【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
なお、実施例中、中空糸膜の透水量は上述した方法により測定した。
【0032】
実施例1
熱誘起相分離法にて製膜した孔径0.1μmのポリアミド6中空糸膜(内径118μm、膜厚85μm、透水量1500L/(m
2・atm・h)、水接触角51°、ユニチカ株式会社製)を9本束ね、有効長さ26mmになるようにモジュールを作製した。モジュールは両端をシリコンゴムで接着し、片端は注射筒に連結できるような構造にした。中空糸膜内部の有効培養体積は2.6mm
2であった。このモジュールにラット初代肝細胞を2.2×10
6個導入し、遠心機にて200G×180秒遠心し細胞を充填した。これを培地中に置き温度37℃、湿度95%、二酸化炭素濃度5%の条件下45rpmで旋回培養した。その結果、細胞生存率は
図2に示すように7日間培養後も40%以上と高い値を示した。また、
図3に示すようにアンモニア除去速度は約400μmol/cm
3/日、
図4に示すようにアルブミン分泌速度は約2mg/cm
3/日といずれも高い値を示し、肝細胞として高い機能を発現したことが分かった。
培養7日後の中空糸膜中の細胞において、酸素欠乏性を把握するため低酸素誘導因子の発現を免疫蛍光染色によって確認したところ、
図5に示すように緑色の細胞は中心部までほとんど無く、酸素が欠乏していない様子が確認できた。
【0033】
実施例2
ポリアミド6中空糸膜に孔径0.1μm、内径148μm、膜厚94μm、透水量1500L/(m
2・atm・h)、水接触角51°のものを用い、これを8本束ね、有効長さ19mmになるようにモジュールを作製した以外は実施例1と同様にラット初代肝細胞を培養した。この時のモジュールの有効培養体積は2.6mm
2であった。その結果、細胞生存率は
図2に示すように7日間培養後も40%以上と高い値を示した。また、
図3に示すように7日間培養後のアンモニア除去速度は約350μmol/cm
3/日、
図4に示すように7日間培養後のアルブミン分泌速度は約2mg/cm
3/日といずれも高い値を示し、肝細胞として高い機能を発現したことが分かった。
【0034】
比較例1
中空糸膜にエチレン−ビニルアルコールコートのポリエチレン製血漿分離膜(孔径0.3μm、内径330μm、膜厚50μm)を用い、これを2本束ね、有効長さ15mmになるようにモジュールを作製した以外は実施例1と同様にラット初代肝細胞を培養した。この時のモジュールの有効培養体積は2.6mm
2であった。その結果、細胞生存率は
図2に示すように7日間培養後には15%程度と著しく低下した。また、
図3に示すように7日間培養後のアンモニア除去速度は約200μmol/cm
3/日、
図4に示すように7日間培養後のアルブミン分泌速度は約0.8mg/cm
3/日といずれも低くなった。
培養7日後の中空糸膜中の細胞において、酸素欠乏性を把握するため低酸素誘導因子の発現を免疫蛍光染色によって確認したところ、
図6に示すように中空糸膜内部の細胞はほとんどが緑色に発色しており、大部分の細胞において酸素が欠乏している様子が確認できた。
【0035】
比較例2
中空糸膜にポリアミド6中空糸膜(孔径0.1μm、内径366μm、膜厚105μm、透水量4000L/(m
2・atm・h)、水接触角51°、ユニチカ株式会社製)を用い、これを2本束ね、有効長さ12mmになるようにモジュールを作製した以外は実施例1と同様にラット初代肝細胞を培養した。この時のモジュールの有効培養体積は2.5mm
2であった。その結果、細胞生存率は7日間培養後には20%程度と著しく低下した。
【0036】
実施例3
実施例1で使用した孔径0.1μmのポリアミド6中空糸膜(内径118μm、膜厚85μm、透水量1500L/(m
2・atm・h)、水接触角51°、ユニチカ株式会社製)を10本束ね、有効長さ22mmになるようにモジュールを作製した。モジュールは両端をシリコンゴムで接着し、片端は注射筒に連結できるような構造にした。中空糸膜内部の有効培養体積は2.4mm
2であった。このモジュールに、マウス肝がん由来ヘパトーマ細胞(Hepa1−6)に対し、薬剤誘導型遺伝子発現誘導系を用いて8つの肝転写因子を発現するよう樹立された細胞株を導入し、実施例1と同様に、遠心機にて200G×180秒遠心し細胞を充填した。細胞に導入した導入転写因子は、Hepatocyte nuclear factor(HNF)−1α、−1β、−3β、−4α、6及び、CCAAT/enhancer binding protein(C/EBP)−α、−β、−γである(Biochemical Engineering Journal 60,67-73, 2012)。このモジュールを培養5日目まではDMEM及び10%FBSの培地にて増殖培養を行い、5日目からはドキシサイクリンを0.1μg/mL添加した培地にて機能発現誘導を行った。その結果、細胞数は
図7に示すように5日目まで細胞は順調に増殖し、機能発現誘導以降は徐々に低減した。またアンモニア除去速度は
図8のように12日後に約700μmol/cm
3/日と高い値を示し、尿素生成速度も
図9のように12日後に約30mg/cm
3/日と高い値を示した。このことから、遺伝子導入細胞株においても本発明の中空糸膜を用いることで効果的な増殖、機能発現ができることがわかった。
【0037】
比較例3
中空糸膜に三酢酸セルロース製の血漿分離膜(孔径0.2μm、内径285μm、膜厚51μm)を用い、これを6本束ね、有効長さ30mmになるようにモジュールを作製した以外は実施例3と同様にマウス肝がん由来ヘパトーマ細胞(Hepa1−6)に対し、薬剤誘導型遺伝子発現誘導系を用いて8つの肝転写因子を発現するよう樹立された細胞株を増殖培養、機能発現誘導した。このモジュールの有効培養体積は11.5mm
2であった。その結果、
図7に示すように5日目まで細胞は順調に増殖し、機能発現誘導以降は徐々に低減した。しかし、
図8、
図9に示すように機能発現はほとんど認められなかった。このことから、この中空糸膜では遺伝子導入細胞株での機能発現はできないことが分かった。