特許第6952015号(P6952015)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952015
(24)【登録日】2021年9月29日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】電動弁および冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20211011BHJP
   F25B 41/35 20210101ALN20211011BHJP
【FI】
   F16K31/04 Z
   !F25B41/35
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-116159(P2018-116159)
(22)【出願日】2018年6月19日
(65)【公開番号】特開2019-218996(P2019-218996A)
(43)【公開日】2019年12月26日
【審査請求日】2020年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】村田 雅弘
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−211600(JP,A)
【文献】 特開昭63−243581(JP,A)
【文献】 特開2017−223293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00−31/05
F25B 41/35
F16K 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースの内部に収容されたロータの回転運動を、雄ネジ部材と雌ネジ部材とのネジ螺合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体を前記弁本体の中心軸方向に移動させるとともに、前記弁体の上方側に背圧室を設け、前記背圧室に弁ポート内の圧力を導入する電動弁であって、
前記弁体の前記中心軸方向への移動を案内する弁体案内部と、
前記弁体案内部と同軸に配置され、リップシール型の環状パッキンおよび板バネを有するシール部材と
を備え、
前記環状パッキンは、
前記弁体案内部に固定される基体部と、
前記基体部の前記弁体側から前記中心軸方向に延設され、前記弁体の外周面に摺接すると共に低温時において前記弁体側に収縮する少なくとも一箇所のリップ部と
を備え
前記板バネは、低温時に前記リップ部が収縮する前記弁体側に前記リップ部を付勢することを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記シール部材は、
前記リップ部を前記ロータ側に延設した一の前記環状パッキンと、
前記リップ部を前記弁ポート側に延設した他の前記環状パッキンと
を備えることを特徴とする請求項1記載の電動弁。
【請求項3】
前記環状パッキンは、
軸方向の断面形状がL字状のL字環状パッキンであることを特徴とする請求項1または2記載の電動弁。
【請求項4】
前記リップ部を前記ロータ側に延設した一の前記L字環状パッキンと、
一の前記環状パッキンの前記弁ポート側に配置され、前記リップ部を前記弁ポート側に延設した他の前記L字環状パッキンと
を備え、
一の前記L字環状パッキンおよび他の前記L字環状パッキンの前記基体部は前記中心軸方向に積層されていることを特徴とする請求項3記載の電動弁。
【請求項5】
前記板バネは、
前記中心軸方向において前記環状パッキンの前記基体部に隣接して配置される板バネ固定部と、
前記板バネ固定部の前記弁体側に、屈曲して前記中心軸方向に延び、前記リップ部を前記環状パッキンの前記弁体側に付勢する付勢部と
を備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の電動弁。
【請求項6】
前記シール部材は、
前記付勢部を前記ロータ側に延設した一の前記板バネと、
前記付勢部を前記弁ポート側に延設した他の前記板バネと
を備え、
一の前記板バネの前記付勢部が一の前記環状パッキンの前記リップ部を付勢し、
他の前記板バネの前記付勢部が他の前記環状パッキンの前記リップ部を付勢することを特徴とする請求項記載の電動弁。
【請求項7】
前記弁体案内部は、
前記中心軸方向に延設され、内周面に第1の段差が形成された筒状の側壁と、
環状の固定部と、
前記弁体を前記中心軸方向に案内する弁ガイド部と、を備え、
