特許第6952296号(P6952296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952296
(24)【登録日】2021年9月30日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】エンハンサー
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/80 20060101AFI20211011BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20211011BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
   C12N15/80 ZZNA
   C12N1/15
   C12P21/02 C
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-178761(P2016-178761)
(22)【出願日】2016年9月13日
(65)【公開番号】特開2018-42486(P2018-42486A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年8月21日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301025634
【氏名又は名称】独立行政法人酒類総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】川井 淳
(72)【発明者】
【氏名】岸本 高英
(72)【発明者】
【氏名】正木 和夫
【審査官】 川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】 Appl. Microbiol. Biotechnol., 2012, Vol. 93, pp. 1627-1636
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3個以上30個以下のエンハンサーが組み込まれたプロモーターを有する発現ベクターであり、
前記プロモーターは、クリプトコッカスsp.S2株由来のクチナーゼ様酵素(CLE)プロモーターであり、
前記エンハンサーは、配列番号3の塩基配列を有するDNAを鋳型とし、配列番号26の塩基配列を有するプライマー及び配列番号27の塩基配列を有するプライマーを用いてPCRで増幅される領域の塩基配列を有するDNAである、
発現ベクター。
【請求項2】
前記3個以上30個以下が、4個以上30個以下である、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項3】
3個以上30個以下のエンハンサーが連続して存在する、請求項1又は2に記載の発現ベクター。
【請求項4】
プラスミドベクターである、請求項1〜3のいずれかに記載の発現ベクター。
【請求項5】
クチナーゼ様酵素(CLE)、グルコアミラーゼ、キシラナーゼ、セルラーゼ、ラッカーゼ、ペルオキシダーゼ、及びグルコースデヒドロゲナーゼから成る群より選択される一種以上をコードする遺伝子の発現が前記プロモーターによって制御されている、請求項1〜4のいずれかに記載の発現ベクター。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の発現ベクターで形質転換された微生物。
【請求項7】
クリプトコッカス属に属する、請求項6に記載の微生物。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の微生物を用いたタンパク質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子発現に関するエンハンサー、前記エンハンサーを導入したプロモーター、前記プロモーターを含む発現ベクター、前記発現ベクターで形質転換された微生物、及び前記微生物を用いたタンパク質の製造する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物による組み換えタンパク質の工業的生産は、診断薬原料、医薬品原料、化粧品原料、あるいは各種化成品原料に至るまで、幅広い分野で行われている。例えば、担子酵母の一種であるクリプトコッカス sp. S2株は、独立行政法人酒類総合研究所において単離された酵母であり、αアミラーゼ、酸性キシラナーゼ、クチナーゼ様酵素(CLE)などの酵素を大量に生産することが確認されている。
【0003】
微生物による有用物質の工業的生産においては、その生産性の向上が重要な課題の一つである。その手法として、特許文献1並びに非特許文献1及び2には遺伝子工学技術により微生物のプロモーターを改変して生産性を向上させる方法が報告されている。さらに、前記担子酵母を組み換え宿主として使用した組み換えタンパク質の製造方法が特許文献2及び3、並びに非特許文献3などに報告されている。更に、前記組み換え宿主で利用可能なプロモーターが特許文献3や非特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3343567号
【特許文献2】特許第5245060号
【特許文献3】特許第5277482号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Biosci. Biotechnol.Biochem.(2005)69:206−208
【非特許文献2】Appl. Microbiol. Biotechnol. (2006)72:1048−1053
【非特許文献3】Appl. Microbiol. Biotechnol. (2012) 93:1627-1636
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、タンパク質の発現効率を向上させる手段を提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、クリプトコッカス sp. S2株由来のクチナーゼ様酵素(CLE)プロモーターの一部がエンハンサーとしても機能することを見出した。また、該エンハンサーのDNA配列をプロモーターに導入した改良プロモーターを使用することで、タンパク質の発現効率が改善されることを見出した。斯かる知見に基づき、更なる検討を重ねた結果、下記に代表される発明が提供される。
【0008】
項1.
(a)配列番号1の塩基配列と少なくとも90%の同一性を有する領域、及び/又は、配列番号2の塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を有する領域を有し、且つ、遺伝子の発現効率を高める機能を有するDNA、或いは
(b)配列番号1の塩基配列において1若しくは数個の塩基が置換、欠失、挿入及び/又は付加された塩基配列を有する領域、及び/又は配列番号2塩基配列において1若しくは数個の塩基が置換、欠失、挿入及び/又は付加された塩基配列を有する領域を有し、且つ、遺伝子の発現効率を高める機能を有するDNA
からなるエンハンサー。
項2.
