特許第6951907号(P6951907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6951907水処理方法、水処理システム、脱窒剤の製造方法及び脱窒剤の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6951907
(24)【登録日】2021年9月29日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】水処理方法、水処理システム、脱窒剤の製造方法及び脱窒剤の製造装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/34 20060101AFI20211011BHJP
   B01D 17/05 20060101ALI20211011BHJP
   C10L 1/02 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
   C02F3/34 101A
   C02F3/34 101B
   B01D17/05 501A
   B01D17/05 501H
   C10L1/02
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-159884(P2017-159884)
(22)【出願日】2017年8月23日
(65)【公開番号】特開2019-37916(P2019-37916A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】510238627
【氏名又は名称】バイオ燃料技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595011238
【氏名又は名称】クボタ環境サ−ビス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】梶間 央士
(72)【発明者】
【氏名】安部 剛
(72)【発明者】
【氏名】橘 峰生
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−202549(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01754687(EP,A2)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0050135(KR,A)
【文献】 特開2008−111098(JP,A)
【文献】 向吉郁朗 他,廃グリセリンを用いた脱窒処理,鹿児島県工業技術センター研究報告,日本,鹿児島県工業技術センター,2011年01月17日,第23号,23−27頁
【文献】 向吉郁朗,廃グリセリンを用いた脱窒処理,平成22年度鹿児島県工業技術センター研究発表会予稿集,日本,鹿児島県工業技術センター,2010年07月15日,24−25頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00− 3/34
B01D 17/05
C10L 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機炭素源を添加して生物学的硝化脱窒処理を行なう水処理方法であって、
油脂を原料とする脂肪酸アルキルエステルの一次製造工程で副生される粗製グリセリン廃液から脂肪酸が含まれる油層を分離してグリセリンが含まれる水層を取り出す油層分離工程と、
前記油層分離工程で取り出された前記水層から1価のアルコールを分離するアルコール分離工程と、
前記アルコール分離工程で1価のアルコールが分離された水層を前記生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として添加する脱窒処理工程と、
を含み、
前記油層分離工程で分離された油層と前記アルコール分離工程で分離された1価のアルコールとからアルカリ触媒法を除く酸触媒法、酸アルカリ触媒法、生体触媒法、イオン交換樹脂法、超臨界法、亜臨界法、固体触媒法の何れかの方法を用いて脂肪酸アルキルエステルを製造する脂肪酸アルキルエステルの二次製造工程を備え、前記二次製造工程で副生される粗製グリセリン廃液が前記油層分離工程に供給されるように構成されている、水処理方法。
【請求項2】
有機炭素源を添加して生物学的硝化脱窒処理を行なう水処理方法であって、
油脂を原料とする脂肪酸アルキルエステルの一次製造工程で副生される粗製グリセリン廃液から脂肪酸が含まれる油層を分離してグリセリンが含まれる水層を取り出す油層分離工程と、
前記油層分離工程で取り出された前記水層から1価のアルコールを分離するアルコール分離工程と、
前記アルコール分離工程で1価のアルコールが分離された水層を前記生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として添加する脱窒処理工程と、
を含み、
前記油層分離工程の前段に、前記粗製グリセリン廃液を中和する中和処理工程を備え、
前記油層分離工程で分離された油層と前記アルコール分離工程で分離された1価のアルコールとから酸触媒法を用いて脂肪酸アルキルエステルを製造する脂肪酸アルキルエステルの二次製造工程を備え、
前記二次製造工程で副生される粗製グリセリン廃液が中和処理工程に供給されるように構成されている、水処理方法。
【請求項3】
従属栄養性の微生物を用いた生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として用いられる所定濃度のメタノールとCOD指標が同等の値となるように、前記アルコール分離工程で1価のアルコールが分離された水層を希釈する希釈工程をさらに含む、請求項1または2に記載の水処理方法。
【請求項4】
油脂を原料とする脂肪酸アルキルエステルの燃料製造装置を備え、前記燃料製造装置で副生される粗製グリセリン廃液の処理を含む水処理システムであって、
前記燃料製造装置で副生された粗製グリセリン廃液から脂肪酸が含まれる油層を分離してグリセリンが含まれる水層を取り出す油層分離装置と、
前記油層分離装置で取り出された前記水層から1価のアルコールを分離するアルコール分離装置と、
前記アルコール分離装置で1価のアルコールが分離された前記水層を、従属栄養性の微生物を用いた生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として添加する脱窒処理装置と、
を含み、
前記油層分離装置で分離された油層と前記アルコール分離装置で分離された1価のアルコールとからアルカリ触媒法を除く酸触媒法、酸アルカリ触媒法、生体触媒法、イオン交換樹脂法、超臨界法、亜臨界法、固体触媒法の何れかの方法を用いてバイオディーゼル燃料を製造するバイオディーゼル燃料の二次製造装置を備え、前記二次製造装置で副生される粗製グリセリン廃液が前記油層分離装置に供給されるグリセリン廃液供給経路を備えて構成されている、水処理システム。
