(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上質の香粧品、布用柔軟材(fabric care)、家庭用品、美容製品およびパーソナルケア製品、およびエアケア製品から選択される、請求項8に記載の付香製品。
【発明を実施するための形態】
【0008】
具体的に重要なことは、中央のシクロヘキセニル環が、位置3’にて二重結合を有するという事実であって、この位置においてのみ、その結果得られる化合物のにおいは、その側鎖中のエノン部分構造(substructure)による感作の潜在性を遮断するのに主に関与している2−メチル基によって妨げられないためである。先行技術、例えばUS第4,226,892号は、1’位または2’位のいずれかにて単一の二重結合をもつか、または1’位および3’位にて2個の共役二重結合をもつ環を記載する。3’位での単一の二重結合の使用は、2−メチル基の導入を可能にさせるが、この組み合わせにおける前記基は、その公知の分子の感作の潜在性を効果的に排除しつつ、それらの望ましいにおいの質を維持するかまたは改善さえすることが、驚くべきことに見出された。
【0009】
具体的な態様において、R
4は、メチルおよびエチルから選択される。これらの化合物は、Cyprisate(商標)(メチル1,4−ジメチルシクロ−ヘキサンカルボキシラート)的側面のない、あまり不快ではなくかつハーブ調でもないフルーティー−フローラルのにおいの質を有し、こうしてDamascone(商標)化合物により近いより望ましいフルーティー−フローラルのノートを提供するが、それらには皮膚感作の問題はない。
【0010】
したがって、式Iに従う化合物の、香料適用物のベース(a fragrance application base)への添加を含む、皮膚感作が低減されたフルーティー−フローラルの香料のノートを香料適用物中に提供する方法もまた提供される。
【0011】
感作は、商業的に入手可能であり普遍的に受け入れられている、化学物質の潜在的な皮膚感作リスクを比較するKeratinoSens(商標)テストによって測定される。皮膚感作試験のための統合的なストラテジーの範囲内での使用については、EURL ECVAM(European Union Reference Laboratory for Alternatives to Animal Testing)によって推奨される。OECDテストのガイドライン(Guideline for the Testing of Chemicals. In Vitro Skin Sensitisation: ARE-Nrf2 Luciferase Test Method)が2015年2月に発表された。
【0012】
KeratinoSens(商標)細胞株は、遺伝子AKR1C2のAREエレメントの制御下でルシフェラーゼ遺伝子の安定した挿入物を含有し、ルシフェラーゼの誘導は、皮膚感作の潜在性を示す(R. Emter, G. Ellis, A. Natsch, Toxicol. Appl. Pharmacol. 2010, 245, 281-290)。アッセイは、OECDテストのガイドライン442dに記載されているとおりに実施された。KeratinoSens細胞は、96ウェルプレート中24h成長させられた。次いで、培地は、テスト化学物質および溶媒ジメチルスルホキシド(DMSO)を1%の最終レベルにて含有する培地と交換された。各化合物は、0.98から2000μMまでの範囲の12種のバイナリー希釈物(12 binary dilutions)にて試験された。細胞は、テスト薬剤とともに48hインキュベートされ、次いでルシフェラーゼ活性および細胞傷害性が測定された。この全ての手順は、各化学物質について3回繰り返された。
【0013】
各反復におけるおよび各濃度での各化学物質について、DMSO対照と比較した遺伝子誘導、および1.5の閾値(すなわち、50%増強された遺伝子活性)を超える統計的に有意な誘導を伴うウェルが、測定された。その上、最大倍率誘導(I
max)およびEC1.5値(閾値を上回る誘導についてのμMにおける濃度)が計算された。以下の3つの基準が満たされている場合、化学物質は、アッセイにおいて陽性と評価される(すなわち、皮膚感作物質の可能性がある):
(i)EC1.5値が、1000μMを下回る
(ii)1.5倍を上回る遺伝子誘導を伴う最低濃度にて、細胞の生存率が、70%を上回る
(iii)ルシフェラーゼ誘導について、全体的に見て明らかな用量反応があり、これが繰り返しの中で類似している。
【0014】
式Iで表される化合物は、位置1’および2’において立体中心を保有し、R
3がR
4と異なる場合、位置6’においてもまたこれを保有する。したがって、それらは、異なるジアステレオマーおよびエナンチオマーの形態で存在する。加えて、位置2における二重結合は、(E)−または(Z)−立体配置であり得る。(2E、1’R
*、2’S
*)−ジアステレオマーは、とりわけ低いにおい閾値を保有する。
【0015】
式Iで表される化合物の具体例は、R
1およびR
2の両方がHであるものである。これらのうち、R
3およびR
4が、メチルであるか、または一緒になってシクロペンチル環(n=1)を形成するものが、特に好ましい。
【0016】
式Iで表される化合物のさらなる具体例は、(2E,1’R
*,2’S
*)−2−メチル−1−(2’,6’,6’−トリメチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)ブタ−2−エン−1−オン、(2E,1’R
*,2’R
*)−2−メチル−1−(2’,6’,6’−トリメチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)ブタ−2−エン−1−オン、(2E,6’R
*,7’S
*)−2−メチル−1−(7’−メチルスピロ[4.5]デカ−8’−エン−6’−イル)ブタ−2−エン−1−オン、(2E,6’R
*,7’R
*)−2−メチル−1−(7’−メチルスピロ[4.5]デカ−8’−エン−6‘−イル)ブタ−2−エン−1−オン、(2E)−1−(2’,6’−ジメチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)−2−メチルブタ−2−エン−1−オン、(2E)−1−(6’−エチル−2’−メチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)−2−メチルブタ−2−エン−1−オン、(2E)−2−メチル−1−(1’,2’,6’−トリメチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)ブタ−2−エン−1−オン、(2E,1’R
*,2’S
*)−2−メチル−1−(2’−メチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)ブタ−2−エン−1−オン、および(2E,1’R
*,2’R
*)−2−メチル−1−(2’−メチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)ブタ−2−エン−1−オンであり、具体例は、(2E,1’R
*,2’S
*)−2−メチル−1−(2’,6’,6’−トリメチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)ブタ−2−エン−1−オンである。
【0017】
式Iで表される化合物は、リチウムジイソプロピルアミドまたはリチウムビス(トリメチルシリル)アミドなどの強塩基、およびハロゲン化メチルなどのメチル化剤を採用して、対応するブタ−2−エン−1−オンの位置2におけるメチル化によって調製されてもよく、または例として、5−R
1−置換の(3E)−ペンタ−1,3−ジエンの、対応するα,β−不飽和エステルとのディールス・アルダー反応、およびこれに続く、式Iで表される化合物のエノラート形態を捕捉することによってカルビノールへのさらなる反応を防ぐための、リチウムジイソプロピルアミドなどの強塩基の存在下における、その結果得られた生成物の、1−メチル−2−プロペニルマグネシウムハライドとのグリニャール反応によって入手可能である、対応するエステルそれ自体からのものであってもよい。
【0018】
さらなる態様において、式Iで表される化合物は、前駆体、つまり具体的な条件下(例えば、熱、光、化学的刺激)で分解して式Iで表される化合物を形成する化合物、を用いて生成されてもよい。これは、洗濯物(laundry)またはヘアケア用品(hair care)などのいくつかの適用物において、とりわけ有用である。この化合物は、その存在が所望されるとき、in situで生成され得るからである。
【0019】
したがって、式Iで表される化合物を生成することができる前駆体もまた提供され、その前駆体は、式II
【化3】
式中Xは、SR
5、NHR
6およびNR
6R
7から選択され、R
5、R
6およびR
7は、線状または分枝状のC
1〜C
15アルキル、C
3〜C
8シクロアルキル、またはアリール置換基から選択され、このシクロアルキルおよびアリールは、線状または分枝状のC
1〜C
7アルキル基で任意に置換されてもよく、または、NR
6R
7の場合、R
6およびR
7は、それらが付着されている窒素原子と一緒に、ポリマー体の一部を形成する、
