(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952148
(24)【登録日】2021年9月29日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】光検出器
(51)【国際特許分類】
H01L 31/10 20060101AFI20211011BHJP
【FI】
H01L31/10 H
H01L31/10 A
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-33010(P2020-33010)
(22)【出願日】2020年2月28日
(65)【公開番号】特開2021-77846(P2021-77846A)
(43)【公開日】2021年5月20日
【審査請求日】2020年2月28日
(31)【優先権主張番号】201911089315.7
(32)【優先日】2019年11月8日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】598098331
【氏名又は名称】ツィンファ ユニバーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】500080546
【氏名又は名称】鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HON HAI PRECISION INDUSTRY CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】特許業務法人SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 金
(72)【発明者】
【氏名】魏 洋
(72)【発明者】
【氏名】▲ハン▼ 守善
【審査官】
桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】
特開2018−198314(JP,A)
【文献】
特開2018−006754(JP,A)
【文献】
特開2005−116618(JP,A)
【文献】
特開2004−171903(JP,A)
【文献】
特開2018−006755(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/099642(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2018/0006255(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第107564948(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/0392
H01L 31/08−31/119
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子、第一電極、第二電極及び電流検出素子を含む光検出器において、前記半導体素子、前記第一電極、前記第二電極及び前記電流検出素子が互いに電気的に接続されて、回路が形成され、
前記半導体素子は、第一カーボンナノチューブと、半導体層と、第二カーボンナノチューブと、を含み、
前記半導体層はn型半導体層とp型半導体層とを含み、前記n型半導体層と前記p型半導体層は積層して設置され、前記半導体層が第一表面及び第二表面を有し、前記第一表面及び前記第二表面が対向して設置され、
前記第一カーボンナノチューブは前記第一表面に設置され、且つ前記第一表面と直接に接触され、前記第一カーボンナノチューブは前記第一電極と電気的に接続され、
前記第二カーボンナノチューブは前記第二表面に設置され、且つ前記第二表面と直接に接触され、前記第二カーボンナノチューブは前記第二電極と電気的に接続され、
前記第一カーボンナノチューブ及び前記第二カーボンナノチューブは交差して設置され、前記第一カーボンナノチューブ、前記半導体層及び前記第二カーボンナノチューブは順に積層して設置されて、多層構造体が形成され、
第三電極及び絶縁層をさらに備え、
前記第三電極、前記絶縁層及び前記半導体素子が順次積層され、
前記第三電極の電圧を変更して、前記半導体層に形成されたヘテロ接合を、pn接合とnn接合との間で切り替え、前記光検出器の動作モードを、走査光電流がドット状に検出されるドットモードと走査光電流が線状に検出される線モードとの間で切り替える切り替え部を備えることを特徴とする光検出器。
【請求項2】
前記第一カーボンナノチューブ及び前記第二カーボンナノチューブは金属性のカーボンナノチューブであることを特徴とする、請求項1に記載の光検出器。
【請求項3】
前記第一カーボンナノチューブ及び前記第二カーボンナノチューブは内殻カーボンナノチューブであることを特徴とする、請求項1に記載の光検出器。
【請求項4】
前記多層構造体の横方向断面の面積は1nm2〜100nm2であることを特徴とする、請求項1に記載の光検出器。
