(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方向に向けて延びるセラミックス製の複数の第1の線条部と、該第1の線条部と交差する方向に向けて延びるセラミックス製の複数の第2の線条部と、第1の線条部と第2の線条部とが交差することで画成される四辺形の対角線上を通るセラミックス製の第3の線条部とを有し、
第1の線条部、第2の線条部及び第3の線条部は1つの交差部で交差しており、
いずれの前記交差部においても、第3の線条部上に第2の線条部が配されており、
いずれの前記交差部においても、第2の線条部上に第1の線条部が配されている、板状のセラミックス構造体。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1ないし
図7には、本発明のセラミックス構造体の一実施形態が示されている。これらの図に示すセラミックス構造体(以下、単に「構造体」ともいう。)1は平板状のものであり、第1面1aと、これに対向する第2面1bとを有している。
【0009】
本実施形態の構造体1は、一方向Xに向けて延びるセラミックス製の複数の第1の線条部10を有する。それぞれの第1の線条部10は、ほぼ直線をしており互いに平行に延びている。隣り合う第1の線条部10の間隔はほぼ等しくなっている。
【0010】
構造体1は、X方向と異なる方向であるY方向に向けて延びるセラミックス製の複数の第2の線条部20を有する。それぞれの第2の線条部20は、直線をしており互いに平行に延びている。隣り合う第2の線条部20の間隔はほぼ等しくなっている。X方向とY方向とは異なる方向なので、第1の線条部10と第2の線条部20とは交差している。両線条部10,20の交差角度は、セラミックス構造体1の具体的な用途に応じて設定することができる。例えば第1の線条部10に対して、第2の線条部20の交差角度を90度とすることができる。あるいは
図1に示すとおり、第1の線条部10を基準として反時計回りの方向に沿って見たときに、第1の線条部10と第2の線条部20とのなす交差角度θを60度±40度、あるいは90度±40度の範囲で変更させることもできる。複数の第1の線条部10と、複数の第2の線条部20とが交差していることによって、構造体1の平面視において、四辺形の開孔部を有する格子が形成される。
図1では、菱形の形状をした開孔部を有する格子が、第1の線条部10と第2の線条部20との交差によって形成された状態が示されているが、形状は菱形のほかの四辺形、例えば図示しない長方形や正方形も取り得る。
【0011】
構造体1は、更に、セラミックス製の複数の第3の線条部30も有する。それぞれの第3の線条部30は、直線をしており互いに平行に延びている。第3の線条部30は、第1の線条部10の延びる方向X及び第2の線条部20の延びる方向Yのいずれとも異なる方向であるZ方向に沿って延びている。それぞれの第3の線条部30は、第1の線条部と第2の線条部とが交差することで画成される四辺形の対角線上を通るように配置されている。その結果、本実施形態の構造体1には、第1の線条部10、第2の線条部20及び第3の線条部30によって画成される複数の三角形の貫通孔3が形成されている。
図1では、略正三角形の貫通孔3が形成されている状態が示されている。
【0012】
上述のとおり、構造体1においては、第3の線条部30が、第1の線条部と第2の線条部とが交差することで画成される四辺形の対角線上を通るように配置されているので、構造体1の平面視において第1ないし第3の線条部10,20,30は必ず1つの交差部2で交差していることが好ましい。換言すれば、3つの線条部10,20,30のうち、2つの線条部のみが交差している交差部は構造体1には実質的に存在していないことが好ましい。
【0013】
本実施形態のように、3種類の線条部を組み合わせて用い、三角形の貫通孔が形成された構造体1は、X方向、Y方向及びZ方向の3方向に沿う強度が高いものとなる。したがって、2方向に沿う強度が高い特許文献1及び2に記載の格子体に比べて、強度低下の異方性が少なくなる。特に、
図1に示すとおり貫通孔3が略正三角形である場合、該正三角形の各辺は、その長さはほぼ等しく、且つ第1ないし第3の線条部10,20,30のうちのいずれか一つで形成されているので、強度的にほぼ等価である。したがって、強度低下の異方性が一層少なくなり、すべての方向において概ね等しい強度を示す。
【0014】
その上、本実施形態の構造体によれば、特許文献1及び2に記載の格子体に比べて小さな貫通孔を容易に形成することができる。したがって、本実施形態の構造体を、例えば被焼成体を焼成するときに用いられる、棚板や敷板などとも呼ばれるセッターとして用いる場合には、一層小さなサイズの被焼成体を該構造体上に載置することが可能である。このことは、焼成によってチップ積層セラミックコンデンサ(MLCC)を製造する場合に特に有利である。
【0015】
しかも、本実施形態の構造体は、特許文献1及び2に記載の格子体と同等の強度を発現させる場合に、該格子体よりも質量を軽くすることができる。その結果、本実施形態の構造体をセッターとして用いると、焼成時に、該構造体中での温度むらが少なくなり、耐熱衝撃性が向上するという利点もある。
【0016】
図4及び
図5に示すとおり、構造体1においては、第1面1a側に第3の線条部30が位置しており、第2面1b側に第1の線条部10が位置している。そして、第3の線条部30上に第2の線条部20が配置され、且つ第2の線条部20上に第1の線条部10が配置されている。更に、
図1ないし
