特許第6951927号(P6951927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6951927
(24)【登録日】2021年9月29日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】ボイラ補修内容選定方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/02 20060101AFI20211011BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20211011BHJP
   B23K 9/04 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
   F22B37/02 D
   B23K31/00 D
   B23K31/00 K
   B23K9/04 S
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-189603(P2017-189603)
(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公開番号】特開2019-66065(P2019-66065A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松平 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 健
【審査官】 田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−324317(JP,A)
【文献】 特開2008−175704(JP,A)
【文献】 特開2008−116150(JP,A)
【文献】 特開2015−232420(JP,A)
【文献】 実開昭59−108007(JP,U)
【文献】 特開平11−294708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/02
B23K 31/00
B23K 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラの火炉壁に対する補修内容を選定するための、ボイラ補修内容選定方法であって、
前記火炉壁の検査対象箇所における肉厚又は膜厚の初期値及び測定値を用いて前記検査対象箇所における前記肉厚又は前記膜厚の減少速度を計算する第1ステップと、
前記減少速度を用いることにより、前記測定値の取得から所定期間が経過した時点における前記検査対象箇所における前記肉厚又は前記膜厚の予測値を計算する第2ステップと、
前記予測値と予め設定された閾値とを比較した結果に基づいて前記検査対象箇所の補修内容を選定する第3ステップと
を備え、
前記火炉壁は、前記火炉壁の内面に被膜が形成されている被膜形成部と、前記火炉壁の内面に被膜が形成されていない被膜非形成部と、を含み、
前記閾値は、前記膜厚に関する膜厚閾値と、前記肉厚に関する肉厚閾値と、を含み、
前記第3ステップは、
前記検査対象箇所が前記被膜形成部に位置する場合は、前記膜厚の予測値と、前記膜厚閾値とを比較した結果に基づいて前記検査対象箇所の補修内容を選定し、
前記検査対象箇所が前記被膜非形成部に位置する場合は、前記肉厚の予測値と、前記肉厚閾値とを比較した結果に基づいて前記検査対象箇所の補修内容を選定し、
前記検査対象箇所が前記被膜形成部に位置する場合において、前記被膜が残存している場合、前記第3ステップでは、前記膜厚の予測値が0未満を満たす場合には、前記火炉壁の内面に前記被膜を形成する溶射を前記補修内容として選定し、
前記検査対象箇所が前記被膜非形成部に位置する場合において、母管の肉厚が最小必要肉厚tsr以上であって、かつ、前記母管の減肉の仕方が全体的である場合、前記第3ステップでは、前記肉厚の予測値が前記最小必要肉厚tsr未満を満たす場合には、新管への取換又は肉盛溶接を前記補修内容として選定するボイラ補修内容選定方法。
【請求項2】
前記第3ステップでは、前記予測値が前記閾値以上を満たす場合には、前記検査対象箇所の補修は不要であると判断する請求項1に記載のボイラ補修内容選定方法。
【請求項3】
前記第3ステップでは、前記新管への取換又は前記肉盛溶接の後に溶接部を均すスムージング加工を前記補修内容として更に選択する請求項1又は2に記載のボイラ補修内容選定方法。
【請求項4】
前記第3ステップでは、前記スムージング加工の後に前記火炉壁の内面に前記被膜を形成する溶射を前記補修内容として更に選定する請求項3に記載のボイラ補修内容選定方法。
【請求項5】
前記検査対象箇所に凹凸部が有る場合には、前記第3ステップにおいて選定された前記補修内容とは別に、前記凹凸部を均すスムージング加工を補修内容として選定する第4ステップを更に備える請求項1乃至4の何れか1項に記載のボイラ補修内容選定方法。
【請求項6】
前記火炉壁は、複数の蒸発管と、前記複数の蒸発管のうちの隣接する蒸発管の間を接続するシールフィンと、を含む請求項1乃至5の何れか1項に記載のボイラ補修内容選定方法。
