(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952122
(24)【登録日】2021年9月29日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】重質アルキル芳香族およびアルキル架橋非縮合アルキル芳香族化合物からの軽質アルキルモノ芳香族化合物の回収プロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 4/24 20060101AFI20211011BHJP
C07C 15/02 20060101ALI20211011BHJP
B01J 29/16 20060101ALI20211011BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20211011BHJP
【FI】
C07C4/24
C07C15/02
B01J29/16 M
!C07B61/00 300
【請求項の数】29
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-543987(P2019-543987)
(86)(22)【出願日】2018年2月16日
(65)【公表番号】特表2020-508987(P2020-508987A)
(43)【公表日】2020年3月26日
(86)【国際出願番号】US2018018471
(87)【国際公開番号】WO2018152389
(87)【国際公開日】20180823
【審査請求日】2019年9月25日
(31)【優先権主張番号】15/435,039
(32)【優先日】2017年2月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】ビードル,ブルース,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ラマセシャン,ヴィノッド
(72)【発明者】
【氏名】ビラウス,ラ−カン,スレイマン
(72)【発明者】
【氏名】コセオグル,オメール,アール.
(72)【発明者】
【氏名】ホジキンス,ロバート,ピー.
【審査官】
中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−532753(JP,A)
【文献】
特開2010−235456(JP,A)
【文献】
特表2009−545548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 4/、15/
B01J 29/
C07B 61/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルモノ芳香族化合物の回収プロセスであって、前記プロセスが
1つまたは複数の重質アルキル芳香族化合物およびアルキル架橋非縮合アルキル多芳香族化合物を含有するキシレン再蒸留塔底部生成物からの供給流を反応器に供給する工程と、
前記反応器に水素流を供給する工程と、
1つまたは複数のアルキルモノ芳香族化合物を含有する生成物流を生成するために、前記供給流と前記水素流とを特定のヒドロ脱アリール化反応条件下、ヒドロ脱アリール化触媒の存在下で反応させることを可能にする工程と、
下流プロセスのために前記生成物流を前記反応器から回収する工程と
を含み、
前記アルキル架橋非縮合アルキル多芳香族化合物は、少なくとも2個の炭素を有するアルキル架橋基によって結合された少なくとも2個のベンゼン環を含み、前記ベンゼン環は前記アルキル架橋基の異なる炭素に結合している、プロセス。
【請求項2】
前記供給流が溶媒によって希釈されていない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記水素流を、前記反応器に供給する前に前記供給流と合流させる、請求項1または2のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項4】
前記水素流が再循環水素流および補給水素流で構成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記水素流が少なくとも70重量%の水素を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記触媒が前記反応器中の触媒床として存在する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記触媒床を急冷するために前記水素流の一部が前記反応器内の前記触媒床に供給される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記触媒床が2つ以上の触媒床で構成される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項9】
前記触媒が、シリカ、アルミナ、およびそれらの組み合わせからなる群の少なくとも1つの構成要素である担体を含み、さらに、非晶質シリカ−アルミナ、ゼオライト、およびそれらの組み合わせからなる群の少なくとも1つの構成要素である酸性成分を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記触媒が、IUPAC第8〜10族金属から選択される金属、ならびにそれらの組み合わせを含み、さらに、IUPAC第6族金属から選択される金属、ならびにそれらの組み合わせを含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記IUPAC第8〜10族金属から選択される金属、ならびにそれらの組み合わせが前記触媒の2〜20重量%であり、前記IUPAC第6族金属から選択される金属、ならびにそれらの組み合わせが前記触媒の1〜25重量%である、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記触媒が、ニッケル、モリブデン、超安定Y型ゼオライト、およびγ−アルミナ担体から構成される、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
特定の反応条件が、200〜450℃の範囲内にある前記反応器の動作温度を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記反応器の動作温度が300℃である、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記反応器の動作温度が350℃である、請求項13に記載のプロセス。
【請求項16】
特定の反応条件が5〜50バールゲージの範囲内にある前記反応器の水素分圧を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記反応器の水素分圧が20バールゲージ未満である、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