図5に示すとおり、第3の線条部30と第2の線条部20とは、いずれの交差部2においても、第3の線条部30上に第2の線条部20が配されている。つまり、交差部2においては、構造体1の2つの面1a,1bのうち、相対的に第1面1a側に位置する第3の線条部30上に、相対的に第2面1b側に位置する第2の線条部20が配されている。これに加えて、第2の線条部20と第1の線条部10とは、いずれの交差部2においても、第2の線条部20上に第1の線条部10が配されている。つまり、交差部2においては、構造体1の2つの面1a,1bのうち、相対的に第1面1a側に位置する第2の線条部20上に、相対的に第2面1b側に位置する第1の線条部10が配されている。
【0017】
交差部2における厚みは、該交差部以外の部位における第1の線条部10の厚み、第2の線条部20の厚み及び第3の線条部30の厚みの総和よりも大きくなっていてもよい。あるいは、交差部2における厚みは、該交差部以外の部位における第1の線条部10の厚み、第2の線条部20の厚み及び第3の線条部30の厚みの総和と同じであるか、又は該総和よりも小さくなっていてもよい。したがって、構造体1の最大厚み部は、交差部2に存在しているか、又は交差部以外の部位に存在している。
【0018】
図6に示すとおり、第3の線条部30は、交差部2以外の位置において、平面視して一定の幅W3を有している。第3の線条部30は、その長手方向に直交する方向での厚み方向に沿った断面形状が、
図6に示すとおり、セラミックス構造体1の第1面1a側に位置する第1面30aと、セラミックス構造体1の第2面1b側に位置する第2面30bとで画成される。詳細には、第3の線条部30は、その長手方向に直交する方向での厚み方向に沿った断面が、交差部2以外の部位において、直線部30Aと、該直線部30Aの両端部を端部とする凸形の曲線部30Bとから構成される形状を有している。その結果、第3の線条部30の第1面30aは、該線条部30の厚み方向での断面が平坦面になっている。該平坦面は、セラミックス構造体1の面内方向と略平行になっている。一方、第3の線条部30の第2面30bは、該線条部30の厚み方向での断面が、セラミックス構造体1の第1面1aから第2面1bに向けた凸の曲面形状をしている。
【0019】
第3の線条部30と同様に、
図7(a)及び(b)に示すとおり、第1の線条部10及び第2の線条部20も、交差部2以外の位置において、平面視して一定の幅W1,W2を有している。幅W1,W2は、互いに同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。また、幅W1,W2は、第3の線条部30の幅W3と同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。構造体1の製造上は、W1、W2及びW3は同一とすることが簡便である。第1の線条部10及び第2の線条部20は、その長手方向に直交する方向での厚み方向に沿った断面形状が、
図7(a)及び(b)に示すとおり、セラミックス構造体1の第1面1a側に位置する第1面10a,20aと、セラミックス構造体1の第2面1b側に位置する第2面10b,20bとで画成される。第1の線条部10及び第2の線条部20の第1面10a,20aは、厚み方向での断面が、セラミックス構造体1の第2面1bから第1面1aに向けた凸の曲面形状になっている。一方、第1の線条部10及び第2の線条部20の第2面10b,20bは、厚み方向での断面が、セラミックス構造体1の第1面1aから第2面1bに向けた凸の曲面形状をしている。この曲面形状は、第3の線条部30における曲面形状と同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。本実施形態においては、第1の線条部10及び第2の線条部20の第1面10a,20aと第2面10b,20bとは対称形になっており、その結果、第1の線条部10及び第2の線条部20は、その長手方向に直交する方向での厚み方向に沿った断面形状が、円形又は楕円形になっている。
【0020】
図5に示すとおり、第3の線条部30における直線部30A、すなわち第1面10aを載置面として平面P上に載置したとき、各第1面30aはすべて平面P上に位置する。第1面30aは、セラミックス構造体1における第1面1aをなすものであるから、各第1面30aがすべて平面P上に位置することは、構造体1における第1面1aが平坦面になっていることを意味する。したがって構造体1を、その第1面1aが、平坦な載置面と当接するように載置した場合には、該第1面1aの全域が載置面と接することとなる。
【0021】
図5に示すとおり、第3の線条部30における直線部30A、すなわち第1面30aを載置面として平面P上に載置したとき、第1の線条部10及び第2の線条部20は、隣り合う2つの交差部2の間において平面Pから離間する形状をしている。したがって、隣り合う2つの交差部2の間において、第1の線条部10及び第2の線条部20と平面Pとの間には空間Sが形成される。
【0022】
一方、構造体1における第2面1bは、
図7(a)に示すとおり凸の曲面形状になっている第1の線条部10の第2面10bから構成されているので、平坦面ではなく、凹凸面となっている。
【0023】
構造体1における交差部2において、3種類の線条部10,20,30は一体化している。「一体化している」とは、交差部2の断面を観察において、3種類の線条部10,20,30間が、セラミックスとして連続した構造体となっていることをいう。3種類の線条部10,20,30の交差によって構造体1に形成されている各貫通孔3は同寸法であり、且つ同形をしている。貫通孔3は規則的に配置されている。
【0024】
