特許第6951873号(P6951873)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6951873
(24)【登録日】2021年9月29日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】靴中敷の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A43B 17/00 20060101AFI20211011BHJP
   A43B 17/14 20060101ALI20211011BHJP
   A43B 17/08 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
   A43B17/00 A
   A43B17/14
   A43B17/08
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-114216(P2017-114216)
(22)【出願日】2017年6月9日
(65)【公開番号】特開2018-202076(P2018-202076A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年6月8日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1▲1▼ 販売日 平成29年4月30日 ▲2▼ 販売した場所 シンコー株式会社(大阪府東大阪市長田東3丁目3番16号)
(73)【特許権者】
【識別番号】000114606
【氏名又は名称】モリト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100070507
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 俊男
(72)【発明者】
【氏名】内山 智之
【審査官】 大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−010009(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3080929(JP,U)
【文献】 実開平06−029403(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3074072(JP,U)
【文献】 中国実用新案第203302453(CN,U)
【文献】 実開平01−170107(JP,U)
【文献】 特開2001−000205(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0017120(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 17/00〜17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層と裏層の間に連結糸層を有してなる立体編織物層を有する靴中敷の製造方法において、
下型若しくはその近傍には上方へ延設されたピンが立設され、前記下型上により撓み量の少なく且つ通気穴を有する底面層を、前記ピンが前記通気穴を貫通した状態で配置し、該底面層の上側に立体編織物層を複数重合して配置し、前記ピンは少なくとも前記立体編織物層のうち下側の立体編織物層の一部に当接若しくはその立体編織物層内に入り込んだ状態とし、上部側から上型を配置し、下型と上型との周縁部を突き合わせて高周波溶着を行うことを特徴とする靴中敷の製造方法。
【請求項2】
底面層を貫通した前記ピンに対して、貫通穴を有するクッション部材を、当該貫通穴に前記ピンを差し込むことで位置決めすることを特徴とする請求項1に記載の靴中敷の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体編織物を有する靴中敷の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体編織物を構成に有する靴中敷が公知である。靴中敷に用いられる立体編織物として、表層、裏層、及び当該表層及び裏層を連結する連結糸層を有するものが公知である。当該立体編織物はクッション性(弾力性)及び通気性が良好であることから、靴中敷に使用されるに至っている。