【請求項7】
前記ボイラは、循環流動層ボイラからなる請求項1乃至6の何れか1項に記載のボイラ補修内容選定方法。
【請求項8】
前記ボイラの次回の検査予定時までの期間に基づき、前記第2ステップにおける前記所定期間を決定する請求項1乃至7の何れか1項に記載のボイラ補修内容選定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボイラ補修内容選定方法及びボイラ補修内容選定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、陸用ボイラや石炭ガス化複合発電設備、あるいはごみ発電ボイラ等に使用される火炉壁は、燃焼灰や流動材等による機械的な浸食や燃焼ガスに含まれる硫化水素や硫酸塩等による電気化学的な腐食の影響を受ける環境下におかれる。このような浸食や腐食による火炉壁の減肉を補修する方法については、種々の発明がなされている。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、浸食や腐食による火炉壁の減肉対策として、火炉壁の表面に溶射膜や肉盛溶接層を被覆して補修する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−323526号公報
【特許文献2】特開2015−55570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、溶射等の補修内容や補修する火炉壁の部位によって、補修箇所の減肉の仕方に差異が生じるため、補修箇所に応じて適切な補修内容を判断することは非常に難しい。このような補修内容についての判断は、その大部分を習熟者の知見や技量に頼っているのが現状であり、適切な補修内容の選定方法は確立されていない状況にある。この結果、補修する主体によっては、知見や技量が不足しているために補修箇所に適した補修内容を判断できず、火炉壁の耐久性の低下や不要な補修によるコスト増加を招いてしまう。
【0006】
そこで、本発明の少なくとも一つの実施形態の目的は、上記の事情に鑑みて、安定した耐久性を有するように火炉壁を補修できるボイラ補修内容選定方法及びボイラ補修内容選定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の幾つかの実施形態に係るボイラ補修内容選定方法は、
ボイラの火炉壁に対する補修内容を選定するための、ボイラ補修内容選定方法であって、
前記火炉壁の検査対象箇所における肉厚又は膜厚の初期値及び測定値を用いて前記検査対象箇所における前記肉厚又は前記膜厚の減少速度を計算する第1ステップと、
前記減少速度を用いることにより前記測定値の取得から所定期間が経過した時点における前記肉厚又は前記膜厚の予測値を計算する第2ステップと、
前記予測値と予め設定された閾値とを比較した結果に基づいて前記検査対象箇所の補修内容を選定する第3ステップと
を備える。
【0008】
上記(1)の方法によれば、検査対象箇所における肉厚又は膜厚の減少速度を用いるため、測定値の取得から所定期間が経過した時点までに、肉厚又は膜厚がどれ程減少するのかを肉厚又は膜厚の予測値として知ることができる。この予測値に対応する閾値を予め設定しておくことで、閾値との比較により検査対象箇所に適した補修内容を選定できる。これにより、補修する主体の技量によらず、安定した耐久性を有するように火炉壁を補修できる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の方法において、
前記第3ステップでは、前記予測値が前記閾値以上を満たす場合には、前記検査対象箇所の補修は不要であると判断する。
【0010】
上記(2)の方法によれば、例えば、補修を必要とする厚みの下限値などを閾値として予め設定しておくことで、補修する主体による特別な判断を必要とせずに検査対象箇所の補修要否の判断を行うことができる。これにより、不要な補修によるコスト増加を抑制することができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の方法において、
前記火炉壁は、前記火炉壁の内面に被膜が形成されている被膜形成部と、前記火炉壁の内面に被膜が形成されていない被膜非形成部と、を含み、
前記閾値は、前記膜厚に関する膜厚閾値と、前記肉厚に関する肉厚閾値と、を含み、
前記第3ステップは、
前記検査対象箇所が前記被膜形成部に位置する場合は、前記膜厚の予測値と、前記膜厚閾値とを比較した結果に基づいて前記検査対象箇所の補修内容を選定し、
前記検査対象箇所が前記被膜非形成部に位置する場合は、前記肉厚の予測値と、前記肉厚閾値とを比較した結果に基づいて前記検査対象箇所の補修内容を選定する。
【0012】
火炉壁の減肉の仕方は、膜厚の有無によっても変化するため、適切な補修内容を選択するためには、検査対象箇所における膜厚の有無についても考慮する必要がある。この点、上記(3)の方法によれば、検査対象箇所が被膜形成部の場合には、膜厚の予測値と膜厚閾値との比較により補修内容を選定し、検査対象箇所が被膜非形成部の場合には、肉厚の予測値と肉厚閾値との比較により補修内容を選択できる。この結果、検査対象箇所における膜厚の有無に関わらず適切な補修内容を選択することができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の方法において、
