特許第6952004号(P6952004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952004
(24)【登録日】2021年9月29日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】スピンドルモータ
(51)【国際特許分類】
   G11B 19/20 20060101AFI20211011BHJP
   H02K 7/08 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
   G11B19/20 D
   H02K7/08 A
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-71953(P2018-71953)
(22)【出願日】2018年4月3日
(65)【公開番号】特開2019-185832(P2019-185832A)
(43)【公開日】2019年10月24日
【審査請求日】2021年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】中嶌 大吾
(72)【発明者】
【氏名】昭和 秀明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大輔
【審査官】 川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−139329(JP,A)
【文献】 特開2011−114896(JP,A)
【文献】 特開2007−073164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 19/20 − 19/28
H02K 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブと、ヨークと、ロータマグネットと、ステータと、を備え、
前記ハブは、軸方向に延在するハブ円筒部と、前記ハブ円筒部の一端から半径方向内側に延在する円盤部と、を有するカップ状に形成され、
前記ハブの半径方向内側に配設される前記ヨークは、前記ハブ円筒部に対向するヨーク円筒部と、前記円盤部に対向し、前記ハブ円筒部の一端から半径方向内側に張り出すヨークフランジ部と、を有する環状に形成され、
前記円盤部は、接着剤を介して前記ヨークフランジ部が固定される接着部と、前記接着部よりも半径方向外側に形成された周溝と、を備え、
前記接着剤は、前記周溝よりも半径方向外側には存在せず、
前記ハブ円筒部と前記ヨーク円筒部とは、非接触であることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項2】
前記周溝内で硬化した前記接着剤は、表面が前記周溝内で露出していることを特徴とする請求項1記載のスピンドルモータ。
【請求項3】
前記周溝は、前記周溝の半径方向内側縁部から最深部までは、半径方向外側に向かうに連れて連続的に深くなることを特徴とする請求項1又は2記載のスピンドルモータ。
【請求項4】
前記円盤部は、前記周溝よりも半径方向内側に、前記ヨークフランジ部が嵌合される突出部を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のスピンドルモータ。
【請求項5】
前記接着部は、前記突出部を含むことを特徴とする請求項4記載のスピンドルモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンドルモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ハードディスク駆動装置のハードディスクを回転させるためにスピンドルモータが用いられている。スピンドルモータは、例えば、ベースプレートと、ベースプレートに支持されたシャフトと、ベースプレートに固定されたステータと、シャフトに回転可能に支持されたロータとを有している。ロータにおいて、ハブがシャフトに回転可能に支持されており、ハブの内周面には、ステータに対向してヨーク及びロータマグネットが固定されている。特開平11−288551号公報(特許文献1)には、ロータマグネットとハブとの間に樹脂を充填することで回転振動を吸収させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−288551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハードディスク駆動装置では、ステータとロータマグネットとの間において発生する高次周波数(例えば、55〜75kHz帯)の振動がハブに伝わり、ハブに取り付けられたディスクに高次周波数の振動を発生させることがある。近年のディスクの高容量化においては、ディスクの高次周波数の振動がディスクの読書き速度の低下をまねくおそれが大きくなってきている。このため、ハードディスク駆動装置に対して、ハブの高次周波数の振動の低減がより一層求められるようになってきている。
