特許第6952237号(P6952237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952237
(24)【登録日】2021年9月30日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】Co基合金構造体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 19/07 20060101AFI20211011BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20211011BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20211011BHJP
   C22C 1/04 20060101ALI20211011BHJP
   B22F 3/17 20060101ALI20211011BHJP
   B22F 3/15 20060101ALI20211011BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20211011BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20211011BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20211011BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20211011BHJP
   C22F 1/10 20060101ALN20211011BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20211011BHJP
【FI】
   C22C19/07 H
   B22F3/105
   B22F3/16
   C22C1/04 B
   B22F3/17 C
   B22F3/15 M
   B22F3/24 C
   B33Y80/00
   B33Y70/00
   B33Y10/00
   !C22F1/10 J
   !C22F1/00 602
   !C22F1/00 621
   !C22F1/00 628
   !C22F1/00 630A
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 691C
   !C22F1/00 692A
   !C22F1/00 613
   !C22F1/00 683
   !C22F1/00 650A
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-35211(P2020-35211)
(22)【出願日】2020年3月2日
(65)【公開番号】特開2021-138978(P2021-138978A)
(43)【公開日】2021年9月16日
【審査請求日】2020年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 敦夫
(72)【発明者】
【氏名】今野 晋也
【審査官】 川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4996468(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0312434(US,A1)
【文献】 特許第5174775(JP,B2)
【文献】 特表2019−507247(JP,A)
【文献】 特開2010−065319(JP,A)
【文献】 特開2018−168400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 19/07
B22F 3/105
B22F 3/16
C22C 1/04
B22F 3/17
B22F 3/15
B22F 3/24
B33Y 80/00
B33Y 70/00
B33Y 10/00
C22F 1/10
C22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量比でAl:2〜5%、W:17〜25、C:0.05〜0.15%、Ni:20〜35%、Cr:6〜10%、Ta:3〜8%であって、残部が不可避的不純物を除きCoの組成を有するCo基合金構造体の製造方法であって、
前記Co基合金構造体は、
fcc構造を有するCo主体のマトリックス相(γ相)と、
原子比でCo(Al,W)又は〔(Co,X)(Al,W,Z)〕(式中、X及びZはCo、Al及びW以外の合金成分を示す)のL1構造を有するfcc構造の金属間化合物からなり、前記マトリックス相において分散した状態で析出する析出相(γ’相)と、を有し、
前記析出相(γ’相)は、粒径が10nm以上でありかつ50nmよりも小さい範囲であり、前記析出相(γ’相)の粒子が一様に配置して析出しており、かつ析出量が40〜85体積%となるように構成されており、
前記Co基合金構造体の前駆体に対して溶体化処理を施す溶体化処理工程と、
前記溶体化処理を施した前記Co基合金構造体の前駆体に対して時効処理を施す時効処理工程と、を有し、
前記時効処理工程は、第1の時効処理工程と、前記第1の時効処理工程の後に実施される第2の時効処理工程と、を含み、
