(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952125
(24)【登録日】2021年9月29日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】永久磁石による消弧を改良したスイッチ装置
(51)【国際特許分類】
H01H 9/44 20060101AFI20211011BHJP
【FI】
H01H9/44 A
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-551527(P2019-551527)
(86)(22)【出願日】2018年2月28日
(65)【公表番号】特表2020-511761(P2020-511761A)
(43)【公表日】2020年4月16日
(86)【国際出願番号】EP2018054940
(87)【国際公開番号】WO2018172030
(87)【国際公開日】20180927
【審査請求日】2019年11月1日
(31)【優先権主張番号】102017106300.5
(32)【優先日】2017年3月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514122166
【氏名又は名称】シャルトバウ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001346
【氏名又は名称】特許業務法人 松原・村木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クラリク、ロベルト
【審査官】
関 信之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−146333(JP,A)
【文献】
実開昭59−005851(JP,U)
【文献】
特開昭59−014219(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0145675(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの接点と、前記接点に関連付けられた永久磁石式アーク放出装置とを有し、
前記アーク放出装置は、
第1側方極板(6.1)と、
第2側方極板(6.2)と、
前記第1側方極板及び前記第2側方極板の間に配置された中央極板(6.3)と、
アークの放出用磁界を生成する少なくとも1つの第1永久磁石(2.1、2.2)と
を備え、
前記少なくとも1つの第1永久磁石(2.1、2.2)は、前記放出用磁界の第1磁界領域が前記第1側方極板(6.1)及び前記中央極板(6.3)の間に形成され且つ前記放出用磁界の第2磁界領域が前記第2側方極板(6.2)及び前記中央極板(6.2)の間に形成されるように、前記極板(6.1、6.2、6.3)の少なくとも1つに対して、直接又は磁気導体を介して接触して配置され、
前記第1磁界領域の磁力線(23)は、前記第2磁界領域の磁力線(23)と対向するように位置決めされ、
前記放出用磁界は、前記第1磁界領域と前記第2磁界領域を接続する偏向領域をさらに含み、
前記接点が開かれたときに前記偏向領域内で発生したスイッチングアーク(3.1、3.2)が、電流方向に応じて前記接点から前記第1磁界領域又は前記第2磁界領域に案内されて、どちらに案内される場合も前記接点から前記磁界領域に同一方向で放出されるように、前記第1磁界領域及び前記第2磁界領域の前記磁力線(23)は、前記第1磁界領域及び前記第2磁界領域から前記偏向領域の前記接点に向かって、それぞれが同等に位置決めされた
ことを前提とするスイッチ装置(1)において、
前記アーク放出装置は、少なくとも1つの第2永久磁石を補助磁石(15)として備え、
前記補助磁石(15)の磁界の少なくとも一部が前記偏向領域内の前記放出用磁界を増幅するように、前記補助磁石(15)が前記接点の近傍に配置され、
前記補助磁石(15)は、環状であり且つ放射状に磁化されている
ことを特徴とするスイッチ装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチ装置(1)において、