【請求項5】
油脂を原料とする脂肪酸アルキルエステルの燃料製造装置を備え、前記燃料製造装置で副生される粗製グリセリン廃液の処理を含む水処理システムであって、
前記燃料製造装置で副生された粗製グリセリン廃液から脂肪酸が含まれる油層を分離してグリセリンが含まれる水層を取り出す油層分離装置と、
前記油層分離装置で取り出された前記水層から1価のアルコールを分離するアルコール分離装置と、
前記アルコール分離装置で1価のアルコールが分離された前記水層を、従属栄養性の微生物を用いた生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として添加する脱窒処理装置と、
を含み、
前記油層分離装置の前段に、前記粗製グリセリン廃液を中和する中和処理装置を備え、
前記油層分離装置で分離された油層と前記アルコール分離装置で分離された1価のアルコールとから酸触媒法を用いて脂肪酸アルキルエステルを製造する脂肪酸アルキルエステルの二次製造装置を備え、
前記二次製造装置で副生される粗製グリセリン廃液が中和処理装置に供給されるグリセリン廃液供給経路を備えて構成されている、水処理システム。
【請求項6】
前記生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として用いられる所定濃度のメタノールとCOD指標が同等の値となるように、前記アルコール分離装置で1価のアルコールが分離された水層を希釈する希釈装置を備えている、請求項4または5に記載の水処理システム。
【請求項7】
脂肪酸等の不純物を含む粗製グリセリン廃液から生成される脱窒剤の製造方法であって、
油脂を原料とする脂肪酸アルキルエステルの一次製造工程で副生される粗製グリセリン廃液から脂肪酸が含まれる油層を分離してグリセリンが含まれる水層を取り出す油層分離工程と、
前記油層分離工程で取り出された水層から1価のアルコールを分離してグリセリンが含まれる水層を、従属栄養性の微生物を用いた生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として取り出すアルコール分離工程と、
を含み、
前記油層分離工程で分離された油層と前記アルコール分離工程で分離された1価のアルコールとからアルカリ触媒法を除く酸触媒法、酸アルカリ触媒法、生体触媒法、イオン交換樹脂法、超臨界法、亜臨界法、固体触媒法の何れかの方法を用いて脂肪酸アルキルエステルを製造する脂肪酸アルキルエステルの二次製造工程を備え、前記二次製造工程で副生される粗製グリセリン廃液が前記油層分離工程に供給されるように構成されている、脱窒剤の製造方法。
【請求項8】
脂肪酸等の不純物を含む粗製グリセリン廃液から生成される脱窒剤の製造方法であって、
油脂を原料とする脂肪酸アルキルエステルの一次製造工程で副生される粗製グリセリン廃液から脂肪酸が含まれる油層を分離してグリセリンが含まれる水層を取り出す油層分離工程と、
前記油層分離工程で取り出された水層から1価のアルコールを分離してグリセリンが含まれる水層を、従属栄養性の微生物を用いた生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として取り出すアルコール分離工程と、
を含み、
前記油層分離工程の前段に、前記粗製グリセリン廃液を中和する中和処理工程を備え、
前記油層分離工程で分離された油層と前記アルコール分離工程で分離された1価のアルコールとから酸触媒法を用いて脂肪酸アルキルエステルを製造する脂肪酸アルキルエステルの二次製造工程を備え、
前記二次製造工程で副生される粗製グリセリン廃液が中和処理工程に供給されるように構成されている、脱窒剤の製造方法。
【請求項9】
前記生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として用いられる所定濃度のメタノールとCOD指標が同等の値となるように、前記アルコール分離工程で1価のアルコールが分離された水層を希釈する希釈工程をさらに含む、請求項7または8に記載の脱窒剤の製造方法。
【請求項10】
脂肪酸等の不純物を含む粗製グリセリン廃液から生成される脱窒剤の製造装置であって、
油脂を原料とする脂肪酸アルキルエステルの一次製造装置で副生される粗製グリセリン廃液から脂肪酸が含まれる油層を分離してグリセリンが含まれる水層を取り出す油層分離装置と、
前記油層分離装置で取り出された水層から1価のアルコールを分離してグリセリンが含まれる水層を、従属栄養性の微生物を用いた生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として取り出すアルコール分離装置と、
を含み、
前記油層分離装置で分離された油層と前記アルコール分離装置で分離された1価のアルコールとからアルカリ触媒法を除く酸触媒法、酸アルカリ触媒法、生体触媒法、イオン交換樹脂法、超臨界法、亜臨界法、固体触媒法の何れかの方法を用いて脂肪酸アルキルエステルを製造する脂肪酸アルキルエステルの二次製造装置を備え、前記二次製造装置で副生される粗製グリセリン廃液が前記油層分離装置に供給されるグリセリン廃液供給経路を備えて構成されている、脱窒剤の製造装置。
【請求項11】
脂肪酸等の不純物を含む粗製グリセリン廃液から生成される脱窒剤の製造装置であって、
油脂を原料とする脂肪酸アルキルエステルの一次製造装置で副生される粗製グリセリン廃液から脂肪酸が含まれる油層を分離してグリセリンが含まれる水層を取り出す油層分離装置と、
前記油層分離装置で取り出された水層から1価のアルコールを分離してグリセリンが含まれる水層を、従属栄養性の微生物を用いた生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として取り出すアルコール分離装置と、
を含み、
前記油層分離装置の前段に、前記粗製グリセリン廃液を中和する中和処理装置を備え、
前記油層分離装置で分離された油層と前記アルコール分離装置で分離された1価のアルコールとから酸触媒法を用いて脂肪酸アルキルエステルを製造する脂肪酸アルキルエステルの二次製造装置を備え、
前記二次製造装置で副生される粗製グリセリン廃液が中和処理装置に供給されるグリセリン廃液供給経路を備えて構成されている、脱窒剤の製造装置。
【請求項12】