前記第2の時効処理工程の時効温度は、前記第1の時効処理工程の時効温度よりも高くなるように設定されている、Co基合金構造体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のCo基合金構造体の製造方法において、
前記Co基合金構造体は、粉末からなる積層造形体として構成されている、Co基合金構造体の製造方法
【請求項3】
請求項1に記載のCo基合金構造体の製造方法において、
前記Co基合金構造体は、粉末からなる粉末HIP鍛造体として構成されている、Co基合金構造体の製造方法
【請求項4】
請求項1に記載のCo基合金構造体の製造方法において、
前記Co基合金構造体は、鍛造体として構成されている、Co基合金構造体の製造方法
【請求項5】
請求項に記載のCo基合金構造体の製造方法において、
前記溶体化処理の温度は1100℃以上であり、
前記第1の時効処理工程の時効温度は500〜700℃であり、
前記第2の時効処理工程の時効温度は600〜800℃である、Co基合金構造体の製造方法。
【請求項6】
請求項に記載のCo基合金構造体の製造方法において、
前記Co基合金構造体の前駆体は、積層造形法により製造される、Co基合金構造体の製造方法。
【請求項7】
請求項に記載のCo基合金構造体の製造方法において、
前記Co基合金構造体の前駆体は、鍛造法により製造される、Co基合金構造体の製造方法。
【請求項8】
請求項に記載のCo基合金構造体の製造方法において、
前記Co基合金構造体の前駆体は、粉末HIP鍛造法により製造される、Co基合金構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Co基合金構造体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コバルト(Co)基合金は、ニッケル(Ni)基合金とともに代表的な耐熱合金材料であり、超合金とも称されて例えばタービン(ガスタービン、蒸気タービンなど)の高温部材に広く用いられている。また、Co基合金は、Ni基合金と比べて材料コストが高い一方、耐食性および耐摩耗性に優れており、固溶強化しやすいという特性を有する。このため、Co基合金は、従来からタービン静翼、燃焼器部材、摩擦攪拌接合用工具などに適用されてきた。
【0003】
このようなCo基合金に関し、例えば特許文献1のCo基合金が知られている。具体的に、特許文献1には、fcc構造を有するCo主体のマトリックス相(γ相)と、原子比でCo(Al,W)のL1構造を有するfcc構造の金属間化合物からなり、マトリックス相の粒内に析出する析出相(γ’相)と、を有するCo基合金が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4996468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のCo基合金では、析出相(γ’相)の粒径が50nm〜1μmであり、かつγ’相の析出量が40〜85体積%となるように設定されている。そして、同文献の各図(特に図2図3)には、粒径が1μm以下の立方体形状を有するγ’相の粒子が、マトリックス相(γ相)に析出していることが見受けられる。また、同文献には、時効処理で析出した析出相(γ’相)の平均粒径が150nm以下となるとの記載もある(同文献の段落0006参照)。
【0006】
しかしながら、特許文献1の各図を参照しても、粒径が50nm未満となるγ’相がほとんど析出していないことが把握される。更に、γ’相の粒子同士の距離が100nmより大きい箇所が存在している。すなわち、上記Co基合金では、極限まで微細化されたγ’相がマトリックス相(γ相)に対して多数析出し、分散(一様に配置)していなかった。このため、上記Co基合金材では、粒径が50nm未満となるように極限まで微細化されたγ’相に基づく析出強化の作用が得られにくく、その結果として当該作用による機械的特性(特に引張強さおよび耐力)が不十分となっていた。
【0007】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、Co基合金構造体における機械的特性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、第1の開示は、質量比でAl:0.1〜10%、W:3.0〜45%で両者の合計が50%未満であって、残部が不可避的不純物を除きCoの組成を有するCo基合金構造体である。Co基合金構造体は、fcc構造を有するCo主体のマトリックス相(γ相)と、原子比でCo(Al,W)又は〔(Co,X)(Al,W,Z)〕のL1構造を有するfcc構造の金属間化合物からなり、マトリックス相において分散した状態で析出する析出相(γ’相)と、を有する。そして、析出相(γ’相)は、粒径が10nm〜1μmであり、析出相(γ’相)の粒子が一様に配置して析出しており、かつ析出量が40〜85体積%となるように構成されている。
【0009】
この第1の開示では、マトリックス相(γ相)において分散した状態で析出する析出相(γ’相)の粒径が10nm〜1μmであり、かつγ’相の析出量が40〜85体積%となるように構成されている。かかる構成では、極限まで微細化された粒子径を含むγ’相が、マトリックス相(γ相)に対して多数析出し、分散した状態となる。その結果、Co基合金構造体の組織内では、マトリックス相(γ相)と多数のγ’相との界面における総表面積が相対的に増加しかつγ’相の粒子同士の距離が相対的に縮まるようになる。すなわち、マトリックス相(γ相)において極限まで微細化された粒子を含むγ’相が一様に析出強化された状態となる。そして、当該析出強化により特に高温における機械的特性が向上する。したがって、第1の開示では、Co基合金構造体の機械的特性を高めることができる。