クリプトコッカス属由来のプロモーター用である、項1に記載のエンハンサー。
項3.
項1又は2に記載のエンハンサーが組み込まれた、プロモーター。
項4.
項1又は2に記載のエンハンサーが複数個組み込まれた、プロモーター。
項5.
クリプトコッカス属由来である、項3に記載のプロモーター。
項6.
項3〜5のいずれかに記載のプロモーターを含む発現ベクター。
項7.
項6に記載の発現ベクターで形質転換された微生物。
項8.
クリプトコッカス属に属する、項7に記載の微生物。
項9.
項7又は8に記載の微生物を用いたタンパク質の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
タンパク質の生産効率を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】プラスミド(pCsUC‐CsAoGLD)の構造を示す。
図2】pCsUC‐CsAoGLD‐D1〜D9におけるプロモーター領域の模式図を示す。
図3】pCsUC‐CsAoGLD‐D1〜D9のいずれかで形質転換したクリプトコッカスを培養した培養上清中のGDH活性を示す。
図4】pCsUC‐CsAoGLD‐D10〜D12のいずれかで形質転換したクリプトコッカスを培養した培養上清中のGDH活性を示す。
図5】改良型プラスミド(pCsUC(+EHC9)‐CsAoGLD)の構造を示す。
図6】pCsUC(+EHC4)‐CsAoGLD、又はpCsUC(+EHC9)‐CsAoGLDで形質転換したクリプトコッカスを培養した培養上清中のGDH活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(エンハンサー)
一実施形態において、下記のエンハンサーが提供される:
(a)配列番号1の塩基配列と少なくとも90%の同一性を有する領域、及び/又は、配列番号2の塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を有する領域を有し、且つ、遺伝子の発現効率を高める機能を有するDNA、或いは
(b)配列番号1の塩基配列において1若しくは数個の塩基が置換、欠失、挿入及び/又は付加された塩基配列を有する領域、及び/又は配列番号2塩基配列において1若しくは数個の塩基が置換、欠失、挿入及び/又は付加された塩基配列を有する領域を有し、且つ、遺伝子の発現効率を高める機能を有するDNA
からなるエンハンサー。
【0012】
配列番号1の塩基配列は34塩基で構成される。配列番号2の塩基配列は41塩基で構成される。上記(a)に関し、配列番号1の塩基配列に対する同一性は、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上であることが好ましい。配列番号2の塩基配列に対する同一性は、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上であることが好ましい。
【0013】
同一性は、市販の又は電気通信回線(インターネット)を通じて利用可能な解析ツールを用いて算出することができる。例えば、具体的には、Advanced BLAST 2.1において、プログラムにblastnを用い、各種パラメータはデフォルト値に設定して検索を行うことにより、ヌクレオチド配列の相同性の値(%)を算出することができる。
【0014】
上記(b)に関し、「数個」とは、エンハンサーとしての機能が維持される限り特に制限されない。一実施形態において、数個とは、2個、3個、又は4個であることが好ましい。
【0015】
上記(a)及び(b)に関し、「遺伝子の発現効率を高める機能を有する」とは、任意の遺伝子の転写効率を高める機能を有することを意味する。この機能を有するか否かは、任意の手法で確認することができる。例えば、任意のプロモーター及びレポーター遺伝子を有する発現ベクターに被験DNA配列を導入し、それを当該発現ベクターに適した宿主細胞に導入して当該レポーター遺伝子の発現レベルが被験DNA配列の導入によって増大するか否かを調べることによって確認することができる。
【0016】
一実施形態において、エンハンサーは、配列番号1の塩基配列と少なくとも90%の同一性を有する領域、及び、配列番号2の塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を有する領域を有し、且つ、遺伝子の発現効率を高める機能を有するDNAであることが好ましい。配列番号1の塩基配列と少なくとも90%の同一性を有する領域と配列番号2の塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を有する領域とは、直接的に連続していても良く、他の1個以上の塩基を介して連続していても良い。これらの領域が1個以上の塩基を介して連続している場合、「1個以上」とは、例えば、5個以上、10個以上、15個以上、又は20個以上であり、50個以下、45個以下、40個以下、35個以下、又は30個以下であり得る。好適な一実施形態において、「1個以上の塩基」とは、gactctgccgagctcgcttaacagc(配列番号28)から成る塩基配列又はこれと90%以上の同一性を有する塩基配列であり得る。90%以上とは、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上であり得る。
