特許第6952146号(P6952146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6952146-注入材原料の回収方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952146
(24)【登録日】2021年9月29日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】注入材原料の回収方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20211011BHJP
   C09K 17/10 20060101ALI20211011BHJP
   C09K 17/44 20060101ALI20211011BHJP
   C09K 17/14 20060101ALI20211011BHJP
   C09K 103/00 20060101ALN20211011BHJP
【FI】
   E02D3/12 101
   C09K17/10 P
   C09K17/44 P
   C09K17/14 P
   C09K103:00
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-26106(P2020-26106)
(22)【出願日】2020年2月19日
(65)【公開番号】特開2021-130948(P2021-130948A)
(43)【公開日】2021年9月9日
【審査請求日】2020年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】391051049
【氏名又は名称】株式会社エステック
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小川 恒郎
(72)【発明者】
【氏名】岡本 郁也
(72)【発明者】
【氏名】鵜沢 啓
(72)【発明者】
【氏名】河島 央樹
(72)【発明者】
【氏名】吉原 正博
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−082652(JP,A)
【文献】 特開平11−263972(JP,A)
【文献】 特開2014−148424(JP,A)
【文献】 特開昭58−146621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00−3/12
C09K 17/00−17/52
C04B 2/00−32/02
C04B 40/00−40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントおよび水を含むA液と、可塑性を付与する可塑化材および水を含むB液とを混合して注入材を形成した後で残るA液を回収する注入材原料の回収方法であって、
注入材を形成した後で残るA液に超遅延剤を添加する超遅延剤添加工程と、該超遅延剤添加工程後のA液を回収する回収工程とを備えており、
超遅延剤は、クエン酸、ショ糖、および、酢酸からなる群から選択される少なくとも一つであり、
超遅延剤添加工程では、超遅延剤を添加したA液のブリーディング率が1.3以上になるようにA液に超遅延剤を添加する、
注入材原料の回収方法。
【請求項2】
超遅延剤添加工程では、超遅延剤を添加したA液のブリーディング率が超遅延剤を添加していないA液のブリーディング率を超えるようにA液に超遅延剤を添加する、
請求項1に記載の注入材原料の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空隙に注入可能な注入材を形成するための原料を回収する注入材原料の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、空隙に注入されて硬化するように構成された注入材が知られている。特に、ポンプ等を用いて空隙内へ圧送可能な注入材として、セメントおよび水を含むA液と、可塑性を付与する可塑化材および水を含むB液とが混合されて形成されるものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このような二液混合型の注入材は、A液とB液とが別々に圧送されて、空隙注入口の直前で混合されることで形成される。このように、A液とB液とが別々に圧送されることで、A液とB液とが混合された状態で圧送される場合よりも(即ち、注入材そのものが圧送されるよりも)、空隙への圧送を容易に行うことが可能となる。
【0004】
