特許第6952196号(P6952196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952196
(24)【登録日】2021年9月29日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】アミラーゼ組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/26 20060101AFI20211011BHJP
   A23L 33/195 20160101ALI20211011BHJP
   C12N 9/96 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
   C12N9/26 A
   A23L33/195
   C12N9/96
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-530532(P2020-530532)
(86)(22)【出願日】2020年3月11日
(86)【国際出願番号】JP2020010428
(87)【国際公開番号】WO2020184596
(87)【国際公開日】20200917
【審査請求日】2020年6月3日
【審判番号】不服2021-1817(P2021-1817/J1)
【審判請求日】2021年2月9日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/006424
(32)【優先日】2020年2月19日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2019-43746(P2019-43746)
(32)【優先日】2019年3月11日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯島 学
【合議体】
【審判長】 田村 聖子
【審判官】 中島 庸子
【審判官】 安居 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−069973号公報
【文献】 特開2011−36237号公報
【文献】 Journal of Food Science,1995年,Vol.60,No.6,pp.1313−1320
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C12N 9/00-9/99
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコースを構成単位として含む糖類、グリセリン、及びβ−アミラーゼを含み、
前記糖類の配合量が1〜20重量%であり、
前記グリセリンの配合量が40〜60重量%である、アミラーゼ組成物。
【請求項2】
グルコースを構成単位として含む糖類、及びグリセリンの配合量の合計が70重量%以下である、
請求項1に記載のアミラーゼ組成物。
【請求項3】
糖類が、スクロース、トレハロース、デキストリン、マルトース、及びマルチトールからなる群から選択される1以上である、
請求項1または2に記載のアミラーゼ組成物。
【請求項4】
β−アミラーゼ、グリセリン40〜60重量%、及びグルコース単位を含む糖類1〜20重量%を混合する工程を含む、β−アミラーゼの安定化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミラーゼ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
βアミラーゼは、マルトースや水飴の製造において用いられており、また、餅・餅菓子等の老化防止製剤としても用いられている。βアミラーゼには大豆、大麦、小麦、甘藷といった植物に由来するものと、微生物由来のものが存在する。大麦由来の液状βアミラーゼ製剤と比較し、大豆由来のβアミラーゼは耐熱性が高く、約60℃の高温でも活性を示すため、大豆以外に由来するβアミラーゼよりも幅広い条件で使用できることが期待される。また、大豆由来のβアミラーゼは、大麦由来のβアミラーゼの1/2の添加量で同等の糖化効果を生じるため、酵素使用量およびコストを低減できることが期待される。
【0003】
一般的に、液状の酵素製剤には酵素活性の維持や防腐のために安定剤が添加されている。高い防腐効果を得るためには、安息香酸やパラベン類、ソルビン酸といった化学物質が添加されることがあるが、これらの化学物質は食品用途での使用が制限される指定添加物に該当し、食品の安全性への関心の高まりから、市場では敬遠される傾向にある。