前記検査対象箇所が前記被膜形成部に位置する場合において、
前記第3ステップでは、前記膜厚の予測値が0未満を満たす場合には、前記火炉壁の内面に前記被膜を形成する溶射を前記補修内容として選定する。
【0014】
上記(4)の方法によれば、検査対象箇所が被膜形成部であっても、膜厚の予測値が0未満になる場合には、溶射を補修内容として選定し、さらに被膜を形成することができる。これにより、測定値の取得から所定期間が経過した時点までに検査対象箇所の耐久性を高く保持できる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)の方法において、
前記検査対象箇所が前記被膜非形成部に位置する場合において、
前記第3ステップでは、前記肉厚の予測値が最小必要肉厚tsr未満を満たす場合には、新管への取換又は肉盛溶接を前記補修内容として選定する。
【0016】
上記(5)の方法によれば、被膜非形成部において、測定値の取得から所定期間が経過した時点までに肉厚の予測値が必要最小肉厚tsrを下回らないように、新管への取換又は肉盛溶接を補修内容とする。このため、測定値の取得から所定期間が経過した時点まで検査対象箇所が強度を保つために必要とされる肉厚を維持でき、火炉壁の強度を向上可能である。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の方法において、
前記第3ステップでは、前記新管への取換又は前記肉盛溶接の後に溶接部を均すスムージング加工を前記補修内容として更に選択する。
【0018】
新管への取換時の管の溶接部や肉盛溶接部等の凹凸が残ったままであると、凹凸を起点に局所的に減肉が進行してしまう可能性がある。この点、上記(6)の方法によれば、新管への取換又は肉盛溶接を行った後、スムージング加工を補修内容に選択することで溶接箇所の凹凸をなだらかにすることができる。これにより、溶接部の減肉の進行を抑制でき、検査対象箇所の強度維持が可能である。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の方法において、
前記第3ステップでは、前記スムージング加工の後に前記火炉壁の内面に前記被膜を形成する溶射を前記補修内容として更に選定。
【0020】
検査対象箇所がもともと被膜非形成部であっても、測定値の取得から所定期間が経過した時点までに肉厚の予測値が必要最小肉厚tsrを下回るような場合には、減肉の進行が早く、厳しい環境下にあると判断可能である。この点、上記(7)の方法によれば、新管への取換又は肉盛溶接の後、スムージング加工を行ったうえで、更に溶射を行うことで被膜を形成することができる。この結果、被膜のコーティングによって厳しい環境下にある検査対象箇所の減肉の進行を好適に抑制することができる。
【0021】
(8)幾つかの実施形態では、上記(5)〜(7)の何れか一つの方法において、
前記検査対象箇所に凹凸部が有る場合には、前記第3ステップにおいて選定された前記補修内容とは別に、前記凹凸部を均すスムージング加工を補修内容として選定する第4ステップを更に備える。
【0022】
溶接部の有無に関わらず、表面に凹凸部がある場合、凹凸部を起点に減肉が進行してしまう可能性がある。この点、上記(8)の方法によれば、測定値の取得から所定期間が経過した時点までに肉厚の予測値が必要最小肉厚tsrを上回るような場合であっても、検査対象箇所の凹凸部に対してスムージング加工を行う。これにより、凹凸部に起因した減肉の進行を抑制することができ、検査対象箇所の強度を高く維持可能である。
【0023】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(8)の何れか一つの方法において、
前記火炉壁は、複数の蒸発管と、前記複数の蒸発管のうちの隣接する蒸発管の間を接続するシールフィンと、を含む。
【0024】
上記(9)の方法によれば、蒸発管とシールフィンとからなる火炉壁に対して、適切な補修内容を選択することができる。
【0025】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(9)の何れか一つの方法において、
前記ボイラは、循環流動層ボイラからなる。
【0026】
循環流動層ボイラは、粒状の流動材を燃焼室に収納し、炉底から空気を吹き込んで流動材を炉内で循環させることで、固体燃料を効率よく燃焼させるようにしたものである。上記(10)の方法によれば、火炉壁に流動材がぶつかり続けるような循環流動層ボイラにおいても、検査対象箇所に応じて適切な補修内容を選択することができる。したがって、火炉壁の摩耗による減肉の進行を抑制することができる。
【0027】
(11)いくつかの実施形態では、前記ボイラの次回の検査予定時までの期間に基づき、前記第2ステップにおける前記所定期間を決定する。
【0028】