特定の反応条件が、供給原料1バレル当たり500〜5000標準立方フィートの範囲内である水素流の供給速度を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記下流プロセスがパラ−キシレン回収プロセスである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
未反応アルキル架橋非縮合アルキル多芳香族化合物を含有する再循環炭化水素流を前記反応器に供給する工程
をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記反応器に供給する合流供給流を形成するために、前記再循環炭化水素流を前記供給流と合流させる、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記反応器に供給する第2の合流流を形成するために、前記水素流を前記合流供給流と合流させる、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記生成物をより軽質の炭化水素流とより重質の炭化水素流とに分離するために、前記生成物流を分離ゾーンに供給する工程
をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
再循環水素流を提供するために、前記より軽質の炭化水素流を処理する、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記反応器に供給するための前記水素流を提供するために、前記再循環水素流を補給水素流と合流させる、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記下流プロセスが
第1の軽質流および第1の重質流を提供するために前記生成物流を第1の分離器に供給する工程と、
第2の軽質流と第2の重質流とを供給するために前記第1の軽質流を第2の分離器に供給する工程と
をさらに含み、
より重質の炭化水素流を形成するために前記第1の重質流と前記第2の重質流とを合流させる、
請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項27】
前記下流プロセスは、
前記より重質の炭化水素流を、2つ以上の流れに分画するための分画ゾーンに供給する工程
をさらに含む、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記下流プロセスは
前記より重質の炭化水素流を、第1の軽質分画流と第1の重質分画流とに分画するための第1の精留塔に供給する工程であって、前記第1の軽質分画流の少なくとも一部はキシレン処理ユニットに供給される、工程と、
前記第1の重質分画流を、第2の軽質分画流と第2の重質分画流とに分画するための第2の精留塔に供給する工程であって、前記第2の軽質分画流はキシレン処理ユニットに供給され、前記第2の重質分画流の少なくとも一部は前記反応器に再循環する、工程と
をさらに含む、請求項26に記載のプロセス。
【請求項29】
アルキルモノ芳香族化合物の回収プロセスであって、前記プロセスが
1つまたは複数の重質アルキル芳香族化合物およびアルキル架橋非縮合アルキル多芳香族化合物を含有するキシレン再蒸留塔底部生成物からの供給流を反応器に供給する工程と、
前記反応器に水素流を供給する工程と、
1つまたは複数のアルキルモノ芳香族化合物を含有する生成物流を生成するために、前記供給流と前記水素流とを、前記反応器の動作温度が350〜400℃の範囲内にある、特定のヒドロ脱アリール化反応条件下、ヒドロ脱アリール化触媒の存在下で反応させることを可能にする工程と、
下流プロセスのために、85重量%を超えるモノ芳香族化合物を含む前記生成物流を前記反応器から回収する工程と
を含み、
前記アルキル架橋非縮合アルキル多芳香族化合物は、少なくとも2個の炭素を有するアルキル架橋基によって結合された少なくとも2個のベンゼン環を含み、前記ベンゼン環は前記アルキル架橋基の異なる炭素に結合している、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化水素精製プロセス中に、アルキル架橋非縮合アルキル化多芳香族化合物および重質アルキル芳香族化合物を含有する流れから軽質アルキル化モノ芳香族化合物を回収することに関する。
【背景技術】
【0002】
アロマティクス・コンプレックスでは、様々なプロセスユニットを使用して、ナフサまたは熱分解ガソリンをベンゼン、トルエンおよび混合キシレンに変換する。これらは様々な他の化学製品の製造に使用される基本的な石油化学中間体である。ベンゼン、トルエンおよび混合キシレンの生成を最大にするために、アロマティクス・コンプレックスへの供給は一般にC
6からC
11化合物までに制限される。ほとんどのアロマティクス・コンプレックスにおいて、混合キシレンはコンプレックス内で処理されて特定の異性体―パラ−キシレンを生成し、これを下流で処理してテレフタル酸を生成することができる。このテレフタル酸は、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルを作るために使用される。ベンゼンおよびパラ−キシレンの生成を増加させるために、トルエン、C
9、C
10トランスアルキル化/トルエン不均化(TA/TDP)プロセスユニットを通して、トルエン、C
9およびC
10芳香族化合物をコンプレックス内で処理してベンゼンおよびキシレンを生成する。残っているトルエン、C
9およびC
10芳香族化合物は全て消滅するまで再循環される。C
10よりも重質の化合物はこれらのユニットで使用されるしばしば400℃を超える高温で使用される触媒の急速な失活を引き起こす傾向があるため、一般にTA/TDPユニットでは処理しない。
【0003】
コンプレックス中の選択的吸着処理ユニットによって混合キシレンからパラ−キシレンを回収する場合、選択的吸着ユニットへのC
8供給原料を処理して供給原料中のオレフィンおよびスチレンなどのアルケニル芳香族化合物を除去する。オレフィン系物質は、反応してゼオライト吸着剤の細孔を閉塞する可能性がある。オレフィン系物質は、粘土または酸性触媒を横切ってC
8+流を通過させて、オレフィンおよびアルケニル芳香族化合物を他の(典型的には芳香族)分子と反応させ、より重質の化合物(C
16+)を形成することによって除去される。これらのより重質の化合物は典型的には、分画によって混合キシレンから除去される。重質化合物は、触媒を失活させる傾向があるためにTA/TDPユニットで処理することができず、一般に、より低価値の燃料ブレンドストックとしてコンプレックスから除去される。
【0004】