【0004】
製品の保存安定性向上のため、酵素製剤に塩化ナトリウム等の塩類を加えることにより水分活性を下げ、或いは浸透圧を高めることで、酵素製剤における微生物の繁殖を抑制することが可能である。しかし、塩類を含むβアミラーゼ製剤をマルトースの製造に使用する場合には、イオン交換樹脂による精製工程のうちとりわけ脱色・脱塩工程で塩類が悪影響を及ぼすおそれがある。
【0005】
特許文献1は、プロテアーゼによる自己分解の防止や水系溶媒中での沈殿防止のために多価アルコールと糖類を添加することを開示している。しかし、アミラーゼの長期間にわたる保存安定性を向上させる方法は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017−029129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、食品用途として人体への影響が懸念される化学物質を用いることなく、長期間にわたりアミラーゼを安定に保存できるアミラーゼ組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が鋭意検討の結果、多価アルコール、及び、グルコースを構成単位として含む糖類を併用することで、長期間にわたるアミラーゼの保存安定性を実現することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、グルコースを構成単位として含む糖類、多価アルコール、及びアミラーゼを含む、アミラーゼ組成物に関する。
【0010】
グルコースを構成単位として含む糖類、及び多価アルコールの配合量の合計が70重量%以下であることが好ましい。
【0011】
多価アルコールがグリセリン、ソルビトール、及びプロピレングリコールからなる群から選択されることが好ましい。
【0012】
糖類が、スクロース、トレハロース、デキストリン、マルトース、及びマルチトールからなる群から選択される1以上であることが好ましい。
【0013】
アミラーゼがβアミラーゼであることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、前記アミラーゼ組成物を含む食品添加物に関する。
【0015】
また、本発明は、前記食品添加物を含む食品に関する。
【0016】
また、本発明は、アミラーゼ、多価アルコール、及びグルコース単位を含む糖類を混合する工程を含む、アミラーゼの安定化方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のアミラーゼ組成物は、食品用途として人体への影響が懸念される化学物質を含まず、長期間にわたるアミラーゼの保存安定性を向上させる。また、本発明のアミラーゼ組成物は必須要素としては塩類を含まないため、マルトース製造工程に負荷をかけることもない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】比較例1〜4におけるアミラーゼ組成物の相対活性(力価残存率)を示す。
図2】実施例1〜3、比較例5〜6におけるアミラーゼ組成物の相対活性(力価残存率)を示す。
図3】実施例4〜7、比較例7におけるアミラーゼ組成物の相対活性(力価残存率)を示す。
図4】実施例8〜12、比較例7〜8におけるアミラーゼ組成物の相対活性(力価残存率)を示す。
図5】実施例13、比較例8〜13におけるアミラーゼ組成物の相対活性(力価残存率)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<<アミラーゼ組成物>>
本発明のアミラーゼ組成物は、グルコースを構成単位として含む糖類、多価アルコール、及びアミラーゼを含む。
【0020】
<アミラーゼ>
アミラーゼはデンプンやグリコーゲン等のα−1,4−結合を切断してマルトースを生成する酵素である。アミラーゼは、さらにαアミラーゼ、βアミラーゼ、グルコアミラーゼ、イソアミラーゼ、マルトジェニックアミラーゼ等に分類される。本発明におけるアミラーゼは特に限定されないが、高い耐熱性を有する製剤の調整が可能なβアミラーゼが好ましい。
【0021】
本発明におけるアミラーゼの由来は特に限定されず、植物、動物、微生物が挙げられる。この中でも食経験があり食品への適用が容易であるために大豆、大麦、小麦、甘藷由来のアミラーゼ、Aspergillus属、Bacillus属、Streptomyces属などの微生物が産生するアミラーゼが好ましく、大豆由来のβアミラーゼがより好ましい。大豆由来のβアミラーゼは、優れた耐熱性と反応性を有するため、大麦由来のβアミラーゼ等大豆以外に由来するものと比較して幅広い用途での有用性が期待される。