前記固定部と前記弁ガイド部で前記シール部材を挟持した状態において、
前記固定部は、前記第1の段差に突き当てて固定され、
前記弁ガイド部は、前記側壁の前記弁ポート側端部に固定されていることを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の電動弁。
【請求項8】
前記弁ガイド部の外周側には第2の段差が形成され、
前記弁ガイド部は、前記第2の段差を前記側壁の下端に突き当てて前記側壁に固定されていることを特徴とする請求項記載の電動弁。
【請求項9】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1〜の何れか一項に記載の電動弁を用いることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁および該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、大型のパッケージエアコンや冷凍機に用いられる流体制御弁が知られている。この流体制御弁においては、流量制御用として複数使用されていた電動弁を1つにまとめるなどの制御機器合理化等の背景から、大口径かつ高圧力差が生じた際にも良好な作動性を発揮できる性能が望まれるが、比較的大口径の流量制御は、マグネットのトルクにより発生するねじの推力に対し圧力差によって発生する弁体への負荷が大きく、弁体を作動させるために大きな駆動力が必要となる。
【0003】
そこで、かかる弁体の作動性を向上させるべく、以下に説明するような圧力バランス機構が採用されている(たとえば、特許文献1参照)。具体的には、図5に示す電動弁101のように、弁室107の上方側に背圧室129を画成するとともに、弁ポート119内の圧力を弁体120に設けられた導通路124を介して背圧室129内に導入し、背圧室129内の圧力(背圧)を利用することで、弁閉状態における弁体120に作用する押し下げ力(弁閉方向に作用する力)と押し上げ力(弁開方向に作用する力)との圧力差による力を無くし、弁体120に対する負荷を小さくしている。
【0004】
この圧力バランス機構を採用した電動弁101においては、背圧室129と弁室107とを気密に分離するために、弁体120にシール部材137が装着される。なお、シール部材137には、図6に示すように、断面L字状のL字環状パッキン137aの間に環状の補強板137bを挟んで環状に形成されている。このシール部材137には、L字環状パッキン137aの外周面137xが弁体案内部172の内周面172aに密着するように後述するリップ部を付勢する板バネ137cが設けられ、摺動性とシール性の両立が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−180639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の電動弁101において、図7に示すように、L字環状パッキン137aは、弁体120に固定される基体部137kと弁体案内部172に摺接する外周面137xを有するリップ部137sとを備えている。このリップ部137sは、低温時において、中心軸L側に収縮する性質を有している。
【0007】
このため、上述したように、L字環状パッキン137aのリップ部137sの外周面137xを弁体案内部172の内周面172aに摺接させてシールを行った場合、流体温度が−40℃以下となるような低温時にリップ部137sが中心軸L側に収縮し、リップ部137sの外周面137xと弁体案内部172の内周面172aとの密着度が低減されて、シール部材137のシール性が低下するという問題があった。
【0008】
ここで、流体温度が低温になった場合においてもシール部材137のシール性を維持できるようにL字環状パッキン137aのリップ部137sを弁体案内部172側に付勢する板バネ137cの張力を増強する方法も考えられる。しかしこの場合、リップ部137sの外周面137xと弁体案内部172の内周面172aとの間の摺動抵抗が増加するため、作動負荷が大きくなり、弁体120の摺動性に影響するおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、低温時においてもシール部材のシール性を維持することができ、かつ弁体の摺動性が良好な、圧力バランス機構が安定した電動弁、および該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の電動弁は、
