(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜7のいずれか一項記載の再構成された製剤を調製する方法であって、該方法は、(i)vWF結合剤、凍結乾燥保護剤、界面活性剤、及び緩衝液の混合物を凍結乾燥させて、凍結乾燥させた混合物を形成する工程;及び(ii)希釈液中において凍結乾燥させた混合物を再構成し、これにより製剤を調製する工程を含み、再構成された製剤は、
(a)0.1mg/mL−80mg/mLの濃度のvWF結合剤;
(b)1%−15%(w/v)の濃度のスクロース;
(c)0.001%−0.5%(v/v)の濃度のTween−80;及び
(d)製剤のpHが6.0−7.0となるような、5mM−200mMの濃度のクエン酸緩衝液
を含む、該方法。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】ALX−0081のために実施された標準的な65時間の凍結乾燥プログラムの種々の工程を示すフローチャート。
【
図2A】−70℃、+5℃及び+25℃で1か月間及び2か月間保存した後のALX−0081のRP−HPLCクロマトグラムの関連部分;mAU:ミリ吸光度単位。
【
図2B】37℃で0、4及び8週間インキュベートした後のALX−0081のRP−HPLCクロマトグラムの関連部分の拡大表示。37℃における延長されたインキュベーションの結果として(0、4、8週間)、RP−HPLCのメインピークの分裂が観察される;mAU:ミリ吸光度単位。
【
図3A】凍結解凍(FT)サイクル前(a)並びに−20℃(c)及び−70℃(b)での10回の凍結解凍(FT)サイクル後の、ブランククエン酸緩衝液(bcb)と20mMのクエン酸(pH7.0)中55.9mg/mLのALX−0081のSE−HPLCプロファイルの重ね合わせ(λ=280nm)。ランニング緩衝液で予め希釈された試料についてマイナーなクエン酸ピークが観察された;mAU:ミリ吸光度単位。
【
図3B】+4℃で±1週間保存した後のブランククエン酸緩衝液(bcb)と20mMのクエン酸(pH7.0)中55.9mg/mLのALX−0081のSE−HPLCプロファイルの重ね合わせ(λ=280nm)。ALX−0081は、インタクトな修飾されていないALX−0081に相当する1本のメインピーク(97%)、及び、全表面積の僅か3%を示す小さなプレピークへと分離した。ランニング緩衝液中で予め希釈されたALX−0081について、マイナーなクエン酸ピークが観察された;mAU:ミリ吸光度単位。
【
図4A】+25℃において50mMクエン酸pH6.0、50mMクエン酸pH6.0+0.01%Tween−80(v/v)及び50mMクエン酸pH6.0+0.02%Tween−80(v/v)中において撹拌されたALX−0081試料の散乱強度。「+」は、50mMクエン酸pH6.0中の試料を示し(y=0.0044x+3.5962、R
2=0.9549);「o」は、50mMクエン酸pH6.0+0.02%Tween−80(v/v)中の試料を示し(y=0.0002x+1.0447、R
2=0.4673);「x」は、50mMクエン酸pH6.0+0.01%Tween−80(v/v)中の試料を示す(y=0.0004x+0.5125、R
2=0.6804);(x軸=時間(秒);y軸=散乱強度)。
【
図4B】+25℃において50mMクエン酸pH6.5、50mMクエン酸pH6.5+0.01%Tween−80(v/v)及び50mMクエン酸pH6.5+0.02%Tween−80(v/v)中において撹拌されたALX−0081試料の散乱強度。「+」は、50mMクエン酸pH6.5中の試料を示し(y=0.0041x+4.7667、R
2=0.9431);「o」は、50mMクエン酸pH6.5+0.02%Tween−80(v/v)中の試料を示し(y=0.0004x−0.0208、R
2=0.9391);「x」は、50mMクエン酸pH6.5+0.01%Tween−80(v/v)中の試料を示す(y=0.0001x−1.8853、R
2=0.0376);(x軸=時間(秒);y軸=散乱強度)。
【
図5】+40℃(a)及び−70℃(b)において1か月間保存した後、D−PBS+200mMグリシン+0.01%Tween−80中5mg/mLのALX−0081のcIEFプロファイルの重ね合わせ;(λ=280nm)。AU:吸光度単位。pxlpos:ピクセル単位。
【
図6A】ミリQ水を用いて再構成する前(パネルA)及び後(パネルB)の凍結乾燥させたALX−0081製剤(形態3=クエン酸/スクロースpH6.0;形態7=クエン酸/スクロースpH6.5;形態17=D−PBS/グリシン)の写真。
【
図6B】ミリQ水を用いて再構成する前(パネルA)及び後(パネルB)の凍結乾燥させたALX−0081製剤(形態3=クエン酸/スクロースpH6.0;形態7=クエン酸/スクロースpH6.5;形態17=D−PBS/グリシン)の写真。
【
図7】クエン酸/スクロースを基剤とした凍結乾燥ALX−0081製剤の写真。
【
図8A】15、20、25、30、40及び50mMのクエン酸pH6.5を含有する28mg/mLのALX−0081液体製剤を+25℃(パネルA)又は+5℃(パネルB)において4日間保存した後の写真。ブランクのクエン酸緩衝液(50mM)が基準として含まれる。
【
図8B】15、20、25、30、40及び50mMのクエン酸pH6.5を含有する28mg/mLのALX−0081液体製剤を+25℃(パネルA)又は+5℃(パネルB)において4日間保存した後の写真。ブランクのクエン酸緩衝液(50mM)が基準として含まれる。
【
図9A】15mMクエン酸pH6.5と種々の量のスクロース及びTween−80とを含有する、20mg/mLのALX−0081液体製剤を+25℃(パネルA)又は+5℃(パネルB)において4日間保存した後の写真。ブランクのクエン酸緩衝液(50mM)が基準として含まれる。
【
図9B】15mMクエン酸pH6.5と種々の量のスクロース及びTween−80とを含有する、20mg/mLのALX−0081液体製剤を+25℃(パネルA)又は+5℃(パネルB)において4日間保存した後の写真。ブランクのクエン酸緩衝液(50mM)が基準として含まれる。
【
図10】+5℃で保存した場合の、時間の関数としての、凍結乾燥ALX−0081医薬品中のピログルタメートのパーセントの予測。
【
図11】+25℃で保存した場合の、時間の関数としての、凍結乾燥ALX−0081医薬品中のピログルタメートのパーセントの予測。
【0038】
5.発明の詳細な説明
特記しない限り、具体的に詳述されていない全ての方法、工程、技術及び操作を実施することができ、それは当業者には明らかであるように、それ自体公知の方法で実施されている。例えば、本明細書に記載された標準的な便覧及び一般的な背景技術、さらに、そこで引用されている参考文献;並びに、例えば、タンパク質工学技術、例えばアフィニティ成熟、及び、免疫グロブリンなどのタンパク質の特異性及び他の所望の特性を改善するための他の技術を記載した、以下の概説:Presta, Adv. Drug Deliv. Rev. 2006, 58 (5-6): 640-56; Levin and Weiss, Mol. Biosyst. 2006, 2(1): 49-57; Irving et al., J. Immunol. Methods, 2001, 248(1-2), 31-45; Schmitz et al., Placenta, 2000, 21 Suppl. A, S106-12, Gonzales et al., Tumour Biol., 2005, 26(1), 31-43に再度言及する。
【0039】
今回驚くべきことに、vWF結合剤、特にALX−0081(配列番号1)を、ヒトに特定の投与処方計画で投与することができることが判明した。vWF結合剤、特にALX−0081は、投与終了時直ちに急速に作用を発現して、薬力学的作用を生じ、その効力を約12〜24時間維持することが判明した。さらに、vWF結合剤、特にALX−0081(配列番号1)は、健康な男性の試験志願者において良好な耐容性を示し、かつ安全であることが判明した。これらの結果は、vWF結合剤、特にALX−0081(配列番号1)は、待機的な経皮的冠動脈形成術(また、本明細書において以後、「PCI」)を受けている安定狭心症患者における急性処置に、及び、血栓性血小板減少性紫斑病(また、本明細書において以後、「TTP」)患者の処置に適している。
【0040】
それにも関わらず、ヒトレシピエントに投与されたvWF結合剤、特にALX−0081(配列番号1)の現行の製剤は、改善可能であった。
【0041】
本明細書に記載のvWF結合剤、特にALX−0081についての改質発明により、溶解度が上昇し(80mg/mLまで)かつ液体中での保存安定性が有意に向上した(例えば、新規製剤の保存時に、その液体状態で元来の製剤より少ない酸化が起こる)新規なクエン酸/スクロースを基剤とした製剤となった。また、凍結乾燥型では、+40℃で12か月間保存した後又はさらには+40℃で24か月間保存した後でさえも、酸化又はasp異性化は実質的に全く検出できなかった。少量のピログルタメートの残留形成は依然として観察された。クエン酸及びスクロース濃度のさらなる最適化により、凍結乾燥製品の水分含量は減少し、これにより、残留ピログルタメート形成速度は最小限となった。
【0042】
従って、本発明は、抗vWF結合剤(例えばALX−0081)の安定な液体製剤及び凍結乾燥製剤、並びに、vWF関連疾患を治療又は予防するためのその使用を提供する。
【0043】
5.1 本発明のポリペプチド(群)
本発明に使用されるvWF結合剤は、典型的には、ヒトフォンヴィルブランド因子(vWF、配列番号20)に結合するタンパク質又はポリペプチドである。好ましくは、vWF結合剤は、少なくとも1つの免疫グロブリン配列、例えば免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含む又はからなるタンパク質又はポリペプチドである。さらにより好ましくは、本発明のvWF結合剤は、配列番号1〜19、最も好ましくは配列番号1を含む又はからなるタンパク質又はポリペプチドである。vWF結合剤は、PCIを受けているACS患者の補助的療法として、又は血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の処置として使用され得る。「タンパク質」、「ポリペプチド」及び「アミノ酸配列」という用語は、本明細書において同義語として使用される。従って、本発明のアミノ酸配列はvWF結合剤である。
【0044】
従って、例えば、本発明に使用するための適切なvWF結合剤は、表A−1中の化合物、例えば配列番号1〜19の化合物、又は、表A−1の化合物に対して80%以上、より好ましくは85%以上、最も好ましくは90%、95%、96%、97%、98%、99%以上のアミノ酸配列同一率を有する化合物を含み得る(「配列同一率」については定義の章を参照されたい)。
【0045】
好ましくは、本発明に使用するためのvWF結合剤は、12A02H1様化合物である。本明細書の目的のための12A02H1様化合物は、12A02H1(すなわち配列番号19)を含む化合物、又は、12A02H01(配列番号19)に対して80%以上、より好ましくは85%以上、最も好ましくは90%、95%、96%、97%、98%、99%以上のアミノ酸配列同一率(本明細書においてさらに定義されているような)を有する化合物である。特に好ましいvWF結合剤はALX−0081(配列番号1)である。
【0046】
上記の全てのvWF結合剤は、文献から周知である。これは、その製造を含む(特に、例えば国際公開公報第2006/122825号を、しかしまた国際公開公報第2004/062551号も参照されたい)。例えば、ALX−0081は、例えば、国際公開公報第2006/122825号又は国際公開公報第2009/115614号に記載されているように調製される。
【0047】
特記されない限り、「免疫グロブリン配列」(本明細書においては、重鎖抗体又は慣用的な4本鎖抗体を指すために使用される)という用語は、完全なサイズの抗体、その個々の鎖、並びに、その全ての部分、ドメイン又はフラグメント(抗原結合ドメイン又はフラグメント、例えばV
HHドメイン又はV
H/V
Lドメインをそれぞれ含むがそれに限定されるわけではない)の両方を含む一般的な用語として使用されている。抗原結合分子又は抗原結合タンパク質という用語は、免疫グロブリン配列と互換的に使用され、これは免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えばナノボディ(登録商標)を含む。
【0048】
本発明の実施態様は、免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えば軽鎖可変ドメイン配列(例えばV
L配列)又は重鎖可変ドメイン配列(例えばV
H配列)である免疫グロブリン配列;より具体的には、慣用的な4本鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列、又は抗体重鎖に由来する重鎖可変ドメイン配列(例えばV
HH配列)に関する。
【0049】
「免疫グロブリン単一可変ドメイン」という用語は、抗原結合部位が単一免疫グロブリンドメイン又はその適切なフラグメント上に存在し、単一免疫グロブリンドメイン又はその適切なフラグメントによって形成された分子と定義する。これにより、免疫グロブリン単一可変ドメインは、2つの免疫グロブリンドメイン、特に2つの可変ドメインが相互作用して抗原結合部位を形成する「慣用的な」免疫グロブリン又はそのフラグメントとは異なる。典型的には、慣用的な免疫グロブリンでは、重鎖可変ドメイン(V
H)及び軽鎖可変ドメイン(V
L)は相互作用して抗原結合部位を形成している。この場合、V
H及びV
Lの両方の相補性決定領域(CDR)が抗原結合部位に寄与し、すなわち、合計で6つのCDRが抗原結合部位の形成に関与する。
【0050】
対照的に、免疫グロブリン単一可変ドメインの抗原結合部位は、単一のV
Hドメイン又はV
Lドメインによって形成される。従って、免疫グロブリン単一可変ドメインの抗原結合部位は、3つ以下のCDR、例えば1、2、又は3つのCDRによって形成される。
【0051】
従って、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」という用語は、抗原結合部位の形成のために少なくとも2つの可変ドメインの相互作用を必要とする、慣用的な免疫グロブリン又はそのフラグメントを含まない。これはまた、免疫グロブリン単一可変ドメインを「含む」又は「含有する」本発明の実施態様についても該当する。本発明の脈絡において、このような実施態様は、慣用的な免疫グロブリン又はそのフラグメントを除外する。従って、免疫グロブリン単一可変ドメインを「含む」又は「含有する」組成物は、例えば、2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含む構築物に関し得る。あるいは、免疫グロブリン単一可変ドメイン以外のさらに他の構成成分、例えば様々な種類の補助物質、タンパク質タグ、着色剤、色素などが存在してもよい。しかし、これらの用語は、抗原結合部位が単一可変ドメインによって形成される慣用的な免疫グロブリンのフラグメントを含む。
【0052】
本発明によると、本発明のポリペプチド、より具体的には免疫グロブリン配列は、以下の1つ以上からなり得るか又は含み得(ドメイン抗体、又はドメイン抗体として使用するのに適したアミノ酸配列、単一ドメイン抗体、又は単一ドメイン抗体として使用するのに適したアミノ酸配列、「dAb」、又はdAbとして使用するのに適したアミノ酸配列、又はナノボディ(登録商標)(V
HH配列、例えばヒト化V
HH配列又はラクダ化V
H配列を含むがそれに限定されるわけではない))、それは好ましくはナノボディ(登録商標)である。
【0053】
本発明は、免疫グロブリン単一可変ドメインの適切なフラグメントを包含する。免疫グロブリン単一可変ドメインの「適切なフラグメント」は、天然の免疫グロブリン単一可変ドメインよりも少ないアミノ酸を含有するが、依然として抗原結合活性を示す(よって、通常、本明細書においてさらに記載されているような、少なくとも1つのCDRを形成するアミノ酸残基の少なくともいくつかを含有する)ポリペプチドに関する。このような免疫グロブリン単一可変ドメイン及びフラグメントは、最も好ましくは、免疫グロブリンの折り畳みを含むか、又は、適切な条件下で、免疫グロブリンの折り畳みを形成することができる。より具体的には、免疫グロブリン単一可変ドメイン及びそのフラグメントは、標的抗原に結合することができるようなものである。従って、免疫グロブリン単一可変ドメインは、例えば、軽鎖可変ドメイン配列(例えばV
L配列)又はその適切なフラグメント;或いは重鎖可変ドメイン配列(例えばV
H配列又はV
HH配列)又はその適切なフラグメントを;それが単一の抗原結合単位(すなわち、例えば、別の可変ドメインと例えばV
H/V
L相互作用を通して相互作用して機能的抗原結合ドメインを形成する必要のある例えば慣用的な抗体及びscFvフラグメントに存在する可変ドメインの場合のように、単一抗原結合ドメインが別の可変ドメインと相互作用して機能的抗原結合単位を形成する必要がないような、免疫グロブリン単一可変ドメインから実質的になる機能的抗原結合単位)を形成することができる限り含むことができる。
【0054】
本発明の免疫グロブリン配列は、好ましくは、実質的に単離形である。本発明の免疫グロブリン配列はまた、本発明の1つ以上のアミノ酸配列を含み得るか又は実質的にからなり得、場合によりさらに、1つ以上のさらなるアミノ酸配列(全て場合により1つ以上の適切なリンカーを介して連結されている)を含み得る、本発明のタンパク質又はポリペプチド(本明細書において定義されているような)の一部を形成し得る。例えばであって限定するものではないが、本発明の1つ以上のアミノ酸配列は、このようなタンパク質又はポリペプチドにおける結合単位として使用され得、これは、場合により、結合単位としての役目を果たし得る1つ以上のさらなるアミノ酸配列を含有していてもよく、よって、それぞれ本発明の一価、多価又は多重特異的ポリペプチド(全て本明細書に記載されている)を与え得る。このようなタンパク質又はポリペプチドはまた実質的に単離形であり得る。
【0055】
本発明は、マウス、ラット、ウサギ、ロバ、ヒト、及びラクダ免疫グロブリン配列を含む、様々な起源の免疫グロブリン配列に関する。本発明はまた、完全なヒト、ヒト化又はキメラ免疫グロブリン配列を含む。例えば、本発明は、ラクダ免疫グロブリン配列及びヒト化ラクダ免疫グロブリン配列、又はラクダ化ドメイン抗体、例えばWard et al(例えば、国際公開公報第94/04678号及びDavies and Riechmann (1994 and 1996)参照)によって記載のようなラクダ化dAbを含む。さらに、本発明は、例えば多価及び/又は多重特異的構築物を形成している融合免疫グロブリン配列(1つ以上のV
HHドメインを含有する多価及び多重特異的ポリペプチド並びにその調製について、Conrath et al., J. Biol. Chem., Vol. 276, 7346-7350, 2001、並びに、例えば国際公開公報第96/34103号及び国際公開公報第99/23221号も言及する)、及び、本発明の免疫グロブリン配列から誘導可能である、タグ又は他の機能的部分、例えば毒素、標識、放射性化学物質などを含む免疫グロブリン配列を含む。サメの免疫グロブリン単一可変ドメインも記載されている(例えば国際公開公報第03/014161号又はStreltsov, 2005に記載されているように「IgNARs」とも呼ばれる)。
【0056】
特定の実施態様において、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインは、ナノボディ(登録商標)、特にラクダV
HHドメイン、ヒト化V
HHドメイン、又はラクダ化V
Hドメインである。当業者は、V
HHドメインのヒト化及び/又はV
Hドメインのラクダ化について十分に知っているだろう。
【0057】
免疫グロブリン配列、特にナノボディ(登録商標)のアミノ酸配列及び構造は、4つのフレームワーク領域すなわち「FR領域」から構成されると考えられ得るがこれに限定されるわけではなく、これらは当技術分野において及び本明細書において「フレームワーク領域1」すなわち「FR1」;「フレームワーク領域2」すなわち「FR2」;「フレームワーク領域3」すなわち「FR3」;及び、「フレームワーク領域4」すなわち「FR4」とそれぞれ称され;そのフレームワーク領域は、3つの相補性決定領域すなわち「CDR」によって分断され、これらは当技術分野において「相補性決定領域1」すなわち「CDR1」;「相補性決定領域2」すなわち「CDR2」;及び、「相補性決定領域3」すなわち「CDR3」と称される。
【0058】
ナノボディ(登録商標)におけるアミノ酸残基の総数は、110〜120の領域にあり得、好ましくは112〜115であり、最も好ましくは113である。しかし、ナノボディ(登録商標)の部分、フラグメント、類似体又は誘導体(本明細書においてさらに記載されているような)は、このような部分、フラグメント、類似体又は誘導体が、本明細書に概略を示したさらなる必要条件を満たし、かつまた好ましくは本明細書に記載の目的に適している限り、その長さ及び/又はサイズに関して特に限定されないことに留意されたい。