前記生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として用いられる所定濃度のメタノールとCOD指標が同等の値となるように、前記アルコール分離装置で1価のアルコールが分離された水層を希釈する希釈装置をさらに含む、請求項10または11に記載の脱窒剤の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機炭素源を添加して生物学的硝化脱窒処理を行なう水処理方法、水処理システム、脱窒剤の製造方法及び脱窒剤の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原料となる廃食用油に1価のアルコール例えばメタノールとアルカリ触媒を添加し、エステル交換反応を促してバイオディーゼル燃料となる脂肪酸アルキルエステルを製造する方法は、カーボンニュートラルな軽油代替燃料を得る方法として注目されている。
【0003】
特許文献1には、バイオディーゼル燃料の製造過程で副生される処理が困難な粗製グリセリン廃液を安価に後処理でき、しかも大量に再利用可能な粗製グリセリン廃液を用いた水処理方法が開示されている。
【0004】
脱窒処理に有機炭素源を使用する硝化脱窒法を用いる水処理方法であって、粗製グリセリン廃液から脂肪酸が含まれる油層を分離してグリセリンが含まれる水層を取り出す分離工程と、分離工程で取り出された水層を、従属栄養性の微生物を用いた生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として添加する脱窒処理工程と、を含む水処理方法である。
【0005】
当該水処理方法によれば、脱窒処理工程で有機炭素源として大量のメタノールを添加することによる薬品コストの高騰が解消されるばかりか、化石燃料由来のメタノールを用いる必要が無くなるため、温室効果ガスの排出量を抑制することにもつながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−202549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載された水処理方法を採用する場合、分離工程で取り出された水層に、主成分となるグリセリン以外に様々な塩やエステル交換反応に寄与しなかったメタノールなどが含まれるため、以下の新たな課題が発生している。
【0008】
温室効果ガスの排出量を抑制するという観点で、化石燃料由来のメタノールが含まれる水層をそのままの状態で脱窒剤として用いるのは、温室効果ガス抑制という観点で好ましくない。
【0009】
また、一定量のメタノールが含まれているために消防法上の第4類引火性液体の指定可燃物に分類され、指定数量以上に貯留する場合、従来の水処理方法で非危険物の脱窒剤として用いられていた50%メタノールの貯留槽がそのまま利用できないという問題もあった。メタノールを用いたエステル交換反応に限らず、エタノールやプロパノールなどの1価のアルコールを用いたエステル交換反応により製造される脂肪酸アルキルエステルの製造方法でも同様の問題が生じる。
【0010】
指定可燃物には2m以上の可燃性液体類が含まれる。可燃性液体類とは、1気圧において引火点が40℃以上70℃未満の液体で、可燃性液体量が40%以下であって燃焼点が60℃以上のものなどをいう。
【0011】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、温室効果ガスの排出量を抑制するとともに既存設備をそのまま用いることが可能な水処理方法、水処理システム、脱窒剤の製造方法及び脱窒剤の製造装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明による水処理方法の第一の特徴構成は、有機炭素源を添加して生物学的硝化脱窒処理を行なう水処理方法であって、油脂を原料とする脂肪酸アルキルエステルの一次製造工程で副生される粗製グリセリン廃液から脂肪酸が含まれる油層を分離してグリセリンが含まれる水層を取り出す油層分離工程と、前記油層分離工程で取り出された前記水層から1価のアルコールを分離するアルコール分離工程と、前記アルコール分離工程で1価のアルコールが分離された水層を前記生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として添加する脱窒処理工程と、を含み、前記油層分離工程で分離された油層と前記アルコール分離工程で分離された1価のアルコールとからアルカリ触媒法を除く酸触媒法、酸アルカリ触媒法、生体触媒法、イオン交換樹脂法、超臨界法、亜臨界法、固体触媒法の何れかの方法を用いて脂肪酸アルキルエステルを製造する脂肪酸アルキルエステルの二次製造工程を備え、前記二次製造工程で副生される粗製グリセリン廃液が前記油層分離工程に供給されるように構成されている、点にある。
【0013】
粗製グリセリン廃液から脂肪酸が含まれる油層を分離してグリセリンが含まれる水層が油層分離工程によって取り出され、当該水層に含まれる1価のアルコールがアルコール分離工程で分離される。従来脱窒剤として用いられていた50%メタノールに代えて、当該グリセリンや塩等から引火性が強い1価のアルコールを分離することにより、引火点が検出されなくなった非危険物としての水層が、従属栄養性の微生物を用いた生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として添加される。その結果、温室効果ガスの排出量を抑制するとともに、既存設備を用いて法的規制を満たした状態で当該水層を貯留することが可能になる。なお、油層分離工程として、例えばアルカリ触媒法を用いる場合には、酸による中和処理の後に静置法、遠心分離法、膜分離法などによって油層と水層を分離することが例示でき、アルコール分離工程として、蒸留法、膜分離法、イオン交換法などが例示できる。
【0014】
油層分離工程で分離された油層には、遊離脂肪酸などの酸価値の高い油脂が多く含まれ、またアルコール分離工程で分離された1価のアルコールの純度もさほど高くはないので、何れもそのままの状態でアルカリ触媒法を用いてバイオディーゼル燃料となる脂肪酸アルキルエステルを製造するために再利用するのは困難である。しかし、そのような酸価値の高い油脂や純度の低い1価のアルコールであっても、アルカリ触媒法以外の方法を用いた二次製造工程を採用すれば、バイオディーゼル燃料となる脂肪酸アルキルエステルとして効率的に再資源化することが可能となり、そのときに副生される粗製グリセリン廃液が油層分離工程に供給されて、油層が分離された後に生物学的硝化脱窒処理のための有機炭素源として活用できるようになる。そのような二次製造工程に、酸触媒法、酸アルカリ触媒法、生体触媒法、イオン交換樹脂法、超臨界法、亜臨界法、固体触媒法の何れかの方法を採用することができる。
【0015】