炭化水素処理中にも、アルキル基当たり3個以上の炭素分子を含有する1つまたは複数の連結アルキル基を有する芳香環で構成される化合物が形成され得る。これらの化合物の形成は、接触改質などの、非芳香族炭化水素から芳香族化合物を製造するために石油精製業者および石油化学製造業者によって使用されるプロセスからのものであり得る。これらの重質アルキル芳香族化合物の多くは10個を超える炭素原子を含有する留分と分画するため、それらは典型的には供給原料としてトランスアルキル化ユニットに送られず、代わりにガソリンブレンディングに送られるかまたは燃料油として使用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
TA/TDPユニットなどの特殊な製品製造ユニットを介して芳香族流を処理する前に、ある種の重質化合物からC
6〜C
10の範囲のより高価値の軽質芳香族化合物を特徴付け回収する必要性が認識されている。本明細書に開示される実施形態は、炭化水素の処理中の芳香族化合物流の処理中に形成される生成物の特徴付けを含む。いくつかの実施形態は、アルキルモノ芳香族化合物の回収プロセスを含む。そのようなプロセスの一例は、1つまたは複数の重質アルキル芳香族化合物およびアルキル架橋非縮合アルキル多芳香族化合物を含有する供給流を反応器に供給する工程と、反応器に水素流を供給する工程と、1つまたは複数のアルキルモノ芳香族化合物を含有する生成物流を生成するために、供給流と水素流とを特定の反応条件下、触媒の存在下で反応させることを可能にする工程と、下流プロセスのために生成物流を反応器から回収する工程とを含む。下流プロセスは、パラ−キシレン回収プロセスであり得る。アルキル架橋非縮合アルキル多芳香族化合物は、少なくとも2個の炭素を有するアルキル架橋基によって結合された少なくとも2個のベンゼン環を含み、ベンゼン環はアルキル架橋基の異なる炭素に結合している。いくつかの実施形態では、供給流はキシレン再蒸留塔から得られるC
9+アルキル芳香族化合物を含む。供給流は溶媒で希釈することなく反応器に供給することができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、水素流を、反応器に供給される前に供給流と合流させる。いくつかの実施形態では、水素流は再循環水素流および補給水素流を含む。いくつかの実施形態では、水素流は少なくとも70重量%の水素を含む。触媒は反応器中の触媒床として存在することができる。いくつかの実施形態では、水素流の一部を反応器内の触媒床に供給して触媒床を急冷する。いくつかの実施形態では、触媒床は2つ以上の触媒床を含む。触媒は、シリカ、アルミナ、およびそれらの組み合わせからなる群の少なくとも1つの構成要素である担体を含むことができ、さらに、非晶質シリカ−アルミナ、ゼオライト、およびそれらの組み合わせからなる群の少なくとも1つの構成要素である酸性成分を含むことができる。いくつかの実施形態では、触媒は、IUPAC第8〜10族金属およびIUPAC第6族金属を含む。いくつかの実施形態では、触媒は、鉄、コバルト、およびニッケル、およびそれらの組み合わせからなる群の少なくとも1つの構成要素であるIUPAC第8〜10族金属を含み、さらに、モリブデンおよびタングステン、およびそれらの組み合わせからなる群の少なくとも1つの構成要素であるIUPAC第6族金属を含む。いくつかの実施形態では、IUPAC第8〜10族金属は、触媒の2〜20重量%であり、IUPAC第6族金属は、触媒の1〜25重量%である。いくつかの実施形態では、触媒は、ニッケル、モリブデン、超安定Y型ゼオライト、およびγ‐アルミナ担体を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、特定の反応条件は、ヒドロ脱アリール化反応中の反応器の動作温度が200〜450℃の範囲にあることを含む。ヒドロ脱アリール化反応中の反応器の動作温度は、約300℃であり得る。ヒドロ脱アリール化反応中の反応器の動作温度は、約350℃であり得る。特定の反応条件は、ヒドロ脱アリール化反応中の反応器の水素分圧が5〜50バールゲージの範囲にあることを含み得る。ヒドロ脱アリール化反応中の反応器の水素分圧は、20バールゲージ未満に維持することができる。特定の反応条件は、供給原料1バレル当たり500〜5000標準立方フィートの範囲内にある水素流の供給速度を含むことができる。
【0008】
本プロセスのいくつかの実施形態は、未反応アルキル架橋非縮合アルキル多芳香族化合物を含有する再循環炭化水素流を反応器に供給する工程をさらに含む。再循環炭化水素流は供給流と合流されて、反応器に供給される合流供給流を形成することができる。水素流は合流供給流と合流されて、反応器に供給される第2の合流流を形成することができる。本プロセスのいくつかの実施形態は、生成物をより軽質の炭化水素流とより重質の炭化水素流とに分離するために、生成物流を分離ゾーンに供給する工程をさらに含む。より軽質の炭化水素流を処理して再循環水素流を提供することができる。再循環水素流を補給水素流と合流させて、反応器に供給するための水素流を提供することができる。本プロセスのいくつかの実施形態は、第1の軽質流および第1の重質流を提供するために生成物流を第1の分離器に供給する工程と、第2の軽質流および第2の重質流を提供するために第1の軽質流を第2の分離器に供給する工程とをさらに含む。第1の重質流と第2の重質流とが合流して、より重質の炭化水素流を形成する。本プロセスのいくつかの実施形態は、より重質の炭化水素流を、2つ以上の流れに分画するための分画ゾーンに供給する工程をさらに含む。本プロセスのいくつかの実施形態は、より重質の炭化水素流を、第1の軽質分画流と第1の重質分画流とに分画するための第1の精留塔に供給する工程をさらに含む。次に、第1の軽質分画流の少なくとも一部をさらなる処理のためにキシレンコンプレックスに供給し、第1の重質分画流を、第2の軽質分画流と第2の重質分画流とに分画するための第2の精留塔に供給する。第2の軽質分画流はキシレンコンプレックスに供給され、第2の重質分画流の少なくとも一部は反応器に再循環される。
【0009】
実施形態は、添付の図面と共に以下の詳細な説明によって容易に理解されるであろう。実施形態は、添付の図面の図において、限定としてではなく例として示されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】様々な実施形態に従って、アルキル架橋非縮合アルキル芳香族化合物を非縮合アルキル芳香族化合物に変換するためのプロセスを概略的に示す図である。
【0011】
【
図2】様々な実施形態に従って、アルキル架橋非縮合アルキル芳香族化合物を非縮合アルキル芳香族化合物に変換するためのシステムを概略的に示す図である。
【0012】
【
図3】実施例に記載の反応条件下における、反応器入口温度の関数としての反応器流出物のASTM D1500色および180℃未満で沸騰する重量分率のプロットである。
【0013】
【
図4】実施例に記載の反応条件下における、反応器入口温度の関数としての反応器流出物の密度およびモノ芳香族化合物の重量%のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、アルキル架橋非縮合アルキル芳香族化合物をアルキルモノ芳香族化合物に変換するためのプロセス、装置、およびシステムに関する様々な実施形態を記載する。さらなる実施形態が説明され開示されている。