ケースの内部に収容されたロータの回転運動を、雄ネジ部材と雌ネジ部材とのネジ螺合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体を前記弁本体の中心軸方向に移動させるとともに、前記弁体の上方側に背圧室を設け、前記背圧室に弁ポート内の圧力を導入する電動弁であって、
前記弁体の前記中心軸方向への移動を案内する弁体案内部と、
前記弁体案内部と同軸に配置され、リップシール型の環状パッキンおよび板バネを有するシール部材と
を備え、
前記環状パッキンは、
前記弁体案内部に固定される基体部と、
前記基体部の前記弁体側から前記中心軸方向に延設され、前記弁体の外周面に摺接すると共に低温時において前記弁体側に収縮する少なくとも一箇所のリップ部と
を備え
前記板バネは、低温時に前記リップ部が収縮する前記弁体側に前記リップ部を付勢することを特徴とする。
【0011】
このように、環状パッキンを弁体案内部と同軸に配置し、リップ部を弁体の外周面に摺接させることにより、低温時にリップ部が収縮する方向とリップ部が弁体の外周面に密着する方向とが同方向になるため、低温時におけるシール部材のシール性を維持することができる。この場合、L字環状パッキンの密着度を維持するために後述する板バネの付勢部の張力を増強させる必要もないため、弁体の摺動性をも維持することができる。すなわち、低温時においてもシール部材のシール性を維持することができ、かつ弁体の摺動性が良好な、圧力バランス機構が安定した電動弁を提供することができる。
また、板バネの付勢部が環状パッキンのリップ部を付勢する方向を、流体の低温時にL字環状パッキンのリップ部が収縮する方向と同じ弁体側に揃えることにより、板バネの付勢力がリップ部の収縮力で低減されず、流体温度が低温の場合でもシール性が低下することがない。また、板バネの付勢力とリップ部の収縮力が共に弁体側に向かうために、板バネの付勢力の増強が不要となり、弁体の良好な摺動性を維持できるため、作動性が安定した圧力バランス機構を実現することができる。
【0012】
また、本発明の電動弁は、
前記シール部材は、
前記リップ部を前記ロータ側に延設した一の前記環状パッキンと、
前記リップ部を前記弁ポート側に延設した他の前記環状パッキンと
を備えることを特徴とする。
【0013】
このように、リップ部の向きが異なる一対の環状パッキンを上下に配置することにより、背圧室内の圧力が弁室(弁本体内において弁体の外側に形成された空間)内の圧力よりも高圧になる場合、低圧になる場合のいずれにおいても、背圧室と弁室の間の流体の漏れを防止することができ、作動性が安定した圧力バランス型の電動弁を実現することができる。
【0014】
また、本発明の電動弁は、
前記環状パッキンは、
軸方向の断面形状がL字状のL字環状パッキンであることを特徴とする。
【0015】
このように、一対のL字環状パッキンを上下に配置することにより、背圧室と弁室の間の流体の漏れを防止することができる。また、摺動性の優れたL字環状パッキンにより、作動性が安定した圧力バランス型の電動弁を実現することができる。
【0016】
また、本発明の電動弁は、
前記リップ部を前記ロータ側に延設した一の前記L字環状パッキンと、
一の前記環状パッキンの前記弁ポート側に配置され、前記リップ部を前記弁ポート側に延設した他のL字環状パッキンと
を備え、
一の前記L字環状パッキンおよび他の前記L字環状パッキンの前記基体部は前記中心軸方向に積層されていることを特徴とする。
【0017】
このように、L字環状パッキンを弁軸方向に積層することにより、背圧室内の圧力が弁室内の圧力よりも高圧になる場合、低圧になる場合のいずれにおいても、良好な摺動シール性を備えかつ作動性が安定した圧力バランス機構を実現することができる。
【0020】
また、本発明の電動弁は、
前記板バネは、
前記中心軸方向において前記環状パッキンの前記基体部に隣接して配置される板バネ固定部と、
前記板バネ固定部の前記弁体側に、屈曲して前記中心軸方向に延び、前記リップ部を前記環状パッキンの前記弁体側に付勢する付勢部と
を備えることを特徴とする。
【0021】
このように、板バネの弁体側に、屈曲して前記中心軸方向に延びる付勢部を備えることにより、環状パッキンのリップ部を確実に付勢することができ、安定したシール性を得ることができる。
【0022】
また、本発明の電動弁は、
前記シール部材は、
前記付勢部を前記ロータ側に延設した一の前記板バネと、