で表される化合物である。
【0020】
したがって、本明細書の上に記載のとおりの式Iで表される化合物を、香料適用物中に提供する方法もまた提供され、前記方法は、
(i)式IIで表される化合物の調製;
(ii)式IIで表される化合物を適用物へ加えること;および
(iii)その適用物を、式Iで表される化合物の生成をもたらすであろう状況(conditions)に供すること、
を含む。
【0021】
さらに、式Iに従う化合物のin situでの生成のための、香料適用物における、式IIで表される化合物の使用が提供される。
ポリマー体の場合、いずれかのかかる好適な実体が好適であり、典型的な例は、ポリエチレンイミンである。かかる材料は、例えばBASFのLupasol(商標)のラインナップ(range)が商業的に容易に入手可能である。
一般的なタイプの式IIで表される化合物は、例えばUS第4,226,892号から知られているが、この群の具体的な下位集合(subset)が、この具体的な利点を有することは知られていなかった。
【0022】
式IIで表される化合物は、当該技術分野に知られているいずれか好適な方法によって調製されてもよい。かかる調製のための材料および条件は、当該技術分野に周知であり、ルーティンの非発明的な実験法しか、好適な化合物を製造するのに求められない。典型的な非限定例において、式IIで表される化合物は、おおむね等モーラーの式Fで表される化合物と、HSR
5、H
2NR
6、HNR
6R
7の1つとの反応によって、好ましくは20〜80℃にて、無溶媒(neat)または溶媒(エタノールまたはトルエンなど)中のいずれかで、任意に1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンなどの有機塩基(0.5〜1.5等価)、または炭酸カリウムなどの無機塩基の存在下で、調製されてもよい。生成物は、有機合成の当業者に知られている標準的な作業手順によって単離されてもよい。式IIで表される化合物は、粗製物の形態で使用されてもよく、またはカラムクロマトグラフィーまたは蒸留などの標準的な精製手順によって精製されてもよい。
【0023】
式Iで表される化合物は、香料組成物において使用されてもよい。前記香料組成物とは、つまり、独立型の香料提供物としてか、または香料適用物中へ組み込まれることでそれらに所望の香料を提供するかのいずれかで、所望の香料を提供する組成物である。式Iで表される化合物は、個別に、または式Iで表される1以上の他の化合物と組み合わせて、使用されてもよい。それらは、かかる香料組成物において、知られている範囲の商業的に入手可能な香料原材料のいずれか(精油、アルコール、アルデヒドおよびケトン、エーテルおよびアセタール、エステルおよびラクトン、大員環および複素環などの、天然または合成の前記香料原材料のいずれか)と組み合わされていてもよく、および/または、従来香料組成物中におい物質と併せて使用される1以上の成分または賦形剤(例えば、当該技術分野において一般的に使用される、担体材料、希釈剤、界面活性剤および他の補助剤)と混和されていてもよい。好適な希釈剤の例は、ジプロピレングリコール(DPG)、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)、クエン酸トリエチル(TEC)、およびアルコール(例えば、エタノール)を包含する。これらは、当該技術分野に知られている通常の割合で使用されてもよい。
【0024】
以下のリストは、式Iで表される化合物と組み合わせられてもよい、知られているにおい物質分子の非限定例を含む:
− 精油および抽出物、例えば、沈香油(栽培の(white)および/または天然の(authentic))、海狸香、木香(costus root)油、オークモス・アブソリュート、ゼラニウム油、トリーモス・アブソリュート、バジル油、ベルガモット油およびマンダリン油などの果実油、ミルテ油、パルマローザ油、パチュリ油、プチグレイン油、ジャスミン油、ローズ油、サンダルウッド油、ワームウッド油、ラベンダー油、またはイランイラン油;
【0025】
− アルコール、例えば、桂皮アルコール、cis−3−ヘキセノール、シトロネロール、Ebanol(商標)、オイゲノール、ファルネソール、ゲラニオール、Super Muguet(商標)、リナロール、メントール、ネロール、フェニルエチルアルコール、ロジノール、Sandalore(商標)、テルピネオール、またはTimberol(商標);
− アルデヒドおよびケトン、例えば、Azurone(登録商標)[7−(3−メチルブチル)−1,5−ベンゾジオキセピン−3−オン]、アニスアルデヒド、α−アミル桂皮アレデヒド、Cashmeran(登録商標)、Georgywood(商標)、Hedione(登録商標)、ヒドロキシシトロネラール、Iso E Super(登録商標)、Isoraldeine(登録商標)、Kephalis(商標)、Lilial(登録商標)、マルトール、メチルセドリルケトン、メチルイオノン、ベルベノン、またはバニリン;
【0026】
− エーテルおよびアセタール、例えば、Ambrox(登録商標)、ゲラニルメチルエーテル、ローズオキシド、またはSpirambrene(登録商標);
− エステルおよびラクトン、例えば、酢酸ベンジル、酢酸セドリル、γ−デカラクトン、Helvetolide(登録商標)、γ−ウンデカラクトン、または酢酸ベチベニル;
− 大員環、例えば、Ambrettolide、エチレンブラシレート、またはExaltolide(登録商標);および
− 複素環、例えば、イソブチルキノリン。
【0027】
式(I)に従う化合物は、広範囲の香料適用物、つまり、香料が所望される製品において使用されてもよい。かかる香料適用物は、香水、エアケア製品(air care products)、家庭用品、洗濯用製品(laundry products)、ボディーケア製品および化粧品などの上質かつ機能的な香粧品のどの分野においても存在していてもよい。かかる製品の非限定例は、繊維処理用製品(textile treatment products)、アイロン用補助剤(ironing aids)、洗濯用洗剤(laundry detergents)、洗濯用ケア製品(laundry care products)、布用コンディショナー(fabric conditioners)、洗浄製品(cleaning products)(具体的には硬質および/または軟質表面用であり、家具および床を磨くための汎用洗浄剤(furniture and floor polishes general purpose cleaners)、キッチンおよびトイレに使用するための特定の洗浄剤など)、殺菌剤(disinfectants)、ルームフレグランサー(room fragrancers)およびエアフレッシュナー(air fresheners)、トイレブロック(toilet blocks)、ヘアケア製品(シャンプー、着色剤およびコンディショナーなど)、抗カビ製品および抗真菌製品、口腔ケア製品(練り歯磨き(toothpastes)、歯のゲル(tooth gels)およびマウスウォッシュ(mouthwashes)など)、化粧品および医薬品を包含する。
【0028】
皮膚感作が低減されるかまたはすっかり排除さえされる傾向にあるため、式Iで表される化合物は、短期間(洗浄用材料)または長期間(化粧品および医薬調製物)のいずれか、皮膚と接触するであろう香料適用物にとりわけ効果的である。
【0029】
香料適用物は、化合物を単独でまたは香料組成物の一部として、香料適用物のベース、つまり、香水とは別に所望の香料適用物のすべての成分を含む組成物中へ混合することによって調製されてもよい。これらは、香料適用物の性質に当然に依存するであろうが、当該技術分野に周知かつ使用される典型的な非限定例は、界面活性剤、洗剤(detersive agents)、研磨剤、溶媒、シンナーおよび希釈剤、顔料、染料および他の着色物質、増粘剤およびレオロジー調整剤、殺菌剤および抗菌性化合物、増量剤および充填剤を包含する。使用されてもよい割合は、各具体的な使用および状況に対し、当該技術分野に周知のものである。
【0030】
化合物は、特定の香料適用物に、および他のにおい物質成分の性質および量に応じて、広範に変動する量で採用され得る。その割合は、典型的には、適用物の0.1から10重量パーセントまでである。一態様において、本発明の化合物は、0.001から0.1重量パーセントの量で、布用ソフナー(a fabric softener)に採用されてもよい。別の態様において、本発明の化合物は、0.01から20重量パーセントまで(例えば、約10重量パーセントまで)、より好ましくは0.01と5重量パーセントとの間で、上質の香粧品に使用され得る。しかしながら、これらの値は、ほんの一例として与えられたものであり、なぜなら、経験豊かな香料製造者は、より低いかまたはより高い濃度によってもまた、効果を達成し得るか、または新規の調和物を創出し得るからである。
【0031】
式1で表される化合物はまた、それらを組み込む香料組成物の中で、封入形態でも付香製品中に組み込まれていてもよい。前記封入形態とは、つまり好適な封入材料内に封入されている。当該技術分野に周知の封入の典型的な例は、ポリマー、カプセル、マイクロカプセルおよびナノカプセル、リポソーム、フィルム形成剤、吸収剤(炭素またはゼオライトなど)、環状オリゴ糖およびそれらの混合物を包含するか、またはそれらは、光、酵素、または同種のものなどの外部刺激の適用の際、香料分子を放出するように適応された基材へ化学的に結合されていてもよい。
