【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の電動弁101において、
図7に示すように、L字環状パッキン137aは、弁体120に固定される基体部137kと弁体案内部172に摺接する外周面137xを有するリップ部137sとを備えている。このリップ部137sは、低温時において、中心軸L側に収縮する性質を有している。
【0007】
このため、上述したように、L字環状パッキン137aのリップ部137sの外周面137xを弁体案内部172の内周面172aに摺接させてシールを行った場合、流体温度が−40℃以下となるような低温時にリップ部137sが中心軸L側に収縮し、リップ部137sの外周面137xと弁体案内部172の内周面172aとの密着度が低減されて、シール部材137のシール性が低下するという問題があった。
【0008】
ここで、流体温度が低温になった場合においてもシール部材137のシール性を維持できるようにL字環状パッキン137aのリップ部137sを弁体案内部172側に付勢する板バネ137cの張力を増強する方法も考えられる。しかしこの場合、リップ部137sの外周面137xと弁体案内部172の内周面172aとの間の摺動抵抗が増加するため、作動負荷が大きくなり、弁体120の摺動性に影響するおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、低温時においてもシール部材のシール性を維持することができ、かつ弁体の摺動性が良好な、圧力バランス機構が安定した電動弁、および該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電動弁は、
ケースの内部に収容されたロータの回転運動を、雄ネジ部材と雌ネジ部材とのネジ螺合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体を前記弁本体の中心軸方向に移動させるとともに、前記弁体の上方側に背圧室を設け、前記背圧室に弁ポート内の圧力を導入する電動弁であって、
前記弁体の前記中心軸方向への移動を案内する弁体案内部と、
前記弁体案内部と同軸に配置され、リップシール型の環状パッキン
および板バネを有するシール部材と
を備え、
前記環状パッキンは、
前記弁体案内部に固定される基体部と、
前記基体部の前記弁体側から前記中心軸方向に延設され、前記弁体の外周面に摺接すると共に低温時において前記弁体側に収縮する少なくとも一箇所のリップ部と
を備え
、
前記板バネは、低温時に前記リップ部が収縮する前記弁体側に前記リップ部を付勢することを特徴とする。
【0011】
このように、環状パッキンを弁体案内部と同軸に配置し、リップ部を弁体の外周面に摺接させることにより、低温時にリップ部が収縮する方向とリップ部が弁体の外周面に密着する方向とが同方向になるため、低温時におけるシール部材のシール性を維持することができる。この場合、L字環状パッキンの密着度を維持するために後述する板バネの付勢部の張力を増強させる必要もないため、弁体の摺動性をも維持することができる。すなわち、低温時においてもシール部材のシール性を維持することができ、かつ弁体の摺動性が良好な、圧力バランス機構が安定した電動弁を提供することができる。
また、板バネの付勢部が環状パッキンのリップ部を付勢する方向を、流体の低温時にL字環状パッキンのリップ部が収縮する方向と同じ弁体側に揃えることにより、板バネの付勢力がリップ部の収縮力で低減されず、流体温度が低温の場合でもシール性が低下することがない。また、板バネの付勢力とリップ部の収縮力が共に弁体側に向かうために、板バネの付勢力の増強が不要となり、弁体の良好な摺動性を維持できるため、作動性が安定した圧力バランス機構を実現することができる。
【0012】
また、本発明の電動弁は、
前記シール部材は、
前記リップ部を前記ロータ側に延設した一の前記環状パッキンと、
前記リップ部を前記弁ポート側に延設した他の前記環状パッキンと
を備えることを特徴とする。
【0013】
このように、リップ部の向きが異なる一対の環状パッキンを上下に配置することにより、背圧室内の圧力が弁室(弁本体内において弁体の外側に形成された空間)内の圧力よりも高圧になる場合、低圧になる場合のいずれにおいても、背圧室と弁室の間の流体の漏れを防止することができ、作動性が安定した圧力バランス型の電動弁を実現することができる。