前記付勢部を前記弁ポート側に延設した他の前記板バネと
を備え、
一の前記板バネの前記付勢部が一の前記環状パッキンの前記リップ部を付勢し、
他の前記板バネの前記付勢部が他の前記環状パッキンの前記リップ部を付勢することを特徴とする。
【0023】
このように、上側の板バネおよび環状パッキンの組み合わせ、下側の板バネおよび環状パッキンの組み合わせのいずれにおいても板バネの付勢部の付勢方向と流体の低温時におけるリップ部の収縮方向を同一方向とすることにより、上下いずれの環状パッキンにおいても、板バネの付勢力がリップ部の収縮力で低減されず、流体温度が低温の場合でもシール性が低下することがない。また、上下いずれの環状パッキンにおいても、板バネの付勢力とリップ部の収縮力が共に弁体側に向かうために、板バネの付勢力の増強が不要となる。よって、弁体の良好な摺動性を維持できる。
【0024】
また、本発明の電動弁は、
前記弁体案内部は、
前記中心軸方向に延設され、内周面に第1の段差が形成された筒状の側壁と、
環状の固定部と、
前記弁体を前記中心軸方向に案内する弁ガイド部と、
を備え、
前記固定部と前記弁ガイド部で前記シール部材を挟持した状態において、
前記固定部は、前記第1の段差に突き当てて固定され、
前記弁ガイド部は、前記側壁の前記弁ポート側端部に固定されていることを特徴とする。
【0025】
このように、段差を利用し、固定部を弁中心軸方向に突き当てて側壁に固着することにより、シール部材の中心軸方向の位置が安定するとともに、シール部材の潰し量も安定するため、リップ部の摺動性とシール性を安定させることができる。
【0026】
また、本発明の電動弁は、
前記弁ガイド部の外周側には第2の段差が形成され、
前記弁ガイド部は、前記第2の段差を前記側壁の下端に突き当てて前記側壁に固定されていることを特徴とする。
【0027】
このように、段差を側壁の下端に突き当てて弁ガイド部を側壁に固着することにより、シール部材の中心軸方向の位置が安定するとともに、シール部材の潰し量も安定するため、リップ部の摺動性とシール性を安定させることができる。
【0028】
また、本発明の冷凍サイクルシステムは、
圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器を含む冷凍サイクルシステムであって、上述の電動弁を用いることを特徴とする。
【0029】
このような電動弁であれば、制御弁として、正確に弁の開度を調整し、流量を制御することが出来るため、冷凍サイクルシステムとして好適である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、低温時においてもシール部材のシール性を維持することができ、かつ弁体の摺動性が良好な、圧力バランス機構が安定した電動弁、および該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施の形態に係る電動弁の概略断面図である。
図2】実施の形態に係る電動弁の要部拡大図である。
図3】実施の形態に係る電動弁のシール部分を示す拡大図である。
図4】他の実施の形態に係るシール部材を示す図である。
図5】従来の電動弁の概略断面図である。
図6】従来の電動弁の要部拡大図である。
図7】従来の電動弁のシール部分を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る電動弁について説明する。図1は、実施の形態に係る電動弁2を示した概略断面図である。なお、本明細書において、「上」あるいは「下」とは図1の状態で規定したものである。すなわち、ロータ4は弁体17より上方に位置している。
【0033】
この電動弁2では、金属により筒状のカップ形状をなすケース60の開口側の下方に、弁本体30が溶接などにより一体的に接続されている。
ここで、弁本体30は、たとえばステンレス等の金属から成り、内部において弁体17の外側に形成された空間である弁室11を有している。また、弁本体30の側面には、弁室11に直接連通するたとえばステンレス製や銅製の第1管継手12が固定装着されている。さらに、弁本体30の下方内側には、断面円形の弁ポート16aが内部に貫通して形成された弁座部16が組み込まれている。弁ポート16aは、弁体17の直下において弁体17と同軸方向に設けられている。弁座部16には、弁ポート16a、弁室11を介して第1管継手12に連通するたとえばステンレス製や銅製の第2管継手15が固定装着されている。
【0034】