【0017】
好適な一実施形態において、エンハンサーは、配列番号1の塩基配列と配列番号2の塩基配列が配列番号28の塩基配列を介して連結した配列番号29の塩基配列又はそれと90%以上の同一性を有し、且つ、遺伝子の発現効率を高める機能を有することが好ましい。ここで、同一性は、好ましくは91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上である。
【0018】
エンハンサーは、遺伝子の発現効率を向上することができる限り、上記(a)及び(b)で規定する領域以外の任意の領域を5’末端側及び/又は3’末端側に有することができる。そのような任意の領域としては、例えば、配列番号1の塩基配列が本来存在するゲノムDNA配列において、配列番号1よりも上流500bp以内(好ましくは400bp以内、より好ましくは300bp以内、より好ましくは200bp以内、より好ましくは100bp以内、より好ましくは50bp以内、最も好ましくは30bp以内)に存在する任意の領域を挙げることができる。
【0019】
エンハンサーの塩基長は特に制限されない。一実施形態において、エンハンサーは、35個以上、40個以上、50個以上、60個以上、70個以上、75個以上、80個以上、90個以上、95個以上、100個以上、110個以上、120個以上、130個以上、140個以上、150個以上、160個以上、170個以上、180個以上、190個以上、又は200個以上の塩基で構成され得、500個以下、450個以下、400個以下、350個以下、300個以下、250個以下、200個以下、又は150個以下の塩基で構成され得る。
【0020】
(プロモーター)
エンハンサーは、プロモーターと組み合わせることによって、それが発現を制御する遺伝子の発現効率を向上させることができる。エンハンサーと組み合わせるプロモーターの種類及び組み合わせ方は、遺伝子の発現効率を向上させることができる限り、特に制限されない。例えば、プロモーターが存在する発現ベクター上の任意の場所にエンハンサーを導入することができる。一実施形態において、エンハンサーは、プロモーター内に導入されていることが好ましい。
【0021】
一実施形態において、エンハンサーと組み合わせる好ましいプロモーターとして、例えば、クチナーゼ様酵素(CLE)プロモーター、キシラナーゼプロモーター、トランスレーションエロンゲーションファクター1αプロモーター、アミラーゼプロモーター、及びアクチンプロモーターなどが挙げられる。好ましくはクチナーゼ様酵素(CLE)プロモーター、最も好ましくは配列番号3記載のクリプトコッカス sp. S2株由来のクチナーゼ様酵素(CLE)プロモーターへの導入が挙げられる。一実施形態において、エンハンサーと組み合わせる好ましいプロモーターは、クリプトコッカス属由来のプロモーター又は後述する宿主由来のプロモーターであることが好ましい。好適な一実施形態において、エンハンサーと組み合わせる好ましいプロモーターは、Cryptococcus liquefaciens, Cryptococcus flavus, Cryptococcus laurentii, 又はCryptococcus curvatusに由来するプロモーターであることが好ましい。
【0022】
エンハンサーを導入するプロモーター上の部位及びエンハンサーの方向は、発現効率が向上する限りにおいて特に限定されない。例えば、導入するプロモーターのデリーション解析によりエンハンサーの導入に適した条件(部位及び方向性等)を決定することができる。一実施形態において、好ましくは、配列番号3のクリプトコッカス sp. S2株由来のクチナーゼ様酵素(CLE)プロモーターにおける転写開始点より上流300〜1003bpの間の任意の箇所、より好ましくは、配列番号3のクリプトコッカス sp. S2株由来のクチナーゼ様酵素(CLE)プロモーターにおける転写開始点より上流300〜500bpの間の任意の箇所、最も好ましくは、配列番号3のクリプトコッカス sp. S2株由来のクチナーゼ様酵素(CLE)プロモーターにおける転写開始点より上流438bpの位置への挿入が挙げられる。
【0023】
エンハンサーの導入数は遺伝子の発現効率を向上できる限り特に限定されない。例えば、エンハンサーの導入数は、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、又は10個以上であり得、30個以下、25個以下、20個以下、15個以下であり得る。複数のエンハンサーが導入される場合は、それらは連続して存在しても良く、各エンハンサー間に他の塩基配列が介在してもよい。一実施形態において、複数のエンハンサーは連続して存在することが好ましい。
【0024】
(発現ベクター)