【0015】
以下の説明では、様々な実施形態の完全な理解を提供するために多数の詳細が述べられる。他の例では、様々な実施形態を不必要に曖昧にしないようにするために、周知のプロセス、装置、およびシステムは特に詳細に説明されないことがある。さらに、様々な実施形態の説明図は、様々な実施形態を曖昧にしないためにいくつかの特徴または詳細を省略することがある。
【0016】
以下の詳細な説明では、本開示の一部をなす添付の図面を参照する。図面は、本開示の主題が実施され得る様々な実施形態のうちのいくつかの説明図を提供し得る。他の実施形態を利用することができ、本開示の範囲から逸脱することなく論理的変更を加えることができる。したがって、以下の詳細な説明は限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0017】
この説明では、「いくつかの実施形態では」、「様々な実施形態では」、「一実施形態では」、または「実施形態では」という句を使用することがあり、これらの各々は1つまたは複数の同じまたは異なる実施形態を指すことがある。さらに、本開示の実施形態に関して使用される「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」などの用語は同義語である。
【0018】
本開示で使用される場合、用語「ヒドロ脱アリール化」は、触媒および水素の存在下で、非縮合アルキル架橋多芳香族化合物または重質アルキル芳香族化合物のアルキル架橋を開裂してアルキルモノ芳香族化合物を形成するプロセスを指す。
【0019】
本開示で使用される場合、用語「流れ」(および炭化水素流れ、供給流れ、生成物流れなどのようなこの用語の変形)は、直鎖、分岐アルカンまたは環状アルカン、アルケン、アルカジエン、アルキン、アルキル芳香族化合物、アルケニル芳香族化合物、縮合および非縮合のジ−、トリ−およびテトラ−芳香族化合物、ならびに水素およびメタンなどのガス、C
2+炭化水素、などの1つまたは複数の様々な炭化水素化合物を含み得、さらに様々な不純物を含み得る。
【0020】
本開示で使用されている場合、用語「ゾーン」は、1つまたは複数の機器、または1つまたは複数のサブゾーンを含む区域を指す。機器は、1つまたは複数の反応器または反応器容器、ヒータ、熱交換器、パイプ、ポンプ、圧縮機、およびコントローラを含み得る。さらに、反応器、乾燥機、または容器などの機器は、1つまたは複数のゾーンをさらに含み得る。
【0021】
本開示で使用される場合、用語「豊富」は、流れ中の化合物または化合物の種類のモル百分率で少なくとも50%以上の量を意味する。化合物または化合物の種類において豊富ないくつかの流れは、流れ中にモル百分率で約70%以上の特定の化合物または化合物の種類を含むことができる。場合によっては、業界標準の用法に従って、モル百分率を重量百分率に置き換えることができる。
【0022】
本開示で使用される場合、用語「実質的に」は、流れ中の化合物または化合物の種類のモル百分率で少なくとも80%の量を意味する。化合物または化合物の種類を実質的に含有するいくつかの流れは、流れ中にモル百分率で少なくとも90%の化合物または化合物の種類を含有することができる。化合物または化合物の種類を実質的に含有するいくつかの流れは、流れ中にモル百分率で少なくとも99%の化合物または化合物の種類を含有することができる。場合によっては、業界標準の用法に従って、モル百分率を重量百分率に置き換えることができる。
【0023】
本開示で使用される場合、用語「混合キシレン」は、ジメチルベンゼンおよびエチルベンゼンの3つの異性体のうちのいずれか1つを含む、1つまたは複数のC
8芳香族化合物を含有する混合物を指す。
【0024】
本開示で使用される場合、用語「変換」は、210℃超で沸騰する重質(C
4+)アルキル基を有する複数の芳香環またはモノ芳香族化合物を含有する化合物の210℃未満で沸騰するより軽質のアルキル基を有するモノ芳香族化合物への変換を指す。
【0025】
酸触媒を介するオレフィン系炭化水素の反応により形成されるオリゴマー副生成物は重質芳香族化合物であり、分画により除去されなければならない。形成される副生成物の性質は十分には特徴付けられていない。本開示の実施形態は、改質油のC
8+留分の特徴付けを含む。いくつかの実施形態では、改質油のC
8+留分は主として芳香族化合物を含有する(一般に95%超)。この留分中のオレフィン種は、スチレンおよびメチルスチレンなどのアルケニル芳香族化合物から主として構成される。そのような分子は、粘土含有ルイス酸部位を介して約200℃の温度でフリーデル−クラフツ反応によってアルキル芳香族化合物と反応して、アルキル架橋で結合した2つの芳香環を有する分子を形成すると予想される。アルケニル芳香族化合物は、次にこれらの化合物と反応して、アルキル架橋によって結合された3つ以上の芳香環を有する多芳香族化合物を形成し得る。そのような多芳香族化合物は、非架橋アルキル芳香族化合物と比較して比較的高密度(900kg/m3超)、より濃い褐色(標準参照法で20を超える色)、およびより高い沸点(280℃超)を有するとして特徴付けることができる。この実施形態における改質油のC
8+留分の残りの非芳香族オレフィン部分は、粘度含有ルイス酸部位を介して約200℃の温度でフリーデル−クラフツ反応によってアルキル芳香族化合物と反応して、少なくとも1つの大きい(7個を超える炭素原子の)アルキル基を有するモノ芳香族分子を形成すると予想される。そのような重質モノ芳香族化合物は、より軽質のアルキル芳香族化合物と比較して、適度に高い密度(800kg/m3超)およびより高い沸点(250℃超)を有することを特徴とし得る。そのような重質分子は、C
9およびC
10芳香族化合物がベンゼンおよびキシレンへの変換のためにTA/TDPプロセスユニットに送られる前に、分画によってC
9およびC
10モノ芳香族化合物から分離される。
【0026】
多芳香族化合物を含有する流れの処理は、分画によってより軽質の未反応アルキル芳香族化合物から分離することを含むことができ、分離プロセスは、低レベルのオレフィンを含有する少なくとも1つの低沸点(または軽質)留分と、高沸点アルキル芳香族化合物と共に多芳香族化合物を含有する少なくとも1つの高沸点(または重質)留分とを提供することができる。多芳香族化合物を含有する重質留分は、比較的高いオクタン価を有するためガソリンブレンディングへの流れとして利用することができるが、高密度、より濃い褐色、および高い最終沸点は、ガソリン流にブレンドされ得る量を制限する可能性がある。あるいは、多芳香族化合物を含有する重質留分は、燃料油ブレンド成分として利用することができる。多芳香族化合物を含有する重質留分は、典型的にはトルエン/C
9/C