【0059】
従って、一般的に、免疫グロブリン単一可変ドメインは、4つのフレームワーク領域(それぞれFR1〜FR4)及び3つの相補性決定領域(それぞれCDR1〜CDR3)からなるか又は実質的にからなる、アミノ酸配列であろう。この脈絡において「実質的にからなる」は、例えば精製又は標識のために使用されるタグなどの追加の配列が存在し得るが、このような追加の配列は、免疫グロブリン単一可変ドメインそれ自体と比較して少なく、免疫グロブリン単一可変ドメインの抗原結合活性には干渉しないことを意味する。
【0060】
本明細書において使用されるような「免疫グロブリン配列」又は「免疫グロブリン単一可変ドメイン」という用語は、ポリペプチドをコードする核酸配列、及びポリペプチドそれ自体の両方を指す。これ以上の限定された意味は具体的な内容から明らかとなろう。
【0061】
特に、本発明のアミノ酸配列は、ナノボディ(登録商標)又はその適切なフラグメントであり得る。V
HH及びナノボディのさらなる説明のために、Reviews in Molecular Biotechnology 74(2001), 277-302のMuyldermansによる概説記事;並びに、一般的な背景技術として記載されている以下の特許出願:ブリュッセル自由大学の国際公開公報第94/04678号、国際公開公報第95/04079号及び国際公開公報第96/34103号;ユニリーバの国際公開公報第94/25591号、国際公開公報第99/37681号、国際公開公報第00/40968号、国際公開公報第00/43507号、国際公開公報第00/65057号、国際公開公報第01/40310号、国際公開公報第01/44301号、欧州特許第1134231号、及び国際公開公報第02/48193号;Vlaams Instituut voor Biotechnologie (VIB)の国際公開公報第97/49805号、国際公開公報第01/21817号、国際公開公報第03/035694号、国際公開公報第03/054016号、及び国際公開公報第03/055527号;Algonomics N.V.及びAblynx N.V.の国際公開公報第03/050531号;カナダ国立研究機関による国際公開公報第01/90190号;Institute of Antibodiesによる国際公開公報第03/025020号(=欧州特許第1433793号);並びに、Ablynx N.V.による国際公開公報第04/041867号、国際公開公報第04/041862号、国際公開公報第04/041865号、国際公開公報第04/041863号、国際公開公報第04/062551号、国際公開公報第05/044858号、国際公開公報第06/40153号、国際公開公報第06/079372号、国際公開公報第06/122786号、国際公開公報第06/122787号及び国際公開公報第06/122825号、並びに、Ablynx N.V.によるさらに他の公開された特許出願に言及する。また、これらの出願に記載されたさらなる先行技術、特に、国際出願の国際公開公報第06/040153号の41〜43頁に記載された参考文献のリストに言及し、これらのリスト及び参考文献は参照により本明細書に組み入れられる。これらの参考文献に記載されているように、ナノボディ(特にV
HH配列及び特にヒト化ナノボディ)は、特に、1つ以上のフレームワーク配列中の1つ以上の「ホールマーク残基」の存在によって特徴付けられ得る。ナノボディのヒト化及び/又はラクダ化、並びに、他の修飾、部分又はフラグメント、誘導体又は「ナノボディ融合物」、多価構築物(リンカー配列のいくつかの非限定的な例を含む)、並びに、ナノボディ及びその調製物の半減期を延長するための様々な修飾をはじめとする、ナノボディのさらなる記載が、例えば国際公開公報第07/104529号に見い出され得る。
【0062】
本発明によって提供される免疫グロブリン単一可変ドメインは、好ましくは単離形又は実質的には単離形である。本発明の免疫グロブリン配列はまた、1つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含み得るか又は実質的にからなり得、かつ場合によりさらに、1つ以上のさらなるアミノ酸配列(全て場合により1つ以上の適切なリンカーを介して連結されている)を含み得る、本発明のタンパク質又はポリペプチドの一部を形成し得る。例えばであって限定するものではないが、1つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインは、このようなタンパク質又はポリペプチドにおける結合単位として使用され得、これは場合により、結合単位としての役目を果たし得る1つ以上のさらなるアミノ酸配列を含んでいてもよく、よって、それぞれ一価、多価、又は多重特異的な本発明のポリペプチド(全て本明細書に記載されている)をもたらし得る。このようなタンパク質又はポリペプチドはまた、単離形又は実質的に単離形であり得る。従って、本発明によると、免疫グロブリン単一可変ドメインは、上記に概略が示されているような、単一ドメインの形で2つ以上の抗原結合単位を含む構築物を含む。例えば、同じ又は異なる抗原特異性を有する2つ(又はそれ以上)の免疫グロブリン単一可変ドメインを連結させて、例えば、二価、三価、又は多価の構築物を形成することができる。2つ以上の特異性を有する免疫グロブリン単一可変ドメインを合わせることによって、二重特異的、三重特異的などの構築物を形成することができる。例えば、本発明によるポリペプチドは、標的Aに対する2つの免疫グロブリン単一可変ドメイン、及び標的Bに対する1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含み得、これによりそれはAに対しては二価、Bに対しては一価となる。当業者が容易に想定することができるこのような構築物及びその修飾は、本発明によって全て包含される。特定の実施態様において、本発明は、同じ標的抗原内の異なるエピトープに対する少なくとも2つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含む、二重パラトープ構築物に関する。
【0063】
全てのこれらの分子はまた、「本発明のポリペプチド」とも称され、これは、本発明の
免疫グロブリン配列」又は「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同義語である。
【0064】
さらに、本明細書において使用される「配列」という用語(例えば、「免疫グロブリン配列」、「抗体配列」、「可変ドメイン配列」、「V
HH配列」又は「タンパク質配列」のような用語において使用される)は一般的に、内容からより限定された解釈が必要とされない限り、関連アミノ酸配列、並びに、それをコードする核酸配列又はヌクレオチド配列の両方を含むと理解されるべきである。
【0065】
本発明の1つの非限定的な実施態様によると、本発明の免疫グロブリン配列、ナノボディ(登録商標)又はポリペプチドはグリコシル化されている。本発明の別の非限定的な実施態様によると、本発明の免疫グロブリン配列、ナノボディ(登録商標)又はポリペプチドはグリコシル化されていない。
【0066】
5.2 抗原への「結合」
本発明は、本明細書において定義されているような抗原、例えばフィンヴィルブランド因子に結合することができる及び/又はそれに対して親和性を有する、免疫グロブリン配列に関する。本発明の脈絡において、特定の抗原に「結合する及び/又はそれに対して親和性を有する」は、例えば、抗体及びそのそれぞれの抗原の脈絡において理解されているような当技術分野における通常の意味を有する。
【0067】
本発明の特定の実施態様において、「に結合する及び/又はそれに対して親和性を有する」という用語は、免疫グロブリン配列が抗原と特異的に相互作用することを意味し、これは該抗原「に対する」免疫グロブリン配列の同義語として使用される。
【0068】
「特異性」という用語は、特定の免疫グロブリン配列、抗原結合分子、又は抗原結合タンパク質(例えば、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン、ナノボディ(登録商標)又はポリペプチド)が結合することのできる様々な種類の抗原又は抗原決定基の数を指す。抗原結合タンパク質の特異性は、親和性及び/又は結合力に基づいて決定され得る。抗原と抗原結合タンパク質の解離についての平衡定数(K
D)によって示される親和性は、抗原決定基と、抗原結合タンパク質上の抗原結合部位との間の結合強度の尺度である:K
D値が低いほど、抗原決定基と抗原結合分子との間の結合強度は強くなる(あるいは、親和性はまた、親和性定数(K
A)として表わすことができ、これは1/K
Dである)。当業者には明らかであろうように(例えば、本明細書のさらなる開示に基づいて)、親和性は、対象の特異的抗原に依存して、それ自体公知の方法で決定され得る。結合力は、抗原結合分子(例えば、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン、ナノボディ(登録商標)又はポリペプチド)と関連抗原との間の結合強度の尺度である。結合力は、抗原決定基と、抗原結合分子上のその抗原結合部位との間の親和性、及び、抗原結合分子上に存在する関連結合部位の数の両方に関連する。
【0069】
典型的には、本発明の免疫グロブリン配列(例えば、本発明のアミノ酸配列、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ナノボディ(登録商標)、及び/又はポリペプチド)は、10
−5〜10
−12モル/リットル以下、好ましくは10
−7〜10
−12モル/リットル以下、より好ましくは10
−8〜10
−12モル/リットルの解離定数(K
D)で(すなわち、10
5〜10
12リットル/モル以上、好ましくは10
7〜10
12リットル/モル以上、より好ましくは10
8〜10
12リットル/モルの会合定数(K
A)で)、その抗原に結合し、及び/又は、10
2M
−1s
−1から約10
7M
−1s
−1、好ましくは10
3M
−1s
−1から10
7M
−1s
−1、より好ましくは10
4M
−1s
−1から約10
7M
−1s
−1、例えば10
5M
−1s
−1から10
7M
−1s
−1のk
on速度で本明細書に定義されているようなその抗原に結合し;及び/又は、1s
−1(t1/2=0.69s)から10
−6s
−1(数日間のt1/2を有するほぼ不可逆的な複合体を与える)、好ましくは10
−2s
−1から10
−6s
−1、より好ましくは10
−3s
−1から10
−6s
−1、例えば10
−4s
−1から10
−6s
−1のk
off速度で本明細書に定義されているようなその抗原に結合する。
【0070】
10
−4Mを超える任意のK
D値(又は10
4M
−1より低い任意のK
A値)が、一般的に、非特異的結合を示すと考えられる。
【0071】
好ましくは、本発明の一価免疫グロブリン配列は、500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満、例えば500pM未満の親和性で所望の抗原に結合する。
【0072】
抗原又は抗原決定基への抗原結合タンパク質の特異的結合は、例えばスキャッチャード分析及び/又は競合結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)及びサンドイッチ競合アッセイをはじめとするそれ自体公知の任意の適切な方法、及び当技術分野においてそれ自体公知であるその様々な変法;並びに、本明細書に記載の他の技術で決定され得る。
【0073】
解離定数(K
D)は、当業者には明らかであるように、実際又は見かけの解離定数であり得る。解離定数を決定する方法は当業者には明らかであり、これには例えば、本明細書に記載の技術が挙げられる。これに関して、10
−4モル/リットル又は10
−3モル/リットル(例えば10
−2モル/リットル)を超える解離定数を測定することは不可能であり得ることも明らかである。場合により、これも当業者には明らかであるように、(実際の又は見かけの)解離定数は、[K
D=1/K
A]の関係性を用いて、(実際又は見かけの)解離定数(K
A)に基づいて計算することができる。
【0074】
親和性は、分子相互作用の強度又は安定性を示す。親和性は、一般的に、K
Dすなわち解離定数として示され、その単位はモル/リットル(又はM)である。親和性はまた、1/K
Dに等しい会合定数K
Aとしても表すことができ、その単位は(モル/リットル)
−1(又はM
−1)である。本明細書において、2つの分子(例えば本発明のアミノ酸配列、免疫グロブリン配列、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ナノボディ(登録商標)、又はポリペプチドと、その目的標的との)間の相互作用の安定性は、主に、それらの相互作用のK
D値で表され;K
A=1/K
Dの関係性を鑑み、そのK
D値による分子相互作用の強度の特定を、対応するK
A値を算出するのに使用することも可能であることは、当業者にとって明らかであろう。K
D値は、DG=RT.ln(K
D)(等しくはDG=−RT.ln(K
A))(式中、Rは気体定数に等しく、Tは絶対温度に等しく、lnは自然対数を示す)という周知の関係性により結合自由エネルギー(DG)に関連しているので、K
D値は熱力学的意味でも分子相互作用の強度を特徴付ける。
【0075】
有意(例えば特異的)と判断される、本明細書に定義されているようなvWFと本発明の免疫グロブリン配列との結合などの、生物学的相互作用についてのK
Dは、典型的には、10
−10M(0.1nM)〜10
−5M(10000nM)の範囲内である。相互作用が強くなればなるほど、そのK
Dは小さくなる。
【0076】
K
Dはまた、k
offとして示される複合体の解離速度定数と、k
onとして示されるその会合速度の比として表すことができる(よって、K
D=k
off/k
on、及びK
A=k
on/k
off)。解離速度k
offの単位は、s
−1である(sは秒のSI単位表記である)。会合速度k
onの単位は、M
−1s
−1である。
【0077】
本発明の免疫グロブリン配列に関しては、会合速度は10
2M
−1s
−1から約10
7M
−1s
−1の間で変動し得、二分子間相互作用に関する拡散律速会合速度定数に近似し得る。解離速度は、t
1/2=ln(2)/k
offの関係性から所与の分子相互作用の半減期に関連する。本発明の免疫グロブリン配列の解離速度は、10
−6s
−1(t
1/2が数日間であるほぼ不可逆的な複合体)〜1s
−1(t
1/2=0.69s)の間で変動し得る。
【0078】
2つの分子間の分子相互作用の親和性は、それ自体が公知の様々な技術、例えば周知の表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサー技術(例えば、Ober et al., Intern. Immunology, 13, 1551-1559, 2001を参照)を介して測定することができる(該技術では、1つの分子をバイオセンサーチップ上に固定し、他の分子をフロー条件下で固定された分子上を通過させ、k
on、k
offの測定値、従ってK
D(又はK
A)値を得る)。これは、例えば、周知のビアコア機器を使用して実施することができる。
【0079】
測定プロセスが、例えばバイオセンサー上への1つの分子のコーティングに関連したアーチファクトによって、示唆される分子の固有の結合親和性に何らかの影響を及ぼす場合には、測定されたK
Dは見かけのK
Dに相当し得ることも、当業者には明らかであろう。また、1つの分子が他の分子に対する1つ以上の認識部位を含有する場合にも、見かけのK
Dが測定され得る。このような状況においては、測定された親和性が、2つの分子による相互作用の結合力によって影響を受ける場合がある。
【0080】
親和性を評価するために使用され得る別のアプローチは、Friguet et al. (J. Immunol. Methods, 77, 305-19, 1985)の2段階ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)手順である。この方法により、溶液相の結合平衡の測定が確立され、プラスチックなどの支持体上への分子のうちの1つの吸着に関連する考えられ得るアーチファクトが回避される。
【0081】
しかし、K
Dの正確な測定は極めて多大な労力を要する場合があり、結果として2つの分子の結合強度を評価するために、見かけのK
D値を求めることが多い。全ての測定が一貫した方法で行なわれている限り(例えばアッセイ条件を一定に維持して)、見かけのK
D測定値は真のK
Dの近似値として使用することができ、従って、本明細書においてK
D及び見かけのK
Dには等しい重要性又は関連性があるとして扱われるべきであることに留置されたい。
【0082】
最後に、多くの状況において、経験豊富な科学者は、いくつかの基準分子と比較して結合親和性を決定するのが好都合であると判断することができることに留置すべきである。例えば、分子Aと分子Bとの間の結合強度を評価するために、例えば、Bに結合することが知られており、かつELISA又はFACS(蛍光活性化細胞選別)における容易な検出のために、フルオロフォア又は発色団基、又は他の化学的部分、例えばビオチン、或いは他のフォーマット(蛍光検出用のフルオロフォア、吸光検出用の発色団、ストレプトアビジン媒介性ELISA検出用のビオチン)を用いて適切に標識された、基準分子Cを使用することができる。典型的には、基準分子Cを固定濃度に維持し、Bの所与の濃度又は量に対してAの濃度を変化させる。結果として、Aの非存在下でCについて測定されたシグナルが半分となる、IC
50値がAの濃度に対応して得られる。基準分子のK
DであるK
D ref並びに基準分子の総濃度C
refが既知であれば、以下の式:K
D=IC
50/(1+C
ref/K
D ref)からA−B相互作用に関する見かけのK
Dを得ることができる。C
ref<<K
D refであれば、K
D≒IC
50であることに留意されたい。IC
50の測定が、比較される結合剤に関して一貫して(例えばC
refを一定にして)実施されるのであれば、IC
50によって分子相互作用の強度又は安定性を評価することができ、またこの測定値は、本明細書を通じてK
D又は見かけのK
Dと同等であると判断される。
【0083】
5.3 標的抗原
本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインは、vWFに結合及び/又はそれに対して親和性を有する。本発明の脈絡において、「vWF」は、カニクイザル、ヒヒ、ブタ、モルモット、ブタ、マウス、及び/又はヒトのvWF、最も好ましくはヒトvWF、すなわち配列番号20又はGenBank登録番号:NP_000543を含むがそれに限定されるわけではない。
【0084】
5.4 免疫グロブリン配列の具体的な実施態様
本発明は、国際公開公報第2004/015425号、国際公開公報第2004/062551号、国際公開公報第2006/074947号、国際公開公報第2006/122825号、国際公開公報第2009/115614号、又は国際公開公報第2011/067160号(全て本出願人名)に開示されている方法に記載の、又はその方法によって得ることのできる免疫グロブリン単一可変ドメインに関する。本発明はまた、これらのアミノ酸配列の最適化変異体を包含する。一般的には、本発明によるアミノ酸配列の「最適化変異体」は、1つ以上の有益な置換、例えば、i)「ヒト化」の程度、ii)化学的安定性、及び/又はiii)発現レベルを増加させる置換などを含む変異体であり;国際公開公報第2006/122825号の実験部に記載のような例えば効力アッセイによって測定される効力は依然として、野生型12A02(国際公開公報第2006/122825号に定義されている)に対して同等(すなわち10%以下の逸脱)、又はこれもまた国際公開公報第2006/122825号において定義されている変異体12A02H1(配列番号19)に対して同等である。好ましくは、12A02の野生型配列と比較して、本発明のアミノ酸配列は、少なくとも1つのこのような置換、好ましくは少なくとも2つのこのような置換、好ましくは少なくとも3つのヒト化置換、好ましくは少なくとも10個のこのようなヒト化置換を含む。
【0085】
特定の態様において、本発明のアミノ酸配列は、野生型配列12A02と比較して、合計して1〜15、好ましくは2〜14、例えば9〜13、例えば10、11又は12個のアミノ酸置換を含む。記載されているように、これらの差異は好ましくは少なくとも、1つ、好ましくは少なくとも2つ、例えば3つ、4つ、又は5つ、又は10個のヒト化置換を含み、場合により、1つ以上のさらなる置換(例えば、本明細書に記載されているようなさらなる置換(a)〜(c)のいずれか1つ、又はそのいずれか2つ以上の任意の適切な組合せ)を含み得る。ここでも、本明細書の開示に基づいて、場合により僅かな程度の試行錯誤の後に、当業者は、1つ以上のこのような適切なヒト化置換及び/又はさらなる置換(の適切な組合せ)を選択することができるだろう。
【0086】