一実施形態において、エンハンサーは発現ベクターにおいて、プロモーターと組み合わせられる。そのような発現ベクターとしては、所望の宿主細胞において、目的の遺伝子の発現効率を向上させることができる限り、特に限定されず、従来公知の発現ベクターから適宜選択することができる。一実施形態において、発現ベクターは、プラスミドベクターであることが好ましい。また、発現ベクターの由来は、後述する宿主内で機能する限り特に制限されないが、例えば大腸菌のベクターであることが好ましい。大腸菌のベクターとしては、具体的にはpBR322、pUC19、pGEM−T、pCR−Blunt、pTA2、pETなどが挙げられる。一実施形態において、発現ベクターは、栄養要求性マーカー、薬剤耐性マーカー、発現プロモーターDNA配列、及び発現ターミネーターDNA配列を含む。好適な一実施形態において、発現ベクターは、クリプトコッカスsp.S−2由来のorotate phosphoribosyl transferase遺伝子、及びクリプトコッカスsp.S−2由来のターミネーターを含む。
【0025】
上述のエンハンサー及びプロモーターによってその発現が調節される遺伝子の種類は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。一実施形態において好ましい遺伝子は、タンパク質をコードする遺伝子である。タンパク質としては、例えば、クチナーゼ様酵素(CLE)、グルコアミラーゼ、キシラナーゼ、セルラーゼ、ラッカーゼ、ペルオキシダーゼ、及びグルコースデヒドロゲナーゼなどから成る群より選択される一種以上が挙げられる。
【0026】
(宿主微生物)
上記発現ベクターを導入する宿主は、目的の遺伝子の発現効率を向上させることができる微生物であれば特に制限されない。例えば、担子菌門に分類される微生物を挙げることができる。具体的には、Bannoa属,Bensingtonia属,Bullera属,Bulleromuces属,Cryptococcus属,Curvibasidium属,Cystofilobasidium属,Dioszegia属,Erythrobasidium属,Fellomyces属,Fibulobasidium属,Filobasidium属,Filobasidiella属,Guehomyces属,Kockovaella属,Kondoa属,Kurtzmanomyces属,Leucosporidium属,Malassezia属,Mastigobasidium属,Mrakia属,Occultifur属,Pseudozyma属,Rhodosporidium属,Rhodotorula属,Sakaguchia属,Sirobasidium属,Spororidiobolus属,Sporobolomyces属,Sterigmatomyces属,Sterigmatosporidium属,Sympodimycopsis属,Tausonia属,Tilletiopsis属,Trichosporiella属,Trichosporon属,Tsuchiyaea属,Udeniomyces属,Xanthophyllomuces属などに属する微生物を挙げることができる。一実施形態において好ましい宿主は、Cryptococcus属の微生物であり、例えば、Cryptococcus liquefaciens,Cryptococcus flavus,Cryptococcus laurentii,Cryptococcus curvatusなどが挙げられ、最も適するのはクリプトコッカス sp.S−2である。他の実施形態において好ましい宿主としては、Cystofilobasidium capitatum,Filobasidium floriforme,Kurtzmanomyces sp.,Malassezia furfur,Malassezia sympodialis,Pseudozyma tsukubaensis,Pseudozyma flocculosa,Rhodosporidium toruloides,Rhodosporidium paludigenum,Rhodotorula sp.,Rhodotorula graminis,Rhodotorula glutinis,Rhodotorula mucilaginosa,Rhodotorula araucariae,Sporobolomyces singularis,Trichosporon cutaneum,Trichosporon asahii,Trichosporon mucoidesなどの担子菌門に属する微生物を挙げることができる。他の実施形態においては、例えば、Gaeumannomyces graminis,Pleurotus sp.,Pleurotus eryngii,Pleurotus sapidus,Trametes pubescens,Trametes sp.C30,Trametes sp. 420,Trametes sp. AH28−2,Trametes villosa,Trametes sp.I−62,Trametes versicolor,Trametes hirsute,及びTrametes ochraceaなどの真核微生物を挙げることができる。