【0010】
第2の開示は、第1の開示において、析出相(γ’相)の粒径は、10nm以上でありかつ50nmよりも小さい範囲である。
【0011】
この第2の開示では、微細化されたγ’相がマトリックス相(γ相)に対して多数析出し、分散した状態となることにより、γ’相による析出強化の作用が強化され、Co基合金構造体の機械的特性をより一層高めることができる。
【0012】
第3の開示は、第1または第2の開示において、Co基合金構造体は、粉末からなる積層造形体として構成されている。
【0013】
この第3の開示において、粉末からなる積層造形体の粒界および/または粒内には、W化合物などの析出物が、マトリックス相(γ相)において微細な状態で析出しかつ一様に分散した状態となる。さらに、マトリックス相(γ相)において、上記析出物の周囲には、多数の微細なγ’相が分散された状態となる。このように、粉末からなる積層造形体として構成されたCo基合金構造体では、上記析出物と、多数の微細なγ’相との双方の析出強化による作用が生じる。その結果、第3の開示では、Co基合金構造体の機械的特性をより一層高めることができる。
【0014】
第4の開示は、第1または第2の開示において、Co基合金構造体は、粉末からなる粉末HIP鍛造体として構成されている。
【0015】
この第4の開示では、Co基合金構造体の機械的特性を高めることができる。
【0016】
第5の開示は、第3または第4の開示において、粉末は、質量比でAl:2〜5%、W:17〜25%、C:0.05〜0.15%、Ni:20〜35%、Cr:6〜10%、Ta:3〜8%であって、残部が不可避的不純物を除きCoの組成を有する。
【0017】
この第5の開示において、上記組成を有する粉末からなる積層造形体であれば、析出相(γ’相)の粒径を微細化することが可能となる。その結果、Co基合金構造体の機械的特性をより一層高めることができる。
【0018】
第6の開示は、第1または第2の開示において、Co基合金構造体は、鍛造体として構成されている。
【0019】
この第6の開示では、Co基合金構造体の機械的特性を高めることができる。
【0020】
第7の開示は、第1または第2の開示のCo基合金構造体の製造方法であって、Co基合金構造体の前駆体に対して溶体化処理を施す溶体化処理工程と、溶体化処理を施したCo基合金構造体の前駆体に対して時効処理を施す時効処理工程と、を有する。時効処理工程は、第1の時効処理工程と、第1の時効処理工程の後に実施される第2の時効処理工程と、を含む。そして、第2の時効処理工程の時効温度は、第1の時効処理工程の時効温度よりも高くなるように設定されている。
【0021】
この第7の開示において、時効処理工程では、第1の時効処理工程の後に実施される第2の時効処理工程の時効温度が、第1の時効処理工程の時効温度よりも高くなるように設定される。かかる設定により、Co基合金構造体の組織内においてγ’相の粒径を極限まで微細化することが可能となる。さらに、Co基合金構造体の組織内においてミクロ偏析が生じにくくなり、マトリックス相(γ相)においてγ’相が均一に分散されるようになる。その結果、γ’相による析出強化の作用が強化され、Co基合金構造体の機械的特性をより一層高めることができる。
【0022】
第8の開示は、第7の開示のCo基合金構造体の製造方法において、溶体化処理の温度は1100℃以上であり、第1の時効処理工程の時効温度は500〜700℃であり、第2の時効処理工程の時効温度は600〜800℃である。
【0023】
この第8の開示では、上記第7の開示と同様の作用効果を得ることができる。
【0024】
第9の開示は、第7または第8の開示のCo基合金構造体の製造方法において、Co基合金構造体の前駆体は、積層造形法により製造される。
【0025】
第9の開示では、Co基合金構造体の機械的特性をより一層高めることができる。
【0026】
第10の開示は、第7または第8の開示のCo基合金構造体の製造方法において、Co基合金構造体の前駆体は、鍛造法により製造される。
【0027】
この第10の開示では、Co基合金構造体の機械的特性を高めることができる。
【0028】
第11の開示は、第7または第8の開示のCo基合金構造体の製造方法において、Co基合金構造体の前駆体は、粉末HIP鍛造法により製造される。
【0029】
この第11の開示では、Co基合金構造体の機械的特性を高めることができる。
【発明の効果】
【0030】
本開示によると、Co基合金構造体の機械的特性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、積層造形体からなるCo基合金構造体の製造方法の工程例を示すフロー図である。
図2図2は、積層造形体からなるCo基合金構造体の組織状態を概略的に示した概略図である。
図3図3は、図2のIII部を拡大して示した部分拡大図である。
図4図4は、実施形態の変形例1に係るCo基合金構造体の製造方法の工程例を示すフロー図である。
図5図5は、実施形態の変形例1に係るCo基合金構造体の製造方法の工程例を示すフロー図である。
図6図6は、サンプルAの組織状態を示した電子顕微鏡写真である。
図7図7は、サンプルBの組織状態を示した電子顕微鏡写真である。