同第二の特徴構成は、有機炭素源を添加して生物学的硝化脱窒処理を行なう水処理方法であって、油脂を原料とする脂肪酸アルキルエステルの一次製造工程で副生される粗製グリセリン廃液から脂肪酸が含まれる油層を分離してグリセリンが含まれる水層を取り出す油層分離工程と、前記油層分離工程で取り出された前記水層から1価のアルコールを分離するアルコール分離工程と、前記アルコール分離工程で1価のアルコールが分離された水層を前記生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として添加する脱窒処理工程と、を含み、前記油層分離工程の前段に、前記粗製グリセリン廃液を中和する中和処理工程を備え、前記油層分離工程で分離された油層と前記アルコール分離工程で分離された1価のアルコールとから酸触媒法を用いて脂肪酸アルキルエステルを製造する脂肪酸アルキルエステルの二次製造工程を備え、前記二次製造工程で副生される粗製グリセリン廃液が中和処理工程に供給されるように構成されている、点にある。
【0016】
一次製造工程でアルカリ触媒法等を用いる場合には、油層分離工程の前段に、粗製グリセリン廃液を中和する中和処理工程を実行する必要がある。そのような場合に、脂肪酸アルキルエステルを製造する二次製造工程に酸触媒法を用いると、二次製造工程で副生される酸性の粗製グリセリン廃液を中和処理工程に必要な中和剤として利用できるので、中和処理工程で投入される塩酸等の中和剤の使用量を低減できる。
【0017】
同第の特徴構成は、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、従属栄養性の微生物を用いた生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として用いられる所定濃度のメタノールとCOD指標が同等の値となるように、前記アルコール分離工程で1価のアルコールが分離された水層を希釈する希釈工程をさらに含む点にある。
【0018】
希釈工程を実行することによって、従来有機炭素源として用いられていた所定濃度、例えば50%濃度のメタノールと同等の脱窒性能を発揮する脱窒剤として1価のアルコールが分離された水層を効果的に利用できるようになる。
【0019】
本発明による水処理システムの第一の特徴構成は、油脂を原料とする脂肪酸アルキルエステルの燃料製造装置を備え、前記燃料製造装置で副生される粗製グリセリン廃液の処理を含む水処理システムであって、前記燃料製造装置で副生された粗製グリセリン廃液から脂肪酸が含まれる油層を分離してグリセリンが含まれる水層を取り出す油層分離装置と、前記油層分離装置で取り出された前記水層から1価のアルコールを分離するアルコール分離装置と、前記アルコール分離装置で1価のアルコールが分離された前記水層を、従属栄養性の微生物を用いた生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として添加する脱窒処理装置と、を含み、前記油層分離装置で分離された油層と前記アルコール分離装置で分離された1価のアルコールとからアルカリ触媒法を除く酸触媒法、酸アルカリ触媒法、生体触媒法、イオン交換樹脂法、超臨界法、亜臨界法、固体触媒法の何れかの方法を用いてバイオディーゼル燃料を製造するバイオディーゼル燃料の二次製造装置を備え、前記二次製造装置で副生される粗製グリセリン廃液が前記油層分離装置に供給されるグリセリン廃液供給経路を備えて構成されている点にある。
【0020】
同第二の特徴構成は、油脂を原料とする脂肪酸アルキルエステルの燃料製造装置を備え、前記燃料製造装置で副生される粗製グリセリン廃液の処理を含む水処理システムであって、前記燃料製造装置で副生された粗製グリセリン廃液から脂肪酸が含まれる油層を分離してグリセリンが含まれる水層を取り出す油層分離装置と、前記油層分離装置で取り出された前記水層から1価のアルコールを分離するアルコール分離装置と、前記アルコール分離装置で1価のアルコールが分離された前記水層を、従属栄養性の微生物を用いた生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として添加する脱窒処理装置と、を含み、前記油層分離装置の前段に、前記粗製グリセリン廃液を中和する中和処理装置を備え、前記油層分離装置で分離された油層と前記アルコール分離装置で分離された1価のアルコールとから酸触媒法を用いて脂肪酸アルキルエステルを製造する脂肪酸アルキルエステルの二次製造装置を備え、前記二次製造装置で副生される粗製グリセリン廃液が中和処理装置に供給されるグリセリン廃液供給経路を備えて構成されている点にある。
【0021】
同第の特徴構成は、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として用いられる所定濃度のメタノールとCOD指標が同等の値となるように、前記メタノール分離装置でメタノールが分離された水層を希釈する希釈装置を備えている点にある。
【0022】
本発明による脱窒剤の製造方法の第一の特徴構成は、脂肪酸等の不純物を含む粗製グリセリン廃液から生成される脱窒剤の製造方法であって、油脂を原料とする脂肪酸アルキルエステルの一次製造工程で副生される粗製グリセリン廃液から脂肪酸が含まれる油層を分離してグリセリンが含まれる水層を取り出す油層分離工程と、前記油層分離工程で取り出された水層から1価のアルコールを分離してグリセリンが含まれる水層を、従属栄養性の微生物を用いた生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として取り出すアルコール分離工程と、を含み、前記油層分離工程で分離された油層と前記アルコール分離工程で分離された1価のアルコールとからアルカリ触媒法を除く酸触媒法、酸アルカリ触媒法、生体触媒法、イオン交換樹脂法、超臨界法、亜臨界法、固体触媒法の何れかの方法を用いて脂肪酸アルキルエステルを製造する脂肪酸アルキルエステルの二次製造工程を備え、前記二次製造工程で副生される粗製グリセリン廃液が前記油層分離工程に供給されるように構成されている点にある。
【0023】
同第二の特徴構成は、脂肪酸等の不純物を含む粗製グリセリン廃液から生成される脱窒剤の製造方法であって、油脂を原料とする脂肪酸アルキルエステルの一次製造工程で副生される粗製グリセリン廃液から脂肪酸が含まれる油層を分離してグリセリンが含まれる水層を取り出す油層分離工程と、前記油層分離工程で取り出された水層から1価のアルコールを分離してグリセリンが含まれる水層を、従属栄養性の微生物を用いた生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として取り出すアルコール分離工程と、を含み、前記油層分離工程の前段に、前記粗製グリセリン廃液を中和する中和処理工程を備え、前記油層分離工程で分離された油層と前記アルコール分離工程で分離された1価のアルコールとから酸触媒法を用いて脂肪酸アルキルエステルを製造する脂肪酸アルキルエステルの二次製造工程を備え、前記二次製造工程で副生される粗製グリセリン廃液が中和処理工程に供給されるように構成されている点にある。
【0024】