【0027】
クリプトコッカス sp.S−2は独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に受託番号FERM BP−10961として国際寄託されている菌株であり、所定の手続きを経ることで分譲を受けることができる。
【0028】
宿主微生物の細胞に発現ベクターを導入する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、エレクトロポレーション法、プロトプラスト―ポリエチレングリコール法、及びパーティクルガン法などの方法が挙げられる。
【0029】
宿主に発現ベクターを導入することによって得られる微生物(形質転換体)の培養条件は、宿主の栄養生理的性質を考慮して適宜選択すればよく、通常液体培養で行うが、工業的には通気攪拌培養を行うのが有利である。
【0030】
培養に用いる窒素源は、特定のアミノ酸成分に欠失があるなど特殊なN源を除いて、宿主微生物が利用可能な窒素化合物であればどんなものでも良い。これらは主として有機窒素源であり、例えばペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、ゼラチン加水分解物、大豆粕アルカリ分解物などが使用される。特に、酵母エキスやゼラチン加水分解物が好ましいが、これに限定されるものではなく、カゼインポリペプトン、発酵麹エキス、麦芽抽出物などを用いることによっても、形質転換体を培養することができる。
【0031】
その他の栄養源としては、微生物の培養に通常用いられるものが広く使用される。例えば、グルコース、シュークロース、ラクトース、マルトース、キシロース、などの資化可能な糖類や、オリーブオイル、アマニ油、大豆油、米油、トリオレイン、トリリノレンなどの資化可能な油脂が使用される。その他、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛などの塩類、特定のアミノ酸、特定のビタミンなどが必要に応じて使用される。
【0032】
培養温度は、菌が発育してタンパク質を生産する範囲で適宜選択し得る。例えば、クリプトコッカスsp.S−2の場合、通常は20〜25℃程度である。培養時間は、条件によって異なるが、タンパク質が最高収量に達する時期を見計らって適当な時期に培養を終了すればよく、通常は48〜168時間程度である。培地pHは、菌が発育して目的とするタンパク質を生産する範囲で適宜変更しうるが、通常はpH3.0〜9.0程度である。
【0033】
上述の発現ベクターが導入された形質転換体を適切な条件で培養することによって、ベクターがコードする任意のタンパク質をより効率的に製造することができる。
【0034】
DNA配列は、宿主細胞内にて転写翻訳される限りにおいて特に限定されず、コドンユーセージが最適化されていてもよい。コドンユーセージの最適化は、例えば、かずさDNA研究所にて公開されているコドンユーセージデータベースbase(http://www.kazusa.or.jp/codon/)から提供される情報を用いて行うことができる。
【0035】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
<実施例1>
クリプトコッカス sp. S2株由来クチナーゼ様酵素(CLE)プロモーターのデリーション解析
非特許文献3記載のクリプトコッカスsp.S−2由来クチナーゼ様酵素(CLE)プロモーターの機能をデリーションにより解析した。pUC18プラスミドに非特許文献3記載のクリプトコッカスsp.S−2由来のorotate phosphoribosyl transferase遺伝子を含有するDNA配列、クチナーゼ様酵素プロモーターのDNA配列(配列番号3)、クチナーゼ様酵素に由来する分泌シグナルをコードするDNA配列(配列番号4)、特許文献3に配列番号1として記載される麹菌由来FAD‐GLDをコードするDNA配列、非特許文献3に記載のキシラナーゼターミネーターのDNA配列を図1に記載の構成で導入したプラスミドを作成した。以下、本プラスミドをpCsUC‐CsAoGLDと呼ぶ。なお、クリプトコッカス sp. S2株のクチナーゼ様酵素に由来する分泌シグナルは、公知のクリプトコッカス sp. S2株クチナーゼ様酵素のアミノ酸配列より、SignalP(http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP)を用いて予測した。
【0037】