【請求項5】
前記第一カーボンナノチューブの延伸方向と前記第二カーボンナノチューブの延伸方向とは互いに垂直であることを特徴とする、請求項1に記載の光検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
光検出器は、光エネルギーを検出する部品である。一般的に、光検出器の作動原理は、光電効果に基づくものである。材料が光エネルギーを吸収した後、材料の電気性能が変わるので、光線の有無及び光エネルギーの大きさを検出できる。半導体部品が光検出器にますます多く応用されてきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、技術レベルに制限されるため、光検出器が単一なモードで使われ、光検出器の応用範囲に影響を及ぼすこととなる。
【0004】
これによって、三つのモードで使われる新型の光検出器を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
半導体素子、第一電極、第二電極及び電流検出素子を含む光検出器において、前記半導体素子、前記第一電極、前記第二電極及び前記電流検出素子が互いに電気的に接続されて、回路が形成され、前記半導体素子は、第一カーボンナノチューブと、半導体層と、第二カーボンナノチューブと、を含み、前記半導体層はn型半導体層とp型半導体層とを含み、前記n型半導体層と前記p型半導体層は積層して設置され、前記半導体層が第一表面及び第二表面を有し、前記第一表面及び前記第二表面が対向して設置され、前記第一カーボンナノチューブは前記第一表面に設置され、且つ前記第一表面と直接に接触され、前記第一カーボンナノチューブは前記第一電極と電気的に接続され、前記第二カーボンナノチューブは前記第二表面に設置され、且つ前記第二表面と直接に接触され、前記第二カーボンナノチューブは前記第二電極と電気的に接続され、前記第一カーボンナノチューブ及び前記第二カーボンナノチューブは交差して設置され、前記第一カーボンナノチューブ、前記半導体層及び前記第二カーボンナノチューブは順に積層して設置されて、多層構造体が形成される。
【0006】
前記第一カーボンナノチューブ及び前記第二カーボンナノチューブは金属性のカーボンナノチューブである。
【0007】
前記第一カーボンナノチューブ及び前記第二カーボンナノチューブは内殻カーボンナノチューブである。
【0008】
前記多層構造体の横方向断面の面積は1nm
2〜100nm
2である。
【0009】
前記第一カーボンナノチューブの延伸方向と前記第二カーボンナノチューブの延伸方向とは互いに垂直である
【発明の効果】
【0010】
従来技術と比べて、本発明の光検出器の半導体素子は、2本のカーボンナノチューブが交差して、垂直pn接合を有する2次元半導体層を挟み込んで形成され、2本のカーボンナノチューブが電極として用いられる。2本のカーボンナノチューブが電極として用いられる際の電界シールドは弱く、垂直ポイントpn接合の漏れ電流は低く、且つカーボンナノチューブとヘテロ接合のナノ材料とのドーピングを電界によって容易に調整できる。電界の変調によって、カーボンナノチューブとpn接合の材料とのドーピング状態を変化させる。これにより、光検出器は、電界変調で半導体層に形成されたヘテロ接合をpn接合とnn接合との間で切り替えることができるため、光検出器は3つの異なるモードで動作することができる。これは、ナノエレクトロニクス及びナノオプトエレクトロニクスの将来において非常に重要である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第一実施例の光検出器の構造を示す図である。
【
図2】本発明の第一実施例の光検出器における半導体素子の側面を示す図である。
【
図3】本発明の第二実施例の光検出器の構造を示す図である。
【
図4】本発明の第二実施例の光検出器における半導体素子の側面を示す図である。
【
図5】本発明の第二実施例において、異なるゲート電圧で光検出器の走査光電流顕微鏡写真である。
【
図6】本発明の第二実施例の光検出器の光応答性能グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0013】
図1を参照すると、本発明の第一実施例は、光検出器10を提供する。光検出器10は、半導体素子100、第一電極202、第二電極204及び電流検出素子212を含む。半導体素子100、第一電極202、第二電極204及び電流検出素子212が互いに電気的に接続されて、回路が形成される。
【0014】