本発明は、本明細書に与えられた具体例のいずれかに、又は上記の参考文献によって定義されているような具体例のいずれかに対して非常に類似しているポリペプチド配列を包含する。非常に類似とは、少なくとも90%、例えば95、97、98、又は99%のアミノ酸同一率を意味する。非常に類似しているポリペプチド配列は、それらが由来している配列と同じ機能を有する、すなわち、それらはvWFに結合する、より具体的にはvWFに結合して、vWFと血小板との間の相互作用を阻害する。
【0087】
特定の実施態様において、本発明は、配列番号1〜19のいずれか1つ、特に配列番号1に非常に類似した配列に関する。しかし、本明細書に定義されているような製剤における各変異体についての配列の安定性が評価されなければならず、本発明は特に、本明細書において定義されているような製剤において安定である変異体又は非常に類似した配列に言及する。
【0088】
本発明のポリペプチド配列を作製するための方法は幅広く知られており、例えば、組換え発現又は合成が挙げられる。当業者は、適切な発現技術、例えば適切な組換えベクター及び宿主細胞、例えば細菌宿主細胞又は酵母宿主細胞をよく知っている。当業者はまた、適切な精製技術及びプロトコールもよく知っている。
【0089】
5.5 本発明の製剤
本発明は、安定であり、好ましくは医薬品の調製を含む薬学的用途に適した、vWFに対するポリペプチド、例えば免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)、又は、少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドの製剤を提供する。
【0090】
vWF結合剤、例えばISVDの製剤は、ISVD、凍結保護剤及び/又は凍結乾燥保護剤の役目を果たし得る化合物、並びに緩衝液を含む。製剤のpHは、一般的には、pH5〜7.5である。実施態様によっては、製剤は液体として保存される。他の実施態様において、製剤は液体として調製され、その後、保存前に例えば凍結乾燥又は噴霧乾燥によって乾燥させる。乾燥させた製剤(すなわち凍結乾燥物)は、乾燥化合物、例えばエアゾール又は粉末として使用することができるか、或いは、例えば水、緩衝液、又は他の適切な液体(希釈剤)を使用してその元来の濃度又は別の濃度へと再構成することができる。
【0091】
vWF結合剤の精製プロセスは、例えば凍結させた液体としての長期保存に適した、及び/又はその後の凍結乾燥(例えばクエン酸/スクロース製剤を使用して)に適した製剤へとvWF結合剤を転換させることを可能とするように設計される。製剤を、特定の濃度のタンパク質、例えばvWF結合剤と共に凍結乾燥させる。その後、凍結乾燥製剤を、必要に応じて適切な希釈剤(例えば水)を用いて再構成して、元来の製剤成分を再度可溶化して所望の濃度に、一般的には、凍結乾燥前の濃度と比較して同じ又はより高い濃度にすることができる。凍結乾燥させた製剤を再構成して、最初に凍結乾燥させた液体の容量と比較して凍結乾燥物に加える希釈剤の量に依存して、元来の濃度(すなわち凍結乾燥前)とは異なる濃度を有する製剤を作製することができる。vWF結合剤の完全性の1つ以上のパラメーターをアッセイすることによって適切な製剤を同定することができる。アッセイされたパラメーターは、一般的には、サイズ排除HPLC(SE−HPLC)による高分子量(HMW)種の比率又は低分子量(LMW)種の比率である。
【0092】
従って、本発明は、適切な純度によって特徴付けられ、例えば薬学的目的のために必要とされる適切な濃度の製剤を提供する。製剤は、広範囲の濃度、広範囲の保存条件(例えば温度、例えばストレスのかかった条件、例えば高温(例えば+25℃又はそれ以上)、凍結乾燥、振とう、又は他の形態の物理的ストレス)で安定形である、本明細書に定義されているような、ポリペプチド、例えば免疫グロブリン単一可変ドメイン、又は少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドを提供する。
【0093】
製剤は、水性担体を含む。水性担体は特に緩衝液である。
【0094】
しかし、本発明はまた、液体製剤のさらなる加工によって得ることのできる製品、例えば凍結製品、凍結乾燥製品、又は噴霧乾燥製品も包含する。再構成時に、これらの固体製品は、本明細書に記載のような液体製剤となり得る(しかしこれに限定されるわけではない)。それ故、その最も広義な意味において、「製剤」という用語は、液体及び固体の両方の製剤を包含する。しかし、固体製剤は、液体製剤から(例えば、凍結、凍結乾燥又は噴霧乾燥によって)得ることができると理解され、従って、本明細書の液体製剤について明記された特色によって規定される様々な特徴を有する。本発明は、例えば凍結乾燥又は噴霧乾燥前の元来の組成物から誘導された組成物に至る再構成を除外しない。
【0095】
本発明の製剤は、少なくとも1つのvWF結合剤、特に免疫グロブリン単一可変ドメイン、又は、本明細書において定義されているような少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドを含む。特定の実施態様において、該製剤は、配列番号1〜19、好ましくは配列番号1から選択された1つ以上のポリペプチドを含む。該ポリペプチドはさらに、例えば、構築物の半減期を延長することのできる血清アルブミン結合ペプチド又は結合ドメイン(これは、任意の適切な血清アルブミン結合ペプチド又は結合ドメインであり得る)(血清アルブミン結合ペプチド又は結合ドメインを含まない同構築物と比較して)を組み込むことによって半減期が延長され得、特に、出願人による国際公開公報第2008/068280号(及び特に国際公開公報第2009/127691号及び国際公開公報第2011/095545号、どちらも出願人による)に記載の血清アルブミン結合ペプチド、又は血清アルブミン結合免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えば血清アルブミン結合ナノボディ;例えば、Alb−1又はヒト化形のAlb−1、例えばAlb−8、それは例えば国際公開公報第06/122787号に言及されている)であり得る。これもまた本発明によって包含される半減期を延長するための代替的な手段は、例えば、当技術分野において広く知られているPEG化(PEG)、例えば部位特異的又はランダムなPEG化、好ましくは部位特異的PEG化を含む。5000を超える、例えば10,000〜200,000、好ましくは20,000〜100,000の範囲の分子量を有するPEGを使用することができる。半減期延長の任意の態様において、本明細書において定義されるポリペプチドの活性は損なわれない、例えば、半減期の延長されていない同ポリペプチドの活性の少なくとも75%、80%、85%、90%、又は95%を保持すると考えられる。活性は、例えば、標的抗原への結合、及び/又はバイオアッセイにおける効力に関連し得る。当業者はまた、選択された半減期延長技術が、それが免疫原性を高めないか又はさらには低下させないという点で適切であることを確認するだろう。
【0096】
5.5.1 緩衝液
本発明の製剤は、クエン酸又はリン酸緩衝液の少なくとも1つから選択された緩衝液、好ましくはクエン酸緩衝液を含む。特定の実施態様において、クエン酸緩衝液は、クエン酸一水和物及びクエン酸三ナトリウム二水和物、例えば0.2154g/Lのクエン酸一水和物及び5.5805g/Lのクエン酸三ナトリウム二水和物を使用して調製される。非限定的な例において融解温度を測定することによって決定したところ、これらの緩衝液は、他の試験した緩衝液と比較してvWF結合剤の安定性を増強する。
【0097】
本発明による製剤は、5〜200mM、例えば5、7.5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190又は200mM、好ましくは5〜100mM、より好ましくは7.5〜80mM、さらにより好ましくは10〜50の範囲、例えば10、15、20、25又は30mM、最も好ましくは20mMの濃度のクエン酸緩衝液を含み、各値は、場合により±5mMの範囲を包含すると理解される。本発明による製剤は、5〜200mM、例えば5、7.5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、又は200mM、好ましくは5〜80mM、より好ましくは7.5〜60mM、さらにより好ましくは10〜40の範囲、例えば10、15、20、25、又は30mM、最も好ましくは10mMの濃度のリン酸緩衝液を含み得、各値は、場合により±5mMの範囲を包含すると理解される。より低い濃度の緩衝液は、最終浸透圧に対して作用を及ぼし、従って、添加されなければならない場合がある追加の溶質に対して作用を及ぼすと理解されるだろう。
【0098】
本発明の製剤のpHは5.0〜7.5の範囲内にあり、各値は、±0.2の範囲を包含すると理解される。本発明の製剤についての好ましいpH値の具体例は、5.0、5.5、5.8、6.0、6.2、6.5、6.7、7.0、7.1、7.2、又は7.5、好ましくは6.0〜7.0、より好ましくは6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、又は6.9、例えば6.5のpHを含む非限定的なリストから選択され得、各値は、場合により±0.2の範囲を包含すると理解される。
【0099】
意外なことに、クエン酸及びリン酸緩衝液は、例えばヒスチジン及びトリス−HCl緩衝液と重なるpH範囲を有するが、安定性を支える。
【0100】
最も有利なpHは、製剤に含まれる緩衝液に依存するだろう。従って、本発明は、特に、6.5〜7.5の範囲、好ましくは6.9、7.0、7.1、例えば7.1のpHを有する、リン酸緩衝液を含む製剤に関する。
【0101】
クエン酸緩衝液を含む製剤は、保存及び使用にとって著しく適切であったことが示された。しかし、従来の知恵とは対照的に、クエン酸緩衝液を含む液体製剤は、約6.0のpHで最も安定であり、一方、クエン酸緩衝液を含む凍結乾燥製剤は、約6.5のpHで最も安定であった。従って、本発明は、6.0〜7.0、より好ましくは6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、又は6.9、例えば6.5のpHを有するクエン酸緩衝液を含む製剤に関し、各値は、場合により±0.2の範囲を包含すると理解される。
【0102】
5.5.2 濃度
本発明の製剤は、臨床用途に適した濃度(患者に使用する前に希釈するための原液に使用される濃度を含む)の、本明細書に定義されているようなvWF結合剤、特に免疫グロブリン単一可変ドメイン、又は少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドを含む。改善された安定化とは別に、本発明の製剤は、より高濃度のvWF結合剤、例えばISVD又はポリペプチドを可能とする。特に、本発明の製剤は、目視、顕微鏡、SE−HPLC、及びDLSによって確認したところ、物理学的に安定であり続け、すなわち、濁度及び/又は小粒子の形成がない。高温での長期間におよぶ保存及び繰り返しの凍結解凍サイクルは、これらの製剤におけるvWF結合剤の物理的安定性に影響を及ぼさないようであった。
【0103】
本発明の製剤における、活性作用物質、例えばvWF結合剤又は本発明のポリペプチドの典型的な濃度は、0.1〜80mg/mL、好ましくは1〜70mg/mL、5〜60mg/mL、7.5〜50mg/mL、又は10〜40mg/mLの範囲、例えば5、7.5、10、12.5、15、17.5、20、25、30、35、40、45、50又は60mg/mL、好ましくは12.5mg/mL、又は10mg/mLの非限定的な濃度の例を含み、各値は、場合により±20%の範囲を包含すると理解される(例えば、10という数値は、場合により8〜12mg/mLの範囲を包含する)。
【0104】
5.5.3 賦形剤
本発明による製剤はまた場合により、1つ以上の賦形剤を含み得る。本明細書において使用される「賦形剤」という用語は、製剤に有益な物理的特性を与える該化合物のための希釈剤、ビヒクル、保存剤、凍結乾燥保護剤、結合剤、又は安定化剤として一般的に使用される不活性物質を指す。当業者は、凍結乾燥保護、安定化、防腐などの、製剤において特定の機能を有し得る、薬学的目的に適した賦形剤をよく知っているだろう。一般的に使用される安定化剤及び保存剤は、当業者には周知である(例えば国際公開公報第2010/077422号参照)。これらの組成物に使用され得る薬学的に許容される担体は、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースを基剤とした物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及びラノリンを含むがそれに限定されるわけではない。有利な実施態様において、賦形剤は、NaCl、トレハロース、スクロース、マンニトール、又はグリシンからなるリストから選択された1つ以上であり得る。
【0105】
本発明を理解すれば、当業者は、製剤に添加すべき賦形剤の適切な濃度を容易に決定することができる。例示的な実施態様において、NaClは、10〜500mMの範囲、例えば25、30、40、50、60、70、100、150、250、又は500mM、好ましくは50〜150mM、例えば75又は140mMの濃度を有し、各値は、場合により±5mMの範囲を包含すると理解され;及び/又は、マンニトールは、1〜10%、好ましくは2〜4%、例えば2、3、又は4%(w/w)の濃度を有し、各値は場合により±0.5%の範囲を包含すると理解され;及び/又は、スクロースは、1〜15%、好ましくは2〜12%、又は4〜10%、例えば4、5、6、7、8、又は9%(w/w)、最も好ましくは7%の濃度を有し、各値は、場合により±0.5%の範囲を包含すると理解され;及び/又は、グリシンは、10〜500mMの範囲、例えば25、30、40、50、60、70、75、100、150、250又は500mM、好ましくは50〜400mM、75〜300mM、100〜250mM、例えば140又は200mMの濃度を有し、各値は場合により±5mMの範囲を包含すると理解され;及び/又はトレハロースは、10〜500mMの範囲、例えば25、30、40、50、60、70、75、100、150、250、又は500mM、好ましくは100〜300mM、150〜280mM、例えば160mM又は260mMの濃度を有し、各値は場合により±5mMの範囲を包含すると理解される。
【0106】
好ましい実施態様において、本発明の任意の態様による製剤は、ヒト血液に対して等張である。等張液は血漿と同じ浸透圧を有し、よって被験体の血漿の浸透圧を変化させることなく被験体に静脈内注入することができる。張度は、浸透圧で表わすことができ、これは、理論的な浸透圧、又は好ましくは実験的に決定された浸透圧であり得る。典型的には、浸透圧は、290±60mOsm/kg、好ましくは290±20mOsm/kgの範囲内である。
【0107】
従って、賦形剤(存在する場合)の選択において、当業者は緩衝液の濃度及び1つ以上の賦形剤の濃度を考慮し、好ましくは、上記に明記された範囲内の浸透圧を有する製剤に到達するだろう。当業者は、浸透圧を推定する計算をよく知っている(例えば国際公開公報第2010/077422号参照)。必要であれば、当業者はまたさらに、製剤の浸透圧を調整するための化合物を含めることができる。例示的な化合物としては、上記の賦形剤、及び/又はソルビトール、メチオニン、デキストロース、イノシトール、アルギニン、若しくはアルギニン塩酸塩の1つ以上が挙げられるがそれらに限定されるわけではない。
【0108】
スクロースを含む製剤が、例えばポリペプチドの保存及び凍結解凍の最中の物理的安定性を維持するのに特に適していることが示された。従って、本発明は、約5〜9%、より好ましくは6〜8%、さらにより好ましくは7%のスクロースを含む製剤に関し、各値は、場合により±0.5%の範囲を包含すると理解される。
【0109】
本発明の製剤はまた、凍結解凍の最中に本発明のポリペプチドを保護するのに特に有用である化合物も含み得る。このような化合物はまた、凍結乾燥保護剤としても知られ、これは当業者には周知である。具体例としては、糖、例えばスクロース、ソルビトール又はトレハロース;アミノ酸、例えばグルタメート、特にグルタミン酸一ナトリウム、又はヒスチジン;ベタイン、硫酸マグネシウム、糖アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及びその組合せが挙げられるがそれらに限定されるわけではない。本発明を理解することによって、添加されるこのような化合物の必要量は、液体型及び凍結乾燥を受ける時の製剤の安定性を考慮して当業者によって容易に決定され得る。凍結乾燥に特に適した製剤はさらに、増量剤を含み得る。適切な作用物質は、当業者には広く知られている。スクロースを含む製剤は、vWF結合剤の保存及び凍結解凍の最中の物理的安定性を維持するのに特に適しているだけでなく、凍結乾燥保護剤としても適していたことが示された。
【0110】
5.5.4 洗浄剤
本発明のさらなる実施態様において、本発明の任意の態様による製剤はさらに、洗浄剤又は界面活性剤を含み得る。本発明に使用するのに適切な洗浄剤又は界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えばポリソルベート−20、−40、−60、−65、−80、又は−85が挙げられるがそれらに限定されるわけではない。ポリソルベートに対する一般的な商標名としては、Alkest、Canarcel、及びTweenが挙げられる。当業者は、例えば国際公開公報第2010/077422号に列挙されているような、洗浄剤のさらなる非限定的な例を知っている。好ましい実施態様において、洗浄剤は非イオン性洗浄剤である。より具体的には、洗浄剤はポリソルベート−80(本明細書において以後Tween−80とも称される)である。当業者は、本発明の製剤に対する洗浄剤の適切な濃度を容易に決定することができる。典型的には、濃度は、製剤化されたvWF結合剤の凝集を減少させる剪断ストレス、例えば撹拌ストレス条件下で、洗浄剤の有益な効果、例えば安定化作用を維持しつつ、できるだけ低いものであろう。例示的で非限定的な実施態様において、洗浄剤の濃度は、0.001〜0.5%の範囲、例えば0.001%、0.002%、0.003%、0.004%、0.005%、0.01%、0.015%、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、0.04%、0.045%、0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、又は0.5%、好ましくは0.01〜0.05%、より好ましくは0.01〜0.02%、例えば0.01%(v/v)の濃度であり得る。
【0111】
5.5.5 組合せ
本発明の製剤において第5.5.1章〜第5.5.4章に上記された様々な実施態様を、制限なく組み合わせることができる。例えば、上限又は下限として上記に列挙された数値の任意の組合せを使用した数値の範囲が含まれることを意味する。しかし、製剤の好ましい非限定的な例としては、緩衝液がpH約6.5、好ましくは20mMの濃度のクエン酸緩衝液である製剤が挙げられ、該製剤はさらに、好ましくは約7%(w/v)の濃度のスクロースを含み、場合によりさらに、好ましくは0.01%(v/v)の濃度の非イオン性洗浄剤、例えばTween−80を含む。
【0112】
5.6 さらなる加工
概略が示されているように、上記の製剤のいずれかを、例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥、又は凍結、例えばバルク凍結によってさらに加工することができる。得られた加工された製品は、上記に定義されているような、出発液体製剤に由来する特徴を有する。必要であれば、追加の作用物質を、例えば凍結乾燥保護剤などをさらなる加工のために含めることができる。
【0113】
5.6.1 凍結
場合によっては、vWF結合剤を含有する製剤を保存のために凍結させる。従って、該製剤は、このような条件下、例えば凍結解凍(FT)サイクル下で比較的安定であることが望ましい。製剤の適合性を決定する1つの方法は、試料製剤を、少なくとも2回、例えば3回、4回、5回、8回、10回又はそれ以上の凍結(例えば−20℃又は−70℃で)及び解凍(例えば、25℃の水浴中での急速な解凍又は+2℃〜+8℃での緩徐な解凍)サイクルにかけ、元来の製品に対する質量回収率と、FTサイクル後に蓄積したLMW種及び/又はHMW種の存在及び/又は量とを決定し、それを、例えばSE−HPLCによってFT手順前の試料に存在したLMW種又はHMW種の量と比較するというものである。LMW種又はHMW種の増加は、低下した安定性を示す。
【0114】
5.6.2 凍結乾燥
製剤を凍結乾燥後に保存してもよい。それ故、凍結乾燥後の製剤のポリペプチド成分の安定性について製剤を試験することは、製剤の適合性を決定するのに有用である。該方法は、試料製剤を凍結ではなく凍結乾燥し、その元来の容量となるまで再構成し、LMW種及び/又はHMW種の存在について試験することを除いて、凍結について上記したのと類似している。凍結乾燥試料製剤を、凍結乾燥させなかった対応する試料製剤と比較する。対応する試料と比較して凍結乾燥試料中のLMW種又はHMW種の増加は、凍結乾燥試料の低下した安定性を示す。一般的には、凍結乾燥プロトコールは、試料を凍結乾燥器(lyophilizer)又は凍結乾燥器(freeze-dryer)にローディング、予備冷却期間、凍結、真空開始、1回目の乾燥温度まで上昇、1回目の乾燥、2回目の乾燥温度まで上昇、2回目の乾燥、及び試料に栓をすることを含む。凍結乾燥のプロセスは当技術分野において周知であるが、様々な因子が、試料の凍結乾燥特徴(ガラス転移温度(Tg’)及び崩壊温度(Tc)を含む)を決める。凍結乾燥プロトコールのために選択され得るさらなるパラメーターとしては、真空(例えばミクロン単位)及び冷却器の温度が挙げられる。