pCsUC‐CsAoGLDを鋳型として、配列番号6と配列番号7〜15記載の各DNA配列をプライマーとして用い、KOD‐plus‐Mutagenesis kit(東洋紡社)を用い、プロトコルに沿って操作をすることで、クチナーゼ様酵素プロモーターのデリーションプロモーターを有する発現プラスミドpCsUC‐CsAoGLD‐D1〜D9を構築した。各プラスミドとプロモーター領域の対比を図2に示す。pCsUC‐CsAoGLD‐D1では、転写開始点から−1003〜−900の塩基配列が除去されている。pCsUC‐CsAoGLD‐D2では、転写開始点から−1003〜−800の塩基配列が除去されている。pCsUC‐CsAoGLD‐D3では、転写開始点から−1003〜−700の塩基配列が除去されている。pCsUC‐CsAoGLD‐D4では、転写開始点から−1003〜−600の塩基配列が除去されている。pCsUC‐CsAoGLD‐D5では、転写開始点から−1003〜−500の塩基配列が除去されている。pCsUC‐CsAoGLD‐D6では、転写開始点から−1003〜−400の塩基配列が除去されている。pCsUC‐CsAoGLD‐D7では、転写開始点から−1003〜−300の塩基配列が除去されている。pCsUC‐CsAoGLD‐D8では、転写開始点から−1003〜−200の塩基配列が除去されている。pCsUC‐CsAoGLD‐D9では、転写開始点から−1003〜−100の塩基配列が除去されている。
【0038】
pCsUC‐CsAoGLDおよびpCsUC‐CsAoGLD‐D1〜D9のそれぞれを用いてクリプトコッカスsp.DA25株を形質転換した。形質転換は、Infect Immun. 1992 Mar;60(3):1101−8.(Varmaら)に記載の方法で実施した。クリプトコッカスsp.DA25株を20mlYM培地(酵母エキス0.3%、麦芽エキス0.3%、ポリペプトン0.5%、グルコース1.0%)で25℃、48時間培養した。得られた培養液の吸光度(OD660nm)を測定したところ、2.96Absであった。次に、この培養液6.75mlを200ml液体培地(酵母エキス0.3%、麦芽エキス0.3%、ポリペプトン0.5%、グルコース1.0%)に植菌し、25℃、18時間培養した。得られた培養液の吸光度(OD660nm)を測定したところ、0.94Absであった。次に、この培養液を遠心分離して菌体を回収し、Wash buffuer(270mMシュークロース、1mM塩化マグネシウム、4mM DTT、10mM Tris−HCl pH7.6)で菌体を2回洗浄し、Electroporation buffer(270mMシュークロース、1mM塩化マグネシウム、10mM Tris−HCl pH7.6)に吸光度OD660=50Absとなるように懸濁した。得られた懸濁液100μlに、予めSbfIによって制限酵素処理し、直鎖化したプラスミド10μg(〜5μl)を添加し、エレクトロポレーション用のキュベットに移した後、Gene Pulser Xcell (BIO−RAD社)を用いて通電した。通電条件は、C=25μF; V=0.47kVであった。通電後の液中に600μl Electroporation buffer(270mMシュークロース、1mM塩化マグネシウム、10mM Tris−HCl pH7.6)を加え、選択プレート上に塗り広げた。選択プレートはYNB−ura寒天培地(0.67%Yeast Nitrogen Base W/O amino acid、0.078% −ura DO supplement、2%グルコース、1%寒天粉末)を用いた。植菌したプレートを25℃で1週間静置培養し、生育コロニーを選抜した。
【0039】
形質転換で得られた形質転換体については、配列番号16及び配列番号17を用いてKOD−Fx(東洋紡社製)によるコロニーPCRを行うことにより遺伝子の導入を確認し、pCsUC‐CsAoGLDおよびpCsUC‐CsAoGLD‐D1〜D9のいずれかが導入された形質転換体を取得した。
【0040】
取得した形質転換体を、5%酵母エキス、5%オリーブオイルからなる培地に稙菌し、25℃にて64時間培養し、上清中のGDH活性を比較した。本書においてGDH活性測定法は特に指定のない限り、以下の方法で実施している。
【0041】
グルコースデヒドロゲナーゼ活性の測定方法
<試薬>
1.300mM D−グルコースを含む100mM リン酸緩衝液pH6.5(0.1% TritonX−100を含む)
2.1.6mM 2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)溶液
上記D−グルコースを含むリン酸緩衝液20mL、DCPIP溶液10mL、を混合して反応試薬とする。
【0042】
<測定条件>
反応試薬3mLを37℃で5分間予備加温する。GDH溶液0.1mLを添加しゆるやかに混和後、水を対照に37℃に制御された分光光度計で、600nmの吸光度変化を5分記録する。反応時間をX軸、吸光度をY軸として測定結果をプロットし、直線部分から(即ち、反応速度が一定になってから)1分間あたりの吸光度変化(ΔODTEST)を測定する。盲検はGDH溶液の代わりにGDHを溶解する溶媒を試薬混液に加えて同様に1分間あたりの吸光度変化(ΔODBLANK)を測定する。これらの値から次の式に従ってGDH活性を求める。ここでGDH活性における1単位(U)とは、濃度1MのD−グルコース存在下で1分間に1マイクロモルのDCPIPを還元する酵素量である。
【0043】
活性(U/mL)=
{−(ΔODTEST−ΔODBLANK)×3.1×希釈倍率}/{0.85×0.1×1.0}
【0044】