半導体素子100は、第一カーボンナノチューブ102、半導体層104及び第二カーボンナノチューブ106を含む。半導体層104が第一カーボンナノチューブ102と第二カーボンナノチューブ106との間に設置される。半導体層104が第一表面(図示せず)及び第二表面(図示せず)を含み、第一表面及び第二表面が対向して設置される。第一カーボンナノチューブ102が半導体層104の第一表面に設置され、且つ第一表面と直接に接触される。第二カーボンナノチューブ106が半導体層104の第二表面に設置され、且つ第二表面と直接に接触される。半導体層104がn型半導体層1042及びp型半導体層1044を含む。p型半導体層1044及びn型半導体層1042が積層して設置される。p型半導体層1044及びn型半導体層1042がそれぞれ二次元材料である。二次元材料とは、電子がナノメートルスケール(1〜100nm)の二次元のみで自由に移動(平面移動)できる材料を指す。例えば、二次元材料は、ナノフィルム、超格子、量子井戸などであってもよい。第一カーボンナノチューブ102の延伸方向と第二カーボンナノチューブ106の延伸方向とは交差して設置される。
【0015】
第一カーボンナノチューブ102が金属性のカーボンナノチューブである。第一カーボンナノチューブ102は、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、または多層カーボンナノチューブであってもよい。 第一カーボンナノチューブ102の直径は制限されず、0.5nm〜100nmであってもよい。一つの例において、第一カーボンナノチューブ102の直径は0.5nm〜10nmである。 好ましくは、第一カーボンナノチューブ102は単層カーボンナノチューブであり、その直径が0.5nm〜2nmである。本実施例において、第一カーボンナノチューブ102の直径が1nmである。
【0016】
本実施例において、第一カーボンナノチューブ102は内殻カーボンナノチューブである。内殻カーボンナノチューブとは、二層カーボンナノチューブまたは多層カーボンナノチューブの最も内側のカーボンナノチューブを指す。内殻カーボンナノチューブは、超長二層カーボンナノチューブまたは超長多層カーボンナノチューブから引き抜くことにより得られる。超長二層カーボンナノチューブまたは超長多層カーボンナノチューブとは、長さが150ミクロン以上の二層カーボンナノチューブまたは多層カーボンナノチューブである。具体的に、超長二層カーボンナノチューブまたは超長多層カーボンナノチューブの両端を伸ばして、超長二層カーボンナノチューブまたは超長多層カーボンナノチューブの外壁をすべて破損させると、超長二層カーボンナノチューブまたは超長多層カーボンナノチューブの中央部にある最も内側のカーボンナノチューブ(すなわち、内殻カーボンナノチューブ)のみが残される。内殻カーボンナノチューブの表面がきれいであり、その表面に不純物がないため、第一カーボンナノチューブ102は半導体層104と良好に接触することができる。もちろん、第一カーボンナノチューブ102は内殻カーボンナノチューブに制限されず、他の単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブまたは多層カーボンナノチューブであってもよい。 半導体層104の第一表面に、1つの第一カーボンナノチューブ102のみが設置される。
【0017】
半導体層104には、n型半導体層1042とp型半導体層1044が積層して設置され、半導体層104に垂直な方向にpn接合が形成される。半導体層104は二次元層状構造であり、その厚さはナノスケールである。 半導体層104の厚さが大きすぎると、半導体素子100の電流変調効果が制限される場合がある。好ましくは、半導体層104の厚さが1ナノメートル〜200ナノメートルである。好ましくは、n型半導体層1042の厚さが0.5ナノメートル〜100ナノメートルである。好ましくは、p型半導体層1044の厚さが0.5ナノメートル〜100ナノメートルである。さらに好ましくは、n型半導体層1042の厚さが0.5ナノメートル〜50ナノメートルであり、p型半導体層1044の厚さが0.5ナノメートル〜50ナノメートルである。本実施例において、n型半導体層1042は第一カーボンナノチューブ102と直接に接触され、p型半導体層1044は第二カーボンナノチューブ106と直接に接触される。 他の実施例では、n型半導体層1042は第二カーボンナノチューブ106と直接に接触され、p型半導体層1044は第一カーボンナノチューブ102と直接に接触される。
【0018】
p型半導体層1044及びn型半導体層1042の材料が制限されず、無機化合物半導体、元素半導体、有機半導体又はこれらの材料がドープされた材料でもよい。本実施例において、p型半導体層1044の材料がセレン化タングステン(WSe
2)であり、その厚さが14ナノメートルであり、n型半導体層1042の材料が硫化モリブデン(M
OS
2)であり、その厚さが16ナノメートルである。もう一つの例において、p型半導体層1044の材料がセレン化タングステン(WSe
2)であり、その厚さが76ナノメートルであり、n型半導体層1042の材料が硫化モリブデン(M
OS
2)であり、その厚さが76ナノメートルである。
【0019】