【0022】
アミラーゼは、由来となる植物、動物、微生物から抽出したもの、遺伝子組み換え技術を用いて大量生産させたもののいずれを用いてもよい。また野生型アミラーゼを用いてもよく、変異型アミラーゼを用いてもよい。
【0023】
アミラーゼの取得方法として、アミラーゼが由来生物の細胞内に蓄積する場合には、組織および細胞を破砕し、遠心分離などによって無細胞抽出液を得る。これをアミラーゼとして用いてもよい。また、無細胞抽出液を出発材料とし、塩析法や、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィーなどの一般的なタンパク質精製法により精製したものを用いてもよい。アミラーゼを微生物により生産させる際にアミラーゼが細胞外に分泌される場合には、培地から精製することができる。本発明で用いるアミラーゼは純品には限られず、大豆ホエー等の植物抽出物、微生物の無細胞抽出液等の粗精製物に含まれている状態であってもよい。
【0024】
高いアミラーゼ力価を保持するために、アミラーゼ組成物中におけるアミラーゼの含有量は30重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、70重量%以上がさらに好ましく、80重量%以上がさらにより好ましく、90重量%以上が特に好ましい。
【0025】
<多価アルコール>
多価アルコールは、水酸基を2個以上有するアルコールかつ水分活性を低下させることが出来るものであれば特に限定されない。多価アルコールの具体例としては、たとえば、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。これらの中でもグリセリンが好ましい。
【0026】
アミラーゼ組成物中、多価アルコールの含有量は30〜60重量%が好ましく、30〜55重量%がより好ましい。30重量%未満ではアミラーゼを十分に安定化できない傾向があり、60重量%を超えると組成物中のアミラーゼ力価が希釈され過ぎてしまう。
【0027】
<グルコースを構成単位として含む糖類>
糖類は、グルコースを含むものであれば単糖、二糖類、三糖類以上の多糖類のいずれでもよく、特に限定されない。二糖類や多糖類は、グリコシド結合によって単糖分子が重合した物質であって、単糖分子の一つとしてグルコースを含むものであれば特に限定されない。二糖類や多糖類の場合、グルコースはα−1,4−結合していることが好ましい。グルコースを構成単位として含む糖類の具体例としては、たとえばデキストリン、マルトース、マルチトール、スクロース、ラクトース、トレハロース、セロビオースなどが挙げられる。これらの中でも保存中に褐変し製品品質を低下させる還元基を含まない、または還元基の割合が少ないデキストリン、スクロース、トレハロース、マルチトールなどが好ましい。
【0028】
アミラーゼ組成物中、グルコースを構成単位として含む糖類の含有量は1〜20重量%が好ましく、2〜15重量%がより好ましい。1重量%未満ではアミラーゼを十分に安定化できない傾向があり、20重量%を超えると組成物中のアミラーゼ力価を向上できない。
【0029】
さらに、アミラーゼ組成物中、グルコースを構成単位として含む糖類、及び多価アルコールの配合量の合計は、70重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましく、50重量%以下がさらに好ましく、45重量%以下がさらにより好ましい。70重量%を超えると、アミラーゼ組成物に含まれるアミラーゼ濃度が低下することとなる。アミラーゼ組成物中のアミラーゼ濃度を向上させるために、グルコースを構成単位として含む糖類、及び多価アルコールの配合量の合計量は小さい方が好ましいが、その下限は一般的には30重量%である。
【0030】
アミラーゼ組成物の形態は特に限定されず、液体または固体のいずれであってもよい。液体形態としては水溶液、懸濁液、スラリー等が挙げられる。固体形態としては粉末、顆粒、錠剤等が挙げられる。この中でも、コストやハンドリングの観点から液状形態が好ましい。従来、液状形態ではアミラーゼの酵素活性を維持し且つ微生物汚染等を抑制することが難しいとされているが、本発明のアミラーゼ組成物ではアミラーゼ活性を安定的に維持できる。
【0031】
アミラーゼ組成物が液体形態の場合、アミラーゼ組成物のpHは4〜9が好ましく、4.5〜7がより好ましく、5〜6がさらに好ましい。pH4未満では析出物が生じる傾向がある。pH9を超えるとアミラーゼの活性が損なわれる傾向がある。アミラーゼ組成物のpHは、塩酸、硫酸などの酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基により調整することができる。