第3の線条部30は、交差部2以外の部位において、該第3の線条部30における第2面30bの最高位置、すなわち頂部の位置が、該第3の線条部30の延びる方向に沿って同じになっている。
第2の線条部20に関しては、交差部2以外の部位において、該第2の線条部20における第2面20bの最高位置は、該第2の線条部20の延びる方向に沿って互いに同じ位置になっている。第2の線条部20における第1面20aの最低位置は、交差部2以外の部位において、該第2の線条部20の延びる方向に沿って互いに同じ位置になっている。
更に、第1の線条部10に関しては、該第1の線条部10における第2面10bの最高位置は、交差部2の位置及び交差部2以外の位置のいずれにおいても、第1の線条部10の延びる方向に沿って互いに同じ位置になっている。第1の線条部10における第1面10aの最低位置は、交差部2以外の部位において、第1の線条部10の延びる方向に沿って互いに同じ位置になっている。
【0025】
図4及び
図5に示すとおり、構造体1の交差部2を縦断面視したときに、第3の線条部30と第2の線条部20とは、第3の線条部30における凸形の曲線部30Bの頂部と、第2の線条部20における円形又は楕円形における下向きに凸の曲線の頂部、すなわち第1面20aの頂部のみが接触している。換言すれば、第3の線条部30と第2の線条部20とは点接触又は点接触に近い面接触をした状態になっている。第2の線条部20と第1の線条部10とは、第2の線条部20における円形又は楕円形における上向きに凸の曲線の頂部、すなわち第2面20bの頂部と、第1の線条部10における円形又は楕円形における下向きに凸の曲線の頂部、すなわち第1面10aの頂部のみが接触している。3種類の線条部10,20,30がこのような接触状態になっていることで、構造体1はその耐スポーリング性が高まることが本発明者の検討の結果判明した。この理由は、3種類の線条部10,20,30が点接触又はそれに近い面接触をして結合していることで、これらの線条部10,20,30が過度に強固に結合しにくくなり、そのことに起因して急速な加熱及び/又は冷却時に生じる体積変化を緩和できるからであると考えられる。この観点から、交差部2は、その厚みTcが、交差部2以外の位置における第1の線条部10の厚みT1と、交差部2以外の位置における第2の線条部20の厚みT2と、交差部2以外の位置における第3の線条部30の厚みT3との和である(T1+T2+T3)に対して、好ましくは0.5以上1.0以下、更に好ましくは0.8以上1.0以下、一層好ましくは0.9以上1.0以下となるような程度の点接触状態となっている。
【0026】
第1の線条部10と第2の線条部20と第3の線条部30とを、点接触又は点接触に近い面接触をした状態にするためには、例えば後述する方法で構造体1を製造すればよい。
【0027】
以上の構成を有するセラミックス構造体1は、これを例えば被焼成体の焼成用セッターとして用いた場合、該構造体1の第1面1aに被焼成体を載置すれば、該第1面1aは平坦面であることから、平坦性を求められる被焼成体の載置に好適なものとなる。平坦性を求められる被焼成体としては、例えば積層セラミックコンデンサ等の小型のチップ状電子部品などが挙げられる。これらの小型電子部品は、焼成工程においてセッターに引っ掛からないことが必要とされるので、構造体1の第1面1aが平坦であることは有利である。また、被焼成体は、第1面1aを構成する部材である第1の線条部10のみ接触するので、構造体1と被焼成体との接触面積が大幅に低減し、それによって被焼成体の急激な加熱及び冷却を行いやすくなる。また、構造体1は3種類の線条部10,20,30の交差によって形成されており複数の貫通孔3が形成されているので、熱容量が小さく、その点からも被焼成体の急激な加熱及び冷却を行いやすい。更に構造体1は、複数の貫通孔3が存在していることに起因して通気性が良好なので、このことによっても被焼成体の急激な冷却を行いやすい。良好な通気性は、隣り合う交差部2どうしの間において第2の線条部20が浮いていることによって一層顕著なものとなる。しかも構造体1においては、3種類の線条部10,20,30が交差部2において一体化しているので、充分な強度を有するものである。
【0028】
一方、構造体1の第2面1bには、mmオーダーの被焼成体を載置することが有利である。第2面1bは、第1の線条部10の曲面に起因する凹凸面となっているところ、このオーダーのサイズの電子部品は、それが載置される面に凹凸を有することが、脱脂性を高める観点から有利だからである。
【0029】
このように本実施形態の構造体1は、その一方の面が平坦であり、他方の面が凹凸面になっていることから、被焼成体の種類に応じて載置面を使い分けることができるという点で有利である。
【0030】
上述した各種の有利な効果を一層顕著なものとする観点から、T3の値は、50μm以上5mm以下であることが好ましく、200μm以上2mm以下であることが更に好ましい。一方、T1及びT2の値は、それぞれ独立に、50μm以上5mm以下であることが好ましく、200μm以上2mm以下であることが更に好ましい。T1とT2とT3との値の大小関係に特に制限はない。
【0031】
同様の観点から、交差部2における厚みTcは、(T1+T2+T3)に対して、好ましくは0.5以上1.0以下であることを条件として、20μm以上5mm以下であることが好ましく、50μm以上2mm以下であることが更に好ましい。
【0032】
また、第1の線条部10及び第2の線条部20の厚み方向での断面形状(
