1及び両凸レンズL2が接合された接合レンズと、両凸レンズL3とから構成されている。
【0121】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、両凹レンズL4及び物体側凸形状の正メニスカスレンズL5が接合された接合レンズと、両凹レンズL6とから構成されている。
【0122】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、両凸レンズL7と、両凸レンズL8及び両凹レンズL9が接合された接合レンズと、両凹レンズL10及び物体側凸形状の正メニスカスレンズL11が接合された接合レンズと、開口絞りSとから構成されている。
【0123】
第4レンズ群G4は、物体側から順に、両凸レンズL12と、両凸レンズL13及び物体側凹形状の負メニスカスレンズL14が接合された接合レンズとから構成されている。
【0124】
第5レンズ群G5は、物体側凸形状の負メニスカスレンズL15から構成されている。
【0125】
第6レンズ群G6は、両凹レンズL16と両凸レンズL17とが接合された接合レンズから構成されている。
【0126】
当該実施例1のズームレンズにおいて、広角端から望遠端への変倍時の各レンズ群の移動の軌跡は図1に示すとおりであり、第1レンズ群は物体側に移動し、第2レンズ群は固定であり、第3レンズ群は物体側に移動し、第4レンズ群は物体側に移動し、第5レンズ群は物体側に移動し、第6レンズ群も物体側に移動する。ここで、第4レンズ群と第6レンズ群の変倍時における移動の軌跡(移動の向き及び移動量)は同じである。変倍時における第4レンズ群及び第6レンズ群の移動量と、第5レンズ群の移動量は僅かに異なる。
【0127】
ここで、変形例として、例えば、第4レンズ群から第6レンズ群を一つのレンズ群として構成し、変倍時にこれらのレンズ群を全て同じ軌跡で移動させた場合も実施例1のズームレンズと略同等の光学性能を得ることができ、本件発明の範囲内である。この場合、このレンズ群において、物体側から順に物体側部分レンズ群としての第4レンズ群、部分レンズ群としてのフォーカス群(第5レンズ群)、像側部分レンズ群として第6レンズ群を備えることになる。
【0128】
また、他の変形例として、例えば、第3レンズ群から第6レンズ群を一つのレンズ群として構成し、変倍時にこれらのレンズ群を全て同じ軌跡で移動させた場合も実施例1のズームレンズと略同等の光学性能を得ることができ、本件発明の範囲内である。この場合、このレンズ群において、物体側から順に物体側部分レンズ群としての第3レンズ群及び第4レンズ群、部分レンズ群としてのフォーカス群(第5レンズ群)、像側部分レンズ群として第6レンズ群を備えることになる。
【0129】
また、実施例1のズームレンズは、手振れ等により撮影時に像ブレが発生した場合に、当該実施例1のズームレンズを構成する少なくとも1枚のレンズを偏芯させることで、例えば、光軸に直交する方向に移動させることで、像ブレを補正する防振レンズ群を備えることができる。例えば、第3レンズ群G3に含まれる両凹レンズL10及び物体側凸形状の正メニスカスレンズL11が接合された接合レンズを光軸と垂直な方向に動かすことで、像面IMG上の像ブレ補正を行う防振レンズ群とすることができる。
【0130】
(2)数値実施例
次に、当該ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表1に当該光学系の面データを示す。表1において、「面番号」は物体側から数えたレンズ面の順番であり、「r」はレンズ面の曲率半径、「d」はレンズ面の光軸上の間隔、「Nd」はd線(波長λ=587.56nm)に対する屈折率、「vd」はd線に対するアッベ数、「H」は有効半径を示している。また、「面番号」の次の列に付した「S」は開口絞りを示している。また、「r」の欄に記載の「INF」は「∞(無限大)」であることを意味する。なお、各表中の長さの単位は全て「mm」であり、画角の単位は全て「°」である。
【0131】
表2に、当該ズームレンズの緒元データを示す。表2には、広角端、中間焦点距離位置、望遠端における当該ズームレンズの焦点距離(f)、Fナンバー(Fno)、半画角(ω)、像高(Y)、光学全長(TL)を示している。
【0132】
表3に、変倍時における光軸上の可変間隔(但し、無限遠合焦時)を示す。表3において、左側から順に、広角端、中間焦点距離位置、望遠端における各レンズ面間の間隔を示す。
【0133】
表4に、近接被写体(撮影距離3.00m)合焦時における光軸上の可変間隔を示す。表4において、左側から順に、広角端、中間焦点距離位置、望遠端における各レンズ面間の間隔を示す。さらに、表5に各レンズ群の焦点距離を示す。表5において、「面番号」とは、各レンズ群に含まれるレンズ面の番号を意味する。
【0134】
また、表17に当該光学系の上記各条件式(1)〜条件式(15)の数値を示す。これらの各表に関する事項は、他の実施例で示す各表においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0135】
また、図2に当該ズームレンズの広角端における無限遠合焦時の縦収差図を示す。当該図面に向かって左側から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差である。
【0136】
球面収差を表す図では、縦軸は開放Fナンバー(図中、FNOで示す)との割合、横軸にデフォーカスをとり、実線がd線(波長587.56nm)、一点鎖線がg線(波長435.84nm)、破線がC線(波長656.27nm)における球面収差を表す。