なお、式中の3.1は反応試薬+酵素溶液の液量(mL)、0.85は本活性測定条件におけるミリモル分子吸光係数(cm/マイクロモル)、0.1は酵素溶液の液量(mL)、1.0はセルの光路長(cm)を示す。
【0045】
結果を図3に示す。比較の結果、pCsUC‐CsAoGLD‐D6による形質転換体で上清中のGDH活性の著しい低下を確認し、pCsUC‐CsAoGLD‐D7〜D9による形質転換体で取得した全ての形質転換体で、上清中にGDH活性を確認できなかった。
【0046】
この結果より、転写開始点より上流300〜500bpの領域に、クリプトコッカスsp.S−2由来クチナーゼ様酵素(CLE)プロモーターにとって重要な領域が存在すると推測した。
【0047】
<実施例2>
プロモーター機能に強く寄与する領域の絞り込み
転写開始点より上流300〜500bpの領域から、プロモーター機能に強く寄与する領域の絞り込みを行った。
【0048】
THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,Vol.269(1994), NO.12,P9195−9204には、Fusarium solani由来のクチナーゼプロモーターのモチーフ解析についての報告がある。文献記載のFusarium solani由来のクチナーゼはクチンを基質とする酵素であり、脂質を基質とするクリプトコッカスsp.S−2由来クチナーゼ様酵素(CLE)とはタンパク質の機能を異にするものであり、それらに関与するプロモーター領域も、相同性は45%であり決して相同性は高くはない。
該文献に報告のある、Fusarium solani由来のクチナーゼプロモーターのモチーフ配列であるGCGAGCCGAGGCTCGAを配列番号3記載のクリプトコッカスsp.S−2由来クチナーゼ様酵素プロモーターに対しBLAST検索したところ、完全に一致するものは見つからなかったものの、10〜15bp程度の長さで類似性が期待できる領域が、転写開始点より上流971〜981bpの領域、404〜413bpの領域、368〜380bpの領域、160〜174bpの領域の4か所見つかった。
【0049】
4か所のうち、転写開始点より上流971〜981bpの領域に関しては、実施例1での解析によりプロモーター機能に寄与しないことが判明しており、必ずしも見つかった領域が文献同様プロモーター機能に寄与する確証はなかった。しかし、実施例1において推測した転写開始点より上流300〜500bpの領域中に2か所を含むこともあり、残りの3か所の効果をデリーションにより確認した。
【0050】
pCsUC‐CsAoGLDを鋳型として、KOD‐plus‐ Mutagenesis kit(東洋紡社)を用い、配列番号18、及び配列番号19記載のDNA配列を有するプライマーを用い、プロトコルに沿って操作をすることで、転写開始点より上流404〜413bpの領域を含むCACTTCGCGCGGTACTAGTTACAGTAGTAGTCTG(配列番号1)を欠失したpCsUC‐CsAoGLD‐D10を作製した。同様に、配列番号20、及び配列番号21記載のDNA配列を有するプライマーを用い、プロトコルに沿って操作をすることで、転写開始点より上流368〜380bpの領域を含むAACATTACTGGGCGTCGTGCCTGTGCACCTGATCCTGTTTA(配列番号2)を欠失したpCsUC‐CsAoGLD‐D11を作製した。同様に、配列番号22、及び配列番号23記載のDNA配列を有するプライマーを用い、プロトコルに沿って操作をすることで、転写開始点より上流160〜174bpの領域を含むGTGATTGGGACGAGCGGTGGCGTGAGACTAGCCTGGAATAT(配列番号5)を欠失したpCsUC‐CsAoGLD‐D12を作製した。
【0051】
pCsUC‐CsAoGLD‐D10〜D12を用いてクリプトコッカスsp.DA25株を形質転換し形質転換体を取得した。形質転換は、実施例1記載の方法で実施した。得られた形質転換体については、実施例1記載の方法で遺伝子の導入を確認した。
【0052】
取得した形質転換体を、5%酵母エキス、5%オリーブオイルからなる培地に稙菌し、25℃にて64時間培養し、上清中のGDH活性を測定した。結果を図4に示す。
【0053】
<比較例1>
比較例として、実施例1で取得したpCsUC‐CsAoGLDを実施例2と同条件で同時に培養したものを用意し、上清中のGDH活性を測定した。結果を図4に示す。
【0054】
比較の結果、pCsUC‐CsAoGLD‐D10及びD11による形質転換体では取得した全ての形質転換体で、上清中にGDH活性を確認できなかった。一方、pCsUC‐CsAoGLD‐D12による形質転換体では上清中にGDH活性を確認した。
【0055】
この結果より、配列番号1及び2を含む領域がプロモーター機能に強く寄与する可能性が推測された。配列番号1及び2は、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)データベースに対するBLAST検索で、解析に供したクリプトコッカスsp.S−2由来のクチナーゼ様酵素のプロモーター領域以外で相同性を有するDNA配列は確認できなかった。