【0032】
本開示は、以下の非限定例、および具体的な態様を描く添付図面を参照してさらに記載される。
【0033】
例1:
(2E,1’R*,2’S*)−2−メチル−(2’,6’,6’−トリメチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)ブタ−2−エン−1−オン
反応フラスコ中、LDA溶液を、無水THF(50mL)中iPr
2NH(12.9mL、90mmol)の撹拌溶液への、ヘキサン(35.8mL、90mmol)中のnBuLiの2.5M溶液の滴加により、N
2雰囲気下−70℃にて調製した。この温度にて10min撹拌した後、冷却浴を除去し、反応混合物を室温まで45分間以内に加温させた。この温度にて、THF(244ml、122mmol)中の塩化1−メチル−2−プロペニルマグネシウムの0.5M溶液を、3hの時間にわたって撹拌しながら滴加し、その後、1h30minにわたる乾燥THF(150mL)中の(1R
*,2S
*)−メチル−2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エンカルボキシラート(15.0g、81.0mmol)の溶液の滴加が続いた。
【0034】
その結果得られた反応混合物を40℃まで加熱し、この温度にて18h撹拌を継続した。反応混合物を室温まで冷却させ、激しく撹拌しながら、氷冷した2M NaOH水溶液(250mL)中へ注ぎ入れた。45min撹拌した後、混合物をEt
2O(2×300mL)で抽出し、有機抽出物を水(2×250mL)およびブライン(1×200mL)で洗浄した。合わせた有機抽出物をNa
2SO
4上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。その結果得られた残渣のフラッシュクロマトグラフィー(600g シリカゲル、ペンタン−エーテル、39:1;R
f=0.41)によって、所望の(2E,1’R
*,2’S
*)−2−メチル−1−(2’,6’,6’−トリメチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)ブタ−2−エン−1−オン/(3Z,1R
*,2S
*)−1−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル)ペンタ−3−エン−1−オンの5:1混合物および黄色液体の出発原料(11.7g)が与えられた。
【0035】
(3Z,1R
*,2S
*)−1−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル)ペンタ−3−エン−1−オンの異性体は、匂いが非常に弱く、主生成物の(2E,1’R
*,2’S
*)−2−メチル−1−(2’,6’,6’−トリメチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)ブタ−2−エン−1−オンの特徴は変更しないと判明したので、出発原料のみを、クーゲルロール蒸留によって除去することで、(2E,1’R
*,2’S
*)−2−メチル−1−(2’,6’,6’−トリメチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)ブタ−2−エン−1−オン/(3Z,1R
*,2S
*)−1−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル)ペンタ−3−エン−1−オンの5:1混合物が、香りの良い無色液体として与えられた。
【0036】
主構成要素の(2E,1’R
*,2’S
*)−2−メチル−1−(2’,6’,6’−トリメチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)ブタ−2−エン−1−オンのスペクトルデータ:IR(純物質(neat)): 3018, 2956, 1656, 1640, 1458, 1367, 1273, 1233, 1078, 688 cm
-1.
1H NMR (CDCl
3):δ= 0.79/0.94 (2s, 6 H, -CMe
2-), 0.80 (d, J = 7.0 Hz, 3 H, CHCH
3), 1.71 (m
c, 1 H,-CMe
2-CHH-), 1.79 (quint, J = 1.0 Hz, 3 H, CO-CMe=CHMe), 1.85 (dq, J = 7.0, 1.0 Hz, 3 H, CO-CMe=CHMe), 1.99 (m
c, 1 H, -CMe
2-CHH-), 2.27 (m
c, 1 H, =CH-CHMe-CH(CMe
2)-CO), 2.94 (d, J = 10.5 Hz, 1 H, -CHMe-CH(CMe
2)-CO, trans), 5.47-5.55 (m, 2 H, -CH=CH-), 6.69 (q, J = 7.0 Hz, 1 H, -CMe=CHMe) ppm.
13C NMR (CDCl
3):δ= 11.2 (q), 14.9 (q), 20.0 (q), 20.6 (q), 29.9 (q), 31.9 (d), 33.3 (s), 42.1 (t), 54.7 (d), 124.0 (d), 132.5 (d), 136.3 (d), 141.7 (s), 205.8 (s) ppm. MS: m/z (%) = 29 (9), 41 (10), 55 (35), 83 (100), 123 (8), 191 (3), 206 (5) [M
+].
【0037】
においの記載:フルーティー−フローラルの、典型的なダマスコン、ドライフルーツ、甘い、プラム、ミルク様の、リンゴ。
【0038】
例2:
(2E,1’R*,2’R*)−2−メチル−1−(2’,6’,6’−トリメチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)ブタ−2−エン−1−オン
N
2雰囲気下−30℃にて、THF(15mL)中の(2E,1’R
*,2’R
*)−1−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル)ブタ−2−エン−1−オン(2.00g、10.4mmol)の溶液は、EP 1 162 190 A2に従う4−メチルペンタ−3−エン−2−オンおよび(3E)−ペンタ−1,3−ジエンのディールス・アルダー反応、続くWO 2010/080504 A1に従うアセトアルデヒドとのアルドール縮合によって調製したが、これを35minの時間にわたり、THF(15.6mL、15.6mmol)中LiHMDSの撹拌された1.0M溶液へ加えた。撹拌反応混合物を−30℃と−10℃と間に30min保持した後、純物質のMeI(0.975mL、15.6mmol)を、20minの間中、―20℃にて滴加した。−20℃にて10min撹拌した後、反応混合物を室温まで加温させ、混合物をこの温度にて18h撹拌した。
【0039】
反応混合物を、氷冷された飽和NH
4Cl溶液(80mL)中へ注ぎ入れ、次いでジエチルエーテル(2×100mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を水(1×100mL)およびブライン(1×50mL)で洗浄し、次いでNa
2SO
4上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(150g シリカゲル、ペンタン−エーテル、39:1;R
f=0.32)およびクーゲルロール蒸留による粗生成物の精製により、表題化合物の(2E,1’R
*,2’R
*)−2−メチル−1−(2’,6’,6’−トリメチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)ブタ−2−エン−1−オン(1.00g、40%)が無色結晶(mp:31.5〜33.5℃)として与えられた。
【0040】
IR(純物質): 3017, 2956, 2873, 1661, 1639, 1459, 1391, 1269, 1235 1067, 1014, 653 cm
-1.
1H NMR (CDCl
3):δ= 0.82/0.99 (2s, 6 H, -CMe
2-), 0.86 (d, J = 7.0 Hz, 3 H, CHCH
3), 1.57-1.71 (m, 1 H,-CMe
2-CHH-), 1.76 (s, 3 H, CO-CMe=CHMe), 1.86 (d, J = 7.0 Hz, 3 H, CO-CMe=CHMe), 2.06-2.29 (m, 1 H, -CMe
2-CHH-), 2.53 (m
c, 1 H, =CH-CHMe-CH(CMe
2)-CO), 3.28 (d, J = 6.5 Hz, 1 H, -CHMe-CH(CMe
2)-CO, cis), 5.32-5.48 (m, 1 H, -CH=CH-), 5.71 (ddt, J = 10.0, 5.0, 2.5 Hz, 1 H, -CH=CH-), 6.69 (q, J = 7.0 Hz, 1 H, -CMe=CHMe) ppm.