【0003】
上記立体編織物を有する靴中敷のうち、例えば、立体編織物自体のみを略そのままの形で靴中敷としたものとして、特許文献1、特許文献2に開示されるものがある。上記特許文献1、特許文献2に係る靴中敷によれば、既成の靴の内底に対する滑りを低減する手段を有しておらず、滑りやすい欠点があるとも考えられる。
【0004】
また、靴の内底との間の滑りやすさを低減させる機能を有するものとしては、立体編織物の下方に滑り止め用の層を形成した靴中敷が提案されている(例えば、特許文献3〜6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3077462号公報
【特許文献2】実用新案登録第3080929号公報
【特許文献3】特開2001−327303号公報
【特許文献4】特開2001−205号公報
【特許文献5】実用新案登録第3084833号公報
【特許文献6】実用新案登録第3103355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献3〜6においては、立体編織物の下方に滑り止めの層を有していることで、靴の内底に対する滑りは低減できると考えられる。
【0007】
ところで靴中敷を使用した場合であっても、歩行や運動時において足裏の動きがスムーズに行えることは当然に必要である。
上記特許文献3〜6においては、一枚の立体編織物を備えることで一定の長さを有する多数の連結糸によって大きなクッション性を得ることができる。
【0008】
しかしながら、クッション性によって足裏が沈み込みすぎると、足裏の動きを靴の内底面に伝えるまでに時間がかかり、足裏の動きをスムーズに行い難くなる欠点がある。このようなクッション性の付与は、靴中敷の足裏の動きに追従しがたくなり、安定感を損ないやすく、良好とはいえない。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、従来の立体編織物を有する靴中敷の通気性、一定のクッション性を確保しつつ、足裏の動きをスムーズに行い易くすることを可能とする靴中敷の製造方法の提供を上記発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、表層、裏層及びこれらの間に連結糸層を有する立体編織物層を有する靴中敷の製造方法において、下型若しくはその近傍には上方へ延設されたピンが立設され、前記下型上により撓み量の少なく且つ通気穴を有する底面層を、前記ピンが前記通気穴を貫通した状態で配置し、該底面層の上側に立体編織物層を複数重合して配置し、前記ピンは少なくとも前記立体編織物層のうち下側の立体編織物層の一部に当接若しくはその立体編織物層内に入り込んだ状態とし、上部側から上型を配置し、下型と上型との周縁部を突き合わせて高周波溶着を行うことを特徴とする靴中敷の製造方法を、上記課題を解決するための手段とする。
【0011】
また本発明は、上記発明の構成を前提として、底面層を貫通した前記ピンに対して、貫通穴を有するクッション部材を当該貫通穴に前記ピンを差し込むことで位置決めすることを特徴とする靴中敷の製造方法を、上記課題を解決するための手段とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、表層と裏層の間に連結糸層を有してなる立体編織物層を有する靴中敷において、上面側に複数の立体編織物層を備え、該立体編織物層の下方に前記立体編織物層全体の撓み量よりも撓み量が少なく且つ通気穴を有する底面層を設け、前記複数の立体編織物層及び底面層の各層の周面が一体となる溶着部を備えたことから、複数の立体編織物層が重合されることで、より優れた柔軟性が発揮されると共に、各立体編織物層間の支持によって安定性を確保することが可能となる。このため、歩行時の足裏の動きに柔軟且つ安定的に対応することができることから、快適な歩き易さを確保することが可能である。
【0013】
また、底面側に撓み量が少ない底面層があることで、上記した柔軟性と安定性を確保しつつ、下方(底面側)に対しては反り難い効果が得られ、シューズの着脱や使用中等に伴う不用意なズレを抑止できる効果が併せて得られる。
【0014】
更に、底面層が通気穴を備えているので、その上方の複数の立体編織物層へ空気が通りやすく、より快適性を向上させることが可能となる。
【0015】