前記中央極板(6.3)を延長した平面により規定された前記アーク放出装置の対称面(16)に対して前記補助磁石(15)が面対称となるように、前記補助磁石(15)が配置されている
ことを特徴とするスイッチ装置(1)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスイッチ装置(1)において、
前記補助磁石(15)の磁化方向は、前記第1磁界領域の前記磁力線及び前記第2磁界領域の前記磁力線の両方に対して直角の方向を含む
ことを特徴とするスイッチ装置(1)。
【請求項4】
少なくとも1つの接点と、前記接点に関連付けられた永久磁石式アーク放出装置とを有し、
前記アーク放出装置は、
第1側方極板(6.1)と、
第2側方極板(6.2)と、
前記第1側方極板及び前記第2側方極板の間に配置された中央極板(6.3)と、
アークの放出用磁界を生成する少なくとも1つの第1永久磁石(2.1、2.2)と
を備え、
前記少なくとも1つの第1永久磁石(2.1、2.2)は、前記放出用磁界の第1磁界領域が前記第1側方極板(6.1)及び前記中央極板(6.3)の間に形成され且つ前記放出用磁界の第2磁界領域が前記第2側方極板(6.2)及び前記中央極板(6.2)の間に形成されるように、前記極板(6.1、6.2、6.3)の少なくとも1つに対して、直接又は磁気導体を介して接触して配置され、
前記第1磁界領域の磁力線(23)は、前記第2磁界領域の磁力線(23)と対向するように位置決めされ、
前記放出用磁界は、前記第1磁界領域と前記第2磁界領域を接続する偏向領域をさらに含み、
前記接点が開かれたときに前記偏向領域内で発生したスイッチングアーク(3.1、3.2)が、電流方向に応じて前記接点から前記第1磁界領域又は前記第2磁界領域に案内されて、どちらに案内される場合も前記接点から前記磁界領域に同一方向で放出されるように、前記第1磁界領域及び前記第2磁界領域の前記磁力線(23)は、前記第1磁界領域及び前記第2磁界領域から前記偏向領域の前記接点に向かって、それぞれが同等に位置決めされた
ことを前提とするスイッチ装置(1)において、
前記アーク放出装置は、2つの補助磁石(15)を備え、
前記補助磁石(15)の磁界の少なくとも一部が前記偏向領域内の前記放出用磁界を増幅するように、前記補助磁石(15)が前記接点の近傍に配置され、
前記2つの補助磁石(15)は、前記中央極板(6.3)を延長した平面により規定された前記アーク放出装置の対称面(16)に対して互いに面対称に配置されている
ことを特徴とするスイッチ装置(1)。
【請求項5】
請求項4に記載のスイッチ装置(1)において、
前記2つの補助磁石(15)それぞれの磁化方向は、前記対称面(16)に対して0°よりも大きく90°よりも小さい角度(α)を有する
ことを特徴とするスイッチ装置(1)。
【請求項6】
少なくとも1つの接点と、前記接点に関連付けられた永久磁石式アーク放出装置とを有し、
前記アーク放出装置は、
第1側方極板(6.1)と、
第2側方極板(6.2)と、
前記第1側方極板及び前記第2側方極板の間に配置された中央極板(6.3)と、
アークの放出用磁界を生成する少なくとも1つの第1永久磁石(2.1、2.2)と
を備え、
前記少なくとも1つの第1永久磁石(2.1、2.2)は、前記放出用磁界の第1磁界領域が前記第1側方極板(6.1)及び前記中央極板(6.3)の間に形成され且つ前記放出用磁界の第2磁界領域が前記第2側方極板(6.2)及び前記中央極板(6.2)の間に形成されるように、前記極板(6.1、6.2、6.3)の少なくとも1つに対して、直接又は磁気導体を介して接触して配置され、
前記第1磁界領域の磁力線(23)は、前記第2磁界領域の磁力線(23)と対向するように位置決めされ、
前記放出用磁界は、前記第1磁界領域と前記第2磁界領域を接続する偏向領域をさらに含み、
前記接点が開かれたときに前記偏向領域内で発生したスイッチングアーク(3.1、3.2)が、電流方向に応じて前記接点から前記第1磁界領域又は前記第2磁界領域に案内されて、どちらに案内される場合も前記接点から前記磁界領域に同一方向で放出されるように、前記第1磁界領域及び前記第2磁界領域の前記磁力線(23)は、前記第1磁界領域及び前記第2磁界領域から前記偏向領域の前記接点に向かって、それぞれが同等に位置決めされた