13C NMR (CDCl
3):δ= 11.0 (q), 14.9 (q), 17.7 (q), 28.7 (q), 29.1 (q), 30.7 (d), 32.4 (s), 36.0 (t), 50.8 (d), 125.7 (d), 128.9 (d), 135.8 (d), 142.0 (s), 205.1 (s) ppm. MS: m/z (%) = 29 (19), 41 (23), 55 (70), 83 (100), 123 (43), 137 (33), 151 (14), 163 (6), 177 (3), 191 (8), 206 (9) [M
+].
【0041】
においの記載:薄荷様の、田舎を想わせる、フルーティー−フローラルの、ダマスコン様の。
【0042】
例3:
(2E,6’R*,7’S*)−2−メチル−1−(7’−メチルスピロ[4.5]デカ−8’−エン−6’−イル)ブタ−2−エン−1−オンおよび(2E,6’R*,7’R*)−2−メチル−1−(7’−メチルスピロ[4.5]デカ−8’−エン−6’−イル)ブタ−2−エン−1−オン
N
2雰囲気下−70℃での反応フラスコ中、LDA溶液を、無水THF(15mL)中iPr
2NH(3.44mL、24.2mmol)の撹拌溶液へ、ヘキサン(9.70mL、24.2mmol)中のnBuLiの2.5M溶液を滴加することにより調製した。−70℃にて10min撹拌した後、冷却浴を除去し、反応混合物を室温まで30min以内に加温させた。次いで、室温にて、THF(66.1mL、33.1mmol)中の塩化1−メチル−2−プロペニルマグネシウムの0.5M溶液を、1hの時間にわたって滴加し、その後、WO 2008151455 A1に従って調製された、乾燥THF(45mL)中(6’R
*,7’S
*)−エチル7−メチルスピロ[4.5]デカ−8−エン−6−カルボキシラート(5.00g、22.0mmol)の溶液を1hの間中、滴加することが続いた。
【0043】
その結果得られた反応混合物を40℃まで加熱し、混合物をこの温度にて18h撹拌した。加熱源を除去し、反応混合物が室温に達した後、これを、氷冷された2M NaOH溶液(100mL)中へ注ぎ入れ、45min激しく撹拌した。生成物をジエチルエーテル(2×200mL)で抽出し、有機抽出物を水(2×100mL)およびブライン(1×150mL)で洗浄した。
【0044】
合わせた有機抽出物をNa
2SO
4上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮することで、粗製の表題化合物の混合物が提供され、次いでこれをフラッシュクロマトグラフィー(300g シリカゲル、ペンタン−エーテル、39:1;R
f=0.67(トランス)、R
f=0.48(シス))、続くクーゲルロール蒸留によって分離、精製することで、(2E,6’R
*,7’S
*)−2−メチル−1−(7’−メチルスピロ[4.5]デカ−8’−エン−6’−イル)ブタ−2−エン−1−オン(650mg、12%)が無色液体として、および(2E,6’R
*,7’R
*)−2−メチル−1−(7’−メチルスピロ[4.5]デカ−8’−エン−6’−イル)ブタ−2−エン−1−オン(900mg、17%)が無色結晶(mp:49.2〜52.0℃)として提供された。
【0045】
(2E,6’R
*,7’S
*)−2−メチル−1−(7’−メチルスピロ[4.5]デカ−8’−エン−6’−イル)ブタ−2−エン−1−オンの分光分析データ:IR(純物質): 3014, 2954, 1656, 1639, 1234, 1075, 688 cm
-1.
1H NMR (CDCl
3):δ= 0.82 (d, J = 7.0 Hz, 3 H, CH
3), 0.90-1.66 (m, 8 H, CH
2), 1.81 (quint, J = 1.0 Hz, 3 H, CO-CMe=CHMe), 1.88 (dq, J = 7.0, 1.0 Hz, 3 H, CO-CMe=CHMe), 1.89-2.07 (m, 2H, CH
2), 2.64 (m
c, 1 H, =CH-CHMe-CH-CO), 3.16 (d, J = 10.5 Hz, 1 H, -CHMe-CH-CO, trans), 5.49-5.59 (m, 2 H, -CH=CH-), 6.72 (qd, J = 7.0, 1.0 Hz, 1 H, -CMe=CHMe) ppm.
13C NMR (CDCl
3):δ= 11.2 (q), 15.0 (q), 20.0 (q), 23.7 (t), 24.5 (t), 29.6 (t), 33.2 (d), 38.8 (t), 39.7 (t), 45.3 (s), 52.8 (d), 124.3 (d), 133.6 (d), 136.7 (d), 141.7 (s), 206.1 (s) ppm. MS: m/z (%) = 29 (10), 41 (12), 55 (39), 83 (100), 134 (16), 149 (19), 164 (4), 217 (3), 232 (5) [M
+].
【0046】
(2E,6’R
*,7’S
*)−2−メチル−1−(7’−メチルスピロ[4.5]デカ−8’−エン−6’−イル)ブタ−2−エン−1−オンについてのにおいの記載:やや弱い、フルーティー−フローラルの、アプリコット、桃、僅かにダマスコン的側面。
【0047】
(2E,6’R
*,7’R
*)−2−メチル−1−(7’−メチルスピロ[4.5]デカ−8’−エン−6’−イル)ブタ−2−エン−1−オンの分光分析データ:IR(純物質): 3014, 2954, 1650, 1637, 1244, 1067, 657 cm
-1.
1H NMR (CDCl
3):δ= 0.87 (d, J = 7.5 Hz, 3 H, CH
3), 1.19-1.71 (m, 8 H, CH
2), 1.77 (quint, J = 1.0 Hz, 3 H, CO-CMe=CHMe), 1.78-1.84 (m, 1 H, CH
2), 1.87 (dq, J = 7.0, 1.0 Hz, 3 H, CO-CMe=CHMe), 2.18-2.25 (m, 1 H, CH
2), 2.54 (m
c, 1 H, =CH-CHMe-CH-CO), 3.32 (d, J = 6.5 Hz, 1 H, -CHMe-CH-CO, cis), 5.41-5.41 (m, 1 H, -CH=CH-) 5.69-5.73 (m, 1 H, -CH=CH-), 6.68 (qd, J = 7.0, 1.0 Hz, 1 H, -CMe=CHMe) ppm.
13C NMR (CDCl
3):δ= 11.1 (q), 14.9 (q), 17.9 (q), 23.4 (t), 24.2 (t), 31.6 (d), 33.9 (t), 38.5 (t), 39.1 (t), 44.3 (s), 50.7 (d), 126.0 (d), 129.8 (d), 135.7 (d), 142.1 (s), 204.8 (s) ppm. MS: m/z (%) = 29 (22), 41 (27), 55 (87), 83 (100), 134 (30), 149 (51), 164 (17), 217 (7), 232 (13) [M
+].
【0048】
(2E,6’R
*,7’R
*)−2−メチル−1−(7’−メチルスピロ[4.5]デカ−8’−エン−6’−イル)ブタ−2−エン−1−オンについてのにおいの記載:フレッシュなフルーティーの、薄荷様の、ダマセノン。
【0049】
例4:
異性体混合物としての(2E)−1−(2’,6’−ジメチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)−2−メチルブタ−2−エン−1−オン
オートクレーブ中、クロトン酸メチル(7.00g、68.5mmol)と(3E)−ペンタ−1,3−ジエン(9.33g、137mmol)との混合物を160℃まで加熱し、65h撹拌した。フラッシュクロマトグラフィー(500g シリカゲル、ペンタン−エーテル、39:1;R
f=0.24)による粗生成物の精製により、メチル2,6−ジメチルシクロヘキサ−3−エンカルボキシラート(4.20g、31%)が無色液体として与えられた。
【0050】
室温にてN
2雰囲気下、THF(89.0mL、44.6mmol)中の塩化1−メチル−2−プロペニルマグネシウム0.5M溶液を、撹拌されたTHF(16.4mL、32.7mmol)中2.0M LDA溶液へ1h30minの時間にわたって滴加した。その後、THF(50mL)中の上で調製された2,6−ジメチルシクロヘキサ−3−エンカルボキシラート(5.00g、29.7mmol)の溶液の、1hの間中の滴加が続いた。その結果得られた反応混合物を40℃まで加熱し、混合物をこの温度にて18h撹拌した。加熱源を除去し、反応混合物が室温に達した後、これを、氷冷された2M NaOH溶液(150mL)中へ注ぎ入れた。
【0051】
45min激しく撹拌した後、生成物をジエチルエーテル(2×100mL)で抽出し、有機抽出物を水(2×100mL)およびブライン(1×100mL)で洗浄した。合わせた有機抽出物をNa
2SO
4上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。その結果得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(200g シリカゲル、ペンタン−エーテル、39:1;R
f=0.27)およびクーゲルロール蒸留により精製して、表題化合物の(2E)−1−(2’,6’−ジメチルシクロヘキセ−3’−エン−1’−イル)−2−メチルブタ−2−エン−1−オン(2.00g、31%)が異性体の液体無色混合物として与えられた。
【0052】
IR(純物質): 3019, 2957, 1656, 1640, 1374, 1232, 1070, 684 cm
-1.