一次製造工程でアルカリ触媒法等を用いる場合には、油層分離装置の前段に、粗製グリセリン廃液を中和する中和処理装置を備える必要がある。そのような場合に、脂肪酸アルキルエステルを製造する二次製造装置に酸触媒法を用いると、二次製造装置で副生される酸性の粗製グリセリン廃液を中和処理装置に必要な中和剤として利用できるので、中和処理装置で投入される塩酸等の中和剤の使用量を低減できる。
【0025】
同第の特徴構成は、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として用いられる所定濃度のメタノールとCOD指標が同等の値となるように、前記アルコール分離装置で1価のアルコールが分離された水層を希釈する希釈装置を備えている点にある。
【0026】
本発明による脱窒剤の製造装置の第一の特徴構成は、脂肪酸等の不純物を含む粗製グリセリン廃液から生成される脱窒剤の製造装置であって、油脂を原料とする脂肪酸アルキルエステルの一次製造装置で副生される粗製グリセリン廃液から脂肪酸が含まれる油層を分離してグリセリンが含まれる水層を取り出す油層分離装置と、前記油層分離装置で取り出された水層から1価のアルコールを分離してグリセリンが含まれる水層を、従属栄養性の微生物を用いた生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として取り出すアルコール分離装置と、を含み、前記油層分離装置で分離された油層と前記アルコール分離装置で分離された1価のアルコールとからアルカリ触媒法を除く酸触媒法、酸アルカリ触媒法、生体触媒法、イオン交換樹脂法、超臨界法、亜臨界法、固体触媒法の何れかの方法を用いて脂肪酸アルキルエステルを製造する脂肪酸アルキルエステルの二次製造装置を備え、前記二次製造装置で副生される粗製グリセリン廃液が前記油層分離装置に供給されるグリセリン廃液供給経路を備えて構成されている点にある。
【0027】
同第二の特徴構成は、脂肪酸等の不純物を含む粗製グリセリン廃液から生成される脱窒剤の製造装置であって、油脂を原料とする脂肪酸アルキルエステルの一次製造装置で副生される粗製グリセリン廃液から脂肪酸が含まれる油層を分離してグリセリンが含まれる水層を取り出す油層分離装置と、前記油層分離装置で取り出された水層から1価のアルコールを分離してグリセリンが含まれる水層を、従属栄養性の微生物を用いた生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として取り出すアルコール分離装置と、を含み、前記油層分離装置の前段に、前記粗製グリセリン廃液を中和する中和処理装置を備え、前記油層分離装置で分離された油層と前記アルコール分離装置で分離された1価のアルコールとから酸触媒法を用いて脂肪酸アルキルエステルを製造する脂肪酸アルキルエステルの二次製造装置を備え、前記二次製造装置で副生される粗製グリセリン廃液が中和処理装置に供給されるグリセリン廃液供給経路を備えて構成されている点にある。
【0028】
同第の特徴構成は、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として用いられる所定濃度のメタノールとCOD指標が同等の値となるように、前記アルコール分離装置で1価のアルコールが分離された水層を希釈する希釈装置をさらに含む点にある。
【発明の効果】
【0029】
以上説明した通り、本発明によれば、温室効果ガスの排出量を抑制するとともに既存設備をそのまま用いることが可能な水処理方法、水処理システム、脱窒剤の製造方法及び脱窒剤の製造装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】バイオディーゼル燃料となる脂肪酸アルキルエステルの製法の説明図
図2】本発明による脱窒剤の製造方法の説明図
図3】生物学的硝化脱窒処理の説明図
図4】水処理システム及び脱窒剤の製造装置の説明図
図5】アルコール分離装置の説明図
図6】1価のアルコール混入グリセリン液の引火点の特性図
図7】別実施形態を示す脱窒剤の製造方法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明による水処理方法、水処理システム、脱窒剤の製造方法及び脱窒剤の製造装置の実施形態を説明する。
【0032】
図1に示すように、バイオディーゼル燃料となる脂肪酸アルキルエステルの製造工程は、反応槽に原料となる植物油のような油脂(原料油脂)と、メタノール等の1価のアルコールと、アルカリ触媒としての水酸化ナトリウムを加えてエステル交換反応を起こすエステル交換反応工程と、エステル交換反応により得られる脂肪酸アルキルエステルから粗製グリセリン廃液を分離する分離工程と、得られた脂肪酸アルキルエステルを温水洗浄する洗浄工程を備えて構成され、洗浄工程を経てバイオディーゼル燃料が得られる。なお、図1中には、括弧書きで一次製造工程及び一次分離工程と表記しているが、後述する脂肪酸アルキルエステルの二次製造工程との識別を容易にするための表記である。
【0033】
植物油は、粘度が高いなどの特徴を有しており、そのままディーゼル自動車用の燃料として使用した場合、燃料ポンプに析出物が付着してエンジンに不具合が発生する虞がある。そのため、原料油脂に対してアルキルエステル化などの化学処理を施した後にグリセリンを取り除くことによってバイオディーゼル燃料として利用可能な脂肪酸アルキルエステルに変換される。
【0034】
尚、バイオディーゼル燃料の原料油脂としては、菜種油、パーム油、オリーブ油、ひまわり油、大豆油、コメ油、大麻油等の植物油の他に、魚油や豚脂、牛豚等の獣脂及び食用廃油(いわゆる天ぷら油等)等が例示できる。また、1価のアルコールとしてメタノール以外にエタノールやプロパノールなどが例示できる。
【0035】
ところで、上述のバイオディーゼル燃料の製造工程では、製品となる脂肪酸アルキルエステルとともに、原料油脂の15〜30(理論値は10)%程度のアルカリの粗製グリセリンが副生される。
【0036】
副生された粗製グリセリンは、高濃度であるが、1価のアルコール、水分、水溶性夾雑物、触媒及び未変換の脂肪酸等の不純物を含むので、医薬品、化粧品、石鹸等の原料として用いる場合には、これを精製しなければならず、多大なコストを要するため、グリセリンとしての利用価値は殆ど無く、従来は処理困難物となっていた。
【0037】
しかし、し尿処理場等の生物脱窒工程を有する水処理施設では、脱窒剤として支障なく利用することができる。そこで、植物油を原料とする脂肪酸アルキルエステルの製造工程で副生される粗製グリセリン廃液を処理して、脱窒剤として利用するのである。
【0038】
以下に、1価のアルコールとしてメタノールを用いて脂肪酸メチルエステルを製造する場合を例に、本発明による脂肪酸等の不純物を含むアルカリ性の粗製グリセリン廃液から脱窒剤を製造する方法及び脱窒剤を用いた水処理方法について説明する。