図7(a)及び(b)参照)が楕円形である場合、楕円形の短軸が構造体1の厚み方向に一致し、且つ楕円形の長軸が構造体1の平面方向に一致することが、被焼成体の載置を首尾よく行える点から好ましい。この場合、長軸/短軸の比率は、それぞれ独立に、1以上5以下であることが好ましく、1以上3以下であることが更に好ましい。また、第1の線条部10及び第2の線条部20の厚み方向での断面形状が楕円形又は円形であることは、構造体1の強度向上にも寄与している。
【0033】
セラミックス構造体1に形成された三角形の貫通孔3は、その面積が100μm
2以上100mm
2以下、特に2500μm
2以上1mm
2以下であることが、構造体1の熱容量を低下させる点や、通気性を向上させる点、及び構造体1の強度維持の点から好ましい。また、平面視におけるセラミックス構造体1の見かけの面積に対する貫通孔3の面積の総和の割合は、1%以上80%以下であることが好ましく、3%以上70%以下であることが更に好ましく、10%以上70%以下であることが一層好ましい。この割合は、セラミックス構造体1を平面視して、任意の大きさの矩形に切り取り、その矩形内に含まれる貫通孔3の面積の総和を算出し、その総和を矩形の面積で除し100を乗じて算出される。また、各貫通孔3の面積は、構造体1の顕微鏡観察像を画像解析することで測定できる。
【0034】
貫通孔3の面積に関連して、第3の線条部30の幅W3は50μm以上10mm以下であることが好ましく、75μm以上1mm以下であることが更に好ましい。一方、第1の線条部10及び第2の線条部20の幅W1,W2は、それぞれ独立に、50μm以上10mm以下であることが好ましく、75μm以上1mm以下であることが更に好ましい。W1とW2とW3との値の大小関係に特に制限はない。
【0035】
第1、第2及び第3の線条部10,20,30の幅W1,W2,W3との関連において、隣り合う第3の線条部30間の距離D3は、100μm以上10mm以下であることが好ましく、150μm以上5mm以下であることが更に好ましい。一方、隣り合う第1の線条部10間の距離D1及び第2の線条部20間の距離D2は、それぞれ独立に、100μm以上10mm以下であることが好ましく、150μm以上5mm以下であることが更に好ましい。D1、D2及びD3は、互いに同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。構造体1の製造上は、D1、D2及びD3は同一とすることが簡便である。
【0036】
セラミックス構造体1を構成するセラミックス素材としては、種々のものを用いることができる。例えば、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、ジルコン、コージェライト、チタン酸アルミニウム、チタン酸マグネシウム、マグネシア、二硼化チタン、窒化ホウ素などが挙げられる。これらのセラミックス素材は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、アルミナ、ムライト、コージェライト、ジルコニア又は炭化ケイ素を含むセラミックスからなることが好ましい。ジルコニアを含むセラミックスを用いる場合には、構造体1を高温焼成での使用により適したものとするため、イットリア添加により完全安定化したジルコニアなどを用いることができる。セラミックス構造体1を急激な加熱及び冷却に付す場合には、セラミックス素材として炭化ケイ素を用いることが特に好ましい。なお炭化ケイ素は、被焼成体との反応の懸念があることから、セラミックス素材として炭化ケイ素を用いる場合には、表面をジルコニア等の反応性の低いセラミックス素材でコートすることが好ましい。構造体1を構成するセラミックス素材の原料粉としては、ペーストにした場合の粘性や焼結されやすさを考慮すると、0.1μm以上200μm以下の粒径のものを用いることが好ましい。3種類の線条部10,20,30を構成するセラミックス素材は同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。交差部2における3種類の線条部10,20,30の一体性を高くする観点からは、各線条部10,20,30を構成するセラミックス素材は同じであることが好ましい。
【0037】
次に、本実施形態のセラミックス構造体1の好適な製造方法について説明する。本製造方法においては、まずセラミックス素材の原料粉を用意し、該原料粉を、水等の媒体及び結合剤と混合して線条部製造用のペーストを調製する。
【0038】
結合剤としては、この種のペーストに従来用いられたものと同様のものを用いることができる。その例としてはポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、デキストリン、リグニンスルホン酸ソーダ及びアンモニウム、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム及びアンモニウム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アラビアゴム、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸及びポリアクリルアミドなどのアクリル系ポリマー、キサンタンガム及びグアガムなどの増粘多糖体類、ゼラチン、寒天及びペクチンなどのゲル化剤、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、ワックスエマルジョン、並びにアルミナゾル及びシリカゾルなどの無機バインダーなどが挙げられる。これらのうちの2種類以上を混合して用いてもよい。
【0039】