第二カーボンナノチューブ106が金属性のカーボンナノチューブである。第二カーボンナノチューブ106は、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、または多層カーボンナノチューブであってもよい。第二カーボンナノチューブ106の直径は制限されず、0.5nm〜100nmであってもよい。一つの例において、第二カーボンナノチューブ106の直径は0.5nm〜10nmである。 好ましくは、第二カーボンナノチューブ106は単層カーボンナノチューブであり、その直径が0.5nm〜2nmである。本実施例において、第二カーボンナノチューブ106の直径が1nmである。本実施例において、第二カーボンナノチューブ106は内殻カーボンナノチューブである。内殻カーボンナノチューブの表面がきれいであり、その表面に不純物がないため、第二カーボンナノチューブ106は半導体層104と良好に接触することができる。もちろん、第二カーボンナノチューブ106は内殻カーボンナノチューブに制限されず、他の単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブまたは多層カーボンナノチューブであってもよい。第二カーボンナノチューブ106の直径と第一カーボンナノチューブ102の直径とは同じでも異なってもよい。半導体層104の第二表面に、一つの第二カーボンナノチューブ106のみが設置される。
【0020】
第一カーボンナノチューブ102の延伸方向と第二カーボンナノチューブ106の延伸方向とは交差して角が形成される。この角は、0°〜90°(0は含まず)である。本実施例において、第一カーボンナノチューブ102の延伸方向と第二カーボンナノチューブ106の延伸方向とは互いに垂直であり、すなわち、角は90度である。
【0021】
図2を参照して、半導体層104、第一カーボンナノチューブ102、半導体層104、及び第二カーボンナノチューブ106が積層して設置されて、多層構造体108が形成される。多層構造体108は、横方向断面及び縦方向断面を定義して、横方向断面が半導体層104の表面に平行する断面であり、縦方向断面が半導体層104の表面に垂直する断面である。半導体層104に対する第一カーボンナノチューブ102及び第二カーボンナノチューブ106のサイズは小さく、半導体層104の表面には第一カーボンナノチューブ102及び一つの第二カーボンナノチューブ106のみが設置されるため、横方向断面の面積が第一カーボンナノチューブ102又は第二カーボンナノチューブ106の直径によって決まる。第一カーボンナノチューブ102及び第二カーボンナノチューブ106の直径は両方ともナノメートルであるため、多層構造体108の横方向断面の面積もナノメートルである。縦方向断面の面積は、第一カーボンナノチューブ102、第二カーボンナノチューブ106の直径および半導体層104の厚さによって決定される。第一カーボンナノチューブ102及び第二カーボンナノチューブ106の直径はともにナノスケールであり、半導体層104の厚さもナノスケールであるため、多層構造体108の縦方向断面の面積もナノスケールである。好ましくは、多層構造体108の横方向断面の面積は1nm
2〜100nm
2である。第一カーボンナノチューブ102と第二カーボンナノチューブ106と半導体層104とは、多層構造体108に垂直p-nヘテロ接合を形成する。p-nヘテロ接合はファンデルワールスヘテロ接合である。
【0022】
光検出器10が応用される時には、第一カーボンナノチューブ102及び第二カーボンナノチューブ106は、半導体層104の対向する二つの表面に設置された電極として用いることができる。光線が半導体層104の表面に照射される際、電流が半導体素子100、第一電極202、第二電極204及び電流検出素子212からなる回路に流れ、電流が多層構造体108の横方向断面を流れて、半導体素子100の有効部分が多層構造体108である。半導体素子100の全体のサイズが多層構造体108の体積より大きればよい。従って、半導体素子100が小さいサイズを有することができ、多層構造体108を含めばよい。半導体素子100はナノスケールの半導体素子となる。従って、半導体素子100を採用する光検出器10も、小さいサイズを有することができる。光検出器10が少ないエネルギー消費、ナノスケールのサイズ及びより高い集積度を持つ。
【0023】
第一電極202及び第二電極204が導電材料からなり、導電材料が金属、ITO、ATO、導電銀テープ、導電性ポリマー又は導電カーボンナノチューブのいずれの一つである。金属材料がアルミニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、チタン、パラジウム又は任意の組み合わせの合金である。第一電極202及び第二電極204は導電フィルムであってもよい。導電フィルムの厚さが2ナノクロメートル〜100マイクロメートルである。本実施例において、第一電極202及び第二電極204が銅及びチタンからなる金属複合構造である。具体的には、金属複合構造が銅層及びチタン層からなり、銅層がチタン層の表面に設置される。チタン層の厚さが5ナノメートルであり、銅層の厚さが60ナノメートルである。本実施例において、第一電極202は、第一カーボンナノチューブ102と電気的に接続され、第一カーボンナノチューブ102の一端に設置され且つ第一カーボンナノチューブ102の表面と緊密に接触される。第二電極204は、第二カーボンナノチューブ106と電気的に接続され、第二カーボンナノチューブ106の一端に設置され、且つ第二カーボンナノチューブ106の表面と緊密に接触される。