図8図8は、サンプルAおよびサンプルBにおける温度(℃)と、引張強さ(MPa)および0.2%耐力(MPa)との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0033】
[Co基合金構造体の基本的性質]
Co基合金は、一般的に利用されているNi基合金に比較して融点が50〜100℃程度高く、置換型元素の拡散係数がNi基よりも小さい。このため、Co基合金では、高温での使用中に生じる組織変化が少ない。また、Co基合金は、Ni基合金と比較して延性に富んでいる。このため、Co基合金は、鍛造,圧延,プレス等の塑性加工が容易となる。したがって、Co基合金は、Ni基合金よりも広い用途の展開が期待されている。
【0034】
従来から強化相に使用されてきたCoTiまたはCoTaのγ’相は、マトリックス相(γ相)に対する格子定数のミスマッチが1%以上であり、耐クリープ性の面から不利である。これに対し、本開示の実施形態において強化相に使用される金属間化合物〔Co(Al,W)〕は、マトリックス相(γ相)とのミスマッチが大きくても0.5%程度であり、γ’相により析出強化されたNi基合金を凌駕する組織安定性を呈する。
【0035】
更に、Co基合金は、Ni基合金の200GPaと比較して、220〜230GPaと1割以上大きな弾性率を示す。このため、ゼンマイ,バネ,ワイヤ,ベルト,ケーブルガイド等、高強度,高弾性が必要な用途にも使用可能である。また、Co基合金は、硬質でありかつ耐磨耗性,耐食性に優れていることから、肉盛り材としても使用可能である。
【0036】
[Co基合金構造体の基本組成]
本開示の実施形態に係るCo基合金構造体では、L1型金属間化合物〔Co(Al,W)〕又は〔(Co,X)(Al,W,Z)〕を適量分散させるため、成分および組成を特定している。Co基合金構造体の基本組成は、質量比でAl:0.1〜10%,W:3.0〜45%であり、残部が不可避的不純物を除きコバルト(Co)の組成を有している。
【0037】
アルミニウム(Al)は、γ’相の主要な構成元素である。Alは、耐酸化性の向上にも寄与する。Alの含有量が0.1%未満では、γ’相が析出せず、或いは析出しても高温強度に寄与しない。しかし、Alを過剰に添加すると、脆弱で硬質な相の生成を助長する。したがって、Alの含有量は、0.1〜10%の範囲に設定される。Al含有量の好ましい下限は0.5%である。Al含有量の好ましい上限は5.0%である。
【0038】
タングステン(W)は、γ’相の主要な構成元素である。Wは、マトリックスを固溶強化する作用を有する。Wの含有量が3.0%未満では、γ’相が析出せず、或いは析出しても高温強度に寄与しない。一方、Wの含有量が45%を超えると、有害相の生成を助長する。したがって、Wの含有量は、3.0〜45%の範囲に設定される。W含有量の好ましい上限は30%である。W含有量の好ましい下限は4.5%である。
【0039】
[グループ(I)およびグループ(II)]
Co−W−Alの基本成分系では、グループ(I)およびグループ(II)の少なくともいずれか一方から選ばれた一種又は二種以上の合金成分(選択元素)が必要に応じて添加される。グループ(I)から選ばれた複数の合金成分を添加する場合には、添加量の合計を0.001〜2.0%の範囲で選択する。また、グループ(II)から選ばれた複数の合金成分を添加する場合には、添加量の合計を0.1〜50%の範囲で選定する。
【0040】
グループ(I)は、B,C,Y,La,ミッシュメタルからなるグループである。
【0041】
ホウ素(B)は、結晶粒界に偏析して粒界を強化する合金成分である。Bは、高温強度の向上に寄与する。Bの添加効果は、0.001%以上で顕著になる。しかし、Bを過剰に添加すると、加工性が損なわれる。したがって、Bの添加量の上限は、1.0%に設定される。B添加量の好ましい上限は0.5%である。
【0042】
炭素(C)は、Bと同様に、粒界強化に有効である。また、Cは、炭化物となって析出し、高温強度を向上させる。このような効果は、Cの添加量が0.001%以上のときに得られる。しかし、Cを過剰に添加すると、加工性および/または靭性が損なわれる。したがって、Cの添加量の上限は、2.0%に設定される。C添加量の好ましい上限は1.0%である。
【0043】
イットリウム(Y),ランタン(La),およびミッシュメタルは、いずれも耐酸化性の向上に有効な成分である。特に、Y,La,およびミッシュメタルは、いずれも添加量が0.01%以上であるときに耐酸化性が発揮される。しかし、Y,La,およびミッシュメタルの各々を過剰に添加すると、組織安定性に悪影響を及ぼしうる。したがって、Y,La,およびミッシュメタルの各々の添加量の上限は、1.0%に設定される。Y,La,およびミッシュメタルの各々の添加量の好ましい上限は0.5%である。
【0044】
グループ(II)は、Ni,Cr,Ti,Fe,V,Nb,Ta,Mo,Zr,Hf,Ir,Re,Ruからなるグループである。
【0045】
グループ(II)の合金成分は、分配係数の大きな元素ほどγ’相の安定化に効果的である。分配係数Kγ’/γは、Kγ’/γ=Cγ’/Cxγ〔ただし、Cγ’:γ’相のx元素濃度(原子%),Cγ:マトリックス(γ)相のx元素濃度(原子%)〕と表される。当該式(Kγ’/γ=Cγ’/Cxγ)は、マトリックス相(γ相)に含まれる所定元素に対するγ’相に含まれる所定元素の濃度比を示す。分配係数≧1は、γ’相の安定化元素である。分配係数<1は、マトリックス相(γ相)の安定化元素である。チタン(Ti),バナジウム(V),ニオブ(Nb),タンタル(Ta),モリブデン(Mo)は、γ’相を安定化させるための元素である。特に、Taでは、γ’相を安定化させるための効果が他の元素よりも発現しやすい。