【0137】
非点収差を表す図では、縦軸は半画角(ω)を表し、横軸にデフォーカスをとり、実線がd線(波長587.56nm)に対するサジタル像面(S)、点線がd線に対するメリジオナル像面(T)における非点収差を表す。
【0138】
歪曲収差を表す図では、縦軸は半画角(ω)を表し、横軸に%をとり、d線(波長587.56nm)における歪曲収差を表す。
【0139】
当該ズームレンズの広角端における無限遠合焦時におけるバックフォーカス「fb」は以下のとおりである。但し、以下の値は、厚さ2.5mmのカバーガラス(Nd=1.5168)を含まない値であり、他の実施例に示すバックフォーカスについても同様である。
【0140】
fb=44.319(mm)
【0141】
また、図3に当該ズームレンズの中間焦点距離位置における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図を示し、図4に当該ズームレンズの望遠端における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図を示す。図2において述べた収差図に関する事項は、図3図4において同様であり、他の実施例で示す各図においても同様である。従って、以下では説明を省略する。
【0142】
【表1】
【0143】
【表2】
【0144】
【表3】
【0145】
【表4】
【0146】
【表5】
【実施例2】
【0147】
(1)光学系の構成
図5は、本件発明に係る実施例2のズームレンズの広角端における無限遠合焦時のレンズ構成を示す断面図である。当該ズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4と、負の屈折力を有する第5レンズ群G5と、正の屈折力を有する第6レンズ群G6とから構成されている。第5レンズ群はフォーカス群であり、後述するレンズ1枚で構成されている。無限遠物体から近距離物体への合焦の際、第5レンズ群G5が光軸に沿って像側に移動する。開口絞りSは第3レンズ群G3の最も像面側に配置されている。
【0148】
次に、各レンズ群の構成を説明する。第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側凸形状の負メニスカスレンズL1及び両凸レンズL2が接合された接合レンズと、物体側凸形状の正メニスカスレンズL3とから構成されている。
【0149】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側凸形状の負メニスカスレンズL4と、両凹レンズL5及び物体側凸形状の正メニスカスレンズL6が接合された接合レンズとから構成されている。
【0150】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、両凸レンズL7と、両凹レンズL8と、両凸レンズL9と、開口絞りSとから構成されている。
【0151】
第4レンズ群G4は、物体側から順に、物体側凸形状の負メニスカスレンズL10及び両凸レンズL11が接合された接合レンズと、両凸レンズL12及び物体側凹形状の負メニスカスレンズL13が接合された接合レンズと、両凸レンズL14とから構成されている。
【0152】
第5レンズ群G5は、両面が非球面である両凹レンズL15から構成されている。
【0153】
第6レンズ群G6は、物体側凹形状の正メニスカスレンズL16及び両凹レンズL17が接合された接合レンズと、両凸レンズL18とから構成されている。
【0154】
当該実施例2のズームレンズにおいて、広角端から望遠端への変倍時の各レンズ群の移動の軌跡は図5に示すとおりであり、第1レンズ群は物体側に移動し、第2レンズ群は像側に移動し、第3レンズ群は物体側に移動し、第4レンズ群は物体側に移動し、第5レンズ群は物体側に移動し、第6レンズ群も物体側に移動した後像側に移動する。実施例2のズームレンズでは全てのレンズ群が可動群であるが、第6レンズ群の移動量は僅かである。そのため、最も像側に配置される第6レンズ群を固定群としても、実施例2のズームレンズと同等の光学性能を得ることができ、本件発明の範囲内である。
【0155】
また、実施例2のズームレンズにおいても、手振れ等により撮影時に像ブレが発生した場合に、当該実施例2のズームレンズを構成する少なくとも1枚のレンズを偏芯させることで、例えば、光軸に直交する方向に移動させることで、像ブレを補正する防振レンズ群を備えることができる。例えば、第2レンズ群G2を光軸と垂直な方向に動かすことで、像面IMG上の像ブレ補正を行う防振レンズ群とすることができる。
【0156】
(2)数値実施例
次に、当該ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表6に当該ズームレンズの面データを示し、表7に緒元データを示し、表8に変倍時における光軸上の可変間隔、表9に合焦時における光軸上の可変間隔(但し、撮影距離0.70m)、表10に各レンズ群の焦点距離、表17に当該ズームレンズの上記各条件式(1)〜条件式(15)の数値を示す。
【0157】
なお、表6において、面番号の次の欄に付した「ASP」は当該レンズ面が非球面であることを示し、その非球面データを表11に示す。表11において、非球面データは、当該非球面形状を下記式で定義した場合の非球面係数を示す。但し、表において、「E−a」は「×10−a」を示す。非球面データは、下記式で非球面を定義したときの円錐係数、各次数の非球面係数を示す。