【0115】
適切な温度の上昇速度は、約0.1℃/分〜2℃/分、例えば0.1℃/分〜1.0℃/分、0.1℃/分〜0.5℃/分、0.2℃/分〜0.5℃/分、0.1℃/分、0.2℃/分、0.3℃/分、0.4℃/分、0.5℃/分、0.6℃/分、0.7℃/分、0.8℃/分、0.9℃/分、及び1.0℃/分である。凍結乾燥サイクルにおける凍結中の適切な棚温度は、一般的に、約−55℃〜−5℃、−25℃〜−5℃、−20℃〜−5℃、−15℃〜−5℃、−10℃〜−5℃、−10℃、−11℃、−12℃、−13℃、−14℃、−15℃、−16℃、−17℃、−18℃、−19℃、−20℃、−21℃、−22℃、−23℃、−24℃、又は−25℃である。棚温度は、1回目の乾燥と2回目の乾燥で異なり得、例えば、1回目の乾燥は、2回目の乾燥より低い温度で行なうことができる。非限定的な例において、1回目の乾燥は0℃で又は代替的には+5℃で、2回目の乾燥は+25℃で実施することができる。場合によっては、凍結の最中及び真空開始前にアニーリングプロトコールを使用する。このような場合、アニーリング温度を選択しなければならず、温度は一般的に組成物のガラス転移温度より高い。一般的に、アニーリング時間は、約2〜20時間、約3〜19時間、約2〜10時間、約3〜5時間、約3〜4時間、約2時間、約3時間、約5時間、約8時間、約10時間、約12時間、約15時間、又は約19時間である。アニーリング温度は、一般的に、約−35℃〜約−5℃、例えば約−25℃〜約−8℃、約−20℃〜約−10℃、約−25℃、約−20℃、約−15℃、約0℃、又は約−5℃である。場合によっては、アニーリング温度は、一般的に、−35℃〜+5℃、例えば−25℃〜−8℃、−20℃〜−10℃、−25℃、−20℃、−15℃、0℃、+5℃である。
【0116】
本明細書に記載の製剤の安定性を、−25℃〜+30℃の1回目の乾燥棚温度、及び0℃〜+30℃の2時間〜33時間の2回目の乾燥期間をはじめとする、様々な凍結乾燥パラメーターを使用して試験することができる。2回目の乾燥温度は、活性医薬成分の分解を引き起こすことのない、できるだけ高温であるべきである。
【0117】
本発明の製剤に使用される賦形剤は、好ましくは、以下のパラメーターの1つ以上を満たすべきである:薬理学的に不活性である;加工の必要条件に適合できる;患者による十分な耐容性が示される;活性物質を損傷しない;可溶性で吸着可能な製品を与える;常温保存可能な製品を与える;及び、商業的に許容される製品を与える。
【0118】
1つの実施態様において、本発明の製剤は、例えば
図1又は表14に概略が示されているように凍結乾燥によって調製される。
【0119】
クエン酸/スクロースを基剤とした製剤の凍結乾燥は、vWF結合剤の安定性を劇的に向上させることが実証された。特に、クエン酸/スクロースを基剤とした製剤は、液体型で起こる化学的修飾を実質的に防ぐが、少量のピログルタメートの形成は例外である。意外なことに、クエン酸濃度を下げ、同時にスクロース濃度を上昇させることにより、化学的安定性は向上し、例えば、ピログルタメート形成は減少する。vWF結合剤は、極限の製品温度まで凍結乾燥させた後も頑強であることが実証された。実際に、安定性プロファイルは、様々な凍結乾燥サイクルを使用して調製された物質において同一であった。
【0120】
一般的に、凍結乾燥サイクルは、10時間から100時間、例えば20時間から80時間、30時間から70時間、40時間から60時間、45時間から50時間、50時間から66時間行なうことができる。
【0121】
非限定的な例において、20mMクエン酸、7%スクロース、0.01%Tween−80、pH6.5中12.5mg/mLのタンパク質濃度のvWF結合剤の製剤をバルクで製剤化しかつ凍結乾燥させた。
【0122】
本発明の製剤の保存のための温度範囲の非限定的な例は、約−20℃〜約+50℃、例えば約−15℃〜約+40℃、約−15℃〜約+30℃、約−15℃〜約+20℃、約+5℃〜約+25℃、約+5℃〜約+20℃、約+5℃〜約+15℃、約+2℃〜約+12℃、約+2℃〜約+10℃、約+2℃〜約+8℃、約+2℃〜約+6℃、又は約+2℃、+3℃、+4℃、+5℃、+6℃、+7℃、+8℃、+10℃、+15℃、+25℃、+30℃、又は+40℃である。保存温度にも関わらず、特定の場合において、試料は、保存中に一過性に起こり得る温度変化、及びこのような組成物について予想され得る輸送条件の下で安定である。
【0123】
本明細書に定義される本発明の製剤を用いて研究することによって、活性物質の十分な保持及び迅速な溶解に適した粒径を示す、結果として生じる乾燥粉末を得ることが可能であることが確立された。本発明による乾燥製剤は、加工、最終仕上げ、保存、及び施薬を通じて安定かつ均一であり続ける粒子を含む。該製剤は常温保存可能かつさらさらして流動性であり、その最終容器に分注されても問題を全く呈さず、患者による投与が簡単である。
【0124】
5.6.3 噴霧乾燥
場合によっては、製剤を噴霧乾燥させ、その後、保存する。噴霧乾燥は、当技術分野において公知の方法を使用して実施され、またこれを改変して、液体又は凍結噴霧乾燥(例えば、Niro Inc. (Madison, WI)、Upperton Particle Technologies (Nottingham, England)、又は米国特許公開公報第2003/0072718号及び第2003/0082276号、又はBuchi (Brinkman Instruments Inc., Westbury, NY)の方法などの方法を使用して)を使用することができる。
【0125】
5.6.4 希釈剤
本明細書に記載の凍結乾燥製剤は、必要に応じて、凍結乾燥型を適切な希釈剤と混合して、元来の製剤成分を所望の濃度まで再度可溶化することによって再構成され得る。本明細書において使用される「希釈剤」という用語は、本明細書に記載のような適切な濃度に変化又は到達するための、薬学的に許容される(ヒトへの投与に対して安全かつ無毒性である)溶媒を指す。例示的な希釈剤としては、滅菌水(例えば注射用水、ミリQ水)、食塩水、ブドウ糖、デキストロース、リンガー液、及び水性緩衝溶液が挙げられるがそれらに限定されるわけではない。
【0126】
5.7 医薬組成物
本発明の製剤は、好ましくは、動物又はヒトの生体の治療法に使用するのに適している。従って、本発明は、本発明の任意の態様に記載の又は本発明の任意の方法若しくはプロセスによって得ることのできるポリペプチド製剤を含む、医薬組成物又は診断用組成物に関する。
【0127】
本発明の製剤は、好ましくは、医薬製剤である。特に、該製剤は、ヒトへの非経口投与、例えば皮下、静脈内、筋肉内、皮内、又は腹腔内投与、好ましくは静脈内又は皮下投与に適している。投与は、液体製剤を投与するあらゆる方法、特に注射を包含する。例えば埋め込み可能な器具、微量注入ポンプ(場合により埋め込み可能)、及び/又は(埋め込み可能な)持続放出製剤、例えば沈着物、ゲル、生分解性ポリマー製剤を介した他の形態の全身投与も本発明の範囲内である。医薬組成物は、製造中及び保存中に無菌かつ安定である。なぜなら、vWF結合剤の誘導体/分解産物は臨床の場では望ましくないからである。該組成物はまた高純度であり、例えば、細菌の産生物、例えばLPSの存在が排除される。該製剤を、任意の適切な手段、例えば滅菌ろ過、放射線照射、及びその組合せなどによって滅菌することができる。好ましくは、医薬組成物を、非経口投与(特に静脈内、動脈内、又は経皮)に適応させる。静脈内投与が特に重要であると考えられる。好ましくは、vWF結合剤は、非経口剤形、最も好ましくは静脈内剤形及び皮下剤形である。
【0128】
医薬製剤として適切であるために、本発明の製剤は、典型的には、適切な容量比の本発明のポリペプチド(すなわち活性作用物質)を含む。例えば、皮下注射のための活性作用物質の濃度は、静脈内注射用の製剤と比較して、より少ない容量で必要な薬学的用量を投与できるように、より高濃度であり得る。しかし、実施態様によっては、活性作用物質の濃度は、皮下又は静脈内注射と同一であり、本明細書に定義されているような例示的な範囲内であり得る。
【0129】
実施態様によっては、本発明の製剤は、追加の作用物質、例えば追加の活性作用物質、賦形剤、安定化剤、保存剤、例えば抗菌剤などを含み得る。
【0130】
本発明の製剤は、好ましくは、それを必要とする患者に適用される投与量である。それにも関わらず、特定の投与形態及び投与量は、患者の個別事項、特に年令、体重、生活習慣、活動レベル、及び全身の病状を必要に応じて考慮に入れながら、担当の医師によって選択され得る。より具体的には、ALX−0081は、24時間の投与間隔で静脈内又は皮下に投与される。さらにより好ましくは、ALX−0081は、例えばRIPA、すなわちリストセチン誘導血小板凝集(Favaloro EJ. Clin Haematol 2001; 14: 299-319)及び/又はリストセチンコファクター血小板凝集アッセイ(Howard MA, Firkin BG. Ristocetin - a new tool in the investigation of platelet aggregation. Thrombosis et Diathesis Haemorrhagica 1971; 26: 362-9)によって測定される凝集活性を考慮して、24時間投与間隔で静脈内又は皮下に投与される。例えば、凝集活性がその後の6時間の間に、RIPAによって測定したところ10%以下に留まっている又はRICOによって測定したところ20%以下に留まっていると推定される場合には(臨床的に関連した阻害)、さらなる用量を投与しない。
【0131】
しかし、一般的にvWF結合剤の用量は、様々な因子、例えば活性成分の有効性及び作用持続時間、温血種、並びに/又は温血動物の性別、年齢、体重及び個々の状態に依存し得る。
【0132】
通常、用量は、1回量のvWF結合剤が、例えば、インビトロの結果に基づいて、又はカニクイザルにおける亜慢性毒性を試験する用量漸増試験の結果に基づいて推定されるようなものである。このような前臨床データセットに基づいて、vWF結合剤についての開始用量及びその後の漸増用量を決定することができる。例えば、用量は、0.5〜50mg、特に1〜30mgであり、体重が約75(+/−30)kgである温血動物に投与される(しかし、同様にこの標準とは異なっていてもよい)。所望であれば、この用量はまた、いくつかの、場合により均等な分割用量で摂取してもよい(「mg」は処置しようとする哺乳動物(ヒトを含む)1体あたりの薬物のmgを意味する)。
【0133】
上記の用量(1回量として投与されるか(これは1つの実施態様である)又は何回かの分割用量で投与されるかのいずれかである)は、例えば6時間毎に1回、12時間毎に1回、又は1日1回、上記のように繰り返され得る。換言すれば、医薬組成物は、連続6時間の療法からより長期の間隔をあけた投与療法までの処方計画で投与されてもよい。
【0134】
好ましくは、vWF結合剤は、本明細書においてALX−0081について示唆されているようにPCIを必要とする患者における補助的処置に使用されるのと同じ桁の用量で投与される。例えば、好ましい12A02H1を含有するvWF結合剤、例えばALX−0081及びその機能的変異体について、約0.5〜約40mg、好ましくは約1〜約35mg、又は約2〜約30mg、さらにより好ましくは約3〜約25mg、又は約4〜約20mg、又は約5〜約17.5mg、又はさらには約6〜約16mg、又は約7.5〜約15mg、又はさらには約10〜約14mgの範囲、より好ましくは約10、約12.5又は約13.8mgのvWF結合剤の用量が、ヒト患者における急性処置に使用され得る。
【0135】
1回量単位剤形の製剤は、好ましくは、約0.5〜約40mg、好ましくは約1〜約35mg、又は約2〜約30mg、さらにより好ましくは約3〜約25mg、又は約4〜約20mg、又は約5〜約17.5mg、又はさらには約6〜約16mg、又は約7.5〜約15mg、又はさらには約10〜約14mg、より好ましくは約10、約12.5、又は約13.8mgの活性成分を含み、1回量単位剤形ではない製剤は、好ましくは、約0.5〜約40mg、好ましくは約1〜約35mg、又は約2〜約30mg、さらにより好ましくは約3〜約25mg、又は約4〜約20mg、又は約5〜約17.5mg、又はさらには約6〜約16mg、又は約7.5〜約15mg、又はさらには約10〜約14mg、より好ましくは約10、約12.5、又は約13.8mgの活性成分を含む。
【0136】
非経口投与用の医薬調製物は、例えば、アンプルなどの単位投与剤形のものである。それらは、それ自体が公知の方法で、例えば、慣用的な混合、溶解、又は凍結乾燥プロセスによって調製される。
【0137】
非経口製剤は、PCIの部位などで様々な点で、動脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、皮内、皮下、又は好ましくは静脈内で効果的である、特に注射液である。このような液体は、好ましくは、使用前に、例えば、活性成分を単独で又は薬学的に許容される担体と一緒に含む凍結乾燥させた調製物又は濃縮物から調製することのできる、等張水溶液又は懸濁液である。医薬調製物は滅菌されていてもよく、並びに/又は、例えば保存剤、安定化剤、湿潤剤、及び/又は乳化剤、可溶化剤、浸透圧を調節するための塩、及び/又は緩衝液などの補助剤を含んでいてもよい。
【0138】
経皮適用に適した製剤は、有効量の活性成分を担体と共に含む。有利な担体としては、宿主の皮膚を通過するのを助ける吸収可能な薬理学的に許容される溶媒が挙げられる。特徴的には、経皮デバイス(device)は、裏当て部分(backing member)と、場合により担体と共に化合物を含有するレザバーと、場合により予め定められた制御速度で長期間にわたって活性成分を宿主の皮膚へ送達する速度制御バリアーと、該デバイスを皮膚に固定するための手段とを含む包帯の形態である。
【0139】
以下の表は、本発明のクエン酸緩衝液及びリン酸緩衝液を基剤とした製剤のいくつかの非限定的な例を提供する。全ての製剤を、所望であれば適切な賦形剤を添加することによって290±60mOsm/kgの浸透圧へと調整することができる。製剤は、本発明のポリペプチドのいずれか1つ以上、例えば配列番号1〜19、特に配列番号1を含むことができる。
【0140】
【表1】
【0141】
この表中の緩衝液の濃度は、場合により±5mMを包含することが理解される。pH値は、場合により±0.2を包含することが理解される。上記の各々の緩衝液は、例えば25、30、40、50、60、70、100、150、250、又は500mMの濃度の例えばNaCl;例えば2、3又は4%(w/v)の濃度のマンニトール;例えば25、30、40、50、60、70、100、150、250、又は500mMの濃度のグリシン;例えば25、30、40、50、60、70、100、150、250、又は500mM^の濃度のトレハロース、及び例えば4、5、6、7、8、又は9%(w/v)の濃度のスクロース、及び/又は0.001%、0.002%、0.003%、0.004%、0.005%、0.01%、0.015%、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、0.04%、0.045%、0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、又は0.5%(v/v)の濃度の界面活性剤、例えばTween−80から選択された1つ以上の賦形剤と組み合わせることができる。
【0142】
5.8 本発明の効果
本発明は、vWF結合剤、例えば本明細書に定義されているような免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えば配列番号1〜19、特に配列番号1の安定な製剤を提供する。「安定な」は、一般的に、免疫グロブリン単一可変ドメインが、長期間、例えば1か月〜36か月間保存した時に、たとえ、1つ以上の化学的若しくは物理的ストレス、例えば高温(+25℃であるかそれ以上)、又は物理的ストレス、例えば振とう若しくは撹拌に曝されたとしても、有意な物理的又は化学的変化を被らないことを意味する。より特定すると、「安定な」は、(定義されているような)条件下で(定義されているような)長期間かけて保存した場合に、本発明のポリペプチドの1つ以上の分解産物、例えば低分子量(LMW)誘導体(フラグメント);及び/又は、化学的誘導体若しくは改変体、例えばピログルタメート変異体;及び/又は、例えば凝集によって形成された高分子量(HMW)誘導体(オリゴマー又はポリマー)の(定義されているような)形成がほんの僅かであることを意味する。
【0143】
当業者は、タンパク質サイズを評価するための技術、例えばサイズ排除クロマトグラフィー−HPLC、又は化学的誘導体の形成を評価するための技術、例えば逆相HPLCをよく知っている。当業者はまた、このような分析を実施するための一般的に使用される装置及びソフトウェアツールもよく知っている。例えば、当業者は、例えば相対的ピーク面積の点からクロマトグラフィーの実行を分析するための一般的に使用されるソフトウェアを知っている。例としては、ChemStationソフトウェアの具備されたAgilent 1200 HPLCシステム(Agilent Technologies, Palo Alto, USA, Rev B)又はChromeleonソフトウェアの具備されたDionex Ultimate 3000 HPLCシステム(Dionex Corporation, Sunnyvale, CA, USA, V6.8)が挙げられる。
【0144】
タンパク質、例えば免疫グロブリン単一可変ドメインの安定性を評価するために使用することのできる一般的な技術としては、静的光散乱、タンジェンシャルフローろ過、フーリエ変換赤外分光法、円二色性、尿素誘起タンパク質アンフォールディング、内因性トリプトファン蛍光、及び/又は1−アニリン−8−ナフタレンスルホン酸タンパク質結合が挙げられる。さらに、本発明の製剤は、保存の経過中、及び/又は本明細書に定義されているような1つ以上のストレスの影響下で殆ど又は全く効力/生物学的活性の減少を示さない。生物学的活性及び/又は効力は、例えば国際公開公報第2006/122825号に記載のように決定することができる。
【0145】
5.8.1 熱的安定性
本発明の製剤は、vWF結合剤、例えば本明細書に定義されているような免疫グロブリン単一可変ドメインの高熱安定性をもたらすことによって特徴付けられる。熱安定性は、例えば、融解温度(Tm)を決定することによって評価することができる。融解温度を決定するために適切な技術は公知であり、これには例えば本明細書に記載のような例えばサーマルシフトアッセイ(TSA)が挙げられる。より具体的には、本発明の製剤は、他の製剤と比較して、TSAによって決定されるような免疫グロブリン単一可変ドメインのTmの上昇をもたらす。この効果は、実験章の表1に例示されている。
【0146】
実験章から確認することができるように、高い熱的安定性、すなわち高いTmは、保存に対する安定性の指標として捉えることができる。
【0147】
本発明によると、本発明の製剤は、幅広い範囲のpH値におよび、例えばクエン酸緩衝液では6.0〜7.0、及びリン酸緩衝液では6.5〜7.5におよびTmに対してプラスの影響を及ぼす。Tmに対する最も有益な効果は、pH6〜7、特にpH6.5±0.2のクエン酸緩衝液、及びpH6.5〜7.5、特にpH7.1±0.2のリン酸緩衝液について観察され得る。
【0148】
賦形剤の添加は、Tmに対してさらなる正又は負の効果を及ぼし得る(表1)。例えば、トレハロースは、(特定の緩衝液の脈絡において)例えば150mM〜300mMの間でTmを上昇させることができる。また、マンニトール又はスクロースも、Tmに対して明確に正の効果を及ぼした。これらの賦形剤は、本発明の特定の実施態様において、例えば増量剤又は凍結乾燥保護剤が有益である製剤において用途を見出し得る。これらの例示的な実施態様は、単独で又はマンニトール若しくはスクロースと組み合わせて、さらに公知の凍結乾燥保護剤又は増量剤の使用を排除しない。
【0149】
本明細書の実験章によって証明されているように、TSAによって決定されるようなTmは、vWF結合剤、例えば本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインの安定性の価値ある指標としての役目を果たす。
【0150】
5.8.2 機械的ストレスに対する安定性
本発明の製剤は、撹拌、振とう又は剪断ストレスなどの機械的ストレスに対する高い安定性によって特徴付けられる。機械的ストレス下での安定性を評価するための可能なアッセイは、分光蛍光光度計での500nmの散乱シグナルのモニタリング又は例えば340nmでのUV分光光度法を介してである。散乱又はUV吸収度の増加は、凝集体の形成を反映する。凝集体が形成されると(HMW)、経時的な増加は線形曲線を描き、その勾配(散乱強度/時間、又は吸光度単位/秒)を決定することができる。好ましくは、本発明の製剤は、0.0006未満、例えば0.0005未満、例えば0〜0.0004の勾配によって特徴付けられる(