【0005】
本発明の目的は、ハブの高次周波数の振動を低減することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るスピンドルモータは、ハブと、ヨークと、ロータマグネットと、ステータと、を備え、前記ハブは、軸方向に延在するハブ円筒部と、前記ハブ円筒部の一端から半径方向内側に延在する円盤部と、を有するカップ状に形成され、前記ハブの半径方向内側に配設される前記ヨークは、前記ハブ円筒部に対向するヨーク円筒部と、前記円盤部に対向し、前記ハブ円筒部の一端から半径方向内側に張り出すヨークフランジ部と、を有する環状に形成され、前記円盤部は、接着剤を介して前記ヨークフランジ部が固定される接着部と、前記接着部よりも半径方向外側に形成された周溝と、を備え、前記接着剤は、前記周溝よりも半径方向外側には存在せず、前記ハブ円筒部と前記ヨーク円筒部とは、非接触であることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係るスピンドルモータにおいて、前記周溝内で硬化した前記接着剤は、表面が前記周溝内で露出している。
【0008】
本発明の一態様に係るスピンドルモータにおいて、前記周溝は、前記周溝の半径方向内側縁部から最深部までは、半径方向外側に向かうに連れて連続的に深くなる。
【0009】
本発明の一態様に係るスピンドルモータにおいて、前記円盤部は、前記周溝よりも半径方向内側に、前記ヨークフランジ部が嵌合される突出部を備える。
【0010】
本発明の一態様に係るスピンドルモータにおいて、前記接着部は、前記突出部を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るスピンドルモータによれば、ハブの高次周波数の振動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るスピンドルモータの構成を概略的に示す断面図である。
図2図1に示すロータ部の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。
図3図1に示すヨークとハブとを取り付ける方法を説明するための図である。
図4図1に示すヨークとハブとの間の間隙の接着剤充填率とハブに発生する振動との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。
図5】本発明の第2の実施の形態に係るスピンドルモータのロータ部の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。
図6図5に示すヨークとハブとを取り付ける方法を説明するための図である。
図7】本発明の第1の実施の形態に係るスピンドルモータの他の変形例の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るスピンドルモータ1の構成を概略的に示す断面図であり、図2は、スピンドルモータ1のロータ部50の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。以下、説明の便宜上、図1におけるスピンドルモータ1の軸Y1の方向(以下、軸方向ともいう)における一方(矢印a方向)を上側とし、他方(矢印b方向)を下側とする。また、図1におけるスピンドルモータ1の軸Y1に直交して延在する半径方向における一方(矢印c方向)を内側とし、他方(矢印d方向)を外側とする。以下の説明において、各部材の位置関係や方向を上下を用いて説明するときは、あくまで図面における位置関係や方向を示し、実際の機器に組み込まれたときの位置関係や方向を示すものではない。
【0015】