ケース60の内部には、回転可能なロータ4が収容され、ロータ4の軸芯部分には、ブッシュ部材33を介して弁軸41が配置されている。なお、ロータ4は、磁性粉を含有する樹脂材料等の磁性を有する素材で形成されている。ブッシュ部材33と弁軸41は、共にたとえばステンレス等の金属で形成されており、ブッシュ部材33で結合された弁軸41とロータ4とは、回転しながら上下方向に一体的に移動する。なお、この弁軸41の中間部付近の外周面には雄ネジ41aが形成されている。本実施の形態では、弁軸41が雄ネジ部材として機能している。また、弁体17は弁ポート16aに対して近接又は離間可能となっている。
【0035】
ケース60の外周には、図示しないヨーク、ボビン、およびコイルなどからなるステータが配置され、ロータ4とステータとでステッピングモータが構成されている。
ケース60の天井面にはガイド支持体52が固定されている。ガイド支持体52は、円筒部53と、円筒部53の上端側に形成された傘状部54とを有し、全体をプレス加工により一体成形されている。傘状部54はケース60の頂部内側と略同形状に成形されている。
【0036】
ガイド支持体52の円筒部53内には、弁軸41のガイドを兼ねる筒部材65が嵌合されている。筒部材65は、金属、合成樹脂、あるいは表面処理を施された部品により構成され、弁軸41を回転可能に保持している。
【0037】
弁軸41のブッシュ部材33より下方には、後述するように弁軸41との間でネジ送り機構Aを構成するとともに弁軸41の傾きを抑制する機能を有する弁軸ホルダ6が、弁本体30に対して相対的に回転不能に固定されている。
【0038】
この弁軸ホルダ6は、上部側の筒状小径部6a、下部側の筒状大径部6b、後述する弁体案内部72の内周面に嵌合される嵌合部6c、リング状のフランジ部6f、および嵌合部6cの下方に延設された延設部6kから成る。そして、弁軸ホルダ6の内部には、後述する弁ガイド18を収容する収容室6hが形成されている。なお、弁軸ホルダ6は、金属のフランジ部6f以外が樹脂材料で形成されている。
【0039】
また、この弁軸ホルダ6の筒状小径部6aの上部開口部6gから所定の深さまで下方に向かって雌ネジ6dが形成されている。このため、本実施の形態では、弁軸ホルダ6が雌ネジ部材として機能している。そして、弁軸41の外周に形成された雄ネジ41aと、弁軸ホルダ6の筒状小径部6aの内周に形成された雌ネジ6dとにより、ネジ送り機構Aが構成されている。
【0040】
さらに、弁軸ホルダ6の筒状大径部6bの側面には、均圧孔51が穿設され、この均圧孔51により、筒状大径部6b内の収容室6hと、ロータ収容室66(第2の背圧室)との間が連通している。このように均圧孔51を設けることにより、ケース60のロータ4を収容する空間と、弁軸ホルダ6内の空間とが連通され、弁体17の移動動作をスムーズに行うことができる。
【0041】
また、弁軸41の下方には、筒状の弁ガイド18が弁軸ホルダ6の収容室6hに対して摺動可能に配置されている。また、弁ガイド18内には、圧縮された弁バネ27とバネ受け35とが収容されている。バネ受け35の上端部は、弁軸41の突出部41cと接触している。
【0042】
弁ガイド18は天井部21側がプレス成形により略直角に折り曲げられている。そして、この天井部21には貫通孔18aが形成されている。また、弁軸41の下方には、さらに鍔部41bが形成されている。
【0043】
ここで、弁軸41は、弁ガイド18に対して回転可能、かつ径方向に変位可能となるように弁ガイド18の貫通孔18aに遊貫状態で挿入されており、鍔部41bは、弁ガイド18に対して回転可能、かつ、径方向に変位可能となるように弁ガイド18内に配置されている。また、弁軸41は貫通孔18aを挿通し、鍔部41bの上面が、弁ガイド18の天井部21に対向するように配置されている。なお、鍔部41bが弁ガイド18の貫通孔18aより大径であることにより、弁軸41の抜け止めがなされている。
【0044】
弁軸41と弁ガイド18とが互いに径方向に移動可能であることにより、弁軸ホルダ6および弁軸41の配置位置に関して、さほど高度な同芯取付精度を求められることなく、弁ガイド18および弁体17との同芯性が得られる。
【0045】
弁ガイド18の天井部21と弁軸41の鍔部41bとの間には、中央部に貫通孔が形成されたワッシャ70が設置されている。