ペーストの粘度は、塗布時の温度において高粘度であることが、本実施形態の構造を有する構造体1を首尾よく製造し得る点から好ましい。詳細には、ペーストの粘度は、塗布時の温度において、1.5MPa・s以上5.0MPa・s以下であることが好ましく、1.7MPa・s以上3.0MPa・s以下であることが更に好ましい。ペーストの粘度は、コーンプレート型回転式粘度計又はレオメーターを用いて、回転数0.3rpmにて測定開始後4分時の測定値を用いた。
【0040】
ペーストにおけるセラミックス素材の原料粉の割合は、20質量%以上85質量%以下であることが好ましく、35質量%以上75質量%以下であることが更に好ましい。ペーストにおける媒体の割合は、15質量%以上60質量%以下であることが好ましく、20質量%以上55質量%以下であることが更に好ましい。ペーストにおける結合剤の割合は、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、5質量%以上25質量%以下であることが更に好ましい。
【0041】
ペーストには、粘性調整剤として、増粘剤、凝集剤、チクソトロピック剤などを含有させることができる。増粘剤の例としては、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルアリルスルホン酸、アルキルアンモニウム塩、エチルビニルエーテル・無水マレイン酸コポリマー、フュームドシリカ、アルブミンなどのタンパク質などが挙げられる。多くの場合、結合剤は、増粘効果があるため、増粘剤に分類されることがあるが、更に厳密な粘性調整が必要とされる場合には、別途、結合剤に分類されない増粘剤を用いることができる。凝集剤の例として、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウムなどが挙げられる。チクソトロピック剤の例として、脂肪酸アミド、酸化ポリオレフィン、ポリエーテルエステル型界面活性剤などが挙げられる。ペースト調製用の溶媒としては、水以外にも、アルコール、アセトン及び酢酸エチルなどが用いられ、これらを2種類以上混合してもよい。また吐出量を安定させるために、可塑剤、潤滑剤、分散剤、沈降抑制剤、pH調整剤などを添加してもよい。可塑剤には、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどのグリコール系、グリセリン、ブタンジオール、フタル酸系、アジピン酸系、リン酸系などが挙げられる。潤滑剤には、流動パラフィン、マイクロワックス、合成パラフィンなどの炭化水素系、高級脂肪酸、脂肪酸アミドなどが挙げられる。分散剤には、ポリカルボン酸ナトリウム若しくはアンモニウム塩、アクリル酸系、ポリイチレンイミン、リン酸系などが挙げられる。沈降抑制剤には、ポリアマイドアミン塩、ベントナイト、ステアリン酸アルミニウムなどが挙げられる。PH調整剤には、水酸化ナトリウム、アンモニア水、シュウ酸、酢酸、塩酸などが挙げられる。
【0042】
得られたペーストを用い、平坦な基板上に、複数条の線条第3塗工体を互いに平行に且つ直線状に形成する。線条第3塗工体は、目的とする構造体1における第3の線条部30に対応するものである。線条第3塗工体の形成に用いられるペーストである第3ペーストは、上述したセラミックス素材の第3原料粉、媒体及び結合剤を含むものである。第3ペーストを用いた線条第3塗工体の形成には、小型押し出し機や印刷機などの種々の塗布装置を用いることができる。
【0043】
線条第3塗工体から媒体が除去されたら、次いで、第2ペーストを用い、該線条第3塗工体と交差するように、複数条の線条第2塗工体を互いに平行に且つ直線状に形成する。線条第2塗工体は、目的とする構造体1における第2の線条部20に対応するものである。第2ペーストとしては、第3ペーストと同様の組成のものを用いることができ、セラミックス素材の第2原料粉、媒体及び結合剤を含むものである。線条第2塗工体の形成には、線条第3塗工体と同様の塗布装置を用いることができる。線条第2塗工体が形成されたら、次いで該線条第2塗工体から媒体を除去して乾燥させ、該線条第2塗工体の粘度を一層高める操作を行う。この操作は、線条第3塗工体に対して行う操作と同様に行うことができる。
【0044】
線条第2塗工体から媒体が除去されたら、次いで、第1ペーストを用い、線条第2塗工体及び線条第3塗工体と交差するように、複数条の線条第1塗工体を互いに平行に且つ直線状に形成する。線条第1塗工体は、目的とする構造体1における第1の線条部10に対応するものである。第1ペーストとしては、第2ペースト及び/又は第3ペーストと同様の組成のものを用いることができ、セラミックス素材の第1原料粉、媒体及び結合剤を含むものである。線条第1塗工体の形成には、線条第2塗工体及び線条第3塗工体と同様の塗布装置を用いることができる。線条第1塗工体が形成されたら、次いで該線条第1塗工体から媒体を除去して乾燥させ、該線条第1塗工体の粘度を一層高める操作を行う。この操作は、線条第2塗工体及び/又は線条第3塗工体に対して行う操作と同様に行うことができる。このように、線条第3塗工体の形成及び媒体の除去と、線条第2塗工体の形成及び媒体の除去と、線条第1塗工体の形成及び媒体の除去とを順次行うことで、第3の線条部30上に第2の線条部20が位置し、且つ第2の線条部20上に第1の線条部10が位置する構造体1が首尾よく得られる。
【0045】
このようにして得られた焼成前構造体は、これを基板から剥離して焼成炉内に載置して焼成を行う。この焼成によって目的とするセラミックス構造体1が得られる。焼成は一般に大気下で行うことができる。焼成温度は、セラミックス素材の原料粉の種類に応じて適切な温度を選択すればよい。焼成時間に関しても同様である。