ことを前提とするスイッチ装置(1)において、
前記アーク放出装置は、少なくとも1つの第2永久磁石を補助磁石(15)として備え、
前記補助磁石(15)の磁界の少なくとも一部が前記偏向領域内の前記放出用磁界を増幅するように、前記補助磁石(15)が前記接点の近傍に配置され、
前記接点は、第1接触部(7.1、7.2)及び第2接触部(9.1、9.2)を含み、
前記第1接触部及び前記第2接触部は、前記スイッチ装置の動作時に互いに接触可能であり、
前記補助磁石(15)は、他方の接触部に対して反対側に面する前記第1接触部又は前記第2接触部の面に配置される
ことを特徴とするスイッチ装置(1)。
【請求項7】
請求項6に記載のスイッチ装置(1)において、
前記補助磁石(15)は、前記接触部(7.1、7.2、9.1、9.2)のそれぞれに固定されている
ことを特徴とするスイッチ装置(1)。
【請求項8】
請求項6に記載のスイッチ装置(1)において、
前記補助磁石(15)は、前記スイッチ装置の筐体(18)の凹部(21)に保持されている
ことを特徴とするスイッチ装置(1)。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のスイッチ装置(1)において、
前記補助磁石(15)は、レアアース磁石である
ことを特徴とするスイッチ装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の前提部に係るスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なスイッチ装置は、少なくとも1つの接点と、前記接点に関連付けられた、永久磁石式アーク放出装置とを有する。アーク放出装置は、第1側方極板と、第2側方極板と、これらの間に配置された中央極板と、アークの放出用磁界を生成する少なくとも1つの第1永久磁石とを有する。少なくとも1つの第1永久磁石は、放出用磁界の第1磁界領域を第1側方極板及び中央極板の間に発生させると共に、放出用磁界の第2磁界領域を第2側方極板及び中央極板の間に発生させるように、極板の少なくとも1つに対して直接接するように又は磁気導体を介して配置される。第1磁界領域の磁力線は、第2磁界領域の磁力線と対向して位置決めされる。放出用磁界は、第1磁界領域と第2磁界領域をつなぐ偏向領域を追加的に有する。接点が開かれたときに偏向領域で発生したスイッチングアークが、電流方向に応じて接点から第1磁界領域又は第2磁界領域に案内され、どちらの場合も接点から磁界領域に同一方向で放出されるように、第1磁界領域及び第2磁界領域の磁力線は、接点からいずれかの領域に対して同一方向に移動されるように、磁力線は、第1磁界領域及び第2磁界領域から偏向領域の接点に向かって、それぞれが同等に位置決めされている。
【0003】
3つの極板は、互いに略平行に配置される。概して、互いに逆の極性を有する2つの第1永久磁石が設けられる。2つの第1永久磁石は、2つの側方極板の1つに対して組み合わせてもよく、或いは、中央極板の対向する側方に配置されてもよい。2つの側方極板は、磁気導体又はリターン等を介してそれぞれ例えば中央極板に接続される。第1永久磁石は、この磁気的接続の一部としてもよく、或いは、第1永久磁石自体を側方極板及び中央極板の間の接続素子として形成してもよい。
【0004】
請求項1の前提部に係るスイッチ装置には、単一の消弧装置のみを要するスイッチ装置において双方向動作が可能になるという利点がある。スイッチングアークが電流方向に応じて第1磁界領域又は第2磁界領域に向かって偏向された後、スイッチングアークは、電流方向から独立して同一の単一の消弧装置において消弧され得るように、電流方向から独立して、接点から同一方向に向かって常に移動される。このために求められる消弧装置は、任意のデザインとすることができ、本願の主題ではない。例えば、消弧装置は、複数のセラミック製の消弧要素又は消弧プレートを有する従来の消弧チャンバとすることができる。放出用磁界は、単に永久磁石による態様で生成されるため、消弧コイルは不要である。従って、一般的なスイッチ装置は、比較的コンパクト、軽量となり、さらに安価となる。