【0032】
アミラーゼ組成物の酵素力価は特に限定されず、一般的に1,000〜1,000,000ユニット/g以下が好ましい。ここで、酵素力価は、pH5.5/60℃の条件下で1時間に1mgのマルトースを生成する酵素量を1ユニットとする。
【0033】
本発明のアミラーゼ組成物は、多価アルコールと、グルコースを構成単位として含む糖類を含むため、アミラーゼの活性を長期にわたって安定に維持できる。アミラーゼ組成物は、40℃で3ヶ月保存した後でも、保存前と比較して70%以上の活性が維持されることが好ましく、80%以上の活性が維持されることが好ましい。活性は、前述の酵素力価により評価できる。
【0034】
本発明のアミラーゼ組成物は、組成物中での生菌の繁殖を防止できる。40℃で3ヶ月保存した後でも、生菌が10,000個以上に増殖しないことが好ましい。
【0035】
<組成物の製造方法>
アミラーゼ組成物は、各成分を任意の順序で混合することにより製造できる。各成分を混合した後、多孔質材料との接触や、フィルター透過により、濾過や除菌を行ってもよい。
【0036】
アミラーゼ組成物は、グルコースを構成単位として含む糖類、多価アルコール、及びアミラーゼの他に任意の成分を含んでいてもよい。
【0037】
<<食品添加物>>
本発明の食品添加物は、上記アミラーゼ組成物を含むことを特徴とする。食品添加物は、アミラーゼ組成物以外に、食品に許容される他の成分を含んでいてもよい。このような他の成分としては、例えば、賦形剤、pH調整剤、酵素、増粘多糖類、乳化剤、乳化剤と重合リン酸塩との混合物、乳製品、エキス類、甘味料、発酵風味料、卵、無機塩類、保存料、有機酸、金属類、濾過助剤などが挙げられる。これらの成分の含有量は特に限定されず、当業者によって任意の量が選択され得る。
【0038】
pH調整剤としては、例えば、アスコルビン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、およびアジピン酸、ならびにこれらの有機酸のナトリウム(Na)塩、カルシウム(Ca)塩、およびカリウム(K)塩ならびに炭酸、リン酸、およびピロリン酸、ならびにこれらの無機酸のNa塩およびK塩が挙げられる。
【0039】
酵素としては、αアミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、マルトトリオヒドラーゼ、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、トランスグルコシダーゼ、デキストラナーゼ、グルコースイソメラーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、ヘミセルラーゼ、マンナナーゼ、ペクチナーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、インベルターゼ、ラクターゼ、イヌリナーゼ、α−ガラクトシダーゼ、キチナーゼ、キトサナーゼ、アルギン酸リアーゼなどの糖質関連酵素、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、コラゲナーゼ、グルタミナーゼなどのタンパク質・アミノ酸関連酵素、リパーゼ、ホスホリパーゼ、エステラーゼなどの脂質関連酵素、その他カタラーゼ、グルコースオキシダーゼ、ウレアーゼ、タンナーゼ、デアミナーゼなどが挙げられる。
【0040】
増粘多糖類としては、例えば、加工澱粉、ガム類、アルギン酸、アルギン酸誘導体、ペクチン、カラギーナン、カードラン、プルラン、ゼラチン、セルロース誘導体、寒天、タマリンド、サイリウム、グルコマンナンなどが挙げられる。
【0041】
乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、サポニンなどが挙げられる。
【0042】
乳製品としては、例えば、牛乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、ホエイ粉、カゼイン、チーズ、ヨーグルト、練乳、発酵乳、クリームなどが挙げられる。
【0043】
エキス類としては、例えば、酵母エキス、モルトエキスなどが挙げられる。
【0044】
甘味料としては、例えば、ステビア、アスパルテーム、グリチルリチン、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテームなどが挙げられる。
【0045】