また、弁本体30の内側には、弁体17、および弁体17の中心軸M方向への移動を案内する弁体案内部72が配置され、弁体17と弁体案内部72との間には、背圧室28と弁室11との間を気密に分離するシール部材48が介装されている。なお、このシール部材48は、弁体案内部72と同軸に配置されている。
【0046】
弁体17は、たとえばステンレス等の金属で形成された部品であり、音叉形の断面形状を有している。弁体17は、環状の固定具36を介して弁ガイド18に固定される略円柱状の頭部17a、内部に柱状の空間17dが形成された円筒状の摺動筒部17b、および頭部17aと摺動筒部17bを一体的に接続する接続部17cから構成されている。さらに、頭部17aの内部には、縦方向の孔部17k、および横方向の導通孔17lが均圧路として形成されている。このため、弁ポート16a(第2管継手15内)の圧力は、空間17d、孔部17k、および導通孔17lを介して背圧室28に導かれる。
【0047】
弁体案内部72は、内部が貫通した筒体であり、中心軸M方向と同軸方向に延設された筒状の側壁72a、シール部材48を固定する環状の固定部72b、シール部材48を固定すると共に弁体17の外周面を摺動させて中心軸M方向に案内する弁ガイド部72cを備えている。また、側壁72aは、最上位に位置するフランジ部72jと、その下方の中間筒部72kと、さらにその下方の下端部72lとを有したもので、切削加工などによって形成されている。
【0048】
この弁体案内部72は、弁軸ホルダ6のフランジ部6fおよびケース60の下端部と弁本体30の上端部との間にフランジ部72jを固定することで、弁本体30内の所定の位置に配置されている。ここで、弁体案内部72のフランジ部72jとケース60の下端部、および弁体案内部72のフランジ部72jと弁本体30の上端部との間は、溶接、ろう付け、接着などの固着手段により全周に亘って密閉した状態に一体化されている。
【0049】
また、図2に示すように、弁体案内部72の中間筒部72kと下端部72lとの間には、第1の段差72xが形成され、弁ガイド部72cの外周側には第2の段差72yが形成されている。固定部72bは、外周上端を第1の段差72xに突き当てて弁体案内部72に固定され、弁ガイド部72cは、第2の段差72yを下端部72lの内周下端に突き当てて弁体案内部72に固定されている。
【0050】
また、シール部材48は、中心軸M方向において固定部72bと弁ガイド部72cの間に挟持されている。なお、シール部材48は、第2の段差72yを下端部72lの内周下端に突き当てることで、中心軸M方向における潰し量のばらつきがなくなり、後述するリップ部48jのシール性、摺動性が安定する。なお、固定部72bと弁ガイド部72cは、たとえばステンレス等の金属でそれぞれ形成されている。
【0051】
また、弁体17の接続部17cの外周には、図1に示すように、円錐台型の筒体であるバネ受け金具29が配置されている。バネ受け金具29は、下端部において外径側に延びる環状平面であるフランジ29aを有している。このフランジ29aと弁軸ホルダ6の嵌合部6cとの間には、圧縮された付勢バネ32が配置されている。これにより、弁体17が下方に押し下げられて雄ネジ41aと雌ネジ6dのネジ山の接触面を一定に保つことができる。このため、弁体17の作動方向を切り替えた場合においてネジガタが生じることがなく、弁体17の作動方向が切り替わる際に流量特性にヒステリシスが生じることを防止できる。また、弁体17の外周面よりも大きな内径を有する付勢バネ32で弁体17を付勢するため、弁体17の傾斜を抑制することができる。
【0052】
次に、実施の形態に係る電動弁2の要部について説明する。図2は、実施の形態に係る電動弁2の要部を拡大した図である。図2に示すように、弁体案内部72の下端部72lの内径側には、シール部材48が配置されている。
【0053】
シール部材48は、L字環状パッキン48a、補強板48b、および板バネ48cを積層して構成されている。L字環状パッキン48aは、たとえば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等やPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等のフッ素系樹脂材料で形成されている。また、補強板48bは、たとえば、たとえば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の樹脂材料や真鍮、黄銅等の金属材料で形成されており、板バネ48cは、たとえばステンレス等の金属材料で形成されている。
【0054】