1H NMR (CDCl
3):δ= 0.74 (d, J = 6.5 Hz, 1 H, CH
3), 0.75 (d, J = 6.5 Hz, 2 H, CH
3), 0.81 (d, J = 7.0 Hz, 2.2 H, CH
3), 0.84 (d, J = 6.5 Hz, 0.8 H, CH
3), 1.61-1.65 (m, 0.2 H, シクロヘキサン環), 1.67-1.77 (m, 0.8 H, シクロヘキサン環), 1.77-1.80 (m, 1 H, CH
3), 1.82 (quint, J=1.0 Hz, 2 H, CH
3), 1.84-1.87 (m, 1 H, CH
3), 1.89 (dq, J = 7.0, 1.0 Hz, 2 H, CH
3), 1.91-1.99 (m, 0.6 H, シクロヘキサン環), 1.99-2.20 (m, 1.4 H, シクロヘキサン環), 2.36-2.44 (m, 0.3 H, シクロヘキサン環), 2.45-2.56 (m, 0.7 H, シクロヘキサン環), 2.72 (t, J=10.0 Hz, 0.6 H, シクロヘキサン環), 3.13-3.28 (m, 0.4 H, シクロヘキサン環), 5.49 (dq, J = 10.0, 2.0 Hz, 0.6 H, 環内-CH=CH-), 5.57-5.66 (m, 1.4 H, 環内-CH=CH-), 6.69-6.81 (m, 1 H, -CH=CH-) ppm.
【0053】
13C NMR (CDCl
3), 2種の主なジアステレオマー:δ= 11.0 (q), 14.8 (q), 15.0 (q), 17.1 (q), 19.7 (q), 20.1 (q), 24.5 (d), 32.8 (d), 32.9 (d), 33.9 (t), 34.3 (t), 35.3 (d), 50.3 (d), 53.5 (d), 125.0 (d), 125.2 (d), 131.9 (d), 132.9 (d), 136.2 (d), 137.5 (d), 138.8 (s), 141.4 (s), 203.1 (s), 207.2 (s) ppm. MS: m/z (%) = 29 (8), 39 (11), 55 (46), 83 (100), 93 (8), 108 (8), 109 (8), 135 (4), 137 (4), 177 (4), 192 (5) [M
+].
【0054】
においの記載:フルーティー−ローズ調の、薄荷様−田舎を想わせる、ダマスコン様の。
【0055】
例5:
異性体混合物としての(2E)−1−(6’−エチル−2’−メチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)−2−メチルブタ−2−エン−1−オン
オートクレーブ中、トランス−2−ペンテン酸メチル(6.00g、52.6mmol)と(3E)−ペンタ−1,3−ジエン(7.16g、105mmol)との混合物を撹拌しながら150℃まで48h加熱した。フラッシュクロマトグラフィー(500g シリカゲル、ペンタン−エーテル、39:1;R
f=0.31)による粗生成物の精製により、メチル6−エチル−2−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボキシラート(1.16g、12%)が無色液体として与えられた。
【0056】
室温にてN
2雰囲気下、THF(43.5mL、21.7mmol)中の塩化1−メチル−2−プロペニルマグネシウムの0.5M溶液を、撹拌されたTHF(7.97mL、15.93mmol)中2.0M LDA溶液へ1hの時間にわたって滴加した。次いで、THF(30mL)中の上で調製されたメチル6−エチル−2−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボキシラート(2.64g、14.48mmol)の溶液を1hの時間にわたって滴加した。その結果得られた反応混合物を撹拌しながら40℃まで18h加熱した。加熱源を除去し、反応混合物が室温に達した後、これを、氷冷された2M NaOH溶液(150mL)中へ注ぎ入れた。
【0057】
45min激しく撹拌した後、生成物をジエチルエーテル(2×100mL)で抽出し、有機抽出物を水(2×100mL)およびブライン(1×100mL)で洗浄した。合わせた有機抽出物をNa
2SO
4上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。その結果得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(280g シリカゲル、ペンタン−エーテル、39:1;R
f=0.35)およびクーゲルロール蒸留により精製して、表題化合物(2E)−1−(6’−エチル−2’−メチルシクロヘキサ−エン−3’−エン−1’−イル)−2−メチルブタ−2−エン−1−オン(480mg、15%)が液体の黄色がかった異性体混合物として与えられた。
【0058】
IR(純物質): 3018, 2961, 1656, 1640, 1374, 1231, 1067, 712, 685, 644 cm
-1.
1H NMR (CDCl
3):δ= 0.76 (d, J = 7.0 Hz, 1 H, CH
3), 0.78-0.85 (4 d, 5 H, CH
3), 0.86-1.12 (m, 2H, CH
2), 1.25 (ddd, J = 13.0, 7.5, 3.5 Hz, 0.6 H, シクロヘキサン環), 1.42-1.57 (m, 0.4 H, シクロヘキサン環), 1.60-1.75 (m, 1 H, シクロヘキサン環), 1.78-1.80 (m, 1 H, CH
3), 1.81-1.84 (m, 2 H, CH
3), 1.86 (dq, J = 7.0, 1.0 Hz, 1 H, CH
3), 1.87-1.92 (m, 2 H, CH
3), 2.18-2.58 (一連のm, 2 H,シクロヘキサン環), 2.80 (t, J = 10.0 Hz, 0.6 H, シクロヘキサン環), 3.14-3.25 (m, 0.5 H, シクロヘキサン環), 3.30 (dd, J = 11.0, 5.5 Hz, 0.3 H, シクロヘキサン環), 5.49 (dq, J = 10.0, 2.0 Hz, 0.6 H, 環内-CH=CH-), 5.58-5.72 (m, 1.4 H, 環内-CH=CH), 6.68-6.84 (m, 1 H, -CH=CH-) ppm.
【0059】
13C NMR (CDCl
3), 2種の主なジアステレオマー:δ= 10.6 (q), 11.0 (q), 11.1 (q), 11.2 (q), 14.8 (q), 15.0 (q), 17.2 (q), 20.1 (q), 26.5 (t), 27.1 (t), 30.1 (t), 30.5 (d), 30.6 (t), 32.7 (d), 35.5 (d), 39.1 (d), 48.2 (d), 52.5 (d), 124.9 (d), 125.1 (d), 131.8 (d), 132.9 (d), 136.0 (d), 137.6 (d), 138.8 (s), 141.4 (s), 203.3 (s), 207.6 (s) ppm. MS: m/z (%) = 29 (9), 41 (8), 55 (39), 83 (100), 93 (9), 122 (6), 137 (4), 177 (1), 192 (2), 206 (2, [M
+]).