【0046】
以上の方法によって、目的とするセラミックス構造体1が得られる。このセラミックス構造体1は、棚板や敷板など、セラミックス製品の脱脂又は焼成用セッターとして好適に用いられるほか、セッター以外の窯道具、例えば匣やビームとしても用いることができる。更に、窯道具以外の用途、例えばフィルター、触媒担体などの各種の治具や各種構造材として用いることもできる。この場合、構造体1における凹凸面である第2面1b上に被焼成体を載置することが一般的であるが、被焼成体の種類によっては、平坦面である第1面1a上に被焼成体を載置してもよい。例えばチップ積層セラミックコンデンサ(MLCC)や積層セラミックインダクタ等の電子部品の製造過程における焼成工程を行う場合には、被焼成体を、平坦面である第1面1a上に載置することが好ましい。被焼成体を載置したセッターは、該被焼成体を焼成させることもあれば、被焼成体が飛散しないように更にその上に別のセラミックス構造体1や蓋体となり得る別の構造体を載置して焼成させてもよい。また、焼成工程の効率化のため、被焼成体を載置したセラミックス構造体1を複数段に重ねて焼成してもよいし、複数段に重ねたセラミックス構造体1どうしの間にブロック状のスペーサを置いて焼成してもよい。その他、セラミックス構造体1は、該セラミックス構造体1を、別のセラミックストレイの搭載部に載置し、該セラミックス構造体1上に被焼成体を載置して、これと1ユニットとし、複数のユニットを積み重ねた状態下に焼成する態様などにも適用可能である。
【0047】
次に、本発明のセラミックス構造体の別の実施形態について
図8(a)及び(b)並びに
図9(a)及び(b)を参照しながら説明する。これらの実施形態については、先に述べた実施形態と異なる点についてのみ説明し、特に説明しない点については、先に述べた実施形態についての説明が適宜適用される。また、
図8(a)及び(b)並びに
図9(a)及び(b)において、
図1ないし
図7と同じ部材には同じ符号を付してある。
【0048】
図8(a)及び(b)に示す実施形態のセラミックス構造体1Aは、第1、第2及び第3の線条部10,20,30の積層の仕方が、
図1に示す実施形態と相違している。詳細には、第1の線条部10上に第2の線条部20が配置され、第2の線条部20上に第3の線条部30が配置されている。第3の線条部30は、第1の線条部と第2の線条部とが交差することで画成される四辺形の対角線上を通るように配置されている。
【0049】
第1の線条部10、第2の線条部20及び第3の線条部30は1つの交差部2で交差している。そして、いずれの交差部2においても、第1の線条部10上に第2の線条部20が配されている。更に、いずれの交差部2においても、第2の線条部20上に第3の線条部30が配されている。
【0050】
図8(b)に示すとおり、第1の線条部10は、その長手方向に直交する方向での厚み方向に沿った断面形状が、セラミックス構造体1の第1面1a側に位置する第1面10aと、セラミックス構造体1の第2面1b側に位置する第2面10bとで画成される。詳細には、第1の線条部10は、その長手方向に直交する方向での厚み方向に沿った断面が、交差部2以外の部位において、直線部10Aと、該直線部10Aの両端部を端部とする凸形の曲線部10Bとから構成される形状を有している。その結果、第1の線条部10の第1面10aは、該線条部10の厚み方向での断面が平坦面になっている。該平坦面は、セラミックス構造体1の面内方向と略平行になっている。一方、第1の線条部10の第2面10bは、該線条部10の厚み方向での断面が、セラミックス構造体1の第1面1aから第2面1bに向けた凸の曲面形状をしている。一方、第2の線条部20及び第3の線条部30に関しては、それらの断面が、交差部2以外の部位において、円形又は楕円形の形状を有している。
【0051】
図9(a)及び(b)に示す実施形態のセラミックス構造体1Bも、
図8(a)及び(b)に示す実施形態のセラミックス構造体1Aと同様に、第1、第2及び第3の線条部10,20,30の積層の仕方が、
図1に示す実施形態と相違している。詳細には、第2の線条部20上に第3の線条部30が配置され、第3の線条部30上に第1の線条部10が配置されている。第3の線条部30は、第1の線条部と第2の線条部とが交差することで画成される四辺形の対角線上を通るように配置されている。
【0052】
第1の線条部10、第2の線条部20及び第3の線条部30は1つの交差部2で交差している。そして、いずれの交差部2においても、第2の線条部20上に第3の線条部30が配されている。更に、いずれの交差部2においても、第3の線条部30上に第1の線条部10が配されている。
【0053】
図9(b)に示すとおり、第2の線条部20は、その長手方向に直交する方向での厚み方向に沿った断面形状が、セラミックス構造体1の第1面1a側に位置する第1面20aと、セラミックス構造体1の第2面1b側に位置する第2面20bとで画成される。詳細には、第2の線条部20は、その長手方向に直交する方向での厚み方向に沿った断面が、交差部2以外の部位において、直線部20Aと、該直線部20Aの両端部を端部とする凸形の曲線部20Bとから構成される形状を有している。その結果、第2の線条部20の第1面20aは、該線条部20の厚み方向での断面が平坦面になっている。該平坦面は、セラミックス構造体1の面内方向と略平行になっている。一方、第2の線条部20の第2面20bは、該線条部20の厚み方向での断面が、セラミックス構造体1の第1面1aから第2面1bに向けた凸の曲面形状をしている。第2の線条部30及び第1の線条部10に関しては、それらの断面が、交差部2以外の部位において、円形又は楕円形の形状を有している。