10トランスアルキル化ユニットなどの触媒ユニットでは処理されず、これは10個を超える炭素原子を有する最も重質の留分中の縮合多芳香族化合物が、そのようなユニットで使用される条件で触媒失活性コークス層を形成する傾向があるためである。コークス層の形成は、再生間の触媒寿命を潜在的に制限する。したがって、アルキル架橋非縮合アルキル芳香族化合物を含有する炭化水素プロセス流の使用を最適化するための代替の処理方法およびシステムが必要とされている。
【0027】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、炭化水素精製プロセス中にアルキル架橋非縮合アルキル化多芳香族化合物および重質アルキル芳香族化合物を含有する流れから軽質アルキル化モノ芳香族化合物を回収することに関する。アルキル架橋非縮合アルキル芳香族化合物は、多芳香族化合物またはポリ芳香族化合物と呼ばれることがある。多芳香族化合物をアルキルモノ芳香族化合物に変換することは、多芳香族化合物を含有する炭化水素プロセス流の使用を最適化するために望ましい可能性がある。様々な実施形態において、回収プロセスは、多芳香族化合物の高いオクタン価特性を保持しているアルキルモノ芳香族化合物を提供する。高オクタン価を保持することは、アルキル芳香族化合物のガソリンブレンドにとって望ましい可能性がある。様々な実施形態において、密度、色、および沸点特性は、回収プロセスによって改善され得、ガソリン流にブレンドするためのより高価値の炭化水素流をもたらす。様々な実施形態において、多芳香族化合物をアルキル芳香族化合物に変換するプロセスは、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、およびキシレン(BTEX)石油化学製品処理ユニットへの供給原料としてのアルキル芳香族化合物の使用を可能にし得る。様々な実施形態において、多芳香族化合物をアルキル芳香族化合物に変換するプロセスは、TA/TDPユニット内の供給原料としてのアルキル芳香族化合物の使用を可能にし得る。したがって、いくつかの実施形態は、これらの化合物をアルキル芳香族化合物に変換することによって、多芳香族化合物を含有する炭化水素流のより価値の高い用途を提供し得る。
【0028】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、アルキル架橋非縮合アルキル化多芳香族化合物および重質アルキル芳香族化合物を含有する流れからの軽質アルキル化モノ芳香族化合物の回収方法に関する。そのような方法の1つは、複数のアルキル架橋非縮合アルキル芳香族化合物および重質アルキル芳香族化合物を含有する供給流を反応器に供給する工程と、水素流を反応器に供給する工程と、アルキルモノ芳香族化合物を含有する生成物流を生成するために、触媒の存在下で供給流と水素流とを反応させることを可能にする工程と、反応器から生成物流を回収する工程とを含む。アルキル架橋非縮合アルキル芳香族化合物は、少なくとも2個の炭素を有するアルキル架橋基によって結合された少なくとも2個のベンゼン環を含み、ベンゼン環はアルキル架橋基の少なくとも2個の異なる炭素に結合している。供給流はキシレン再蒸留塔からのC
9+重質芳香族流であり得る。供給流は、ジ、トリ、およびポリ芳香族(C
9〜C
16+)を含むC
9+芳香族流であり得る。いくつかの実施形態では、供給流は溶媒によって希釈されてもよく、または溶媒によるいかなる希釈もなく供給されてもよい。いくつかの実施形態では、供給流は水素流と合流し、合流流として反応器に供給される。いくつかの実施形態では、水素流は、再循環水素流と補給水素流との合流を含む。水素流は少なくとも70重量%の水素を含有することができる。触媒は反応器中の触媒床として提供されてもよい。いくつかの実施形態では、水素流の一部を反応器の触媒床に供給して触媒床を急冷する。触媒床は2つ以上の触媒床を含み得る。いくつかの実施形態では、触媒は、シリカおよびアルミナならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される担体を含み、非晶質シリカ−アルミナおよびゼオライトならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される酸性成分をさらに含む。触媒は、IUPAC第8〜10族金属およびIUPAC第6族金属を含み得る。触媒は、鉄、コバルト、およびニッケル、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されるIUPAC第8〜10族金属を含むことができ、モリブデンおよびタングステン、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されるIUPAC第6族金属をさらに含む。本明細書で使用されるある種の触媒は、2〜20重量%の触媒としてのIUPAC第8〜10族金属と、1〜25重量%の触媒としてのIUPAC第6族金属とを含有する。触媒は、ニッケル、モリブデン、超安定Y型ゼオライト、およびγ−アルミナ担体のうちの1つまたは複数を含むことができる。反応器は、アルキル化モノ芳香族化合物の最適な回収のために適切な温度および圧力条件下で動作する。そのような動作条件は、ヒドロ脱アリール化反応の間、反応器の温度を200〜450℃に維持することを含み得る。そのような動作条件は、ヒドロ脱アリール化反応の間、反応器の温度を約300℃〜350℃に維持することを含み得る。反応器の水素分圧は5〜50バールゲージの範囲であり得る。反応器の水素分圧は20バールゲージ未満に維持することができる。水素流の供給速度は、炭化水素供給流1バレル当たり500〜5000標準立方フィートであり得る。動作条件は、反応器の1時間当たり約0.5〜10の液体時空間速度を含むことができる。
【0029】
本方法のいくつかの実施形態はまた、複数の未反応アルキル架橋非縮合アルキル芳香族化合物を含む再循環炭化水素流を反応器に供給する工程を含むことができる。いくつかの実施形態では、再循環炭化水素流は供給流と合流し、単一の流れとして反応器に供給される。いくつかの実施形態では、水素流は、合流した再循環炭化水素流の供給流と供給流と合流して、単一の流れとして反応器に供給することができる。いくつかの実施形態は、生成物をより軽質の炭化水素流とより重質の炭化水素流とに分離するために、生成物流を分離ゾーンに供給することを含み得る。いくつかの実施形態では、生成物流は、C
8〜C
10の範囲のアルキルモノ芳香族を含む。いくつかの実施形態では、重質改質油粘土処理剤(C8+)から得られるオレフィンの大部分は、主にアルケニル芳香族化合物であり、それらはアルキル芳香族化合物と反応して未縮合アルキル多芳香族化合物を形成する。これらのいくつかの実施形態では、非縮合アルキル多芳香族化合物を比較的低温低圧でヒドロ脱アリール化し、高温での重質流で予想される過度の触媒失活を回避しつつ、アルキルモノ芳香族化合物への変換を可能にする。いくつかの実施形態は、生成物流をパラ−キシレン回収プロセスに供給することを含み得る。
【0030】
