特許第6952197号(P6952197)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952197
(24)【登録日】2021年9月29日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】固定式熱間コイル保温熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/68 20060101AFI20211011BHJP
   B21B 45/00 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
   C21D9/68
   B21B45/00 K
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-537828(P2020-537828)
(86)(22)【出願日】2018年9月20日
(65)【公表番号】特表2020-534442(P2020-534442A)
(43)【公表日】2020年11月26日
(86)【国際出願番号】CN2018106718
(87)【国際公開番号】WO2019057118
(87)【国際公開日】20190328
【審査請求日】2020年3月19日
(31)【優先権主張番号】201710853613.3
(32)【優先日】2017年9月20日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201810632228.0
(32)【優先日】2018年6月19日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520097467
【氏名又は名称】宝鋼湛江鋼鉄有限公司
【氏名又は名称原語表記】BAOSTEEL ZHANJIANG IRON & STEEL CO., LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】302022474
【氏名又は名称】宝山鋼鉄股▲分▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】520098006
【氏名又は名称】上海賀力液圧机電有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HELI HYDRAULIC MECHANICAL & ELECTRICAL CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 勇
(72)【発明者】
【氏名】朱 蔚 林
(72)【発明者】
【氏名】王 野
(72)【発明者】
【氏名】趙 春 禾
(72)【発明者】
【氏名】宋 涛
【審査官】 河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−063553(JP,U)
【文献】 特開2015−167992(JP,A)
【文献】 特開昭60−218431(JP,A)
【文献】 特開昭60−125329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/68
B21B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合構造であり、下から上へ順次に、基板、保温層、内部放射層を含む、鋼コイルトレーと;
前記鋼コイルトレーに設置される少なくとも1個の鋼コイル支持体と;
前記鋼コイル支持体の外をカバーして設けられ、その内部キャビティ体積が少なくとも1個の鋼コイル+1個の鋼コイル支持体の体積より大きく、その下端が前記鋼コイルトレーと移動可能に接続される保温カバーと
を含むことを特徴とする、固定式熱間コイル保温熱処理装置。
【請求項2】
前記保温カバーの内側壁に設置される電気加熱装置と;
前記保温カバー内に設置される温度センサーと;
前記電気加熱装置、温度センサーと電気的に接続される情報収集制御モジュールと
をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の固定式熱間コイル保温熱処理装置。
【請求項3】
前記保温カバーには、保護ガスを導入できるガス保護装置及びガスセンサーがさらに設けられ、且それぞれ情報収集制御モジュールと電気的に接続されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の固定式熱間コイル保温熱処理装置。