【0024】
光検出器10は、光に対して定性検出又は定量検出を行ってもよい。光検出器10が光に対して定性検出を行う作動原理は、光線が光検出器10に照射されない場合、第一カーボンナノチューブ102と半導体層104と第二カーボンナノチューブ106との間がオフ状態になり、電流が回路に流れず、電流検出素子212が電流を検出しない。光線が光検出器10に照射される場合、半導体層104が光起のキャリアを生成し、第一カーボンナノチューブ102と第二カーボンナノチューブ106との間に形成されるビルトインポテンシャルが光起の電子正孔対を分けた後、光起電流が生成され、即ち、電流が回路に流れ、電流検出素子212が電流を検出することができる。即ち、電流が回路に流れるかどうかによって、光源を検出する。
【0025】
光検出器10は、光に対して定量検出を行う作動原理は、電源をオンして、既知の異なる強度を有する光線で順次に検出点を照射して、電流検出素子212が検出する電流値を読み出し、ある強度を有する光線が一つの電流値に対応する。異なる強度を有する光線に対応する異なる電流値を、相応する折れ線グラフに作成することによって、異なる強度を有する光線に対応して形成される電流値の標準曲線を示すことができる。未知の強度を有する光線が検出点を照射する場合、電流検出素子212が検出する電流値によって、標準曲線から光線の強度値を読み出すことができる。
【0026】
光検出器10において、半導体素子100は、2本のカーボンナノチューブが垂直pn接合を有する2次元半導体層を挟み込んで形成され、2本のカーボンナノチューブが電極として用いられる。2本のカーボンナノチューブが電極として用いられる際、電界シールドは弱く、カーボンナノチューブとヘテロ接合のナノ材料とのドーピングを電界によって容易に調整できる。電界の変調によって、カーボンナノチューブとpn接合の材料とのドーピング状態を変化させる。これにより、光検出器10は、電界変調で半導体層104に形成されたヘテロ接合をpn接合とnn接合との間で切り替えることができるため、光検出器10は3つの異なるモードで動作することができる。したがって、光検出器10を応用する際、光検出器を交換することなく、電界のみを調整して複数のモードで光を検出し、異なる性能を実現できる。これは、従来の光検出器が実現できない。例えば、従来の光検出器は、高解像度検出と高応答検出を同時に実現できない。異なる光検出器を交換することによって、高解像度検出と高応答検出をそれぞれ実行する必要がある。しかし、本発明の光検出器10は、電界を調整することのみによって異なる動作モードを切り替えることができ、高解像度検出および高応答検出を実現でき、光検出器を交換する必要がない。
【0027】
図3及び
図4を参照すると、本発明の第二実施例は、光検出器20を提供する。第一実施例の光検出器10と比べて、本実施例の光検出器20は、更に第三電極206及び絶縁層208を含み、他の構造が第一実施例の光検出器10と同じであり、ここで詳しく説明しない。半導体素子100が第一電極202及び第二電極204と電気的に接続され、第三電極206が絶縁層208を通じて、半導体素子100、第一電極202及び第二電極204と絶縁して設置される。半導体素子100の具体的な構造が第一実施例の半導体素子100の構造と同じであり、ここで詳しく説明しない。
【0028】
光検出器20において、第三電極206は層状構造体である。絶縁層208が第三電極206の表面に設置される。第一電極202、第二電極204及び半導体素子100が絶縁層208の表面に設置され、且つ絶縁層208に支持される。本実施例において、第二カーボンナノチューブ106は絶縁層208が第三電極206と離れる表面に直接的に設置され、第二カーボンナノチューブ106は第三電極206に近く、第一カーボンナノチューブ102は第三電極206から遠い。第一カーボンナノチューブ102は半導体層104と第三電極206との間にシールド効果を生じない。半導体デバイス200が応用される際、第三電極206は半導体層104を制御することができ、その結果、光検出器20の光電性能を制御である。
【0029】
絶縁層208の材料が絶縁材料であり、例えば、窒化ケイ素や酸化ケイ素などの硬質材料、またはベンゾシクロブテン(BCB)、ポリエステル、アクリル樹脂などの可撓性材料である。絶縁層208の厚さが2ナノメートル〜100マイクロメートルである。本実施例において、絶縁層の材料が酸化シリコンであり、その厚さは50ナノメートルである。