【0005】
一般的なスイッチ装置は、例えば、DE 10 2015 000 796 A1、EP 3048626 A1及びUS 2012145675 A1から公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的なタイプの既存のスイッチ装置の課題は、スイッチ装置の信頼性のある機能が、特定のスイッチング電力までのみ確保される点である。スイッチング電力が増加すると、スイッチ装置は、その分大きなデザインとしなければならない。この場合、スイッチングアークを制御し、それぞれ正しい磁界領域に案内することが次第に困難となる。放出用磁界を生成するためのより強力な永久磁石を利用することが基本的には可能であるが、ある程度を超えると製造コストが大幅に増加する。
【0007】
従って、本発明の目的は、対応して大きくなるデザインを有しつつ、アーク発生時に信頼性のある挙動が確保され得る一般的なタイプのスイッチ装置をさらに開発することである。スイッチ装置の安価な製造コストは維持可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、独立請求項1の特徴部により実現される。従って、独立請求項1の前提部に係るスイッチ装置と共に、本発明に係る目的の解決手段は、アーク放出装置が、補助磁石としての少なくとも1つの第2永久磁石を備え、前記補助磁石の磁界の少なくとも一区分が偏向領域の放出用磁界を拡大するように前記補助磁石が接点の近傍に配置されることでもたらされる。
【0009】
本発明に係る解決手段によれば、安価な態様において、アーク発生時に信頼性のある挙動が、スイッチ装置の対応する大型化を伴って実現される。
【0010】
前記補助磁石は、第1永久磁石とは異なる機能を有することが強調される。第1永久磁石は、3つの極板のうち少なくとも1つと組み合わされるため、直接的に又は対応する磁気的リターンを介して、対応する極板と磁気的に接続される。これは、請求項1に係る本発明の観点で、補助磁石のケースではない。補助磁石は、3つの極板のいずれに対しても直接的な接触をせず、また、対応する磁気導体を介して極板に接続されることもない。補助磁石の機能は、放出用磁界の偏向領域における磁界を増幅することである。この増幅は偏向領域に制限され、第1磁界領域及び第2磁界領域に関連しない。
【0011】
本発明の有効な実施形態は、従属請求項の主題として記載される。
【0012】
本発明の好適な実施形態によれば、補助磁石は、中央極板を延長した平面によって規定されるアーク放出装置の対照面に対して、面対称となるように配置される。この態様により、偏向領域において磁界が対照的に増幅される。補助磁石は、接点とアーク放出装置に対して、言わば中心として配置されるので、増幅は、アークが発生する臨界領域において発生する。
【0013】
ここで、第1磁界領域の磁力線と第2磁界領域の磁力線の両方に対して補助磁石が直角となることは磁化装置にとって利点が生じる。
【0014】
最も単純なケースでは、単一の補助磁石のみが設けられる。しかし、複数の補助磁石それぞれが放出用磁界の偏向領域の1つの区域を増幅するようにこれらの補助磁石を設けてもよい。
【0015】
標準的な部品を補助磁石として利用すれば、本発明に係るスイッチ装置を安価に製造可能である。本発明の別の実施形態によれば、効果的な永久磁石は、直方体状又は円筒状とすることができる。しかしながら、補助磁石を環状とし、放射状に磁化してもよい。この実施形態では、単一の補助磁石が用いられることで、放出用磁界の増幅は、偏向領域における比較的大きな区分で可能となる。基本的に、補助磁石は、偏向領域全体において放出用磁界を増幅するように実現することができる。このケースでは、補助磁石は、180°を超えて延びる環状としてもよい。
【0016】
本発明のさらに別の好適な実施形態によれば、中央極板を延長した平面によって規定されるアーク放出装置の対称面を挟んで、互いに対称に配置される2つの補助磁石が設けられる。この実施形態では、安価な標準的な永久磁石を用いることにより、偏向領域の比較的大きな区分を増幅することが可能となる。