また本発明によれば、上記発明の構成を前提として、前記複数の立体編織物層のうち上面側の立体編織物層の表層をメッシュ地とした場合には、上記発明の作用効果を奏する上に、各立体編織物層間の支持による安定性、裏面側からの通気性、足裏の接触時の快適性を、より向上させることが可能となる。
【0016】
また本発明は、上記いずれかの発明の構成を前提として、幅方向に形成した仕切融着部によって区分される個別格納部を前記立体編織物層より底面側に備え、前記個別格納部には、クッション部材を備えたことから、上記いずれかの発明の作用効果を奏する上に、当該クッション部材によって地面からの衝撃を緩和できる利点を有する。またクッション部材は仕切融着部によって区分される個別格納部に格納されることによって、当該クッション部材が隣接する立体編織物層や底面層に対してずれないように保持し、安定した性能を発揮させることが可能である。
【0017】
また本発明によれば、上記個別格納部にクッション部材を備える発明の構成を前提として、少なくとも一のクッション部材は、連続気泡性のスポンジを有するものとしたことから、上記発明の作用効果を奏する上に、クッション部材に高い柔軟性を付与することができ、当該靴中敷の快適性を高めることができる。
【0018】
また本発明によれば、上記個別格納部にクッション部材を備える発明の構成を前提として、少なくとも位置のクッション部材は、独立気泡性のスポンジを有するものとしたことから、当該発明の作用効果を奏する上に、クッション部材の反発力を高めることで、歩行を補助し、靴中敷の快適性を高めることができる。
【0019】
また本発明によれば、上記個別格納部にクッション部材を備えるいずれかの発明の構成を前提として、前記クッション部材は貫通穴を有することとしたから、上記クッション部材を備えるいずれかの発明の作用効果を奏する上に、当該クッション部材を備える位置においても、通気性を確保できる点で優れる。また、当該貫通穴は、製造時におけるクッションの位置決め用穴としても利用できる利点を有する。
【0020】
また本発明によれば、上記いずれかの発明の構成を前提として、前記個別格納部が横アーチ部対応位置に設けられることとしたから、上記いずれかの発明の作用効果を奏する上に、当該個別格納部によって、横アーチ部に一定の柔軟性が確保できる。また、当該個別格納部にクッション部材を格納可能とすることができる点で、用途に応じて横アーチ部に求められる機能を付与することが可能となる。
【0021】
また本発明によれば、上記いずれかの発明の構成を前提として、前記個別格納部が踵部対応位置に設けられることとしたから、上記いずれかの発明の作用効果を奏する上に、当該個別格納部によって、踵部に一定の柔軟性が確保できる。また、当該個別格納部にクッション部材を格納可能とすることができる点で、用途に応じて踵部に求められる機能を付与することが可能となる。
【0022】
また本発明によれば、表層、裏層及びこれらの間に連結糸層を有する立体編織物層を有する靴中敷の製造方法において、下型若しくはその近傍には上方へ延設されたピンが立設され、前記下型上により撓み量の少なく且つ通気穴を有する底面層を、前記ピンが前記通気穴を貫通した状態で配置し、該底面層の上側に立体編織物層を複数重合して配置し、前記ピンは少なくとも前記立体編織物層のうち下側の立体編織物層の一部に当接若しくはその立体編織物層内に入り込んだ状態とし、上部側から上型を配置し、下型と上型との周縁部を突き合わせて高周波溶着を行うこととしたから、前記ピンの位置決めによって、複数の立体編織物層を積層させた状態を容易に保持しつつ簡単な構成で、上記作用効果を有する靴中敷を製造することができる。
【0023】
また本発明は、上記靴中敷の製造方法に係る発明の構成を前提として、底面層を貫通した前記ピンに対して、貫通穴を有するクッション部材を、当該貫通穴に前記ピンを差し込むことで位置決めすることによって、当該クッション部材(例えば、第一クッション部材、第二クッション部材その他のクッション部材)の靴中敷中の位置決めを容易とすることができる。また、靴中敷中のクッション部材が保持される位置における通気性を確保することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例に係る靴中敷の(a)正面図、(b)右側面図。
図2】本発明の実施例に係る靴中敷の背面図。
図3】本発明の実施例に係る靴中敷の第一の立体編織物層、第二の立体編織物層、底面層の関係を示す説明図。