本発明の第1の実施の形態に係るスピンドルモータ1は、ハブ10と、ヨーク30と、ロータマグネット40と、ステータ63と、を備える。ハブ10は、軸方向(矢印ab方向)に延在するハブ円筒部13と、ハブ円筒部13の一端から半径方向内側(矢印c方向)に延在する円盤部12と、を有するカップ状に形成されている。ハブ10の半径方向内側(矢印c方向)に配設されるヨーク30は、ハブ円筒部13に対向するヨーク円筒部32と、円盤部12に対向し、ハブ円筒部13の一端から半径方向内側(矢印c方向)に張り出すヨークフランジ部31と、を有する環状に形成されている。円盤部12は、接着剤ADを介してヨークフランジ部31が固定される接着部(突出部16及びヨーク支持部18)と、接着部(突出部16及びヨーク支持部18)よりも半径方向外側(矢印d方向)に形成された周溝17と、を備える。接着剤ADは、周溝17よりも半径方向外側(矢印d方向)には存在せず、ハブ円筒部13とヨーク円筒部32とは、非接触である。以下、スピンドルモータ1の構成について具体的に説明する。
【0016】
図1に示すように、スピンドルモータ1は、ロータ部50と、ステータ部60と、潤滑剤(不図示)の流体動圧を利用する流体動圧軸受機構(以下、軸受機構)70とを備えている。スピンドルモータ1では、ロータ部50が軸受機構70を介してステータ部60に対して回転可能に支持されている。
【0017】
ステータ部60は、スピンドルモータ1の筐体の一部であるベースプレート61と、ベースプレート61の円筒状のボス部62の外側(矢印d方向)に取り付けられたステータ63とを備えている。ステータ63は、ステータコア64にコイル65が巻回されて構成されている。なお、ベースプレート61の下側(矢印b方向)の面(外面61a)には、フレキシブルプリント基板(図示せず)が貼り付けられており、フレキシブルプリント基板の出力端より制御電流がステータ63に供給される。
【0018】
シャフト73には、円錐外面を有する第1円錐軸受部材74aと、第2円錐軸受部材74bとが、軸方向に離間して固定されている。ロータ部50は、シャフト73を挿通する軸挿通孔を有するスリーブ72と、スリーブ72の外側(矢印d方向)に固定されたハブ10と、ハブ10に固定されたヨーク30及びロータマグネット40と、を備える。
【0019】
スリーブ72の軸挿通孔は各端部に第1円錐内面72aと第2円錐内面72bとをそれぞれ有する。第1円錐内面72aと第1円錐軸受部材74aとは微小隙間を介して対向する。また、第2円錐内面72bと、第2円錐軸受部材74bとは微小隙間を介して対向する。第1円錐軸受部材74aと第1円錐内面72a及び第2円錐軸受部材74bと第2円錐内面72bとの間の微小隙間には、それぞれ潤滑油が充填されている。
【0020】
さらに、第1円錐内面72aと第2円錐内面72b又は第1円錐軸受部材74aと第2円錐軸受部材74bの円錐外面の少なくともいずれか一方には、動圧発生溝が形成され、流体動圧軸受による軸受機構70を形成している。以上の構成により、ロータ部50は、回転時には流体動圧軸受による軸受機構70を介してベースプレート61に支持される。
【0021】
ベースプレート61には、ロータマグネット40と対向するように、コイル65が巻回されたステータコア64が固定される。ロータマグネット40は、周方向に極性が反転する状態で着磁された永久磁石である。ヨーク30は、ロータマグネット40からの磁束の漏洩を抑制する。ステータコア64は、環状に加工された電磁鋼板を積層した構造を有する。ステータコア64は、軸受機構70よりも外側(矢印d方向)に延在し、ステータコア64の周方向には複数の極歯が相互に離間して設けられる。各極歯には、コイル65が巻回されている。コイル65からはワイヤ(導線)が引き出され、フレキシブルプリント基板と接続されている。
【0022】
コイル65に電流を流し、その極性を切り替えることで、ロータマグネット40とステータコア64の極歯との間で生じる磁気吸引力と磁気反発力とが切り替わり、ロータ部50がベースプレート61に固定されたシャフト73を中心に、ベースプレート61に対して回転する。ロータ部50が高速で回転することにより軸受機構70に動圧が発生し、ロータ部50はシャフト73と第1円錐軸受部材74aと第2円錐軸受部材74bとに対して非接触状態で支持されながら回転する。
【0023】
ハブ10は、カップ状(有底円筒状)の部材であり、下側(矢印b方向)から上側(矢印a方向)に向かってステータ63を収容可能に形成された所定の深さを有する凹部である収容凹部11が形成されている。具体的に、ハブ10は、軸方向(矢印ab方向)に延在する円筒状のハブ円筒部13と、ハブ円筒部13の上側(矢印a方向)の端部から内側(矢印c方向)に延在する円盤状の円盤部12と、を有するカップ状に形成されている。
【0024】
ハブ円筒部13の下側(矢印b方向)の端部には、外側(矢印d方向)に向かって張り出す円環状のハブフランジ部14が設けられている。ハブフランジ部14の上側(矢印a方向)の取付面14aには、ディスク20が取り付けられており、ディスク20は、ロータ部50と共に回転する。
【0025】