無機塩類としては、例えば、食塩、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、重合リン酸塩などが挙げられる。
【0046】
保存料としては、例えば、プロピオン酸、プロピオン酸塩、亜硫酸塩、安息香酸塩、ソルビン酸、ソルビン酸塩、しらこたん白、ポリリジン、グリシン、酢酸塩などが挙げられる。塩としては、ナトリウム(Na)塩、カルシウム(Ca)塩、およびカリウム(K)塩などが挙げられる。
【0047】
<<食品>>
本発明の食品は、上記食品添加物を含むことを特徴とする。本発明の食品は、穀物加工食品であることが好ましい。穀物としては、米、小豆、ライ麦、大麦、そば、小麦、サツマイモ、ジャガイモ、タピオカ、葛、とうもろこし、長いも、里芋、ユリ根、レンコン、レンズ豆、ひよこ豆、いんげん豆、エンドウ豆、そら豆、落花生、白花豆、大豆、うぐいす豆が挙げられる。この中でも、米、小麦の加工食品が好ましい。米加工食品としては、米飯、おこわ、ちまき、おにぎり、すし、炒飯、餅が挙げられる。小麦加工食品としては、パン、ケーキ、菓子、麺類が挙げられる。
【0048】
穀物加工食品は、デンプンの老化により長期保存により硬くなり、食感が低下する傾向がある。デンプンの老化は、α化デンプンの部分的なβ化により生じる。アミラーゼは糖鎖の末端からグルコース2量体であるマルトースを切断して糖鎖を短縮し、部分的なβ化を防ぐことによりデンプンの老化を防止する。本発明の食品は、アミラーゼ組成物を含むためにデンプンの老化が抑制されている。
【0049】
本発明の食品を製造する際に、本発明の食品添加物を配合する時期は特に限定されず、原材料に食品添加物を添加および/または混合してから食品を製造してもよいし、食品の製造途中に食品添加物を配合してアミラーゼを作用させてもよい。
【0050】
食品の製造方法に加熱工程が含まれる場合には、本発明の食品添加物は加熱工程の前に添加してもよく、加熱工程の後に添加してもよい。加熱工程の前に添加する場合、アミラーゼは加熱工程までの間に作用し、加熱後も長期にわたり老化防止効果が維持される。加熱工程の後に添加する場合、食品の製造後、長期にわたり老化防止効果が維持される。
【0051】
本発明の食品添加物の添加時の温度は、4〜70℃であることが好ましく、25〜65℃であることがより好ましく、50〜60℃であることがさらに好ましい。大豆由来のβアミラーゼを使用する場合には、耐熱性が高いために、例えば60℃以上の高温条件で作用させることができる。一方、老化防止効果を達成しながらアミラーゼの添加量を低減するためには、食品が低温になってから本発明の食品添加物を添加することが好ましい。
【0052】
本発明の食品は、本発明の食品添加物を配合した後で保存することも可能である。保存温度は、−80〜30℃であることが好ましい。この中でも、冷蔵時の保存温度は−20〜0℃が好ましく、−10〜−4℃がより好ましい。冷蔵時の保存温度は0〜10℃が好ましく、0〜4℃がより好ましい。室温保存の保存温度は15〜25℃が好ましい。アミラーゼの作用によりデンプン中の老化を防止でき、食品を低温で保存した後でも食感を維持できる。
【0053】
<<アミラーゼの安定化方法>>
本発明のアミラーゼの安定化方法は、アミラーゼ、多価アルコール、及びグルコース単位を含む糖類を混合する工程を含む。アミラーゼ、多価アルコール、及びグルコース単位を含む糖類については上述した通りである。アミラーゼ、多価アルコール、及びグルコース単位を含む糖類の混合順序は特に限定されない。
【実施例】
【0054】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下、「部」又は「%」は特記されない限り、それぞれ「重量部」又は「重量%」を意味する。
【0055】
(1)使用材料
大豆ホエー(昭和産業株式会社)
グリセリン(阪本薬品工業株式会社:食品添加物グリセリンRG)
デキストリン(松谷化学工業株式会社:マックス1000)
ソルビトール(上野製薬株式会社:ソルビトールウエノ 20M)
マルトース(株式会社林原:サンマルトS)
マルチトール(富士フイルム和光純薬株式会社)
【0056】
濾過助剤:
トプコパーライト#54(東興パーライト工業株式会社)
KCフロック W−100(内外製粉株式会社)
【0057】
(2)アミラーゼ組成物の調製
大豆ホエーに重量比0.3%のトプコパーライト#54およびKCフロックW−100を加え、フィルタープレスにより清澄濾過を行い、濾過したサンプルを、UF膜(ダイセンメンブレン社製 FS10−FS−FUY03A1)を用いて濃縮を行い、液状の大豆ホエー濃縮物を得た。
【0058】