【0046】
ニッケル(Ni)は、L1型金属間化合物のCoと置換し、耐熱性および/または耐食性を改善する成分である。Niの添加量が1.0%以上であれば、添加による効果(耐熱性および/または耐食性)がみられる。しかし、Niを過剰に添加すると、有害な化合物相が生成される。したがって、Niの添加量の上限は、50%に設定される。Ni添加量の好ましい上限は40%である。また、Niは、AlおよびWの各々と置換し、γ’相の安定度を向上させる。その結果、より高温までγ’相の安定した存在を可能にする。
【0047】
イリジウム(Ir)は、L1型金属間化合物のCoと置換し、耐熱性および/または耐食性を改善する成分である。Irの添加量が1.0%以上であれば、添加による効果がみられる。しかし、Irを過剰に添加すると、有害な化合物相が生成される。したがって、Irの添加量の上限は、50%に設定される。Ir添加量の好ましい上限は40%である。
【0048】
鉄(Fe)は、Coと置換し、加工性を改善する作用がある。当該作用は、Feの添加量が1.0%以上のときに顕著となる。しかし、例えばFeの添加量が10%を超える場合のように、Feを過剰に添加すると、高温域における組織の不安定化をもたらす原因となる。したがって、Feの添加量の上限は、10%に設定される。Fe添加量の好ましい上限は5.0%である。
【0049】
クロム(Cr)は、Co基合金構造体の表面に緻密な酸化皮膜を生成し、耐酸化性を向上させる合金成分である。また、Crは、高温強度および/または耐食性の改善に寄与する。このような効果は、Crの添加量が1.0%以上のときに顕著となる。しかし、Crを過剰に添加すると、加工性が劣化する原因となる。したがって、Crの添加量の上限は、20%に設定される。Cr添加量の好ましい上限は15%である。
【0050】
モリブデン(Mo)は、γ’相の安定化およびマトリックスの固溶強化に有効な合金成分である。特に、Moの含有量が1.0%以上であるときに、Moの添加効果がみられる。しかし、Moを過剰に添加すると、加工性が劣化する原因となる。このため、Moの含有量の上限は、15%に設定される。Mo含有量の好ましい上限は10%である。
【0051】
レニウム(Re)およびルテニウム(Ru)は、耐酸化性の向上に有効な合金成分である。ReおよびRuは、いずれも0.5%以上で添加効果が顕著となる。しかし、Re,Ruの各々を過剰に添加すると、有害相の生成が誘発する。したがって、Re,Ruの添加量の上限は、いずれも10%に設定される。Re添加量およびRu添加量の好ましい上限は、いずれも5.0%である。
【0052】
チタン(Ti),ニオブ(Nb),ジルコニウム(Zr),バナジウム(V),タンタル(Ta),ハフニウム(Hf)は、いずれもγ’相の安定化および/または高温強度の向上に有効な合金成分である。特に、Ti:0.5%以上,Nb:1.0%以上,Zr:1.0%以上,V:0.5%以上,Ta:1.0%以上,Hf:1.0%以上であるときに、添加効果が得られる。しかし、Ti,Nb,Zr,V,Ta,Hfの各々を過剰に添加すると、有害相の生成および/または融点降下の原因となる。したがって、Ti,Nb,Zr,V,Ta,Hfの各々の添加量の上限は、Ti:10%,Nb:20%,Zr:10%,V:10%,Ta:20%,Hf:10%に設定される。
【0053】
[γ’相の粒径]
L1型の金属間化合物〔Co(Al,W)〕又は〔(Co,X)(Al,W,Z)〕は、析出相(γ’相)の粒径が10nm〜1μm(1000nm)の粒子となるように構成されている。1μmを超える粒径では、強度,硬さ等の機械的特性が劣化してしまう。γ’相の好ましい粒径は、10nm以上でありかつ50nmよりも小さい範囲である。
【0054】
[γ’相の析出量]
L1型の金属間化合物〔Co(Al,W)〕又は〔(Co,X)(Al,W,Z)〕は、析出相(γ’相)の析出量が40〜85体積%となるように構成されている。当該析出量が40%未満では析出強化による作用が不十分となる。一方、当該析出量が85%を超えてしまうと、Co基合金構造体において延性劣化が生じるおそれがある。
【0055】
[積層造形体]
Co基合金構造体は、例えば、粉末からなる積層造形体として構成されている。積層造形体は、積層造形法(Additive Manufacturing、AM法)により形成される。積層造形法は、ガスアトマイズ法などにより作製した粉末を、レーザなどを熱源とした3Dプリンタを用いて選択的に溶融および凝固することにより積層造形体を成形する方法である。
【0056】
積層造形体の原材料としては、質量比でAl:2〜5%、W:17〜25%、C:0.05〜0.15%、Ni:20〜35%、Cr:6〜10%、Ta:3〜8%であって、残部が不可避的不純物を除きCoの組成を有する粉末(以下「原料粉末」という)を用いるのが好ましい。この原料粉末を用いて後述の製造方法を実施することにより、上記原料粉末と同様の組成を有する積層造形体が得られる。
【0057】
[積層造形体からなるCo基合金構造体の製造方法]
次に、積層造形体からなるCo基合金構造体の製造方法の一例を図1に示す。当該製造方法は、主な工程として、粉末作製工程S1と、選択的レーザ溶融工程S2と、溶体化処理工程S3と、時効処理工程S4と、を有する。以下、各工程について説明する。
【0058】
[粉末作製工程]