通常、ボイラに対しては定期的に検査が行われ、火炉壁の減肉状況等の確認が行われる。上記(11)の方法によれば、ボイラの次回の検査予定時までの期間に基づき第2ステップにおける所定期間を決定することで、次回の検査予定時まで安定した耐久性を有するように火炉壁を補修することができる。
【0029】
(12)幾つかの実施形態に係るボイラ補修内容選定装置は、
ボイラの火炉壁に対する補修内容を選定するための、ボイラ補修内容選定装置であって、
前記火炉壁の検査対象箇所における肉厚又は膜厚の初期値及び測定値を用いて前記検査対象箇所における前記肉厚又は前記膜厚の減少速度を計算する第1装置と、
前記減少速度を用いることにより前記測定値の取得から所定期間が経過した時点における前記検査対象箇所における前記肉厚又は前記膜厚の予測値を計算する第2装置と、
前記予測値と予め設定された閾値とを比較した結果に基づいて前記検査対象箇所の補修内容を選定する第3装置と
を備える。
【0030】
上記(12)の構成によれば、検査対象箇所における肉厚又は膜厚の減少速度を用いることで、測定値の取得から所定期間が経過した時点までに肉厚又は膜厚がどれ程減少するのかを肉厚又は膜厚の予測値として知ることができる。この予測値に対応する閾値を予め設定しておくことで、閾値との比較により検査対象箇所に適した補修内容を選定できる。これにより、補修する主体の技量によらず、安定した耐久性を有するように火炉壁を補修できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、安定した耐久性を有するように火炉壁を補修可能なボイラ補修内容選定方法及びボイラ補修内容選定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】幾つかの実施形態に係る循環流動層ボイラの全体構成を表す図である。
図2】幾つかの実施形態に係る火炉壁を表す図である。
図3図2における火炉壁の断面を真上から見た図である。
図4】幾つかの実施形態に係るボイラ補修内容選定方法の手順を示す図である。
図5】幾つかの実施形態に係る検査対象箇所における初期値、測定値及び予測値の関係を表したグラフである。
図6A図4における第3ステップS3について、例示的な実施形態における具体的な補修内容選定方法のフローを示す図である。
図6B図4における第3ステップS3について、特にシールフィンに対する具体的な補修内容選定方法のフローを示す図である。
図7】幾つかの実施形態に係る蒸発管の溶接部を表す図である。
図8】幾つかの実施形態に係る補修内容選定装置の内部機能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面を参照して、本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0034】
まず、図1図3を参照して、幾つかの実施形態に係る補修内容選定方法が適用されるボイラの全体構成について説明する。図1は、一実施形態に係る循環流動層ボイラ1の全体構成を表す模式図であり、図2は幾つかの実施形態に係る火炉壁を表す図である。図3は、図2における火炉壁20のA−A′断面を真上から見た図である。なお、後述の各実施形態においては、本発明が適用されるボイラとして、燃料が流動材と一緒にかきまぜられながら燃焼する循環流動層ボイラを例示するが、本発明はこれに限るものではない。例えば、燃料がバーナ噴流に乗って火炉内で燃焼する噴流床ボイラや、燃料がコンベア上で移動しながら燃焼する移動床ボイラ、及び燃料が炉底で燃焼する固定床ボイラ等にも適用可能である。
【0035】
図1に示すように、一般的な循環流動層ボイラ1は、火炉3と、火炉3から循環される流動材P(けい砂などの不活性粒子又は石灰石などの脱硫剤)を分離するサイクロン4と、排ガス熱交換器5と、排ガス中の煤塵を除去するバグフィルタ6とを備える。このような循環流動層ボイラ1は、火炉3の炉底7に空気aを吹き込み、外部から供給される石炭等の燃料、予め火炉3内に収納された流動材P、及び炉底7近傍に帰還する未燃灰等の流動粒子を流動化し、循環流動を形成して固形燃料の燃焼を促進するものである。このような循環流動層ボイラ1は、上記の他にも耐火壁9、熱交換器15、循環ライン11、誘引ポンプ13、煙突17等を備えているが、これらの説明は省略する。
【0036】
上述した循環流動層ボイラ1の火炉壁20は、図2に示すように、互いに所定間隔を持って配列された上下方向に沿って延在する複数の蒸発管21をシールフィン23により連結することで形成される。
【0037】
かかる循環流動層ボイラ1において、火炉壁20の内側は流動材Pが衝突し続ける環境下におかれるため、摩耗による減肉が生じやすい。そこで、循環流動層ボイラ1を長期間に渡り安定して運用するために、減肉箇所に肉盛溶接層や溶射被膜を形成する補修方法が従来から採用されている。ここで溶射被膜とは、高硬度物質からなるコーティングであり、例えば図2に例示するように、火炉壁20の蒸発管21のうち火力の高い炉底側に溶射被膜が形成される領域(被膜形成部30)が形成される。また、図2におけるA−A′断面は図3に示すようになる。図3において、tは、蒸発管21のうち母管25の厚み(肉厚)であり、tは、蒸発管21のうち被膜形成部30における溶射被膜の厚み(膜厚)である。一方シールフィン23は、図2に示したように、通常、隣接する蒸発管21の被膜形成部30に挟まれた領域は被膜形成部30に該当し、隣接する蒸発管21の溶射被膜が形成されていない領域(被膜非形成部40)に挟まれた領域は被膜非形成部40に該当する。なお、図3において、シールフィン23の厚みは図3中tで示されている。