大豆ホエー濃縮物、多価アルコール、グルコース単位を含む糖類を、表1〜5に記載の割合で混合し、水酸化ナトリウム溶液を添加してpH5.2に調整した後、1時間攪拌した。攪拌後のサンプルをトプコパーライトおよびKCフロックW−100を用いて清澄濾過した。濾過サンプルは0.2μmフィルター(東洋濾紙株式会社:C020A047A)を用いて除菌を行い、アミラーゼ組成物を得た。
【0059】
(3)βアミラーゼ活性の測定
製造直後のアミラーゼ組成物、および、40℃で0.5ヶ月、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月保管したアミラーゼ組成物について、下記の方法で活性を測定し、製造直後の活性を100%としたときの相対活性を算出した。その結果を図1〜5に示す。
【0060】
βアミラーゼ活性は還元糖を3,5−ジニトロサリチル酸を用いた定量法(DNS法)により測定を行った。試験方法として、9mlのpH5.5 リン酸緩衝液を含む1.1%グルコース基質溶液に1mlのアミラーゼ組成物を添加し、60℃で30分反応させた。反応開始30分後に、この反応溶液1mlを3mlのDNS溶液に添加し、15分間ボイルを行った。ボイル後に室温へ冷却した後、蒸留水を加え25mlまでメスアップし、550nmの吸光度を測定した。得られた吸光度から還元されたグルコース濃度を検量線より算出し、pH5.5/60℃の条件下で1時間に1mgのマルトースを生成する酵素量を1ユニットとして定義した。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
図1において、グリセリン濃度が35〜50%(比較例1〜2)では40℃での酵素安定性が低く、40℃・3ヶ月の保存後に相対活性が大きく失われた。グリセリン濃度が60〜70%(比較例3〜4)では水分含量が低減されるために相対活性は維持できたが、組成物中でアミラーゼを高濃度とすることができない。
【0067】
図2において、グリセリン50%に、グルコースを構成単位として含む糖類を10%併用することにより、アミラーゼの安定性を大きく改善できた(実施例1〜3)。グリセリン60%のみ(比較例5)、グリセリン50%とソルビトール10%の併用(比較例6)ではアミラーゼの保存安定性はグルコースを構成単位として含む糖類を含む試験区よりも安定性が低かった。
【0068】
図3において、グリセリン50%に、グルコースを構成単位として含む糖類を2.5〜10%併用したところ、アミラーゼの安定性を大きく改善できた(実施例4〜7)。
【0069】
図4において、グリセリン40%に、グルコースを構成単位として含む糖類を2.5〜12.5%併用する条件では、組成物中のアミラーゼを高濃度としつつ、アミラーゼの安定性も改善できた(実施例8〜12)。
【0070】
図5において、グリセリン40%に、グルコースを構成単位として含む糖類を10%併用する条件では、アミラーゼの安定性を改善できた(実施例13)。グリセリン、またはグルコースを構成単位として含む糖類を単独で使用する条件では、アミラーゼの安定性が低かった(比較例8〜13)。
【0071】
(4)アミラーゼ組成物における生菌数
製造直後のアミラーゼ組成物、および、40℃で0.5ヶ月、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月保管したアミラーゼ組成物について、下記の方法で組成物中の生菌数を測定した。その結果を表6に示す。
【0072】
アミラーゼ組成物25mlを秤量し、225mlの生理食塩水を加えて10倍希釈し、よく混合した。10倍希釈したアミラーゼ組成物から、リン酸緩衝液により10〜10倍の希釈系列を作成した。希釈した各溶液1mlを、直径90mmのプレートに入れ、15〜20mlのTryptone Glucose Yeast Extract培地(46℃±1℃)を添加して混合し、プレートを作成した。各希釈溶液についてn=2で生菌数を測定した。プレートを30℃±1℃で72時間インキュベートし、プレート上に出現したコロニー数をカウントした。
【0073】
なお、コロニー数は、最も希釈率の高いプレートで300CFUを超えた場合、その希釈倍率のプレートのみカウントした。コロニー数が30CFU未満の場合、最も希釈率の低いプレートのみカウントした。30〜300CFUの場合には2種類の希釈率における平均値を算出した。
【0074】
【表6】
【0075】
実施例13では3ヶ月経過後も菌の増殖がみられなかった。比較例9〜13では菌が増殖した。比較例8では図5に示すようにアミラーゼの安定性が低かったが、菌の増殖はみられなかった。

図1
図2
図3
図4
図5