【実施例】
【0026】
本発明の実施例に係る靴中敷Sは、
図1から
図4に示すように、上面側に配置される第一の立体編織物層1、その下に当接して配置される第二の立体編織物層2、その下に当接して配置される底面層3を備える。
【0027】
また、第二の立体編織物層2と底面層3との間であって、足裏の横アーチ部に対応する位置(横アーチ部対応位置S1)には第一クッション部材4が配置される。また同様に第二の立体編織物層2と底面層3との間であって、足裏の踵部に対応する位置(踵部対応位置S2)には第二クッション部材5が配置される。
【0028】
前記第一の立体編織物層1は、三層で構成される。具体的には表面側に粗目となるメッシュ編地層(表層)10、裏面側により細目となるメッシュ編地層(裏層)11、これらのメッシュ編地層10、11の間に架橋される第一連結繊維層(連結糸層)12からなる。
【0029】
前記第二の立体編織物層2は、三層で構成される。前記第一の立体編織物層における表面側のメッシュ編地層よりも粗目となる一対の編地層(表層)20、(裏層)21とその間に架橋される第二連結繊維層(連結糸層)22からなる。
【0030】
上記第一の立体編織物層1と第二の立体編織物層2とは通常状態において当接する。靴中敷Sの端部となる溶着部6・仕切融着部7となる位置は各層が固着されている。
当該位置を除いて、前記第一の立体編織物層1及び第二の立体編織物層2は相互に固着されておらず、靴中敷Sの撓み具合によって当該第一の立体編織物層1と第二の立体編織物層2は離間して空間を形成可能な状態にある。
【0031】
本実施例に係る底面層は、合成樹脂製加工糸を平織したシート3(ポリプロピレンメッシュ)としてある。前記合成樹脂製加工糸は、ポリプロピレンを主成分とする芯鞘構造を有したものとしている。
当該芯鞘構造は、ポリプロピレン系樹脂からなる芯材にポリプロピレン系樹脂からなる鞘材を捲着、溶融固化し、芯材と鞘材が高い親和性により一体化した構成を有するものとしている。
当該シート3は、平織によって1mm四方程度の格子状の目が縦横に連続的に配列形成された構成である。当該シート3は腰の強い安定した性質を有する。
【0032】
また、上記第二の立体編織物層2とその下のシート3(底面層)とは、クッション部材(第一クッション部材4、第二クッション部材5)が介在される部分を除き、通常状態において当接する。靴中敷Sの端部の溶着部6・仕切融着部7となる位置を除き、前記第二の立体編織物層2と底面層は相互に固着されず、靴中敷Sの撓み具合によって当該第二の立体編織物層2と底面層は離間して空間を形成可能な状態にある。
【0033】
上記第一の立体編織物層1、第二の立体編織物層2、底面層は、靴中敷Sの縁部となる全周囲に溶着部6が形成され、足裏の横アーチ部に対応する横アーチ部対応位置S1に沿う位置、及び、足裏の踵部に対応する踵部対応位置S2に沿う位置には、仕切融着部7が形成された構成である。
【0034】
横アーチ部側の仕切融着部は、横アーチ部対応位置S1の前方及び後方において幅方向に亘って連続的に形成されている。また、踵部側の仕切融着部7は、踵部対応位置S2の周囲に亘って形成されている。
【0035】
前記横アーチ部側の仕切融着部7と溶着部6とによって、第一クッション部材4を格納する第一個別格納部8aが形成される。また前記踵部の仕切融着部7と溶着部6とによって、第二クッション部材5を格納する第二個別格納部8bが形成される。
【0036】
本実施例に係る第一クッション部材4は、厚さ3mm程度の連続気泡性のスポンジ部材としている。独立気泡性であることにより、当該第一クッション部材4の素材自体は通気性を有しないが、第一クッション部材4の表裏を貫通する貫通穴を有する。当該貫通穴は二つ形成してあり、当該貫通穴により表裏面に亘る通気路40が形成されることとなる。
【0037】
前記第一クッション部材4は、上記第一個別空間内における第二立体編織物層2と底面層との間に配置される。
【0038】