【0158】
【0159】
但し、上記式において、「x」は光軸方向の基準面からの変位量(像面側を正とする)、「r」は近軸曲率半径、「H」は光軸に垂直な方向の光軸からの高さ、「k」は円錐係数、「An」はそれぞれn次の非球面係数である(但し、n=4,6,8,10)。
【0160】
また、図6に、当該ズームレンズの広角端における無限遠合焦時の縦収差図、図7に中間焦点位置における無限遠合焦時の縦収差図、図8に望遠端における無限遠合焦時の縦収差図を示す。
【0161】
当該ズームレンズの広角端における無限遠合焦時におけるバックフォーカス「fb」は以下のとおりである。
fb=54.863(mm)
【0162】
【表6】
【0163】
【表7】
【0164】
【表8】
【0165】
【表9】
【0166】
【表10】
【0167】
【表11】
【実施例3】
【0168】
(1)光学系の構成
図9は、本件発明に係る実施例3のズームレンズの広角端における無限遠合焦時のレンズ構成を示す断面図である。当該ズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4と、負の屈折力を有する第5レンズ群G5ととから構成されている。第4レンズ群G4はフォーカス群であり、1枚のレンズで構成されている。無限遠物体から近距離物体への合焦の際、第4レンズ群G4が光軸に沿って像側に移動する。開口絞りSは第3レンズ群G3中に配置されている。
【0169】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側凸形状の負メニスカスレンズL1及び両凸レンズL2が接合された接合レンズと、両凸レンズL3とから構成されている。
【0170】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、像側凸形状の正メニスカスレンズL4及び両凹レンズL5が接合された接合レンズと、両凹レンズL6と、両凹レンズL7及び両凸レンズL8が接合された接合レンズとから構成されている。
【0171】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、両凸レンズL9及び物体側凹形状の負メニスカスレンズL10が接合された接合レンズと、両凸レンズL11と、開口絞りSと、両凹レンズL12及び両凸レンズL13が接合された接合レンズと、両凸レンズL14及び両凹レンズL15が接合された接合レンズと、物体側凸形状の正メニスカスレンズL16とからから構成されている。
【0172】
第4レンズ群G4は、物体側凸形状の負メニスカスレンズL17で構成されている。
【0173】
第5レンズ群G5は、物体側凹形状の正メニスカスレンズL18と、両凹レンズL19とから構成されている。
【0174】
当該実施例3のズームレンズにおいて、広角端から望遠端への変倍時の各レンズ群の移動の軌跡は図9に示すとおりであり、第1レンズ群は物体側に移動し、第2レンズ群は像側に移動した後物体側に移動し、第3レンズ群は物体側に移動し、第4レンズ群は物体側に移動し、第5レンズ群は固定である。
【0175】
また、実施例3のズームレンズにおいても、手振れ等により撮影時に像ブレが発生した場合に、当該実施例3のズームレンズを構成する少なくとも1枚のレンズを偏芯させることで、例えば、光軸に直交する方向に移動させることで、像ブレを補正する防振レンズ群を備えることができる。例えば、第2レンズ群G2に含まれる両凹レンズL6と、両凹レンズL7及び両凸レンズL8が接合された接合レンズの3枚のレンズを光軸と垂直な方向に動かすことで、像面IMG上の像ブレ補正を行う防振レンズ群とすることができる。
【0176】
(2)数値実施例
次に、当該ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表12に当該ズームレンズの面データを示し、表13に緒元データを示し、表14に変倍時における光軸上の可変間隔、表15に合焦時における光軸上の可変間隔(但し、撮影距離1.50m)、表16に各レンズ群の焦点距離、表17に当該ズームレンズの上記各条件式(1)〜条件式(15)の数値を示す。
【0177】
また、図10に、当該ズームレンズの広角端における無限遠合焦時の縦収差図、図11に中間焦点位置における無限遠合焦時の縦収差図、図12に望遠端における無限遠合焦時の縦収差図を示す。
【0178】
当該ズームレンズの広角端における無限遠合焦時におけるバックフォーカス「fb」は以下のとおりである。
fb=51.319(mm)
【0179】
【表12】
【0180】
【表13】
【0181】
【表14】
【0182】
【表15】
【0183】
【表16】
【0184】
【表17】
【産業上の利用可能性】
【0185】
本件発明によれば、高い光学性能を維持しつつ、フォーカス群の軽量化を図り、且つ、交換レンズに好適なフランジバックを確保することができる望遠系のズームレンズ及び撮像装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0186】
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群
G5 第5レンズ群
G6 第6レンズ群
F フォーカス群
S 絞り
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12