図1は、様々な実施形態による、アルキル架橋非縮合アルキル化多芳香族化合物および重質アルキル芳香族化合物を含有する流れから軽質アルキル化モノ芳香族化合物を回収するためのプロセス100を概略的に示す。プロセス100の工程102は、複数のアルキル架橋非縮合アルキル多芳香族化合物を含む炭化水素供給原料を反応器に供給することを含む。様々な実施形態において、アルキル架橋非縮合アルキル芳香族化合物は、少なくとも2個の炭素を有するアルキル架橋基によって結合された少なくとも2個のベンゼン環を含み、ベンゼン環はアルキル架橋基の異なる炭素に結合している。様々な実施形態において、アルキル架橋非縮合アルキル芳香族化合物は、アルキル架橋非縮合アルキル芳香族化合物のベンゼン環に結合した追加のアルキル基を含む。炭化水素供給原料は、1つまたは複数の炭化水素処理からの石油精製所内の流れであり得る。様々な実施形態において、炭化水素供給原料は、石油精製所のユニット操作からの重質芳香族流を含み得る。様々な実施形態において、炭化水素供給原料は、石油精製所のキシレン再蒸留塔からのC
9+重質芳香族化合物流を含んでもよい。様々な実施形態において、炭化水素供給原料は溶媒によって希釈されていない。
【0031】
限定ではなく例として、様々なアルキル架橋非縮合アルキル芳香族化合物は、式I、式II、および式IIIで示される化合物の混合物、およびこれらの化合物の様々な組み合わせを含むことができる。
【化1】
【化2】
【化3】
R
2、R
4、およびR
6は、炭素原子2〜6個を独立して有するアルキル架橋基である。R
1、R
3、R
5、およびR
7は、水素と炭素原子1〜8個を有するアルキル基とからなる群から独立して選択される。基R
1、R
3、R
5、およびR
7に加えて、式I、II、およびIIIのベンゼン基は、それぞれベンゼン基に結合した追加のアルキル基をさらに含んでもよい。式IIIの4つのベンゼン基に加えて、様々なアルキル架橋非縮合アルキル芳香族化合物は、アルキル架橋によって結合した5つ以上のベンゼン基を含むことができ、追加のベンゼン基は、追加のベンゼン基に結合するアルキル基をさらに含むことができる。
【0032】
プロセス100の工程104は、水素流を反応器に供給することを含む。様々な実施形態では、水素流は炭化水素供給原料に合流して合流供給原料流を形成し、それがその後反応器に供給される。様々な実施形態において、水素流は再循環水素流および補給水素流を含み得る。様々な実施形態において、再循環水素流は、反応器からの炭化水素生成物流の処理からの流れであり得る。様々な実施形態において、水素流は少なくとも70モル%の水素を含み得る。様々な実施形態において、水素流は少なくとも80モル%の水素を含み得る。様々な実施形態において、水素流は少なくとも90モル%の水素を含み得る。
【0033】
プロセス100の工程106は、アルキル架橋非縮合アルキル多芳香族化合物および重質アルキル芳香族化合物のアルキル架橋が開裂してアルキルモノ芳香族化合物を生成するように、適切な反応条件下、触媒の存在下でヒドロ脱アリール化反応を起こさせることを含む。様々な実施形態において、アルキル架橋非縮合アルキル芳香族化合物のベンゼン環に結合した非架橋アルキル基は、炭化水素生成物中の非縮合アルキル芳香族化合物のベンゼン環に結合したままである。限定ではなく例として、様々なアルキルモノ芳香族化合物は、式IVで示される化合物の混合物を含み得る。
【化4】
様々なアルキルモノ芳香族化合物について、R
1は炭素原子1〜8個を有するアルキル基からなる群から独立して選択され、R
2は水素と炭素原子1〜8個を有するアルキル基とからなる群から独立して選択される。
【0034】
様々な実施形態において、アルキル架橋の開裂の間、反応器の動作温度は、合理的な技術的許容範囲内で200〜450℃であり得る。様々な実施形態において、反応器の動作温度は、アルキル架橋の開裂のために合理的な技術的許容範囲内で約300℃であり得る。様々な実施形態において、反応器の動作温度は、アルキル架橋の開裂のために合理的な技術的許容範囲内で350℃であり得る。様々な実施形態において、反応器の水素分圧は、合理的な技術的許容範囲内で5〜50バールゲージであり得る。様々な実施形態において、反応器の水素分圧は、合理的な技術的許容範囲内で20バールゲージ未満であり得る。様々な実施形態において、水素流の供給速度は、合理的な技術的許容範囲内で供給原料1バレル当たり500〜5000標準立方フィートであり得る。様々な実施形態において、反応器の液体時空間速度は、合理的な技術的許容範囲内で1時間当たり0.5〜10であり得る。
【0035】
プロセス100の工程108は、アルキルモノ芳香族化合物を含有する炭化水素生成物を反応器から回収することを含む。様々な実施形態において、炭化水素生成物は反応器からの流出物流であり得る。様々な実施形態において、流出物流を様々な分離プロセスに供給して、未反応水素、アルキルモノ芳香族化合物、および未反応アルキル架橋非縮合アルキル芳香族化合物を回収することができる。様々な実施形態において、回収された未反応水素は反応器に再循環されてもよい。様々な実施形態において、未反応アルキル架橋非縮合アルキル芳香族化合物は、部分的に反応器に再循環されてもよい。様々な実施形態において、アルキルモノ芳香族化合物をさらに処理して様々な高価値の炭化水素を回収することができる。
【0036】
プロセス100の工程110は、複数の未反応アルキル架橋非縮合アルキル芳香族化合物を含む再循環炭化水素流を反応器に供給することを含む。様々な実施形態において、再循環炭化水素流は、反応器からの炭化水素生成物の処理からの流れであり得る。様々な実施形態において、再循環炭化水素流を供給原料流と合流させて、反応器に供給される合流供給原料流を形成することができる。様々な実施形態において、水素流を合流供給流と合流させて、反応器に供給される第2の合流流を形成することができる。様々な実施形態において、再循環炭化水素流、水素流、および供給原料流を任意の順序で合流させて、反応器に供給する合流流を形成することができる。様々な実施形態において、再循環炭化水素流、水素流、および供給原料流を反応器に別々に供給することができ、あるいは流れのうちの2つを合流させ、他方を反応器に別々に供給することができる。様々な実施形態において、水素流は、反応器の1つまたは複数の触媒床に直接供給される流れの一部を有する。
【0037】
プロセス100の工程112は、炭化水素生成物をより軽質の炭化水素流とより重質の炭化水素流とに分離するために、炭化水素生成物を分離ゾーンに供給することを含む。様々な実施形態において、分離ゾーンは第1の分離器および第2の分離器を含み得る。炭化水素生成物を第1の分離器に供給して、第1の分離器からの第1の軽質流および第1の重質流を提供することができる。第1の軽質流を第2の分離器に供給して、第2の軽質流および第2の重質流を提供することができる。第1の重質流と第2の重質流とを合流させてより重質の炭化水素流を形成することができる。第2の軽質流は、分離ゾーンからのより軽質の炭化水素流であり得る。様々な実施形態において、より軽質の炭化水素流を処理して再循環水素流を提供することができる。様々な実施形態において、再循環水素流を補給水素流に合流させて、反応器に供給される水素流を提供することができる。