【0039】
図2に示すように、当該脱窒剤の製造方法は、植物油を原料とするバイオディーゼル燃料として用いられる脂肪酸メチルエステルの一次製造工程で副生される粗製グリセリン廃液に酸を添加して攪拌し、脂肪酸が含まれる油層とグリセリンが含まれる水層に分離する中和処理工程と、中和処理工程で油層と水層に分離された粗製グリセリン廃液から水層を取り出す油層分離工程と、油層分離工程で取り出された水層から1価のアルコールであるメタノールを分離するアルコール分離工程としてのメタノール分離工程と、を含んでいる。さらに、メタノール分離工程でメタノールが分離された水層つまりグリセリン液を希釈する希釈工程を備えていることがより好ましい。
【0040】
当該水処理方法では、希釈工程で希釈されたグリセリン液を生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として添加する脱窒処理工程を備えている。
【0041】
中和処理工程では、アルカリ触媒法を採用する脂肪酸メチルエステルの一次製造工程の反応槽から粗製グリセリン廃液を引き抜いて中和処理槽に貯留し、中和処理槽に塩酸を添加して原料油脂を中和する。尚、中和に用いる酸は、塩酸や硫酸等の無機酸に限らず、酢酸や乳酸等の有機酸、炭酸ガス等が好ましく例示できる。また、後述する酸触媒法により副生された粗製グリセリン廃液は、酸性であるため、これを適宜混合することにより中和することも可能である。
【0042】
中和処理工程で、エマルジョン状態になっているアルカリ性の粗製グリセリン廃液に、塩酸が添加されることによって廃液が中和され、脂肪酸が含まれる油層と、グリセリンや塩等が含まれる水層とに分離される。
【0043】
油層分離工程では、未反応の油脂や脂肪酸メチルエステルが含まれる油層が中和処理槽の上部に分離し、粗製グリセリンを含む水層が中和処理槽の下部に分離する。所定時間経過後に中和処理槽の底部に備えたバルブを開いて、下部に分離した粗製グリセリンを含む水層を排出することで、油層と水層に分離された粗製グリセリン廃液から水層が取り出される。
【0044】
なお、油層分離工程は、遠心分離機や濾過膜を用いて油層と水層の分離を行なう構成であってもよい。
【0045】
メタノール分離工程は、グリセリンを含む水層からエステル交換反応工程に寄与しなかったメタノールを分離除去する工程で、反応タンクに充填したグリセリンを含む液を60℃程度に加温して蒸発させたメタノールをその後に減圧して回収する減圧蒸留法が採用される。
【0046】
なお、メタノール分離工程では減圧蒸留法以外に、気液接触法、膜分離法、イオン交換法などを用いることも可能である。気液接触法としてスプレードライ法を好適に用いることができ、粗製グリセリンを含む液をスプレー状に放出して加温空気と接触させ、沸点の低いメタノールを空気側に移行させて分離する方法である。膜分離法とは、メタノールを優先的に透過させる膜を用いる方法である。イオン交換法とはイオン交換樹脂の吸着特性を利用してメタノールを分離する方法である。
【0047】
上述した、中和処理槽内には、中和処理工程で油層と水層に分離され、油層分離工程で粗製グリセリン廃液を分離した油層が残る。この油層には、高濃度の脂肪酸が含まれているため、原料としてアルカリ触媒法を採用する脂肪酸メチルエステルの一次製造工程に循環供給することも可能である。
【0048】
但し、油層分離工程で分離された油層には、遊離脂肪酸などの酸価値の高い油脂が多く含まれ、またメタノール分離工程で分離されたメタノールの純度もさほど高くはないので、何れもそのままの状態でアルカリ触媒法を用いても、効率的に脂肪酸メチルエステルを製造することが困難な場合もある。
【0049】
そのような場合でも、アルカリ触媒法を除く他の方法を用いた二次製造工程を実行することによりバイオディーゼル燃料に用いられる脂肪酸メチルエステルとして効率的に再資源化することが可能となる。二次製造工程で副生される粗製グリセリン廃液が、二次分離工程で脂肪酸メチルエステルから分離された後に、上述した油層分離工程に供給されて、油層及びメタノールが分離された後に生物学的硝化脱窒処理のための有機炭素源として添加されるようになる。
【0050】
二次製造工程として、酸触媒法、酸アルカリ触媒法、生体触媒法、イオン交換樹脂法、超臨界法、亜臨界法、固体触媒法などを採用することができ、これらの方法により、酸価値の高い廃食油および/または油脂であってもメタノールなどのアルコールとをエステル交換することができる。
【0051】
二次製造工程として特に酸触媒法の採用が好ましい。
図7に示すように、二次製造工程で酸触媒法により二次製造した脂肪酸メチルエステルを、二次分離工程で粗製グリセリン廃液と脂肪酸メチルエステルに分離し、その分離した脂肪酸メチルエステルを、脱メタノール処理した粗製グリセリン廃液を貯留したタンクの下部から投入して接触させ、比重差を利用して上部からオーバーフローさせる中和・脱水工程を実行することにより、脂肪酸メチルエステルの中和処理と脱水及び脱メタノール処理を同時に行なうことができる。その結果、水とメタノールは粗製グリセリン廃液に吸収され、水とメタノールが除かれた高品質の脂肪酸メチルエステルが得られる。また、水とメタノールを吸収した粗製グリセリン廃液は、中和処理工程に送られる。
【0052】
二次製造工程としてさらに生体触媒法の採用が好ましい。生体触媒法は、エステル変換反応の触媒活性を備えたリパーゼやホスホリパーゼを用いて、エステル交換反応を促す方法である。生体触媒法は、反応条件が穏やかであるが、酸価値の高い油脂であってもエステル交換反応を促進でき、副生物が少ないという特性がある。
【0053】
超臨界法や亜臨界法は、温度や圧力を調整して、原材料を超臨界状態または亜臨界状態に変えることで、物質の相状態を気液二相から液液二相、さらに誘電率を下げて一相へと変化させて、本来触媒を用いる必要があった反応系を無触媒系へと変えて、加水分解を促進する方法である。なお、油層分離工程で分離された油層を脂肪酸メチルエステルの合成に用いることなく、コンポスト材料として活用することも可能である。
【0054】
尚、メタノール分離工程で分離された純度の低いメタノールであっても、蒸留処理を繰り返して純度を上げることで、アルカリ触媒法を採用した一次製造工程で1価のアルコールとして再利用することは可能である。
【0055】
ここで、脱窒処理工程について説明する。
図3に示すように、し尿処理場では、窒素含有有機性廃水を処理するために、循環脱窒法など、従属栄養性の微生物を用いた生物学的硝化脱窒法が採用されている。当該硝化脱窒法は、被処理水中のアンモニア性窒素をアンモニア酸化細菌により亜硝酸性窒素に酸化し、更に亜硝酸性窒素を亜硝酸酸化細菌により硝酸性窒素に酸化する硝化工程と、亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素を従属栄養性の脱窒菌により窒素ガスにまで分解する脱窒処理工程を経て、被処理水中のアンモニア性窒素を窒素ガスにまで分解する方法である。なお、硝化工程の硝化液が脱窒処理工程に循環供給される。