【0054】
以上の
図8(a)及び(b)並びに
図9(a)及び(b)に示す実施形態によっても、
図1ないし
図7に示す実施形態と同様の効果が奏される。
【0055】
次に、上述した各実施形態に共通する事項について説明する。上述した各実施形態のセラミックス構造体は、平面視での形状に特に制限はなく、例えば円形、楕円形又は矩形などであり得る。あるいは、直線と曲線とを組み合わせた輪郭を有していてもよい。セラミックス構造体がその輪郭の少なくとも一部に直線辺部を有する場合には、第1、第2及び第3の線条部10,20,30のうちのいずれか一つの線条部が、直線辺部と平行に配置されていることが、セラミックス構造体の直線辺部近傍の対衝撃性をより強固に保持する観点から好ましい。また、直線辺部は、該直線辺部のいずれかの位置で前記の交差部と交わることが、セラミックス構造体の端部におけるチッピングに起因する欠けを防止する観点から好ましい。
【0056】
特に、
図1に示す実施形態のセラミックス構造体1の場合には、第1の線条部10又は第3の線条部30が、直線辺部と平行に配置されていることが好ましい。この場合、第2の線条部20は、直線辺部と10度以上80度以下又は100度以上170度以下、特に20度以上70度以下又は110度以上160度以下、とりわけ30度以上60度以下又は105度以上150度の角度で交わっていることが、セラミックス構造体1に生じたクラック等の欠陥の伝播を効果的に阻止する観点から好ましい。
図8(a)に示す実施形態のセラミックス構造体1Aの場合には、第1の線条部10又は第3の線条部30が、直線辺部と平行に配置されていることが好ましい。この場合、第2の線条部20は、直線辺部と上述の角度で交わっていることがセラミックス構造体1Aに生じたクラック等の欠陥の伝播を効果的に阻止する観点からより好ましい。
図9(a)に示す実施形態のセラミックス構造体1Bの場合には、第3の線条部30が、直線辺部と平行に配置されていることが好ましい。この場合、第2の線条部は、直線辺部と上述の角度で交わっていることがセラミックス構造体1Bに生じたクラック等の欠陥の伝播を効果的に阻止する観点から好ましい。
【0057】
また、上述した各実施形態のセラミックス構造体は、その強度を向上させる目的で、該構造体の外周に外枠(図示せず)を設けてもよい。この外枠は該構造体と同じ材料から一体的に形成してもよく、あるいは該構造体とは別途製造しておき、所定の接合手段で接合してもよい。外枠は、その幅が一定であってもよく、あるいは幅が広い部位と狭い部位とを有していてもよい。外枠の幅が一定である場合、当該幅は、0.4mm以上10mm以下であることが好ましい。外枠の幅が一定でない場合、当該幅は、最も広い部位において1mm以上10mm以下であることが好ましく、最も狭い部位において0.5mm以上1mm以下であることが好ましい。
【0058】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、前記の各実施形態においては、第1、第2及び第3の線条部10,20,30から構成される3種類の線条部を用いて、3層で一単位となる構造体が形成されていたが、これに代えて、第1、第2及び第3の線条部10,20,30とから構成される繰り返し単位を2以上積層して構造体を形成してもよい。
【0059】
また、
図1に示す実施形態において、第3の線条部30の下に第1の線条部10を配置したり、第1の線条部10上に第3の線条部を配置したりしてもよい。同様に、
図8(a)に示す実施形態において、第1の線条部10の下側に第3の線条部30を配置したり、第3の線条部30上に第1の線条部10を配置したりしてもよい。更に同様に、
図9(a)に示す実施形態において、第2の線条部20の下側に第1の線条部10を配置したり、第1の線条部10上に第2の線条部20を配置したりしてもよい。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「部」は「質量部」を意味する。また、セラミックス構造体の形態、線条体の積層数、線条体間の距離、質量などは表1に示すとおりとした。
【0061】
〔実施例1〕
本実施例では、
図1に示す平板状のセラミックス構造体1を製造した。
(1)線条塗工体形成用のペーストの調製
平均粒径0.8μmの8モル%イットリア添加完全安定化ジルコニア粉65.3部と、水系結合剤としてメチルセルロース系バインダー5.0部と、可塑剤として、グリセリン2.5部と、ポリカルボン酸系分散剤(分子量12000)1.1部と、水26.1部とを混合し、脱泡してペーストを調製した。ペーストの粘度は25℃において2.0MPa・sであった。
(2)線条塗工体の形成
前記のペーストを原料とし、直径0.8mmのノズルを有する小型押し出し機を用いて25℃の環境下、樹脂基板上に線条第3塗工体を形成し、引き続きそれに交差する線条第2塗工体及び線条第1塗工体を形成した。線条第2塗工体と線条第1塗工体との交差角度は60度とし、菱形の格子が形成されるようにした。線条第3塗工体は、菱形の対角線のうち、短い方の対角線上を通るようにした。このようにして焼成前構造体を得た。
(3)焼成工程
乾燥後の焼成前構造体を樹脂基板から剥離した後、大気焼成炉内に載置した。この焼成炉内で脱脂及び焼成を行い、
図1に示す形状の矩形のセラミックス構造体を得た。焼成温度は1600℃とし、焼成時間は3時間とした。得られた構造体における諸元を以下の表1に示す。この構造体においては、第3の線条部が、直線辺部と平行になっていた。