図4A及びB参照)。
【0151】
クエン酸緩衝液を含む製剤が特に好ましく、例えば上記に定義されているような撹拌後のタンパク質回収率に対して正の効果を及ぼす。例えば、質量回収率は、少なくとも90%、95%、98%、又は100%である。タンパク質回収率は、例えば撹拌によって試料にストレスをかける前のタンパク質総含量と比較して決定される。リン酸緩衝液を含む製剤により、上記に定義されているような撹拌後に少なくとも75%、80%、85%、又はさらにはそれ以上の回収率がもたらされる。
【0152】
5mg/mLという例示的であって非限定的な濃度においては、本発明の製剤は、Tweenの非存在下における撹拌に応答して可逆的な凝集体を形成するだけである。従って、本発明の製剤は、機械的なストレス下で不可逆的な凝集体の形成を防ぐ。従って、本発明のさらなる実施態様において、本発明の製剤は、例えば上記に定義されているような濃度の、例えば0.01%〜0.02%(v/v)の濃度の、上記に定義されているような非イオン性洗浄剤、例えばTween−80を含み得る。洗浄剤の添加はさらに、製剤の物理的安定性を向上させることができる。例えば、5mg/mLという非限定的な例示的な濃度において、洗浄剤の添加は、例えば分光蛍光光度計での500nmの散乱シグナルのモニタリング又はUV分光光度法(340nm)によって決定されるような(可逆的及び不可逆的な)凝集体の形成を防ぐことができる(
図4A及びB)。
【0153】
本発明の製剤の物理的安定性を、SE−HPLCによっても実証することができる。本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインの種々の非限定的な製剤は、オリゴマー(HMW)又は分解産物(LMW)を形成することなく、機械的ストレス、例えば撹拌ストレスに耐えることができる。本発明の製剤は、SE−HPLC分析によって1.5時間撹拌した後に決定されるように、分解又はオリゴマー化を伴うことなく安定であり続ける。
【0154】
どの製剤においても、オリゴマー化又は分解(例えばRP−HPLC(分解のみ)又はSE−HPLCプロファイルによって決定されるような)は全く検出されない。従って、本発明の好ましい実施態様によると、該製剤はクエン酸緩衝液を含み、例えば上記されているような条件下で、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又はさらには約100%の回収率を示し、回収率は、例えば、ストレスをかけていない試料と比較して、RP−HPLC又はSE−HPLCによって決定される。有利には、クエン酸緩衝液の脈絡における賦形剤はスクロースであり得、上記に定義されているような回収率は少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、又はさらには約100%である。
【0155】
5.8.3 液体製剤の安定性試験
5.8.3.1 保存安定性
本発明の液体製剤は、例えば−70℃、−20℃、+5℃、+25℃、又は+40℃の温度で、例えば1〜36か月間、例えば1、1.5、3、6、9、12、18、24、30、又は36か月間保存した場合に良好な安定性を与える。最も有益な結果は、表5に例示されているようなクエン酸緩衝液を基剤とした製剤を用いて得ることができる。
【0156】
当業者は、+25℃での、より特定すると+40℃での保存は、ストレスのかかった保存条件を示すことをさらに認識しているだろう。このような条件は、不安定性のあらゆる兆候、例えば化学的又は物理的不安定性を増加及び加速すると予想される。従って、例えば+25℃又は+40℃における比較的短期間の保存は、穏やかな条件下(例えば+5℃又は凍結)での長期間の保存安定性についての良い指標を与える。
【0157】
5.8.3.2 タンパク質回収率の観点からの保存安定性
例えば、本発明の製剤は、−70℃〜+40℃の温度で保存した後に少なくとも95%、例えば少なくとも96、97、98、99、又はさらには約100%のタンパク質回収率を与える。タンパク質回収率は、−70℃に保たれた基準試料と比較して、表5に例示されているように、タンパク質を定量する任意の公知の手段によって、例えばRP−HPLC又はSE−HPLCによって決定することができる。これらの結果は、例えば、指定された温度で1か月間、1.5か月間、3か月間、6か月間、9カ月間、12か月間、18か月間、24か月間、30か月間、又はさらには36カ月間の保存後に、観察することができる。
【0158】
5.8.3.3 化学的誘導体/分解産物の観点からの保存安定性
さらに、本発明の製剤は、例えばRP−HPLCによって決定されるようなピークサイズの化学的誘導体、例えばピログルタメート変異体の産生を5.0%未満という最小限とする(表5参照)。このタイプの分析においては、所与のピークの面積を、クロマトグラムの総面積と比較し、相対的面積を各ピークに割り当てる。当業者は、クロマトグラムを分析するための適切な分析手段、例えば適切なソフトウェアを知っている(具体的で非限定的な例としては、ChemStationソフトウェアの具備されたAgilent 1200 HPLCシステム(Agilent Technologies, Palo Alto, USA, Rev B)又はChromeleon ソフトウェアの具備されたDionex Ultimate 3000 HPLCシステム(Dionex Corporation, Sunnyvale, CA, USA, V6.8)が挙げられる)。従って、好ましくは、ピログルタメート変異体は、−70℃〜+40℃、例えば+40℃の温度で保存した時に、例えば上記に定義されているような期間、例えば1か月間保存した後に、RP−HPLCによって決定されるような、5%未満、好ましくは4.6%未満、例えば4.5%未満、4.3%未満、4.2%未満、4.0%未満、又はさらには3.8%未満のピーク面積を与える。
【0159】
本発明の製剤はまた、−70℃〜+40℃の温度での上記に定義されているような保存期間にわたる、例えば1か月間にわたる、酸化、例えば酸化産物(例えばRP−HPLCによって決定される)の形成を最小限とする(表5参照)。従って、本発明の製剤により、−70℃〜+40℃の温度、例えば+40℃での保存時に、例えば、上記に定義されているような期間、例えば1か月間におよぶ保存後に、3%未満、好ましくは2.7%未満、好ましくは2.5%未満、例えば2.3%未満、2.2%未満、例えば2.0%未満、又はさらには例えば1.7%又は1.5%未満のピーク面積を有する酸化変異体(例えばRP−HPLCによって決定される)が得られる。
【0160】
5.8.3.4 オリゴマー化の観点からの保存安定性
本発明の製剤はまた、−70℃〜+40℃の保存温度で上記に定義されているような保存期間、例えば1か月間の後に、明瞭な可溶性のオリゴマー物質は全く形成されないか(例えばSE−HPLCによって定義される);又は、−70℃〜+40℃の保存温度で、例えば+40℃で上記に定義されているような保存期間、例えば1か月間の後に、1%未満、好ましくは0.5%未満、例えば0.3%の可溶性オリゴマー物質が形成される(例えばSE−HPLCによって定義される)ような、保存安定性を与える。
【0161】
本発明はまた、−70℃又は+40℃で、上記に定義されているような保存期間、例えば1か月間の保存後に、依然として0.15以下、好ましくは0.1以下である、吸光度値[(100×A340)/(A280−A340)]によって決定されるような凝集係数を与える効果を有する。
【0162】
5.8.3.5 主産物の回収率に反映されるような保存安定性
本発明の製剤は、例えばRP−HPLC(表5参照)によって決定されるような主産物のピーク面積が、−70℃〜+40℃で上記に示された保存期間後、例えば1か月後に、約90%であるか;又は、例えばRP−HPLC(表5参照)によって決定されるような主産物のピークが、少なくとも85%以上、例えば86%、87%、又は88%であるような効果を有する。より好ましくは、メインピークは、−70℃〜+40℃、例えば+40℃での上記に示された保存期間後、例えば1か月後に、90%、92%又は95%、例えば少なくとも97%、より好ましくは100%であるか;或いは、例えばSE−HPLCによって決定されるような主産物のピークが、−70℃〜+40℃、例えば+40℃での上記に示された保存期間後、例えば1か月後に、少なくとも85%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、例えば少なくとも98%又はさらには約100%である。
【0163】
本発明による製剤はまた、−70℃〜+25℃で1〜3か月間、例えば20mg/mL以下の濃度で保存した後に、RP−HPLCによって決定されるようなメインピーク面積が、保存前の製剤と比較して未変化のままであり、かつ、全ピークの少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%を示すという効果を有し、基準試料は、例えば95%のメインピークを有する。+40℃で1か月間保存すると、本発明の製剤は、少なくとも80%、85%、又は90%;2か月間の保存後には少なくとも80%又は85%、3か月間の保存後には少なくとも75%又は80%のRP−HPLCによって決定されるメインピークを保持する。
【0164】
さらに、cIEFによって決定されるように、本発明の製剤は、−70℃〜+40℃の温度で1〜3か月間、例えば20mg/mL以下の濃度で保存した後、基準試料(保存されていない製剤、メインピークは少なくとも98%である)と同等な主産物の回収率をもたらす効果を有し、例えばメインピークは少なくとも85%以上、例えば86%、87%、又は88%である。より好ましくは、メインピークは、−70℃〜+40℃での保存後に、90%、92%、又は95%、例えば少なくとも97%、より好ましくは100%である。
【0165】
5.8.3.6 凍結解凍条件下の安定性
経時的に一定に保たれているか(例えば+5℃で保存)又は1回のFTサイクル(例えば−20℃又は−70℃で保存)を含む保存条件下において製剤の安定性を与えることとは別に、本発明のさらなる効果は、反復FTサイクル条件下での安定性である。凍結状態から液体状態への転移及びその逆は、免疫グロブリン単一可変ドメインに対して特にストレスの多い条件を課す。
【0166】
本発明の製剤はまた、FT条件下で良好な安定性を与える効果も有する。例えば、本発明の製剤は、−70℃と室温(例えば+25℃)との間の、又は−20℃と室温との間の例えば10回のFTサイクルにかけることができる。該製剤に含まれる免疫グロブリン単一可変ドメインは、例えばRP−HPLC又はSE−HPLCによって確認されるように、有意な劣化を伴うことなく、これらの条件に耐えるだろう。本発明の製剤の種々の非限定的な実施態様に対する反復FTサイクルの作用を評価し、全ての場合において、vWF結合剤、例えば免疫グロブリン単一可変ドメインの化学的及び物理的完全性が保存されたことが判明した。全回収率は95〜100%の範囲内、好ましくは少なくとも95、98又は99%であった。種々のピークの相対的な比率は、1回だけのFTサイクルにかけられた対照と比較して未変化のままであった。
【0167】
より具体的には、5mg/mL〜20mg/mLの濃度において、10回のFTサイクルにより回収率を得た(RP−HPLC又はSE−HPLCのいずれかによって決定されるような、例えばポリペプチドのピーク総面積、すなわちAUに基づいて決定され、これは少なくとも90%、95%、98%、又は100%である;特定の実施態様において、RP−HPLC又はSE−HPLCプロファイルは、基準試料と比較して未変化であった(1回のFTサイクル))。
【0168】
5.8.3.7 効力の観点からの安定性
当業者は、vWF結合剤、特に免疫グロブリン単一可変ドメイン、より具体的には配列番号1〜19のいずれか1つ、例えば配列番号1に記載のポリペプチドの効力を決定するための様々な方法を知っている(例えば、国際公開公報第2006/122825号の実験章、例えば実施例3〜6、18、及び19、又は国際公開公報第2009/115614号の実験章を参照)。
【0169】
1つの実施態様において、本発明のポリペプチドの効力を、慣用的なアッセイ、例えばELISA、ビアコア、RIA、FACSなどによって、その抗原に対する結合によって決定することができる。
【0170】
vWF結合剤の効力は、ストレスのかかった条件下で、すなわち+40℃で4週間の保存下で試験されたように、本発明の製剤において依然として許容された。
【0171】
5.8.3.8 適合性の観点からの安定性
本発明の製剤はまた、一連の様々な希釈剤と適合性である。例えば、該製剤は、免疫グロブリン単一可変ドメインの化学的及び物理的安定性に影響を及ぼすことなく、このような希釈剤と混合/希釈することができる。
【0172】
従って、本発明の製剤はまた、本明細書において定義されるような幅広い濃度におよび安定性を与える。
【0173】
5.8.3.9 安定化効果の要約
本発明の製剤は、−70℃〜+25℃の温度で長期間の保存後でさえ、例えば上記に定義されているような期間の後でさえ、本発明のポリペプチドの化学的及び物理的完全性を維持する効果を有する。
【0174】
−70℃で1か月間の本明細書に定義されているような免疫グロブリン単一可変ドメイン、特にALX−0081の保存は、どの本発明の製剤についても、特に実験章において試験された非限定的な緩衝液の例についても、その物理化学的特徴に影響を及ぼさなかった。保存は、RP−HPLC、SE−HPLC又はcIEFプロファイルに対して有意な作用を及ぼさなかった。
【0175】
5.8.4 凍結乾燥製剤の安定性試験
さらに、本発明は、特に凍結乾燥にとって有用である、vWF結合剤、例えば本明細書において定義されているような免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えば配列番号1〜19、好ましくは配列番号1の安定な製剤を提供する。本発明の製剤には、凍結乾燥後に改善された溶解度及び改善された保存安定性がもたらされた。
【0176】
5.8.4.1 保存安定性
本発明の製剤は、凍結乾燥後に、例えば−70℃、−20℃、+5℃、+25℃、又は+40℃の温度で、例えば1〜36か月間、例えば1、1.5、3、6、9、12、18、24、30又は36か月間保存した場合に、良好な安定性を与えることができる。最も有益な結果は、クエン酸緩衝液を基剤とした製剤、例えば実験章に例示されているような製剤3及び7を用いて得ることができる(例えば、良好なケーキ形成、及び眼に見える崩壊の兆候なし、
図6)。当業者は、以下の考察において、好ましい数値は、例えば表8に例示されているようなクエン酸緩衝液の組成物を反映することを認識することができる。
【0177】
当業者はまた、+25℃での、より特定すると+40℃での保存は、ストレスのかかった保存条件を示すことを認識しているだろう。このような条件は、不安定性、例えば化学的又は物理的不安定性のあらゆる兆候を増加及び加速すると予想される。従って、例えば+25℃又は+40℃における比較的短期間の保存は、より穏やかな条件下(例えば+5℃又は凍結)でのより長期間の保存安定性に関する良好な指標を与える。
【0178】
5.8.4.2 タンパク質回収率の観点からの保存安定性
例えば、本発明の製剤は、凍結乾燥後に、−70℃〜+40℃の温度で保存した後に、少なくとも95%、例えば少なくとも96、97、98、99、又はさらには約100%のタンパク質回収率を与える。タンパク質回収率は、タンパク質を定量する任意の公知の手段によって、例えば含量、RP−HPLR、又はSE−HPLCによって決定することができる。これらの結果は、例えば、示された温度で1〜36か月間、例えば1、1.5、3、6、9、12、18、24、30、又は36か月間保存した後に観察することができる。
【0179】
5.8.4.3 化学的誘導体/分解産物の観点からの保存安定性
さらに、本発明の製剤は、例えばSE−HPLCによって確認されているように、凍結乾燥後に化学的誘導体の産生を防止及び最小限とし得る。
【0180】
5.8.4.4 オリゴマー化の観点からの保存安定性
本発明の製剤はまた、凍結乾燥後に保存安定性を与えることができ、よって、−70℃〜+40℃の保存温度で、上記に定義されているような保存期間、例えば1か月間の後に明瞭な可溶性のオリゴマー物質は全く形成されないか(例えばSE−HPLCによって定義される);或いは、−70℃〜+40℃、例えば+40℃の保存温度で、上記に定義されているような保存期間、例えば1〜36か月間、例えば1、1.5、3、6、9、12、18、24、30、又は36か月間の保存後に1%未満、好ましくは0.5%未満、例えば0.3%の可溶性オリゴマー物質が形成される(例えばSE−HPLCによって定義される)。
【0181】
5.8.4.5 主産物の回収率において反映されるような保存安定性
本発明の製剤はまた、凍結乾燥後に、例えばSE−HPLC(表18及び表27〜29参照)によって決定されるような、主産物のピークは、−70℃〜+40℃で上記に示されているような保存期間後、例えば1、3、6、9、12、18、又は24か月間の保存後に約100%であるか;或いは、例えばSE−HPLC(表18及び表27〜29参照)によって決定されるような、主産物のピークは、少なくとも85%以上、例えば86%、87%、又は88%であるという効果を有し得る。より好ましくは、メインピークは、−70℃〜+40℃、例えば+25℃での上記に示されているような保存期間後、例えば1、3、6、9、12、18、又は24か月間の後に、90%、92%、又は95%、例えば少なくとも97%、より好ましくは100%であるか;或いは、例えばSE−HPLCによって決定されるような、主産物のピークは、−70℃〜+40℃で、例えば+40℃で、上記に示されているような保存期間後、例えば1、3、6、9、12、18、又は24か月間の保存後に、少なくとも85%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、例えば少なくとも98%、又はさらには約100%である。
【0182】
本発明による製剤はまた、凍結乾燥後、例えば−70℃〜+40℃で12.5mg/mLの濃度で1〜12か月間保存した後の、RP−HPLCによって決定されるようなメインピークは、保存前の製剤と比較して未変化のままであり、かつ、全ピークの少なくとも90%、より好ましくは少なくとも93%を示すという作用を有し、基準試料は、例えば93%のメインピークを有する(表15参照)。凍結乾燥後に+40℃で12か月間まで保存した場合に、本発明の製剤は、RP−HPLCによって決定されるように少なくとも91%、92%又は93%のメインピークを保持する。
【0183】
さらに、cIEF(表27〜29参照)によって決定されるように、本発明の製剤は、凍結乾燥後、−70℃〜+40℃の温度で例えば12.7mg/mLの濃度で1〜24か月間保存した後に、基準試料(保存されていない製剤、メインピークは少なくとも96%である)に匹敵する、主産物の回収率を与えるという効果を有し、例えばメインピークは少なくとも85%以上、例えば86%、87%、又は88%である。より好ましくは、メインピークは、−70℃〜+40℃での保存後に、90%、92%、93%、94%、95%、又は96%、例えば少なくとも97%、より好ましくは100%である。
【0184】
5.8.4.6 凍結解凍条件下での安定性
本発明の製剤はまた、FT条件下での凍結乾燥後に良好な安定性を与えるという効果も有する。例えば、本発明の製剤を、例えば、−20℃と室温(例えば+25℃)との間の5回のFTサイクルにかけることができる。該製剤に含まれる免疫グロブリン単一可変ドメインは、例えばRP−HPLC又はSE−HPLCによって確認されているように、有意な劣化を伴うことなく、これらの条件に耐えるだろう。全ての場合において、vWF結合剤、例えば免疫グロブリン単一可変ドメインの化学的及び物理的完全性が保存されている。全回収率は、−70℃で保存された液体対照試料と比較して、95〜100%の範囲内、好ましくは95、98又は99%であった。
【0185】
より具体的には、16mg/mLの濃度で、5回のFTサイクルにより、RP−HPLC又はSE−HPLCのいずれかによって決定されているように、少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%であるポリペプチドの回収率(例えば総面積、すなわちAUに基づいて決定される)が得られ;特定の実施態様において、RP−HPLC又はSE−HPLCプロファイルは、基準試料(−70℃で保存された液体対照試料)と比較して未変化であった(表12参照)。
【0186】
5.8.4.7 効力の観点からの安定性