【0017】
好ましい態様において、このケースの2つの補助磁石の磁化方向は、前記対称面に対して0°より大きく90°より小さい角度を有する。より好ましくは、前記角度は、5°〜45°の範囲とする。さらに好ましくは、前記角度は、5°〜30°の範囲とする。
【0018】
本発明のさらに別の好適な実施形態によれば、接点は第1接触部と第2接触部を有し、第1接触部及び第2接触部は、スイッチ装置を動作させる際、互いに接触されてもよく、また、補助磁石は、それぞれの他の接触部とは反対方向を向く、第1接触部
又は第2接触部の
面に配置される。この実施形態において、補助磁石は、その磁界の一区分が偏向領域における放出用磁界を増幅する一方、補助磁石の磁界の残りの区分が、放出用磁界にネガティブな影響を与えないように配置されてもよい。接触部は、非磁性金属、例えば銅から構成されることが好ましい。従って、接触部は、補助磁石の磁界に対して全く影響しない。
【0019】
本発明のさらに別の実施形態によれば、補助磁石は、それぞれの接触部に簡易且つ堅固に接触されてもよい。例えば、補助磁石は、対応する接触部に接着又はネジ止めされてもよい。しかしながら、ある好ましい態様では、補助磁石は、スイッチ装置の筐体の対応する凹部に保持されてもよい。筐体は、例えば、プラスチック製である。
【0020】
本発明のさらに別の好適な実施形態によれば、補助磁石は、レアアース製磁石である。
【0021】
本発明の実施形態は、図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】
図1のスイッチ装置を
図1のII−II線に沿って示す断面図(側面断面図)である。
【
図3】
図1のスイッチ装置を
図1のIII−III線に沿って示す断面図(長手方向断面図)である。
【
図4】
図1のスイッチ装置を
図1のIV−IV線に沿って示す断面図(平面断面図)である。
【
図5】
図2に示すスイッチ装置の第1接点と、本発明の第1実施形態として設けられた補助磁石の詳細を示す図である。
【
図6】
図5に示す接点の固定接触部の平面図である。
【
図8】
図7の変形例として、前記スイッチ装置の筐体の凹部に保持された補助磁石を示す図である。
【
図9】本発明の第2実施形態として、
図6と同様の固定接触部を示す平面図である。
【
図10】本発明の第3実施形態として、
図6及び
図9と同様の固定接触部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の記載において、同一の部品には、同一の参照符号が付される。図面に関連する明細書の箇所で明示的に言及されない参照符号を図面が含む場合、当該参照符号は、先に説明した又はその後に説明する内容である。
【0024】
図1は、本発明に係るスイッチ装置1の斜視図を示す。スイッチ装置1は、単極のコンタクタである。
図2は、
図1のスイッチ装置1を
図1のII−II線に沿って示す断面図である。
図3は、
図1のスイッチ装置1を
図1のIII−III線に沿って示す断面図である。
図4は、
図1のスイッチ装置を
図1のIV−IV線に沿って示す断面図である。
【0025】
コンタクタ1は、それぞれ対応するピン8.1、8.2に電気的に接続された2つの固定接触部7.1、7.2を有する。2つの固定接触部7.1、7.2は、コンタクトブリッジ10を介して電気的に導通可能な態様で互いに接続されてもよい。コンタクトブリッジ10は、電磁駆動部19のアーマチャによって作動されるものであり、2つの可動接触部9.1、9.2を有する。接触部が閉じているとき、第1可動接触部9.1は、第1固定接触部7.1に当接し、第2可動接触部9.2は、第2固定接触部7.2に接触する。電磁駆動部19が取り付けられるスイッチ装置1の筐体20は、図面において参照符号20が付与されている。
【0026】
接触部が開いているとき、第1固定接触部7.1と第1可動接触部9.1の間及び第2固定接触部7.2と第2可動接触部9.2の間それぞれにおいて、1つのスイッチングアークが発生する。