本実施例に係る第二クッション部材は、厚さ3mm程度の連続気泡性のスポンジ部材としている。第一クッション部材4と同様に、表裏を貫通する貫通穴を有する。当該貫通穴は二つ形成してあり、当該貫通穴により表裏面に亘る通気路50が形成される。
【0039】
前記第二クッション部材は、上記第二個別空間内における第二立体編織物層2と底面層との間に配置される。
【0040】
第一クッション部材4、第二クッション部材が保持された位置においては、靴中敷Sは当該第一クッション部材4、第二クッション部材5の厚みの分だけ厚手に形成されている。
【0041】
以上に示した本実施例に係る靴中敷Sは、第一の立体編織物層1と第二の立体編織物層2とが重合されていることから、歩行時、運動時等において、その上方から足裏が当接した場合において、当該第一の立体編織物層1の下面が第二の立体編織物層2の表層20を押圧することで、当該第二の立体編織物層2の表層20が一旦押圧力を受け止めることとなり、柔軟性と一定の接地感が得られる。次いで、第二の立体編織物層2の連結糸層22が変形することによって、更に柔軟性が発揮される。
また、底面層は下方への変形を緩和しつつ、靴中敷Sの強度を確保する。
【0042】
また、上記実施例においては、第一の立体編織物層1中の連結糸層12が高さ2mm程度、第二の
立体編織物層2中の連結糸層22の高さが3mm程度としてある。この高さ寸法値は任意に設定変更することが可能である。
この数値設定によって、安定性、柔軟性の程度を調節することができる。また、各立体編物層1、2の連結糸層の密度、構成材料等を変更することによっても、安定性、柔軟性の程度を調節することが可能である。
【0043】
前記底面層は当該靴中敷Sの下面側で強度を確保するとともに、当該底面層の周囲が他の層とともに溶着部を備えていることで、その前端側を下方とする撓りに対して反発力を有する構成となっている。
このため、靴中敷S全体としては、下方へ撓り難い特性が付与されている。
【0044】
また、底面層、第二の立体編織物層2、第一の立体編織物層1はいずれも通気可能な構成であることから、全体としても通気可能な構成となっており、立体編織物の特性を損なうことなく、通気性が確保されている。また、第一クッション部材4、第二クッション部材5の位置においては、当該第一クッション部材4、第二クッション部材5に形成した通気路40、50によって、通気性が確保される。
【0045】
以上の構成によって、本実施例に係る靴中敷は、横アーチ部対応位置及び踵部対応位置において、柔軟性と安定性が確保されることで、優れた快適性を得ることが可能である。
【0046】
また他の実施例として、例えば、第一クッション部材4は、独立気泡性のスポンジ部材とすることができる。独立気泡性であることにより、当該第一クッション部材4の素材自体は通気性を有しないが、第一クッション部材4の表裏を貫通する貫通穴を有することで、表裏面に亘る通気路40が形成することができる。
【0047】
またこのように、第一クッション部材4を高い反発力を有する独立気泡性のスポンジ部材として横アーチ部対応位置S1に配置し、第二クッション部材5を低反発力を有する連続気泡のスポンジ部材として踵部に配置することで、踏み出し時には独立気泡性を有するスポンジ部材である第一クッション部材4によってより反発力を利用でき、着地時には踵部側への衝撃を連続気泡性を有するスポンジ部材である第二クッション部材によって吸収させることで、走者が速く走るための補助を行うことが可能である。
【0048】
次に、上記実施例に係る靴中敷Sの製造方法について以下に説明する。尚、本発明における靴中敷Sの製造方法は下記の実施例に示される靴中敷Sに限定されるものではない。本発明の靴中敷Sの製造方法は、本発明が開示する技術的思想の範囲内での方法の変更、設定の変更、公知手段の付加等が可能な範囲に及ぶ。
【0049】
上記実施例に係る靴中敷Sの製造方法は、
図5及び