当業者は、vWF結合剤、特に免疫グロブリン単一可変ドメイン、より具体的には配列番号1〜19のいずれか1つ、例えば配列番号1のポリペプチドの効力を決定するための様々な方法を知っている(例えば、国際公開公報第2006/122825号、例えば実施例3〜6、18及び19、又は国際公開公報第2009/115614号の実験章を参照)。凍結乾燥後のvWF結合剤の効力は、製剤における反復FTサイクル後にも影響を受けなかった。特に、本発明の製剤におけるvWF結合剤の効力は、ストレスのかかった条件下で、すなわち+40℃で12か月間以下の保存(表23)、及びさらには+40℃で24か月間以下の保存の下で(表29)試験したところ安定であり続けた。1つの実施態様において、凍結乾燥後の本発明のポリペプチドの効力を、慣用的なアッセイ、例えばELISA、ビアコア、RIA、FACSなどによってその抗原に対するその結合によって決定することができる。より具体的には、本発明の製剤において、vWF結合剤の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、又はさらには少なくとも99%が、上記のストレス条件下での保存後に、保存前の結合活性と比較してその結合活性を保持する。
【0187】
さらなる態様において、本発明の製剤は、ALX−0081の液体製剤を凍結乾燥製剤と比較した場合に、ビアコアアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、リストセチン誘導コファクター活性アッセイ(RICO)及び/又はGyrolabに基づいたアッセイなどであるがそれらに限定されるわけではない様々な免疫学的アッセイによって評価したところ、殆ど生物学的活性の減少を示さない(第7.13章及び表24参照)。
【0188】
5.8.4.8 安定化効果の要約
本発明の製剤は、凍結乾燥後に、本発明のポリペプチド、特にALX−0081の化学的及び物理的完全性を維持する作用を有し、すなわち、−70℃〜+40℃の温度で、長期間の保存後でさえ、例えば上記に定義されているような期間の間、製品の純度/不純度プロファイルは実質的に変化していない。例えば、凍結乾燥後の長期間の保存は、実験章によって支持されるように、RP−HPLC、SE−HPLC又はcIEFプロファイルに対して有意な作用を及ぼさなかった。
【0189】
5.9 本発明の方法
本発明のvWF結合剤は、任意の一般的に使用される方法によって作製され得る。典型例としては、適切な宿主系、例えば細菌又は酵母における組換え発現が挙げられる。vWF結合剤は、本発明に従って製剤化される前に適切な精製計画を受けるだろう。
【0190】
本発明は、本明細書に定義されているような製剤を作製する方法を包含する。本発明のvWF結合剤を本発明による緩衝液を使用してカラムから溶出させる場合、精製工程及び製剤化工程は同時に起こり得る。あるいは、本発明の製剤は、任意の適切な手段、例えば、透析、限外ろ過などの当技術分野において広く使用される手段によって、緩衝液を交換することによって調製してもよい。
【0191】
実施態様によっては、本発明の製剤を作製する方法はまた、例えば水又は適切な緩衝液(これは場合によりさらなる賦形剤を含んでいてもよい)の添加による、凍結乾燥製剤又は噴霧乾燥製剤の再構成に関し得る。
【0192】
本発明による製剤の調製法は、臨床用途に適したバイアル、例えば密封容器にそれを充填する、及び/又はそれを投与単位剤形に調合するなどの、さらなる工程を包含していてもよい。該方法はまた、噴霧乾燥、凍結乾燥、又は凍結、例えばバルク凍結などのさらなる工程を含んでいてもよい。本発明はまた、容器、投与単位剤形、又は本明細書に列挙された任意の方法によって得ることのできる他の製品も包含する。
【0193】
本発明の製剤は、vWF結合剤、例えば本明細書に定義されているようなISVDを保存するために使用することができる。従って、本発明は、本明細書に定義されているような製剤の使用によって特徴付けられる、本明細書において使用されるvWF結合剤の保存法を包含する。より具体的には、本発明は、例えば本明細書に記載の製剤の調製を含む、保存のために本明細書に定義されているようなvWF結合剤を安定化させるための方法を包含する。保存は、場合により−70℃〜+40℃、例えば−70℃、−20℃、+5℃、+25℃、又は+40℃の温度で、好ましくは−70℃〜+25℃の温度で、より好ましくは−20℃〜+5℃の温度で、1〜36か月間、例えば1、1.5、3、6、9、12、18、24、30、又は36か月間、例えば少なくとも12か月間又はさらには24か月間であり得る。従って、保存は、凍結、凍結-乾燥(freeze-drying)(凍結乾燥(lyophilization))及び/又は噴霧-乾燥を包含し得る。保存法はさらに、本明細書に定義されているようなvWF結合剤の物理的及び化学的完全性の評価を含み得る。
【0194】
本発明はまた、本明細書に定義されているようなvWF結合剤の少なくとも1つを含む、製剤を分析するための方法に関する。該製剤を、本明細書に定義されているようなvWF結合剤の化学的又は物理的不安定性のあらゆる兆候について分析することができる。例えば、該製剤を、分解産物、例えば低分子量誘導体、例えばタンパク質分解フラグメント;及び/又は化学的誘導体、例えばピログルタメート変異体;及び/又は高分子量誘導体、例えば凝集体、集塊物などの存在について評価することができる。該製剤をまた、タンパク質総含量及び/又は効力について評価することもできる。本明細書に言及される様々なアッセイ方法の各々を、本発明の分析法に使用することができる。
【0195】
従って、本発明はまた、例えば製造、保存及び使用の中の1つ以上の最中に、製剤の品質及び/又は安定性をモニタリング及び/又は評価する方法に関する。本発明はまた、例えば、該製剤が本明細書にさらに記載されているような製品の規格を満たすことを評価するための、製剤の品質制御法に関する。これらの中のいずれかの態様における本発明は、1つ以上の基準試料との比較、バッチ間のばらつきの分析、及び進行中の生産プロセスのモニタリングから選択された1つ以上を含む。
【0196】
本発明は、例えば本発明の製剤を含むことによって、又はその生産若しくは調合(これに限定されない)に必要とされることによって、本発明の製剤に関連している全ての製品に関する。
【0197】
例えば、本発明は、本発明による1つ以上の製剤を含む、製品、例えば密封容器に関する。本発明はまた、本明細書に記載の任意の実施態様による1つ以上の製剤を含む、薬学的単位投与剤形、例えば、患者、好ましくはヒト患者への非経口投与に適した投与剤形に関する。投与単位剤形は、例えば、プレフィルドシリンジ、アンプル、カートリッジ、又はバイアルの形式であり得る。シリンジ、アンプル、カートリッジ又はバイアルは、ガラス又はプラスチックなどの任意の適切な材料から製造され得、これはゴム材料、例えばバイアル用のゴム栓、並びにシリンジ及びカートリッジ用のゴムプランジャー及びゴムパッキンを含み得る。本発明はまた、本発明による1つ以上の製剤を含むキットにも関する。該キットはさらに、使用説明書及び/又は臨床添付文書を含み得る。本明細書に定義されているような製品の任意の実施態様において、本発明はまた、梱包材、使用説明書、及び/又は、例えば規制の観点から必要とされる臨床添付文書の存在を包含する。
【0198】
5.10 定義
5.10.1 同一性
2つ以上のアミノ酸配列を比較する目的のために、第1アミノ酸配列と第2アミノ酸配列との間の「配列同一」率(本明細書において「アミノ酸同一率」とも呼ばれる)は、[第2アミノ酸配列の対応する位置におけるアミノ酸残基と同一である第1アミノ酸配列中のアミノ酸残基の数]を、[第1アミノ酸配列中のアミノ酸残基の総数]で割り、[100%]をかけることによって計算することができ、第1アミノ酸配列と比較して第2アミノ酸配列におけるアミノ酸残基の各々の欠失、挿入、置換、又は付加は、1つのアミノ酸残基(位置)における相違、すなわち本明細書において定義されているような「アミノ酸の相違」と考えられる。
【0199】
あるいは、2つ以上のアミノ酸配列間の配列同一度を、標準的な設定を使用してNCBI Blast v2.0などの公知の配列アラインメント用コンピューターアルゴリズムを使用して計算することができる。
【0200】
配列同一度を決定するためのいくつかの他の技術、コンピューターアルゴリズム及び設定は、例えば、国際公開公報第04/037999号、欧州特許第0967284号、欧州特許第1085089号、国際公開公報第00/55318号、国際公開公報第00/78972号、国際公開公報第98/49185号及び英国特許第2357768−A号に記載されている。
【0201】
通常、本明細書で上記に概略が示されている計算法に従って2つのアミノ酸配列間の「配列同一」率を決定する目的のために、最大数のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列を「第1」アミノ酸配列と捉え、他のアミノ酸配列を「第2」アミノ酸配列と捉える。
【0202】
また、2つのアミノ酸配列間の配列同一度を決定する際に、当業者は、いわゆる「保存的」アミノ酸置換を考慮に入れる場合があり、これは一般的に、アミノ酸残基が、類似した化学的構造を有する別のアミノ酸残基と置換され、かつ該ポリペプチドの機能、活性、又は他の生物学的特性に対して殆ど又は全く影響を及ぼさない、アミノ酸置換として記載され得る。このような保存的アミノ酸置換は、例えば国際公開公報第04/037999号、英国特許第2357768−A号、国際公開公報第98/49185号、国際公開公報第00/46383号及び国際公開公報第01/09300号から当技術分野において周知であり;このような置換の(好ましい)タイプ及び/又は組合せは、国際公開公報第04/037999号並びに国際公開公報第98/49185号からの関連の教義、及びそこに引用されたさらに他の参考文献に基づいて選択され得る。このような保存的置換は、好ましくは、以下の群(a)〜(e)内の1つのアミノ酸が、同じ群内の別のアミノ酸残基によって置換されている、置換である:(a)小さな脂肪族性か、非極性か、又は僅かに極性の残基:Ala、Ser、Thr、Pro及びGly;(b)極性で負に荷電した残基及びその(非荷電)アミド:Asp、Asn、Glu及びGln;(c)極性で正に荷電した残基:His、Arg、及びLys;(d)大きな脂肪族性で非極性の残基:Met、Leu、Ile、Val及びCys;並びに(e)芳香族残基:Phe、Tyr及びTrp。特に好ましい保存的置換は以下の通りである:AlaからGlyへ、又はSerへ;ArgからLysへ;AsnからGlnへ、又はHisへ;AspからGluへ;CysからSerへ;GlnからAsnへ;GluからAspへ;GlyからAlaへ、又はProへ;HisからAsnへ、又はGlnへ;IleからLeuへ、又はValへ;LeuからIleへ、又はValへ;LysからArgへ、Glnへ、又はGluへ;MetからLeuへ、Tyrへ、又はIleへ;PheからMetへ、Leuへ、又はTyrへ;SerからThrへ;ThrからSerへ;TrpからTyrへ;TyrからTrpへ;及び/或いはPheからValへ、Ileへ、又はLeuへ。本明細書に記載のポリペプチドに適用される全てのアミノ酸置換はまた、Schulz et al., Principles of Protein Structure, Springer-Verlag, 1978によって開発された様々な種の相同タンパク質間のアミノ酸変異の頻度の分析に基づいて、Chou and Fasman, Biochemistry 13: 211, 1974及びAdv. Enzymol., 47: 45-149, 1978によって開発された構造形成能の分析に基づいて、並びに、Eisenberg et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 140-144, 1984; Kyte & Doolittle; J Molec. Biol. 157: 105-132, 1981及びGoldman et al., Ann. Rev. Biophys. Chem. 15: 321-353, 1986によって開発されたタンパク質の疎水性パターンの分析に基づき得、これらの全ての文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。ナノボディ(登録商標)の一次構造、二次構造及び三次構造に関する情報が本明細書及び上記に列挙された一般的な背景技術に示されている。また、この目的のために、ラマ由来のV
HHドメインの結晶構造が、例えば、Desmyter et al., Nature Structural Biology, Vol. 3, 9, 803 (1996); Spinelli et al., Nature Structural Biology (1996); 3, 752-757;及びDecanniere et al., Structure, Vol. 7, 4, 361 (1999)によって示されている。慣用的なV
HドメインにおいてV
H/V
L界面を形成しているいくつかのアミノ酸残基及びこれらの位置において起こり得るラクダ化置換に関するさらなる情報を、上記に列挙された先行技術に見出すことができる。
【0203】
6.略称
API 活性医薬成分
cIEF キャピラリー等電点電気泳動法
DLS 動的光散乱法
DOE 実験計画
DP 医薬品
DS 薬物
FT 凍結解凍
HMW 高分子量
LMW 低分子量
MALS 多角度光散乱法
RH 相対湿度
RPC 逆相クロマトグラフィー
RP−HPLC 逆相高速液体クロマトグラフィー
SE−HPLC サイズ排除高速液体クロマトグラフィー
SOP 標準作業手順書
Tm 融解温度(℃)
TSA サーマルシフトアッセイ
vWF フォンヴィルブランド因子
WFI 注射用水
【0204】
本発明は今回、以下の非限定的な好ましい態様、実施例及び図面を用いてさらに説明されるだろう。
【0205】
本出願全体を通して引用される全ての参考文献の全内容(参考文献、発行された特許、公開された特許出願、及び同時係属出願を含む)、特に本明細書で上記に参照されている教義が、本明細書に参照により明確に組み込まれる。
【0206】
7.実施例
多種多様で異なるかつ外見的には矛盾した目的を充足することを目的とした、改善された製剤用緩衝液を得るために一組の実験が設計された。特に、ALX−0081の安定性、生物学的活性、純度及び品質を維持することができ、凍結、凍結乾燥、熱、及び/又は再構成などの様々なストレスに対して長期間におよび安定である、例示的な製剤が本明細書において提供される。
【0207】
現代のALX−0081 DSは、200mMグリシン及び0.02%Tween−80(v/v)、pH7.1を含有するリン酸を基剤とした(D−PBS)緩衝液中に5mg/mLの活性医薬成分(API)を含有する液体製剤(DS)として提示されている。この製剤は、初期の臨床試験中に適用されたが、それはいくつかの点で改善され得る。第一に、相対的に低い濃度はおそらく複数回の皮下注射を必要とするので(皮下注射1回あたりの容量は約1mLに制限されると仮定)、患者の利便性は低下するだろう。第二に、3〜8℃又は室温でのALX−0081の現行製剤の保存安定性は低い。本製剤の短い有効期限は主に、化学的修飾によって決まる(第7.2章参照)。化学的修飾は、効力の低下に連関し得る。実用的な有効期限は、−20℃で製品を保存することによって成し遂げられ得るが、これはしかし、最も実用的な目的のための好ましい選択肢とは考えられない。
【0208】
7.1 方法
試料を、実質的には、含量、効力及び純度、沈降、濃度、分解、凝集及び効力を評価するための標準作業手順書に従って分析した。さらに、全ての試料を濁度又はタンパク質凝集物若しくは沈降物の存在について目視した。特定の凍結乾燥試料の残留水分含量を、カールフィッシャー滴定を用いて決定した。
【0209】
以下の3つの凍結乾燥プログラムを本研究に使用してALX−0081を凍結乾燥させた:表14に記載されているような残留水分含量を減少させるように最適化された、標準的な65時間の実行(
図1)、より短縮された37時間の実行、及びより長い66時間の凍結乾燥サイクル。
【0210】
簡潔に言えば、短縮された37時間の凍結乾燥プロセスの開始時に、棚温度は+20℃であり、2時間で−50℃とした。次に、0.04mbarの真空を1時間で作った。0.04mbarの真空に達した後、棚温度を4時間の間−50℃に保った。これらの4時間後、温度を次第に15時間で0℃まで上昇させた(すなわち、1回目の乾燥工程、凍結水の除去)。0℃の棚温度を、0.04mbarの真空を保ちつつ7時間保持した。7時間後、温度を+25℃まで3時間で上昇させ、続いて、25℃で5時間保った(すなわち、2回目の乾燥工程、凍結していない水の除去)。バイアルを±0.400mbarの真空下で封をし、その後、常圧を回復させた。
【0211】
同じ方法を、標準的な65時間の実行に適用し、これは、真空下+25℃で28時間に延長された二回目の乾燥工程においてのみ異なり、結果として約65時間の全サイクル時間となる。標準的な65時間の凍結乾燥の実行における様々な工程の概観図が
図1に示されている。凍結乾燥プロセス中に、戦略的に重要な位置における3つのバイアル中の製品の温度をモニタリングした。最後に、標準的な65時間の実行を、温度プローブの解読値に従って実行中に改変させ、その結果、表14に記載のような延長された凍結乾燥サイクルがもたらされた。
【0212】
7.2 現代のALX−0081製剤の化学的安定性
RP−HPLCは、薬物(DS)の化学的安定性を評価する最も有益な方法の1つである。
【0213】
RP−HPLCはALX−0081 DSを多くの異なる種に分離した。メインピークに加えて、プレピーク(インタクトで改変されていない材料の前に溶出する物質)及び多くのポストピークを識別することもできた。これまでに作成されたバッチにおいて、プレピーク及びポストピーク1は、一貫して、それぞれDSの約2%及び3.6%を示し、一方、他のポストピークはDSの1%未満を占めた。
【0214】
しかし、促進された(+5℃)又はストレスのかかった(+25℃及び+37℃/+40℃)条件下での保存中に、特定の製品に関連した変異体の相対量は、
図2Aに示されているように、時間及び温度と共に増加した。さらに、RP−HPLCのメインピークは、特に高温(+25℃以上)における長期間のインキュベート時にいくつかの異なる種に分かれるようである(
図2B)。データは、いくつかのより早期に溶出する新規分子種が保存中に生成されることを示す。
【0215】
製造時にALX−0081 DSに存在していたか又は保存中に発生した最も重要な修飾は以下である:(i)プレピーク1(酸化);(ii)ポストピーク1(nor−leu変異体);(iii)ポストピーク2(ピログルタメートの形成)、及び(iv)メインピークの分裂(異性化)。修飾(i)、(ii)及び(iii)は、効力に有意に影響を及ぼさなかった(データは示されていない)。対照的に、CDR3領域に位置する配列番号1の105位及び236位におけるアスパラギン酸残基の異性化が、ALX−0081の効力の起こり得る低下の根底にある主な分子機序であることが示された(上記の(iv)参照)。
【0216】
製造時に存在するか又は保存中に発生した、ALX−0081製品に関連した変異体のいくつかを、cIEFによって検出することもできた。これはポストピークとして出現したピログルタメート修飾についても該当した(上記の(iii)参照)。また、RP−HPLC分析に観察されたものと同じように、両方の12A02H1ドメインの105位における異性化事象により、メインピークの広幅化及び最終的にはcIEFメインピークの分裂が生じた(上記の(iv)参照)。
【0217】
7.3 緩衝液及び賦形剤のスクリーニング
vWF結合剤の製剤をさらに発展させるために、(i)様々な緩衝液、(ii)様々な濃度で、(iii)様々なpHの各緩衝液;及び(iv)各々を様々な賦形剤と組み合わせて、などの、全てが互いに影響を及ぼす様々なパラメーターを精巧に作り上げて、複雑な一組の実験が設計された。
【0218】
緩衝液系は、注射時に生体の緩衝液系を有意に攪乱しないように、できるだけ低い緩衝能を有するべきである。さらに、活性医薬成分(API)の活性に対する緩衝液の種類及び濃度は、非常に注意深く評価されなければならない。
【0219】
一般的には、上昇したタンパク質安定性レベルは、高い融解温度に原因がある。従って、ALX−0081の熱的特性を、様々な組成物の存在下でモニタリングした。特に、TSA実験を、192個の異なる等張製剤において実施し、その結果を実験計画(DOE)に投入して、ALX−0081の熱的安定性に対する、緩衝液、濃度、イオン強度、pH、及び賦形剤の効果を評価した。解読値はALX−0081の融解温度(Tm)であり、これは様々な試験組成物におけるタンパク質の熱的安定性の指標である。
【0220】
簡潔に言えば、使用されたサーマルシフトアッセイ(TSA)は、タンパク質が熱的アンフォールディングを受けている間の、Sypro Orangeなどの蛍光色素のシグナル変化を追跡する。Sypro Orangeを適切にフォールディングされたタンパク質溶液に加えると、それはタンパク質上のどの表面にも結合することができず、その蛍光シグナルは消光する。温度が上昇すると、タンパク質は熱的アンフォールディングを受け、その疎水性コア領域を露出する。その後、Sypro Orangeは疎水性領域に結合して消光せず、その結果、蛍光シグナルは増加する。アッセイを、試験しようとする様々な製剤、0.2mg/mLのALX−0081及び10×Sypro Orangeを含有する溶液に対して実施した。プログラムは、以下の工程からなった:4.4℃/秒の勾配速度で37℃まで加熱し、10秒間保持;0.02℃/秒の連続的な勾配速度で90℃まで加熱(1℃あたり20回集録);及び、2.2℃/秒の勾配速度で37℃まで冷却し、10秒間保持。