【0038】
しかしながら、溶射や肉盛等の補修内容や補修する火炉壁20の部位によって、補修箇所の減肉の仕方に差異が生じるため、個々の補修技術は確立されていても、補修箇所に応じて適切な補修内容を判断することは非常に難しい。このような補修内容についての判断は、その大部分を習熟者の知見や技量に頼っているのが現状であり、適切な補修内容の選定方法は確立されていない状況にある。この結果、補修する主体によっては、知見や技量が不足しているために補修箇所に適した補修内容を判断できず、火炉壁20の耐久性の低下や不要な補修によるコスト増加を招いてしまう。このような課題は以下に説明する各実施形態によって好適に解消可能である。
【0039】
まず、図4及び図5を参照しながら幾つかの実施形態に係るボイラ補修内容選定方法について説明する。図4は、幾つかの実施形態に係るボイラ補修内容選定方法の手順を示す図である。図5は幾つかの実施形態に係る検査対象箇所における初期値、測定値及び予測値の関係を表したグラフである。
【0040】
幾つかの実施形態に係るボイラ補修内容選定方法では、図4に示すように、火炉壁20の検査対象箇所における肉厚t又は膜厚tの初期値及び測定値を用いて検査対象箇所における肉厚t又は膜厚tの減少速度v(v又はv)を計算する第1ステップS1と、減少速度vを用いることにより測定値の取得から所定期間が経過した時点における検査対象箇所における肉厚t又は膜厚tの予測値t(tAp又はtBp)を計算する第2ステップS2と、予測値tと予め設定された閾値t(tAx又はtBx)とを比較した結果に基づいて検査対象箇所の補修内容を選定する第3ステップS3とを備える。
【0041】
まず、第1ステップS1における初期値t、測定値t及び第2ステップS2における予測値tについて、図5を参照しながら説明する。図5に示すように、初期値tは、肉厚t又は膜厚tに関して、第1時点Tにおいて取得される値である。また、測定値tは、第1時点Tから第1期間ΔT経過後の第2時点Tにおいて取得される値である。予測値tは、第2時点Tから第2期間ΔT経過後の第3時点Tにおいて、第2ステップS2により計算される肉厚t又は膜厚tの値である(後述)。一実施形態では、第1時点Tを前回の検査時、第2時点Tを今回の検査時、第3時点Tを次回の検査予定時としてもよい。一実施形態では、tは検査において取得された値でなくてもよく、第1時点Tにおいて予め分かっている値であればよい。
【0042】
次に、第1ステップS1における減少速度及び前述の第2ステップS2における予測値tの算出方法について図5を参照しながら説明する。肉厚t又は膜厚tの減少速度vは、初期値tと測定値tとの差を第1期間ΔTで割ることによって算出可能である。この関係は数式1で表される。
【数1】
【0043】
この減少速度vを用いることで、第2時点Tから第2期間ΔT経過後の第3時点Tにおける予測値tを、数式2で表すように算出できる。
【数2】
【0044】
ここで、例示的な実施形態における予測値tの計算例を示す。検査対象箇所において、今回の計測から6か月前に計測した膜厚(初期値tB0)が300μm、今回の計測による膜厚(測定値tBm)が120μmである時、減少速度vは、30μm/月と算出できる。したがって、次回の計測が今回の計測から6か月後に予定されている場合、第2期間ΔTが6か月であるから、膜厚tの予測値tBpは、−60μmとなる。つまり、この計算結果からは、次回の計測時までには検査対象箇所の溶射被膜が全て抉れ、溶射被膜の下の母管にまで減肉が及ぶことがわかる。
【0045】
なお、上記の計算例のように、もともと被膜形成部30がある箇所において溶射被膜の下の母管25にまで減肉がある場合であって、所定期間が経過した後の予想残存肉厚を評価する必要がある場合には、一実施形態では母管25の減少速度v′を以下のように算出し、これを用いて予測値tApを算出してもよい。
【数3】
【0046】
数式3において、tB0は検査対象箇所における膜厚の初期値であり、tA0は同じ箇所における母管25の肉厚の初期値である。本実施形態では、母管25の肉厚の減少速度は膜厚の減少速度のN倍であると仮定して、膜厚の初期値tB0のN倍と肉厚の初期値tA0との和から第1期間ΔTの間にどれ程減肉したかを減少速度v′とし、予測値tApの算出においてはこのv′を用いる。
本発明者らの検討により、母管25の肉厚の減少速度vは溶射膜の膜厚の減少速度vよりも数倍(N倍)大きいことが判明した。このため、溶射被膜の下の母管25にまで減肉がある場合には、本実施形態を用いることによって測定値を取得した時点Tから所定期間が経過した時点Tにおける母管25の肉厚の正確な予測値tApを得ることができる。
【0047】