図6に示すように、上型K2及び下型K1間に、第一の立体編織物層1、第二の立体編織物層2、底面層となるシート3、及び、第一クッション部材4、第二クッション部材5を挟持させ、高周波溶着により製造するものである。
【0050】
先ず、下型K1上に底面層となるシート3を載置する。
下型K1は、靴中敷Sの輪郭を抜き出すための下刃部K10と、該下刃部K10内における前記第一クッション部材4、第二クッション部材5の通気路50の位置に対応する位置に、位置決めピンPを立設した構成を有する。位置決めピンPの高さは、製造工程中において、上型K2の下面に接触しない程度となっている。
【0051】
前記位置決めピンPは、前記シート3の目を抜けて、更なる位置決め機能が確保されている。次に、当該位置決めピンPの位置に通気路40、50を位置決めして、前記第一クッション部材4及び第二クッション部材5を配置する。位置決めピンPは、各クッション部材を貫通してその上方へ突出する。
【0052】
次いで、第二の立体編織物層2を配置し、更にその上に第一の立体編織物層1を配置する。前記位置決めピンPは、第二の立体編織物層2を貫通し、第一の立体編織物層1に嵌り込んだ状態となる。
【0053】
上型K2は、下型K1の下刃部K10に対応する位置において下方へ突出する上刃部K20を備えている。この状態において、上型K2を下降させる。
上刃部K20と下刃部K10とを突き合わせた状態において高周波発生器によって高周波を付加し、その発生した熱により、靴中敷Sの周縁部を溶着するとともに、靴中敷Sを各立体編織物層1及び底面層のシート3から分離して成型品として得ることができる。
【0054】
尚、上記実施例においては、第一クッション部材4、第二クッション5部材を備え、第一クッション部材4を独立気泡性のスポンジ部材、第二クッション部材5を連続気泡性のスポンジ部材としたが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。例えば、双方を独立気泡性材料若しくは連続気泡性材料とすることも可能である。また、いずれかの箇所において他の箇所において第三のクッション部材を設けることも可能である。また第一クッション部材4、第二クッション部材5を設けないものとすることも可能である。
【0055】
また、上記実施例においては、一の個別格納部8(8a、8b)に一のクッション部材を設けるものとしたが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。例えば、一の個別格納部8(8a、8b)に複数のクッション部材を設けることも可能である。
【0056】
また上記実施例において、底面層は、芯鞘構造を有する合成樹脂製加工糸を平織したシート3(ポリプロピレンメッシュ)としたが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。底面層は、一定の強度を有し、所定の耐熱性、通気性を有するものであればよい。例えば、芯鞘構造を有するものであっても芯鞘構造を有しないものであってもよい。従来周知の塩化ビニリデン系繊維を用いることも可能であるし、その他、種々の合成樹脂製加工糸を用いることも可能である。
【0057】
また本実施例においては、底面層の強度と摩擦抵抗、更に前端側が下方へ撓み難い性能を利用することで、靴内での当該靴中敷Sのズレを防止することができる。このズレ防止に関しては、更に底面層に先行技術に開示したような滑り止めの層を設けることも可能である。
【0058】
また上記実施例においては、仕切融着部を連続的に形成したものとしているが、本発明は当該構成に限定されるものではなく、例えば、融着を一定間隔等として点線状とすること等も可能である。
【0059】
また上記実施例に係る靴中敷Sの製造方法においては、高周波溶着に代えて超音波溶着を利用することも可能である。
また第一クッション部材4、第二クッション部材5の位置決めとしても用いた前記位置決めピンPは、夫々のクッション部材4、5に対して2本ずつ用いているが、本数については限定するものではなく、自由に設定することができる。