【0027】
スイッチングアークの発生によりスイッチ装置1が損傷することを防ぐため、スイッチングアークは、接触領域の外に誘導され、消弧されなければならない。以下では、第1固定接触部7.1と第1可動接触部9.1の組合せを第1接点として示す。第2固定接触部7.2と第2可動接触部9.2の対を第2接点として示す。スイッチ装置1は、2つの接点それぞれからスイッチングアークを放出するためのアーク放出装置(arc blowing device)を有する。2つのアーク放出手段のそれぞれは、消弧装置5.1、5.2と組み合わされる。2つの消弧装置5.1、5.2は、筐体の対向する側方に配置される。第1消弧装置5.1は、第1接点7.1/9.1と組み合わされる。第2消弧装置5.2は、第2接点7.2/9.2と組み合わされる。筐体の上方では、第3消弧装置5.3が配置されて第1接点及び第2接点と組み合わされる。第3消弧装置5.3により必要に応じて消弧能力が増加するであろう。消弧装置の間に置かれる筐体の部品は、適切な銅プレート32によりアークから保護可能である。3つの全ての消弧装置5.1、5.2、5.3それぞれは、互いに積層された複数の消弧要素を有している。消弧要素は、セラミックス製である。それらは、代替品としての消弧プレートとして設計されてもよい。
【0028】
アーク放出装置の構成は、第1固定接触部7.1及び第1可動接触部9.1からなる第1接点を説明するために図示される。図示は、
図4のみで拡大して行われている。本発明に係るスイッチ装置1において、アーク放出装置によって生成された、アークの放出用磁界(magnetic blow-out field)は、永久磁石による態様のみで生成される。電気的に駆動される消弧コイルは不要である。
図4に示す2つの永久磁石2.1、2.2は、本願請求項における第1永久磁石を形成する。それらは、第1接点と、第1接点と組み合わされた第1消弧装置5.1との間に配置される。第1永久磁石2.1は、
図1に示すスイッチ筐体の側壁に配置される第1側方極板6.1と直接接触している。第2永久磁石2.2は、
図1に示すスイッチ筐体の反対側に配置される第2側方極板6.2と直接接触している。2つの側方極板6.1、6.2の間には、2つの側方極板6.1、6.2と平行に延在する中央極板6.3が設けられ、
図4に示されている。2つの永久磁石2.1、2.2及び中央極板6.3の間それぞれには、1つの磁気的リターンが設けられる。リターンと永久磁石の両方は、円筒状である。
【0029】
2つの永久磁石2.1、2.2は、互いに逆の極性を有する。N極は、第1側方極板6.1及び第2側方極板6.2それぞれの外側に位置している。共通のS極は、中央極板6.3に位置している。逆の極性により、第2側方極板6.2(右)と中央極板6.3との間には磁界が発生する。この磁界は、第1側方極板6.1(左)と中央極板6.3の間に発生する磁界と反対向きである。この状況は、
図4の磁力線23からも明らかである。
【0030】
極板は、それらの間において、第1接点から消弧装置5.1に入る2つのチャネルを形成する。ここで、第1チャネル4.1は、第1側方極板6.1と中央極板6.3との間に配置される。第2側方極板6.2と中央極板6.3との間には、第2チャネル4.2が配置される。2つのチャネル4.1、4.2は、それぞれが長手方向に直交する2つの逆向きの極性の磁界の1つによって散在される。2つの側方極板6.1、6.2は、接点近傍の側方に到達する。中央極板6.3は、側方極板6.1、6.2よりも若干短く、接点の前で終端する。これにより、接点においてアークの放出用磁界の偏向領域(transition region)を生じる。固定接触部7.1又は可動接触部9.1の略中央において、磁力線は、チャネル4.1、4.2における2つの磁界の磁力線と直交するように延在する。偏向領域において、磁力線は、180°を超えて扇状に広がる。従って、チャネル4.1における磁界の方向は、チャネル4.2における磁界の方向に対応するようになるまで偏向領域において反転する。
【0031】
第1ピン8.1が電源の正極に接続される場合、接触部が開いている間、第1接点においてスイッチングアーク3.1が発生し、まず放出用磁界によって