ここで、L字環状パッキン48aは、断面L字形状を有する環状の部品であり、図3に示すように、基体部48kとリップ部48jとを備えている。基体部48kは、環状の補強板48bと環状の板バネ48cの間に挟まれて弁体案内部72に固定されている。一方、リップ部48jは、基体部48kの弁体17側から中心軸M方向上側(ロータ4側)または下側(弁ポート16a側)に延設され、弁体17の外周面と摺接している。そして、リップ部48jを上側に延設したL字環状パッキン48aが補強板48bの上側に配置され、リップ部48jを下側に延設したL字環状パッキン48aが補強板48bの下側に配置されている。
【0055】
すなわち、弁体案内部72には、リップ部48jが延設される方向が異なる一対のL字環状パッキン48aが補強板48bを挟んで中心軸M方向に積層されている。
補強板48bは、二つのL字環状パッキン48aに挟まれた円環状の部品であり、内周面が弁体17の外周面と当接しないように配置されている。
【0056】
また、板バネ48cは、断面略L字形状を有する環状の部品であり、板バネ固定部48pと付勢部48qを備えている。ここで、板バネ固定部48pは、中心軸M方向においてL字環状パッキン48aの基体部48kに隣接して配置されている。具体的には、上側に位置する板バネ固定部48pは、L字環状パッキン48aと固定部72bの間に挟持され、下側に位置する板バネ固定部48pは、L字環状パッキン48aと弁ガイド部72cの間に挟持されている。
【0057】
一方、付勢部48qは、板バネ固定部48pの弁体17側から屈曲して中心軸M方向上側または下側に延設され、リップ部48jをL字環状パッキン48aの弁体17側に付勢している。この付勢部48qがリップ部48jを付勢する方向は、リップ部48jが収縮する方向と同方向(L字環状パッキン48aの弁体17側)である。
【0058】
そして、付勢部48qを上側に向けた板バネ48cがリップ部48jを上側に向けたL字環状パッキン48aの上側に配置され、上側を向いた付勢部48qが上側を向いたリップ部48jを付勢している。また、付勢部48qを下側に向けた板バネ48cがリップ部48jを下側に向けたL字環状パッキン48aの下側に配置され、下側を向いた付勢部48qが下側を向いたリップ部48jを付勢している。なお、基体部48kと付勢部48qの間の角度は、L字環状パッキン48aの板バネ固定部48pとリップ部48jの間の角度よりもさらに鈍角となるように形成されている。
【0059】
ここで、電動弁2の流体温度が−40℃以下の低温になった場合において、リップ部48jはL字環状パッキン48aの弁体17側に収縮するため、低温時においてリップ部48jと弁体17の外周面の密着度がさらに高くなる。
【0060】
この実施の形態の電動弁2によれば、L字環状パッキン48aを弁体案内部72側に配置し、リップ部48jを弁体17の外周面に摺接させることにより、低温時にリップ部48jが収縮する方向とリップ部48jが弁体17の外周面に密着する方向とが同方向になるため、低温時におけるシール部材48のシール性を維持することができる。この場合、L字環状パッキン48aの密着度を維持するために板バネ48cの付勢部48qの張力を増強させる必要もないため、弁体17の摺動性をも維持することができる。すなわち、低温時においてもシール部材48のシール性を維持することができ、かつ弁体17の摺動性が良好な、圧力バランス機構が安定した電動弁2を提供することができる。
【0061】
また、リップ部48jの向きが異なる一対のL字環状パッキン48aを上下に配置することにより、背圧室28内の圧力が弁室11内の圧力よりも高圧になる場合、低圧になる場合のいずれにおいても、背圧室28と弁室11の間の流体の漏れを防止することができ、流体の流れ方向が反転した場合においても作動性が安定した圧力バランス型の電動弁2を実現することができる。
【0062】
また、板バネ48cの付勢部48qが環状パッキンのリップ部を付勢する方向を、L字環状パッキン48aのリップ部48jが収縮する方向と同じ弁体17側に揃えることにより、板バネ48cの付勢力がリップ部48jの収縮力で低減されないようにすることができる。また、板バネ48cの付勢力とリップ部48jの収縮力が共に弁体17側に向かうために、板バネ48cの付勢力の増強が不要となり、良好な摺動性を維持できる。
【0063】
なお、上述の実施の形態において、シール部材48は必ずしも板バネ48cを備えなくてもよい。この場合においても低温時には、L字環状パッキン48aのリップ部48jが、板バネ48cの付勢部48qが収縮する方向と同じ弁体17側に収縮するため、低温時におけるリップ部48jと弁体17の外周面の密着度を維持することができる。