以上のようにして算出した予測値tを用いることによって、第3ステップS3(図4参照)では予め設定された閾値tとの比較を行い、検査対象箇所の補修内容を選定する。
本実施形態によれば、検査対象箇所における肉厚又は膜厚の減少速度v(v又はv)を用いるため、測定値の取得から所定期間が経過した時点までに肉厚又は膜厚がどれ程減少するのかを肉厚又は膜厚の予測値t(tAp又はtBp)として知ることができる。この予測値tに対応する閾値tを予め設定しておくことで、閾値tとの比較により検査対象箇所に適した補修内容を選定できる。これにより、補修する主体の技量によらず、安定した耐久性を有するように火炉壁20を補修できる。
【0048】
以降では、第3ステップS3における補修内容選定の具体例について、図6Aに示す例示的な実施形態を参照しながら説明する。図6Aは、図4における第3ステップS3について、例示的な実施形態における具体的な補修内容の選定に至るフローチャートを示す図である。
【0049】
図6Aに示すフローチャートは、ステップS300から開始し、ステップS300では、検査対象箇所が被膜形成部30又は被膜非形成部40のうちどちらに含まれるかの判断を行う。検査対象箇所が被膜形成部30であれば、ステップS310に進み、被膜非形成部40であれば、ステップS320に進む。
【0050】
このステップS300のように、幾つかの実施形態では、検査対象箇所が被膜形成部30であるか被膜非形成部40であるかによって補修内容選定の処理を変更する。具体的には、後述のステップS310のように検査対象箇所が被膜形成部30に位置する場合は、膜厚の予測値tBpと膜厚閾値tBxとを比較した結果に基づいて検査対象箇所の補修内容を選定する。一方、後述のステップS324のように検査対象箇所が被膜非形成部40に位置する場合は、肉厚の予測値tApと肉厚閾値tAxとを比較した結果に基づいて検査対象箇所の補修内容を選定する。
火炉壁20の減肉の仕方は、膜厚tの有無によっても変化するため、適切な補修内容を選択するためには、検査対象箇所における膜厚tの有無について考慮する必要がある。この点、本実施形態によれば、検査対象箇所が被膜形成部30の場合には、膜厚の予測値tBpと膜厚閾値tBxとの比較により補修内容を選定し、検査対象箇所が被膜非形成部40の場合には、肉厚の予測値tApと肉厚閾値tAxとの比較により補修内容を選択できる。この結果、検査対象箇所における膜厚tの有無に関わらず適切な補修内容を選択することができる。
以降では、補修内容の選定に至るステップS300以降のフローについて、まず、検査対象箇所が被膜非形成部40である場合について説明する。
【0051】
(被膜非形成部40)
検査対象箇所が被膜非形成部40である場合、フローチャートの処理はステップS320に進み、ステップS320において検査対象箇所の母管25の肉厚tが必要最小肉厚tsr以上であるかどうかを判断する。肉厚tが必要最小肉厚tsr以上であればステップS322に進む。肉厚tが必要最小肉厚tsrを満たさない場合はステップS320Bに進み、新管への取換、スムージング加工及び溶射(後述)をこの順で行う。
【0052】
ここで、必要最小肉厚tsrとは、ボイラ等の最高使用圧力又は最高使用温度において発生する最大の応力に対して蒸発管21が安全な強度を保つために必要とされる最も小さい厚さのことである。一実施形態では、必要最小肉厚tsrは、発電用火力設備の技術基準の解釈(火技解釈)に具体的に規定されている値としてもよい。なお、火技解釈によれば、蒸発管の厚さはJISB8201(2005)「陸用鋼製ボイラ構造」の「6.7.4蒸発管の最小厚さ」に規定の計算式により算出した値によることとしている。
【0053】
ステップ320において母管25の肉厚tが必要最小肉厚tsr以上であればステップS322に進み、ステップS322では減肉の仕方が全体的か部分的かを判断する。ここで部分的に減肉している状態とは母管25の表面に凹凸が生じているような状態を指し、全体的に減肉している状態とは、部分的な減肉に対して母管25が一様に摩耗している状態を指す。全体的な減肉の場合、処理はステップS324に進み、部分的な減肉の場合、ステップS326に進む。
【0054】
ステップS322において母管25の減肉が全体的である場合、ステップ324において、肉厚の予測値tApが必要最小肉厚tsr以上かどうかを判断する。肉厚の予測値tApが必要最小肉厚tsr以上である場合、ステップS324Aに進み、検査対象箇所は補修不要であると判断する。一方、肉厚の予測値tApが必要最小肉厚tsrに満たない場合は、ステップS324Bに進み、新管への取換又は肉盛溶接、スムージング加工及び溶射をこの順で行う。
【0055】
このステップS324Aや後述のステップS312Aに例示されるように、幾つかの実施形態では、第3ステップS300において、予測値tが予め設定された閾値t以上を満たす場合には、検査対象箇所の補修は不要であると判断する。
本実施形態によれば、例えば、補修を必要とする厚みの下限値などを閾値tとして予め設定しておくことで、補修する主体による特別な判断を必要とせずに検査対象箇所の補修要否の判断を行うことができる。これにより、不要な補修によるコスト増加を抑制することができる。
【0056】