【請求項4】
前記情報収集制御モジュール内には、保温カバー内の空気、温度のデータを地面のサーバーに送信する信号送信モジュールが設けられることを特徴とする、請求項2に記載の固定式熱間コイル保温熱処理装置。
【請求項5】
前記保温カバーの側面下部には位置決めブッシュが設けられる;相応に、前記鋼コイルトレーには該位置決めブッシュと合わせる位置決めピンが設けられる;前記位置決めピンはテーパ状のものであることを特徴とする、請求項1又は2又は3に記載の固定式熱間コイル保温熱処理装置。
【請求項6】
前記保温カバーには、ガス透過孔及び相応のガス排出バルブが設けられることを特徴とする、請求項1又は2又は3又は5に記載の固定式熱間コイル保温熱処理装置。
【請求項7】
前記電気加熱装置は電気加熱ワイヤーであり、前記温度センサーは熱電対であることを特徴とする、請求項に記載の固定式熱間コイル保温熱処理装置。
【請求項8】
前記保温カバーは複合構造であり、外保護層が高強度鋼板であり、中間層が保温材であり、内層は耐高温ステンレス板であることを特徴とする、請求項1又は2又は3又は5に記載の固定式熱間コイル保温熱処理装置。
【請求項9】
前記保温カバーは複合構造であり、内部から外部へ順次に、内部放射層、電気加熱ワイヤー層、中間メッシュ層、中間保温層、外保護層を含むことを特徴とする、請求項1又は2又は3又は5に記載の固定式熱間コイル保温熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、固定式熱間コイル保温熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
冷間圧延超高強度鋼の生産には、主に帯鋼の長手方向及び幅方向に性能のばらつきが大きいという難題が存在し、冷間圧延生産の際に圧延力の急激な変動が生じることや、冷間圧延製品の厚さが公差標準を超えることに繋がり、これは、冷間圧延酸洗連続圧延機群の圧延安定性に影響を与えるし、冷間圧延超高強度鋼の歩留まりにもひどく影響を与える。
【0003】
従来の保温装置は以下の通りである:
(1)圧延ライン保温装置に存在する最重要問題は、帯鋼が巻取ってから保温装置に入るまでの時間間隔が長すぎて、帯鋼の金属組織変態が殆ど発生若しくは完成したゆえ、オフライン徐冷による熱間コイル性能改善効果は、高強度鋼の品質要求を満たすことができない。熱間圧延生産ラインは、巻取り機の後段に保温ピットを設置する形態を採用し、まず輸送チェイン等の設備により、次にクレーンにより圧延された鋼コイルをある程度の保温能を持つ保温プットに吊り下げる。熱間コイルを保温カバーに入れるには、20〜30分間吊ったままで輸送する必要があり、鋼コイルの空冷時間が長すぎて、保温効果と材料性能に影響を与える。
【0004】
(2)このような保温装置には、専用の保温ピット、保温炉、ベル型炉、熱処理等の生産ラインが追加して設置され、構築コストが通常高くなり、しかも改造過程の工事期間が長くて順調な生産に影響を与える。また、保温効果が劣る(温度降下速度が速い)という問題も存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の内容
本発明の目的は、巻取り終了直後に鋼コイルに保温処理を行い、中間輸送時間を低減し、鋼コイル自身の熱によって鋼コイルに均熱、徐冷の熱処理プロセスを施し、高効率、省エネルギー及び歩留まり向上の目的を果たす固定式熱間コイル保温熱処理装置を設計することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を果たすために、本発明の技術方案は:
鋼コイルトレーと;前記鋼コイルトレーに設置される少なくとも1個の鋼コイル支持体と;前記鋼コイル支持体の外をカバーして設けられ、その内部キャビティ体積が少なくとも1個の鋼コイル+1個の鋼コイル支持体の体積より大きく、その下端が前記鋼コイルトレーと移動可能に接続される保温カバーとを含む、固定式熱間コイル保温熱処理装置である。
【0007】
さらに、前記保温カバーの内側壁に設置される電気加熱装置と;前記保温カバー内に設置される温度センサーと;前記電気加熱装置、温度センサーと電気的に接続される情報収集制御モジュールとも含む。保温カバーは、熱延鋼コイルの残留熱による徐冷を実現できるだけでなく、ある特殊な鋼材に対して二次加熱処理を施し、二次焼戻を実現し、鋼コイルの性能を改善し、結晶粒子を微細化することもできる。
【0008】