【0064】
また、上述の実施の形態においては、シール部材48がL字環状パッキン48aを備える場合を例に説明しているが、環状パッキンは、リップ部を有するリップシール型のものであればよく、必ずしも断面L字形状でなくてもよい。
【0065】
また、上述の実施の形態において、シール部材48に補強板48bを備えなくてもよい。たとえば、リップ部48jが上下方向に延設されたL字環状パッキン48aの基体部48k同士を隣接させて、L字環状パッキン48aを中心軸M方向に積層したものをシール部材として用いてもよい。また、図4に示すように、リップ部48jが上下方向に延設されたL字環状パッキン48aの基体部48kを共有したY字形状のシール部材49を用いてもよい。また、基体部を共有させることなく、上下の環状パッキンを直接重ねて配置してもよい。これらの場合においても、低温時においてシール部材48のシール性を維持することができ、かつ弁体17の摺動性が良好な、圧力バランス機構が安定した電動弁2を提供することができる。
【0066】
また、上述の実施の形態において、シール部材48は、必ずしも上下一対の環状パッキンを備えなくてもよい。たとえば、リップ部を下側に延設した環状パッキン、リップ部を上側に延設した環状パッキンの何れか一方のみを備えたものであってもよい。この場合、リップ部を下側に延設した環状パッキンのみを有するシール部材48は、常に弁室11内の圧力が背圧室28内の圧力よりも高圧になる、第1管継手12から弁室11を介して第2管継手15に流体を流す場合に有効に用いることができる。一方、リップ部を上側に延設した環状パッキンのみを有するシール部材48は、常に背圧室28内の圧力が弁室11内の圧力よりも高圧になる、第2管継手15から弁室11を介して第1管継手12に流体を流す場合に有効に用いることができる。
【0067】
また、上述の実施の形態においては、流体温度が−40℃以下の低温になった場合において、リップ部48jが収縮する場合を例に説明しているが、リップ部48jが収縮する温度、すなわち低温は、−40℃よりも高温である場合もある。たとえば、流体温度が0℃以下の低温になった場合においてリップ部48jが弁体17側に収縮し始め、流体温度が下がるにつれてリップ部48jと弁体17の外周面の密着度が増していく場合もありうる。
【0068】
また、上述の実施の形態の電動弁2は、たとえば、圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器等から成る冷凍サイクルシステムにおいて、凝縮器と蒸発器との間に設けられる膨張弁や流路の流量制御弁等として用いられる。
【符号の説明】
【0069】
2 電動弁
4 ロータ
6 弁軸ホルダ
6a 筒状小径部
6b 筒状大径部
6c 嵌合部
6d 雌ネジ
6f フランジ部
6g 上部開口部
6h 収容室
6k 延設部
11 弁室
12 第1管継手
15 第2管継手
16 弁座部
16a 弁ポート
17 弁体
17a 頭部
17b 摺動筒部
17c 接続部
17d 空間
17k 孔部
17l 導通孔
18 弁ガイド
18a 貫通孔
21 天井部
27 弁バネ
28 背圧室
29 バネ受け金具
29a フランジ
30 弁本体
32 付勢バネ
33 ブッシュ部材
36 固定具
41 弁軸
41a 雄ネジ
41b 鍔部
41c 突出部
48 シール部材
48a L字環状パッキン
48b 補強板
48c 板バネ
48j リップ部
48k 基体部
48p 板バネ固定部
48q 付勢部
49 シール部材
49j リップ部
51 均圧孔
52 ガイド支持体
53 円筒部
54 傘状部
60 ケース
65 筒部材
66 ロータ収容室
70 ワッシャ
72 弁体案内部
72a 側壁
72b 固定部
72c 弁ガイド部
72j フランジ部
72k 中間筒部
72l 下端部
72x 第1の段差
72y 第2の段差
101 電動弁
107 弁室
119 弁ポート
120 弁体
124 導通路
129 背圧室
137 シール部材
137a L字環状パッキン
137b 補強板
137c 板バネ
137k 基体部
137s リップ部
137x 外周面
172 弁体案内部
172a 弁体案内部の内周面
L 中心軸
M 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7