具体的には、A液とB液とが混合されることで、可塑性を有する注入材が形成されることになる。このような注入材は、A液やB液よりも流動性が低く、空隙までの圧送が困難なものとなる。これに対し、A液およびB液は、注入材よりも流動性が良好なものであるため、空隙注入口までの圧送を容易に行うことができる。このため、A液およびB液を別々に圧送して空隙の直前で混合して注入材を形成することで、注入材そのものを圧送する必要がないため、空隙へ向けての注入材の圧送を容易に行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−310779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような注入材を空隙に注入する作業では、注入材の原料であるA液及びB液の全量が使用されない場合がある。斯かる場合、残ったA液およびB液を回収して処分することが必要となるが、A液は、セメントおよび水を含むものであるため、ある程度の時間が経過すると硬化してしまい、A液の回収作業が困難になる虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、注入材の原料であるA液の回収を容易に行うことができる注入材原料の回収方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る注入材原料の回収方法は、セメントおよび水を含むA液と、可塑性を付与する可塑化材および水を含むB液とを混合して注入材を形成した後で残るA液を回収する注入材原料の回収方法であって、注入材を形成した後で残るA液に超遅延剤を添加する超遅延剤添加工程と、該超遅延剤添加工程後のA液を回収する回収工程とを備えており、超遅延剤は、クエン酸、ショ糖、および、酢酸からなる群から選択される少なくとも一つであり、超遅延剤添加工程では、超遅延剤を添加したA液のブリーディング率が1.3以上になるようにA液に超遅延剤を添加する。
【0009】
斯かる構成によれば、超遅延剤添加工程を備えることで、注入材を形成した後で残るA液が硬化するまでの時間を延長することができる。これにより、注入材の施工で使用しなかったA液を容易に回収することができる。
【0010】
本発明に係る注入材原料の回収方法は、超遅延剤添加工程では、超遅延剤を添加したA液のブリーディング率が超遅延剤を添加していないA液のブリーディング率を超えるようにA液に超遅延剤を添加することが好ましい。
【0011】
斯かる構成によれば、超遅延剤を添加したA液のブリーディング率が超遅延剤を添加していないA液のブリーディング率を超えるようにA液に超遅延剤を添加することで、注入材を形成した後で残るA液が硬化するまでの時間をより延長することができる。これにより、注入材の施工で使用しなかったA液をより容易に回収することができる。
【0012】
本発明に関連する注入材の施工方法は、セメントおよび水を含むA液と、可塑性を付与する可塑化材および水を含むB液とを混合して注入材を形成し、該注入材を空隙に注入する注入材の施工方法であって、A液は、超遅延剤を更に含んでおり、超遅延剤は、クエン酸、ショ糖、および、酢酸からなる群から選択される少なくとも一つであり、超遅延剤を含むA液のブリーディング率は、1.3以上であってもよい
【0013】
斯かる構成によれば、A液が超遅延剤を含むことで、注入材を形成した後で残るA液が硬化するまでの時間を延長することができる。これにより、注入材の施工で使用しなかったA液を容易に回収することができる。
【0014】
本発明に係る注入材の施工方法では、超遅延剤を含むA液のブリーディング率は、超遅延剤を含まないA液のブリーディング率を超えることが好ましい。
【0015】
斯かる構成によれば、超遅延剤を含むA液のブリーディング率は、超遅延剤を含まないA液のブリーディング率を超えることで、注入材を形成した後で残るA液が硬化するまでの時間をより延長することができる。これにより、注入材の施工で使用しなかったA液をより容易に回収することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、注入材の原料であるA液の回収を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例の試験結果であって、超遅延剤の添加量とブリーディング率との関係を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
<注入材原料の回収方法>
本実施形態に係る注入材原料の回収方法を説明する前に、注入材について説明する。注入材は、空隙(例えば、構造物に形成される空隙や構造物と地盤との間に形成される空隙等)に注入可能に構成される。例えば、土木構造物の空洞へ充填されたり裏込め材として使用されたりするものである。
【0020】
また、斯かる注入材は、セメントおよび水を含むA液と、可塑性を付与する可塑化材および水を含むB液とが混合されて形成される。具体的には、別々の経路で空隙に向かって搬送(具体的には、圧送)されるA液およびB液が空隙の直前で混合されることで、注入材が形成され、該注入材が空隙に注入される。
【0021】
A液を構成するセメントとしては、特に限定されるものではなく、例えば、普通、早強、超早強、中庸熱、低熱などの各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメントなどの混合セメント、白色セメント、耐硫酸塩セメント、セメント系固化材などの特殊セメント等の少なくとも一つが挙げられる。