粉末作製工程S1は、Co基合金構造体の原材料となる粉末を作製する工程である。当該粉末は、例えば上記原料粉末のような所定の化学組成を有する。
【0059】
当該粉末を作製する方法としては、例えばガスアトマイズ法が用いられる。具体的には、ガスアトマイズ装置を用いて、高周波誘導加熱を行うことにより真空排気後の不活性ガス雰囲気中または大気中において試料の溶解を行う。その後、高圧のガス(ヘリウム、アルゴン、窒素などのガス)を当該試料に対して吹きつけることにより、数十μm程度の球状の粉末を作製する。
【0060】
粉末の粒径は、次工程の選択的レーザ溶融工程(S2)におけるハンドリング性や合金粉末床の充填性の観点から、5μm以上100μm以下が好ましい。粉末の粒径が5μm未満になると、次工程S2において合金粉末の流動性が低下し(合金粉末床の形成性が低下し)、積層造形体の形状精度が低下する要因となる。一方、粉末の粒径が100μm超になると、次工程S2において合金粉末床の局所溶融および急冷凝固の制御が難しくなり、粉末の溶融が不十分になり、あるいは積層造形体の表面粗さが増加する要因となる。そして、粉末の粒径は、10μm以上70μm以下がより好ましく、10μm以上50μm以下が更に好ましい。
【0061】
[選択的レーザ溶融工程]
選択的レーザ溶融工程S2は、粉末作製工程S1により作製された粉末を用いて選択的レーザ溶融(SLM)法により所望形状の積層造形体を形成する工程である。
【0062】
図1に示すように、工程S2は、粉末作製工程S1により作製された粉末を敷き詰めて所定厚さの合金粉末床を用意する合金粉末床用意素工程(S21)と、合金粉末床の所定の領域にレーザ光を照射して該領域の粉末を局所溶融および急冷凝固させるレーザ溶融凝固素工程(S22)と、を含む。合金粉末床用意素工程(S21)とレーザ溶融凝固素工程(S22)とを繰り返し実施することにより、積層造形体(すなわち、Co基合金構造体の前駆体)が形成される。
【0063】
選択的レーザ溶融工程S2では、最終的な積層造形体として望ましい微細組織を得るために、積層造形体の微細組織を制御する。すなわち、積層造形体の微細組織を制御するために、粉末床の局所溶融および急冷凝固を制御する。
【0064】
[溶体化処理工程]
溶体化処理工程S3は、選択的レーザ溶融工程S2により得られた積層造形体(Co基合金構造体の前駆体)に対して溶体化処理を施す工程である。溶体化処理の温度条件としては、1100℃以上1200℃以下の範囲に設定される。溶体化処理の好ましい温度は1160℃である。また、溶体化処理の保持時間は、0.5時間以上10時間以下に設定されるのが好ましい。なお、熱処理後の冷却方法としては、特に限定されず、例えば水冷、油冷、空冷、炉冷のいずれかの方法を実施すればよい。
【0065】
溶体化処理工程S3により、選択的レーザ溶融工程S2により得られた積層造形体(Co基合金構造体の前駆体)の内部において、母相結晶粒の再結晶が生じ、急冷凝固の際に生じた積層造形体の内部ひずみが緩和される。また、再結晶により、母相結晶粒の平均結晶粒径を20μm以上145μm以下の範囲に粗大化制御することが好ましい。該平均結晶粒径が20μm未満または145μm超であると、最終的なCo基合金構造体として十分なクリープ特性が得られない。
【0066】
[時効処理工程]
時効処理工程S4は、溶体化処理工程S3により溶体化処理を施した積層造形体(Co基合金構造体の前駆体)に対して時効処理を施す工程である。具体的に、時効処理工程S4は、第1の時効処理工程S41と、第2の時効処理工程S42と、を含む。
【0067】
第1の時効処理工程S41は、溶体化処理工程S3を経た後に実施される。第1の時効処理工程S41における時効温度の条件としては、500℃以上700℃以下の範囲に設定されるのが好ましい。第1の時効処理工程S41の保持時間は、0.5時間以上30時間以下に設定されるのが好ましい。
【0068】
第2の時効処理工程S42は、第1の時効処理工程S41を経た後に実施される。第2の時効処理工程S42の時効温度は、第1の時効処理工程S41の時効温度よりも高くなるように設定される。具体的に、第2の時効処理工程S42における時効温度の条件としては、600℃以上800℃以下の範囲に設定されるのが好ましい。第2の時効処理工程S42の保持時間は、0.5時間以上20時間以下に設定されるのが好ましい。
【0069】
第1および第2の時効処理工程S41,S42の冷却方法としては、特に限定されず、例えば水冷、油冷、空冷、炉冷のいずれかの方法を実施すればよい。
【0070】
なお、図示しないが、溶体化処理工程S3または時効処理工程S4によって得られた積層造形体に対し、必要に応じて、耐食性被覆層を形成してもよい。または、溶体化処理工程S3または時効処理工程S4によって得られた積層造形体に対して表面仕上げを施してもよい。
【0071】
[実施形態の作用効果]
以上のように、Co基合金構造体では、マトリックス相(γ相)において分散した状態で析出する析出相(γ’相)の粒径が10nm〜1μmであり、かつ析出相(γ’相)の析出量が40〜85体積%となるように構成されている。かかる構成では、極限まで微細化された粒子径を含むγ’相が、マトリックス相(γ相)に対して多数析出し、分散した状態となる。その結果、Co基合金構造体の組織内では、マトリックス相(γ相)と多数のγ’相との界面における総表面積が相対的に増加しかつγ’相の粒子同士の距離が相対的に縮まるようになる(100nmよりも小さくなる)。すなわち、マトリックス相(γ相)において極限まで微細化された粒子を含むγ’相が一様に析出強化された状態となる。そして、当該析出強化により特に高温における機械的特性(特に引張強さおよび耐力(0.2%耐力))が向上する。したがって、本開示の実施形態に係るCo基合金構造体では、上記析出強化の作用による機械的特性を高めることができる。なお、本開示の実施形態において、「分散した状態」とは、複数のγ’相が、マトリックス相(γ相)内において一様に配置された状態をいう。