【0060】
においの記載:フルーティー−フローラルの、リンゴ、僅かに芳香性の、Damascone alpha(商標)の方向(in direction of)。
【0061】
例6:
異性体混合物としての(2E,1’R*,2’S*,6’S*)−2−メチル−1−(1’,2’,6’−トリメチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)ブタ−2−エン−1−オン
オートクレーブ中、チグリン酸エチル(7.00g、53.5mmol)と(3E)−ペンタ−1,3−ジエン(8.02g、118mmol)との混合物を撹拌しながら170℃まで72h加熱した。フラッシュクロマトグラフィー(600g シリカゲル、ペンタン−エーテル、39:1;R
f=0.33)による粗生成物の精製により、エチル1,2,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エンカルボキシラート(1.6g、15%)が無色液体として与えられた。
【0062】
−70℃にてN
2雰囲気下での反応フラスコ中、LDA溶液を、無水THF(10mL)中のiPr
2NH(2.34mL、16.6mmol)の撹拌溶液へ、ヘキサン(6.66mL、16.6mmol)中nBuLiの2.5M溶液を滴加することにより調製した。−70℃にて10min撹拌した後、冷却浴を除去し、反応混合物を30min以内に室温まで加温させた。次いで室温にて、THF(45.4mL、22.70mmol)中の塩化1−メチル−2−プロペニルマグネシウムの0.5M溶液を、2hの時間にわたって撹拌しながら滴加し、その後、45minの間中乾燥THF(20mL)中のエチル1,2,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エンカルボキシラート(3.00g、15.1mmol)の溶液の滴加が続いた。
【0063】
その結果得られた反応混合物を撹拌しながら40℃まで18h加熱した。加熱源を除去し、反応混合物が室温に達した後、これを氷冷された2M NaOH溶液(100mL)中へ注ぎ入れた。45min激しく撹拌した後、生成物をジエチルエーテル(2×150mL)で抽出し、有機抽出物を水(2×150mL)およびブライン(1×100mL)で洗浄した。合わせた有機抽出物をNa
2SO
4上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。その結果得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(300g シリカゲル、ペンタン−エーテル、39:1;R
f=0.35)およびクーゲルロール蒸留による精製によって、(2E,1’R
*,2’S
*,6’S
*)−立体配置された表題化合物の2−メチル−1−(1’,2’,6’−トリメチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)ブタ−2−エン−1−オンが液体無色異性体混合物(130mg、4%)の主構成要素(60%)として与えられた。
【0064】
IR(純物質): 3020, 2962, 2931, 1702, 1659, 1451, 1374, 1249, 1035, 1007, 979, 713, 605, 541 cm
-1.
1H NMR (C
6D
6), 主要な構成要素:δ= 0.88 (d, J = 6.5 Hz, 3 H, CH
3), 0.95 (d, J = 7.0 Hz, 3 H, CH
3), 1.11 (s, 3 H, CH
3), 1.40 (dq, J = 7.0, 1.0 Hz, 3 H, CH
3), 1.54 (dd, J = 19.5, 11.0 Hz, 1 H, CH
aH
b), 1.70 (quint, J = 1.0 Hz, 3 H, CH
3), 1.93 (ddd, J = 19.5, 6.0, 3.0 Hz, 1 H, CH
aH
b), 2.17 (qt, J = 7.0, 3.0 Hz, 1 H, CH-CH
3), 2.56 (dquint, J = 11.0, 6.5, 6.5, 6.5, 6.5 Hz, 1 H, CH
2-CH-CH
3), 5.50-5.52 (m, 2 H, 2×=CH-CH
2), 5.85 (qq, J = 7.0, 1.5 Hz, 1 H, =CH-CH
3) ppm.
13C NMR (C
6D
6), 主要な構成要素:δ= 13.4 (q), 13.7 (q), 17.3 (2q), 18.8 (q), 27.3 (d), 31.9 (t), 40.4 (s), 52.2 (s), 125.0 (d), 127.1 (d), 130.5 (d), 139.3 (s), 208.2 (s). MS: m/z (%) = 29 (10), 41 (13), 55 (45), 83 (100), 91 (13), 107 (20), 122 (21), 123 (69), 139 (4), 151 (3), 177 (1), 191 (2), 206 (6, [M
+]).
【0065】
においの記載:赤色果実(red fruits)、ラズベリー、グリーン調−フルーティーの、ピーマンのニュアンス(a bell pepper nuance)とルーティーな面とをもつ。
【0066】
例7:
(2E,1’R*,2’S*)−2−メチル−1−(2’−メチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)ブタ−2−エン−1−オン
室温にて、トルエン(100mL)中のアクリル酸エチル(80.0g、799mmol)の溶液を、三塩化アルミニウム(15.98g、120mmol)およびトルエン(150mL)の撹拌懸濁液へ滴加した。添加後、反応混合物を室温にて20min撹拌し、その後トルエン(100mL)中の(3E)−ペンタ−1,3−ジエン(82.0g、1199mmol)の溶液の滴加が続いた。この温度を、水浴中に浸漬することにより25℃と36℃との間に維持し、次いで撹拌を室温にてさらに24h継続した。
【0067】
反応混合物を氷冷された2M HCl溶液(200mL)中へ注ぎ入れ、生成物をヘキサン(2×200mL)で抽出した。有機抽出物を水(1×200mL)およびブライン(1×200mL)で洗浄し、有機物を合わせ、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。その結果得られた残渣を薄膜蒸留(120℃/0.20mbar)によって精製し、その後高真空下のSulzerカラムを採用する蒸留が続き、(1R
*、2S
*)−エチル2−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボキシラート(46.1g、34%)が無色液体として与えられた。
【0068】
−70℃にてN
2雰囲気下、LDA溶液を、無水THF(15mL)中のiPr
2NH(4.5mL、31.7mmol)の撹拌溶液へ、ヘキサン(12.7mL、31.7mmol)中のnBuLiの2.5M溶液を滴加することにより調製した。−70℃にて10min撹拌した後、冷却浴を除去し、反応混合物を室温まで30minの時間にわたって加温させた。次いで室温にて、THF(86.0mL、43.2mmol)中の塩化1−メチル−2−プロペニルマグネシウムの0.5M溶液を、2hの時間をかけて滴加し、その後1hの間中、上で調製されたとおりの、乾燥THF(45mL)中の(1R
*、2S
*)−エチル2−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボキシラート(5.00g、28.8mmol)の溶液)の滴加が続いた。その結果得られた反応混合物を40℃まで加熱し、この温度にて18h撹拌した。
【0069】
加熱源を除去し、反応混合物を、これが室温に達した後、氷冷された2M NaOH溶液(100mL)中へ注ぎ入れた。45min激しく撹拌した後、生成物をジエチルエーテル(2×200mL)で抽出し、有機抽出物を水(2×200mL)およびブライン(1×150mL)で洗浄した。合わせた有機抽出物をNa
2SO
4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。その結果得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(300g シリカゲル、ペンタン−エーテル、39:1;R
f=0.19)およびクーゲルロール蒸留による精製によって、表題化合物(2E,1’R
*,2’S
*)−2−メチル−(2’−メチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)ブタ−2−エン−1−オン(1.00g、17%)が無色液体として与えられた。
【0070】
IR(純物質): 3018, 2961, 2912, 2837, 1661, 1643, 1434, 1393, 1371, 1298, 1273, 1242, 1095, 1060, 987, 868, 811, 730, 705, 636 cm
-1.
1H NMR (CDCl
3):δ= 0.73 (d, J = 7.0 Hz, 3 H, CH
3), 1.56-1.65 (m, 1 H, CH
aH
b), 1.74-1.84 (m, 1 H, CH
aH
b), 1.79 (quint, J = 1.0 Hz, 3 H, CH
3), 1.87 (dq, J = 7.0, 1.0 Hz, 3 H, CH
3), 1.93-2.14 (m, 2 H, =CH-CH
2-CH
2), 2.48- 2.56 (m, 1 H, CH-CH-C=O), 3.35 (ddd, J = 12.0, 5.5, 3.0 Hz, 1 H, CH-CH-C=O), 5.60-5.69 (m, 2 H, 2×=CH-CH
2), 6.72 (qq, J = 7.0, 2.5 Hz, 1 H, =CH-CH
3) ppm.
13C NMR (CDCl
3):δ= 11.2 (q), 14.8 (q), 16.2 (q), 19.1 (t), 25.1 (t), 33.1 (d), 44.2 (d), 126.2 (d), 132.1 (d), 136.3 (d), 137.7 (s), 204.3 (s) ppm. MS: m/z (%) = 29 (15), 39 (20), 55 (75), 67 (13), 79 (16), 83 (100), 95 (14), 110 (8), 111 (9), 123 (13), 137 (5), 145 (2), 149 (3), 163 (16), 178 (5, [M
+]).