【0221】
様々な濃度(10〜200mM)、pH値、及び賦形剤を有する以下のセットの緩衝液を本明細書において調査した:
− クエン酸 pH6.0−6.5−7.0
− ヒスチジン pH5.5−6.0−6.5
− リン酸 pH6.5−7.0−7.5
− トリスHCl pH7.4−7.7−8.0
− NaCl 0〜140mMの濃度範囲
− グリシン 0〜270mMの濃度範囲
− マンニトール 0〜270mMの濃度範囲
− スクロース 0〜270mMの濃度範囲
− トレハロース 0〜270mMの濃度範囲
【0222】
得られた融点(Tm)を、因子スクリーニング実験の分析用のDesign Expertプログラムに取り込み、最も高い熱的安定性をもたらす50個の製剤を予測した(表1参照)。
【0223】
トレハロース、スクロース、マンニトール又はグリシンを含有するリン酸塩(pH7.0〜7.5)及びクエン酸塩(pH6.2〜7.0)について最も高いTm値が予測された。全く意外なことには、研究結果は、トリスHCl(pH7.8〜8.0)及びヒスチジンHCl(pH6.5)を基剤とした緩衝液は有意により低い融点へと戻ることを示唆するが、それらは、国際公開公報第2010/077422号に記載のように免疫グロブリン単一可変ドメインの溶液pHを制御するための最適な緩衝液系として以前に選出されていた。
【0224】
従って、トレハロース、スクロース、グリシン又はマンニトールを含有するリン酸塩及びクエン酸塩製剤は、vWF結合剤、例えばALX−0081の安定化に特に良好に機能したと結論付けられた。
【0225】
7.4 安定性試験
ALX−0081の溶解度をさらに高めることができるかどうかを評価するために、いくつかの製剤において初回スクリーニングを実施した。ALX−0081の緩衝液を交換して対象の製剤とし(Tween−80を除く)、5kDaのカットオフフィルターの具備された撹拌式セル(例えばアミコン型)でさらに濃縮した。眼に見える沈降又は濁度が生じるとすぐに、試料をろ過し、タンパク質濃度を測定した。表2は、得られた結果の要約を示す。
【0226】
リン酸塩及びヒスチジンを基剤とした緩衝液中の濃縮により、比較的低いタンパク質濃度(10mg/mL未満)で試料の濁度及び沈降物の形成が起こった。対照的に、ALX−0081は、約56mg/mLの濃度に達した後でさえも、クエン酸緩衝液中において依然として物理的に安定であった。目視に加えて、粒子状物質又はHMW種の不在が、蛍光顕微鏡によって(ナイルレッドを用いての染色、SE−HPLC及びDLSによって)確認された。さらに、約56mg/mLの溶液を−20℃又は−70℃で10回のFTサイクルにかけるか、或いは+4℃で約1週間保存することは、SE−HPLC分析によって証明されたように、分子の物理的安定性に影響を及ぼさなかったようであった(それぞれ
図3A及び3B参照)。
【0227】
クエン酸緩衝液中のALX−0081の比較的高い溶解度は、PEG沈降アッセイによって裏付けられた(データは示されていない)。
【0228】
7.5 Tween−80
非イオン性界面活性剤のポリソルベート(Tweenとも呼ばれる)(ポリオキシエチレン(N)ソルビタンモノラウレート;N=20、40、60、65、80又は85)がALX−0081製剤に必要とされるかどうかを決定するために、いくつかの撹拌ストレス実験を、pH6.0及び6.5の50mMクエン酸緩衝液中において実施した。ALX−0081の物理的安定性に対する様々な濃度のTween80(Tween−80皆無、対0.01%対0.02%(v/v))の効果を分光蛍光光度計で500nmの散乱シグナルをモニタリングすることによって5mg/mLで評価した。
【0229】
Tween−80は、両方の緩衝液中の散乱シグナルの増加を防ぎ、その保護作用を実証した(
図4A及び4B)。0.01%のTween−80又は0.02%のTween−80(v/v)を含有する試料間には有意差は観察されなかった。さらに、撹拌前後の試料のSE−HPLCプロファイルは、全く差異を示さなかった:95〜100%の回収率が達成され、オリゴマー化又は分解も全く検出できなかった。
【0230】
これらの結果に基づいて、vWF結合剤、例えばALX−0081の製剤に0.01%のTween−80(v/v)を含めることを決断した。
【0231】
7.6 Tween
ポリオキシエチレン鎖長及び脂肪酸エステル部分において異なる、ポリソルベートの集合の中の他のメンバー(例えばTween−20、Tween−40、Tween−60、Tween−65、及びTween−85)が、抗vWF結合剤の製剤に必要とされるかどうかを決定するために、いくつかの撹拌ストレス実験を、実質的に上記の第7.5章に記載されているように、pH6.0及び6.5の50mMクエン酸緩衝液中において実施した。vWF結合剤の物理的安定性に対する、様々な濃度の様々なTweenメンバー(Tween皆無、対0.01%対0.02%(v/v))の効果を、分光蛍光光度計で500nmの散乱シグナルをモニタリングすることによって5mg/mLで評価する。
【0232】
Tween−20、Tween−40、Tween−60、Tween−65及びTween−85は、Tween−80と実質的に同じ有益な結果をもたらす。
【0233】
7.7 液体製剤の安定性試験
20mg/mLの濃度の様々なクエン酸を基剤とした等張製剤におけるALX−0081の安定性を評価するためにより包括的な試験を実施した。表3は、試験された様々な製剤の概観を示す。
【0234】
主な目標は、液体製品の安定性に対する、pH(6.0−6.5−7.0)及び賦形剤の種類(NaCl、マンニトール、スクロース又はグリシン)の効果を評価することであった。制御及び直接比較する目的のために、試験はまた、D−PBS及びグリシン中5mg/mLで製剤化された現代のALX−0081(Tween−80濃度がより低いことを除いて、現行製剤と同一)、並びに、以前に記載されたしかし20mg/mLではなく5mg/mLの濃度で製剤化された様々なクエン酸を基剤とした等張性ALX−0081溶液を含んでいた。総計で、これにより、17個の異なる液体製剤(製剤番号1〜17)が大規模な安定性試験にかけられた。Tween濃度の差異の影響を排除するために、全ての製剤が0.01%Tween−80(v/v)を含有していた。
【0235】
7.7.1 凍結-解凍に対する安定性
液体製剤としてのALX−0081の安定性に対する反復FTサイクルの効果を評価した。様々な製剤のアリコート(0.5mL/チューブ)を−70℃又は−20℃で10回以下のFTサイクルにかけた。1回のサイクルは、±20分間の凍結、その後、+25℃の水浴中での5分間の解凍を含んでいた。この処理の後、全ての製剤が視覚的に透明のままであった。RP−HPLC分析は良好な回収率を示し(95〜100%)、プロファイルの有意差も検出することができず、vWF結合剤、例えばALX−0081の品質は試験された17個の異なる液体製剤の反復凍結解凍サイクルによって影響を受けないことを示唆する。
【0236】
7.7.2 保存安定性
17個の異なる製剤の安定性はまた、ストレスのかかった条件下、すなわち+40℃でアリコート(0.5mL/チューブ)を保存することによって評価され;−70℃の長期保存条件が基準として含められた。分析はRP−HPLCに焦点が当てられた。なぜならこの方法は、一般的に、保存中に起こる化学的修飾を明らかとするための特に有益な方法として知られているからである(表4参照)。この章は、1か月間の保存後に得られたデータの概観を示し;結果は、より早期の時点、すなわち1週間後及び2週間後における所見を確認する。
【0237】
(a)RP−HPLC
上記の第7.2章で以前に示されているように、RP−HPLC分析は、現代のALX−0081 DS(D−PBS/グリシン製剤)をいくつかの製品に関連した変異体及び不純物へと分離した。簡潔に言えば、ストレスのかかった条件下で(例えば+40℃)、純度(メインピーク%)はいくつかの既存のプレ/ポストピークの増加並びに追加のピークの形成と共に同時に低下した。
【0238】
本試験において得られたRP−HPLCデータを表5に要約する。
【0239】
全体的に、得られた結果は、本製剤の緩衝液(すなわちD−PBS/グリシン)で観察されたのと実質的に同じ修飾が、様々なクエン酸緩衝液においても起こったが、相対的ピーク面積における幾分かの相違も観察することができたことを示した。特に、プレピーク面積の増加(酸化)は、D−PBS/グリシン製剤と比較してクエン酸製剤(特にpH6.0)においてはより緩徐であった。このプレピークの確立に関して、グリシンは様々な賦形剤の中で最も好ましくないようであった。+40℃で1か月間保存した後の様々なポストピークのプロファイルは、全ての製剤について同等であったが、第二のポストピーク(すなわちピログルタメート変異体)は、pH6.0〜6.5よりもpH7.0でより顕著であるようであった。メインピークの広幅化/分裂の程度(asp異性化の結果)は、低い分解能に因り定量するのが困難であり;ショルダーピークの面積比も正確に推定することができず、それ故、メインピークについて表5で報告された相対表面積に含められた。それにも関わらず、対応するRP−HPLCクロマトグラム(データは示されていない)は、定性的な評価を行なうことを可能とし;これらのデータは、異性化の程度が、様々な製剤において極めて類似していることを示唆する。
【0240】
(b)cIEF
RP−HPLCと同様に、cIEF法は、ストレスのかかった条件下で保存中に起こる特定の製品の変異体の検出を可能とする(詳細については第7.2章を参照)。これは、−70℃及び+40℃で1か月間保存した後の現代のALX−0081の電気泳動図を比較する
図5において例示される。
【0241】
本試験で得られたcIEFデータ(データは示されていない)は基本的に、RP−HPLC分析によって到達した結論、すなわち、同じタイプの修飾が、
図5に示されているような本明細書において製剤17によって示される本製剤の緩衝液(すなわちD−PBS/グリシン)で観察されているのとほぼ同じ程度で様々なクエン酸緩衝液中においても起こることを確認する。しかし、相対的ピーク面積の幾分かの差異も観察することができた。特に、ポストピーク(すなわちピログルタメート変異体)は、pH6.0〜6.5よりもpH7.0においてより顕著であるようであり、これは、表5で以前に要約されたRP−HPLCによる所見と一致する。
【0242】
(c)SE−HPLC
SE−HPLC分析を実施して、ALX−0081の物理的安定性を調べた、すなわちストレスのかかった条件下で保存中に形成された可能性もあったHMW種及び/又は分解産物を検出した。ここで試験された全ての製剤について、ストレス試験は、SE−HPLCクロマトグラムに対して有意な作用を及ぼさなかったようであった。
【0243】
(d)結論
様々なALX−0081液体製剤の保存安定性に関する最も重要な所見の要約を表5に示す。RP−HPLC分析に基づいた最も有益なデータのみを列挙した。これらのデータは、pH6.0〜6.5の50mMクエン酸中のより高い化学的安定性を示唆する。グリシンを除き、賦形剤の種類は、安定性に対して有意な影響を及ぼさなかった。物理的安定性に関しては、様々な製剤間で差異も全く観察できなかった。後者は、様々なHPLC分析において全ての試料について観察された±100%回収率によって、並びに、凝集/分解の不在を示すSE−HPLCクロマトグラムによって証明された。上記の結果に基づいて、pH6.0〜6.5のクエン酸/スクロース製剤の可能性をさらに探索することを決断した。
【0244】
7.8 凍結乾燥製剤の安定性試験
凍結乾燥の効果を、液体の及び凍結乾燥させたクエン酸/スクロース中のALX−0081製剤(pH6.0〜6.5で20mg/mLのAPI)の保存安定性を比較することによって評価した。試験された製剤の概観を表6に示す。先行技術のD−PBS/グリシンを基剤とした製剤(5mg/mLのAPI)を比較のために含めた。液体の(すなわち凍結乾燥前)及び凍結乾燥させたALX-0081を凍結させて(液体試料については−70℃、凍結乾燥製剤については−20℃)、並びに、+5℃、+25℃、及び+40℃に保ち、試料を、2週間及び1.5か月間保存した後に分析した。
【0245】
図6のパネルAは、
図1に示されているような標準的な65時間の実行を使用した凍結乾燥プロセス後のバイアルの写真を示す。クエン酸/スクロースを含有する製剤の凍結乾燥により良好なケーキが形成されたが、D−PBS/グリシン中で製剤化された試料は妥当なケーキを生じなかった。全ての試料を、ミリQ水を用いて容易に再可溶化することもでき、溶液は、透明無色であった(
図6、パネルB)。
【0246】
7.8.1 凍結乾燥前後の製品の評価
RP−HPLC及びSE−HPLC分析は、全ての試験した製剤についての、出発液体製品(−70℃以下に保つ)と、凍結乾燥させ再構成した後の製品との間の物理化学的特徴の観点からの有意差は判明しなかった。さらに、完全な試料の回収が、全製剤について実証された(表7)。
【0247】
7.8.2 1.5か月間の保存後の凍結乾燥製品の評価
(a)目視及び含量
凍結乾燥試料のケーキは、−20℃、+5℃、+25℃、又は+40℃において1.5か月間保存した後に眼に見える崩壊の兆候は示さなかった。
【0248】
試料は、ミリQ水で再構成した後に透明無色であった。また、保存は、再構成後に測定された含量に対して有意な影響を及ぼさなかった(表8)。
【0249】
(b)RP−HPLC
3つの異なる凍結乾燥製剤(3番、7番、及び17番)のプロファイルを、それぞれ−20℃、+5℃、+25℃、及び+40℃で1.5か月間保存した後に比較した。最もストレスの多い条件(+40℃)での比較が、化学的安定性に対する凍結乾燥の影響を最も良く明らかとする。
【0250】
対応する結果を表8に要約する。図に示すように、凍結型での保存は、本試験で試験されたどの製剤におけるALX−0081にも影響を及ぼさないようである。
【0251】
概して、得られたデータからの有力な結論は、クエン酸/スクロースを基剤とした製剤の凍結乾燥は実質的に、いくらかの少量のピログルタメートの修飾を除いて、液体型で起こる化学的修飾を防ぐというものである。これらの凍結乾燥製剤において、プレピークの面積率の増加も、メインピークの広幅化/分裂の兆候もなかった。対照的に、D−PBS/グリシンを基剤とした製剤の凍結乾燥により、化学的安定性の有意な向上はもたらされなかった。クエン酸/スクロース凍結乾燥製剤中のピログルタメート形成は、pH6.5よりもpH6.0の方が僅かにより顕著であるようであった。これは、+25℃でのデータによって立証され、この温度ではピログルタメートの形成速度はより低いが、同じpH依存性を示す。予想されたように、−20℃又は+5℃での1.5か月間までの保存は、凍結乾燥ALX−0081の検出可能な劣化を全く引き起こさなかった(データは示されていない)。
【0252】
驚くべきことに、+40℃で、クエン酸/スクロースを基剤とした製剤において、D−PBS/グリシンを基剤とした製剤と比較してより改善された安定性が得られ、後者は、化学的修飾に対して有意により高い感受性を示す。
【0253】
液体製剤については、−70℃、+5℃及び+25℃での1.5か月間までの保存は、ALX−0081に対して有意な作用を及ぼさなかった(データは示されていない)。+40℃で1.5か月間の保存後に観察された劣化は、以前の観察とおおまかに一致する(第7.7.2参照)。
【0254】
(c)cIEF
cIEF分析によって得られた結果は、RP−HPLCの結果と一致する。最も顕著には、クエン酸/スクロースを基剤とした製剤の凍結乾燥は、ピログルタメートの修飾を完全には防ぐことができない。実際に、+40℃で1.5か月間の凍結乾燥製品の保存により、ポストピークは増加した。ここでも、pH6.5よりもpH6.0のクエン酸/スクロースの方により迅速なピログルタメートの形成が観察された。
【0255】
(d)SE−HPLC/MALS/DLS
−70℃/−20℃、+5℃及び+25℃での1.5か月間までの保存は、凍結乾燥又は液体のALX−0081製剤のSE−HPLCプロファイルに対して作用を及ぼさなかった(データは示されていない)。しかし、+40℃において全ての
液体製剤においてピークの広幅化及びショルダーピークの形成も観察できた。MALS分析は、これらのショルダーピークは単量体ALX−0081に対応することを示した(データは示されていない)。データは、ストレスのかかった保存の結果として、ALX−0081の亜集団におけるコンフォメーション変化を言外に示唆する。驚くべきことに、
凍結乾燥クエン酸/スクロース製剤のSE−HPLCプロファイルは、+40℃のストレス試験によって影響を受けず、このことはこれらの凍結乾燥製剤はまた、ALX−0081の物理的安定性も改善することを示す。しかし、これは、凍結乾燥されたD−PBS/グリシン製剤については該当せず;この製剤を+40℃でストレスにかけることで、ショルダーピークが生じるだけでなく、幅広なプレピークとして眼に見えるいくつかのより高い分子量種も生じたようであった(表8)。DLS分析は、どの製剤においても大きなオリゴマー種を全く検出しなかった(データは示されていない)。
【0256】
(e)結論
試験された凍結乾燥ALX−0081製剤の保存安定性に関する最も重要な所見の要約を表8に示す。要するに、クエン酸/スクロース製剤間でほんの僅かな安定性の差異が観察されたが、意外なことにALX−0081はpH6.0よりもpH6.5の方がピログルタメートを形成しにくいようであった。それ故、ALX−0081についてのさらなる改質研究は、pH6.5のクエン酸/スクロースを基剤とした製剤に焦点が当てられた。
【0257】
7.9 クエン酸/スクロースを基剤とした製剤のさらなる最適化
これまで回収されたデータは、クエン酸/スクロースを基剤とした製剤が溶解度を改善し、かつこの製剤の凍結乾燥がALX−0081の保存安定性を劇的に向上させることを示す。しかし、より高温での凍結乾燥ALX−0081の保存により、少量ではあるけれども、依然としてピログルタメートが形成される。この修飾が凍結乾燥製品の有効期限を制限する可能性があると考えることは妥当である(+5℃で保存した場合でさえ)。凍結乾燥がなぜこの修飾を防ぐことができなかったのかは依然として解明されていない。
【0258】
凍結乾燥製品中に残留している水分が重要な役を果たすと仮定した。
【0259】
この仮説が真実であれば、上記に列挙されているような乾燥時間、温度、真空などの物理的凍結乾燥パラメーターを最適化することによって残留水分を最小限とすることができるが、同時に、vWF結合剤の他のパラメーターは一定に維持するべきである。別のアプローチは製剤の修飾であるが、ここでも同時にvWF結合剤の他のパラメーターは一定に維持するべきである。さらに、製剤の修飾と組み合わせて物理的凍結乾燥パラメーターの調整も使用し得る。
【0260】
7.9.1 凍結乾燥パラメーターの最適化
(i)乾燥時間、(ii)様々な工程の温度、(iii)真空、及び(i)〜(iii)の組合せをはじめとする、物理的凍結乾燥パラメーターの最適化は満足の行くものではなかった。すなわち、残留水分含量に対して、又はvWF結合剤のパラメーターに影響を及ぼすことには、全く効果がないか又は不適切な効果しかなかった。
【0261】
7.9.2 凍結乾燥のために製剤を最適化
凍結乾燥製品の化学的安定性に対する水分含量の作用を、クエン酸緩衝液及びスクロース賦形剤の濃度を調整することによって調べた。さらに、凍結乾燥プログラム中の2回目の乾燥時間を調べた。
【0262】
7.10 凍結乾燥製品の安定性に対する水分含量の作用
クエン酸及びスクロース濃度を変化させた3つの異なるALX−0081等張製剤(3つ全てpH6.5)を、2つの異なる凍結乾燥プログラムにかけた:一方では標準的な65時間の実行、他方では短縮された37時間の実行。試験された製剤の概観を表9に示す。
図7は、凍結乾燥後に得られたバイアルを示す。凍結乾燥により、全ての製剤について良好なケーキが形成された。
【0263】
ALX−0081の凍結乾燥試料を、−20℃及び+40℃の両方の2週間及び4週間の保存後に分析した。本実験において、製剤の有用性をさらに立証するために徹底的な試験を実施することを決断した。
【0264】
まず、+40℃で4週間までの保存中では凍結乾燥試料のケーキはインタクトなままであり、再構成により透明な溶液が得られた。凍結乾燥サイクルは、含量(277nmにおいて分光光度的に測定)又は浸透圧に対して有意な影響を全く及ぼさないようであった。以前の実験と一致することには、+40℃で4週間の保存は、SE−HPLC、MALS及びDLS分析に基づいて、ALX−0081の物理的安定性に影響を及ぼさなかった(データは示されていない)。さらに、ビアコアに基づいたアッセイによって決定されたALX−0081の効力は、凍結乾燥プロセス及びその後の保存によって影響を受けなかった(データは示されていない)。しかし、RP−HPLC分析は、保存によりここでも、少量ではあるけれども、ピログルタメート変異体が形成されたことを実証した。これは、最も高いクエン酸濃度及び最も低いスクロース濃度を含有する製剤について僅かにより顕著であった(表10)。さらに、各凍結乾燥製剤について、全水分含量をカールフィシャー滴定によって決定した。これらのデータの要約は、対応するストレスのかけられた試料において検出されたピログルタメートの量と一緒に、表10に示されている。各凍結乾燥プログラムについて別々に得られたデータから、より高い水分含量は、ピログルタメートをより形成し易いようにする。このことは、凍結乾燥製品中に存在する残留水分は化学的修飾を促進することを示唆する。