また、ステップ324Bに例示されるように、幾つかの実施形態では、肉厚の予測値tApが最小必要肉厚tsr未満を満たす場合には、新管への取換又は肉盛溶接を前記補修内容として選定する。
本実施形態によれば、被膜非形成部40において、測定値の取得から所定期間が経過した時点までに肉厚の予測値tApが必要最小肉厚tsrを下回らないように、新管への取換又は肉盛溶接を補修内容とする。このため、測定値の取得から所定期間が経過した時点まで検査対象箇所が強度を保つために必要とされる肉厚tを維持でき、火炉壁20の強度を向上可能である。
【0057】
幾つかの実施形態では、新管への取換や肉盛溶接の後に溶接部を均すスムージング加工を行う。このスムージング加工とは、新管への取換や肉盛溶接の後に溶接部をグラインダ等で滑らかにして表面の凹凸を均す加工のことである。
新管への取換時の管の溶接部や肉盛溶接部等の凹凸が残ったままであると、凹凸を起点に局所的に減肉が進行してしまう可能性がある。この点、スムージング加工によれば、新管への取換又は肉盛溶接を行った後、スムージング加工を補修内容に選択することで溶接箇所の凹凸をなだらかにすることができる。これにより、溶接部の減肉の進行を抑制でき、検査対象箇所の強度維持が可能である。
【0058】
図7は、幾つかの実施形態に係る蒸発管の溶接部を表す図である。
新管への取換を行った場合、図7の(A)に示すように新管26と旧管27の溶接部28は管の外周に沿って炉内外に形成される場合がある。この時、除去が望ましい余盛部29も炉内外に形成されるが、一実施形態では、この後のスムージング加工において、図7の(B)に示すように炉内側の余盛部29のみを加工してもよい。
【0059】
さらに、幾つかの実施形態では、スムージング加工の後に火炉壁20の内面に被膜を形成する溶射を補修内容として更に選定する。
検査対象箇所がもともと被膜非形成部40であっても、肉厚の予測値tApが必要最小肉厚tsrを下回るような場合には、減肉の進行が早く、厳しい環境下にあると判断可能である。この点、本実施形態によれば、新管への取換又は肉盛溶接の後、スムージング加工を行ったうえで、更に溶射を行うことで被膜を形成することができる。この結果、被膜のコーティングによって厳しい環境下にある検査対象箇所の減肉の進行を好適に抑制することができる。
【0060】
以上に説明したような新管への取換又は肉盛溶接の後のスムージング加工及び溶射は、肉厚の予測値tApによる判定以外でも選定可能である。例えば、前述のステップS320で母管25の肉厚tが既に必要最小肉厚tsrを満たさないような場合の、ステップS320Bの新管への取換後の処理にも適用可能である。このように、適宜スムージング加工及び溶射を選定することで、検査対象箇所における強度を高く維持できる。
【0061】
図6Aのフローチャートに戻り、ステップS322において検査対象箇所が部分的な減肉であると判断された場合、ステップS326に進み、検査対象箇所に規定値より大きな高さのある凹凸が有るか無いかを判断する。凹凸の高さが規定値よりも大きければ、ステップS326Aに進み、肉盛溶接、スムージング加工及び溶射を行う。一方で、凹凸の高さが規定値よりも小さければ、ステップS326Bに進み、スムージング加工のみを行う。
【0062】
ステップS326に例示するように、幾つかの実施形態では、検査対象箇所に凹凸が生じるような部分的な減肉が存在する場合、補修内容としてスムージング加工を選定する。これにより、凹凸部に起因した減肉の進行を抑制することができ、検査対象箇所の強度を高く維持可能である。
一実施形態では、凹凸の高さに規定値を設け、凹凸が規定値よりも大きい高さであれば肉盛溶接、スムージング加工、溶射をこの順で行うことを補修内容として選定してもよい。規定値としては、一例では0.1mm〜0.3mm等である。
以降ではフローチャートをステップS300まで戻り、検査対象箇所が被膜形成部30である場合の処理について説明する。
【0063】
(被膜形成部30)
検査対象箇所が被膜形成部30である場合、フローチャートの処理はステップS300からステップS310に進み、ここで検査対象箇所に膜厚tが残存しているかどうかを判断する。膜厚tが残存している場合はステップS312に進み、膜厚tが残存していない場合はステップS314に進む。
【0064】
被膜形成部30に膜厚tが残存している場合、ステップS312において、膜厚の予測値tBpが0より大きいかどうかを判断する。予測値tBpが0より大きければ、フローチャートの処理はステップS312Aに進み、検査対象箇所について補修は不要であると判断する。tBpが0以下となる場合は、処理はステップS312Bに進み、検査対象箇所に対して溶射を行うことで溶射被膜を形成する。
【0065】
上記のステップS312Bに例示されるように、幾つかの実施形態では検査対象箇所が被膜形成部30に位置する場合において、第3ステップでは、膜厚の予測値tBpが0以下を満たす場合には、火炉壁20の内面に被膜を形成する溶射を補修内容として選定する。
本実施形態によれば、検査対象箇所が被膜形成部30であっても、膜厚の予測値tBpが0以下になる場合には、溶射を補修内容として選定し、さらに被膜を形成することができる。これにより、測定値の取得から所定期間が経過した時点までに検査対象箇所の耐久性を高く保持できる。