【0072】
また、γ’相の粒径は、10nm以上でありかつ50nmよりも小さい範囲となるのが好ましい。このように微細化されたγ’相がマトリックス相(γ相)に対して多数析出し、分散した状態であれば、γ’相による析出強化の作用が強化され、Co基合金構造体の機械的特性をより一層高めることができる。
【0073】
また、Co基合金構造体は、粉末からなる積層造形体として構成されている。積層造形法において、特にレーザを熱源とした金属3Dプリンタを用いた場合には、積層造形体の造形時に原材料となる粉末の凝固速度が従来の鋳造などと比較して非常に速くなる。その結果、積層造形体では微細な凝固組織が形成される。そして、図2および図3に示すように、造形後の積層造形体に対して熱処理(容体化処理および時効処理)を施すことにより、積層造形体の粒界および/または粒内には、W化合物が、マトリックス相(γ相)において微細な状態で析出しかつ一様に分散した状態となる。さらに、マトリックス相(γ相)において、W化合物の周囲には、多数の微細な析出相(γ’相)が分散された状態となる。このように、粉末からなる積層造形体として構成されたCo基合金構造体では、W化合物と、多数の微細な析出相(γ’相)との双方の析出強化による作用を得ることが可能となる。その結果、本開示の実施形態に係るCo基合金構造体では、機械的特性をより一層高めることができる。
【0074】
なお、図2および図3では、W化合物が析出した場合の組織状態を示したが、このW化合物ではなく、炭化物相が積層造形体の粒界および/または粒内に析出する場合もある。或いは、W化合物および炭化物相の双方が積層造形体の粒界および/または粒内に析出する場合もある。
【0075】
また、積層構造体の原材料となる粉末は、質量比でAl:2〜5%、W:17〜25%、C:0.05〜0.15%、Ni:20〜35%、Cr:6〜10%、Ta:3〜8%であって、残部が不可避的不純物を除きCoの組成を有する。このような組成を有する粉末からなる積層造形体であれば、析出相(γ’相)の粒径を微細化することが可能となる。その結果、Co基合金構造体の機械的特性をより一層高めることができる。
【0076】
また、Co基合金構造体の製造方法において、時効処理工程では、第1の時効処理工程の後に実施される第2の時効処理工程の時効温度が、第1の時効処理工程の時効温度よりも高くなるように設定される。具体的に、溶体化処理の温度が1100℃以上であり、第1の時効処理工程の時効温度が500〜700℃であり、第2の時効処理工程の時効温度が600〜800℃となるように設定される。これにより、Co基合金構造体の組織内において析出相(γ’相)の粒径を極限まで微細化することが可能となる。さらに、Co基合金構造体の組織内においてミクロ偏析が生じにくくなり、マトリックス相(γ相)においてγ’相が均一に分散されるようになる。その結果、γ’相による析出強化の作用が強化され、Co基合金構造体の機械的特性をより一層高めることができる。
【0077】
[実施形態の変形例1]
上記実施形態では、粉末からなる積層造形体として構成されたCo基合金構造体を説明したが、この形態に限られない。具体例として、Co基合金構造体の前駆体は、積層造形法により製造された積層造形体に代えて、鍛造法により製造された鍛造体として構成されていてもよい。すなわち、Co基合金構造体の製造方法として、図1に示した粉末作製工程(S1)および選択的レーザ溶融工程(S2)を、鍛造法による鍛造工程(S5)に置き換えた形態(図4参照)を採用してもよい。
【0078】
鍛造法において、鋳造直後の組織では比較的粗大な凝固組織が形成されるが、後工程である熱間鍛造により当該組織が均質化されかつ結晶粒が再結晶により微細化される。さらに、図1で示した溶体化処理工程S3および時効処理工程S4を経ることにより、Co基合金構造体の組織内において析出相(γ’相)の粒子がより微細化されかつミクロ偏析が生じにくくなる。したがって、鍛造体からなるCo基合金構造体であっても、上記実施形態と同様に、機械的特性を高めることができる。
【0079】
[実施形態の変形例2]
また、Co基合金構造体の前駆体は、積層造形法により製造された積層造形体に代えて、粉末HIP鍛造法により製造された粉末HIP鍛造体として構成されていてもよい。すなわち、Co基合金構造体の製造方法として、図1に示した選択的レーザ溶融工程(S2)を、粉末HIP鍛造法によるHIP処理工程(S6)に置き換えた形態(図5参照)を採用してもよい。
【0080】
HIP処理工程(S6)は、粉末作製工程(S1)で作製した粉末を缶に装填し、高温および静水圧化により焼結する工程である。粉末作製工程(S1)で作製した粉末の組織は、例えばガスアトマイズ法により急冷凝固される。これにより、粒界および/または粒内においてW化合物および/または炭化物相などが微細化しかつ分散した状態となる。そして、溶体化処理工程(S3)および時効処理工程(S4)を経ることにより、Co基合金構造体の組織内においてγ’相の粒子がより微細化されかつミクロ偏析が生じにくくなる。したがって、粉末HIP鍛造体からなるCo基合金構造体であっても、上記実施形態と同様に、機械的特性を高めることができる。