【0265】
結論すると、この結果は、凍結乾燥vWF結合剤、例えばALX−0081の水分含量の低減は、その化学的安定性にとって有益であることを示す。
【0266】
7.11 緩衝液の強度の低減及びスクロース含量の増加の効果
前の章で得られたデータは、スクロース濃度を上昇させつつクエン酸濃度を低減させることは(これにより等張溶液を維持する)、凍結乾燥製品の安定性にとって有益であることを示す。同時に、ALX−0081は、改善された溶解度を得るために十分に高い濃度のクエン酸を必要としたという証拠が得られた。それ故、+5℃及び+25℃での保存中の溶液の外見に対するクエン酸及びスクロース濃度の効果を評価し、低濃度のクエン酸の存在下における凍結−解凍に対する安定性を再度評価することを決断した。
【0267】
7.11.1 クエン酸/スクロース濃度の影響の評価
第1の実験において、12個の異なるALX−0081製剤を+5℃及び+25℃で4日間まで保存した。試料を、濁度又は沈降物の存在について定期的に検査した。4日間保存した後の試料を撮影した写真を
図8及び9に示す。様々な製剤及び対応する結果の概観を表11に提示する。+25℃で4日間保存した後、全ての試料は無色透明のままであった(
図8、パネルA)。対照的に、+5℃で賦形剤を含まない大半のクエン酸製剤は、濁った(
図8、パネルB)。明らかに、濁度はクエン酸濃度に反比例し、50mMクエン酸製剤は透明なままである。また、15mMのクエン酸を含有する試料の試料回収率は68%であったが(20時間保存後ののA277に基づく)、他の回収率は90〜100%まで変動した(データは示されていない)。スクロースを15mMのクエン酸製剤に加えることで、試料の濁りが防がれたが、最低濃度のスクロース(すなわち5%)では幾分かの僅かな濁度が+5℃において検出された(
図9、パネルB)。
【0268】
観察により、ALX−0081を可溶性で、特に低温で可溶性で維持する上での、十分に高い濃度のクエン酸の重要性が確認される。それにも関わらず、クエン酸濃度の上昇により、水分含量は増加した。意外なことに、クエン酸濃度の低減は、スクロースの添加によって補うことができる。溶解度に対するTween−80の効果は全く観察されなかった。
【0269】
7.11.2 FT安定性の評価
経過観察実験は、いくつかのクエン酸/スクロースを基剤とした製剤のFT安定性に焦点を当てた。9個の異なるALX−0081製剤を、−20℃の5回の連続的なFTサイクルにかけた。試験製剤及び対応する結果の概観を表12に示す。全ての試料は透明のままであり、FTサイクルは、含量分析及びSE−HPLCデータに基づいて、vWF結合剤、例えばALX−0081の物理的安定性に影響を及ぼさなかった。
【0270】
7.11.3 等張度の観点からのスクロース及びクエン酸濃度の最適化
上記の保存及びFTの結果に基づいて、最適なクエン酸緩衝液の濃度は、20mMであるとして選択された。最終実験を、スクロース濃度の異なる3つの製剤に対して実施した。この実験の目的は、等張処方に到達するための最適なスクロース濃度を確立するため、及び、20mg/mLのALX−0081のFT安定性を確認するためであった。5回の連続的なFTサイクルに加えて、各製剤をまた、1回のFTサイクルにかけ、続いて+25℃で24時間保存し、追加のFTサイクルにかけて、製造中の取扱い工程を模倣した。
【0271】
結果の要約を表13に示す。全ての試験製剤は透明であり、様々な取り扱いは、含量/回収率又は浸透圧に対して影響を及ぼさなかった。浸透圧の数値に基づいて、7%のスクロース濃度は等張溶液を得るのに最適であるようである。
【0272】
7.12 12か月間まで様々な温度で保存された凍結乾燥ALX−0081製剤の安定性試験
20mMクエン酸緩衝液pH6.5、7%スクロース(w/v)及び0.01%Tween−80(v/v)中12.5mg/mLで製剤化されたALX−0081を、表14に提示された条件に従って凍結乾燥した。試料を、続いて、−20℃(±5℃)、+5℃(±3℃)、+25℃(±2℃/60±5%RH)及び+40℃(±2℃/75±5%RH)で保存した。
【0273】
凍結乾燥製剤の安定性を、様々な時点で、すなわち、最初に、1か月後、3か月後、6か月後、9か月後、及び12か月後に評価し、純度、外見、物理化学的特性、及び効力について評価した。詳細な試料の特徴付けデータを表15〜23に示す。
【0274】
試料の純度をRP−HPLCによって評価し、メインピーク面積の比率、並びに、プレピーク面積及びポストピーク面積の比率を決定した。タンパク質濃度をUV吸光度によって決定した。
【0275】
さらに、凍結乾燥試料を目視し、再構成し、再構成された製剤を目視した。再構成後の試料のpHを測定し、凍結乾燥粉末の水分含量を、比色滴定(カールフィッシャー)によって決定した。粒子状物質の計数測定を実施して、10μm以上及び25μm以上の粒子を計数した。試料をさらに、ビアコアに基づいたアッセイを使用して生物学的機能について特徴付けた。効力を、基準物質に対する相対的効力の比率として表現した。
【0276】
得られた安定性データは、凍結乾燥ALX−0081製品の特徴は、−20℃又は+5℃でのいずれかでの12か月間の保存によって有意に影響を受けないことを示す。そうした温度で安定性試験の全期間中に回収されたデータは、ゼロの時点で発生したデータと同等であることが判明した。
【0277】
+25℃又は+40℃で保存された試料についていくつかの小さな変化が観察され、これは、促進された又はストレスのかけられた保存条件に原因がある可能性がある。主な観察は以下であった:
○ +25℃及び+40℃において、ポストピーク2の増加が、12か月間の保存中にRP−HPLCで観察され、これは、それぞれ0.7%から1.1%への又は2.4%へのピログルタメート変異体の形成に相当する。
○ +40℃で12か月間の保存後の0.7%から2.1%(w/w)への水分含量の増加が認められた。これは、栓による保存環境(すなわち75%RH)からの水分の摂取、続いて製品に徐々に拡散されることに原因がある可能性がある。
【0278】
ストレスのかかった条件下で得られた結果は、製品の水分含量と化学的安定性との間の相関を示唆し;これは、第7.10章で以前に報告されたデータに相当する。
【0279】
従って、これらのデータは、保存中のDP製品の水分含量の制御の重要性を示す。
【0280】
+40℃における保存は、+25℃での長期の安定性を予測するものと考えることができることを考慮して、本明細書に含まれる12か月間の安定性データは、室温での長期保存安定性についての、及び、より穏やかな条件下で(例えば+5℃で又は凍結させて)保存した場合にはさらにより長期間の安定性についての良好な指標を提供する。
【0281】
7.13 抗vWFナノボディカプラシズマブ(ALX−0081)の液体の及び凍結乾燥させた医薬品製剤の生物学的活性に関するインビトロでの比較研究
7.13.1 目的
多くのアッセイを使用して、現代のALX−0081DP[200mMグリシン及び0.02%Tween−80(v/v)を含有するリン酸を基剤とした(D−PBS)緩衝液pH7.1中、5mg/mLの活性医薬成分(API)を含有する液体製剤]と、上記に提示されているような凍結乾燥ALX-0081 DP製剤[20mMクエン酸緩衝液pH6.5、7%スクロース(w/v)及び0.01%Tween−80(v/v)中12.5mg/mLで製剤化]との、生物学的活性及び標的への結合に関するインビトロでの同等性を評価した:
a)ビアコアに基づいた効力のアッセイ
b)ELISAに基づいた効力のアッセイ
c)リストセチン誘導コファクター活性(RICO)薬力学的バイオマーカーアッセイ
d)Gyrolabに基づいた親和性の決定。
【0282】
これらのアッセイは、ALX-0081の液体の及び凍結乾燥させた医薬品(カプラシズマブ)の対照比較を可能とした。予め定められた同等性基準を使用して、各アッセイにおける同等性を評価し、これを表24に列挙する。
【0283】
7.13.2 方法
a)ビアコアアッセイは、表面プラズモン共鳴(SPR)技術に基づき、センサーチップ上に固定されたヒトvWF A1ドメインへのALX-0081の貪欲な結合を測定する。アッセイは、発売時の安定性に関する効力の試験のために選択された。
【0284】
b)ELISAに基づいた効力アッセイは、カプラシズマブの標的中和能のさらなる特徴付けのために開発されたALX-0081の効力試験のための直交法である。このアッセイは、カプラシズマブによる、リストセチンにより誘導されたフォンヴィルブランド因子(vWF)の結合した血小板への結合の阻害を測定する。
【0285】
c)RICOアッセイは、カプラシズマブの薬理学的活性についての薬力学的マーカーとして使用される。アッセイは、ヒト凍結乾燥血小板が、抗生物質のリストセチンの添加後に凝集物を形成する(これは、剪断により誘導されたvWFの活性化を模倣する)速度及び程度を測定する。
【0286】
d)Gyrolabに基づいたアッセイは、カプラシズマブとその多量体の標的vWFとの動態学的相互作用を分析し、ヒト多量体vWFに対するカプラシズマブの親和性定数を決定する。簡潔に言えば、Gyrolabプラットフォーム上での親和性の決定は、以下のように確立された:Gyrolab Bioaffy 1000CDを使用した。捕捉ツールとして、3000nMの社内製のビオチニル化され精製されたvWF(サイズ排除クロマトグラフィーを使用して精製されたHaemateP)を、ストレプトアビジンでコーティングされたビーズを予め充填されたカラムに流した。0.01%Tween−20を含有する滅菌ろ過されたD−PBSを、捕捉ツールの希釈のために使用した。精製vWF HaematePの1/3倍連続希釈液を、室温(+20℃)で24時間、96ウェルプレート中、600rpmの回転機において、AD1緩衝液(用量反応曲線のためのアッセイ希釈緩衝液)中一定濃度のカプラシズマブ(5pM)と共にプレインキュベートした。24時間後、プレートを200gで1分間遠心分離にかけた。遊離カプラシズマブ分子を含有する70μLのプレインキュベート混合物を、ディープウェルPCRプレートに入れた。その後、この混合物をカラムに流し、遊離カプラシズマブは、カラムに固定されたビオチニル化vWFに結合することもできた。Gyrolabシステムは、3つ組の混合物をCDに自動的に移動させた。遊離カプラシズマブを、Rexxip F緩衝液(市販の検出用緩衝液)中で希釈された50nM AlexaFluor647標識抗カプラシズマブモノクローナル抗体を用いて検出した。3回の独立した実験を実施して、最終的なK
Dを決定した。赤色レーザーによって蛍光色素を励起し、蛍光シグナルを得て、光電子増倍管(PMT)によって増幅した。このアッセイの増幅レベルは1%PMTであった。未知のリガンド分析モデルを、カプラシズマブのK
Dの決定のために使用した。GyrolabワークステーションのXL fitソフトウェアを用いて分析を行なった。
【0287】
7.13.3 結果
a)液体の及び凍結乾燥させたALX-0081試験試料の相対効力を、効力アッセイに使用されたALX-0081基準物質(主要標準品2(master reference standard)(MRS−2)とも呼ばれる)と比較して、ビアコア効力アッセイにおいて測定した。相対効力はそれぞれ102.8%及び102.9%であり、これは、ビアコアを介して決定された生物学的効力に関して完全な同等性を示す(表24参照)、
【0288】
b)MRS−2と比較した、液体の及び凍結乾燥させたALX-0081試験試料の相対効力を、ELISAに基づいた効力アッセイにおいて決定した。相対効力値はそれぞれ99.4%及び109.5%であり、従ってこれは十分に同等基準内である(表24参照)。それ故、これらの結果は、両方の製剤がELISAを介して決定された効力に関して同等であることを示す。
【0289】
c)液体の及び凍結乾燥させたALX-0081試験試料のRICO活性を、対照比較において測定し、RICO活性を完全に遮断(20%未満)する濃度を決定した。RICO活性を完全に遮断(20%未満)する濃度は、どちらの製剤についても0.4μg/mL以下であった。これらの結果は、十分に同等基準内であり(表24参照)、両方の製剤の薬力学的活性に関して完全な同等性を示す。
【0290】
d)液体の及び凍結乾燥させたALX−0081試験試料の親和性定数(K
D値)もまた、Gyrolabに基づいたアッセイにおける対照比較において決定した。K
D値はそれぞれ6.84pM及び4.46pMであり、信頼区間が重なっていた。それ故、これらの結果は、多量体の標的vWFに対する親和性に関して両方の製剤の完全なる同等性を示す(表24参照)。
【0291】
7.13.4 結論
本研究の目的は、インビトロにおける生物学的活性及び標的への結合を評価することのできる4つのアッセイを用いて、液体の及び凍結乾燥させたALX−0081医薬品(カプラシズマブ)のインビトロにおける同等性を評価することであった:
a)ビアコアに基づいた効力アッセイ
b)ELISAに基づいた効力アッセイ
c)リストセチン誘導コファクター活性(RICO)薬力学的バイオマーカーアッセイ
d)Gyrolabに基づいた親和性の決定。
【0292】
全てのインビトロアッセイが、予め定められた許容可能な基準を満たし、かつALX-0081の両方の製剤が、生物学的活性及び標的への結合の観点から同等であることを示した(表24参照)。試験された液体の及び凍結乾燥させたALX-0081DP製剤は、以下を示した:
● ビアコア及びELISAアッセイを介して決定された類似した相対的効力
● RICOアッセイを介したインビトロで同等な薬力学的活性(標的の中和)
● Gyrolabアッセイを介した同等な標的への親和性
【0293】
7.14 液体の及び凍結乾燥させたALX-0081製剤の促進されたかつ長期の安定性試験
実施例7.12に補足して、独立した安定性実験を、異なるバッチのALX−0081同製剤を使用して実施した[20mM クエン酸緩衝液pH6.5、7%スクロース(w/v)及び0.01% Tween−80(v/v)]。
【0294】
凍結乾燥製剤及び液体製剤の両方の安定性を、異なる温度で試験した:
− 20mM クエン酸緩衝液pH6.5、7% スクロース(w/v)及び0.01%Tween−80(v/v)中、13.8mg/mLのALX−0081液体製剤を、−60℃以下及び+5℃(±3℃)の温度で保存し、様々な時点で、すなわち最初、9か月後、12か月後、18か月後、及び24か月後の時点で安定性について試験した。
− 20mM クエン酸緩衝液pH6.5、7% スクロース(w/v)及び0.01%Tween−80(v/v)中、12.7mg/mLのALX−0081凍結乾燥製剤を、+5℃(±3℃)、+25℃(±2℃/60±5%RH)及び+40℃(±2℃/75±5%RH)で保存した。液体製剤と同様に、凍結乾燥製剤の安定性を0か月後、9か月後、12か月後、18か月後、及び24か月後に決定した。
【0295】
各時点において、試料の化学的及び物理的安定性を、cIEF、RP−HPLC、SE−HPLC、外見、pH及びUV吸光度をはじめとする多くの分析技術を使用してモニタリングした。凍結乾燥粉末の水分含量を、比色滴定によって決定した。社内製のALX−0081標準品と比較した、液体試料及び凍結乾燥試料の相対効力を、ビアコアにおいて測定した。
【0296】
液体製剤及び凍結乾燥製剤についての詳細な試料特徴付けデータを、それぞれ表25〜26及び表27〜29に示す。前記の各表の2列目に提示された基準を満たした試料を、製品の規格内であると判断した。
【0297】
得られたデータは、本発明の製剤が少なくとも24か月間非常に安定であることを実証する。凍結乾燥ALX−0081の物理化学的特徴並びに生物学的活性は、+5℃又は+25℃のいずれかでの24か月間の保存によって有意に影響を受けなかった。+40℃で24か月間ALX−0081にストレスをかけると、ポストピーク2の増加が観察され、これは、出発物質中の1.1%から、9、12、18及び24か月後のそれぞれ、2.8%、3.2%、4.2%及び6.2%のピログルタメート変異体の形成に相当する。
【0298】
−60℃以下又は+5℃の温度での少なくとも24か月間のALX−0081液体製剤の保存は、その物理化学的安定性に有意な影響を及ぼさず;含量の値は安定であり、試料は透明のままであり、初期の物質のcIEF、RP−HPLC及びSE−HPLCプロファイルは、安定試料のものと同等であった。
【0299】
+40℃で保存された凍結乾燥試料について報告された変化は、ストレスのかかった保存条件が原因である可能性があり、より穏やかな条件下での長期保存の安定性についての良好な指標を与える。
【0300】
長期安定性の予測
現行の医薬品の規格は、ピログルタメートの許容される比率は4%以下であると述べている。この規格及び現行の安定性データに基づいて、アレニウス式を使用して、+5℃及び+25℃における凍結乾燥医薬品の有効期限を予測した。アレニウス式は、製薬工業で一般的に使用される反応速度の温度依存性を説明した正確な式である。
図10及び11に示されているように、凍結乾燥医薬品は、+5℃で保存された場合には少なくとも500か月間、及び+25℃で保存された場合には少なくとも60か月間、規格内であり続けると予想される。
【0301】
7.15 一般的な結論
wWF結合剤、特に本明細書に記載のALX−0081の改質発明は、改善された溶解度(80mg/mLまで)及び有意に改善された液体保存安定性(例えばその元来の製剤と比較してあまり酸化されていない)を有する新規なクエン酸/スクロースを基剤とした製剤とした。また、凍結乾燥型では、+40℃で12か月間の保存後又はさらには24か月間の保存後でさえ実質的に全く酸化又はasp異性化を検出することができなかった。クエン酸及びスクロース濃度のさらなる最適化により、凍結乾燥製品の水分含量は減少し、これによりピログルタメート形成速度は最小限となった。vWF結合剤の各々の物理化学的特徴は、製剤の物理的並びに化学的な様々な構成成分、例えば緩衝液の選択、pH、濃度、賦形剤などによって異なった影響を受けたことが示された。様々な化学的及び/又は物理的ストレスを救済又は防ぐために最適化された、様々な製剤が本明細書において提供される。
【0302】
大半の重要な基準を満たす1つの製剤緩衝液を設計した:20mMクエン酸pH6.5+7.0%スクロース(w/v)+0.01%Tween−80(v/v)。この製剤を使用して、ALX−0081は、−20℃、+5℃、+25℃、及び+40℃において少なくとも12か月間又はさらには24か月間安定であることが示された。これらのデータは明瞭に、現行の液体製剤よりも、+5℃におけるかなりより長い有効期限を指摘する。
【0303】
さらに、本発明者らは、現在まで臨床試験に使用されてきたALX−0081の現代の製剤が、インビトロでの生物学的活性及び標的への結合の観点から本明細書に提示された新規な最適化された凍結乾燥ALX−0081製剤と同等であることを十分に示した。
【0304】
【表2】
【0305】
【表3】
【0306】
【表4】
【0307】
【表5】
【0308】
【表6】
【0309】
【表7】
【0310】
【表8】
【0311】
【表9】
【0312】
【表10】
【0313】
【表11】
【0314】
【表12】
【0315】
【表13】
【0316】
【表14】
【0317】
【表15】
【0318】
【表16】
【0319】
【表17】
【0320】
【表18】
【0321】
【表19】
【0322】
【表20】
【0323】
【表21】
【0324】
【表22】
【0325】
【表23】
【0326】
【表24】
【0327】
【表25】
【0328】
【表26】
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【表27】
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【表28】
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【表29】
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【表30】
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【表31】
【0334】
【表32】
【0335】
均等物
前記の明細書は、当業者が本発明を実施するのを可能とするのに十分であると考えられる。本発明は、与えられた実施例によって範囲を制限されない。なぜなら、実施例は本発明の1つの態様の1つの説明として捉えられ、他の機能的に等価な実施態様も本発明の範囲内であるからである。本明細書に示されかつ記載されたものに加えて、本発明の様々な改変が、当業者には、前記の説明から明らかとなり、これは添付の特許請求の範囲内に該当する。本発明の利点及び目的は、本発明の各々の実施態様によって必ずしも包含されない。
【0336】
本出願全体を通して引用された全ての参考文献、特許及び公表された特許出願の内容は、その全体が参照により、特に本明細書で参照された用途又は対象物のために、本明細書に組み入れられる。