【0071】
においの記載:田舎を想わせる、沈んだ(dark)フルーティーの、ベリー、プラム、Cyprisate(メチル1,4−ジメチルシクロヘキサンカルボキシラート)。
【0072】
例8:
(2E,1’R*,2’R*)−2−メチル−1−(2’−メチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)ブタ−2−エン−1−オン
室温にて、反応フラスコに、エタノール(200mL)およびナトリウム(2.49g、108mmol)を入れ、その結果得られた混合物を、全ナトリウムが完全に溶解するまで加熱還流した。次いで、例7に従いアクリル酸エチルと(3E)−ペンタ−1,3−ジエンとのディールス・アルダー反応により調製された(1R
*,2S
*)−エチル2−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボキシラート(91.0g、541mmol)を撹拌しながら加えた。反応混合物を還流にて15h撹拌した後、ナトリウム(1.24g、53.9mmol)のもう1つの分量を加え、還流をさらに3h継続した。反応混合物を室温まで冷却させ、溶媒をロータリーエバポレーターで蒸発させた。その結果得られた残渣を2−メトキシ−2−メチルプロパン中に溶かし、水(1×150mL)およびブライン(1×150mL)で洗浄し、次いでMgSO
4上で乾燥させた。ろ過し、減圧下で溶媒を除去した後、真空下での蒸留による粗製材料の精製により、(1R
*、2R
*)−エチル2−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボキシラート(26.8g、29%)が無色液体として与えられた。
【0073】
−70℃にてN
2雰囲気下での反応フラスコ中、LDA溶液を、ヘキサン(12.68mL、31.7mmol)中のnBuLiの2.5M溶液を、無水THF(15mL)中のiPr
2NH(4.5mL、31.7mmol)の撹拌溶液へ滴加することによって調製した。−70℃にて10min撹拌した後、冷却浴を除去し、反応混合物を室温まで30min以内に加温させた。次いで、室温にて、THF(86.0mL、43.2mmol)中の塩化1−メチル−2−プロペニルマグネシウムの0.5M溶液を、1hの時間にわたって滴加し、その後、上で調製されたとおりの乾燥THF(45mL)中の(1R
*、2R
*−エチル2−メチルシクロヘキサ−3−エンカルボキシラート(5.00g、28.8mmol)の溶液の2hの間中の滴加が続いた。その結果得られた混合物を40℃まで加熱し、混合物をこの温度にて18h撹拌した。
【0074】
加熱源を除去し、反応混合物が室温に達した後、これを、氷冷された2M NaOH溶液(100mL)中へ注ぎ入れ、45min激しく撹拌した。生成物をジエチルエーテル(2×200mL)で抽出し、有機抽出物を水(2×200mL)およびブライン(1×150mL)で洗浄した。合わせた有機抽出物をNa
2SO
4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(300g シリカゲル、ペンタン−エーテル、39:1;R
f=0.48)およびクーゲルロール蒸留による精製によって、表題化合物(2E,1’R
*、2’R
*)−2−メチル−1−(2’−メチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)ブタ−2−エン−1−オン(1.60g、30%)が無色液体として与えられた。
【0075】
IR(純物質): 2955, 2928, 1659, 1640, 1453, 1396, 1285, 1236, 1098, 680 cm
-1.
1H NMR (CDCl
3):δ= 0.85 (d, J = 7.0 Hz, 3 H, CH
3), 1.51-1.63 (m, 1 H, CH
aH
b), 1.71-1.78 (m, 1 H, CH
aH
b), 1.81 (quint, J = 1.0 Hz, 3 H, CH
3), 1.88 (dq, J = 7.0, 1.0 Hz, 3 H, CH
3), 2.04-2.13 (m, 2 H, =CH-CH
2-CH
2), 2.53-2.68 (m, 1 H, =CH-CH-CH
3), 2.91 (ddd, J = 12.0, 9.5, 2.5 Hz, 1 H, CH-CH-CH
2-), 5.54 (dq, J = 10.0, 2.0 Hz, 1 H, =CH-CH), 5.61-5.69 (m, 1 H, =CH-CH
2), 6.73-6.83 (m, 1 H, CH
3-CH=).
13C NMR (CDCl
3):δ= 11.2 (q), 14.8 (q), 20.1 (q), 25.1 (t), 27.4 (t), 32.5 (d), 47.5 (d), 125.0 (d), 133.2 (d), 136.7 (d), 138.5 (s), 205.2 (s). MS: m/z (%) = 29 (11), 39 (14), 55 (53), 83 (100), 95 (8), 110 (2), 163 (5), 178 (4) [M
+].
【0076】
においの記載:田舎を想わせる、ダークフルーティーの、ベリー、プラム、Cyprisate(メチル1,4−ジメチルシクロヘキサンカルボキシラート)。
【0077】
例9:
香水の例
一連の香水を、以下の配合に従い調製した。数字は重量部を表す。
まず、ベースの香水を、以下の配合に従い調製した。
【0079】
このベースの香水へ、以下の成分を加えることで、A、B、C、DおよびEとラベル付けされた5種の香水組成物が提供された。5種の香水の合計重量部は1000であった。
【表2】
【0080】
香水を、訓練された香料製造者らが査定し、以下のように特徴付けした:
香水A−フルーティーの、ローズ調の特徴
香水B−香水Aと類似するが、フレッシュな薄荷の寄与分がわずかに、より少ない
香水C−フレッシュさにおいて香水Aと類似するが、フルーティーであり田舎を想わせるツイスト(twist)
香水D−香水Aと類似するが、特に乾燥した皮膚に対して顕著な、長引くローズ調の効果をもつ
香水E−香水Aと類似するが、より強く、より丸みのある、よりバランスの良い、および全体的により心地良いにおいを保有する。これは、皮膚感作が欠くことから、Damascone(商標)化合物より大幅に多くの例1の化合物(この例では10倍)を使用することが可能であるからである。この量は、IFRA(International Fragrance Association)のガイドラインで提案されている最大の割合をはるかに超えている。皮膚感作を欠くことは、後述する例12および13において実証されている。
【0081】
例10:
布用コンディショナーにおける香水の例
ベースの香水を、以下の配合に従って調製した(数字は重量部を表す):
【表3】
ベースの香水は、布用コンディショナーにおける使用のために特別に配合された、フレッシュで、水っぽく、フローラルな、ムスク調の調和物である。
【0082】
このベースの香水へ、以下の成分を加えることで、香水G、HおよびIを作った。(香水Fは、それぞれの重量割合を等しくするためにDPGの添加のみを伴うベースの香水である。)
【表4】
【0083】
これらの香水を、数字が重量部を表す以下の配合の布用コンディショナーへ1%(wt)にて添加した。
【表5】
【0084】
1. DEHYQUART(商標) AU 57 ex BASF
2. 2−ブロモ−2−ニトロプロパン(BRONIDOX(商標)L ex Cognis)
3. ベンズイソチアゾリノン(PROXEL(商標)GXL ex Lonza)
4. エトキシル化C12〜15アルコール(NEODOL(商標)25-7 ex Shell)
これを、以下のとおり、3本のタオルを1回で洗浄するために使用した:
機械:Miele Navitronic W3985
洗浄サイクル時間:16分間
水温:室温(room)
スピン乾燥:1200rpm
加えられた布用コンディショナー:35g
【0085】
タオルを、訓練された香料製造者らが査定し、結果は以下のとおりであった:
香水F−フレッシュな、水っぽい、フローラルの、ムスク調の
香水G−香水Fの質に加えて、さらなる透明な、フルーティーの、ローズ調のツイスト、健啖家に調理されたリンゴのアンダートーンとの(with an undertone on grourmand cooked apple)、より明白な女性的な調和物を与える
香水H−香水Fの質に加えて、フレッシュな、薄荷様および天然の田舎を想わせる面
香水I−香水Fの質に加えて、特に乾燥した生地に対し顕著であるが、心地良いフルーティーの、ローズ調の特徴。
【0086】
例11:
非感作のDamascone(商標)タイプの香粧品成分のための前駆体の調製および適用
(2E,1’R
*,2’S
*)−2−メチル−(2’,6’,6’−トリメチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)ブタ−2−エン−1−オン(例1参照、1.00g,4.85mmol)およびドデカン−1−チオール(930mg、4.59mmol)をTHF(10mL)に溶解し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(740mg、4.86mmol)を加えた。その結果得られた溶液を室温にて22h撹拌し、次いで氷冷された2M HCl水溶液(40ml)中へ注ぎ入れた。生成物をメチルt−ブチルエーテル(2×50mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSO
4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。その結果得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(90g シリカゲル、ヘキサン/メチルt−ブチルエーテル、100:1)により精製することで、ジアステレオマーの混合物としての無色油(750mg、38%)として生成物が得られた。
【0087】
ジアステレオマー11.1〜11.5のMS(GCによる面積%):ジアステレオマー9.1 (33%): m/z (%) = 29 (22), 41 (29), 55 (51), 83 (100), 132 (30), 229 (42), 257 (27), 285 (6), 408 (<1, M
+);ジアステレオマー11.2 (27%): m/z (%) = 29 (10), 41 (20), 55 (34), 83 (100), 123 (16), 229 (24), 257 (14), 285 (3), 408 (<1, M
+);ジアステレオマー11.3 (11%): m/z (%) = 29 (18), 41 (32), 55 (51), 83 (100), 123 (29), 229 (48), 257 (24), 285 (5), 408 (<1, M
+);ジアステレオマー11.4 (11%): m/z (%) = 29 (14), 41 (29), 55 (33), 69 (18), 83 (100), 123 (16), 206 (7), 243 (30), 257 (4), 408 (<1, M
+);ジアステレオマー11.5 (8%):m/z (%) = 29 (14), 43 (32), 55 (55), 69 (18), 83 (100), 123 (34), 229 (56), 257 (32), 285 (8), 408 (<1, M
+).