円盤部12、ハブ円筒部13及びハブフランジ部14は、同軸に配設されており、軸Y1を中心軸としている。円盤部12、ハブ円筒部13及びハブフランジ部14は一体に形成されている。円盤部12、ハブ円筒部13及びハブフランジ部14は、例えば、アルミニウム合金等により形成されている。なお、円盤部12、ハブ円筒部13及びハブフランジ部14は、夫々又はいずれかが別体であってもよく、夫々又はいずれかが別材料で形成されていてもよい。
【0026】
円盤部12の中心には、円盤部12の下側(矢印b方向)の面(下面(内底面)12a)と上側(矢印a方向)の面(上面12b)との間で円盤部12を貫通した貫通孔12cが形成されている。円盤部12の貫通孔12cには、シャフト73が挿通されたスリーブ72が嵌入されている。円盤部12、シャフト73及びスリーブ72は、同軸に配設されており、軸Y1を中心軸としている。スリーブ72の外周面は、貫通孔12cの内周面と接して貫通孔12cに固定されている。
【0027】
円盤部12の下面12aには、接着剤ADを介してヨーク30のヨークフランジ部31が固定される接着部を備えている。本発明の第1の実施の形態に係るスピンドルモータ1の接着部は、突出部16及びヨーク支持部18である。円盤部12の下面12aには、下側(矢印b方向)に向かって突出部16が突出している。突出部16は、軸Y1を中心として環状に延在している。突出部16は、ハブ円筒部13の内周面13aよりも内側(矢印c方向)に設けられており、円盤部12の貫通孔12cよりも外側(矢印d方向)に設けられている。突出部16及びハブ円筒部13は、同軸に配設されており、軸Y1を中心軸としている。
【0028】
また、円盤部12の下面12aには、下側(矢印b方向)に向かってヨーク支持部18が突出している。ヨーク支持部18は、軸Y1を中心として環状に延在している。ヨーク支持部18は、突出部16よりも外側(矢印d方向)に形成されており、突出部16の外周面16a(図2)と半径方向において連接されている。ヨーク支持部18の軸方向における高さは、突出部16の軸方向における高さよりも低い。
【0029】
ヨーク支持部18は、ヨーク30と対向してヨーク30を支持する支持面18a(図2)を有している。ヨーク支持部18の支持面18aは、ヨーク支持部18の先端部分において、半径方向に環状に形成された面であり、軸方向においてヨーク30を支持する。ヨーク支持部18及び突出部16は、同軸に配設されており、軸Y1を中心軸としている。
【0030】
接着剤ADは、ヨーク支持部18の支持面18a、突出部16の外周面16aの上側(矢印a方向)の少なくとも一部、周溝17の内側(矢印c方向)の少なくとも一部に、軸Y1を中心として環状に存在している。接着剤ADは、周溝17よりも外側(矢印d方向)には存在せず、表面が周溝17内で露出している。
【0031】
また、円盤部12の下面12aには、上側(矢印a方向)に向かって周溝17が凹んでいる。周溝17(凹部)は、軸Y1を中心として環状に延在している。周溝17は、ヨーク支持部18よりも外側(矢印d方向)に形成されており、ハブ円筒部13の内周面13aよりも内側(矢印c方向)に形成されている。周溝17は、ヨーク支持部18とハブ円筒部13との間に形成されており、ヨーク支持部18とハブ円筒部13とに連接されている。
【0032】
周溝17の底面17a(図2では天面でもある)は、円盤部12の下面12aよりも下側(矢印b方向)に形成されており、ヨーク支持部18の支持面18aよりも上側(矢印a方向)に形成されている。周溝17は、周溝17の内側(矢印c方向)の縁部から最深部(底面17a)までは、外側(矢印d方向)に向かうに連れて連続的に深くなる傾斜部(傾斜面)に形成されている。この周溝17の形状により、周溝17の内側に塗布される接着剤ADは、周溝17の内側から満たされることが可能となる。
【0033】
周溝17及びハブ円筒部13は、同軸に配設されており、軸Y1を中心軸としている。周溝17内で留まって硬化した接着剤ADは、表面が周溝17で露出することとなる。すなわち、接着剤ADは、周溝17よりも外側にあるハブ円筒部13には存在しないこととなる。
【0034】
ヨーク30は、短辺部(ヨークフランジ部31)及び長辺部(ヨーク円筒部32)を有する断面視L字状又は略L字状の部材である。ヨーク30がハブ10に嵌合された状態において、ヨーク30と周溝17の底面17aとの間に間隙S1が形成され、ヨーク30とハブ10との間に間隙S2が形成されている。ヨーク30は、突出部16及びヨーク支持部18に接着剤ADを介して接着されており、ハブ円筒部13の内周面13aと接着剤ADを介して接着されていない。
【0035】