【0038】
プロセス100の工程114は、より重質の炭化水素流を、2つ以上の流れに分画するための分画ゾーンに供給することを含む。様々な実施形態において、分画ゾーンは第1の精留塔および第2の精留塔を含み得る。より重質の炭化水素流は、第1の軽質分画流と第1の重質分画流とに分画するための第1の精留塔に供給することができる。第1の軽質分画流の少なくとも一部は、キシレンを回収する処理のためにキシレンコンプレックスに供給することができる。第1の重質分画流は、第2の軽質分画流と第2の重質分画流とに分画するための第2の精留塔に供給することができる。第2の軽質分画流はキシレンの回収のためにキシレンコンプレックスに供給することができる。様々な実施形態において、第2の重質分画流の一部を反応器に再循環させて再循環炭化水素流を提供することができる。様々な実施形態において、第2の重質分画流の一部は、様々なプロセスフロー流中のアルキル架橋非縮合アルキル芳香族化合物の蓄積を防ぐためのブリード流であり得る。ブリード流の流速は、様々なプロセスフロー流中に重質芳香族炭化水素が蓄積しないことを確実にするために適宜調整することができる。
【0039】
図2は、様々な実施形態に従って、アルキル架橋非縮合アルキル芳香族化合物をアルキルモノ芳香族化合物に変換するためのシステム200を概略的に示す。システム200は、重質芳香族化合物を非縮合アルキル芳香族化合物に変換するための一段階ヒドロ脱アリール化システムと呼ぶことができる。
図2に示す様々なプロセスフローラインは、流れ、供給物、生成物、または流出物と呼ぶことができる。さらに、全ての伝熱、物質移動、および流体搬送機器が示されているわけではなく、これらの項目に対する要件は当業者にはよく理解されている。
【0040】
システム200は、ヒドロ脱アリール化反応ゾーン202を含み得る。反応ゾーン202は反応器204を含み得る。反応器204は有効な量の適切な触媒を含み得る。触媒は触媒床中にあってもよい。反応器204は、供給原料流206と再循環流208と水素流212とを含む合流流210を受け取るための入口を含み得る。供給原料流206は、C
9+芳香族化合物を含む流れであり得る。ヒドロ脱アリール化流出物流214は、反応器204の出口から排出され得る。ヒドロ脱アリール化反応器204は、単一または複数の触媒床を有することができ、多重床配置の床の間で急冷水素流を受け取ることができる。図示されていないが、急冷水素流は、反応器204内の触媒床の様々な位置に配管された水素流212の一部であり得る。
【0041】
様々な実施形態において、ヒドロ脱アリール化ゾーン202における変換率は、必要とされる触媒の量および触媒上のコーキングの量を制限するために閾値未満に維持され得る。限定ではなく例として、閾値限界は、反応器204内の潜在的な最大変換率の70%であり得る。ヒドロ脱アリール化流出物流214は、分離ゾーン230へと通過することができる。分離ゾーンは、2つの分離器、すなわち高温分離器232および低温分離器234を含み得る。高温分離器232は、反応器流出物214を受け取るための入口、ヒドロ脱アリール化ガス流236を排出するための出口、およびヒドロ脱アリール化液体流240を排出するための出口を含むことができる。低温分離器234は、部分的に縮合されたヒドロ脱アリール化ガス流236のための入口、蒸気流238を排出するための出口、および炭化水素液体流242を排出するための出口を含むことができる。次の低温分離器234に入る前に高温の流れ236を冷却するために熱交換器を含めることができる。熱交換器は図示されておらず、熱交換器に対する任意の設計要件は当業者にはよく理解されている。流れ236は、水素、メタン、エタン、C
3+炭化水素、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数のガスを含み得る。流れ236は、高温分離器232を出て、低温分離器234に供給されてもよい。
【0042】
低温分離器234からの蒸気流238は、水素が豊富であり得る。蒸気流238は、圧縮後に圧縮機272を用いて再循環システム270を介して圧縮した後に再循環して戻り、流れ274を生成することができる。流れ274を、水素補給流276に合流させることができる。水素補給流276は、ヘッダからの実質的に水素を含有する高純度補給ガスであり得る。合流した流れは、ヘッダを通って供給部に再循環して戻り、水素流212を提供することができる。
【0043】
低温分離器234からの液体流242は熱交換器列(図示せず)内で予熱してもよい。液体流242を高温の炭化水素液体流240と合流させて液体流244を形成してもよく、これを分画ゾーン250に流してもよい。
【0044】
分画ゾーン250は、ストリッパカラム252およびスプリッタカラム254を含み得る。カラム252、254は、再沸分画カラムであり得る。液体流244はストリッパカラム252に入ることができる。ストリッパカラム252は、トレイカラムもしくは充填カラム、または2種類のカラムの組み合わせであり得る。ストリッパカラム252は、2つの流れ、すなわち軽質蒸気流256および底部流260を形成することができる。蒸気流256は縮合させることができ、一部はストリッパカラム252のための液体還流とすることができる。縮合および非縮合蒸気流256の一部はさらなる処理のために送られてもよい。限定ではなく例として、縮合および非縮合蒸気流256は、パラ−キシレンアロマティクス・コンプレックス内の改質油スプリッタカラムまたは重質芳香族カラムで処理することができる。さらなる処理のこれらの詳細は当業者によって理解されるため、
図2には示されていない。
【0045】
ストリッパカラム252からの底部流260は、スプリッタカラム254に送ることができる。スプリッタカラム254は、トレイカラムまたは充填カラム、あるいは2種類のカラムの組み合わせであり得る。スプリッタカラム254は、2つの流れ、すなわち軽質流258および重質流262を形成することができる。軽質流258は、C
6+化合物から構成されてもよい。重質流262は、C
10+化合物から構成されてもよい。
【0046】
軽質流258は縮合されてもよく、縮合された軽質流の一部はスプリッタカラム254に還流される液体であってもよい。スプリッタカラム254に還流されない軽質流258の一部は、さらなる処理のために送られてもよい。例として、軽質流258のこの部分は、キシレンを回収するための改質/パラ−キシレンコンプレックスに送られてもよい。重質流262は、2つの流れ、すなわち再循環流208とブリード流264とに分割することができる。ブリード流264の流速は、反応流210内に重質芳香族炭化水素が蓄積しないことを確実にするために適宜調整することができる。
【0047】