【0022】
また、A液における水の含有量としては、特に限定されるものではないが、A液がポンプ等によって圧送可能な程度の流動性を有するように、水分量が調整される。A液における水の含有量としては、例えば、セメント100質量部に対して、水が40質量部以上150質量部以下であることが好ましく、50質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
【0023】
また、A液には、本発明の効果が損なわれない範囲で、粗骨材や細骨材が含有されてもよい。粗骨材および細骨材としては、JIS A 5308の規定に従ったものを好適に使用することができる。また、粗骨材および細骨材としては、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、珪砂等を1種単独又は2種以上混合したものをそれぞれ採用することができる。
【0024】
また、A液には、本発明の効果が損なわれない範囲で、混和材や混和剤が含有されてもよい。混和材としては、高炉スラグ、シリカフューム、フライアッシュ等が挙げられる。混和剤としては、減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤等が挙げられる。
【0025】
B液を構成する可塑化材としては、特に限定されるものではなく、ベントナイトやアタパルジャイト等の粘土質のものが挙げられる。B液における可塑化材の含有量としては、特に限定されるものではなく、例えば、水100質量部に対して5質量部以上50質量部以下であることが好ましく、10質量部以上40質量部以下であることがより好ましい。
【0026】
B液には、本発明の効果が損なわれない範囲で、分散剤が含有されてもよい。該分散剤は、可塑化材100質量部に対して0.3質量部以上3.0質量部以下の割合で含有されることが好ましく、0.5質量部以上2.0質量部以下の割合で含有されることがより好ましい。
【0027】
斯かる分散剤としては、アクリル酸塩、リン酸塩、水溶性カルボン酸塩、スルホン酸塩等が挙げられる。該リン酸塩としては、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム等が挙げられる。該水溶性カルボン酸塩としては、酢酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、マロン酸、グルコン酸等のナトリウム塩や、これらの酸のカリウム塩が挙げられる。該スルホン酸塩としては、リグニン系スルホン酸塩、ナフタレン系スルホン酸塩、メラミン系スルホン酸塩等が挙げられる。
【0028】
B液を構成する可塑化材がベントナイトである場合、分散剤として、アクリル酸塩、水溶性カルボン酸塩を用いることが好ましく、なかでもポリアクリル酸塩を用いることが特に好ましい。一方、B液を構成する可塑化材がアタパルジャイトである場合、分散剤として、リン酸塩を用いることが好ましく、なかでもピロリン酸ナトリウムを用いることが特に好ましい。
【0029】
本実施形態に係る注入材原料の回収方法は、注入材を形成した後で残るA液に超遅延剤を添加する超遅延剤添加工程を備える。具体的には、A液およびB液を空隙に向かって搬送しつつ空隙の直前で混合して注入材を形成し、該注入材を空隙に注入する作業(注入材の施工)を行った後で、超遅延剤添加工程が行われる。超遅延剤添加工程では、A液が空隙に向かって搬送される経路からA液を収集し、収集したA液に超遅延剤が添加される。
【0030】
A液に超遅延剤を添加する際のA液の温度としては、特に限定されるものではなく、例えば、5℃以上30℃以下であってもよく、20℃程度であってもよい。
また、超遅延剤添加工程は、A液を形成してから10時間以内に行うのが好ましく、5時間以内に行うのがより好ましい。
【0031】
また、超遅延剤添加工程では、超遅延剤が添加されたA液のブリーディング率が1.3%以上、好ましくは1.3%以上40%以下になるようにA液に超遅延剤が添加される。また、超遅延剤添加工程では、超遅延剤が添加されたA液のブリーディング率が超遅延剤が添加されていないA液のブリーディング率を超えるようにA液に超遅延剤が添加されることが好ましい。超遅延剤が添加されていないA液のブリーディング率としては、特に限定されるものではなく、例えば、0%以上50%以下であってもよく、好ましくは0%以上30%以下であってもよい。また、超遅延剤が添加されたA液のブリーディング率としては、特に限定されるものではなく、例えば、1.3%以上60%以下であってもよく、好ましくは1.3%以上40%以下であってもよい。
【0032】
超遅延剤としては、クエン酸、ショ糖、および、酢酸からなる群から選択される少なくとも一つを用いることができるが、クエン酸を用いることが好ましい。
【0033】