具体的に、ヨーク30は、軸方向(矢印ab方向)にハブ円筒部13に対向して延在する円筒状のヨーク円筒部32と、ヨーク円筒部32の上側(矢印a方向)の端部(上端部32a(図2))において、内側(矢印c方向)に向かって張り出す円環状のヨークフランジ部31とを有している。
【0036】
ヨークフランジ部31の上側(矢印a方向)の面(上端面31a(図2))は、内側(矢印c方向)の少なくとも一部がヨーク支持部18の支持面18aと対向しており、ヨーク支持部18の支持面18aに接して支持されている。ヨークフランジ部31の上端面31aは、外側(矢印d方向)の少なくとも一部が周溝17の底面17aと対向しており、ヨーク30の上端面31aの外側(矢印d方向)の少なくとも一部と周溝17の底面17aとの間に、軸方向において間隙S1が形成されている。
【0037】
ヨークフランジ部31の内側(矢印c方向)の面(内周面31b(図2))は、突出部16の外周面16aと対向しており、ヨークフランジ部31の内周面31bの直径は、突出部16の外周面16aの直径よりも小さい。従って、ヨークフランジ部31の内周面31bは、突出部16の外周面16aに嵌合されている。
【0038】
ハブ円筒部13とヨーク円筒部32とは、非接触である。具体的に、ヨークフランジ部31の半径方向における幅は、ヨーク支持部18の支持面18aの半径方向における幅と周溝17の半径方向における幅とを合わせた幅よりも小さい。従って、ヨーク円筒部32の外周面32bとハブ円筒部13の内周面13aとの間には、半径方向において間隙S2が形成されており、また、間隙S2は周溝17と連通されている。
【0039】
ヨークフランジ部31の上端面31aは、接着剤ADによりヨーク支持部18の支持面18aと接着されている。ヨークフランジ部31の内周面31bの上側(矢印a方向)の少なくとも一部は、接着剤ADにより突出部16の外周面16aと接着されている。ヨーク30の上端面31aの少なくとも一部と周溝17の底面17aとの間の内側(矢印c方向)の一部には、接着剤ADが留まっている。接着剤ADは、ハブ円筒部13の内周面13aには達しておらず、周溝17の全体に充填されていない。なお、接着剤ADは周溝17全体に充填されていてもよいが、周溝17を超えて間隙S2に達しないようにする。
【0040】
ロータマグネット40は、多極着磁された軸方向に延在する円筒状の部材であり、ロータマグネット40の外周面40aがヨーク30のヨーク円筒部32の内周面32cに固定されている。ロータマグネット40の内周面40bは、半径方向においてステータ63に対向している。ロータマグネット40及びヨーク30は、同軸に配設されており、軸Y1を中心軸としている。
【0041】
続いて、上述した構成を有するスピンドルモータ1におけるヨーク30とハブ10とを取り付ける方法について説明する。図3は、本発明の第1の実施の形態に係るスピンドルモータ1におけるヨーク30とハブ10とを取り付ける方法を説明するための図である。まず、図3に示すように、ハブ10は、図2とは上下逆に配置されており、ヨーク支持部18の支持面18aに接着剤ADが滴下又は塗布される。
【0042】
接着剤ADの量は、ヨークフランジ部31の上端面31aの少なくとも一部とヨーク支持部18の支持面18aとの間、ヨークフランジ部31の内周面31bと突出部16の外周面16aとの間の上側(矢印a方向)の少なくとも一部、及びヨーク30の上端面31aの少なくとも一部と周溝17の底面17aとの間の内側(矢印c方向)の少なくとも一部との間に留まる量に調整されている。
【0043】
続いて、ヨーク30は、ヨークフランジ部31の内周面31bが突出部16の外周面16aに接するように突出部16の外周面16aに嵌合され、接着剤ADが硬化される。これにより、ヨークフランジ部31の上端面31aの内側(矢印c方向)の少なくとも一部が、硬化した接着剤ADを介してヨーク支持部18の支持面18aに接するようにヨーク支持部18の支持面18aに支持される。ヨーク30のヨークフランジ部31の内周面31bの直径は、突出部16の外周面16aの直径よりも小さいため、ヨーク30をハブ10の突出部16に嵌合することができる。また、突出部16の外周面16aとヨークフランジ部31の内周面31bとは、これらの間に塗布された接着剤ADによって接着される。
【0044】
このように、本発明の第1の実施の形態に係るスピンドルモータ1は、円盤部12が、接着剤ADを介してヨークフランジ部31が固定される接着部(突出部16及びヨーク支持部18)と、接着部(突出部16及びヨーク支持部18)よりも半径方向外側(矢印d方向)に形成された周溝17と、を備える。このとき、接着剤ADは、周溝17よりも半径方向外側(矢印d方向)には存在せず、ハブ円筒部13とヨーク円筒部32とは、非接触である。