【0014】
また、本発明の電動弁は、
前記環状パッキンは、
軸方向の断面形状がL字状のL字環状パッキンであることを特徴とする。
【0015】
このように、一対のL字環状パッキンを上下に配置することにより、背圧室と弁室の間の流体の漏れを防止することができる。また、摺動性の優れたL字環状パッキンにより、作動性が安定した圧力バランス型の電動弁を実現することができる。
【0016】
また、本発明の電動弁は、
前記リップ部を前記ロータ側に延設した一の前記L字環状パッキンと、
一の前記環状パッキンの前記弁ポート側に配置され、前記リップ部を前記弁ポート側に延設した他のL字環状パッキンと
を備え、
一の前記L字環状パッキンおよび他の前記L字環状パッキンの前記基体部は前記中心軸方向に積層されていることを特徴とする。
【0017】
このように、L字環状パッキンを弁軸方向に積層することにより、背圧室内の圧力が弁室内の圧力よりも高圧になる場合、低圧になる場合のいずれにおいても、良好な摺動シール性を備えかつ作動性が安定した圧力バランス機構を実現することができる。
【0020】
また、本発明の電動弁は、
前記板バネは、
前記中心軸方向において前記環状パッキンの前記基体部に隣接して配置される板バネ固定部と、
前記板バネ固定部の前記弁体側に、屈曲して前記中心軸方向に延び、前記リップ部を前記環状パッキンの前記弁体側に付勢する付勢部と
を備えることを特徴とする。
【0021】
このように、板バネの弁体側に、屈曲して前記中心軸方向に延びる付勢部を備えることにより、環状パッキンのリップ部を確実に付勢することができ、安定したシール性を得ることができる。
【0022】
また、本発明の電動弁は、
前記シール部材は、
前記付勢部を前記ロータ側に延設した一の前記板バネと、
前記付勢部を前記弁ポート側に延設した他の前記板バネと
を備え、
一の前記板バネの前記付勢部が一の前記環状パッキンの前記リップ部を付勢し、
他の前記板バネの前記付勢部が他の前記環状パッキンの前記リップ部を付勢することを特徴とする。
【0023】
このように、上側の板バネおよび環状パッキンの組み合わせ、下側の板バネおよび環状パッキンの組み合わせのいずれにおいても板バネの付勢部の付勢方向と流体の低温時におけるリップ部の収縮方向を同一方向とすることにより、上下いずれの環状パッキンにおいても、板バネの付勢力がリップ部の収縮力で低減されず、流体温度が低温の場合でもシール性が低下することがない。また、上下いずれの環状パッキンにおいても、板バネの付勢力とリップ部の収縮力が共に弁体側に向かうために、板バネの付勢力の増強が不要となる。よって、弁体の良好な摺動性を維持できる。
【0024】
また、本発明の電動弁は、
前記弁体案内部は、
前記中心軸方向に延設され、内周面に第1の段差が形成された筒状の側壁と、
環状の固定部と、
前記弁体を前記中心軸方向に案内する弁ガイド部と、
を備え、
前記固定部と前記弁ガイド部で前記シール部材を挟持した状態において、
前記固定部は、前記第1の段差に突き当てて固定され、
前記弁ガイド部は、前記側壁の前記弁ポート側端部に固定されていることを特徴とする。
【0025】
このように、段差を利用し、固定部を弁中心軸方向に突き当てて側壁に固着することにより、シール部材の中心軸方向の位置が安定するとともに、シール部材の潰し量も安定するため、リップ部の摺動性とシール性を安定させることができる。
【0026】
また、本発明の電動弁は、
前記弁ガイド部の外周側には第2の段差が形成され、
前記弁ガイド部は、前記第2の段差を前記側壁の下端に突き当てて前記側壁に固定されていることを特徴とする。
【0027】
このように、段差を側壁の下端に突き当てて弁ガイド部を側壁に固着することにより、シール部材の中心軸方向の位置が安定するとともに、シール部材の潰し量も安定するため、リップ部の摺動性とシール性を安定させることができる。
【0028】
また、本発明の冷凍サイクルシステムは、
圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器を含む冷凍サイクルシステムであって、上述の電動弁を用いることを特徴とする。
【0029】
このような電動弁であれば、制御弁として、正確に弁の開度を調整し、流量を制御することが出来るため、冷凍サイクルシステムとして好適である。