上記のように超遅延剤添加工程を行うことで、A液が硬化して硬化体となるまでの時間が比較的長くなる。このため、A液が流動性を有していれば、吸引装置でA液を吸引して回収することができる。または、A液が流動性を有していなくても、練り返すことが可能な状態であれば、スコップ等を用いてA液を回収したり、練り返して流動性を回復させて吸引装置で吸引して回収したりすることができる。上記のようにしてA液を回収する回収工程は、超遅延剤添加工程を行った後、14日以内に行うのが好ましく、7日以内に行うのがより好ましい。
【0034】
<注入材の施工方法>
本実施形態に係る注入材の施工方法は、注入材の原料であるA液が超遅延剤を含むものである。つまり、本実施形態に係る注入材の施工方法は、超遅延剤を含むA液を空隙に向けて搬送し、B液と混合することで注入材を形成し、該注入材を空隙に注入するものである。これにより、空隙への注入材の注入を終了した時点でA液が残っても、A液が硬化して硬化体となるまでの時間が比較的長くなる。このため、A液が流動性を有していれば、吸引装置でA液を吸引して回収することができる。または、A液が流動性を有していなくても、練り返すことが可能な状態であれば、スコップ等を用いてA液を回収したり、練り返して流動性を回復させて吸引装置で吸引して回収したりすることができる。上記のようにしてA液を回収する回収工程は、超遅延剤が添加されたA液を作製してから14日以内に行うのが好ましく、7日以内に行うのがより好ましい。
【0035】
このように、注入材の施工方法において、超遅延剤を含むA液を用いる場合には、注入材が硬化することで形成される硬化体において良好な強度(28日強度)が得られるように、A液中のセメントに対する超遅延剤の割合が設定されることが好ましい。具体的には、A液中のセメントに対する超遅延剤の割合は、B液の可塑化材がアタパルジャイトである場合、0.25質量%以上0.75質量%以下であることが好ましく、B液の可塑化材がベントナイトである場合は、0.25質量%以上1.5質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下であることがより好ましい。なお、硬化体の強度は、下記の実施例の測定方法で測定されるものである。
【0036】
以上のように、本発明に係る注入材原料の回収方法および注入材の施工方法によれば、注入材の原料であるA液の回収を容易に行うことができる。
【0037】
即ち、超遅延剤添加工程を備えることで、注入材を形成した後で残るA液が硬化するまでの時間を延長することができる。このため、注入材の施工で使用しなかったA液を容易に回収することができる。
【0038】
また、超遅延剤を添加したA液のブリーディング率が超遅延剤を添加していないA液のブリーディング率を超えるようにA液に超遅延剤を添加することで、注入材を形成した後で残るA液が硬化するまでの時間をより延長することができる。このため、注入材の施工で使用しなかったA液をより容易に回収することができる。
【0039】
なお、本発明に係る注入材原料の回収方法および注入材の施工方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0040】
例えば、上記実施形態に係る注入材の施工方法におけるA液(超遅延剤を含むA液)は、上記実施形態に係る注入材原料の回収方法における超遅延剤添加工程で得られるものであってもよい。つまり、超遅延剤添加工程で得られるA液が圧送可能な程度の流動性を保持していれば、超遅延剤を含むA液を注入材の施工で用いてもよい。具体的には、超遅延剤添加工程で得られる超遅延剤を含むA液を空隙に向けて搬送し、該A液をB液と混合することで注入材を形成し、該注入材を空隙に注入してもよい。なお、上記のように、超遅延剤添加工程で得られるA液をB液と混合して注入材を形成する際には、そのA液にセメントおよび/または水を添加して水/セメント比を調節することが好ましい。
【0041】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0042】
<使用材料>
・セメント:普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製)
・可塑化材1:アタパルジャイト(品名:「JETMS L材」 住友大阪セメント社製)
・可塑化材2:ベントナイト(品名:「JETMS B材」 住友大阪セメント社製)
・混和剤1:ポリカルボン酸系遅延型流動化剤(品名:「JETMS A液混和剤」 住友大阪セメント社製)
・混和剤2:リン酸塩系流動化剤(品名:「JETMS L液混和剤」 住友大阪セメント社製)
・混和剤3:ポリカルボン酸系流動化剤(品名:「JETMS B液混和剤」 住友大阪セメント社製)
・水(上水道水)
・超遅延剤1:クエン酸(品名:「無水クエン酸」 昭栄薬品工業社製)
・超遅延剤2:ショ糖(品名:「ショ糖(スクロース)」 林純薬工業社製)
・超遅延剤3:酢酸(品名:「酢酸」 昭和電工社製)
【0043】
1.試験1
<A液の作製>
上記の各材料を用いて、下記表1に示す配合で、A液を作製した。