【0030】
第三電極206が導電材料からなり、導電材料が金属、ITO、ATO、導電銀テープ、導電性ポリマー又は導電カーボンナノチューブ等である。金属材料がアルミニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、チタン、パラジウム又は任意の組み合わせの合金である。
【0031】
図3及び
図4を参照すると、光検出器20は、半導体素子100の制御電極としての第三電極206を含む。第三電極206は、光検出器20のゲートとみなすことができる。
【0032】
更に、光検出器20は基板210を含んでもよい。第三電極206、絶縁層208及び半導体素子100が基板210の表面に順次積層して設置されている。基板210は、主に第三電極206、絶縁層208及び半導体素子100を支持することに用いられる。基板210の材料は、光を吸収しない材料である。本実施例には、基板210の材料はシリコンである。
【0033】
図5は、光強度が0.236μWであり、ソース-ドレイン電圧が0Vであり、ゲート電圧がそれぞれ10V、−10V、0Vである場合の光検出器20の走査光電流に対応する顕微鏡写真a、b、cである。
図5の顕微鏡写真a〜cから、ゲート電圧が10Vである際、光検出器20の走査光電流は垂直線モードとして現れ、ゲート電圧が0Vである際、光検出器20の走査光電流は水平線モードとして現れ、ゲート電圧が−10Vである際、光検出器20の走査光電流はドットモードとして現れることがわかる。これは、光検出器20がゲート電圧を調整することにより三つの動作モードを切り替えることができることを示す。
【0034】
図6は、ゲート電圧が−10Vである際、MoS
2層の厚さが7.6nmであり、WSe
2層が76nmである光検出器、又はMoS
2層の厚さが16nmであり、WSe
2層が14nmである光検出器の光応答性能グラフを示す。光応答性能グラフから、光検出器20の光応答が比較的に大きいことがわかる。特に、MoS
2層の厚さが7.6nmであり、WSe
2層が76nmである光検出器の光応答は216mA/Wに達することができ、従来の光検出器よりもはるかに高い。ゲート電圧が−10Vである際、光検出器20の外部量子効率は41.7%に達する可能性がある。したがって、この光検出器には大きな可能性がある。
【0035】
本発明の光検出器が以下の効果がある。第一に、半導体素子は、2本のカーボンナノチューブが交差して、垂直pn接合を有する2次元半導体層を挟み込んで形成され、2本のカーボンナノチューブが電極として用いられる。2本のカーボンナノチューブが電極として用いられる際の電界シールドは弱く、垂直ポイントpn接合の漏れ電流は低く、且つカーボンナノチューブとヘテロ接合のナノ材料とのドーピングを電界によって容易に調整できる。電界の変調によって、カーボンナノチューブとpn接合の材料とのドーピング状態を変化させる。これにより、光検出器は、電界変調で半導体層に形成されたヘテロ接合をpn接合とnn接合との間で切り替えることができるため、光検出器は3つの異なるモードで動作することができる。第二に、光検出器の半導体素子は、2本のカーボンナノチューブが交差して2次元の半導体層を挟んで挟むことで形成される。2本のカーボンナノチューブチューブの直径はそれぞれナノスケールであり、2本のカーボンナノチューブチューブの交差部では、2本のカーボンナノチューブと半導体層とが重なり合ってナノメートルの多層構造体(垂直ポイントpnテロ接合)が形成される。半導体素子の完全体積は多層構造体の堆積より大きければよい。これにより、半導体素子のサイズはナノメートルに達することができる。したがって、半導体素子を使用した光検出器は、より小さなナノメートルサイズを有する可能性があり、これは将来のナノエレクトロニクスおよびナノフォトニクスに対する重要な意義がある。第三に、半導体素子の電極は、2本のカーボンナノチューブのみからなる。従来の電極と比較して、カーボンナノチューブが光を吸収しまたは反射することは無視できる。したがって、光検出器に半導体素子を使用すると、光検出の効率が大幅に向上できる。第四に、半導体素子のビルトインポテンシャルは比較的大きいため、本発明の光検出器は、光検出器の電力消費及びゼロオフセット信号対雑音比に関して優れた性能を有する。第五に、半導体素子の垂直点pnヘテロ接合は、異なる種類の半導体層を垂直に積層して設置することで形成される。横方向pnヘテロ接合に比べて、垂直点pnヘテロ接合において、電子の拡散距離が短く、リーク電流が低く、より高い光誘起キャリア抽出効率を有する。
【符号の説明】
【0036】
10、20 光検出器
100 半導体素子
102 第一カーボンナノチューブ
104 半導体層
1042 n型半導体層
1044 p型半導体層
106 第二カーボンナノチューブ
108 多層構造体
202 第一電極
204 第二電極
206 第三電極
208 絶縁層
210 基板
212 電流検出素子