さらにまた、前記保温カバーには、保護ガスを導入できるガス保護装置及びガスセンサーがさらに設けられ、且それぞれ情報収集制御モジュールと電気的に接続される。保温カバー内部に保護ガスを導入し、鋼コイル内の空気を置換し、鋼コイルの酸化を防止して鋼コイル表面品質を高める。
【0009】
また、前記情報収集制御モジュール内には、保温カバー内の空気、温度のデータを地面のサーバーに送信する信号送信モジュールが設けられる。
【0010】
好ましくは、前記保温カバーは複合構造であり、外保護層が高強度鋼板であり、中間層が保温材であり、内層は耐高温ステンレス板である。
【0011】
好ましくは、前記保温カバーは複合構造であり、内部から外部へ順次に、内部放射層、電気加熱ワイヤー層、中間メッシュ層、中間保温層、外保護層を含む。
【0012】
好ましくは、前記保温カバー複合構造はアンカー釘によって固定される。
好ましくは、前記保温カバーは方形保温カバー又は円形保温カバーである。
【0013】
好ましくは、前記保温カバーの側面下部には位置決めブッシュが設けられる;相応に、前記鋼コイルトレーには該位置決めブッシュと合わせる位置決めピンが設けられる;前記位置決めピンはテーパ状のものが好ましい。鋼コイルが巻取り機キャビティからトレーに取り出される時、保温カバーはテーパ状の位置決めピンの上に置かれると、自動的に位置を決めることができ、これにより、保温カバーを迅速に取り付けて位置を決めて密閉空間を形成し、温度が降下しないように保証することができる。
【0014】
好ましくは、前記保温カバーには、ガス透過孔及び相応のガス排出バルブが設けられる。保温カバー内部には、ガス透過孔が追加して開けられ、ガス排出バルブが取り付けられる。熱間圧延・巻取り終了後、鋼コイルが輸送チェインのトレーに取り付けられてから、保温カバー装置がカバーされ、内部空間の温度が600℃以上にも達する。それと同時に、鋼コイルは層流冷却、帯鋼巻取りの過程において、表面に少量の湿気が付着している。設備の安全の保証及び鋼コイルの品質の向上のために、保温カバーに保護ガスを導入する前に、高温ガスを排除する。
【0015】
好ましくは、前記電気加熱装置は電気加熱ワイヤーであり、前記温度センサーは保温カバー内部の空気の温度変化を検出するための熱電対である。
【0016】
好ましくは、前記鋼コイルトレーは複合構造であり、下から上へ順次に、基板、保温層、内部放射層を含む。
【0017】
帯鋼を巻取ってから、鋼コイルを保温カバーが固定されているトレーに運んだ直後に、トレーに保温装置を被せ、直ちに鋼コイルを保温し、巻取った帯鋼コイルの保温処理を実現する。
【0018】
熱間コイル保温徐冷装置の処理能を増強するために、1列、2列及び複数列の鋼コイルトレーにすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の有利な効果は、
本発明にかかる保温カバーは、それぞれ独立的なもので、時間を省くと共に、生産のペースと効率を向上させる。
【0020】
本発明は、巻取った直後に帯鋼コイルの保温処理を実現することで、鋼コイルが巻取ってから徐冷装置に入るまでの時間が長すぎることによって招かれる性能改善の不十分、ならびに帯鋼の長手方向及び幅方向に性能のばらつきが大きいという難題は非常に大きく改善される。冷間圧延生産の際に圧延力の急激な変動が生じることや、冷間圧延製品の厚さが公差標準を超えることは回避され、冷間圧延酸洗連続圧延機群の圧延安定性は増強され、冷間圧延超高強度鋼の歩留まりは上がる。
【0021】
本発明にかかる構造設計は、構造が軽量で、保温効果が良好で、鋼コイルの積み降ろしが便利で、自動化程度が高く、密閉性が良好である等の特徴を有し、該設備の保温・均熱及び耐酸化効果がさらに最適化される。
【0022】
最新の全繊維焼鈍炉の技術規格を採用し、高強度鋼の軽量化構造の理念も合わせて、ある程度の気密性要求に達し、且つある程度の温度制御機能を持ち、省エネルギーで環境に優しく、保温・均熱効果を有する全自動作動可能な鋼コイル輸送装置を設計・製造し、最高の高強度鋼性能改善効果を達する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は本発明の実施例の正面図である。
図2図2は本発明の実施例の側面図である。
図3図3は本発明の実施例における鋼コイル支持体及び鋼コイルトレーの構造の模式図である。
図4図4は本発明の実施例における前記保温カバー位置決めブッシュと位置決めピンが合わせている構造の模式図である。
図5図5は本発明の実施例における保温カバーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