図4】本発明の実施例に係る靴中敷の第一の立体編織物層、第二の立体編織物層、クッション部材、底面層の関係を示す説明図。
図5】本発明の実施例に係る靴中敷の各層と金型との関係を示す説明図。
図6】本発明の実施例に係る靴中敷の製造時の状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施例に係る靴中敷Sを説明する。尚、本発明における靴中敷は下記の実施例に示される靴中敷Sに限定されるものではない。本発明の靴中敷は、本発明が開示する技術的思想の範囲内での変形、設計変更可能な範囲に及ぶ。
【実施例】
【0026】
本発明の実施例に係る靴中敷Sは、図1から図4に示すように、上面側に配置される第一の立体編織物層1、その下に当接して配置される第二の立体編織物層2、その下に当接して配置される底面層3を備える。
【0027】
また、第二の立体編織物層2と底面層3との間であって、足裏の横アーチ部に対応する位置(横アーチ部対応位置S1)には第一クッション部材4が配置される。また同様に第二の立体編織物層2と底面層3との間であって、足裏の踵部に対応する位置(踵部対応位置S2)には第二クッション部材5が配置される。
【0028】
前記第一の立体編織物層1は、三層で構成される。具体的には表面側に粗目となるメッシュ編地層(表層)10、裏面側により細目となるメッシュ編地層(裏層)11、これらのメッシュ編地層10、11の間に架橋される第一連結繊維層(連結糸層)12からなる。
【0029】
前記第二の立体編織物層2は、三層で構成される。前記第一の立体編織物層における表面側のメッシュ編地層よりも粗目となる一対の編地層(表層)20、(裏層)21とその間に架橋される第二連結繊維層(連結糸層)22からなる。
【0030】
上記第一の立体編織物層1と第二の立体編織物層2とは通常状態において当接する。靴中敷Sの端部となる溶着部6・仕切融着部7となる位置は各層が固着されている。
当該位置を除いて、前記第一の立体編織物層1及び第二の立体編織物層2は相互に固着されておらず、靴中敷Sの撓み具合によって当該第一の立体編織物層1と第二の立体編織物層2は離間して空間を形成可能な状態にある。
【0031】
本実施例に係る底面層は、合成樹脂製加工糸を平織したシート3(ポリプロピレンメッシュ)としてある。前記合成樹脂製加工糸は、ポリプロピレンを主成分とする芯鞘構造を有したものとしている。
当該芯鞘構造は、ポリプロピレン系樹脂からなる芯材にポリプロピレン系樹脂からなる鞘材を捲着、溶融固化し、芯材と鞘材が高い親和性により一体化した構成を有するものとしている。
当該シート3は、平織によって1mm四方程度の格子状の目が縦横に連続的に配列形成された構成である。当該シート3は腰の強い安定した性質を有する。
【0032】
また、上記第二の立体編織物層2とその下のシート3(底面層)とは、クッション部材(第一クッション部材4、第二クッション部材5)が介在される部分を除き、通常状態において当接する。靴中敷Sの端部の溶着部6・仕切融着部7となる位置を除き、前記第二の立体編織物層2と底面層は相互に固着されず、靴中敷Sの撓み具合によって当該第二の立体編織物層2と底面層は離間して空間を形成可能な状態にある。
【0033】
上記第一の立体編織物層1、第二の立体編織物層2、底面層は、靴中敷Sの縁部となる全周囲に溶着部6が形成され、足裏の横アーチ部に対応する横アーチ部対応位置S1に沿う位置、及び、足裏の踵部に対応する踵部対応位置S2に沿う位置には、仕切融着部7が形成された構成である。
【0034】
横アーチ部側の仕切融着部は、横アーチ部対応位置S1の前方及び後方において幅方向に亘って連続的に形成されている。また、踵部側の仕切融着部7は、踵部対応位置S2の周囲に亘って形成されている。
【0035】
前記横アーチ部側の仕切融着部7と溶着部6とによって、第一クッション部材4を格納する第一個別格納部8aが形成される。また前記踵部の仕切融着部7と溶着部6とによって、第二クッション部材5を格納する第二個別格納部8bが形成される。
【0036】
本実施例に係る第一クッション部材4は、厚さ3mm程度の連続気泡性のスポンジ部材としている。独立気泡性であることにより、当該第一クッション部材4の素材自体は通気性を有しないが、第一クッション部材4の表裏を貫通する貫通穴を有する。当該貫通穴は二つ形成してあり、当該貫通穴により表裏面に亘る通気路40が形成されることとなる。