【0045】
ハブ円筒部13とヨーク円筒部32とを非接触とし、ヨーク30とハブ10の接触面積を低減することで、ハブ10に発生する応力を低減することができる。このため、ステータ63とロータマグネット40との間において発生する回転振動に基づく高次周波数(例えば、55〜75kHz帯)の振動がハブ10に伝わるのを低減して、ハブ10に取り付けられたディスク20に高次周波数の振動が発生するのを低減することができる。
【0046】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係るスピンドルモータ1のヨーク30とハブ10との間の間隙S2の接着剤充填率とハブ10に発生する振動との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。横軸は周波数であり、縦軸は各周波数の振幅である。本シミュレーションにおいては、間隙S2における接着剤ADの充填率を調整した。また、ロータ部50には、55〜75kHzの帯域の振動を加えた。本シミュレーションは、本発明の第1の実施の形態に係るスピンドルモータ1の実施例及び比較例1〜5を対象とした。
【0047】
比較例1においては、ヨーク30の上端面31aと周溝17の底面17aとの間の間隙S1が接着剤ADで満たされ、更にヨーク円筒部32の外周面32bとハブ円筒部13の内周面13aとの間の間隙S2に接着剤ADが間隙S1側から50%充填されている(図4では振動線A1を示す)。比較例2においては、間隙S1が接着剤ADで満たされ、更に間隙S2に接着剤ADが間隙S1側から33%充填されている(図4では振動線A2を示す)。比較例3においては、間隙S1が接着剤ADで満たされ、更に間隙S2に接着剤ADが間隙S1側から25%充填されている(図4では振動線A3を示す)。
【0048】
比較例4においては、間隙S1が接着剤ADで満たされ、更に間隙S2に接着剤ADが間隙S1側から20%充填されている(図4では振動線A4を示す)。比較例5においては、間隙S1が接着剤ADで満たされ、更に間隙S2に接着剤ADが間隙S1側から17%充填されている(図4では振動線A5を示す)。実施例においては、間隙S2に接着剤ADが0%充填されている(図4では振動線A6を示す)。すなわち、実施例では、図2に示すように、接着剤ADは、周溝17の内側に留まり、間隙S1が充填されておらず、更に間隙S2にも充填されていない。
【0049】
図4に示すシミュレーション結果のように、50%充填である比較例1は、振動線A1の振幅分布となり、33%充填である比較例2は、振動線A2の振幅分布となった。25%充填である比較例3は、振動線A3の振幅分布となり、20%充填である比較例4は、振動線A4の振幅分布となった。17%充填である比較例5は、振動線A5の振幅分布となり、0%充填である実施例は、振動線A6の振幅分布となった。
【0050】
図4に示すシミュレーション結果より、接着剤充填率が小さいほど、ハブに発生する高次周波数の振動の振幅を低減できることが分かる。実施例で示した本発明の第1の実施の形態に係るスピンドルモータ1では、ヨーク30とハブ10との間に間隙S2が形成され、接着剤ADが周溝17よりも半径方向外側(矢印d方向)には存在していない。すなわち、ハブ円筒部13とヨーク円筒部32とは非接触である。これにより、ステータ63とロータマグネット40との間において発生する回転振動に基づく高次周波数の振動がハブ10に伝わることを低減して、ハブ10に高次周波数の振動が発生することを低減することができる。
【0051】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るスピンドルモータ80の構成を説明する。図5は、本発明の第2の実施の形態に係るスピンドルモータ80のロータ部90の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。
【0052】
以下、上述の第1の実施の形態に係るスピンドルモータ1と同一の又は類似する構成に対しては同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。本発明の第2の実施の形態に係るスピンドルモータ80は、上述の本発明の第1の実施の形態に係るスピンドルモータ1に対してハブ及び接着部の構成が異なる。具体的に、スピンドルモータ80においては、ハブ10に代えてハブ100が設けられている。また、スピンドルモータ80の接着部は、突出部16である。
【0053】