【0044】
<ブリーディング率の測定>
上記の各A液について、ブリーディング率の測定を行った。ブリーディング率は、土木学会コンクリート標準示方書「プレパックドコンクリートの注入モルタルのブリーディング率 及び膨張率試験方法(ポリエチレン袋方法)」(JSCE−F−522−2013)に基づいて測定した。ブリーディング率の測定結果については、下記表1に示す。また、超遅延剤の添加量とブリーディング率との関係を図1のグラフに示す。
【0045】
<硬化状況の評価>
上記の各A液について、硬化状況の評価を行った。硬化状況の評価方法は、上記のブリーディング率の測定で使用するポリエチレン袋にA液を入れ、袋越しにA液の一部を指で押し、A液に形成される凹みの状態で評価した。具体的には、袋越しにA液を指で押して凹ませても凹みが維持されない状態(流動性があって液状であるもの)を〇、指で押して凹ませた後、凹みが3〜15秒維持されてその後に凹みが消失する状態(こわ張り状態であるが練り返すことで流動性が復活する状態)を△、指で押して凹ませることができない状態あるいは凹みが消失しないもの(流動性を失って練り返すこともできない状態)を×として評価した。硬化状況の評価結果については、下記表1に示す。
【0046】
2.試験2
<注入材の作製>
下記表2に示す配合でA液およびB液を作製し、作製したA液とB液とを混合して注入材を作製した。
【0047】
<注入材のフロー値の測定>
上記の各注入材について、フロー値の測定を行った。フロー値の測定は、NEXCO試験方法127に基づいて行った。フロー値の測定結果については、下記表2に示す。
【0048】
<注入材の強度の測定>
上記の各注入材が硬化することで形成される硬化体について、一軸圧縮強さの測定を行った。一軸圧縮強さの測定は、JIS A 1216(φ50×100mmの供試体)に基づいて行った。
強度の測定結果については、下記表2に示す。
【0049】
3.試験3
<注入材の作製>
下記表3に示す配合でA液およびB液を作製し、作製したA液を下記表3に示す日数で20℃の環境に放置した。そして、各放置日数のA液をB液と混合して注入材を作製した。
【0050】
<フロー値の測定>
上記の放置日数毎の注入材について、上記と同様の方法でフロー値の測定を行った。フロー値の測定結果については、下記表3に示す。
【0051】
<強度の測定>
上記の放置日数毎の注入材が硬化することで形成される硬化体について、上記と同様の方法で強度の測定を行った。強度の測定結果については、下記表3に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
<まとめ>
表1を見ると、各配合において各実施例と各比較例とを比較すると、各実施例の方が硬化状況の評価が高いことが認められる。つまり、超遅延剤を添加したA液のブリーディング率が本発明の範囲となるようにA液に超遅延剤を添加することで、A液が硬化するのを遅延させることができる。これにより、A液の回収を容易に行うことが可能となる。
また、実施例30〜31を比較すると、実施例30の硬化状況の評価が高いことが認められる。つまり、超遅延剤としてクエン酸を用いることで、A液の硬化をより遅延させることができる。これにより、A液の回収を容易に行うことが可能な期間をより長くすることができる。
また、実施例17〜21と、実施例22〜29とを比較すると、実施例22〜29の硬化状況の評価が高いことが認められる。つまり、超遅延剤が添加されたA液を比較的低い温度で保持することで、A液の硬化をより遅延させることができる。これにより、A液の回収を容易に行うことが可能な期間をより長くすることができる。
また、実施例1〜8と、実施例9〜16とを比較すると、実施例1〜8の硬化状況の評価が高いことが認められる。つまり、水/セメント比が比較的小さい方が、A液の硬化をより遅延させることができる。これにより、A液の回収を容易に行うことが可能な期間をより長くすることができる。
【0056】
表2を見ると、超遅延剤の添加量が増加するに従って、硬化体の強度が低くなることが認められる。つまり、超遅延剤が添加されたA液を用いて注入材を形成する場合には、A液の回収を容易に行うことができる範囲で超遅延剤の添加量を比較的少なくすることで、良好な強度を有する硬化体を形成することができる。
また、表1の実施例12を見ると、超遅延剤添加したA液だけでは7日でも流動性を保持しているが、表2の実施例12を見ると、超遅延剤添加したA液とB液と混合することにより遅延効果が消失し、材齢7日で一軸圧縮強さが発現していることが認められる。つまり、超遅延剤添加したA液であってもB液と混合することで施工可能となるため、A液の回収量を減らすことができ、経済性に優れるものとなる。
【0057】
表3を見ると、超遅延剤が添加されたA液の放置日数が変化しても、硬化体の強度に影響が少ないことが認められる。つまり、超遅延剤が添加されたA液を用いて注入材を形成する場合、A液の放置日数に影響されることなく、良好な強度を有する硬化体を形成することができる。
図1