様々な実施形態において、水素流212は、流れ238、274を介して再循環することなく貫流であり得る。したがって、水素流276をマニホールドを介して加えて、流れ274なしで水素流212を形成することができる。様々な実施形態において、低温分離器234からのフラッシュガスは、システム200から出て水素発生源(図示せず)に戻るように送られてもよい。様々な実施形態において、水素流212が貫流である場合、分離器流出液244は、パラ−キシレンコンプレックス内のキシレン再蒸留塔に直接送られてもよい。
【0048】
様々な実施形態において、ヒドロ脱アリール化反応ゾーン202は、並列に2つの反応器を含み得、インサイチュー再生ループと共に使用され得る。重質芳香族化合物を処理する場合、固定床触媒系はコーキングを起こしやすいため、様々な実施形態について、一方の反応器が再生モードにある間に他方の反応器が動作している可能性がある。
【0049】
様々な実施形態において、高温分離器232および低温分離器234は、水素流212または合流流210を反応器流出物214と共に予熱するための熱交換器列を有する単一の分離器によって置き換えられてもよい。
【0050】
様々な実施形態において、供給原料流206は重質炭化水素流であり得る。重質炭化水素流は、キシレン再蒸留塔からのC
9+もしくはC
10+、またはパラ−キシレンアロマティクス・コンプレックスからの重質芳香族塔底部であってもよい。供給原料流206は、C
9〜C
16+を含むことができ、この流れは主にモノ芳香族、ジ芳香族、およびポリ芳香族であり得る。
【0051】
様々な実施形態において、ヒドロ脱アリール化反応ゾーン202は、単一の触媒床または複数の触媒床を有する反応器204を含み得る。様々な実施形態において、複数の触媒床はそれらの床の間に水素流を急冷して受け入れることができる。
図2には示されていないが、水素流212は反応器204に沿った任意の場所に供給することができ、床の数に応じて複数の水素流を供給することができる。
【0052】
様々な実施形態において、反応器204は、少なくとも1つのIUPAC第8〜10族金属、および少なくとも1つのIUPAC第6族金属を有する触媒を含有し得る。IUPAC第8〜10族金属は、鉄、コバルト、およびニッケル、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。IUPAC第6族金属は、モリブデンおよびタングステン、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。IUPAC第8〜10族金属は、約2〜20重量%の量で存在してもよく、IUPAC第6族金属は約1〜25重量%の量で存在してもよい。様々な実施形態において、IUPAC第8〜10族金属およびIUPAC第6族金属は担体材料上にあり得る。様々な実施形態において、担体材料はシリカまたはアルミナであり得、さらに、非晶質シリカアルミナ、ゼオライトまたはこれら2つの組み合わせからなる群から選択される酸性成分を含み得る。様々な実施形態において、反応器204は、非晶質シリカ−アルミナもしくはゼオライトまたはこれら2つの組み合わせの酸分解成分を有するシリカ−アルミナもしくはアルミナ担体上の任意の貴金属IUPAC第8〜10族金属を有する触媒を含有し得る。いくつかの実施形態では、反応器204は、非晶質シリカ−アルミナもしくはゼオライトまたはこれら2つの組み合わせの酸分解成分を有するシリカ−アルミナまたはアルミナ担体上に、白金、パラジウムおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される触媒を含有し得る。
【0053】
様々な実施形態において、ヒドロ脱アリール化反応ゾーン202の動作条件は、200℃〜450℃(392°F〜840°F)の範囲の反応温度、および5バールゲージ〜50バールゲージ(70psig〜725psig)の範囲の水素分圧を含み得る。様々な実施形態において、熱分離器232の動作条件は、200℃〜400℃(392°F〜750°F)の範囲の温度、および5バールゲージ〜50バールゲージ(70psig〜725psig)の範囲の水素分圧を含み得る。様々な実施形態において、低温分離器234の動作条件は、40℃〜80℃(104°F〜176°F)の範囲の温度、および5バールゲージ〜50バールゲージ(70psig〜725psig)の範囲の圧力を含み得る。様々な実施形態において、分画ゾーン250の動作条件は、40℃〜300℃(104°F〜572°F)の範囲の温度、および0.05バール〜30バール(0.73psig〜435psig)の範囲の圧力を含み得る。
【実施例】
【0054】
様々な実施形態によれば、本開示は、様々な実施形態について例示および説明されているように、ヒドロ脱アリール化のための方法およびシステムを説明する。ヒドロ脱アリール化プロセスの一例では、ASTM D1500色5、密度0.9125g/cm
3、および180℃(356°F)未満で沸騰する57重量%の炭化水素を有するキシレン再蒸留塔底部流からなる供給原料を、15bara(218psia)の水素分圧、1.3時間
−1の液体時空間速度で、200〜450℃(392〜842°F)の温度を含むヒドロ脱アリール化条件で動作するシリカ−アルミナ担体上で、超安定Y型(USY)ゼオライトを用いたニッケルおよびモリブデンを有する触媒を含むヒドロ脱アリール化反応ゾーン中で反応させた。ヒドロ脱アリール化反応の結果を
図3および
図4に要約する。
【0055】
図3は、反応器入口温度の関数としての180℃未満で沸騰する反応器流出物のASTM D1500色および重量分率のプロットである。
図3に見られるように、約350℃の温度は、他の入口反応器温度と比較して、より高い百分率のより低い沸点留分およびより低い色値をもたらすように思われる。
図4は、反応器入口温度の関数としての反応器流出物密度およびモノ芳香族化合物の重量百分率のプロットである。
図4に見られるように、350℃〜400℃の反応器入口温度は、他の入口反応器温度と比較して、これらの反応条件下でのより高い百分率のモノ芳香族およびより低い密度をもたらすように思われる。
【0056】
範囲は、本明細書では、ある特定のおよその値から、および別の特定のおよその値までとして表現され得る。このような範囲が表される場合、別の実施形態は、上記範囲内の全ての組み合わせと共に、ある特定の値から、および/また他の特定の値までであることが理解されるべきである。本明細書において値の範囲が記載または参照される場合、間隔は上限と下限との間の各介在値、ならびにその上限および下限を含み、提供される特定の除外の対象となる間隔のより狭い範囲を含む。
【0057】
本明細書において2つ以上の規定された工程を含む方法が列挙または参照される場合、規定された工程は、文脈がその可能性を排除する場合を除いて、任意の順序でまたは同時に実行され得る。
【0058】
例示の目的で様々な実施形態を詳細に説明してきたが、それらは限定として解釈されるべきではなく、その精神および範囲内の全ての変更および修正を網羅することを意図している。