【0037】
前記第一クッション部材4は、上記第一個別空間内における第二立体編織物層2と底面層との間に配置される。
【0038】
本実施例に係る第二クッション部材は、厚さ3mm程度の連続気泡性のスポンジ部材としている。第一クッション部材4と同様に、表裏を貫通する貫通穴を有する。当該貫通穴は二つ形成してあり、当該貫通穴により表裏面に亘る通気路50が形成される。
【0039】
前記第二クッション部材は、上記第二個別空間内における第二立体編織物層2と底面層との間に配置される。
【0040】
第一クッション部材4、第二クッション部材が保持された位置においては、靴中敷Sは当該第一クッション部材4、第二クッション部材5の厚みの分だけ厚手に形成されている。
【0041】
以上に示した本実施例に係る靴中敷Sは、第一の立体編織物層1と第二の立体編織物層2とが重合されていることから、歩行時、運動時等において、その上方から足裏が当接した場合において、当該第一の立体編織物層1の下面が第二の立体編織物層2の表層20を押圧することで、当該第二の立体編織物層2の表層20が一旦押圧力を受け止めることとなり、柔軟性と一定の接地感が得られる。次いで、第二の立体編織物層2の連結糸層22が変形することによって、更に柔軟性が発揮される。
また、底面層は下方への変形を緩和しつつ、靴中敷Sの強度を確保する。
【0042】
また、上記実施例においては、第一の立体編織物層1中の連結糸層12が高さ2mm程度、第二の立体編織物層2中の連結糸層22の高さが3mm程度としてある。この高さ寸法値は任意に設定変更することが可能である。
この数値設定によって、安定性、柔軟性の程度を調節することができる。また、各立体編物層1、2の連結糸層の密度、構成材料等を変更することによっても、安定性、柔軟性の程度を調節することが可能である。
【0043】
前記底面層は当該靴中敷Sの下面側で強度を確保するとともに、当該底面層の周囲が他の層とともに溶着部を備えていることで、その前端側を下方とする撓りに対して反発力を有する構成となっている。
このため、靴中敷S全体としては、下方へ撓り難い特性が付与されている。
【0044】
また、底面層、第二の立体編織物層2、第一の立体編織物層1はいずれも通気可能な構成であることから、全体としても通気可能な構成となっており、立体編織物の特性を損なうことなく、通気性が確保されている。また、第一クッション部材4、第二クッション部材5の位置においては、当該第一クッション部材4、第二クッション部材5に形成した通気路40、50によって、通気性が確保される。
【0045】
以上の構成によって、本実施例に係る靴中敷は、横アーチ部対応位置及び踵部対応位置において、柔軟性と安定性が確保されることで、優れた快適性を得ることが可能である。
【0046】
また他の実施例として、例えば、第一クッション部材4は、独立気泡性のスポンジ部材とすることができる。独立気泡性であることにより、当該第一クッション部材4の素材自体は通気性を有しないが、第一クッション部材4の表裏を貫通する貫通穴を有することで、表裏面に亘る通気路40が形成することができる。
【0047】
またこのように、第一クッション部材4を高い反発力を有する独立気泡性のスポンジ部材として横アーチ部対応位置S1に配置し、第二クッション部材5を低反発力を有する連続気泡のスポンジ部材として踵部に配置することで、踏み出し時には独立気泡性を有するスポンジ部材である第一クッション部材4によってより反発力を利用でき、着地時には踵部側への衝撃を連続気泡性を有するスポンジ部材である第二クッション部材によって吸収させることで、走者が速く走るための補助を行うことが可能である。
【0048】
次に、上記実施例に係る靴中敷Sの製造方法について以下に説明する。尚、本発明における靴中敷Sの製造方法は下記の実施例に示される靴中敷Sに限定されるものではない。本発明の靴中敷Sの製造方法は、本発明が開示する技術的思想の範囲内での方法の変更、設定の変更、公知手段の付加等が可能な範囲に及ぶ。
【0049】
上記実施例に係る靴中敷Sの製造方法は、図5及び図6に示すように、上型K2及び下型K1間に、第一の立体編織物層1、第二の立体編織物層2、底面層となるシート3、及び、第一クッション部材4、第二クッション部材5を挟持させ、高周波溶着により製造するものである。
【0050】
先ず、下型K1上に底面層となるシート3を載置する。