具体的に、ハブ100には、円盤部12の下面12aに、ハブ円筒部13の内周面13aと突出部16との間に周溝101が形成されており、周溝101は、内側(矢印c方向)において突出部16と連接されている。また、ハブ100には、周溝101とハブ円筒部13の内周面13aとの間に、円盤部12の下面12aに、ヨーク30を支持するヨーク支持部102が設けられている。
【0054】
ヨーク支持部102は、周溝101よりも外側(矢印d方向)に形成されている。ヨーク支持部102は、ハブ円筒部13の内周面13aよりも内側(矢印c方向)に形成されており、ハブ円筒部13の内周面13aと半径方向において連接されている。ヨーク支持部102は、ヨーク30と対向してヨーク30を支持する支持面102aを有している。
【0055】
周溝101は、上側(矢印a方向)に向かって凹んでいる。周溝101は、軸Y1を中心として環状に延在している。周溝101は、ヨーク支持部102よりも内側(矢印c方向)に形成されており、突出部16よりも外側(矢印d方向)に形成されている。周溝101は、ヨーク支持部102と突出部16との間に形成されており、ヨーク支持部102と突出部16の外周面16aとに連接されている。周溝101の底面101a(図5では天面でもある)は、円盤部12の下面12aよりも下側(矢印b方向)に形成されており、ヨーク支持部102の支持面102aよりも上側(矢印a方向)に形成されている。
【0056】
接着剤ADは、突出部16の外周面16aの上側(矢印a方向)の少なくとも一部、周溝17の内側(矢印c方向)の少なくとも一部とヨーク30のヨークフランジ部31との間に、軸Y1を中心として環状に存在している。接着剤ADは、周溝101よりも外側(矢印d方向)には存在せず、表面が周溝101内で露出している。
【0057】
ヨークフランジ部31の上端面31aは、外側(矢印d方向)の少なくとも一部がヨーク支持部102の支持面102aと対向しており、ヨーク支持部102の支持面102aに接して支持されている。ヨークフランジ部31の上端面31aは、内側(矢印c方向)の少なくとも一部が周溝101の底面101aと対向しており、ヨーク30の上端面31aの内側(矢印c方向)の少なくとも一部と周溝101の底面101aとの間に、軸方向において間隙S3が形成されている。
【0058】
ヨークフランジ部31の内周面31bは、突出部16の外周面16aと対向しており、ヨークフランジ部31の内周面31bの直径は、突出部16の外周面16aの直径よりも小さい。従って、ヨークフランジ部31の内周面31bは、突出部16の外周面16aに嵌合されている。
【0059】
ハブ円筒部13とヨーク円筒部32とは、非接触である。具体的に、ヨークフランジ部31の半径方向における幅は、ヨーク支持部102の支持面102aの半径方向における幅と周溝101の半径方向における幅とを合わせた幅よりも小さい。従って、ヨーク円筒部32の外周面32bとハブ10のハブ円筒部13の内周面13aとの間には、半径方向において間隙S4が形成されている。なお、間隙S4は、周溝101と離れて形成されており、周溝101と連通されていない。
【0060】
ヨークフランジ部31の内周面31bの上側(矢印a方向)の少なくとも一部は、接着剤ADにより突出部16の外周面16aと接着されている。ヨーク30の上端面31aの少なくとも一部と周溝101の底面101aとの間の内側(矢印c方向)の一部には、接着剤ADが留まっている。接着剤ADは、ヨーク支持部102には達しておらず、周溝101の全体に充填されていない。なお、接着剤ADは周溝101全体に充填されていてもよいが、周溝101及びヨーク支持部102を超えて間隙S4に達しないようにする。
【0061】
続いて、上述した構成を有するスピンドルモータ80におけるヨーク30とハブ100とを取り付ける方法について説明する。図6は、本発明の第2の実施の形態に係るスピンドルモータ80におけるヨーク30とハブ100とを取り付ける方法を説明するための図である。まず、図6に示すように、ハブ100は、図5とは上下逆に配置されており、突出部16の外周面16aに接着剤ADが滴下又は塗布される。
【0062】
接着剤ADの量は、ヨークフランジ部31の内周面31bと突出部16の外周面16aとの間の上側(矢印a方向)の少なくとも一部、及びヨーク30の上端面31aの少なくとも一部と周溝17の底面17aとの間の内側(矢印c方向)の少なくとも一部との間に留まる量に調整されている。
【0063】