【0081】
[その他の実施形態]
図1および図5に示した粉末作製工程(S1)において、Co基合金の原材料である粉末を作製する方法および手法に特段の限定はない。すなわち、粉末作製工程(S1)では、従前の方法および手法を利用することが可能である。例えば、所望の化学組成となるように原料を混合、溶解、鋳造して母合金塊(マスターインゴット)を作製する母合金塊作製素工程と、該母合金塊から合金粉末を形成するアトマイズ素工程とを行ってもよい。また、アトマイズ方法にも特段の限定はなく、従前の方法および手法を利用できる。例えば、上述したガスアトマイズ法に代えて、遠心力アトマイズ法を採用してもよい。
【0082】
以上、本開示についての実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態のみに限定されず、本開示の範囲内で種々の変更が可能である。
【実施例】
【0083】
以下、下記工程を経て作製されたサンプルA(実施例)およびサンプルB(比較例)により、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0084】
ここで、サンプルAは、図1に示した全ての工程を経て作製された積層造形体からなるCo基合金構造体である。サンプルAは、粒径が50nmよりも小さい析出相(γ’相)の粒子を含む(図6参照)。一方、サンプルBは、図1に示した第2の時効処理工程(S42)以外の全ての工程を経て作製された積層造形体からなるCo基合金構造体である。サンプルBは、粒径が約250nmとなるγ’相の粒子を含む(図7参照)。
【0085】
まず、サンプルAおよびサンプルBを作製するために、上記実施形態において説明した積層造形体の原材料となる粉末(原料粉末)を、図1に示した粉末作製工程(S1)により作製した。具体的には、所定の原料を混合した後、真空高周波誘導溶解法により溶解および鋳造して母合金塊を作製する母合金塊作製素工程を行った。次に、該母合金塊を再溶解して、アルゴンガス雰囲気中のガスアトマイズ法により合金粉末を形成するアトマイズ素工程を行った。次に、得られた粉末に対して、粒径を制御するための合金粉末分級素工程を行った。
【0086】
上記原料粉末を用いて図1に示した選択的レーザ溶融工程(S2)により積層造形体(直径8mm×高さ60mm)を作製した。選択的レーザ溶融(SLM)の条件は、合金粉末床の厚さhを100μmとし、レーザ光の出力Pを100Wとし、レーザ光の走査速度S(mm/s)を種々変更することによって局所入熱量P/S(単位:W・S/mm=J/mm)を制御した。局所入熱量の制御は、冷却速度の制御に相当する。
【0087】
選択的レーザ溶融工程(S2)により作製した積層造形体(前駆体)に対し、図1に示した溶体化処理工程(S3)を実施した。本実験において、溶体化処理の温度は1160℃である。溶体化処理の保持時間は4時間である。
【0088】
次に、容体化処理を施した積層造形体(前駆体)に対し、時効処理工程を実施した。具体的に、サンプルAでは、図1に示した第1の時効処理工程(S41)および第2の時効処理工程(S42)の双方を実施した。一方、サンプルBでは、図1に示した第1の時効処理工程(S41)のみを実施した。すなわち、サンプルBでは、図1に示した第2の時効処理工程(S42)を実施していない。
【0089】
本実験において、第1の時効処理工程(S41)の温度は650℃である。第1の時効処理工程(S41)の保持時間は24時間である。また、第2の時効処理工程(S42)の温度は760℃である。第2の時効処理工程の保持時間(S42)は16時間である。
【0090】
図6および図7を参照すると、第1および第2の時効処理工程の双方を実施したサンプルAでは、第1の時効処理工程のみを実施したサンプルBと比較して、微細化された多数の析出相(γ’相)の粒子が、マトリックス相(γ相)において均一に分散した状態で析出していることがわかる。すなわち、サンプルAでは、マトリックス相(γ相)においてγ’相が均一に分散した結果、Co基合金構造体の組織内においてミクロ偏析が生じないようになっている。
【0091】
サンプルAおよびサンプルBにおいて、温度(℃)の変化に伴う引張強さおよび0.2%耐力(MPa)の関係を示したグラフを図8に示す。
【0092】
図8によれば、サンプルAでは、引張強さおよび0.2%耐力の双方の数値が、サンプルBにおける引張強さおよび0.2%耐力の数値よりも全体的に上回るという結果が得られた。具体的に、サンプルAの引張強さは、約20℃から600℃の範囲において、サンプルBの引張強さに対し100MPa程度上回っていた。また、サンプルAの0.2%耐力は、約20℃から600℃の範囲において、サンプルBの0.2%耐力に対し20MPa程度上回っていた。
【0093】
以上のように、本実験において、第1の時効処理工程(S41)および第2の時効処理工程(S42)を経ることにより極限まで微細化されたγ’相の粒子を有する実施例のサンプルAでは、第1の時効処理工程(S41)のみを行った比較例のサンプルBに対して機械的特性(引張強さおよび0.2%耐力)が向上することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本開示は、高温強度、高強度、高弾性などが要求される用途に好適なCo基合金構造体およびその製造方法として産業上の利用が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8