【0056】
<実施例3>
エンハンサー配列を連結導入したベクターの構築
配列番号1及び2は25bpの領域を含んで隣接し、配列番号3記載のプロモーター内に含まれる。さらに、配列番号3において配列番号1記載の配列の上流近傍に制限酵素SpeIの認識サイトがあることに着目し、配列番号1及び2を含むDNA断片のプロモーター内への追加導入を行った。
【0057】
pCsUC‐CsAoGLDを鋳型として、配列番号24、及び配列番号25記載のDNA配列をプライマーとして用い、KOD‐plus‐ Mutagenesis kit(東洋紡社)を用い、プロトコルに沿って操作することで、pCsUC‐CsAoGLDのクチナーゼ様酵素(CLE)プロモーター内に存在するSpeI認識配列の隣にHindIII認識配列を導入したプラスミドを作成した。以下、本プラスミドをpCsUC(HindIII)‐CsAoGLDと呼ぶ。
【0058】
pCsUC‐CsAoGLDを鋳型として、配列番号26(HindIII認識配列を5’ 末端に付加)、及び配列番号27(XbaI認識配列を5’ 末端に付加)記載のDNA配列を有するプライマーを用い、KOD‐plus‐(東洋紡社)を用い、プロトコルに沿って配列番号1及び2の両方を有するDNA断片を増幅した。配配列番号3における配列番号1記載の配列の近傍に存在するSpeI認識配列を含む形でPCR増幅を実施しているため、本断片は、配列番号1及び2の両方を有し、5’ 末端にHindIIIによる認識配列、SpeIによる認識配列の順で制限酵素認識配列を持ち、3’ 末端にXbaIによる認識配列を有する。
【0059】
増幅したエンハンサー配列を含むDNA断片をHindIII(東洋紡社、以下全て同社製を使用)、及びXbaI(タカラバイオ社、以下全て同社製を使用)で37℃16時間処理した後、pCsUC(HindIII)‐CsAoGLDをHindIII、SpeI(東洋紡社、以下全て同社製を使用)で37℃16時間処理した後、E.coli AlkalinePhosphatase(東洋紡社)を用いて脱リン酸化したDNAと適量混合し、Ligation High(東洋紡社)を等量加え、16℃1時間反応させた。
その後、反応液を用いてCompetent high DH5α(東洋紡社)を形質転換した。取得した形質転換体よりプラスミドを抽出し、ABI3730(Applied Byosystem社)を用いて配列の確認を行い、エンハンサー配列が追加で導入されたプラスミドを取得した。以下、本プラスミドをpCsUC(+EHC1)‐CsAoFAD−GLDと呼ぶ。
【0060】
pCsUC(+EHC1)‐CsAoGLDを用いて上記操作をさらに3回繰り返すことで、エンハンサーを配列を含むDNA断片を追加で4個導入したpCsUC(+EHC4)‐CsAoGLDを取得した。さらに、pCsUC(+EHC4)‐CsAoFAD−GLDを用い、上記操作をさらに5回繰り返すことで、エンハンサーを配列を含むDNA断片を追加で9個導入したpCsUC(+EHC9)‐CsAoFAD−GLDを取得した。代表としてpCsUC(+EHC9)‐CsAoFAD−GLDの構造を図5に示す。
【0061】
<実施例4>
エンハンサー配列導入効果の確認
構築したpCsUC(+EHC4)‐CsAoGLD、pCsUC(+EHC9)‐CsAoGLDを用いてクリプトコッカスsp.DA25株を形質転換し形質転換体を取得した。形質転換は、実施例1記載の方法で実施した。得られた形質転換体については、実施例1記載の方法で遺伝子の導入を確認した。
【0062】
取得した形質転換体を、2%酵母エキス、1%ラクトース、2%トリオレイン、1%リン酸二水素カリウム、0.1%硫酸マグネシウムからなる培地に稙菌し、25℃にて64時間培養し、上清中のGDH活性を測定した。結果を図6に示す。
【0063】
<比較例2>
比較例として、実施例1で取得したpCsUC‐CsAoGLDによる形質転換体を実施例4と同条件で同時に培養したものを用意し、上清中のGDH活性を比較した。結果を図6に示す。
【0064】
各プラスミドによる形質転換体の比較の結果、エンハンサー配列の導入により上清中のGDH活性が優位に増加することを確認した。また、導入個数が増えるほど、上清中のGDH活性が優位に増加することを確認した。
【0065】
この結果より、配列番号1及び2を含む領域のプロモーターへの追加導入で、物質生産性を向上させる可能性が示された。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明により、産業上有用なエンハンサー、前記エンハンサーを導入したプロモーター、前記プロモーターを含む発現用プラスミド等の提供及び、該プロモーターを用いた組み換えタンパク質の生産方法が提供可能となる。該プロモーターの利用により、組み換えタンパク質の生産性を飛躍的に向上させることが可能になる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]