続いて、ヨーク30は、ヨークフランジ部31の内周面31bが突出部16の外周面16aに接するように突出部16の外周面16aに嵌合され、接着剤ADが硬化される。これにより、ヨークフランジ部31の上端面31aの外側(矢印d方向)の少なくとも一部が、ヨーク支持部102の支持面102aに接するようにヨーク支持部102の支持面102aに支持される。ヨーク30のヨークフランジ部31の内周面31bの直径は、突出部16の外周面16aの直径よりも小さいため、ヨーク30をハブ100の突出部16に嵌合することができる。また、突出部16の外周面16aとヨークフランジ部31の内周面31bとは、これらの間に塗布された接着剤ADによって接着される。
【0064】
このように、本発明の第2の実施の形態に係るスピンドルモータ80は、円盤部12が、接着剤ADを介してヨークフランジ部31が固定される接着部(突出部16)と、接着部(突出部16)よりも半径方向外側(矢印d方向)に形成された周溝101と、を備える。このとき、接着剤ADは、周溝101よりも半径方向外側(矢印d方向)には存在せず、ハブ円筒部13とヨーク円筒部32とは、非接触である。
【0065】
周溝101が突出部16とヨーク支持部102との間に形成されており、突出部16とヨーク支持部102とに連接されている。また、周溝101とハブ円筒部13の内周面13aとの間に、ヨーク30を支持するヨーク支持部102が設けられている。このため、ヨーク円筒部32の外周面32bとハブ円筒部13の内周面13aとの間に形成された間隙S4が周溝101と離れて形成されており、周溝101と連通されていない。
【0066】
従って、接着剤ADがヨーク円筒部32の外周面32bとハブ円筒部13の内周面13aとの間の間隙S4に充填されるのが確実に防止される。このため、ステータ63とロータマグネット40との間において発生する回転振動に基づく高次周波数(例えば、55〜75kHz帯)の振動が接着剤ADを介してハブ100に伝わるのを低減して、ハブ100に取り付けられたディスク20に高次周波数の振動が発生するのを低減することができる。
【0067】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0068】
例えば、本発明の第1の実施の形態に係るスピンドルモータ1においては、円盤部12が、接着剤ADを介してヨークフランジ部31が固定される接着部(突出部16及びヨーク支持部18)と、接着部(突出部16及びヨーク支持部18)よりも半径方向外側(矢印d方向)に形成された周溝17と、を備えた場合を一例に本発明の実施の形態について説明した。本発明はこれに限らず、図7に示すように、周溝17とハブ円筒部13との間に外側ヨーク支持部103を有していてもよい。外側ヨーク支持部103は、軸Y1を中心として環状に延在している。外側ヨーク支持部103は、ハブ円筒部13の内周面13aよりも内側(矢印c方向)に形成されており、ハブ円筒部13の内周面13aと半径方向において連接されている。
【0069】
また、本発明の第1,2の実施の形態に係るスピンドルモータ1,80においては、円盤部12が、接着剤ADを介してヨークフランジ部31が固定される場合を一例に本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限らず、接着剤ADを介していなくてもよい。このような場合であっても、本発明の第1,2の実施の形態に係るスピンドルモータ1,80では、ヨークフランジ部31の内周面31bの直径が突出部16の外周面16aの直径よりも小さくなっているため、ヨーク30をハブ10に嵌合することで、本発明の第1,2の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0070】
1,80…スピンドルモータ、10,100…ハブ、11…収容凹部、12…円盤部、12a…下面、12b…上面、12c…貫通孔、13…ハブ円筒部、13a…内周面、14…ハブフランジ部、14a…取付面、16…突出部、16a…外周面、17,101…周溝、17a,101a…底面、18,102…ヨーク支持部、18a,102a…支持面、20…ディスク、30…ヨーク、31…ヨークフランジ部、31a…上端面、31b…内周面、32…ヨーク円筒部、32a…上端部、32b…外周面、32c…内周面、40…ロータマグネット、40a…外周面、40b…内周面、50,90…ロータ部、60…ステータ部、61…ベースプレート、61a…外面、62…ボス部、63…ステータ、64…ステータコア、65…コイル、70…軸受機構、72…スリーブ、72a,72b…第1,第2円錐内面、73…シャフト、74a,74b…第1,第2円錐軸受部材、A1〜A6…振動線、AD…接着剤、S1〜S4…間隙、Y1…軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7