【0088】
非感作のDamascone(商標)様香料成分の長期持続放出特性を実証するために、2種の布用コンディショナーサンプルAおよびBを以下のように調製した:
例10に記載されるとおり付香されていない布用コンディショナーのベース(15.9g)へ、ジプロピレングリコール(144mg)と、(2E,1’R
*,2’S
*)−2−メチル−(2’,6’,6’−トリメチルシクロヘキサ−3’−エン−1’−イル)ブタ−2−エン−1−オン(例1参照、16.0mg、サンプルA)または上で調製されたとおりの前駆体(16.0mg、サンプルB)のいずれかとの混合物を加えた。
【0089】
洗浄サイクルのために、付香されていない粉末洗剤(35.0g)を、およびリンスサイクルのために、上に記載された布用コンディショナーサンプルAおよびBを使用して、欧州仕様のフロントローディング方式洗浄器中の、1回1kgのパイル地綿タオルに対し、標準的な2回の洗浄/すすぎサイクルを同時に実行した。
【0090】
タオルのにおいの強度を、濡れている段階にて、および4日後に(1日目は線状に乾燥し、次いで折り畳み、室温にて外気中に放置)、0(においなし)〜5(とても強い)のスケールで、6名の専門の査定人のパネルが判断した。結果を以下の表中に要約する。
【0092】
結果は、濡れている段階にて、におい物質フリーが、わずかにより高いにおいの強度をタオルへ添えたが、その差は有意ではなかったことを示している。4日後、前駆体含有布用コンディショナーサンプルですすいだタオルは、有意により高い強度スコアを有していた。においの質を、フルーティーの、フローラルの、Damascone(商標)様として記載した。
【0093】
化合物の低減した感作の実証
化合物を、皮膚感作のための商用のKeratinoSens(商標)アッセイを使用して試験した。例1の化合物(「例1」)を、Damascone delta(商標)と比較した。
図1は、Damascone delta(商標)および例1の遺伝子誘導および細胞生存率の曲線を示し、図中、黒いひし形は、ルシフェラーゼ活性の誘導を、中空の四角は、細胞の生存率を示す。
【0094】
例1は、1.5倍の閾値を上回るルシフェラーゼ活性を誘導しなかった。よってこのアッセイによって非感作として評価する。他方、Damascone delta(商標)は、明らかにルシフェラーゼ遺伝子を4マイクロモーラーにて既に誘導しており、このことは、それが有意に感作する化合物であること、および最大の遺伝子誘導が対照に対して8.7倍に達することを示している。これらの結果は、例1が、消費者への感作リスク低減のために香水配合物中に使用され得ることを示す。表1は、Damascone delta(商標)と比較した、本開示に従う他の化合物の結果を示す。例6を除いて、本発明の化合物のいずれも、非細胞毒性濃度にて1.5倍の閾値を上回って遺伝子を誘導しなかった一方で、最大遺伝子誘導は、Damascone delta(商標)の8.7であった。最低限の遺伝子誘導(125μMのみにて1.67倍)が、例6に認められた。これは、本発明の全化合物が、Damascone delta(商標)と比較して、強力に低減された感作潜在性を有することを示している。
【0096】
例13:
皮膚感作に対するペプチド反応性アッセイにおいて試験された化合物
化学物質のアレルゲン性の潜在性を決定する第2の方法は、DPRA直接(direct)ペプチドアッセイである(OECD TG 442c)。それは、アレルゲン性の化学物質が、免疫原性であるために、ペプチド/タンパク質と反応するに違いないという事実に基づく。
【0097】
ペプチド反応性アッセイ(A. Natsch, H. Gfeller, Toxicol. Sci. 2008, 106, 464-478)を、DPRAアッセイと類似して行った:テスト化学物質を、アセトニトリル中、4mMの最終濃度まで溶解し、250μlのこの溶液を2ml HPLCバイアルへ加えた。配列Ac−NKKCDLFをもつテストペプチドCor1C-420(Genscript Inc.、Piscataway、NJ、USA)を、pH7.5での20mM リン酸緩衝液中、0.133mMにて溶解し、750μlのこの溶液を各テストバイアルへ加えた(最終濃度:25% アセトニトリル中、1mMのテスト化学物質および0.1mMのペプチド;DPRAアッセイなどで比率1:10)。
【0098】
サンプルを、37℃にて1〜24hインキュベートし、規則的な間隔で、それらを、ESI(+)モードで操作されるVELOS PRO質量分析計(Thermo SCIENTIFIC、San Jose、CA、U.S.A.)上でLC−MS分析によって分析した。キャピラリーの温度を275℃にて保持した。質量スペクトルを、200〜2000amuで記録した。ZORBAX Eclipse XDB-C18カラム、2.1mm ID、150mm、5ミクロン(Agilent Technologies)を使用した。移動相は、H
2O(A)およびメタノール(B)からなり、各々0.1% ギ酸(v/v)を含有していた。溶媒の流量は250μl/分であり、以下の勾配(比率A:B)を使用した:0min、95:5;2min、40:60;10min、2:98;12min、2:98。積分は、Xcalibur Quan Browser(商標)により実施した。
【0099】
2つのエンドポイントを、このアッセイにより測定した:
a)親ペプチドの減少。プロトン化された親ペプチドの質量を測定し、対応するピークを積分する(%減少;
図2)。親ペプチドの減少は、反応性を示すものであり、OECDガイドライン442cにおいてエンドポイントとして記載されている。
b)修飾されたペプチドの形成。テストペプチドへ加えられたテスト化学物質の質量とともに、新しい付加体に特異的なイオントレースを抽出し、ペプチド付加体のピークを積分する(
図3)。ペプチド付加体形成は、化合物の反応性、よってアレルゲン性という性質を決定するための具体的な感作のエンドポイントである。
【0100】
図2(ペプチド減少)および
図3(対数スケール上の付加体形成)は、2種の商用のダマスコンのペプチド反応性を例1の化合物(「例1」)と比較する。1h後、例1は、Damascone delta(商標)と比較して、より3200倍低いレベルのペプチド付加体を生成し、24hにわたる実験で有意なペプチド減少は認められず、このことは、例1について、反応性(ひいてはアレルゲン性)の劇的かつ予期せぬ低減を示す。