こうして得られた構造体における第1の線条部10は、幅W1が425μm、厚みT1が400μmであり、該構造体における第2の線条部20は、幅W2が420μm、厚みT2が410μmであり、該構造体における第3の線条部30は、幅W3が425μm、厚みT3が410μmであった。交差部2の厚みTcは1160μmであった。
【0062】
〔実施例2〕
本実施例では、
図8(a)に示す平板状のセラミックス構造体1Aを製造した。
実施例1と同様のペーストを原料とし、直径0.8mmのノズルを有する小型押し出し機を用いて25℃の環境下、樹脂基板上に線条第1塗工体を形成し、引き続きそれに交差する線条第2塗工体及び線条第3塗工体を形成した。線条第2塗工体と線条第1塗工体との交差角度は60度とし、菱形の格子が形成されるようにした。線条第3塗工体は、菱形の対角線のうち、短い方の対角線上を通るようにした。それ以外は実施例1と同様にして、
図8(a)に示す形状の矩形のセラミックス構造体を得た。得られた構造体における諸元を以下の表1に示す。この構造体においては、第3の線条部が、直線辺部と平行になっていた。
【0063】
〔実施例3〕
本実施例では、
図9(a)に示す平板状のセラミックス構造体1Bを製造した。
実施例1と同様のペーストを原料とし、直径0.8mmのノズルを有する小型押し出し機を用いて25℃の環境下、樹脂基板上に線条第2塗工体を形成し、引き続きそれに交差する線条第3塗工体及び線条第1塗工体を形成した。線条第2塗工体と線条第1塗工体との交差角度は60度とし、菱形の格子が形成されるようにした。線条第3塗工体は、菱形の対角線のうち、短い方の対角線上を通るようにした。それ以外は実施例1と同様にして、
図9(a)に示す形状の矩形のセラミックス構造体を得た。得られた構造体における諸元を以下の表1に示す。この構造体においては、第3の線条部が、直線辺部と平行になっていた。
【0064】
〔比較例1〕
本比較例では格子状のセラミックス構造体を製造した。
実施例1と同様のペーストを原料とし、直径0.8mmのノズルを有する小型押し出し機を用いて25℃の環境下、樹脂基板上に線条第1塗工体を形成し、引き続きそれに直交する線条第2塗工体を形成した。その上に、線条第1塗工体及び線条第2塗工体を形成し、合計で4層の塗工体からなる格子状の焼成前構造体を得た。第1の線条部と第2の線条部は、90°で直交する角度とし、直線辺部と各条部の交差角度は0°(平行)ないし90°(直交)となるよう配置した。それ以外は実施例1と同様にして矩形のセラミックス構造体を得た。得られた構造体における諸元を以下の表1に示す。
【0065】
〔比較例2〕
本比較例では格子状のセラミックス構造体を製造した。
実施例1と同様のペーストを原料とし、直径0.8mmのノズルを有する小型押し出し機を用いて25℃の環境下、樹脂基板上に線条第1塗工体を形成し、引き続きそれに直交する線条第2塗工体を形成した。その上に、線条第1塗工体を形成し、合計で3層の塗工体からなる格子状の焼成前構造体を得た。第1の線条部と第2の線条部は、90°で直行する角度とし、辺部と各条部の交差角度は0°(平行)ないし90°(直交)となるよう配置した。それ以外は実施例1と同様にして矩形のセラミックス構造体を得た。得られた構造体における諸元を以下の表1に示す。
【0066】
〔実施例4ないし6並びに比較例3及び4〕
線条体の幅及び線条体間の距離を表1に示すとおりとする以外は、実施例1ないし3及び比較例2と同様にしてセラミックス構造体を得た。
【0067】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られたセラミックス構造体について、以下の方法で耐熱衝撃温度及び強度を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0068】
〔耐熱衝撃温度〕
焼成炉にセラミックス構造体を入れ、1時間保持後、一気に大気中に取り出し急冷する。室温までセラミックス構造体が戻った後の亀裂の有無を確認する。評価は200℃から開始し、亀裂がない場合は更に焼成炉の設定温度を25℃上げて、再度試験を繰り返す。亀裂が入らずに耐久を保持した炉の温度上限値を、耐熱衝撃温度とする。
【0069】
〔強度評価1〕
得られたセラミックス構造体に対して、強度評価を行った。実施例で得られたセラミックス構造体に対しては、第3の線条部が交わる直線辺部に平行な方向に曲げたときの強度を求めた。比較例で得られたセラミックス構造体に対しては、2層備わった第1の線条部に直交する方向に曲げたときの強度を求めた。強度評価は4点曲げ試験を採用した。4点曲げ試験は、JIS R1601:2008ファインセラミックスの室温曲げ強さ試験方法に準拠した。この際、断面積は、構造体の幅及び厚さから計算した。
【0070】
〔強度評価2〕
得られたセラミックス構造体に対して、実施例1と比較例2に対しては、強度評価1に対して直交する方向での強度も測定した。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示す結果から明らかなとおり、線条体の幅及び間隔が実施例及び比較例で同じであるにもかかわらず、実施例の方が貫通孔の面積を小さくできることが判る。また、線条体の幅及び間隔が実施例及び比較例で同じであるにもかかわらず、実施例の方が質量を軽くできることも判る。しかも、実施例の方が、質量が軽いにもかかわらず、比較例よりも耐熱衝撃性及び強度に優れることも判る。
また、実施例1では強度評価1での強度に対し、強度評価2の強度は−2%という僅かな低下であったが、比較例2は−35%も低下し、大きな異方性が観察された。したがって、実施例は強度異方性にも優れていることが判った。