具体的な実施形態
図1図5を参照して、本発明にかかる固定式熱間コイル保温熱処理装置は、
鋼コイルトレー1と;
前記鋼コイルトレー1に設置される少なくとも1個の鋼コイル支持体2と;
前記鋼コイル支持体2の外をカバーして設けられ、その内部キャビティ体積が少なくとも1個の鋼コイル100+1個の鋼コイル支持体2の体積より大きく、その下端が前記鋼コイルトレー1と移動可能に接続される保温カバー3と
を含む。
【0025】
さらに、
前記保温カバー3の内側壁に設置される電気加熱装置4と;
前記保温カバー3内に設置される温度センサー5と;
前記電気加熱装置4、温度センサー5と電気的に接続される情報収集制御モジュール6と
を含む。
【0026】
さらにまた、前記保温カバー3には、保護ガスを導入できるガス保護装置7及びガスセンサーがさらに設けられ、且それぞれ情報収集制御モジュール6と電気的に接続される。鋼コイルの酸化を防止して表面品質を高めるために、熱間圧延・巻取り終了後、鋼コイルが輸送チェインのトレーに取り付けられてから、保温カバー装置がカバーされる。保温カバー内部に保護ガスを導入し、鋼コイル内の空気を置換する。鋼コイルの酸化を防止して鋼コイル表面品質を高める。
【0027】
また、前記情報収集制御モジュール6内には、保温カバー3内の空気、温度のデータを地面のサーバーに送信すると共に、相関の鋼コイルデータ情報を下流へ送信する信号送信モジュールが設けられ、無線リモコンボックスを通じて、無線及び蓄電装置を利用して、保温カバーの移動式温度測定・サンプリング、データの無線送信、物流情報の書き込み・読み込み等の機能を実現する。
【0028】
好ましくは、前記保温カバー3は複合構造であり、外保護層が高強度鋼板であり、中間層が保温材であり、内層は耐高温ステンレス板である。
【0029】
図5を参照して、本発明にかかる保温カバー3は複合構造であり、内部から外部へ順次に、内部放射層31、電気加熱ワイヤー層32、中間メッシュ層33、中間保温層34、外保護層35を含む;前記保温カバー3複合構造はアンカー釘によって固定される。
【0030】
好ましくは、前記保温カバー3は方形保温カバー又は円形保温カバーである。
好ましくは、前記保温カバー3の側面下部には位置決めブッシュ8が設けられる;相応に、前記鋼コイルトレー1には該位置決めブッシュ8と合わせる位置決めピン9が設けられる;前記位置決めピン9はテーパ状のものが好ましい。
【0031】
鋼コイルが巻取り機からトレーに取り出される時、保温カバー位置決めブッシュはテーパ状の位置決めピンの上に置かれると、自動的に位置を決めることができ、これにより、保温カバーを迅速に取り付けて位置を決めて密閉空間を形成し、温度が降下しないように保証することができる。
【0032】
好ましくは、前記保温カバー3には、ガス透過孔及び相応のガス排出バルブ10が設けられる。熱間圧延・巻取り終了後、鋼コイルが輸送チェインのトレーに取り付けられてから、保温カバー装置がカバーされ、内部空間の温度が600℃以上にも達する;それと同時に、鋼コイルは層流冷却、帯鋼巻取りの過程において、表面に少量の湿気が付着している。設備の安全の保証及び鋼コイルの品質の向上のために、保温カバーに保護ガスを導入する前に、高温ガスを排除する。
【0033】
好ましくは、前記電気加熱装置4は電気加熱ワイヤーであり、前記温度センサー5は熱電対である;保温カバーは、熱延鋼コイルの残留熱による徐冷を実現できるだけでなく、ある特殊な鋼材に対して二次加熱処理を施し、二次焼戻を実現し、鋼コイルの性能を改善し、結晶粒子を微細化することもできる。
【0034】
好ましくは、前記鋼コイルトレー1は複合構造であり、下から上へ順次に、基板11、保温層12、内部放射層13を含む。
【0035】
本発明にかかる固定式熱間コイル保温熱処理装置は、鋼コイル巻取りの箇所で、巻取り終了直後に熱延鋼コイルを該保温熱処理装置に輸送し、巻取った帯帯鋼コイルの保温処理を実現する。
【0036】
本発明は、巻取り終了直後の鋼コイルに残留熱を利用して焼鈍処理の目的を果たし、鋼コイルが巻取ってから保温・焼鈍装置に入るまでの時間が長すぎることによって招かれる性能改善の不十分、ならびに帯鋼の長手方向及び幅方向に性能のばらつきが大きいという難題を非常に大きく改善できる。特殊バッチの熱延帯鋼には、高度加工等の特殊処理が必要であり、保温カバー内部に集積される加熱装置及び保護ガスの冷却導入は、必要な場合に、連携して温度の制御を実現することができる。
図1
図2
図3
図4
図5