【0056】
このような、脱窒処理工程における、メタノールの代替品として、上述の粗製グリセリン廃液の処理方法の油層分離工程で取り出された粗製グリセリン液(水層)を、従属栄養性の微生物を用いた生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として添加する。
【0057】
当該グリセリンや塩等が含まれる水層は、従属栄養性の微生物を用いた生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として短時間に分解されるので、有機汚濁物質が残存しにくい。
【0058】
このように、生物学的硝化脱窒法の脱窒処理工程で有機炭素源として大量のメタノール等を添加する代わりに、脂肪酸メチルエステルの製造工程で副生される粗製グリセリンを有効利用することで、メタノール分の薬品コストを削減することができるとともに、化石燃料由来のメタノールを使用しないことによる温室効果ガスの排出量を抑制することができるようになる。
【0059】
ところで、消防法の規定によれば、アルコールと水以外の成分を含有せず、アルコールの含有量が60%以上である製品は、危険物第4類(引火性液体)アルコール類と分類され、貯留設備などの構造が安全性を確保するための規制の対象となる。しかし、脱窒剤として使用されているメタノールは非危険物として取扱うことができるように、アルコールの含有量が50%程度に調整され、貯留設備は当該規制の制限を受けることなく構築されている。
【0060】
上述した油層分離工程を経たグリセリン液(水層)は、グリセリンが3価のアルコールであるため、危険物第4類(引火性液体)の第3石油類に該当する。そして、グリセリン液(水層)にはエステル交換反応に寄与しなかったメタノールが残存しているために、容量が2000L以上になると指定可燃物となる。この場合、容量が2000L未満の貯留設備であればメタノールを対象とした既存の貯留設備をそのまま使用できるが、容量が2000L以上になると指定可燃物として規制の対象となり、メタノールを対象とした既存の貯留設備をそのまま使用することができない。
【0061】
しかし、上述したメタノール分離工程を実行した後の粗製グリセリン廃液は、消防法に規定する第4類引火性液体であっても引火点が無いために非危険物と判断されて、容量が2000L以上であってもメタノールを対象とした既存の貯留設備をそのまま使用できるようになる。
【0062】
上述したメタノール分離工程で得られたグリセリン液(水層)を脱窒剤としてそのまま使用することも可能であるが、従属栄養性の微生物を用いた生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として用いられる所定濃度のメタノールとCOD指標が同等の値となるように、メタノール分離工程でメタノールが分離された水層を希釈する希釈工程を実行することが好ましい。
【0063】
希釈工程を実行することによって、従来有機炭素源として用いられていた所定濃度のメタノールと同等の脱窒性能を発揮する脱窒剤として廃グリセリンを効果的に利用できるようになるからである。
【0064】
CODとは、水中の有機物量を、「酸化剤により分解した時の酸素消費量」として表現する指標であり、使用する酸化剤の種類や反応条件に応じて複数の種類がある。本発明では、COD指標として、酸化剤に二クロム酸カリウムを用いる「CODCr」を好適に用いることができる。酸化剤に過マンガン酸カリウムを使う「CODMn」は実際の有機物量に対する捕捉率が低いためである。
【0065】
以上のようにして、脂肪酸等の不純物を含む粗製グリセリン廃液から生成される脱窒剤の製造方法であって、油脂を原料とする脂肪酸アルキルエステルの一次製造工程で副生される粗製グリセリン廃液から脂肪酸が含まれる油層を分離してグリセリンが含まれる水層を取り出す油層分離工程と、油層分離工程で取り出された水層から1価のアルコールを分離してグリセリンが含まれる水層を、従属栄養性の微生物を用いた生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として取り出すアルコール分離工程と、を含む、脱窒剤の製造方法が実現できる。
【0066】
また、当該脱窒剤の製造方法は、油層分離工程で分離された油層とアルコール分離工程で分離された1価のアルコールとからアルカリ触媒法を除く酸触媒法、酸アルカリ触媒法、生体触媒法、イオン交換樹脂法、超臨界法、亜臨界法、固体触媒法の何れかの方法を用いて脂肪酸アルキルエステルを製造する脂肪酸アルキルエステルの二次製造工程を備え、二次製造工程で副生される粗製グリセリン廃液がグリセリン廃液供給経路を介して油層分離工程に供給されるように構成されている。
【0067】
さらに、当該脱窒剤の製造方法は、生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として用いられる所定濃度のメタノールとCOD指標が同等の値となるように、アルコール分離工程で1価のアルコールが分離された水層を希釈する希釈工程をさらに含む。
【0068】
以下に、本発明による油脂を原料とする脂肪酸メチルエステルの製造工程で副生される粗製グリセリン廃液の処理を含む水処理システム及び脱窒剤の製造装置について説明する。
【0069】
図4に示すように、水処理システムは、脂肪酸アルキルエステル製造設備の一例である脂肪酸メチルエステル製造設備10と、水処理設備20とを備えている。脂肪酸メチルエステル製造設備10は、脂肪酸メチルエステル製造装置11と洗浄装置12を備えて構成され、水処理設備20は、油層分離装置13と、アルコール分離装置としてのメタノール分離装置14と、生物学的硝化脱窒処理を実行する脱窒処理装置22と硝化装置23と脱窒剤貯留タンク21を含む生物処理装置を備えている。そして、脂肪酸メチルエステル製造設備10及び水処理設備20の一部で脱窒剤の製造装置が構成されている。
【0070】
脂肪酸メチルエステルの一次製造装置11に備えた反応槽11aに原料となる廃油脂、メタノール、アルカリ触媒である水酸化ナトリウムが投入されてエステル交換反応工程が実行され、エステル交換反応により得られた脂肪酸メチルエステルから粗製グリセリン廃液を分離する一次分離工程とが実行される。
【0071】
反応槽11aから取り出された脂肪酸メチルエステルは洗浄装置12で温水洗浄されて脂肪酸メチルエステルとして取り出される。また、反応槽11aから排出された粗製グリセリン廃液及び洗浄装置12から排出された洗浄廃液は、油層分離装置13に備えた油脂分離槽に投入されて、中和剤である塩酸により中和処理されて油層と水層に分離される。他に、図4中、一点鎖線で示すように、石鹸工場から出る甘水を油脂分離槽に投入してもよい。