図4中、右方向に曲げられ(
図4において、スイッチングアーク3.1は、投影面(plane of projection)の下方に位置する)、次いで、第2側方極板6.2及び中央極板6.3の間のチャネル4.2に進入する。この場合において、スイッチングアーク3.1の移動方向は、矢印24により示される。第1ピン8.1が電源の負極に接続される場合、スイッチングアーク3.1は、まず反対方向である
図4中、左方向に曲げられる。そして、スイッチングアーク3.1は、矢印25で示される経路に沿って、第1側方極板6.1及び中央極板6.3の間のチャネル4.1に進入する。どちらの場合も、スイッチングアーク3.1は、その後、放出用磁界によって消弧装置5.1内に案内される。中央極板6.3は、消弧装置5.1に面する反対側の端部において、2つの側方極板6.1、6.2よりも若干短い。従って、放出用磁界は、消弧装置5.1の直ぐ手前にも偏向領域を有し、この偏向領域は、スイッチングアーク3.1を消弧装置5.1の中央に案内する。従って、消弧装置5.1は、コンパクトに維持可能である。
【0032】
第2固定接触部7.2及び第2可動接触部9.2により形成される第2接点には、第1接点におけるアーク放出装置と同一のデザインを有するアーク放出装置が設けられる。
図4において、接点7.1/9.1、7.2/9.2で発生した2つのスイッチングアーク3.1、3.2は、電流方向に応じて、まずいずれも右側又はいずれも左側に曲げられ、次いで、消弧装置5.1又は5.2にそれぞれが放出され、その後、消弧装置5.3に案内される。従って、電流方向に応じて、スイッチングアーク3.1、3.2は、チャネル4.1を介して、又は
図2に示すように、チャネル4.2を介して消弧装置内に案内される。
【0033】
図2では、一方でスイッチングアークを案内しつつ、他方でスイッチングアークを消弧装置に進めさせる複数のいわゆるアークバッフル(arc baffles)が見えるであろう。第1固定接触部7.1は、第1アークバッフル11と組み合わせられ、第2固定接触部7.2は、第2アークバッフル12と組み合わせられている。第1アークバッフル11及び第2アークバッフル12は、固定接触部7.1、7.2それぞれと、対応する消弧装置5.1又は5.2それぞれとの間に延在している。両アークバッフル11、12は、固定接触部7.1、7.2を、対応するピン8.1又は8.2それぞれに接続させる。第1アークバッフル11及び第2アークバッフル12は、中央極板6.3の下方に配置され、対応する消弧装置の第1チャネル4.1又は第2チャネル4.2を超える幅で延在する。また、第3アークバッフル13及び第4アークバッフル14が設けられる。第3アークバッフル13及び第4アークバッフル14は、それぞれが、コンタクトブリッジ10と共に閉ループ状を形成するように、第1可動接触部9.1から第2可動接触部9.2まで弧状に延在する。
図2に示すように、第1及び第2アーク放出装置の中央極板6.3は、第3アークバッフル13及び第4アークバッフル14の間にそれぞれ配置される。
図2において、第3アークバッフル13は、2つの中央極板6.3の後ろに配置され、そのため、同図では破線で示されている。
【0034】
第3アークバッフル13及び第4アークバッフル14に対してコンタクトブリッジ10が移動可能となるように、第3アークバッフル13及び第4アークバッフル14の端部は、コンタクトブリッジ10の端部からわずかに離間されている。スイッチングアークが接点から放出される場合、スイッチングアークの基部は、コンタクトブリッジ10から第3アークバッフル13又は第4アークバッフル14へとそれぞれジャンプする。コンタクトブリッジ10の隅は、サービス寿命を長くするために丸められていることが好ましい。
【0035】
第1アーク放出装置の第1アーク放出磁石2.1及び第2アーク放出装置の第1アーク放出磁石2.1は、第3アークバッフル13及びコンタクトブリッジ10により形成されたループの中に配置される。第1アーク放出装置の第2アーク放出磁石2.2及び第2アーク放出装置の第2アーク放出磁石2.2は、第4アークバッフル14及びコンタクトブリッジ10により形成されたループの中に配置される。従って、アーク放出磁石は、単純な態様でアークから保護される。セラミックス等によるアーク放出石用保護カバーは必要ない。