下型K1は、靴中敷Sの輪郭を抜き出すための下刃部K10と、該下刃部K10内における前記第一クッション部材4、第二クッション部材5の通気路50の位置に対応する位置に、位置決めピンPを立設した構成を有する。位置決めピンPの高さは、製造工程中において、上型K2の下面に接触しない程度となっている。
【0051】
前記位置決めピンPは、前記シート3の目を抜けて、更なる位置決め機能が確保されている。次に、当該位置決めピンPの位置に通気路40、50を位置決めして、前記第一クッション部材4及び第二クッション部材5を配置する。位置決めピンPは、各クッション部材を貫通してその上方へ突出する。
【0052】
次いで、第二の立体編織物層2を配置し、更にその上に第一の立体編織物層1を配置する。前記位置決めピンPは、第二の立体編織物層2を貫通し、第一の立体編織物層1に嵌り込んだ状態となる。
【0053】
上型K2は、下型K1の下刃部K10に対応する位置において下方へ突出する上刃部K20を備えている。この状態において、上型K2を下降させる。
上刃部K20と下刃部K10とを突き合わせた状態において高周波発生器によって高周波を付加し、その発生した熱により、靴中敷Sの周縁部を溶着するとともに、靴中敷Sを各立体編織物層1及び底面層のシート3から分離して成型品として得ることができる。
【0054】
尚、上記実施例においては、第一クッション部材4、第二クッション5部材を備え、第一クッション部材4を独立気泡性のスポンジ部材、第二クッション部材5を連続気泡性のスポンジ部材としたが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。例えば、双方を独立気泡性材料若しくは連続気泡性材料とすることも可能である。また、いずれかの箇所において他の箇所において第三のクッション部材を設けることも可能である。また第一クッション部材4、第二クッション部材5を設けないものとすることも可能である。
【0055】
また、上記実施例においては、一の個別格納部8(8a、8b)に一のクッション部材を設けるものとしたが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。例えば、一の個別格納部8(8a、8b)に複数のクッション部材を設けることも可能である。
【0056】
また上記実施例において、底面層は、芯鞘構造を有する合成樹脂製加工糸を平織したシート3(ポリプロピレンメッシュ)としたが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。底面層は、一定の強度を有し、所定の耐熱性、通気性を有するものであればよい。例えば、芯鞘構造を有するものであっても芯鞘構造を有しないものであってもよい。従来周知の塩化ビニリデン系繊維を用いることも可能であるし、その他、種々の合成樹脂製加工糸を用いることも可能である。
【0057】
また本実施例においては、底面層の強度と摩擦抵抗、更に前端側が下方へ撓み難い性能を利用することで、靴内での当該靴中敷Sのズレを防止することができる。このズレ防止に関しては、更に底面層に先行技術に開示したような滑り止めの層を設けることも可能である。
【0058】
また上記実施例においては、仕切融着部を連続的に形成したものとしているが、本発明は当該構成に限定されるものではなく、例えば、融着を一定間隔等として点線状とすること等も可能である。
【0059】
また上記実施例に係る靴中敷Sの製造方法においては、高周波溶着に代えて超音波溶着を利用することも可能である。
また第一クッション部材4、第二クッション部材5の位置決めとしても用いた前記位置決めピンPは、夫々のクッション部材4、5に対して2本ずつ用いているが、本数については限定するものではなく、自由に設定することができる。
【符号の説明】
【0060】
P 位置決めピン
S 靴中敷
S1 横アーチ部対応位置
S2 踵部対応位置
K1 下型
K10 下刃部
K2 上型
K20 上刃部
1 第一の立体編織物層
10 表層
10a メッシュ地
11 裏層
12 連結糸層
2 第二の立体編織物層
20 表層
21 裏層
22 連結糸層
3 シート(底面層)
4 第一クッション部材
40 通気路
5 第二クッション部材
6 溶着部
7 仕切融着部
8 個別格納部
8a 第一個別格納部
8b 第二個別格納部
図1
図2
図3
図4
図5
図6