【0072】
一定の時間が経過した後に、下側の水層が引抜かれてメタノール分離装置14に供給され、メタノールが除去された後に希釈装置15に供給され、所定濃度に希釈された後に脱窒剤貯留タンク21に貯留される。
【0073】
なお、洗浄装置12から排出された洗浄廃液は、水分が多くメタノール分離装置14でのアルコール除去が困難なため、粗製グリセリン廃液と一緒に中和処理をせず、別個に中和処理・油層分離処理を行ない、メタノール分離処理を行なうことなく、希釈装置15に希釈水として用いることが好ましい。
【0074】
メタノール分離装置14と希釈装置と脱窒剤貯留タンク21が同じ敷地に設けられている必要ななく、メタノール分離装置14でメタノールが分離されたグリセリン液(水層)である脱窒剤を、車載タンクに搭載して距離が離れた脱窒剤貯留タンク21に運搬してもよい。
【0075】
希釈装置14で希釈した後に車載タンクに搭載してもよいし、希釈装置14が脱窒剤貯留タンク21に隣接設置されていれば、希釈前のグリセリン液(水層)を車載タンクに搭載して運搬先の希釈装置14で希釈した後に脱窒剤貯留タンク21に充填してもよい。後者の場合には輸送コストの低減化を図ることができる。
【0076】
図4中、破線で示すように、脂肪酸メチルエステル製造設備10には、アルカリ触媒法により脂肪酸メチルエステルを生成する反応槽11a以外に、油層分離装置13で分離された油脂成分とメタノール分離装置14で分離されたメタノールを用いて、アルカリ触媒法以外の方法を用いて脂肪酸メチルエステルを製造する脂肪酸メチルエステルの二次製造装置となる第2反応槽11bが設けられている。
【0077】
即ち、本発明による脱窒剤の製造装置は、油脂を原料とする脂肪酸アルキル(メチル)エステルの一次製造装置で副生される粗製グリセリン廃液から脂肪酸が含まれる油層を分離してグリセリンが含まれる水層を取り出す油層分離装置13と、油層分離装置13で取り出された水層から1価のアルコールを分離してグリセリンが含まれる水層を、従属栄養性の微生物を用いた生物学的硝化脱窒処理の有機炭素源として取り出すアルコール分離装置14とを備えている。
【0078】
また、油層分離装置13で分離された油層とアルコール分離装置14で分離された1価のアルコールとからアルカリ触媒法を除く酸触媒法、酸アルカリ触媒法、生体触媒法、イオン交換樹脂法、超臨界法、亜臨界法、固体触媒法の何れかの方法を用いて脂肪酸アルキルエステルを製造する脂肪酸アルキル(メチル)エステルの二次製造装置となる第2反応槽11bを脂肪酸アルキル(メチル)エステル製造設備10に備え、二次製造装置で副生される粗製グリセリン廃液がグリセリン廃液供給経路11cを介して油層分離装置13に供給されるように構成されている。
【0079】
なお、油層分離装置13の前段に、粗製グリセリン廃液を中和する中和処理装置を備え、油層分離装置13で分離された油層とアルコール分離装置14で分離された1価のアルコールとから酸触媒法を用いて脂肪酸アルキル(メチル)エステルを製造する脂肪酸アルキル(メチル)エステルの二次製造装置を脂肪酸アルキル(メチル)エステル製造設備10に備え、二次製造装置で副生される粗製グリセリン廃液がグリセリン廃液供給経路11cを介して中和処理装置に供給されるように構成されている。
【0080】
さらに、生物学的硝化脱窒処理22の有機炭素源として用いられる所定濃度のメタノールとCOD指標が同等の値となるように、アルコール分離装置13で1価のアルコールが分離された水層を希釈する希釈装置をさらに備えている。
【0081】
図5に示すように、減圧蒸留法を採用したメタノール分離装置14は、油層分離装置13で油脂が分離されたグリセリン液(水層)が投入される反応タンク14aと、分離されたメタノールが回収されるメタノール回収タンク14f,14g,14hと、メタノールが分離されたグリセリン液(水層)を貯留する貯留タンク14cを備えている。
【0082】
反応タンク14aにはオイルを熱媒体とする熱交換器14bが配され、約60℃に加温される。反応タンク14aで気化したメタノールは、真空ポンプP3で減圧吸引されたコンデンサ14d,14eに導かれて冷却され、メタノール回収タンク14f,14gに過渡的に回収され、その後ポンプP1,P2によってメタノール回収タンク14hに回収される。図5中、符号14iは異物を回収する分離筒である。メタノールが気化されたグリセリン廃液は、その後ポンプP4で貯留タンク14cに引抜かれる。
【0083】
例えば、反応タンク14aに投入されるメタノール濃度5〜15wt%のグリセリン液(水層)が、減圧蒸留されてメタノール濃度0〜2wt%のグリセリン液(水層)として貯留タンク14cに回収される。
【0084】
以下に、アルコール分離工程に関する実験例を説明する。
脂肪酸メチルエステルの製造工程で副生される粗製グリセリン廃液から製造した脱窒剤のグリセリン濃度はおおよそ25wt%前後の値を示す。そこで、グリセリン濃度が25wt%の純グリセリン液に、純メタノールを添加してメタノール濃度が3,4,5,6,8wt%濃度の各メタノール混合グリセリン液を生成して、エーベル密閉式自動引火点試験器(田中科学機器製作株式会製)を用いて引火の有無を確認した。
【0085】
図6に測定結果が示されている。グリセリン濃度が25wt%の純グリセリン液に含まれるメタノール濃度が4,5,6,8wt%であると、それぞれ80℃以下で引火することが確認されたが、3wt%になると、当該測定器で引火点は検出できなかった。
【0086】
従って、メタノール分離装置14により、メタノール濃度を3wt%以下、さらに好ましくは2wt%以下に調整することにより、消防法に規定する第4類引火性液体であっても非危険物として取扱いできることが確認された。
【0087】
以上、1価のアルコールとしてメタノールを用いた場合を例に本発明の実施形態を説明したが、本発明による脂肪酸等の不純物を含むアルカリ性の粗製グリセリン廃液から脱窒剤を製造する方法及び脱窒剤を用いた水処理方法は、1価のアルコールとしてメタノール以外のアルコールを用いる場合にも適用可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0088】
10:脂肪酸アルキルエステル製造設備(脂肪酸メチルエステル製造設備)
11:脂肪酸メチルエステル製造装置
11a:反応槽
11b:二次反応槽(二次製造装置)
11c:グリセリン廃液供給経路
12:洗浄槽
13:油層分離装置
14:1価のアルコール分離装置(メタノール分離装置)
15:希釈装置
20:水処理設備
21:脱窒剤貯留タンク
22:脱窒処理装置
23:硝化装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7