【0036】
図2から理解可能であるように、コンタクトブリッジ10は、2つの固定接触部7.1、7.2の上方において、2つの可動接触部9.1、9.2と共に配置されている。電磁駆動部19は、2つの接点の下方に配置される。これにより、筐体の上部は完全に取り外し可能となり、保守時に、接点への自由なアクセスを許容する。筐体の上部の固定は、
図1に示すラッチ26を介して行われる。
【0037】
第1・第2アーク放出装置の中央極板6.3は、電気的に絶縁された態様でカバーされる。コンタクトブリッジ10は、電気絶縁物質からなるコンタクトキャリア27に接して配置される。
図3に示すように、コンタクトキャリア27は、第1接点及び第2接点の間において、スイッチ装置の筐体の幅を超えて延在する。アークによって発生したプラズマに対して、ラビリンス式のシールバリアが形成されるように、コンタクトキャリア27は、両側において筐体に形成された対応する溝の中に入り込む。コンタクトキャリア27の下方にはベローズ28がさらに配置され、駆動部のヨークプレートに対するアーク発生中に、スイッチ装置の作動により高負荷が生じた場合にアークにより生成されたプラズマに起因するグラウンド接地を防止する。
【0038】
この点に関し、図示された2つの極板構成(それぞれが2つの消弧装置5.1、5.2の1つと組み合わされ、それぞれが極板6.1、6.2、6.3を有するもの)に加えて、少なくとも1つの付加的な極板構成(第3消弧装置5.3に組み合わせることができ、さらに2つの側方の消弧装置5.1、5.2の領域と組み合わせることが可能であるもの)を設けてもよいことに留意されたい。この付加的な極板構成の極板は、第3消弧装置5.3の長さを超える程度に延在することが好ましい。この実施形態において、極板6.1、6.2、6.3は、第3消弧装置よりも若干小さく又は若干下方に存在する。付加的な極板構成におけるアーク放出磁石は、第3消弧装置の領域の中心に配置されてもよい。
【0039】
図5は、
図2に示す本発明に係るスイッチ装置の第1接点の詳細な外観を示す。同図に示すように、本発明に係る補助磁石15は、接点の近傍に設けられ、偏向領域における放出用磁界を増幅させる。補助磁石15は、可動接触部9.1とは反対側に面している固定接触部7.1の底面側に設けられる。補助磁石15が発生する磁界の磁力線には、参照符号17が付されている。
図5に示すように、さらには
図7に詳細に示すように、磁界の上部のみが、第1接点7.1/9.1で生成されたスイッチングアーク3.1に影響を与えるため、当該部分のみが実質的に関連している。
【0040】
図6に示すように、補助磁石15は、中央極板6.3を延長した平面によって規定されるアーク放出装置の対称面16に対して補助磁石15が面対称となるように配置される。補助磁石15の磁化方向は、第1磁界領域4.1の磁力線と第2磁界領域4.2の磁力線に対して直角を含む。
【0041】
補助磁石15は、固定接触部7.1/11に強固に固定されてもよい。例えば、接着剤又はネジ止めを用いることができる。
図8は、本発明に係るスイッチ装置の筐体18の凹部21に単純な形態で補助磁石15が支持及び保持されている変形例を示す。
【0042】
図9は、各接点に2つの補助磁石15を採用した第2変形例を示す。2つの補助磁石15は、アーク放出装置の対称面16に対して対称に配置されている。2つの補助磁石15の磁化方向は、対称面16に対して角度α(略20°)をとる。
【0043】
図5〜
図9に示す補助磁石15は、単純な直方体状又は円筒状の永久磁石として、好ましくはレアアース磁石として設計されてもよい。これに対し、
図10は、補助磁石15が環状であり且つ放射状に磁化されているさらに別の変形例を示す。この変形例では、放出用磁界の偏向領域は、単一の補助磁石15により比較的広い部分が増幅される。しかしながら、
図10の変形例に係る補助磁石15は、より複雑であるため、
図5〜
図9の例で採用されている標準的な磁石よりも製造コストが高くなる。