【0066】
ステップS310において検査対象箇所に残存する膜厚tが無いと判断された場合、処理はステップS314に進み、母管25の減肉が発生しているかどうかを判断する。母管25の減肉が発生していない場合、ステップS314Bに進み、検査対象箇所に対して溶射を行う。母管25に減肉が発生している場合、処理はステップS316に進む。
【0067】
ステップS316では、母管25の肉厚tが必要最小肉厚tsr以上であるかどうかを判断する。母管25の肉厚tが必要最小肉厚tsr以上の場合はステップS316Aに進み、肉盛溶接、スムージング加工及び溶射をこの順で行う。母管25の肉厚tが必要最小肉厚tsrを満たさない場合はステップS316Bに進み、新管への取換、スムージング加工及び溶射をこの順で行う。
【0068】
また、検査対象箇所がシールフィン23である場合には、凸凹がフィン本体31にあるのか隅肉溶接部24(図3参照)にあるのかによっても減肉の仕方が異なる。このため、シールフィン23については、上述した図6Aに示した補修内容選定方法に替えて、図6Bに示したように凹凸の箇所によって補修内容を選定してもよい。図6Bは、図4における第3ステップS3について、特にシールフィン23に対する具体的な補修内容選定方法のフローを示す図である。
【0069】
一実施形態では、シールフィン23の表面に凹凸が存在する場合において(S334において「YES」)、凹凸が隅肉溶接部24に存在する場合には(S336において「NO」)、肉盛溶接及びスムージング加工を行う(S336A)。また、凹凸がフィン本体31に存在する場合であって(S336において「YES」)、規定値(例えば0.1mm〜0.3mm)より高い凹凸が有る場合には(S338において「YES」)、肉盛溶接及びスムージング加工を行う(S338B)。凹凸がフィン本体31に存在する場合であって(S336において「YES」)、規定値より高い凹凸が無い場合(S338において「NO」)には、スムージング加工のみを行う。なお、シールフィン23の表面に凹凸が存在しない場合には(S334において「NO」)、補修不要であると判断する(S334A)。
【0070】
以上に説明した補修内容選定方法は、幾つかの実施形態では、図8に示すような補修内容選定装置を用いることによっても実現できる。図8は幾つかの実施形態に係る補修内容選定装置の内部機能を示す図である。
【0071】
図8における実施形態では、補修内容選定装置100は、記憶部102及び計算部104を備え、計算部104は、測定値取得部106、減少速度算出部107、予測値算出部108、補修内容選定部109を含む。記憶部102は、測定値取得部107によって得られた検査対象箇所の肉厚及び膜厚の測定値t、測定値tの取得時刻や検査対象箇所の場所、及びユーザが予め設定した閾値t等の情報を記憶する。そして、減少速度算出部107では、記憶部102で呼び出される初期値tと測定値tとを用いて肉厚又は膜厚の減少速度vを算出する。この減少速度vを用いて、予測値算出部108では予測値tを算出する。補修内容選定部109は、この予測値tと記憶部102から呼び出される閾値tとを比較することにより適切な補修内容を選定する。選定された補修内容は、外部の表示部120を介してユーザに知らされる。ユーザは入力部110を介して閾値tの設定等を行う。
【0072】
上述したような補修内容選定装置100は、中央処理装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、およびI/Oインターフェイスなどからなるマイクロコンピュータで構成されている。
【0073】
本実施形態によれば、検査対象箇所における肉厚又は膜厚の減少速度vを用いることで、測定値の取得から所定期間が経過した時点までに肉厚又は膜厚がどれ程減少するのかを肉厚又は膜厚の予測値tとして知ることができる。この予測値tに対応する閾値tを予め設定しておくことで、閾値tとの比較により検査対象箇所に適した補修内容を選定できる。これにより、補修する主体の技量によらず、安定した耐久性を有するように火炉壁20を補修できる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0075】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0076】
1 ボイラ
3 火炉
5 熱交換器
6 バグフィルタ
7 炉底
9 耐火壁
11 循環ライン
13 誘引ファン
15 熱交換器
17 煙突
20 火炉壁
21 蒸発管
23 シールフィン
24 隅肉溶接部
25 母管
26 新管
27 旧管
28 溶接部
29 余盛部
30 被膜形成部
32 フィン本体
40 被膜非形成部
100 補修内容選定装置
102 記憶部
104 計算部
106 測定値取得部
107 減少速度算出部
108 予測値計算部
109 補修内容選定部
110 入力部
120 表示部
a 空気
P 流動材
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8